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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083099
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20240613BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240613BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240613BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20240613BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240613BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240613BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240613BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240613BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/92
A61K8/81
A61P17/16
A61K9/107
A61K47/10
A61K47/44
A61K47/34
A61K8/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197419
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】潘 丁允
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD09
4C076DD45
4C076DD46
4C076EE14
4C076EE23
4C076EE27
4C076FF16
4C083AB051
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC441
4C083AC442
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD152
4C083BB04
4C083BB51
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD32
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】 皮膚に適用したときに高い保湿効果を発揮し、また長期間にわたってしっとり感を持続できる皮膚外用剤の提供。
【解決手段】 (A)ジグリセリン、(B)油、(C)2種類以上の、HLB値が13~15である非イオン性界面活性剤の組み合わせ、(D)2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸またはその塩を構造中に含むポリマー、および(E)水を含んでなる皮膚外用剤。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ジグリセリン、
(B)油、
(C)2種類以上の、HLB値が13~15である非イオン性界面活性剤の組み合わせ、
(D)2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸またはその塩を構造中に含むポリマー、および
(E)水
を含んでなる皮膚外用剤。
【請求項2】
(B)成分が極性油である、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
(B)成分のIOBが 0.5以下である、請求項1または2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
(C)成分が、HLB値が13~15であるポリオキシアルキレン脂肪酸グリセリルと、HLB値が13~15であるポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルとの組み合わせを含む、請求項1または2に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
(D)成分が、
2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸と、
ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、POE(C10-18)アルキルエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種または2種以上のモノマーと、
のコポリマーである、請求項1または2に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記皮膚外用剤の総質量を基準として、
(A)成分の含有率が5~14質量%、
である、請求項1または2に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
前記皮膚外用剤の総質量を基準として、
(B)成分の含有率が0.03~11.5質量%、
である、請求項1または2に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
前記皮膚外用剤の総質量を基準として、
(C)成分の含有率が0.26~3質量%、
