(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000831
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】異物排出装置、異物排出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A01M 1/00 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
A01M1/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099776
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 直登志
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121DA62
2B121DA63
2B121DA70
2B121EA14
2B121FA14
(57)【要約】
【課題】車室内に進入した虫などの異物を、より速やかに車室外へ排出する。
【解決手段】車両の車室内の異物を車室外へ排出する異物排出装置1は、車両の乗員Dから異物排出の動作を指示する排出指示を取得する指示取得部13と、窓制御装置3に車両窓5の開閉を指示する窓動作指示部14と、車両の空調装置4に動作を指示する空調指示部15と、を備え、指示取得部が上記排出指示を取得したときに、窓動作指示部は、少なくとも一つの車両窓を開け、空調指示部は、空調装置が備えるファンの送風量を増加させ、及び又は空調装置が備える外気導入口を開く。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内の異物を車室外へ排出する異物排出装置であって、
前記車両の乗員から異物排出の動作を指示する排出指示を取得する指示取得部と、
前記車両の窓の開閉動作を制御する窓制御装置に前記窓の開閉を指示する窓動作指示部と、
前記車両の空調装置に動作を指示する空調指示部と、
を備え、
前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、
前記窓動作指示部は、前記窓制御装置に指示して前記車両の少なくとも一つの窓を開け、
前記空調指示部は、前記空調装置に指示して、前記空調装置が備えるファンの送風量を増加させ、及び又は前記空調装置が備える外気導入口を開く、
異物排出装置。
【請求項2】
前記窓動作指示部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記窓制御装置に指示して、前記少なくとも一つの窓を全開状態とならない範囲で部分的に開ける、
請求項1に記載の異物排出装置。
【請求項3】
前記車両は、前席窓と後席窓とを備え、
前記窓動作指示部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記窓制御装置に指示して、前記少なくとも一つの窓として前記後席窓を開ける、
請求項1に記載の異物排出装置。
【請求項4】
前記窓動作指示部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記前席窓が開いているときは、前記窓制御装置に指示して前記前席窓を閉める、
請求項3に記載の異物排出装置。
【請求項5】
前記異物は虫であって、
虫を誘引する波長の光を発する照明装置の動作を制御する照明制御部を備え、
前記照明装置は、前記車室内の内面に前記波長の光を投射する投光装置であり、
前記照明制御部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記照明装置に指示して、前記車室の内面のうち前記窓動作指示部が開けた前記窓の近傍に、前記光を投射する、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の異物排出装置。
【請求項6】
前記車室内に配された撮影装置から前記車室内の画像を取得する画像取得部を備え、
前記照明制御部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、
前記画像取得部が取得した画像に基づき、前記照明装置に指示して、前記異物である虫と前記窓動作指示部が開けた前記窓との間の位置に、前記光を投射する、
請求項5に記載の異物排出装置。
【請求項7】
前記異物は虫であって、
虫を誘引する波長の光を発する照明装置の動作を制御する照明制御部を備え、
前記照明装置は、前記車室内において前記窓の近傍に配された一つ又は複数の光源を含み、
前記照明制御部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記照明装置に指示して、前記窓動作指示部が開けた前記窓の近傍に配された前記光源を発光させる、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の異物排出装置。
