(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083117
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】地震情報入力支援装置及び地震情報入力支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G01V 1/28 20060101AFI20240613BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20240613BHJP
G06F 3/04845 20220101ALI20240613BHJP
G06F 3/04815 20220101ALI20240613BHJP
【FI】
G01V1/28
G06T19/00 A
G06F3/04845
G06F3/04815
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197459
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 栞
(72)【発明者】
【氏名】久家 英夫
(72)【発明者】
【氏名】北野 信吾
(72)【発明者】
【氏名】大渕 正博
【テーマコード(参考)】
2G105
5B050
5E555
【Fターム(参考)】
2G105AA03
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2G105NN02
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5E555FA00
(57)【要約】
【課題】仮想的な空間での操作による情報の入力を行わない場合に比較して、より容易に地震情報の入力を行うことができる地震情報入力支援装置及びプログラムを得る。
【解決手段】地震情報入力支援装置10は、対象とする地盤の3次元構造を示す地盤モデル、及び地盤に影響する断層面を模した平面状の断層モデルを3次元表示する制御を行う表示制御部11Aと、地盤モデル及び断層モデルを3次元表示した状態で、断層モデルに対する仮想的な操作を受け付ける受付部11Bと、受付部11Bにより受け付けられた操作に応じて、断層モデルの表示状態を変更する変更部11Cと、変更部11Cによる断層モデルの変更後の表示状態、及び地盤モデルの断層モデルの表示位置に対する位置関係に応じて、地盤に対して影響する情報であり、かつ、断層面のすべりに関する物理量である地震情報を導出する導出部11Dと、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする地盤の3次元構造を示す地盤モデル、及び前記地盤に影響する断層面を模した平面状の断層モデルを表示部に3次元表示する制御を行う表示制御部と、
前記地盤モデル及び前記断層モデルを前記表示部に3次元表示した状態で、当該断層モデルに対する仮想的な操作を受け付ける受付部と、
前記受付部により受け付けられた操作に応じて、前記断層モデルの表示状態を変更する変更部と、
前記変更部による前記断層モデルの変更後の表示状態、及び前記地盤モデルの前記断層モデルの表示位置に対する位置関係に応じて、前記地盤に対して影響する情報であり、かつ、前記断層面のすべりに関する物理量である地震情報を導出する導出部と、
を備えた地震情報入力支援装置。
【請求項2】
前記断層モデルは、平面状で、かつ、正面視矩形状のモデルである、
請求項1に記載の地震情報入力支援装置。
【請求項3】
前記地震情報は、前記断層面の位置、前記断層面の規模、アスペリティの面積、アスペリティの位置、破壊開始点、及び破壊方向の少なくとも1つである、
請求項1又は請求項2に記載の地震情報入力支援装置。
【請求項4】
前記操作は、前記断層モデルを、各々、移動させる操作、拡大及び縮小させる操作、傾斜させる操作、及びなでる操作の少なくとも1つである、
請求項1又は請求項2に記載の地震情報入力支援装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記地盤に関する地球物理学に関する地球物理学情報を前記表示部に表示する制御を更に行う、
請求項1又は請求項2に記載の地震情報入力支援装置。
【請求項6】
前記地球物理学情報は、プレート構造に関する情報、震源分布に関する情報、地表の活断層線に関する情報、及び地震発生層に関する情報の少なくとも1つの情報を含む、
請求項5に記載の地震情報入力支援装置。
【請求項7】
前記導出部は、導出した前記地震情報を用いて、前記断層面をメッシュ状に分割した分割断層モデルを更に導出する、
請求項1又は請求項2に記載の地震情報入力支援装置。
【請求項8】
対象とする地盤の3次元構造を示す地盤モデル、及び前記地盤に影響する断層面を模した平面状の断層モデルを表示部に3次元表示する制御を行い、
前記地盤モデル及び前記断層モデルを前記表示部に3次元表示した状態で、当該断層モデルに対する仮想的な操作を受け付け、
受け付けた操作に応じて、前記断層モデルの表示状態を変更し、
前記断層モデルの変更後の表示状態、及び前記地盤モデルの前記断層モデルの表示位置に対する位置関係に応じて、前記地盤に対して影響する情報であり、かつ、前記断層面のすべりに関する物理量である地震情報を導出する、
処理をコンピュータに実行させるための地震情報入力支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震情報入力支援装置及び地震情報入力支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、模擬地震動を作成するために適用することのできる技術として、以下の技術があった。
【0003】
特許文献1には、簡易かつ高精度に入力地震動を推定することができるようにすることを目的とした入力地震動の推定方法が開示されている。
【0004】
この推定方法は、公開された基盤面における地震波形データを使用して、複数の解析方法に基づいて地表面または表層地盤の適宜の深度における地震動波形を作成し、作成された地震動波形の中から適宜の地震動波形を選択することによって入力地震動が推定される方法である。また、この推定方法は、該複数の解析方法に、表層地盤の材料特性を線形として扱う線形解析法と、表層地盤の歪み依存性が考慮された等価線形解析法と、表層地盤の応力とひずみの関係を表したヒステリシスに基づく非線形解析法とが少なくとも含まれている。
【0005】
また、特許文献2には、既設構造物固有の影響を取り除くことができるようにすることを目的とした入力地震動の推定方法が開示されている。
【0006】
