(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083110
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
H02P 9/00 20060101AFI20240613BHJP
F03D 9/25 20160101ALI20240613BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20240613BHJP
H02P 101/15 20150101ALN20240613BHJP
【FI】
H02P9/00 F
F03D9/25
H02K11/33
H02P101:15
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197442
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】517221310
【氏名又は名称】コアレスモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】津田 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】大桃 修一
(72)【発明者】
【氏名】木川 和也
(72)【発明者】
【氏名】白木 学
【テーマコード(参考)】
3H178
5H590
5H611
【Fターム(参考)】
3H178AA20
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB31
3H178DD12X
3H178DD22Z
5H590CA11
5H590CA14
5H590CC02
5H590CC18
5H590CC32
5H590CD01
5H590CE05
5H590EA07
5H590FA05
5H590FC14
5H590HA02
5H611BB02
5H611TT02
(57)【要約】
【課題】自然流体による発電電力が極小で有る場合でもバッテリーに充電できる発電装置を提供すること。
【解決手段】外力にて回転する羽根部と、該羽根部がロータ部と連動するよう取り付けられている発電機を備え、発電される出力をバッテリーに充電する装置である。前記発電機は複数の相で構成されたコイル部と、該コイル部に間隙をもって対向配置される永久磁石と、該永久磁石を固定したロータ部とを備えてなり、前記コイル部の前記各相は同数のコイル体で構成され、該複数コイル体はコイル体間の接続が直列及び/又は並列の切替によって複数段切替のパターンを有し、当該コイル体の接続に用いるスイッチ素子としてノーマリーオン型とノーマリーオフ型の2タイプを併用することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力にて回転する羽根部と、該羽根部がロータ部と連動するよう取り付けられている発電機を備え、発電される出力をバッテリーに充電する装置であって、前記発電機は複数の相で構成されたコイル部と、該コイル部に間隙をもって対向配置される永久磁石と、該永久磁石を固定したロータ部とを備えてなる発電装置において、前記コイル部の前記各相は同数のコイル体で構成され、該複数コイル体はコイル体間の接続が直列及び/又は並列の切替によって複数段切替のパターンを有し、当該コイル体の接続に用いるスイッチ素子としてノーマリーオン型とノーマリーオフ型の2タイプを併用することを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記各相において前記コイル体の全てが直列に接続される場合には前記ノーマリーオン型だけでコイル間を接続することを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
更に、発電電圧が前記バッテリー電圧より高い設定電圧を超えた場合にのみ電源がオンとなる制御装置を付設して成る請求項1に記載の発電装置。
【請求項4】
前記コイル体は非回転で、前記羽根部は前記ロータ周囲に一体に形成され、コアレスタイプであることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項5】
前記スイッチ素子はFETであり、前記ノーマリーオン型はデプレッション型、前記ノーマリーオフ型はエンハンスメント型を用いることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項6】