【請求項8】
前記車室内に配された撮影装置から前記車室内の画像を取得する画像取得部を備え、
前記照明装置は、前記車室内の内面に、前記窓に向かって配列された複数の光源を含み、
前記照明制御部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、
前記画像取得部が取得した画像に基づき、前記照明装置に指示して、前記異物である虫と前記窓動作指示部が開けた前記窓との間の位置に配されている前記光源を発光させる、
請求項7に記載の異物排出装置。
【請求項9】
車両の車室内の異物を車室外へ排出する異物排出装置のコンピュータが実行する異物排出方法であって、
前記車両の乗員から異物排出の動作を指示する排出指示を取得する指示取得ステップと、
前記車両の窓の開閉動作を制御する窓制御装置に前記窓の開閉を指示する窓動作指示ステップと、
前記車両の空調装置に動作を指示する空調指示ステップと、
を有し、
前記指示取得ステップにおいて前記乗員からの前記排出指示を取得したことに応じて、
前記窓動作指示ステップでは、前記窓制御装置に指示して前記車両の少なくとも一つの窓を開け、
前記空調指示ステップでは、前記空調装置に指示して、前記空調装置が備えるファンの送風量を増加させ、及び又は前記空調装置が備える外気導入口を開く、
異物排出方法。
【請求項10】
車両の車室内の異物を車室外へ排出する異物排出装置のコンピュータを、
前記車両の乗員から異物排出の動作を指示する排出指示を取得する指示取得部、
前記車両の窓の開閉動作を制御する窓制御装置に前記窓の開閉を指示する窓動作指示部、および、
前記車両の空調装置に動作を指示する空調指示部、
として機能させるプログラムであって、
前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、
前記窓動作指示部は、前記窓制御装置に指示して前記車両の少なくとも一つの窓を開け、
前記空調指示部は、前記空調装置に指示して、前記空調装置が備えるファンの送風量を増加させ、及び又は前記空調装置が備える外気導入口を開く、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に進入した虫などの異物を車室外へ排出する異物排出装置、異物排出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて予防安全技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、予防安全技術においては、車両運転者の注意を運転操縦に集中させるべく、車室内に進入した虫などの異物を速やかに排出することが課題となり得る。
【0005】
特許文献1には、車内に侵入した虫の位置を特定して、その虫を速やかに窓から車外に追い出す虫追い出し装置が開示されている。この装置では、撮像手段が撮影された車内の画像から車室内の虫の位置を特定し、その位置に近い窓の開閉を行うことにより、虫を車室外へ追い出す。
しかしながら、虫の位置に近い窓を開けただけでは、必ずしも車室外への虫の移動を誘導できない場合があり得る。
【0006】
本願は上記課題の解決のため、車室内に進入した虫などの異物を、より速やかに車室外へ排出することを目的としたものである。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様は、車両の車室内の異物を車室外へ排出する異物排出装置であって、前記車両の乗員から異物排出の動作を指示する排出指示を取得する指示取得部と、前記車両の窓の開閉動作を制御する窓制御装置に前記窓の開閉を指示する窓動作指示部と、前記車両の空調装置に動作を指示する空調指示部と、を備え、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記窓動作指示部は、前記窓制御装置に指示して前記車両の少なくとも一つの窓を開け、前記空調指示部は、前記空調装置に指示して、前記空調装置が備えるファンの送風量を増加させ、及び又は前記空調装置が備える外気導入口を開く、異物排出装置である。
本発明の他の態様によると、前記窓動作指示部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記窓制御装置に指示して、前記少なくとも一つの窓を全開状態とならない範囲で部分的に開ける。
本発明の他の態様によると、前記車両は、前席窓と後席窓とを備え、前記窓動作指示部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記窓制御装置に指示して、前記少なくとも一つの窓として前記後席窓を開ける。