この推定方法は、基盤面上に堆積する表層地盤上の地表面または表層地盤内に建設される構造物の地震応答解析モデルに入力する入力地震動を、既設構造物に設置した地震計で観測された地震波形データに基づいて推定する方法である。また、この推定方法は、前記既設構造物とその周辺の基盤を含めた解析モデルを作成し、前記既設構造物の下部または上部のいずれか一方の地震計で観測された地震波形データを入力値として前記解析モデルにおける前記既設構造物に対する動的地震応答解析を行い、応答値が前記既設構造物の下部または上部のいずれか他方の地震計で観測された地震波形データと概略一致するように前記解析モデルを調整し、調整後の前記解析モデルにおける前記基盤の底面への入力地震動を算定する算定ステップを備えている。更に、この推定方法は、調整後の前記解析モデルから前記既設構造物を除外して前記基盤の解析モデルを作成し、作成した前記解析モデルにおける前記基盤の底面に、算定した入力地震動を作用させて動的地震応答解析を行い、前記基盤の表面における応答値を入力地震動として推定する推定ステップを備えている。
【0007】
更に、特許文献3には、構造物に要求される耐震性能が過剰に大きくなるのを抑制して、構造物の建設コストを低減することを目的とした入力地震動の推定方法が開示されている。
【0008】
この推定方法は、構造物の設計荷重として用いる入力地震動の推定方法であって、断層に関する複数のパラメータの各々を確率変数として、確率論的手法により複数の断層モデルを生成する。また、この推定方法は、前記複数の断層モデルの各々に対し、震源から前記構造物の建設地の地表面までの地震動の伝搬特性を基にして、地表面地震動を推定し、前記複数の断層モデルに対して生成された複数の前記地表面地震動から、複数の応答スペクトルを算出する。更に、この推定方法は、前記複数の応答スペクトルの平均値と標準偏差値を算出し、前記平均値と前記標準偏差値を基にした値との和を基に、前記構造物の要求性能を満足する要求応答スペクトルを算出し、前記要求応答スペクトルに適合する入力地震動を推定する。
【0009】
一方、情報の入力を支援するために適用することのできる技術として、以下の技術があった。
【0010】
特許文献4には、仮想空間においてオブジェクトの配置を容易にすることを目的とした方法が開示されている。
【0011】
この方法は、ヘッドマウントディスプレイ装置によって提供される仮想空間において入力を支援するための方法であって、前記仮想空間で配置される場所を変更可能なオブジェクトを前記仮想空間に表示するステップを含む。また、この方法は、前記表示されたオブジェクトの場所を変更するための操作を受け付けるステップと、前記オブジェクトの位置決めのためのガイドオブジェクトを前記仮想空間に表示するステップと、を含む。更に、この方法は、前記操作に応じて前記オブジェクトを前記仮想空間内で移動するステップと、前記オブジェクトの移動に連動して、前記ガイドオブジェクトを移動するステップと、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006-266940号公報
【特許文献2】特開2016-211940号公報
【特許文献3】特開2021-188911号公報
【特許文献4】特開2018-032131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、模擬地震動を演算するためには、震源特性、伝播経路特性、及び地盤増幅特性の3種類に大別される各種パラメータの設定が必要である。このうち、特に震源特性に関しては、一例として
図5(出典:https://www.sein21.jp/TechnicalContents/Hisada/Hisada0102.aspx)に示すように、断層面の位置、規模、傾斜や、破壊の開始点、方向、速度といった多数の断層面のすべりに関する物理量の設定が求められる。
【0014】
従来の技術では、上記多数の断層面のすべりに関する物理量を数値情報として書き込んだ入力用のテキストファイルを作成していた。しかしながら、この方法では、当該テキストファイルを参照してもパラメータの3次元的な意味を理解するのが難しく、専門家以外の設計実務者が模擬地震動を演算することは困難であった。
【0015】
また、断層面のすべりに関する物理量は一意に設定できるものではなく、地震動の予測の際には、各物理量を変更しながら、ばらつきを考慮することが望ましい。しかしながら、上記従来の技術では、いくつもの数値を都度書き替えなければならず、演算の準備に手間がかかっていた。
【0016】
これに対し、特許文献4に開示されている技術を利用して、断層面のすべりに関する物理量を仮想空間において入力する方法も考えられるが、当該技術は、仮想空間におけるオブジェクトの移動に関する技術であり、情報の入力に関しては考慮されていない。このため、当該技術を利用しても、断層面のすべりに関する物理量(以下、「地震情報」ともいう。)を、必ずしも容易に入力することができるとは限らない、という問題点があった。
【0017】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、仮想的な空間での操作による情報の入力を行わない場合に比較して、より容易に地震情報の入力を行うことができる地震情報入力支援装置及び地震情報入力支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載の本発明に係る地震情報入力支援装置は、対象とする地盤の3次元構造を示す地盤モデル、及び前記地盤に影響する断層面を模した平面状の断層モデルを表示部に3次元表示する制御を行う表示制御部と、前記地盤モデル及び前記断層モデルを前記表示部に3次元表示した状態で、当該断層モデルに対する仮想的な操作を受け付ける受付部と、前記受付部により受け付けられた操作に応じて、前記断層モデルの表示状態を変更する変更部と、前記変更部による前記断層モデルの変更後の表示状態、及び前記地盤モデルの前記断層モデルの表示位置に対する位置関係に応じて、前記地盤に対して影響する情報であり、かつ、前記断層面のすべりに関する物理量である地震情報を導出する導出部と、を備える。
【0019】
請求項1に記載の本発明に係る地震情報入力支援装置によれば、対象とする地盤の3次元構造を示す地盤モデル、及び地盤に影響する断層面を模した平面状の断層モデルを表示部に3次元表示する制御を行い、地盤モデル及び断層モデルを表示部に3次元表示した状態で、当該断層モデルに対する仮想的な操作を受け付け、受け付けた操作に応じて、断層モデルの表示状態を変更し、断層モデルの変更後の表示状態、及び地盤モデルの断層モデルの表示位置に対する位置関係に応じて、地盤に対して影響する情報であり、かつ、断層面のすべりに関する物理量である地震情報を導出することで、仮想的な空間での操作による情報の入力を行わない場合に比較して、より容易に地震情報の入力を行うことができる。
【0020】
請求項2に記載の本発明に係る地震情報入力支援装置は、請求項1に記載の地震情報入力支援装置であって、前記断層モデルが、平面状で、かつ、正面視矩形状のモデルであるものである。
【0021】