複数の相で構成されたコイル部と、該コイル部に間隙をもって対向配置される永久磁石と、該永久磁石を固定したロータ部とを備えてなる発電装置において、前記コイル部の前記各相は同数のコイル体で構成され、該複数コイル体はコイル体間の接続が直列及び/又は並列の切替によって複数段切替のパターンを有し、当該コイル体の直列接続に用いるスイッチ素子としてノーマリーオン型を用い、その他の接続に用いるスイッチ素子はノーマリーオフ型としてなることを特徴とする発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風力や水力のような自然の外力によって発電する発電装置に係り、特に風や水の流速が極微力である場合にも発電力を得るのに有効な発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンエネルギー源として風力や水力の自然エネルギー利用が実用されているが、自然流体はその強さが安定していない。そこで風力発電効率を高める為、従来から風力発電機におけるコイル回路の切替は知られている。
【0003】
特許文献1はバッテリー対応でコイル回路の切替を行っている。但し出力電圧の取り出し易さが望まれる。尚、切替が多段対応ではない。
【0004】
特許文献2はコアレスタイプの風力発電機と太陽光発電機を併用しており、その風力発電機の発電効率を上げる為に複数のDC/DCコンバータの切替を行っている。風力発電は微風から強風まで多様なので2段切替だけでは対応しきれないのでコイル回路切替に複数のDC/DCコンバータを併用している。これによって微風から強風まで対応して更に発電効率を最大化せんとしている。このように特許文献2は複数のDC/DCコンバータのような付帯設備が必要になっている。
【0005】
DC-DCコンバータを用いる場合、一般的には発電機とバッテリーの間に順次、全波整流器、DC/DCコンバータ、制御回路(DCDC制御、BMS(バッテリーマネージメントシステム))を配置しており、制御回路はバッテリーへの充電電流が最大となるようにDC/DCコンバータの出力電圧を制御している。つまり流体を受けて回転する羽根を用いて発電する発電機システムにおいて、従来は全波整流器とバッテリーの間にDC/DCコンバータが設けられており、そのコンバータとバッテリーの間にDC/DC制御やBMSのような制御回路を介在させており、バッテリーへ供給される電圧を昇圧等調整すべく制御していた。そうなると、DC/DCコンバータ及び制御回路は発電の有無によらず、一定の電力を消費する為、発電機への入力が小さい場合にはバッテリーへ充電できずに逆にバッテリー電流を消費してしまうことになる(DC/DCコンバータ自体も電力を消耗し、制御回路も電力を消耗してしまう)。そして発電電力が小さい場合にはバッテリーを切断する装置を付ければ装置が大型化することに加え、やはりバッテリーへは充電できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-197392号公報
【特許文献2】特開2011-114938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明者は可能ならDC/DCコンバータや制御回路を使用しないで済む発電装置を検討して本発明に至った。すなわち本発明の目的は自然流体による発電電力が極小で有る場合でもバッテリーに充電できる発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為、本発明の発電装置は、外力にて回転する羽根部と、該羽根部がロータ部と連動するよう取り付けられている発電機を備え、発電される出力をバッテリーに充電する装置であって、前記発電機は複数の相で構成されたコイル部と、該コイル部に間隙をもって対向配置される永久磁石と、該永久磁石を固定したロータ部とを備えてなる発電装置において、前記コイル部の前記各相は同数のコイル体で構成され、該複数コイル体はコイル体間の接続が直列及び/又は並列の切替によって複数段切替のパターンを有し、当該コイル体の接続に用いるスイッチ 素子としてノーマリーオン型とノーマリーオフ型の2タイプを併用することを特徴とする。
【0009】
尚、前記各相において前記コイル体の全てが直列に接続される場合には前記ノーマリーオン型だけでコイル間を接続することが望ましい。また、更に、発電電圧が前記バッテリー電圧より高い設定電圧を超えた場合にのみ電源がオンとなる制御装置を付設して成ることが望ましい。
【0010】