本発明の他の態様によると、前記窓動作指示部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記前席窓が開いているときは、前記窓制御装置に指示して前記前席窓を閉める。
本発明の他の態様によると、前記異物は虫であって、虫を誘引する波長の光を発する照明装置の動作を制御する照明制御部を備え、前記照明装置は、前記車室内の内面に前記波長の光を投射する投光装置であり、前記照明制御部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記照明装置に指示して、前記車室の内面のうち前記窓動作指示部が開けた前記窓の近傍に、前記光を投射する。
本発明の他の態様によると、前記車室内に配された撮影装置から前記車室内の画像を取得する画像取得部を備え、前記照明制御部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記画像取得部が取得した画像に基づき、前記照明装置に指示して、前記異物である虫と前記窓動作指示部が開けた前記窓との間の位置に、前記光を投射する。
本発明の他の態様によると、前記異物は虫であって、虫を誘引する波長の光を発する照明装置の動作を制御する照明制御部を備え、前記照明装置は、前記車室内において前記窓の近傍に配された一つ又は複数の光源を含み、前記照明制御部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記照明装置に指示して、前記窓動作指示部が開けた前記窓の近傍に配された前記光源を発光させる。
本発明の他の態様によると、前記車室内に配された撮影装置から前記車室内の画像を取得する画像取得部を備え、前記照明装置は、前記車室内の内面に、前記窓に向かって配列された複数の光源を含み、前記照明制御部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記画像取得部が取得した画像に基づき、前記照明装置に指示して、前記異物である虫と前記窓動作指示部が開けた前記窓との間の位置に配されている前記光源を発光させる。
本発明の他の態様は、車両の車室内の異物を車室外へ排出する異物排出装置のコンピュータが実行する異物排出方法であって、前記車両の乗員から異物排出の動作を指示する排出指示を取得する指示取得ステップと、前記車両の窓の開閉動作を制御する窓制御装置に前記窓の開閉を指示する窓動作指示ステップと、前記車両の空調装置に動作を指示する空調指示ステップと、を有し、前記指示取得ステップにおいて前記乗員からの前記排出指示を取得したことに応じて、前記窓動作指示ステップでは、前記窓制御装置に指示して前記車両の少なくとも一つの窓を開け、前記空調指示ステップでは、前記空調装置に指示して、前記空調装置が備えるファンの送風量を増加させ、及び又は前記空調装置が備える外気導入口を開く、異物排出方法である。
本発明の他の態様は、車両の車室内の異物を車室外へ排出する異物排出装置のコンピュータを、前記車両の乗員から異物排出の動作を指示する排出指示を取得する指示取得部、前記車両の窓の開閉動作を制御する窓制御装置に前記窓の開閉を指示する窓動作指示部、および、前記車両の空調装置に動作を指示する空調指示部、として機能させるプログラムであって、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記窓動作指示部は、前記窓制御装置に指示して前記車両の少なくとも一つの窓を開け、前記空調指示部は、前記空調装置に指示して、前記空調装置が備えるファンの送風量を増加させ、及び又は前記空調装置が備える外気導入口を開く、プログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車室内に進入した虫などの異物を、より速やかに車室外へ排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る異物排出装置の適用例である車両の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る異物排出装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、異物排出装置における処理の手順を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、車両に搭載される照明装置の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、車両に搭載される照明装置の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る異物排出装置1の適用例である車両2の構成を示す図である。車両2に搭載された異物排出装置1は、車両2の車室内の異物Sを車室外へ排出する。異物Sは、本実施形態では、例えば、蝦、ハエ、テントウ虫などの虫又は昆虫(以下、単に虫という)である。
【0011】