請求項2に記載の本発明に係る地震情報入力支援装置によれば、断層モデルを、平面状で、かつ、正面視矩形状のモデルとすることで、断層モデルを他の形状のモデルとする場合に比較して、操作性を、より向上させることができる。
【0022】
請求項3に記載の本発明に係る地震情報入力支援装置は、請求項1又は請求項2に記載の地震情報入力支援装置であって、前記地震情報が、前記断層面の位置、前記断層面の規模、アスペリティの面積、アスペリティの位置、破壊開始点、及び破壊方向の少なくとも1つであるものである。
【0023】
請求項3に記載の本発明に係る地震情報入力支援装置によれば、地震情報を、断層面の位置、断層面の規模、アスペリティの面積、アスペリティの位置、破壊開始点、及び破壊方向の少なくとも1つとすることで、適用した物理量を容易に入力することができる。
【0024】
請求項4に記載の本発明に係る地震情報入力支援装置は、請求項1又は請求項2に記載の地震情報入力支援装置であって、前記操作が、前記断層モデルを、各々、移動させる操作、拡大及び縮小させる操作、傾斜させる操作、及びなでる操作の少なくとも1つであるものである。
【0025】
請求項4に記載の本発明に係る地震情報入力支援装置によれば、操作を、断層モデルを、各々、移動させる操作、拡大及び縮小させる操作、傾斜させる操作、及びなでる操作の少なくとも1つとすることで、比較的簡易な操作によって地震情報を入力することができる。
【0026】
請求項5に記載の本発明に係る地震情報入力支援装置は、請求項1又は請求項2に記載の地震情報入力支援装置であって、前記表示制御部が、前記地盤に関する地球物理学に関する地球物理学情報を前記表示部に表示する制御を更に行うものである。
【0027】
請求項5に記載の本発明に係る地震情報入力支援装置によれば、地盤に関する地球物理学に関する地球物理学情報を表示部に表示する制御を更に行うことで、ユーザにとっての利便性を、より向上させることができる。
【0028】
請求項6に記載の本発明に係る地震情報入力支援装置は、請求項5に記載の地震情報入力支援装置であって、前記地球物理学情報が、プレート構造に関する情報、震源分布に関する情報、地表の活断層線に関する情報、及び地震発生層に関する情報の少なくとも1つの情報を含むものである。
【0029】
請求項6に記載の本発明に係る地震情報入力支援装置によれば、地球物理学情報に、プレート構造に関する情報、震源分布に関する情報、地表の活断層線に関する情報、及び地震発生層に関する情報の少なくとも1つの情報を含ませることで、含ませた情報をユーザが参照することができる。
【0030】
請求項7に記載の本発明に係る地震情報入力支援装置は、請求項1又は請求項2に記載の地震情報入力支援装置であって、前記導出部が、導出した前記地震情報を用いて、前記断層面をメッシュ状に分割した分割断層モデルを更に導出するものである。
【0031】
請求項7に記載の本発明に係る地震情報入力支援装置によれば、導出した地震情報を用いて、断層面をメッシュ状に分割した分割断層モデルを更に導出することで、より高精度に地震情報を導出することができる。
【0032】
請求項8に記載の本発明に係る地震情報入力支援プログラムは、対象とする地盤の3次元構造を示す地盤モデル、及び前記地盤に影響する断層面を模した平面状の断層モデルを表示部に3次元表示する制御を行い、前記地盤モデル及び前記断層モデルを前記表示部に3次元表示した状態で、当該断層モデルに対する仮想的な操作を受け付け、受け付けた操作に応じて、前記断層モデルの表示状態を変更し、前記断層モデルの変更後の表示状態、及び前記地盤モデルの前記断層モデルの表示位置に対する位置関係に応じて、前記地盤に対して影響する情報であり、かつ、前記断層面のすべりに関する物理量である地震情報を導出する、処理をコンピュータに実行させる。
【0033】
請求項8に記載の本発明に係る地震情報入力支援プログラムによれば、対象とする地盤の3次元構造を示す地盤モデル、及び地盤に影響する断層面を模した平面状の断層モデルを表示部に3次元表示する制御を行い、地盤モデル及び断層モデルを表示部に3次元表示した状態で、当該断層モデルに対する仮想的な操作を受け付け、受け付けた操作に応じて、断層モデルの表示状態を変更し、断層モデルの変更後の表示状態、及び地盤モデルの断層モデルの表示位置に対する位置関係に応じて、地盤に対して影響する情報であり、かつ、断層面のすべりに関する物理量である地震情報を導出することで、仮想的な空間での操作による情報の入力を行わない場合に比較して、より容易に地震情報の入力を行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明によれば、仮想的な空間での操作による情報の入力を行わない場合に比較して、より容易に地震情報の入力を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施形態に係る地震情報入力支援システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る地震情報入力支援装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係るAR(Augmented Reality:拡張現実)グラスにおける制御部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る地震情報入力支援装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る震源パラメータの定義を示す模式図である。
【
図6】実施形態に係る地盤モデルデータベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図7】実施形態に係る断層モデルデータベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図8】実施形態に係る地震情報入力支援処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態に係る初期情報入力画面の構成の一例を示す正面図である。
【
図10】実施形態に係るAR画像の一例を示す正面図である。
【
図11】実施形態に係るAR画像の一例を示す正面図である。
【
図12】実施形態に係るAR画像の一例を示す正面図である。
【
図13】実施形態に係るAR画像の一例を示す正面図である。
【
図14】実施形態に係るメッシュ分割の一例を示す模式図である。
【
図15】実施形態に係る地震情報入力支援システムの他の構成の一例を示すブロック図である。
【
図16】実施形態に係る地球物理学情報の表示の説明に供する図であり、日本周辺のプレート構造を示す斜視図である。
【
図17】実施形態に係る地球物理学情報の表示の説明に供する図であり、プレート境界への断層モデルの設置状態の一例を示す斜視図である。
【
図18】実施形態に係る地球物理学情報の表示の説明に供する図であり、震源分布の一例を示す図(グラフ)である。
【
