(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008310
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B60C19/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110070
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(72)【発明者】
【氏名】勝野 弘之
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA39
3D131BB04
3D131BC31
3D131DA01
3D131LA20
3D131LA24
(57)【要約】
【課題】サイズが大きいタイヤのサイドウォール部のタイヤ外表面側に取り付けられた電子装置の、耐久性を向上させることができる、タイヤを提供する。
【解決手段】本発明のタイヤ10は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に隣接して配置された、ビードフィラー5と、サイドウォール部2のカーカス4よりタイヤ外表面10o側に取り付けられた、電子装置6と、を備えるタイヤ10であって、タイヤ10は、リム径の呼びが、20~57インチである場合、電子装置6は、ビードコア11の上端11aからのタイヤ径方向距離が、ビードフィラー5のタイヤ径方向高さの105~200%である位置に、配置されており、リム径の呼びが、57インチより大きい場合、電子装置6は、ビードコア11の上端11aからのタイヤ径方向距離が、ビードフィラー5のタイヤ径方向高さの105~330%である位置に、配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコアを有する、1対のビード部と、当該1対のビード部間を1対のサイドウォール部及びトレッド部を介して延在する、少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に隣接して配置された、ビードフィラーと、前記サイドウォール部の前記カーカスよりタイヤ外表面側に取り付けられた、電子装置と、を備えるタイヤであって、
前記タイヤは、適用リムのリム径の呼びが、20インチ以上であり、
前記タイヤの適用リムのリム径の呼びが、20~57インチである場合、前記電子装置は、前記ビードコアの上端からのタイヤ径方向距離が、前記ビードコアの上端からの前記ビードフィラーのタイヤ径方向高さの105~200%である位置に、配置されており、
前記タイヤの適用リムのリム径の呼びが、57インチより大きい場合、前記電子装置は、前記ビードコアの上端からのタイヤ径方向距離が、前記ビードコアの上端からの前記ビードフィラーのタイヤ径方向高さの105~330%である位置に、配置されていることを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記タイヤは、適用リムのリム径の呼びが、20~57インチであり、
前記電子装置は、前記ビードコアの上端からのタイヤ径方向距離が、前記ビードコアの上端からの前記ビードフィラーのタイヤ径方向高さの110~180%である位置に、配置されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記タイヤは、適用リムのリム径の呼びが、57インチより大きく、
前記電子装置は、前記ビードコアの上端からのタイヤ径方向距離が、前記ビードコアの上端からの前記ビードフィラーのタイヤ径方向高さの150~280%である位置に、配置されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記電子装置は、前記サイドウォール部の外表面からの深さが、0.5~5.0mmである位置に、配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記電子装置は、タイヤ軸線方向視において、タイヤセリアル表示位置と重なるタイヤ周方向位置に、配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タイヤにRFタグ等の電子装置を取り付けた構成が、知られている。例えば、特許文献1には、サイドウォールに電子装置が取り付けられたタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特にタイヤサイズひいてはタイヤに負荷される荷重が大きい場合、特にタイヤのサイドウォール部のタイヤ最大幅位置付近がタイヤ幅方向外側に大きく撓むことによる曲げ歪の影響が大きく、サイドウォール部に取り付けた電子装置の耐久性に、改善の余地があることが判った。
【0005】
そこで、本発明は、サイズが大きいタイヤのサイドウォール部のタイヤ外表面側に取り付けられた電子装置の、耐久性を向上させることができる、タイヤを提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により、解決される。
【0007】
(1)本発明のタイヤは、
ビードコアを有する、1対のビード部と、当該1対のビード部間を1対のサイドウォール部及びトレッド部を介して延在する、少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に隣接して配置された、ビードフィラーと、前記サイドウォール部の前記カーカスよりタイヤ外表面側に取り付けられた、電子装置と、を備えるタイヤであって、