本発明は自然流体を用いる発電装置であればコアドにもコアレスにも適用可能であるが、コイル接続切替装置を用いるならインダクタンスの小さいコアレスモータやスロットレスタイプが向いている。コアレスモータは前記コイル体が非回転で、前記羽根部は前記ロータ周囲に一体に形成されている。
【0011】
ここで、スイッチ素子はFETのような半導体装置でも良いしリレー装置でも良い。FETを用いるならば前記ノーマリーオン型はデプレッション型(ゲート電圧が無いときにオンするタイプ)、前記ノーマリーオフ型(ゲート電圧が無いときにオフするタイプ)はエンハンスメント型を用いることになる。
【0012】
また、羽根以外の動力で回転する発電装置に用いることができ、この場合は、 複数の相で構成されたコイル部と、該コイル部に間隙をもって対向配置される永久磁石と、該永久磁石を固定したロータ部とを備えてなる発電装置において、前記コイル部の前記各相は同数のコイル体で構成され、該複数コイル体はコイル体間の接続が直列及び/又は並列の切替によって複数段切替のパターンを有し、当該コイル体の直列接続に用いるスイッチ素子としてノーマリーオン型を用い、その他の接続に用いるスイッチ素子はノーマリーオフ型としてなることようにすればよい。
【0013】
複数コイルの接続切替を行う装置類は、電圧が無い状態でスイッチが入ることが危惧されるし、使用スイッチが一種類に纏まらないので一般的には適用スイッチの全てにノーマルオフ型(エンハンスメント型)を用いるし、エンハンスメント型の方が広く普及されている。よって敢えてノーマリーオン型(デプレッション型)を併用した前例は見当たらない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の発電装置により、自然流体による発電電力が極小で有る場合でもバッテリーに充電できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例に係る発電装置の仕組みを説明する装置構成図である。
【
図2】
図1の実施例装置において使用コイルが各相2コイルの場合の配線説明図で、(a)は発電機内のコイル構成例、(b)はコイル接続切替装置のスイッチ構成例である。
【
図3】本発明を適用する風力発電装置例のシステム図である。
【
図4】
図3に示す装置の発電機部分の拡大図である。
【
図5】コアレス発電機とコアド発電機の特性対比説明図である。
【
図6】各相の使用コイルが4つの場合に想定されるコイル接続パターン図である。
【
図7】各相の使用コイルが4つの場合のスイッチ開閉例の説明図である。
【
図8】各相の使用コイルが4つの場合のスイッチ開閉例の説明図である。
【
図9】各相の使用コイルが4つの場合のスイッチ開閉例の説明図である。
【
図10】各相の使用コイルが4つの場合のスイッチ開閉例の説明図である。
【
図11】各相の使用コイルが4つの場合のスイッチ開閉例の説明図である。
【
図12】本発明のコイル接続切替装置で各相使用コイルを4つにした場合を例にして電圧~風速の関係を説明する特性図である。
【
図13】本発明を適用する風力発電装置の他の例の断面図である。
【
図14】
図1の実施例装置において使用コイルが各相5コイルの場合の配線説明図の内、発電機内のコイル構成例を示す。
【
図15】
図1の実施例装置において使用コイルが各相5コイルの場合の配線説明図の内、コイル接続切替装置のスイッチ構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の発電装置につき、実施例にて説明する。なお、以下は一つの実施例に過ぎず、技術思想が共通する限り実施例に限定されない。
図1は本発明の実施例に係る発電装置の仕組みを説明する装置構成図であり、風や水流等の自然流体の流れを受けて回転する羽根1が発電機2に回動一体に接続され、発電機2はU、V、Wの3相で成り、各相が複数のコイル(
図1例示では2つ)を備え、これらのコイル間の接続切替を行うコイル接続切替装置3が発電機2に付設されている。このコイル接続切替装置3はコイル間の接続を直列、並列、コイルの数によって全部直列、並列、並列の複数、並列と直列の組み合わせ等も選択肢で接続切り替える。
図1の例では各相に3つのスイッチが用いられ、V(電圧)に繋がる側のSvu、Svv、Svw、COMに繋がるScu、Scv、Scw、コイル間のStu、Stv、Stw(tはthroughの頭文字)を備えている。そして本実施例ではこのStu、Stv、Stwにノーマリーオンのスイッチ(ノーマリーオンはFETにするとデフレッション型になる)を使用し、残りのスイッチであるSvu、Svv、Svw、Scu、Scv、Scwにはノーマリーオフ(ノーマリーオフはFETではエンハンスメント型になる)を使用する。この