図19】実施形態に係る地球物理学情報の表示の説明に供する図であり、活断層線を活用した断層モデルの配置状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。本実施形態では、本発明を、AR技術による仮想空間を適用して実現する形態の例について説明する。
【0037】
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る地震情報入力支援システム1の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る地震情報入力支援システム1の構成の一例を示すブロック図である。
【0038】
図1に示すように、本実施形態に係る地震情報入力支援システム1は、本システムの中心的な役割を担う地震情報入力支援装置10と、ARグラス70と、情報蓄積装置90と、を含む。本実施形態に係る地震情報入力支援装置10は、ARグラス70を用いて、当該ARグラス70を装着したユーザによる地震情報の入力を支援するものである。また、本実施形態に係る情報蓄積装置90は、地震情報入力支援システム1で取り扱う各種情報を蓄積するものである。
【0039】
本実施形態に係る情報蓄積装置90は不揮発性の記憶部92を備えている。記憶部92はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部92には、地盤モデルデータベース92A及び断層モデルデータベース92Bが記憶されている。地盤モデルデータベース92A及び断層モデルデータベース92Bについては、詳細を後述する。
【0040】
地震情報入力支援装置10と、情報蓄積装置90とは、ネットワークNを介して接続されており、地震情報入力支援装置10は、情報蓄積装置90とネットワークNを介して相互に通信可能とされている。なお、本実施形態では、ネットワークNとしてLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の企業内の通信回線を適用しているが、この形態に限定されるものではない。ネットワークNとして、例えば、インターネット、電話回線等の公共の通信回線を適用してもよく、これらの企業内の通信回線及び公共の通信回線を組み合わせて適用してもよい。また、本実施形態では、ネットワークNとして有線の通信回線を適用しているが、この形態に限定されるものではなく、無線の通信回線を適用してもよく、有線及び無線の各通信回線を組み合わせて適用してもよい。
【0041】
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る地震情報入力支援装置10のハードウェア構成を説明する。
図2は、本実施形態に係る地震情報入力支援装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。なお、地震情報入力支援装置10の例としては、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の各種コンピュータが挙げられる。
【0042】
本実施形態に係る地震情報入力支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16及び通信インタフェース(I/F)部18を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16及び通信I/F部18はバスB1を介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0043】
記憶部13はHDD、SSD、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、地震情報入力支援プログラム13Aが記憶されている。地震情報入力支援プログラム13Aは、当該プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの当該プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶(インストール)される。CPU11は、地震情報入力支援プログラム13Aを記憶部13から順次読み出してメモリ12に展開し、地震情報入力支援プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0044】
次に、
図3を参照して、本実施形態に係るARグラス70における制御部の構成を説明する。
図3は、本実施形態に係るARグラス70における制御部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0045】
図3に示すように、本実施形態に係るARグラス70は、CPU71、一時記憶領域としてのメモリ72、不揮発性の記憶部73、マイクロスイッチ等の入力部74、各種情報の投影を行う投影部75、撮影部77、及び無線通信部78を備えている。CPU71、メモリ72、記憶部73、入力部74、投影部75、撮影部77、及び無線通信部78はバスB2を介して互いに接続されている。
【0046】
本実施形態に係る記憶部73はHDD、SSD、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部73には、地震情報入力支援装置10との間の各種情報の送受信の制御や、地震情報入力支援装置10から受信した情報を用いて投影部75による各種情報の投影による表示を行う制御等を実行する情報処理プログラム73Aが記憶されている。情報処理プログラム73Aは、ARグラス70の製造過程において、その時点での最新版が予め記憶部73に記憶され、ARグラス70は、その状態で出荷される。そして、情報処理プログラム73Aが改版されと、ARグラス70は、無線通信部78を介して最新版をダウンロードし、記憶部73に記憶されているものを更新する。CPU71は、情報処理プログラム73Aを記憶部73から読み出してメモリ72に展開し、情報処理プログラム73Aが有するプロセスを順次実行する。
【0047】
また、本実施形態に係る無線通信部78は、地震情報入力支援装置10との間で、ネットワークNを介して無線で通信を行うことができる。本実施形態に係る無線通信部78では、地震情報入力支援装置10との間で通信を行うための通信規格として、所謂4G、5G等のモバイル通信規格が適用されているが、これに限るものでないことは言うまでもない。
【0048】
更に、本実施形態に係る撮影部77は、動画像を撮影するものであり、当該撮影によって得られた画像情報を出力する。
【0049】
なお、図示は省略するが、ARグラス70には、両眼用のレンズや、眼鏡フレーム等の眼鏡としての機能を実現するための他の構成品が備えられていることは言うまでもない。そして、本実施形態に係る投影部75は、各種情報を上記レンズに対して直接投影するものとされている。このように、本実施形態に係るARグラス70では、投影部75による投影によって各種情報を表示するものとされているが、これに限るものではない。例えば、投影部75に代えて、装着者によって視認可能な状態で各種情報を表示する専用のディスプレイを設けておき、当該ディスプレイによって各種情報を表示する形態としてもよい。