前記タイヤは、適用リムのリム径の呼びが、20インチ以上であり、
前記タイヤの適用リムのリム径の呼びが、20~57インチである場合、前記電子装置は、前記ビードコアの上端からのタイヤ径方向距離が、前記ビードコアの上端からの前記ビードフィラーのタイヤ径方向高さの105~200%である位置に、配置されており、
前記タイヤの適用リムのリム径の呼びが、57インチより大きい場合、前記電子装置は、前記ビードコアの上端からのタイヤ径方向距離が、前記ビードコアの上端からの前記ビードフィラーのタイヤ径方向高さの105~330%である位置に、配置されていることを特徴とする。
本発明のタイヤによれば、サイズが大きいタイヤのサイドウォール部のタイヤ外表面側に取り付けられた電子装置の、耐久性を向上させることができる。
【0008】
(2)上記(1)のタイヤにおいて、
前記タイヤは、適用リムのリム径の呼びが、20~57インチであり、
前記電子装置は、前記ビードコアの上端からのタイヤ径方向距離が、前記ビードコアの上端からの前記ビードフィラーのタイヤ径方向高さの110~180%である位置に、配置されていることが好ましい。
この場合、上記リム径の呼びのタイヤにおいて、電子装置の耐久性をより向上させることができる。
【0009】
(3)上記(1)のタイヤにおいて、
前記タイヤは、適用リムのリム径の呼びが、57インチより大きく、
前記電子装置は、前記ビードコアの上端からのタイヤ径方向距離が、前記ビードコアの上端からの前記ビードフィラーのタイヤ径方向高さの150~280%である位置に、配置されていることも好ましい。
この場合、上記リム径の呼びのタイヤにおいて、電子装置の耐久性をより向上させることができる。
【0010】
(4)上記(1)~(3)のいずれかのタイヤにおいて、
前記電子装置は、前記サイドウォール部の外表面からの深さが、0.5~5.0mmである位置に、配置されていることが好ましい。
この場合、タイヤ走行時に電子装置が外傷を受けにくい。
【0011】
(5)上記(1)~(4)のいずれかのタイヤにおいて、
前記電子装置は、タイヤ軸線方向視において、タイヤセリアル表示位置と重なるタイヤ周方向位置に、配置されていることが好ましい。
この場合、簡易な構成で、電子装置の配置されている位置を把握し易くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サイズが大きいタイヤのサイドウォール部のタイヤ外表面側に取り付けられた電子装置の、耐久性を向上させることができる、タイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の1実施形態に係るタイヤの、タイヤ幅方向概略断面図である。
【
図2】本発明の1実施形態に係るタイヤに用いられ得る電子装置の一例を概略的に示す、平面図である。
【
図3】本発明の1実施形態に係る一例のタイヤにおける電子装置の配置位置を説明するための、タイヤ幅方向模式的一部断面図である。
【
図4】本発明の1実施形態に係る他の例のタイヤにおける電子装置の配置位置を説明するための、タイヤ幅方向模式的一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るタイヤは、例えば、ORタイヤ(建設・鉱山車両用タイヤ)等として、好適に利用できる。
【0015】
以下、本発明に係るタイヤの実施形態について、図面を参照しつつ例示説明する。
各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
本明細書において、「タイヤ周方向」とは、タイヤの回転軸(軸線)を中心にタイヤが回転する方向をいい、「タイヤ径方向」とは、タイヤの回転軸と直交する方向をいい、「タイヤ幅方向」とは、タイヤの回転軸と平行な方向をいう。一部の図面では、タイヤ周方向を符号「CD」で示し、タイヤ径方向を符号「RD」で示し、タイヤ幅方向を符号「WD」で示している。
また、本明細書において、タイヤ径方向に沿ってタイヤの回転軸に近い側を「タイヤ径方向内側」と称し、タイヤ径方向に沿ってタイヤの回転軸から遠い側を「タイヤ径方向外側」と称する。
また、本明細書において、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLに近い側を「タイヤ幅方向内側」と称し、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLから遠い側を「タイヤ幅方向外側」と称する。
さらに、本明細書において、「タイヤ周方向に延びる」とは、少なくともタイヤ周方向成分を有して延びることをいう。即ち、「タイヤ周方向に延びる」とは、タイヤ周方向に沿う向きに(即ち、タイヤ周方向に対して0°の角度で、タイヤ周方向に対して傾斜せずに)延びていてもよく、タイヤ周方向に対して90°以外の角度で傾斜して(即ち、タイヤ周方向に対して0°超90°以外の傾斜角度で、タイヤ周方向に対して傾斜して)延びていてもよいことを、意味する。
さらにまた、本明細書において、「タイヤ幅方向に延びる」とは、少なくともタイヤ幅方向成分を有して延びることをいう。即ち、「タイヤ幅方向に延びる」とは、タイヤ幅方向に沿う向きに(即ち、タイヤ幅方向に対して0°の角度で、タイヤ幅方向に対して傾斜せずに)延びていてもよく、タイヤ幅方向に対して90°以外の角度で傾斜して(即ち、タイヤ幅方向に対して0°超90°以外の傾斜角度で、タイヤ幅方向に対して傾斜して)延びていてもよいことを、意味する。