である、請求項1または2に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
前記皮膚外用剤の総質量を基準として、
(D)成分の含有率が0.3~1.8質量%、
である、請求項1または2に記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
[(D)成分の含有量]/[(A)成分の含有量]の比が、0.02~0.16である、請求項1または2に記載の皮膚外用剤。
【請求項11】
(B)成分が、極性油と非極性油との組み合わせである、請求項1または2に記載の皮膚外用剤。
【請求項12】
(F)ジグリセリン以外の多価アルコールをさらに含む、請求項1または2に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に適用したときに高い保湿効果を発揮し、また長期間にわたってしっとり感を持続できる皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多価アルコールは保湿機能に優れたものであることが知られており、各種の化粧料や洗浄料などの皮膚外用剤に用いられている。しかし、高い保湿効果を得るために多価アルコールを皮膚外用剤に多量に配合すると、肌に適用した後にべたつき感が発生することがあった。このために、保湿効果とべたつき感抑制とがトレードオフの関係となり、より満足感の高い化粧料を得ることが難しかった。
【0003】
また、皮膚外用剤を皮膚に適用したとき、配合成分が肌に浸透することのほか、皮膚上に保護膜が形成されたような感触(膜感)が得られることがある。このような膜感が得られる場合には、保湿効果が持続する傾向にあり、膜感が得られる皮膚外用剤も望まれている。
【0004】
このような背景から、保湿効果、しっとり感、肌への馴染み、さっぱり感に優れた皮膚外用剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-222650号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上記したような課題に鑑みて完成されたものであり、皮膚に適用したときに肌に迅速に馴染み、べたつきが少ない上、高い保湿効果を発揮し、また長期間にわたってしっとり感を持続できる皮膚外用剤を提供することを目的とするものである。
【0007】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]
(A)ジグリセリン、
(B)油、
(C)2種類以上の、HLB値が13~15である非イオン性界面活性剤の組み合わせ、
(D)2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸またはその塩を構造中に含むポリマー、および
(E)水
を含んでなる皮膚外用剤。
[2]
(B)成分が極性油である、[1]に記載の皮膚外用剤。
[3]
(B)成分のIOBが 0.5以下である、[1]または[2]に記載の皮膚外用剤。
[4]
(C)成分が、HLB値が13~15であるポリオキシアルキレン脂肪酸グリセリルと、HLB値が13~15であるポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルとの組み合わせを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の皮膚外用剤。
[5]
(D)成分が、
2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸と、
ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、POE(C10-18)アルキルエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種または2種以上のモノマーと、
のコポリマーである、[1]~[4]のいずれかに記載の皮膚外用剤。
[6]
前記皮膚外用剤の総質量を基準として、
(A)成分の含有率が5~14質量%、
である、[1]~[5]のいずれかに記載の皮膚外用剤。
[7]
前記皮膚外用剤の総質量を基準として、
(B)成分の含有率が0.03~11.5質量%、
である、[1]~[6]のいずれかに記載の皮膚外用剤。
[8]
前記皮膚外用剤の総質量を基準として、
(C)成分の含有率が0.26~3質量%、
である、[1]~[7]のいずれかに記載の皮膚外用剤。
[9]
前記皮膚外用剤の総質量を基準として、
(D)成分の含有率が0.3~1.8質量%、
である、[1]~[8]のいずれかに記載の皮膚外用剤。
[10]
[(D)成分の含有量]/[(A)成分の含有量]の比が、0.02~0.16である、[1]~[9]のいずれかに記載の皮膚外用剤。
[11]
(B)成分が、極性油と非極性油との組み合わせである、[1]~[10]のいずれかに記載の皮膚外用剤。
[12]
(F)ジグリセリン以外の多価アルコールをさらに含む、[1]~[11]のいずれかに記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、皮膚に適用したときに肌に迅速に馴染み、べたつきが少ない上、高い保湿効果を発揮し、また長期間にわたってしっとり感を持続できる皮膚外用剤が提供される。
【発明の具体的説明】
【0009】
[皮膚外用剤]
本発明による皮膚外用剤は、
(A)ジグリセリン、
(B)油、
(C)2種類以上の、HLB値が13~15である非イオン性界面活性剤の組み合わせ、
(D)2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸またはその塩を構造中に含むポリマー、および
(E)水