【0050】
また、錯綜を回避するために図示は省略するが、本実施形態に係る地震情報入力支援システム1では、ARグラス70が地震情報入力支援システム1のユーザ毎に用意されている。
【0051】
次に、
図4を参照して、本実施形態に係る地震情報入力支援装置10の機能的な構成について説明する。
図4は、本実施形態に係る地震情報入力支援装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0052】
図4に示すように、地震情報入力支援装置10は、表示制御部11A、受付部11B、変更部11C、及び導出部11Dを含む。地震情報入力支援装置10のCPU11が地震情報入力支援プログラム13Aを実行することで、表示制御部11A、受付部11B、変更部11C、及び導出部11Dとして機能する。
【0053】
本実施形態に係る表示制御部11Aは、対象とする地盤(以下、「対象地盤」という。)の3次元構造を示す地盤モデル、及び対象地盤に影響する断層面を模した平面状の断層モデルをARグラス70のレンズに投影部75によって3次元表示する制御を行う。
【0054】
ここで、本実施形態に係る断層モデルは、平面状で、かつ、正面視矩形状のモデルとされている。この構成により、断層モデルを他の形状のモデルとする場合に比較して、操作性を、より向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る受付部11Bは、地盤モデル及び断層モデルを3次元表示した状態で、当該断層モデルに対する、ユーザによる仮想的な操作を受け付ける。本実施形態に係る受付部11Bは、上記操作として、断層モデルを、各々、移動させる第1操作、拡大及び縮小させる第2操作、傾斜させる第3操作、なでる第4操作、及び回転させる第5操作の5種類の操作を適用しているが、これに限るものではない。例えば、上記5種類の操作のうちの何れか1種類、又は2種類から4種類までの組み合わせを上記操作として適用する形態としてもよいし、上記5種類の操作以外の操作を上記操作として適用する形態としてもよい。
【0056】
本実施形態に係る地震情報入力支援システム1では、断層モデルの表面がすべり面であるものと見立てる。この際、断層モデルは平面状であるため、表面が2面あり、本実施形態では、当該2面の両面ともに第4操作、即ちなでる操作の対象としているが、これに限るものではない。例えば、上記2面のうちの何れか一方の面のみを第4操作の対象とする形態としてもよい。
【0057】
ユーザは、断層モデルに対する第1操作、即ち移動させる操作により、断層モデルが示す断層面の位置が、地盤モデルに対する所望の位置関係となるようにすることで、断層面と地盤との相対的な位置関係を設定する。また、ユーザは、断層モデルに対する第2操作、即ち拡大及び縮小させる操作により、地震の規模(マグニチュード)の設定を行う。また、ユーザは、断層モデルに対する第3操作及び第5操作、即ち傾斜させる操作及び回転させる操作により、地盤モデルを基準とした断層モデルが示す断層面の傾斜角及び向きを所望の状態とすることで、断層面の傾斜角及び走向の設定を行う。更に、ユーザは、断層モデルに対する第4操作、即ちなでる操作により、その方向、速度、及び位置の各情報から、各々、破壊伝播方向、破壊伝播速度、及び破壊開始点の設定を行う。
【0058】
なお、本実施形態では、第2操作として、断層モデルの一対の対角近傍の位置を両手の指で摘まんだ状態で当該断層モデルを拡大及び縮小する操作を適用しているが、これに限るものではない。例えば、断層モデルの中心位置を固定した状態で、何れか1つの角部近傍を一方の手の指で摘まんだ状態で当該断層モデルを拡大及び縮小する操作を第2操作として適用する形態としてもよい。
【0059】
また、本実施形態に係る変更部11Cは、受付部11Bにより受け付けられた操作に応じて、断層モデルの表示状態を変更する。そして、本実施形態に係る導出部11Dは、変更部11Cによる断層モデルの変更後の表示状態、及び地盤モデルの断層モデルの表示位置に対する位置関係に応じて、対象地盤に対して影響する情報であり、かつ、断層面のすべりに関する物理量である地震情報を導出する。
【0060】
ここで、本実施形態に係る地震情報入力支援システム1では、地震情報に、断層面の位置、断層面の規模、アスペリティの面積、アスペリティの位置、破壊開始点、及び破壊方向の各情報を含めているが、これに限るものではない。例えば、これらの各情報のうちの何れか1種類、又は全部を除く複数種類の組み合わせを地震情報に含める形態としてもよいし、他の対象地盤に対して影響する情報であり、かつ、断層面のすべりに関する物理量を地震情報に含める形態としてもよい。
【0061】
更に、本実施形態に係る導出部11Dは、導出した地震情報を用いて、断層面をメッシュ状に分割した分割断層モデルを更に導出する。なお、以下では、地震情報が示す物理量を、「震源パラメータ」ともいう。
図5には、各種震源パラメータの定義を示す模式図が示されている。
【0062】
次に、
図6を参照して、本実施形態に係る地盤モデルデータベース92Aについて説明する。
図6は、本実施形態に係る地盤モデルデータベース92Aの構成の一例を示す模式図である。本実施形態に係る地盤モデルデータベース92Aは、地震情報入力支援システム1が対応している領域における、予め定められた範囲毎の地盤の3次元構造を示す地盤モデルを記憶するためのものである。
【0063】
図6に示すように、本実施形態に係る地盤モデルデータベース92Aは、地盤モデル名、範囲、及び地盤モデルの各情報が関連付けられて記憶される。
【0064】
上記地盤モデル名は、対応する地盤モデルの名称を示す情報である。また、上記範囲は、対応する範囲を示す情報であり、本実施形態では、「十勝平野」、「関東平野」といった平野を示す情報を適用している。更に、上記地盤モデルは、対応する地盤モデルそのものを示す情報である。
【0065】
なお、本実施形態では、地盤モデルを、ボーリングデータや微動の極小アレー観測、地震観測記録などのデータに解析を加えることで作成することにより得るものとしているが、これに限るものではない。例えば、一般に公開される汎用の地盤モデルをダウンロードすることで地盤モデルを得る形態としてもよいし、あるいは3次元CAD(Computer Aided Design)ソフトウェアにより作成する形態としてもよい。また、本実施形態では、上述したように、上記範囲を示す情報として平野を示す情報を適用しているが、これに限るものではない。例えば、全国や地方等といった他の範囲を示す情報を、上記範囲を示す情報として適用する形態としてもよい。
【0066】
次に、
図7を参照して、本実施形態に係る断層モデルデータベース92Bについて説明する。