【0016】
以下、特に断りのない限り、各要素の位置関係や寸法等は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で測定されるものとする。また、タイヤを適用リムに装着し、タイヤに規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した状態で、路面と接触することになる、タイヤの全周にわたる外周面を「トレッド踏面」といい、トレッド踏面のタイヤ幅方向の端を、「トレッド端」という。
【0017】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association, Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指すが、これらの産業規格に記載のないサイズの場合は、空気入りタイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に前述の産業規格に記載されるサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられ得る。
【0018】
本明細書において、「規定内圧」とは、前述したJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、前述した産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。また、本明細書において、「最大荷重」とは、前述した産業規格に記載されている適用サイズのタイヤにおける最大負荷能力に対応する荷重、又は、前述した産業規格に記載のないサイズの場合には、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重を意味する。
【0019】
図1は、本発明の1実施形態に係るタイヤ10を説明するための図面であり、当該タイヤ10の、タイヤ幅方向概略断面図である。
なお、本発明の実施形態のタイヤ10は、適用リムのリム径の呼びが20インチ以上である限り、任意の種類のタイヤとして構成されてよい。
ここで、本明細書において、「適用リムのリム径の呼び」(以下、単に「リム径の呼び」ともいう。)とは、タイヤ内径ひいては前述の適用リムのリム径であって、より具体的には、一般にタイヤのサイドウォール部に表示されているタイヤサイズの表示中、適用リムのリム径の呼称(インチ)、即ち、適用リムのリム径をインチで表したものを指す。例えば、タイヤサイズが「29.5R25」であれば、リム径の呼びは「25インチ」であり、タイヤサイズが「18.00R33」であれば、リム径の呼びは「33インチ」であり、タイヤサイズが「46/90R57」であれば、リム径の呼びは「57インチ」であり、タイヤサイズが「59/80R63」であれば、リム径の呼びは「63インチ」である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ10は、ビード部1と、サイドウォール部2と、トレッド部3と、を有する。
ビード部1は、タイヤ10をリムに装着したときに、タイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向外側においてリムに接するように構成された部分である。トレッド部3は、タイヤ10のうち、1対のトレッド端どうしの間のタイヤ幅方向部分である。サイドウォール部2は、1対のビード部1とトレッド部3との間の部分である。本明細書において、サイドウォール部2とビード部1とを総称して、タイヤサイド部8と呼ぶ場合がある。なお、上記サイドウォール部2とは、少なくとも後述するベルト7よりタイヤ径方向内側の部分であって、ビード部1よりタイヤ径方向外側の部分を指す。
【0021】
より具体的に、本実施形態のタイヤ10は、ビードコア11を有する、1対のビード部1と、当該1対のビード部1間を1対のサイドウォール部2及びトレッド部3を介して延在する、少なくとも1枚のカーカスプライ41からなるカーカス4と、ビードコア11のタイヤ径方向外側に隣接して配置された、ビードフィラー5と、サイドウォール部2のカーカス4よりタイヤ外表面10o側に取り付けられた、電子装置6と、を備えている。
【0022】
本実施形態において、タイヤ10は、1対のビード部1を有している。当該1対のビード部1のそれぞれは、ビードコア11を有している。各ビードコア11は、対応するビード部1に埋設されている。ビードコア11は、周囲をゴムにより被覆されている複数のビードワイヤを備えているものとすることができる。但し、ビードコア11は、1本のビードワイヤからなっていてもよい。ビードワイヤは、金属(例えばスチール)から構成されると好適である。ビードワイヤは、例えば、モノフィラメント又は撚り線からなるものとすることができる。なお、ビードワイヤは、有機繊維やカーボン繊維等から構成されてもよい。
本例において、
図1に示すように、ビードコア11のタイヤ幅方向断面形状は、正6角形状であるが、ビードコア11の当該断面形状は、他の形状、例えば、正6角形状以外の多角形状、円形状等であってもよい。
【0023】