図1の実施例装置において使用コイルが各相2コイルの場合の配線説明図を
図2に示す。
図2の(a)は発電機内のコイル構成例、(b)はコイル接続切替装置3のスイッチ構成例である。
図2中のxは本例が3相なのでu、v、wに置き換えて読む。つまり(a)の各コイルからの引き出し線Lu1H、Lv1H、Lw1Hは(b)のLx1Hを意味し、同じくLu1L、Lv1L、Lw1LはLx1Lを意味し、Lu2H、Lv2H、Lw2HはLx2Hを意味する。
【0017】
こうしてLx2とLx1を間のスイッチにノーマリーオンを適用し、他はノーマリーオフを適用している。つまり、このコイル接続切替装置3の回路は電源OFFの時はノーマリーオンデバイスにより1パラ接続状態(各相ごと、全コイル直列状態)になる切替回路である。
コイル接続切替装置3の後段は全波整流器4が接続され、更に、全波整流器4は
【0018】
接続要素5を介してバッテリー6(蓄電器)に繋がっている。接続要素5とコイル接続切替装置3とは制御器7にも接続されている。接続要素5のVoutが所定値(予め任意に設定)を超えたら電源が制御器7に流れ、制御器7が作動開始する。換言すれば、Voutが所定値に満たなければ制御器7は作動せず、その間は専らバッテリー6に充電され、バッテリー6から制御器7に流れることは無い。Voutが更に大きくなれば制御器7はコイル接続切替装置3に制御信号を与えて複数コイルの接続切替を行っていく。
【0019】
本実施例では、全波整流器4と発電機2の間に複数コイル接続切替装置3を配し、かつ、そのコイル接続切替装置3にはノーマリーオン(デプレッション型)とノーマリーオフ(エンハンスメント型)を併用するようにし1パラの接続形態においてはノーマリーオン型で接続するようにした。これによりコイル接続切替装置3に電源が供給されていない場合には1パラ状態になり、超微風に際して、アクティブ回路無しでもバッテリーへ充電できるようになる。
【0020】
尚、DC/DCコンバータ及びそれとバッテリーとの間の制御回路は無く、全波整流器4とバッテリー6が実質的に直結することになるが、風速の上昇に伴い発電電圧が高くなった場合には、接続要素5を介して制御器7へ電力が供給され、制御器7からコイル接続切替装置3への電力および制御信号が供給され、風速に応じたコイル切替制御が実施され、風速が高い場合においても効率よくバッテリー充電が可能になる。
【0021】
(風力発電ユニットの装置構成例)
図3に本発明の発電装置を適用した風力発電の概念を例示する。まず、風を受けて回転する羽根1が風の当たるエリア17に配置されている。羽根1の後部にナセル8たるケーシング相当部が配置されている。ナセル8内に本実施例の発電装置が位置するが、その発電装置は羽根1に動力伝達軸9で繋がっている(尚、ホイルインの如く、発電装置の回転体周囲に羽根1が配置される場合も含む)。そして羽根1に風が当たると羽根1が回転し、動力伝達軸9を通じてナセル8内に、羽根1の回転力が伝わることになる。ナセル8は、空気力学を考慮して設計された筐体であるが、筐体の形状はこれに限らず外観が略箱型、薄型でも良い。
【0022】
ナセル8内で増速器がギアを使って回転数を増やし回転速度を速める。尚、1kw近辺の発電機では増速器は不要である。特に後述する多段切替方式を採用する場合、更には後述する風レンズを用いるならば増速器は使用せずに済む。
【0023】
伝達された回転は、コアレス型発電機11で電力に変換する。コアレス型発電機11の内容については別項で説明するが、本例で採用するコアレス型発電機11内のコイルは円筒型に形成され(符号111)、内部の空間に前記の増速器やブレーキ装置10を納めることができる(図では説明簡単化の為、これら機器を直列に順次配列している)。ブレーキ装置10は暴風や点検時等において回転の抑制や停止を担う。但しブレーキ装置10は必須ではない。このコアレス発電機11に
図1に例示した発電機2が収まっており、
図1における図示は省略するが全波整流器4、接続要素5、制御器7が付設されてる。
【0024】
本例においては風力発電ユニットが支柱14上に設置されている。支柱14内は空洞になっていてケーブル類が通る。そしてコアレス型発電機11で変換された電気は、支柱14内を出力ケーブル15経由でバッテリー6(本例においては鉛蓄電池)を経由し、或いは直接に出力ケーブル16を通じて利用先へ配電される。尚、トランスを介して昇圧する場合も本発明に含む。
【0025】