図7は、本実施形態に係る断層モデルデータベース92Bの構成の一例を示す模式図である。本実施形態に係る断層モデルデータベース92Bは、地震情報入力支援システム1が対応している領域における、予め定められた地域毎の断層面の3次元画像を示す断層モデルを記憶するためのものである。
【0067】
図7に示すように、本実施形態に係る断層モデルデータベース92Bは、断層モデルID(Identification)、断層名、対象地域、及び断層モデルの各情報が関連付けられて記憶される。
【0068】
上記断層モデルIDは、対応する断層モデルを個別に識別するために、断層モデルの各々毎に異なる情報として予め割り振られた情報である。また、上記断層名は、対応する断層面の名称を示す情報である。また、上記対象地域は、対応する地域を示す情報であり、本実施形態では、「北海道」、「関東」といった地方名を示す情報を適用している。更に、上記断層モデルは、対応する断層モデルそのものを示す情報である。
【0069】
本実施形態に係る断層モデルは、地盤に影響する断層面を模したものであり、平面状で、かつ、正面視矩形状のモデルであることは上述した通りである。更に、本実施形態に係る断層モデルは、対応する地域毎に、地震の規模に応じた大きさとされると共に、深さ及び傾斜角の各々のデフォルト値が予め設定されている。なお、本実施形態では、断層モデルを、3次元CADソフトウェアを用いて独自に作成することにより得るものとしているが、これに限るものでないことは言うまでもない。
【0070】
なお、図示は省略するが、情報蓄積装置90の記憶部92には、地震情報入力支援システム1が対応している全ての地域を網羅する地図を示す地図情報も予め記憶されている。
【0071】
次に、
図8~
図14を参照して、本実施形態に係る地震情報入力支援装置10の地震情報入力支援処理の実行時における作用を説明する。
図8は、本実施形態に係る地震情報入力支援処理の一例を示すフローチャートである。
【0072】
地震情報入力支援装置10のCPU11が地震情報入力支援プログラム13Aを実行することによって、
図8に示す地震情報入力支援処理が実行される。
図8に示す地震情報入力支援処理は、地震情報入力支援システム1の何れかのユーザ(以下、「対象ユーザ」という。)により、ARグラス70を装着した状態で、地震情報入力支援プログラム13Aの実行を開始する指示入力が入力部74を介して行われた場合に実行される。なお、錯綜を回避するために、以下では、地盤モデルデータベース92A及び断層モデルデータベース92Bが既に構築されている場合について説明する。
【0073】
図8のステップ100で、CPU11は、予め定められた構成とされた初期情報入力画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ102で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0074】
図9には、本実施形態に係る初期情報入力画面の構成の一例が示されている。
図9に示すように、本実施形態に係る初期情報入力画面では、処理対象とする範囲、及び適用対象とする断層モデルの指定を促すメッセージが表示される。また、本実施形態に係る初期情報入力画面では、処理対象とする範囲を入力するための入力領域15Aが表示される。なお、入力領域15Aは、地盤モデルデータベース92Aに登録されている範囲の各々がプルダウン形式で表示されるものとされており、対象ユーザは、プルダウン表示された範囲から所望の範囲を選択的に指定することで、適用する範囲を指定することができる。更に、本実施形態に係る初期情報入力画面では、適用対象とする断層モデルを入力するための入力領域15Bが表示される。なお、入力領域15Bは、断層モデルデータベース92Bに登録されている断層名がプルダウン形式で表示されるものとされており、対象ユーザは、プルダウン表示された断層名から所望のものを選択的に指定することで、適用する断層モデルを指定することができる。
【0075】
一例として
図9に示す初期情報入力画面が表示部15に表示されると、対象ユーザは、入力部14を用いて、処理対象とする範囲(以下、「処理対象範囲」という。)を入力領域15Aにおいて指定し、かつ、適用する断層モデルを示す断層名を入力領域15Bにおいて指定した後、当該画面に表示されている終了ボタン15Cを指定する。ユーザによって終了ボタン15Cが指定されると、ステップ102が肯定判定となってステップ104に移行する。
【0076】
このように、本実施形態では、初期情報入力画面を地震情報入力支援装置10の表示部15により表示することで処理対象範囲等を入力しているが、これに限るものではない。例えば、対象ユーザが装着しているARグラス70に初期情報入力画面を表示させて、当該ARグラス70の入力部74を介して、処理対象範囲等を入力する形態としてもよい。また、本実施形態では、一例として
図9に示すように、処理対象範囲として平野名を入力しているが、これに限るものではない。例えば、処理対象範囲として地方名を入力する形態としてもよい。
【0077】
ステップ104で、CPU11は、処理対象範囲に対応する地盤モデル(以下、「対象地盤モデル」という。)を地盤モデルデータベース92Aから読み出すと共に、指定された断層モデル(以下、「対象断層モデル」という。)を断層モデルデータベース92Bから読み出す。また、ステップ104で、CPU11は、処理対象範囲に対応する地図を示す地図情報を記憶部92から読み出す。なお、本実施形態では、上述したように、対象ユーザによって指定された断層名に対応する断層モデルを読み出しているが、これに限るものではない。例えば、対象ユーザが処理対象範囲として平野名を入力しているため、当該平野名が示す平野が含まれる地域の断層モデルを対象断層モデルとして読み出す形態としてもよい。また、例えば、対象ユーザが処理対象範囲として地方名を入力した場合には、当該地方名が示す地方に対応する断層モデルを対象断層モデルとして読み出す形態としてもよい。この場合、対象地盤モデルとして、上記地方名が示す地方に含まれる、全ての平野の地盤モデルを対象地盤モデルとして読み出す形態としてもよい。
【0078】
ステップ106で、CPU11は、読み出した対象地盤モデルが示す地盤モデル画像、及び対象断層モデルが示す断層モデル画像の、対象ユーザが装着しているARグラス70(以下、「対象ARグラス」という。)のレンズへの投影を行うように対象ARグラスを制御する。この際、CPU11は、読み出した地図情報が示す地図を地盤モデル画像の上面に重ねて投影するように制御する。また、この際、CPU11は、断層モデル画像を、読み出した対象断層モデルに設定された地震の規模に応じた大きさになると共に、設定された深さ及び傾斜角の各々のデフォルト値に対応する状態となるように制御する。
【0079】
一方、対象ARグラスでは、上述した地震情報入力支援プログラム13Aの実行を開始する指示入力が行われた際に、情報処理プログラム73Aの実行を開始する。そして、対象ARグラスでは、情報処理プログラム73Aにより、上述した地震情報入力支援装置10による制御に応じた、地盤モデル画像及び断層モデル画像の投影部75による投影が実行される。