本実施形態において、タイヤ10は、少なくとも1枚のカーカスプライ41からなるカーカス4を有している。当該少なくとも1枚のカーカスプライ41ひいてはカーカス4は、1対のビード部1間を1対のサイドウォール部2及びトレッド部3を介して延在している。より具体的に、カーカスプライ41ひいてはカーカス4は、一方のビード部1から一方のサイドウォール部2、トレッド部3及び他方のサイドウォール部2を介して、他方のビード部1まで、トロイド状に延在している。
本例において、
図1に示すように、カーカスプライ41(ひいては、カーカス4)は、1対のビード部1のビードコア11間に位置するプライ本体部41a(ひいては、カーカス本体部4a)と、プライ本体部41a(カーカス本体部4a)の両端から各ビードコア11の廻りでタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返されたプライ折返し部41b(ひいては、カーカス折返し部4b)と、を備えている。但し、カーカスプライ41(カーカス4)は、プライ折返し部41b(カーカス折返し部4b)を備えていなくてもよい。
なお、本例において、
図1に示すように、カーカス4は、1枚のカーカスプライ41から構成されている。しかし、カーカス4は、複数枚のカーカスプライ41から構成されていてもよい。
【0024】
各カーカスプライ41は、1本又は複数本のカーカスコードと、カーカスコードを被覆する被覆ゴムと、を含んでいる。カーカスコードは、例えば、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。
本実施形態において、カーカスプライ41のカーカスコードは、スチール製である。より具体的に、各カーカスプライ41が含む複数本のカーカスコードは、それぞれスチールから構成されている。カーカスコードがスチール製であることにより、サイズが大きいタイヤでカーカスを簡易なラジアル構造としても、十分な強度が得られる。
また、本実施形態において、カーカス4は、ラジアル構造である。即ち、カーカス4のカーカスプライ41が含む各カーカスコードは、実質的にタイヤ幅方向に沿って(即ち、トレッド部3のタイヤ径方向外方からの投影視において、タイヤ幅方向に対して実質的に0°の角度で傾斜せずに)、延びている。
但し、カーカスコードは、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されていてもよい。また、カーカス4は、バイアス構造であってもよい。
【0025】
本実施形態において、タイヤ10は、ビードフィラー5を有している。
図1に示すように、ビードフィラー5は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に隣接して配置されている。換言すれば、
図1、
図3及び
図4に示すように、ビードフィラー5は、対応する各ビードコア11のタイヤ径方向外側の部分に接触しており、少なくとも各ビードコア11の上端11aからタイヤ径方向外側に当該ビードフィラー5の上端5aまで、延在している。
図1、
図3及び
図4の各例において、ビードフィラー5は、タイヤ径方向外側に向かって、先細状に延びている。ビードフィラー5は、例えば硬質のゴム製である。
なお、
図1の例のように、ビードコア11のタイヤ径方向外側、特には、ビードコア11のタイヤ径方向外側であって、例えばカーカス本体部4aとカーカス折返し部4bとの間の位置に、例えば互いに硬さが異なる、異なる材質の複数(例えば、2つ)のゴム部材がタイヤ径方向に沿って積層配置される場合があるが、本明細書において、「ビードフィラー」とは、ビードコア11のタイヤ径方向外側に隣接して(即ち、接触して)配置されている、1つのゴム部材のみを指す。
【0026】
本実施形態において、タイヤ10は、電子装置6を有している。
ここで、本明細書において、「電子装置」とは、電子部品を備える装置であって、例えば、外部との通信機能を有するものを指す。
【0027】
図2は、本発明の1実施形態に係るタイヤに用いられ得る電子装置の一例を概略的に示す、平面図である。
図2の例で、電子装置6は、記憶部等を有するICチップ6aと、電磁波を送信及び/又は受信する1つ以上(図示の例では、2つ)のアンテナ6bと、を有する、RFタグである。RFタグは、一般に、RFID(Radio Frequency Identification)タグとも呼ばれるものである。
本例において、アンテナ6bは、ICチップ6aに接続され、直線状、波状、又は螺旋状(図示の例では、螺旋状)に延びている。本例では、2本のアンテナ6bが、ICチップ6aから互いに反対方向に延びている。但し、アンテナ6bは、ICチップ6aから一方側だけに延びていてもよい。また、本例では、2本のアンテナ6bは、後述するICチップ6aの長辺方向LDの長さが同じである。但し、2本のアンテナは、ICチップ6aの長辺方向LDの長さが互いに異なっていてもよい。
本例において、ICチップ6aは、平面視略矩形状の厚さの薄い薄板状を呈している。ここで、ICチップ6aの「厚さ」とは、平面視でICチップ6aの長辺に沿う方向に平行な方向(以下、「ICチップ(6a)の長辺方向」ともいう。)LDと、平面視でICチップ6aの短辺に沿う方向に平行な方向(以下、「ICチップ(6a)の短辺方向」ともいう。)SDと、の双方に垂直な方向の厚さを指す。ICチップ6aは、例えば、任意の既知のメモリである記憶部及び任意の既知のプロセッサである制御部を有している。ICチップ6aは、1つ以上のアンテナ6bで受信する電磁波により発生する誘導起電力により動作してもよい。即ち、電子装置6は、パッシブ型の通信装置であってもよい。或いは、電子装置6は、電池をさらに備え、自らの電力により電磁波を発生して通信可能であってもよい。即ち、電子装置6は、アクティブ型の通信装置であってもよい。ICチップ6aの制御部は、例えば、記憶部に記憶されたタイヤの製造管理、出荷管理、使用履歴管理等のデータを読み取る、或いは、記憶部にこれらのデータを書き込むことができる。