尚、本例は支柱14を用いているが、支柱14を使わずブロックキューブタイプのように接地面に据え置き型であっても良く、添え置き型ならば支柱14は不要となり、ブロックキューブタイプならば発電機を覆う筐体がナセル8機能を有することになる。
【0026】
コアレス型発電機11の円筒コイル体111には同軸上にコイル接続切替基板12が付設されていて、この基板12にコイル接続切替装置3が形成されている。このコイル接続切替基板12と円筒コイル体111とは接続線13で接続されている。
【0027】
ナセル8には上面に監視用通信機18(送受信装置。アンテナ、センサ付き)と風向・ 風速計19が付設されており、監視用通信機18は地上(屋内)の監視センタ(図略)で 監視し、風向・風速計19の測定風速はブレーキ装置10及びコイル接続切替装置3にも伝達される配線(図略)にしている。
【0028】
(コアレス型の説明)
次に風力発電ユニットにおいてコアレスタイプ(つまり無鉄心)の発電機システムの優位性を含めて説明する。
【0029】
図4は
図3に示したコアレス型発電機11の具体的な構成を説明する図である。動力伝達軸9はベアリング26を介して支持され、非回転の発電機ケーシング20に配置されている。発電機ケーシング20はコップ容器様で開放部に蓋21(非回転)が嵌められている。こうして略円筒の容器が形成される中にコイル体(非回転)とロータ部が配置されることになる。
【0030】
そのロータ部はアウターヨーク22とインナーヨーク23がいずれもヨーク支持部材25を介して伝達動力軸9に固定されているので回転する構成になっている。本例ではアウターヨーク22の内面側に永久磁石24を配しているが、永久磁石24はインナーヨーク23側に配置されても良いし、アウターヨーク22とインナーヨーク23の両方に配置されても良く、いずれにせよ永久磁石24は円筒コイル体111に間隙をもって対向配置されている。尚、アウターヨーク22とインナーヨーク23のいずれか一方だけを使用し、その使用したヨークに永久磁石24を配する例も本発明の態様になる。
【0031】
ロータ回転に対して静止状態(非回転)を保つ為に、片持ち状態で内部に固定されている円筒コイル体111は、ロータの回転運動や磁力によって円形の捻じれ或いは位置ずれに対応できるように、円筒コイル体111の片面若しくは両面にコイル補強層111aが形成され、更に円筒コイル体111の開放端側にコイル補強リング27が篏合されている。またコイル接続切替基板12は動力伝達軸9に接触せぬようドーナツ円板状に形成されて、それに切替回路の配線とFET類(つまり
図1、
図2で説明したデプレッション型とエンハンスメント型の両方)が搭載されている。このコイル接続切替基板12は非回転になっている。 図示省略するは内部発熱の冷却の為、直接及び/又は間接に冷媒による冷却を図ることも有効である。
【0032】
こうして構成された発電機は、円筒状のコアレス型故に内部に空洞を形成し易く、その為、増速機、ギア、ブレーキ等をその空洞内に納めることも可能になり、装置のコンパクト化が図れることになる。
【0033】
風力発電は風のエネルギーを風車で機械エネルギーに変換し、機械エネルギーを発電機で電気エネルギーに変換する。風車の最大変換効率は59.3%(約60%:ベッツの定理)だが、現状は理想的な風車で約40%、通常の風車で約30%程度になる。以上のことから風力発電システムの発電効率は発電機の効率を80~90%とすれば最良でも30~35%程度になる。1kW発電機は羽根直径2m、面積が3.14m2で効率は31.8%に設計されている。羽根タイプの周速比(風速と羽根先端のスピードの比率)は一般に6(変換効率が高い)が選ばれ、定格時(風速12m/秒) の羽根の先端速度は259.2km/時、回転数は688rpmとなっている。
【0034】
風のエネルギーは風速の3乗に比例する。風の圧力(風圧)は風速の2乗に比例し、風のエネルギーは風速×圧力=風速の3乗になる。それ故、風速が小さいときはエネルギーが非常に小さく、反対に風速が大きくなれば急速にエネルギーが増加する。
【0035】
現状、一般に風力発電機の作動範囲は2.5m/秒以下では発電できるエネルギーよりも制御回路を動作させるエネルギーの方が大きくなり、15m/秒以上では出力が大き過ぎて発電機や制御回路を破壊してしまう可能性が高い。以上のことからわかるように、風力発電システムは微風から強風まで効率よく利用できるようにすることが最大の課題になる。
【0036】
一般に、小型風力発電機には永久磁石同期発電機が採用されている。永久磁石同期モータ及び発電機にはコアドタイプが多く実用されているが、本発明者の検討ではコアレスタイプの方が適している。