を必須成分を含んでなるものである。以下、これらの必須成分、および併用できる追加成分について説明する。
[(A)ジグリセリン]
本発明による皮膚外用剤は、ジグリセリン(以下、(A)成分ということがある)を含んでなる。ジグリセリンは、2個のグリセリンが脱水縮合した構造を有し、4つの水酸基を有する多価アルコールである。ジグリセリンは化粧料、医薬部外品等の分野において利用されるものであり、本発明においてもそれらの中から任意に選択することができる。
【0010】
ジグリセリンは、多価アルコールの一つであり、保湿機能を有することが知られている。しかしながら、本発明の皮膚外用剤用において、ジグリセリンは後述する成分との組み合わせによって、優れた保湿機能を発揮する上に、さらにべたつき感を悪化させることなく、しっとり感や膜感を改良する効果を発揮する。
【0011】
本発明による皮膚外用剤において、ジグリセリンの含有率は求められる特性や皮膚外用剤の用途に応じて任意に調整することができるが、(A)成分の含有率は、皮膚外用剤の総質量を基準として、5~14質量%であることが好ましく、6~13質量%であることがより好ましい。
[(B)油]
本発明による皮膚外用剤は、油(以下、(B)成分ということがある)を含んでなる。油は、極性油または非極性油のいずれであってもよい。
【0012】
極性油としては、エステル油や高級脂肪酸の一部が挙げられるが、エステル油が特に好ましい。また、極性油のうち、IOB値が0.5以下であるものが好ましく、0.4以下であるものがより好ましい。
【0013】
ここで、IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、p.11~17、三共出版、1984年発行参照)。
【0014】
本発明による皮膚外用剤に用いることができる極性油としては、以下のものが挙げられる。
オレイン酸(IOB値=0.42)、
イソステアリン酸(IOB値=0.43)、
ミリスチン酸イソプロピル(IOB値=0.18)、
パルミチン酸オクチル(IOB値=0.13)、
パルミチン酸イソプロピル(IOB値=0.16)、
ステアリン酸ブチル(IOB値=0.14)、
ラウリン酸ヘキシル(IOB値=0.17)、
ミリスチン酸ミリスチル(IOB値=0.11)、
オレイン酸デシル(IOB値=0.11)、
イソノナン酸イソノニル(IOB値=0.20)、
イソノナン酸イソトリデシル(IOB値=0.15)、
エチルヘキサン酸セチル(IOB値=0.13)、
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(IOB値=0.35)、
コハク酸ジエチルヘキシル(IOB値=0.32)、
ジステアリン酸グリコール(IOB値=0.16)、
ジイソステアリン酸グリセリル(IOB値=0.29)、
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB値=0.25)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB値=0.28)、
トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB値=0.16)、
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)(IOB値=0.35)、
トリオクタン酸トリメチロールプロパン(IOB値=0.33)、
トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB値=0.16)、
アジピン酸ジイソブチル(IOB値=0.46)、
N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル(IOB値=0.29)、
アジピン酸2-ヘキシルデシル(IOB値=0.16)、
セバシン酸ジイソプロピル(IOB値=0.40)、
オクチルメトキシシンナメート(IOB値=0.28)、
オリーブ油(IOB値=0.16)、
ヒマシ油(IOB値=0.43)、
デシルテトラデカノール(IOB値=0.21)、
オクチルドデカノール(IOB値=0.26)、
オレイルアルコール(IOB値=0.28)、
パルミチン酸2-エチルヘキシル(IOB値=0.13)、
エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル(IOB値=0.2)、
トリイソステアリン(IOB値=0.16)、
ジピバリン酸トリプロピレングリコール(「ジピバリン酸PPG-3」と称する場合がある。)(IOB値=0.52)、
サリチル酸オクチル(IOB=0.60)、
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(IOB値=0.33)
等が挙げられる。これらのうち、エチルヘキサン酸セチル(IOB値=0.13)、パルミチン酸オクチル(IOB値=0.13)、またはトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(IOB値=0.33)が特に好ましい。これらの極性油は単独で、または二種以上組み合わせて使用することができる。
【0015】
本発明による皮膚外用剤は、(B)成分として、非極性油を含むことができる。しかしながら、本発明において(B)成分が非極性油を含む場合には、極性油と非極性油とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0016】