【0028】
本実施形態において、
図1に示すように、電子装置6(例えば、RFタグ)は、サイドウォール部2のカーカス4よりタイヤ外表面10o側に取り付けられている。ここで、本明細書において、「タイヤ外表面」とは、タイヤ内腔ではなく、タイヤの外部に面するタイヤの表面を指す。また、「サイドウォール部2のカーカス4よりタイヤ外表面10o側」とは、例えば、
図1に示す例のように、カーカス4がカーカス本体部4aとカーカス折返し部4bとを有している場合、カーカス本体部4a及びカーカス折返し部4bのいずれよりも、タイヤ外表面10o側であることを指す。電子装置6は、サイドウォール部2におけるカーカス4よりタイヤ外表面10o側に取り付けられている限り、サイドウォール部2内に埋め込まれていてもよいし、サイドウォール部2のタイヤ外表面10o上に取り付けられていてもよい。
図1の例では、電子装置6は、サイドウォール部2内に埋め込まれている。
電子装置6は、上記タイヤ外表面10o側に、例えば
図2に示したようなICチップ6aとアンテナ6bとからなる電子装置6そのものの状態のままで、取り付けられていてもよいし、電子装置6のICチップ6aにおける厚さ方向の両側をそれぞれ薄板状の被覆ゴムで覆った、電子装置積層体61として、取り付けられていてもよいし、電子装置6のICチップ6aにおける厚さ方向の一方側(下面側)を薄板状の被覆ゴムで、他方側(上面側)をやや厚いパッチゴムで覆った、電子装置積層体61として、取り付けられていてもよい。電子装置6又は電子装置6を内蔵する電子装置積層体61は、例えば、接着セメント等で加硫済みのタイヤ10のタイヤ外表面10o上に貼付されてもよいし、加硫済みのタイヤ10のタイヤ外表面10oに窪みが設けられて当該窪みに接着剤等で埋め込まれてもよいし、加硫前のタイヤ10(生タイヤ)に取り付けられてタイヤ10の加硫と同時に上記タイヤ外表面10o側に加硫接着により埋め込まれてもよい。
なお、
図1では電子装置6を内蔵する電子装置積層体61を簡略化して記載しているが、本実施形態において、電子装置6は、薄板状のICチップ6aにおける上下の面(表裏の面)がタイヤ外表面10oに沿うように(即ち、両者が略平行になるように)、上記タイヤ外表面10o側に取り付けられている。
【0029】
なお、
図1の例では、タイヤ10は、トレッド部3に、少なくとも1層(図示の例では、6層)のベルト層からなるベルト7を、さらに備えている。ベルト7は、カーカス4のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されている。各ベルト層は、1本又は複数本のベルトコードと、ベルトコードを被覆する被覆ゴムと、を含んでいる。ベルトコードは、例えば、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。ベルトコードは、金属(例えばスチール)から構成されていてもよいし、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されていてもよい。
また、図示の例で、トレッド部3におけるベルト7のタイヤ径方向外側には、トレッド踏面3aを形成するトレッドゴムが備えられている。トレッド踏面3aには、トレッドパターンが形成されている。当該トレッドパターンは、特に限定されない。
さらに、図示の例で、タイヤサイド部8におけるカーカス4のタイヤ幅方向外側には、タイヤサイド部8のタイヤ外表面10oを形成するサイドゴムが備えられている。また、図示の例で、サイドウォール部2には、タイヤ10の外観性の向上、耐カット性の向上、カーカス4の保護等のために、タイヤ10の最大幅位置を含むタイヤ径方向位置に、タイヤ10の外方に向かって平面上に突出するとともにタイヤ周方向に環状に延びる、一般にデコラインとも称される、突出部21が形成されている。
また、本実施形態のタイヤ10は、タイヤ内表面10iが、空気及び/又はガス低透過性のインナーライナー(特に図示せず)で構成されている。
【0030】
本実施形態において、タイヤ10は、適用リムのリム径の呼びが、20インチ以上である。即ち、本実施形態のタイヤ10は、サイズが大きい、大型のタイヤである。
なお、タイヤ10のリム径の呼びが20インチ以上である場合、ビード部1近傍の十分な強度を確保する観点から、ビードフィラー5の存在する領域(以下、「ビードフィラー領域」ともいう。)における、電子装置6を除く当該ビードフィラー領域の最大幅(以下、「ビードフィラー領域最大幅」ともいう。)は、30mm以上であることが好ましい。ここで、本明細書において、上記「ビードフィラー領域」とは、より具体的に、タイヤ幅方向断面上でタイヤ内表面10iに垂直な方向に視たときに、ビードフィラー5の存在する、タイヤ内表面10iからタイヤ外表面10oまでにわたる領域を指し、また、上記「ビードフィラー領域最大幅」とは、より具体的に、タイヤ幅方向断面上でタイヤ内表面10iに垂直な方向に上記ビードフィラー領域の幅を測った場合の、最大幅を指すものとする。
【0031】
以下、本実施形態におけるタイヤ外表面10o側に取り付けられる電子装置6の、より具体的な配置位置等について、説明する。