【0037】
図5のグラフに示すように誘起電圧定数が等しい発電機の場合、コアレス発電機の方が高い電圧を得ることができ、その結果、同一出力を得る場合には出力電流を小さくすることができる。その理由はコアレス発電機のインダクタンスが小さく、インダクタンスによる電圧降下2πfLIが小さくなる為である。
【0038】
更にコアレスタイプでは別項で後述するコイル切替原理との併用をし易い。そのコイル切替のシステムを使用することで、発電電圧の制御が可能になり、発電効率が向上して、省エネ化を達成することができる。また、このシステムにより、微風から強風時まで広範囲にわたって発電を充電可能になり、充電効率が上がる。
【0039】
本実施例では、複数のコイルを単に直列、並列の2通りに切り替えるのでなく、直列・並列混用によって切替パターンのバリエーションを3種以上にし、つまり複数段切替を行うことが望ましい。
【0040】
これにより風力に応じて3段階以上の多段切替が可能になるから微風から強風にも対応できるようになる。
【0041】
発電機のコイルは複数相、一般的にはU、V、Wの3相で構成されている。その各相ごとに本実施例ではコイル単位を3つ以上用いることを推奨する。そしてコイル単位の接続を全部直列、全部並列の他、直列と並列の混用(シリーズパラ)にすることで3段以上の多段切替を可能にできる。
図4に各相4コイル使用したパターンのバリエーションを示す。コイル数を増やせば増やすほど切替パターンのバリエーションは増えて風速への対応も細かくできるようになる。尚、全てのパターンを使う必要はなく、4コイル使用でも例えば
図6に説明するように全部直列(4S=1P-4S。1パラ)、全部並列(4P=4P-1S。4パラ)、2並列2つの直列(2P-2P。2パラ)の3パターンでも良い。その場合、全部直列なら風速の高速対応になり、全部並列なら風速の低速対応になり、2並列2つの直列なら中速対応になる。出力電圧30Vから発電可能なシステムの場合、コイル切替無し(従前のもの)であれば風速3mから発電可能であるが、本例の3段切替を採用すれば風速0.75mから発電可能になる。このことは、
図12に纏めて図示している。尚、各相4コイルの各接続パターンにおいて、本実施例思想のノーマリーオフスイッチとノーマリーオンスイッチの配置例は
図7~11に示すようになる(
図7は4Sの場合、
図8は4Pの場合、
図9は3P-1Sの場合、
図10は2P-2Pの場合、
図11は2P-2Sの場合)。これらの図からわかるように全コイルが直列になるコイル間スイッチにノーマリーオンのものを配置し、他はノーマリーオフのものを使う。
【0042】
図12は4コイル3段切り替えのグラフになる。3段切替を想定し、コイルは4つで、4S(1パラ)、2P-2P(2パラ)、4P(4パラ)の切替であり、表中の「低速」は風速の低い方で4S(1パラ)を使い、「中速」では2パラに 切り替え、「高速」では4パラに切り替える(自動で切り替わるようにしている。尚、表1にて
図7図示の場合の風速、回転数と出力電圧との関係を整理する。尚、コイル切替は 風速によって自動切替すれば良い。
【表1】
【0043】
(ホイルインタイプの発電装置例)
図13に本発明を適用するホイルインタイプの風力発電装置を断面図混じりで例示する。この例は薄型の略直方体の箱型を呈し、その外観を形成する筐体30は正面部301、背面部302、頂部304、底部305及び左右の側面部(本図では略)から構成されており、正面部301と背面部302には大きな開口があって両部301~302に貫通する風路303となっている。この風路303は流路の中央に向かって絞まるように集風壁306が正面部301と背面部302の両方に形成されている(風レンズとも言う)。尚、頂部304、底部305、左右側面部は板状でも良いし、枠体のみ(骨組だけ)でも良い。
【0044】
風路303には略中央にコアレス型発電機11が位置し、コアレス型発電機11のシャフト36は筐体30に、正面部301及び背面部302夫々の開口出口に渡された梁部材(本図では略)を介して固定されている。よってシャフト36は動かない(非回転)である。
【0045】