【0080】
この地盤モデル画像及び断層モデル画像の投影が行われることにより、一例として
図10に示すように、対象ARグラスのレンズには、地
図70A1が重ねられた状態で地盤モデル画像70Aが表示されると共に、断層モデル画像70Bが表示される。従って、これ以降、対象ユーザは、これらのモデル画像を視認することができる。なお、
図10に示す例では、錯綜を回避するために背景が省略されているが、実際には、対象ユーザによって背景も視認される状態とされている。また、
図10では、深さ方向が強調されて描画されている。
【0081】
このように、本実施形態では、断層モデル画像70Bが初めは予め設定されたデフォルトの状態で表示されるが、これに限るものではない。例えば、対象ユーザによるAR空間での選択操作に応じて、断層モデル画像70Bの初期の表示状態を決定する形態としてもよい。
【0082】
対象ARグラスによって地盤モデル画像70A及び断層モデル画像70Bが表示されると、対象ユーザは、表示されている断層モデル画像70Bに対して、上述した第1操作~第5操作の各操作を選択的に行う。
【0083】
即ち、対象ユーザは、断層モデル画像70Bの拡大及び縮小を行うことで、地震の規模を変更する。その際、CPU11は、後述する地震の規模(マグニチュード)の算出結果をAR画像として表示するように制御することで、対象ユーザは、その時点で設定している地震の規模の数値を確認しながら、当該地震の規模を設定することができる。
【0084】
また、対象ユーザは、地盤モデル画像70Aを参照しながら断層モデル画像70Bを移動させることで、断層モデル画像70Bを地盤モデル画像70Aの下部の任意の位置に配置する。これにより、断層面の緯度、経度、深さが決定される。また、対象ユーザは、断層モデル画像70Bを水平方向に回転させることで、断層面の走向を変更し、断層モデル画像70Bの傾斜角を変更することで、断層面の傾斜角を変更する。なお、対象ユーザによる、これらの操作の操作順は、説明した順に限るものでないことは言うまでもない。
【0085】
一方、対象ARグラスは、地盤モデル画像70A及び断層モデル画像70Bの表示を開始すると、情報処理プログラム73Aにより、撮影部77による撮影を開始する。また、対象ARグラスは、情報処理プログラム73Aにより、当該撮影により得られた動画像を示す画像情報を用いることで、対象ユーザによる断層モデル画像70Bに対する操作が一段落するまで待機する。そして、対象ARグラスは、情報処理プログラム73Aにより、その時点における断層モデル画像70Bが示す断層モデルの端点の3次元座標(X,Y,Z座標)、及び当該断層モデルの回転角度の各情報(以下、「座標角度情報」という。)を地震情報入力支援装置10に送信する。
【0086】
そこで、ステップ108で、CPU11は、対象ARグラスから座標角度情報が受信されるまで待機することで、上記3次元座標(X,Y,Z座標)、及び回転角度を取得する。この回転角度から、断層面の走向strike及び傾斜角dipの数値を得ることができる。この値を模擬地震動の算定に使用する。
【0087】
ステップ110で、CPU11は、取得した3次元座標から、断層面の長さL(km)、断層面の幅W(km)、及び断層面の面積S(km2)を算出する。
【0088】
ステップ112で、CPU11は、算出した断層面の面積S(km2)を用いて、巨視的な震源パラメータ(以下、「巨視的震源パラメータ」という。)である地震モーメントM0(N・m)、地震規模(モーメントマグニチュード)MW、震源断層全体の平均すべり量D(m)、アスペリティの総面積Sa(km2)を算出する。以下に、その計算過程を示す。なお、以下に示す演算式は、「地震調査研究推進本部 地震調査委員会;震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」),2020年3月」を参考として適用している。
【0089】
<地震モーメントの算出>
【0090】
断層面の面積S(km2)との経験的関係から、地震モーメントM0(N・m)を算出する。例えば、Somerville et al.(1999)による以下の式(1)を適用する。
【0091】
【0092】
なお、地震モーメントの大きさに応じた複数の経験式が提案されているため、当該複数の経験式を装置内に記憶しておき、震源断層の規模に応じて式を選択的に適用する形態としてもよい。
【0093】
<地震規模の算出>
【0094】
地震モーメントM0(N・m)から、モーメントマグニチュードMWを式(2)により算出する(Kanamori,1977)。この値を対象ARグラスに表示することで、対象ユーザは、その時点の自らが設定した地震の規模を確認しながら操作することができる。
【0095】
【0096】
<平均すべり量の算出>
【0097】
地震モーメントM0(N・m)と断層面の面積S(km2)と剛性率μ(N/m2)から、震源断層全体の平均すべり量D(m)を式(3)により算出する。
【0098】
【0099】
ここで、剛性率μは、地震発生層の密度ρ(kg/m3)、S波速度β(km/s)から、次の式(4)により算出される。密度ρとS波速度βは対象ユーザが自ら設定してもよいが、一般的な値を事前に設定しておくことで専門家以外でも計算を実行することができる(例えば、ρ=2.7(g/cm3)、β=3.4(km/s)等)。
【0100】
【0101】
<アスペリティの総面積の算出>
【0102】
地震モーメントM0(N・m)とS波速度β(km/s)から、次の式(5)及び式(6)によりアスペリティの総面積Sa(km2)を算出する。
【0103】
【0104】
【0105】
ここで、A(N・m/s2)は短周期レベルであり、地震モーメントM0(N・m)との経験的関係から、次の式(7)によって求めることができる。
【0106】
【0107】
ステップ114で、CPU11は、以上の処理によって得られた断層面の走向、断層面の傾斜角、巨視的震源パラメータの値等を対象ARグラスに表示させるように制御する。巨視的震源パラメータ等が対象ARグラスで表示されると、対象ユーザは、それらの値を確認して、必要があれば断層モデルの状態を修正し、所望の値となった時点で、対象ARグラスの入力部74に対して、設定が終了したことを示すものとして予め定められた操作(以下、「設定終了操作」という。)を行う。この設定終了操作に応じて、情報処理プログラム73Aは、設定終了操作が行われたことを示す設定終了情報を地震情報入力支援装置10に送信する。
【0108】
そこで、ステップ116で、CPU11は、設定終了情報が受信されたか否かを判定することで、表示した巨視的震源パラメータ等に問題がないか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ106に戻る一方、肯定判定となった場合はステップ118に移行する。