リム径の呼びが20インチ以上のサイズが大きいタイヤであっても、当該サイズの大きさによって、タイヤ10の内部寸法等、特に、後述するビードフィラー高さBH等が大きく異なる。そこで、以下では、当該サイズ(リム径の呼び)につき、2つのサイズに場合分けして説明する。
【0032】
<リム径の呼びが、20~57インチである場合>
図3は、本発明の1実施形態に係る一例のタイヤ10Aにおける電子装置6(
図1参照)の配置位置を説明するための、タイヤ幅方向模式的一部断面図である。より具体的に、
図3は、リム径の呼びが20~57インチであるタイヤ(以下、「第1サイズタイヤ」ともいう。)10Aの、サイドウォール部からビード部にかけての模式的断面図であり、説明の便宜上、ビードフィラー5の形状は簡略化して描かれており、また、カーカス4(
図1参照)は描かれていない。なお、第1サイズタイヤ10Aのサイズ(リム径の呼び)以外の構成は、基本的に前述した実施形態のタイヤ10と同じである。即ち、第1サイズタイヤ10Aは、前述の実施形態のタイヤ10の1種である。従って、以下では、適宜
図1~
図2で用いた符号も用いて説明する。
【0033】
第1サイズタイヤ10Aにおいて、即ち、タイヤ10のリム径の呼びが20~57インチである場合、ビードフィラー領域最大幅は、ビード部1近傍の十分な強度を確保する観点からは、30mm以上であることが好ましく、タイヤの重量増を抑制する等の観点からは、80mm以下であることが好ましい。
なお、第1サイズタイヤ10Aにおける、適用リムのリム径の呼びの例としては、例えば、25インチ、29インチ、33インチ、35インチ、49インチ、51インチ、57インチ等が挙げられる。
【0034】
本実施形態において、タイヤ10が第1サイズタイヤ10Aである場合(即ち、タイヤ10の、適用リムのリム径の呼びが、20~57インチである場合)、電子装置6(
図1参照)は、ビードコア11の上端11aからのタイヤ径方向距離が、ビードコア11の上端11aからのビードフィラー5のタイヤ径方向高さ(以下、単に「ビードフィラー高さ」ともいう。)BHの105~200%である位置に(言い換えれば、
図3に示すタイヤ径方向領域A1内に)、配置されている。ここで、「ビードコア11の上端11aからのタイヤ径方向距離が、ビードコア11の上端11aからのビードフィラー5のタイヤ径方向高さBHの105~200%である位置」とは、より具体的に、ビードコア11の上端11aからのタイヤ径方向距離がビードフィラー高さBHの105%であるタイヤ径方向位置と、当該タイヤ径方向位置よりタイヤ径方向外側であって、ビードコア11の上端11aからのタイヤ径方向距離がビードフィラー高さBHの200%であるタイヤ径方向位置と、の間のタイヤ径方向位置を、指す。
なお、本明細書において、電子装置6が、「(ある)位置に配置されている」とは、特に断りのない限り、アンテナ6bを含む電子装置6の少なくとも長手方向の中心が、当該位置に配置されていることを指す。
【0035】
<リム径の呼びが、57インチより大きい場合>
図4は、本発明の1実施形態に係る他の例のタイヤ10Bにおける電子装置6(
図1参照)の配置位置を説明するための、タイヤ幅方向模式的一部断面図である。より具体的に、
図4は、リム径の呼びが57インチより大きいタイヤ(以下、「第2サイズタイヤ」ともいう。)10Bの、サイドウォール部からビード部にかけての模式的断面図であり、説明の便宜上、ビードフィラー5の形状は簡略化して描かれており、また、カーカス4(
図1参照)は描かれていない。なお、第2サイズタイヤ10Bのサイズ(リム径の呼び)以外の構成も、上述の第1サイズタイヤ10Aと同様に、基本的に前述した実施形態のタイヤ10と同じである。即ち、第2サイズタイヤ10Bも、前述の実施形態のタイヤ10の1種である。従って、以下では、適宜
図1~
図2で用いた符号も用いて説明する。
【0036】
第2サイズタイヤ10Bにおいて、即ち、タイヤ10のリム径の呼びが57インチより大きい場合、ビードフィラー領域最大幅は、ビード部1近傍の十分な強度を確保する観点からは、80mmより大きいことが好ましく、重量増抑制の観点からは、140mm以下であることが好ましい。
なお、第2サイズタイヤ10Bにおける、適用リムのリム径の呼びの例としては、例えば、63インチが挙げられる。
【0037】
本実施形態において、タイヤ10が第2サイズタイヤ10Bである場合(即ち、タイヤ10の、適用リムのリム径の呼びが、57インチより大きい場合)、電子装置6(
図1参照)は、ビードコア11の上端11aからのタイヤ径方向距離が、ビードコア11の上端11aからのビードフィラー5のタイヤ径方向高さBHの105~330%である位置に(言い換えれば、
図4に示すタイヤ径方向領域A1内に)、配置されている。
【0038】
次に、上述した実施形態による作用効果について、説明する。
まず、本実施形態において、電子装置6は、サイドウォール部2のカーカス4よりタイヤ外表面10o側に取り付けられている。これにより、電子装置6がサイドウォール部2のカーカス4よりタイヤ内表面10i側、例えば、タイヤ内表面10i上に取り付けられている場合に比べ、電子装置6のタイヤ10の外部との十分な通信性が確保される。