異物排出装置1は、車両2に搭載された、車両2の車両窓の開閉動作を制御する窓制御装置3、車両2の車室内への空気の導入を制御する空調装置4と協働して、異物Sを車室外へ排出する。窓制御装置3は、車両窓として、車両2の左右の前席窓5a、後席窓5b、あるいは車室天井に設けられたサンルーフ5cの開閉状態を検知する共に、これらの車両窓の開閉動作を制御する。以下、前席窓5a、後席窓5b、およびサンルーフ5cを総称して車両窓5ともいうものとする。
【0012】
異物排出装置1は、さらに、虫を誘引する波長の光を車室内に発する車載の照明装置6、及び又は車両2の車室内を撮像する車載の撮像装置であるカメラ7と協働して、異物Sである虫を排出してもよい。照明装置6は、例えば、
図4に示すように、捕虫器などに用いられるランプと、光偏向器と、を備えて、当該ランプから出力される光を車両2の車室の内面(例えば、車室の内壁など)の任意の位置に投射する投光装置である。
【0013】
図2は、異物排出装置1の構成を示す図である。異物排出装置1は、プロセッサ10と、メモリ11と、を有する。メモリ11は、例えば、揮発性及び又は不揮発性の半導体メモリ、及び又はハードディスク装置等により構成される。
【0014】
プロセッサ10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを備えるコンピュータである。プロセッサ10は、プログラムが書き込まれたROM(Read Only Memory)、データの一時記憶のためのRAM(Random Access Memory)等を有する構成であってもよい。そして、プロセッサ10は、機能要素又は機能ユニットとして、指示取得部13と、窓動作指示部14と、空調指示部15と、画像取得部16と、照明制御部17と、と、を備える。
【0015】
プロセッサ10が備えるこれらの機能要素は、例えば、コンピュータであるプロセッサ10がメモリ11に記憶されたプログラム12を実行することにより実現される。なお、プログラム12は、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、プロセッサ10が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0016】
指示取得部13は、車両2の乗員Dから異物排出の動作を指示する排出指示を取得する。本実施形態では、乗員Dは、例えば、車両2の運転者である。排出指示は、例えば、車両2に設けられたステアリングスイッチなどの操作スイッチ(不図示)の操作、車載マイクロフォン(不図示)により入力される音声コマンド、及び又は、後述する画像取得部16がカメラ7から取得する画像から検出され得る上記乗員Dのジェスチャーなどにより入力され得る。上記ジェスチャーは、例えば、車室内において虫を追い払う手や腕の動きであり得る。指示取得部13は、従来技術に従い、音声認識処理により上記音声コマンドを取得し、及び又は画像認識処理により乗員Dの上記ジェスチャーを認識して、排出指示を取得するものとすることができる。
【0017】
窓動作指示部14は、車両2が備える窓制御装置3に指示して、前席窓5a、後席窓5b、及び又はサンルーフ5cなどの車両窓5の開閉を指示する。本実施形態では、特に、窓動作指示部14は、指示取得部13が乗員Dからの排出指示を取得したときに、窓制御装置3に指示して、車両2の少なくとも一つの車両窓5を開ける。車両窓5を開ける際には、窓動作指示部14は、当該車両窓5を、全開状態とならない範囲で部分的に開けるものとしてもよい。
【0018】
上記少なくとも一つの車両窓5は、車両2の後席窓5bであり得る。窓動作指示部14は、上記少なくとも一つの車両窓5として車両2の後席窓5bを開けるときは、車両2の前席窓5aを閉じるものとしてもよい。
【0019】
空調指示部15は、車両2の空調装置4に動作を指示する。本実施形態では、特に、空調指示部15は、指示取得部13が乗員Dからの排出指示を取得したときに、空調装置4に指示して、空調装置4が備えるファンの送風量を増加させ、及び又は空調装置4が備える外気導入口を開く。
【0020】
画像取得部16は、車両2の車室内に配された撮影装置であるカメラ7から、車室内の画像を取得する。取得される画像は、例えば、映像などの動画像、または所定時間間隔の静止画像であり得る。
【0021】
照明制御部17は、指示取得部13が乗員Dからの排出指示を取得したときに、照明装置6に指示して、車室の内面のうち窓動作指示部14が開けた車両窓5の近傍(例えば、車両窓5の周囲の一部)に、虫を誘引する波長の光を投射させる。この場合において、照明制御部17は、画像取得部16が取得した画像に基づいて、車室内における虫の位置を認識し、照明装置6に指示して、窓動作指示部14が開けた車両窓5と虫との間の位置(例えば、中間位置)に、上記虫を誘引する波長の光を投射するものとしてもよい。車室内の画像に基づく虫の位置の認識は、従来技術に従い、例えば種々の虫のテンプレート画像を用いた画像マッチング処理等により行われるものとすることができる。照明制御部17は、虫が移動するにつれて、上記光の車室内面上の位置を移動させるものとすることができる。