このような非極性油としては、任意のものを採用することができるが、例えば、イソドデカン、ジメチコン、水添ポリデセン、ミネラルオイル、ウンデカン、トリデカン、水添ポリイソブテン、イソヘキサデカン、水添ポリイソブテン、ワセリン、スクワラン、シリコーン油、ジフェニルジメチコン、フェニルトリメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、メチコン、ハイドロゲンジメチコン、カプリリルメチコン、およびPCAジメチコン等が挙げられる。非極性油はこれらからなる群から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
本発明による皮膚外用剤において、(B)成分の含有率は、皮膚外用剤の総質量を基準として、0.03~11.5質量%であることが好ましく、0.05~10質量%であることがより好ましい。
【0018】
[(C)非イオン性界面活性剤]
本発明による皮膚外用剤は、非イオン性界面活性剤(以下、(C)成分ということがある)を含んでなる。本発明において、(C)成分は2種類以上の、種類の異なる非イオン性界面活性剤を組み合わせて用いる。ここで種類の異なる非イオン性界面活性剤の組み合わせとは、例えば炭化水素鎖の長さや、ケン化価が異なるものではなく、基本的な骨格が異なる非イオン性界面活性剤の組み合わせをいう。非イオン性界面活性剤の種類としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレナルキルフェニルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、レシチン、サポニンなどが挙げられる。非イオン性界面活性剤を一種類のみ用いた場合には、十分な効果が得られないことがある。界面活性剤の組み合わせを用いることで、十分な乳化性能を確保し、さらに皮膚外用剤の肌への馴染みの速さを調整することができる。
【0019】
本発明による皮膚外用剤には、これらのうちから2種類以上を選択して用いることができるが、例えばグリセリン脂肪酸エステルのひとつであるポリオキシアルキレン脂肪酸グリセリルと、ソルビタン脂肪酸エステルのひとつであるポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルとの組み合わせが好ましい。
【0020】
ポリオキシアルキレン脂肪酸グリセリルとしては、例えば、POE-グリセリンモノステアレート、POE-グリセリンモノイソステアレート、POE-グリセリントリイソステアレート等のPOE-モノオレエート等が挙げられ、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンモノステアレート、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンテトラオレエート等が挙げられる。
【0021】
2種類の非イオン性界面活性剤の質量配合比は、1:9~9:1の範囲であることが好ましいが、界面活性剤の種類によって、効果が強く発現する範囲が異なる。例えばポリオキシアルキレン脂肪酸グリセリルとポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルとを用いる場合、その質量配合比は、2:8~4:6であることが好ましい。
【0022】
また、非イオン性界面活性剤のそれぞれのHLBが13~15であることが好ましい。HLBがこの範囲内であると、皮膚外用剤の外観の透明性が高くなり、組成物の質感が向上する。
【0023】
本発明による皮膚外用剤において、(C)成分の含有率は、皮膚外用剤の総質量を基準として、0.26~3.0質量%であることが好ましく、0.3~2.0質量%であることがより好ましい。ここで、含有率は非イオン性界面活性剤全体の含有率である。
【0024】
[(D)2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸またはその塩を構造中に含むポリマー]
本発明による皮膚外用剤は、特定のポリマー(以下、(D)成分ということがある)を含んでなる。(D)成分は、2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸(「アクリロイルジメチルタウリン酸」とも呼ばれる。以下、AMPSということがある)またはその塩を構造中に含んでいる。(D)成分は、皮膚外用剤を肌に迅速になじませ、しっとり感を長期間にわたって維持し、さらに膜感を与える効果をもたらすものと考えられる。これらの改良効果は、ポリマーに含まれる、AMPSに由来する構造によってもたらされると感がられ、ポリマーの主たる構造の形状は特に限定されない。しかしながら、入手のしやすさや皮膚外用剤の安全性などの観点から、(i)2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸と、(ii)ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、POE(C10-18)アルキルエーテル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種または2種以上のモノマーと、のコポリマーであることが好ましい。このコポリマーは本発明の効果を損なわない範囲でそのほかのモノマーを含んでもよい。
【0025】
このようなポリマーとしては、AMPS(塩)ホモポリマー、AMPS(塩)/ビニルピロリドン共重合体、AMPS(塩)/ジメチル(メタ)アクリルアミド共重合体、AMPS(塩)/(メタ)アクリル酸アミド共重合体、AMPS(塩)/(メタ)アクリル酸ナトリウム共重合体、AMPS(塩)/POE(C10-18)アルキルエーテル(メタ)アクリレート共重合体等が例示される。本発明では中でもAMPS(塩)/ビニルピロリドン共重合体、AMPS/POE(C10-18)アルキルエーテル(メタ)アクリレート共重合体、AMPS(塩)/(メタ)アクリル酸ナトリウム共重合体等が好ましく用いられ、ここでPOE(C10-18)アルキルエーテル(メタ)アクリレートとしてはPOEベヘニルエーテルメタクリレート、POEステアリルエーテルメタクリレート等が好ましく用いられる。これらのコポリマーは架橋されていてもよく、あるいは架橋されていなくてもよい。