次に、本実施形態において、タイヤ10は、適用リムのリム径の呼びが、20インチ以上であり、タイヤ10の適用リムのリム径の呼びが、20~57インチである場合(即ち、タイヤ10が第1サイズタイヤ10Aである場合)、電子装置6は、ビードコア11の上端11aからのタイヤ径方向距離が、ビードコア11の上端11aからのビードフィラー5のタイヤ径方向高さBHの105~200%である位置に、配置されている。これにより、第1サイズタイヤ10Aにおける、電子装置6の耐久性を向上させることができる。即ち、電子装置6が、曲げの中立軸となるサイドウォール部2のカーカス4より、タイヤ外表面10o側に配置されている場合、タイヤ幅方向断面視における曲げ歪による引張応力により、電子装置6が故障又は剥離されるおそれが高いことが判明した。そこで、第1サイズタイヤ10Aにおける当該タイヤ径方向の各位置における曲げ歪の値を、FEMによるシミュレーションにより算出した結果、上記タイヤ径方向距離がビードフィラー高さBHの105~200%である位置において当該曲げ歪の値が十分低くなる(例えば、10%以下)ことが判明したものである。上記タイヤ径方向距離がビードフィラー高さBHの105%より小さくても、200%より大きくても、電子装置6の十分な耐久性が得られない。
【0039】
なお、同様の観点から、タイヤ10は、適用リムのリム径の呼びが、20~57インチであり(即ち、タイヤ10は、第1サイズタイヤ10Aであり)、電子装置6は、ビードコア11の上端11aからのタイヤ径方向距離が、ビードコア11の上端11aからのビードフィラー5のタイヤ径方向高さBHの110~180%である位置に、配置されていることが好ましい。この場合、第1サイズタイヤ10Aにおいて、電子装置6の耐久性をより向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態において、タイヤ10は、適用リムのリム径の呼びが、20インチ以上であり、タイヤ10の適用リムのリム径の呼びが、57インチより大きい場合(即ち、タイヤ10が第2サイズタイヤ10Bである場合)、電子装置6は、ビードコア11の上端11aからのタイヤ径方向距離が、ビードコア11の上端11aからのビードフィラー5のタイヤ径方向高さBHの105~330%である位置に、配置されている。これにより、第2サイズタイヤ10Bにおける、電子装置6の耐久性を向上させることができる。即ち、前述の第1サイズタイヤ10Aの場合と同様に、第2サイズタイヤ10Bにおける、当該タイヤ径方向の各位置における曲げ歪の値を、FEMによるシミュレーションにより算出した結果、上記タイヤ径方向距離がビードフィラー高さBHの105~330%である位置において、当該曲げ歪の値が十分低くなる(例えば、10%以下)となることが判明したものである。上記タイヤ径方向距離がビードフィラー高さBHの105%より小さくても、330%より大きくても、電子装置6の十分な耐久性が得られない。
【0041】
なお、同様の観点から、タイヤ10は、適用リムのリム径の呼びが、57インチより大きく(即ち、タイヤ10は、第2サイズタイヤ10Bであり)、電子装置6は、ビードコア11の上端11aからのタイヤ径方向距離が、ビードコア11の上端11aからのビードフィラー5のタイヤ径方向高さBHの150~280%である位置に、配置されていることも好ましい。この場合、第2サイズタイヤ10Bにおいて、電子装置6の耐久性をより向上させることができる。
【0042】
以上より、本実施形態のタイヤ10によれば、サイズが大きいタイヤ10のサイドウォール部2のタイヤ外表面10o側に取り付けられた電子装置6の、耐久性を向上させることができる。
【0043】
以下、本実施形態のタイヤ10における、好適な構成や変形例等について、さらに説明する。
【0044】
本実施形態において、電子装置6は、サイドウォール部2の外表面からの深さが、0.5~5.0mmである位置に、配置されていると好適である。この場合、タイヤ走行時に、電子装置6が外傷を受けにくく、ひいては、電子装置6の耐久性をより向上させることができる。
なお、電子装置6が例えば
図2に示すようなRFタグである場合、薄板状のICチップ6aにおける上下の面(表裏の面)がタイヤ外表面10oに沿うように(即ち、両者が略平行になるように)、上記タイヤ外表面10o側に取り付けられ、当該ICチップ6aの厚さ方向の中心が上記深さ位置に配置されていてよい。
【0045】
本実施形態において、電子装置6は、タイヤ軸線方向視において、タイヤセリアル表示位置と重なるタイヤ周方向位置に、配置されていると好適である。特にサイズが大きいタイヤの場合、作業者が短時間で電子装置6が取り付けられているタイヤ周方向位置を把握することが難しく、当該位置を何らかの手段により予め表示しておくことが好ましいが、上記の構成によれば、通常タイヤサイド部8に刻印等により表示されているタイヤの製造番号等を示すセリアル表示を利用することにより、他の新たな特別の手段を用いることなく、簡易な構成で、電子装置6の配置されている位置を把握し易くすることができる。
なお、上記「電子装置6は、タイヤ軸線方向視において、タイヤセリアル表示位置と重なるタイヤ周方向位置に、配置」とは、電子装置6の少なくとも一部が当該位置と重なればよく、また、タイヤセリアル表示位置とタイヤ径方向には重ならずタイヤ周方向のみに重なる位置に配置されていてもよいことを意味するが、タイヤ周方向及びタイヤ径方向の双方に重なる位置に配置されていることが、より好ましい。また、上記の場合、電子装置6は、タイヤセリアル表示位置と重なるタイヤ周方向位置に、埋め込まれることにより、取り付けられることができる。
【0046】
本実施形態において、電子装置6が、例えば