【0022】
上記の構成を有する異物排出装置1は、乗員Dからの排出指示を取得したときに、車両窓5の少なくとも一つを開けるだけでなく、空調装置4に指示して送風量を増加させ及び又は外気導入口を開く。このため、異物排出装置1では、車室内において、上記開いた少なくとも一つの車両窓に向かう気流を確立して、虫などの異物Sを上記車両窓から効果的且つ速やかに車室外へ排出することができる。
【0023】
また、異物排出装置1では、上記少なくとも一つの車両窓5を開ける際には、当該車両窓を全開状態とならない範囲で部分的に開けるので、車両窓5の開口面積が少なく、且つ当該車両窓5における車室外へ向かう気流の速度が増加する。このため、車室外へ異物Sを排出することに加えて、開けた車両窓5を介して車室外から他の異物Sが進入することも、効果的に抑制することができる。
【0024】
また、異物排出装置1では、上記少なくとも一つの車両窓5として後席窓5bを開けることにより、車室内に浮遊又は飛翔する異物Sを、乗員Dである運転者が着座する前席周辺から速やかに後席方向へ移動させ得る。このため、異物排出装置1では、運転者において上記異物Sの存在により運転操縦への注意力が削がれてしまう危険性を、速やかに排除することができる。また、異物排出装置1では、排出指示が取得されたときは前席窓5aを閉めることで、車両後方へ向かう気流を増大させて異物Sの移動をより速やかに行うことができる。
【0025】
また、異物排出装置1では、開けた車両窓5の近傍(例えば、開けた車両窓5の周囲)に虫を誘引する光を投射するので、
図4の図示点線で示すように、車室内の虫を上記車両窓5に向かって飛翔または移動するよう誘導して、異物Sである虫を更に速やかに車室外へ排出することができる。また、異物排出装置1では、車室内面のうち開けた車両窓5と虫との間の位置に上記光を投射することで、異物Sである虫を、車室内面に沿って、開いた車両窓5の方向へ更に効果的に誘導して、速やかに車室外へ排出することができる。
【0026】
次に、異物排出装置1における動作の手順について説明する。
図3は、異物排出装置1のコンピュータであるプロセッサ10が実行する異物排出方法の処理の手順を示すフロー図である。本処理は、繰り返し実行される。なお、本処理と並行して、プロセッサ10の画像取得部16は、カメラ7が撮影する車両2の車室内の画像を照明制御部17に送信するものとする。
【0027】
処理を開始すると、まず、指示取得部13は、車両2の乗員Dから排出指示を取得したか否かを判断する(S100)。そして、排出指示を取得しないときは(S100、NO)、指示取得部13は、ステップS100を繰り返し、排出指示が取得されるのを待機する。
【0028】
一方、排出指示が取得されたときは(S100、YES)、窓動作指示部14は、窓制御装置3に指示して、前席窓5aが開いていれば前席窓5aを閉じたのち(S102)、少なくとも一つの車両窓としての後席窓5bを、部分的に開ける(S104)。ステップS104に続いて又は並行して、空調指示部15は、空調装置4に指示して、空調装置4が備えるファンの送風量を増加させ、及び又は空調装置4が備える外気導入口を開く(S106)。
【0029】
次に、照明制御部17は、窓動作指示部14が開けた車両窓5(本実施形態では後席窓5b)の近傍に(または、当該車両窓と虫との間の車室内面の位置に)、虫を誘引する波長の光を投射して(S108)、本処理を終了する。
【0030】
ここで、上記のステップS100、S104、およびS106は、それぞれ、本開示における指示取得ステップ、窓動作指示ステップ、および空調指示ステップに相当する。
【0031】
[他の実施形態]
他の実施形態として、窓動作指示部14は、画像取得部16が取得した画像に基づいて車室内における異物Sの位置を認識し、その異物Sに最も近い車両窓を開けるものとしてもよい。
【0032】
また、照明制御部17は、画像取得部16が取得した画像に基づいて車室内に複数の虫が認識されるときは、窓動作指示部14が開けた車両窓5に最も近い虫と当該車両窓5との間の車室内面の位置に、虫を誘引する光を投射するものとしてもよい。
【0033】
照明装置6は、上述した実施形態では投光装置であるものとしたが、これに限らず、虫を誘引する波長の光を発する任意の装置であればよい。例えば、照明装置6は、車両2の車室の内面において車両窓5の近傍(例えば、車両窓5の周囲)に配された、一つ又は複数の光源を含むものとすることができる。この場合には、照明制御部17は、指示取得部13が乗員Dからの排出指示を取得したときに、上記照明装置6に指示して、窓動作指示部14が開けた車両窓5の近傍に配された上記光源を発光させればよい。
【0034】