このシャフト36を中心軸にして軸受34を介してコアレス型発電機11のケーシング37が配置されており、ケーシング37は回転する。コアレス型発電機11内は円筒状のコイル体31と、その円筒状コイル体31とは間隙を持って挟むように配置されたアウターヨーク32とインナーヨーク33並びにアウターヨーク32の円筒状コイル体31側に接合されて円筒状コイル体31と間隙を持って配置された永久磁石35を備え、更に後述するコイル間接続切替基板12を円筒状コイル体31のコイルと接続するようにして設けられている。円筒状コイル体31はシャフト36に固定されているので非回転であり、その円筒状コイル体31に接続されたコイル間接続切替基板12も非回転であるが、アウターヨーク32、インナーヨーク33はケーシング37と一体となり(特に本例ではアウターヨーク32が発電機ケーシング37を兼ねている)、従って回転する。永久磁石35もアウターヨーク32に接合されているので回転する。
【0046】
円筒状コイル体31はヨークの回転に対して静止状態(非回転)を保つ為に片持ち状態で内部に固定されている。円筒状コイル体31はロータの回転運動や磁力によって円形の捻じれ或いは位置ずれに対応できるように、円筒状コイル体31の片面若しくは両面にコイル補強層(例えば特開2021-97546号公報参照)が形成され、更に円筒状コイル体31の開放端側にコイル補強リング(例えば特開2021-97564号参照)が篏合されている。またコイル間接続切替基板12は円筒状コイル体31に接続されているので非回転であり、それに切替回路の配線と半導体素子類(ノーマリーオン型とノーマリーオフ型の併存)が搭載されている。尚、図示省略するが内部発熱の冷却の為、直接及び/又は間接に冷媒による冷却を図ることも有効である。
【0047】
複数枚の羽根1はケーシング37(本例ではアウターヨーク32が兼ねる)に固定されているので、羽根1と発電機11は一体で回転する。尚、本例は正面部301と背面部302がシンメトリー(=風の流入が双方向)であり、羽根1は正面部61から流入する風にも背面部62から 流入する風にも対応するようにシンメトリーに作られている。羽根1とケーシング37(=本例ではアウターヨーク32)との固定は、ネジ止めでも溶接等の接合でも良いが、遠心力に耐える強固な手法にて固定する。
【0048】
更に正面部301、背面部302は防護網(本図では略)で覆って良い。各面は板材をスケルトンにしても良い。尚、軸受34等発電機11内部への異物侵入を防ぐべくオイルシールを併用するのが良い。
【0049】
発電機11には更に増速器やブレーキを付設しても良く、これらはコアレス型発電機11のインナーヨーク33の内側のスペースに納めても良い。増速器はギアを使って回転数を増やし回転速度を速めるが、1kW近辺の発電機では増速器は不要であるし、本発明が対象とするコイル間接続切替式のコアレス発電機においては本来必要ない。ブレーキ装置は暴風や点検時等において回転の抑制や停止を担う。但しブレーキ装置も必須ではない。伝達された回転はコアレス型発電機11で電力に変換する。発電された電力は、図示省略の出力ケーブル経由で、同じく図示省略のバッテリー(例えば鉛蓄電池)を経由し利用先へ配電される。
【0050】
(使用コイル数を増やした場合の回路例)
図14及び
図15に
図1の実施例装置において使用コイルが各相5コイルの場合の配線説明図を示し、
図14は発電機内のコイル構成例、
図15はコイル接続切替装置のスイッチ構成例を示す。この
図14が示すように各相の使用コイル5つ全てが直列になるパターンにおいてコイル間接続スイッチがノーマリーオンタイプになっており、他派ノーマリーオフタイプになっている。コイル数をいかようにしても、要するに本発明においては全直列にする場合の接続スイッチにノーマリーオンが用いられることになる。
以上の実施例は風力発電で説明したが水力でも同様である。また、本発明はコアレスモータ適用には限定されない。
【符号の説明】
【0051】
1……羽根、2……発電機、3……コイル接続切替装置、4……全波整流器、5……接続要素、6……バッテリー、7……制御器、8……ナセル、9……動力伝達軸、10……ブレーキ装置、11……コアレス型発電機、111……円筒型コイル体、111a……コイル補強層、12……コイル接続切替基板、13……接続線、14……支柱、15……出力ケーブル、17……エリア、18……監視用通信機、19……風向・ 風速計、20……発電機ケーシング、21……蓋、22……アウターヨーク、23……インナーヨーク、24……永久磁石、25……ヨーク支持部材、26……ベアリング、27……補強リング、30……筐体、301……正面部、302……背面部、303……風路、304……頂部、305……底部、306……集風壁、31……円筒型コイル体、32……アウターヨーク、33……インナーヨーク34……軸受、35……永久磁石、36……シャフト、37……発電機ケーシング、61……正面部、62……背面部。