【0026】
(D)成分の好ましい具体例としては、
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ステアレス-25)クロスポリマー
等が挙げられる。
【0027】
上記(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマーは「Aristoflex AVC」(Clariant社製)等として、
上記(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマーは「Aristoflex HMB」(Clariant社製)等として、
上記(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ステアレス-25)クロスポリマーは「Aristoflex HMS」(Clariant社製)等として、
それぞれ市販されており、これらを好適に用いることができる。(C)成分は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
本発明による皮膚外用剤において、(D)成分の含有率は、皮膚外用剤の総質量を基準として、0.3~1.8質量%であることが好ましく、0.5~1.75質量%であることがより好ましい。
【0029】
また、本発明による効果は、各成分の組み合わせによって得られるものと考えられるが、本発明の効果は、特に[(D)成分の含有量]/[(A)成分の含有量]の比が、0.02~0.16であるときに顕著に発現する傾向があるので、この範囲とすることが好ましい。
【0030】
[(E)水]
本発明による皮膚外用剤は、上記の成分に加えて、更に水を含む。水としては、化粧料、医薬部外品等に使用される水を使用することができ、例えば、精製水、イオン交換水、水道水等を使用することができる。
【0031】
[その他の成分]
本発明による皮膚外用剤は、上記した(A)~(E)成分に加えて、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分を配合することができる。
【0032】
そのような、その他の成分の一つとして、多価アルコール(以下、(F)成分ということがある)が挙げられる。ここで、本願発明における(F)成分は、(A)成分であるジグリセリンとは異なるものである。(F)成分は、本発明による皮膚外用剤において、主に保湿効果を付与する機能を奏する。本発明による皮膚外用剤をハンドクリームやスキンクリームなどに応用する場合には、保湿効果が高いことが有利である。このような多価アルコールとしては、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、グルコース、ソルビトール、マルチトール、スクロース、ラフィノース、ヘキシレングリコール、1,2-ペンタンジオール、およびトレハロースなどが挙げられる。
【0033】
本発明による皮膚外用剤が(F)成分を含む場合、(F)成分の含有率は、皮膚外用剤の総質量を基準として、5~14質量%配合することができ、7~14質量%であることが好ましい。
【0034】
本発明による皮膚外用剤は、上記した以外の、皮膚外用剤に通常使用される成分を含むことができる。そのようなその他の成分として、例えば、粉末成分、高級アルコール、高級脂肪酸、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、多価アルコール以外の保湿剤、水溶性高分子、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調製剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等が挙げられる。
【0035】
本発明による皮膚外用剤の剤形は、特に限定されず、非乳化製剤又は乳化製剤のいずれであってもよい。また、乳化製剤とする場合は、水中油型乳化製剤または油中水型乳化製剤のいずれであってもよい。ただし、使用感に優れた水中油型乳化製剤とすることが好ましい。また、液状製剤、乳液状製剤、またはクリーム状製剤等のいずれの剤型を採用することもできる。
【実施例0036】
本発明を諸例を用いて説明すると以下のとおりである。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。また、含有率は特に断りのない限り総量に対する質量%である。
【0037】
[実施例1~12および比較例1~11]
表1および2に示される含有率となるように各成分を配合して皮膚外用剤を調製した。
【0038】
評価方法
30代から40代の女性で官能評価の訓練を受け、一定の基準で評価が可能は専門パネルを5名選出した。その専門パネル5名が、各例の皮膚外用剤を肌に塗り広げ、
(a)塗布中の馴染みの速さ、
(b)塗布後のしっとり感、
(c)塗布後のべたつきのなさ、
(d)塗布後の膜感、および
(e)塗布後のしっとり感の持続感
について、使用感を評価した。それぞれの評価項目の評価基準は、A(非常によかった)~G(非常に悪かった)の7段階評価とした。それぞれ評価結果が、A~D評価であれば、合格である。
【0039】
【表1】
*1: KF-96L-1.5CS(商品名、信越化学工業株式会社製)
*2: KF-96A-6T(商品名、信越化学工業株式会社製)
【0040】
【表2】