あるいは、照明装置6は、例えば、
図5に示す照明装置61のように、車両2の車室内の内面に、車両窓5(図示の例では、交差起窓5b)に向かって配列された複数の光源61a(例えば、LED光源)を含むものとしてもよい。この場合には、照明制御部17は、例えば、指示取得部13が乗員Dからの排出指示を取得したときに、画像取得部16が取得した画像に基づき、照明装置61に指示して、異物Sである虫と窓動作指示部14が開けた車両窓5との間の位置に配されている上記光源61aを、虫の移動に伴って、順次、発光させるものとすることができる。なお、
図5において、発光している光源61aを図示ハッチングにより示している。照明制御部17は、例えば、図示ハッチングで示す光源61aから始めて、異物Sである虫の移動に伴い、発光箇所を後席窓5bにより近い光源61aへと順次移動させて発光させるものとすることができる。
【0035】
車室内における虫の位置認識は、画像取得部16において行うものとしてもよい。
また、
図1に示す車両2における各装置のレイアウトは一例であって、各装置は、その目的に応じて車両2内の任意の位置に配され得る。例えば、照明装置6およびカメラ7は、それぞれ、複数の照明装置6および複数のカメラ7により構成されてもよく、それら複数の照明装置6および複数のカメラ7は、車室内における光の照射および画像取得において死角を生じないように、車両2内において分散して配され得る。
【0036】
なお、本発明は上記の実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
例えば、上述した実施形態では、異物Sとして虫を対象としたが、異物Sは、虫に限らず、車外から車室内に進入する排気ガス等の気体、悪臭を含む気体、車室内におけるタバコの煙など、車室内雰囲気中に浮遊または飛翔し得る任意の異物であり得る。なお、異物Sが虫でない場合には、上述した照明制御部17は無くてもよい。
【0037】
[上記実施形態によりサポートされる構成]
上述した実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0038】
(構成1)車両の車室内の異物を車室外へ排出する異物排出装置であって、前記車両の乗員から異物排出の動作を指示する排出指示を取得する指示取得部と、前記車両の窓の開閉動作を制御する窓制御装置に前記窓の開閉を指示する窓動作指示部と、前記車両の空調装置に動作を指示する空調指示部と、を備え、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記窓動作指示部は、前記窓制御装置に指示して前記車両の少なくとも一つの窓を開け、前記空調指示部は、前記空調装置に指示して、前記空調装置が備えるファンの送風量を増加させ、及び又は前記空調装置が備える外気導入口を開く、異物排出装置。
構成1の異物排出装置によれば、車室内において少なくとも一つの車両窓に向かう気流を確立して、車室内に進入した虫などの異物を上記車両窓から効果的且つ速やかに車室外へ排出することができる。
【0039】
(構成2)前記窓動作指示部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記窓制御装置に指示して、前記少なくとも一つの窓を全開状態とならない範囲で部分的に開ける、構成1に記載の異物排出装置。
構成2の異物排出装置によれば、車両窓を全開状態とならない範囲で部分的に開けるので、車両窓の開口面積が少なく、且つ当該車両窓から車室外へ向かう気流の速度が増加する。その結果、構成3の異物排出装置によれば、車室外へ異物を排出することに加えて、車室外から他の異物が進入することも効果的に抑制することができる。
【0040】
(構成3)前記車両は、前席窓と後席窓とを備え、前記窓動作指示部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記窓制御装置に指示して、前記少なくとも一つの窓として前記後席窓を開ける、構成1に記載の異物排出装置。
構成3の異物排出装置によれば、車室内に浮遊又は飛翔する異物を、運転者が着座する前席周辺から速やかに後席方向へ移動させ得るので、運転者において上記異物の存在により運転操縦への注意力が削がれてしまう危険性を、速やかに排除することができる。
【0041】
(構成4)前記窓動作指示部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記前席窓が開いているときは、前記窓制御装置に指示して前記前席窓を閉める、構成2または3に記載の異物排出装置。
構成4の異物排出装置によれば、前席窓を閉めることで、車両後方へ向かう気流を増大させて後席方向への異物の移動をより速やかに行うことができる。
【0042】