図2に示すようなRFタグでありアンテナ6bを有する場合、タイヤ軸線方向視において、当該アンテナ6bがカーカスプライ41が含むカーカスコードの延在方向と交差する方向(好ましくは、当該延在方向と垂直な方向)に延びるように、電子装置6がタイヤ10に取り付けられていてもよい。カーカス4がラジアル構造であれば、この場合、電子装置6の長手方向の全体がサイドウォール部2の曲げ歪の影響を受けて大きく曲げられることが抑制され、電子装置6の耐久性をより向上させることができる。
【0047】
耐外傷性の観点から、本実施形態において、電子装置6は、タイヤ径方向におけるタイヤ最大幅位置(より具体的に、タイヤ径方向におけるタイヤ最大幅位置のうち最もタイヤ径方向内側の当該タイヤ径方向位置(さらに具体的に、例えば、
図3及び
図4において、平面状の突出部21の当該平面のタイヤ径方向内側端のタイヤ径方向位置))よりも、タイヤ径方向内側に配置されていることが好ましい。
【0048】
本実施形態において、上述した各例の電子装置6と同様の配置及び構成の電子装置6が、複数個、例えば、タイヤ周上の互いに異なる位置におけるタイヤ外表面10o側に取り付けられていてもよい。また、本実施形態において、少なくとも1つの、上述した各例の電子装置6と同様の配置及び構成の電子装置6と、少なくとも1つの、上述した各例の電子装置6とは異なる配置又は構成の電子装置とで、合わせて複数個の電子装置が、例えば、タイヤ周上の互いに異なる位置におけるタイヤ外表面10o側に取り付けられていてもよい。
これらの場合、当該複数個の電子装置のうち、1つ以上の当該電子装置がタイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向の一方の半部に配置され、1つ以上の当該電子装置がタイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向の他方の半部に配置され、これら複数個の電子装置は、タイヤ軸線方向視において、タイヤの回転軸(軸線)の位置を中心とした際に、タイヤ周方向で45°以上互いに離間するように配置されていると好適である。この場合、複数個の電子装置のうちのいずれか少なくとも1つの電子装置に故障や剥離が生じたとしても、他のいずれかの電子装置が機能を発揮したまま残存する可能性が高まり、ひいては、例えば、電子装置によりタイヤ10の情報を読み書きすることができなくなることを防止することができる。
【0049】
また、上記の場合、複数個の電子装置は、タイヤ周方向に等間隔に配置されていることが好ましい。このような配置によれば、タイヤ走行時における故障や剥離の原因となる事象の影響を平潤化して、いずれかの電子装置が機能を発揮したまま残存することをより一層確実にすることができるからである。なお、「タイヤ周方向に等間隔に配置」とは、電子装置がいずれのタイヤ幅方向半部に位置しているかを問わず、いずれか一方又は両方のそれぞれのタイヤ幅方向半部において等間隔に配置されていてもよいし、タイヤ軸線方向視において、両方のタイヤ幅方向半部を合わせて視たときに等間隔に配置されていてもよい。
【0050】
さらに、上記の場合、一方のタイヤ幅方向半部に配置された電子装置と、他方の半部に配置された電子装置とが、タイヤ周方向に交互に配列されていることが好ましい。このような配置によれば、一の電子装置に故障等の原因となる事象が生じた場合に、タイヤ周方向に隣接する他の電子装置が、上記一の電子装置とは異なるタイヤ幅方向半部に位置することとなるため、当該他の電子装置に故障の原因等となる事象の影響が及ぶのを極力避けることができるからである。
【0051】
また、上記の場合、一方のタイヤ幅方向半部に配置された電子装置の個数と他方のタイヤ幅方向半部に配置された電子装置の個数とが同数であることが好ましい。この場合、より一層、故障の原因となる事象の影響を平潤化することができる。
【0052】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。
例えば、上述の実施形態のタイヤ10は、タイヤ外表面10o側に取り付けられた上述した配置及び構成の電子装置6以外に、少なくとも1つの当該電子装置6と同様の又は異なる構成の電子装置が、タイヤ外表面10o側以外の場所に、取り付けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係るタイヤは、例えば、ORタイヤ(建設・鉱山車両用タイヤ)等として、好適に利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1:ビード部、 11:ビードコア、 11a:ビードコアの上端、
2:サイドウォール部、 21:突出部、
3:トレッド部、 3a:トレッド踏面、
4:カーカス、 4a:カーカス本体部、 4b:カーカス折返し部、
41:カーカスプライ、 41a:プライ本体部、 41b:プライ折返し部、
5:ビードフィラー、 5a:ビードフィラーの上端、
6:電子装置、 6a:ICチップ、 6b:アンテナ、 61:電子装置積層体、
7:ベルト、
8:タイヤサイド部、
10:タイヤ、 10A:タイヤ(第1サイズタイヤ)、
10B:タイヤ(第2サイズタイヤ)、 10i:タイヤ内表面、 10o:タイヤ外表面、
A1、A2:タイヤ径方向領域、 BH:ビードフィラー高さ、 CD:タイヤ周方向、
CL:タイヤ赤道面、 LD:長辺方向、 RD:タイヤ径方向、 SD:短辺方向、
WD:タイヤ幅方向