(構成5)前記異物は虫であって、虫を誘引する波長の光を前記車室内に投射する照明装置の動作を制御する照明制御部を備え、前記照明装置は、前記車室内の内面に前記波長の光を投射する投光装置であり、前記照明制御部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記照明装置に指示して、前記車室の内面のうち前記窓動作指示部が開けた前記窓の近傍に、前記光を投射する、構成1ないし4のいずれかに記載の異物排出装置。
構成5の異物排出装置によれば、車室内の虫を開いた車両窓に向かって飛翔するよう誘導して、異物である虫を更に速やかに車室外へ排出することができる。
【0043】
(構成6)前記車室内に配された撮影装置から前記車室内の画像を取得する画像取得部を備え、前記照明制御部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記画像取得部が取得した画像に基づき、前記照明装置に指示して、前記異物である虫と前記窓動作指示部が開けた前記窓との間の位置に、前記光を投射する、構成5に記載の異物排出装置。
構成6の異物排出装置によれば、異物である虫を、車室内面に沿って、開いた車両窓の方向へ更に効果的に誘導して、速やかに車室外へ排出することができる。
【0044】
(構成7)前記異物は虫であって、虫を誘引する波長の光を前記車室内に投射する照明装置の動作を制御する照明制御部を備え、前記照明装置は、前記車室内において前記窓の近傍に配された一つ又は複数の光源を含み、前記照明制御部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記照明装置に指示して、前記窓動作指示部が開けた前記窓の近傍に配された前記光源を発光させる、構成1ないし4のいずれかに記載の異物排出装置。
構成7の異物排出装置によれば、車室内の虫を開いた車両窓に向かって飛翔するよう誘導して、異物である虫を更に速やかに車室外へ排出することができる。
【0045】
(構成8)前記車室内に配された撮影装置から前記車室内の画像を取得する画像取得部を備え、前記照明装置は、前記車室内の内面に、前記窓に向かって配列された複数の光源を含み、前記照明制御部は、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記画像取得部が取得した画像に基づき、前記照明装置に指示して、前記異物である虫と前記窓動作指示部が開けた前記窓との間の位置に配されている前記光源を発光させる、構成7に記載の異物排出装置。
構成8の異物排出装置によれば、異物である虫を、車室内面に沿って、開いた車両窓の方向へ更に効果的に誘導して、速やかに車室外へ排出することができる。
【0046】
(構成9)車両の車室内の異物を車室外へ排出する異物排出装置のコンピュータが実行する異物排出方法であって、前記車両の乗員から異物排出の動作を指示する排出指示を取得する指示取得ステップと、前記車両の窓の開閉動作を制御する窓制御装置に前記窓の開閉を指示する窓動作指示ステップと、前記車両の空調装置に動作を指示する空調指示ステップと、を有し、前記指示取得ステップにおいて前記乗員からの前記排出指示を取得したことに応じて、前記窓動作指示ステップでは、前記窓制御装置に指示して前記車両の少なくとも一つの窓を開け、前記空調指示ステップでは、前記空調装置に指示して、前記空調装置が備えるファンの送風量を増加させ、及び又は前記空調装置が備える外気導入口を開く、異物排出方法。
構成9の異物排出方法によれば、車室内において少なくとも一つの車両窓に向かう気流を確立して、車室内に進入した虫などの異物を上記車両窓から効果的且つ速やかに車室外へ排出することができる。
【0047】
(構成10)車両の車室内の異物を車室外へ排出する異物排出装置のコンピュータを、前記車両の乗員から異物排出の動作を指示する排出指示を取得する指示取得部、前記車両の窓の開閉動作を制御する窓制御装置に前記窓の開閉を指示する窓動作指示部、および、前記車両の空調装置に動作を指示する空調指示部、として機能させるプログラムであって、前記指示取得部が前記乗員からの前記排出指示を取得したときに、前記窓動作指示部は、前記窓制御装置に指示して前記車両の少なくとも一つの窓を開け、前記空調指示部は、前記空調装置に指示して、前記空調装置が備えるファンの送風量を増加させ、及び又は前記空調装置が備える外気導入口を開く、プログラム。
構成10のプログラムによれば、車室内に進入した虫などの異物を上記車両窓から効果的且つ速やかに車室外へ排出することができる異物排出装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…異物排出装置、2…車両、3…窓制御装置、4…空調装置、5…車両窓、5a…前席窓、5b…後席窓、5c…サンルーフ、6、61…照明装置、61a…光源、7…カメラ、10…プロセッサ、11…メモリ、12…プログラム、13…指示取得部、14…窓動作指示部、15…空調指示部、16…画像取得部、17…照明制御部、D…乗員D、S…異物。