【0109】
ステップ118で、CPU11は、断層面の長さL及び幅Wから分割数m×nを決定し、断層モデル画像70Bに反映させる。例えば、2km四方といったように、予めメッシュサイズの基準値を設定しておくことで、自動で分割数を設定することができる。長さL及び幅Wが基準値(例えば、2)の倍数でない場合には、基準値に最も近い分割可能な値を使用することで対応する。分割数とステップ108の処理で取得した断層面の端点の座標から、各メッシュの中心位置の座標を得ることができる。この値を模擬地震動の算定に使用する。
【0110】
ここで、対象ユーザは、一例として
図11に示すように、断層モデル画像70Bにおける断層面のうち、アスペリティとする部分を設定する。このとき、対象ユーザは断層面を指でなぞることでアスペリティ領域を指定する。これに応じて、対象ARグラスは、情報処理プログラム73Aにより、対象ユーザによって指定されたアスペリティ領域を示す情報(以下、「アスペリティ領域情報」という。)を地震情報入力支援装置10に送信する。
【0111】
そこで、ステップ120で、CPU11は、対象ARグラスからアスペリティ領域情報を受信し、対象ユーザによって指定されたアスペリティ領域内に含まれるメッシュを選択して、その中心座標を特定する。その際、メッシュの中心座標が、指定されたアスペリティ領域内に位置しているか否かによって、アスペリティとするメッシュを選別する。
【0112】
ステップ122で、CPU11は、アスペリティ内のメッシュの中心座標を用いて、アスペリティの総面積Sa(km2)を再度計算する。
【0113】
ステップ124で、CPU11は、アスペリティの平均すべり量Da(m)とアスペリティの総面積Sa(km2)と剛性率μ(N/m2)から、アスペリティ全体の地震モーメントM0a(N・m)を式(8)により算出する。
【0114】
【0115】
アスペリティ全体の平均すべり量Da(m)は、式(9)により、震源断層全体の平均すべり量D(m)のξ倍として求められる。上記「レシピ」を参考に、ξ=2とする。
【0116】
【0117】
ステップ120の処理によって得られたアスペリティ領域内のメッシュの中心座標を用いて、アスペリティ領域内の各メッシュに地震モーメントを割り付ける。アスペリティ領域内に含まれるメッシュの中心座標がNa個の場合、各座標にはM0a/Naずつ地震モーメントが割り当てられる。この値を模擬地震動の算定に使用する。
【0118】
ステップ126で、CPU11は、全体の地震モーメントM0(N・m)とアスペリティ全体の地震モーメントM0a(N・m)から、背景領域の地震モーメントM0b(N・m)を次の式(10)により算出する。
【0119】
【0120】
各メッシュの中心座標を用いて、背景領域内の各メッシュに地震モーメントを割り付ける。全体の座標がN個、アスペリティ領域内に含まれるメッシュの中心座標がNa個の場合、背景領域の各座標にはM0b/(N-Na) ずつ地震モーメントが割り当てられる。この値を模擬地震動の算定に使用する。
【0121】
ステップ128で、CPU11は、以上の処理によって得られたアスペリティに関する情報を対象ARグラスに表示するように制御する。この際、CPU11は、一例として
図12に示すように、断層モデル画像70Bのアスペリティ部におけるメッシュを強調して表示し、アスペリティの面積、アスペリティの背景領域の地震モーメントの数値等を表示するように制御する。その際、ステップ112の処理によって算出した平均的なアスペリティの総面積と、自身が設定したアスペリティの総面積との比をAR空間上に表示することで、対象ユーザは、平均的な値に対してどれだけ乖離しているか確認しながら判定することができる。
【0122】
対象ユーザは、表示された情報を確認しつつ、必要に応じてアスペリティの位置及び形状を変更し、所望の情報となった時点で、対象ARグラスの入力部74に対して、設定が終了したことを示す設定終了操作を行う。この設定終了操作に応じて、情報処理プログラム73Aは、設定終了操作が行われたことを示す設定終了情報を地震情報入力支援装置10に送信する。
【0123】
そこで、ステップ130で、CPU11は、設定終了情報が受信されたか否かを判定することで、表示したアスペリティに関する情報に問題がないか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ120に戻る一方、肯定判定となった場合はステップ132に移行する。
【0124】
ここで、対象ユーザは、破壊開始点及び破壊方向を設定する。このとき、対象ユーザは、断層モデル画像70Bにおける断層面を指でなぞることで、破壊開始点及び破壊方向を設定する。これに応じて、対象ARグラスは、情報処理プログラム73Aにより、対象ユーザによる指の動きを示す情報(以下、「指動情報」という。)を地震情報入力支援装置10に送信する。
【0125】
そこで、ステップ132で、CPU11は、対象ARグラスから指動情報を受信し、当該指動情報を用いて、一例として
図13に示すように、対象ユーザの指の動き出し位置を破壊開始位置として認識し、最も近いメッシュの中心座標を取得する。また、CPU11は、指の動いた方向から破壊方向のベクトル情報を取得する。この方向をすべり角として、模擬地震動の算定に用いる。
【0126】
ステップ134で、CPU11は、破壊開始点及び破壊方向を示す矢印を断層モデル画像70Bに重ねて表示するように制御する。これに応じて、対象ユーザは、必要に応じて再度破壊開始点及び破壊方向を設定し、所望のものとなった時点で、対象ARグラスの入力部74に対して、設定が終了したことを示す設定終了操作を行う。この設定終了操作に応じて、情報処理プログラム73Aは、設定終了操作が行われたことを示す設定終了情報を地震情報入力支援装置10に送信する。
【0127】
そこで、ステップ136で、CPU11は、設定終了情報が受信されたか否かを判定することで、表示した破壊開始点及び破壊方向に問題がないか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ132に戻る一方、肯定判定となった場合はステップ138に移行する。
【0128】
ステップ138で、CPU11は、破壊開始点の座標から全てのメッシュの中心座標への破壊到達時間を算出し、各メッシュのすべり出し時間tbegi(s)を設定する。すべり出し時間tbegi(s)は、座標間の距離di(km)と破壊伝播速度Vr(km/s)により、次の式(11)によって算出することができる。
【0129】
【0130】
ここで、iは座標番号、t0(s)は破壊開始点のすべり出し時間(=0) である。破壊伝播速度Vr(km/s)は、地震発生層のS波速度β(km/s)との経験式である式(12)によって算出する。
【0131】
【0132】
但し、破壊到達時間を全てのメッシュの中心座標から直接算出すると、面全体を破壊が一様に進展することとなり、強震波形の計算結果が極端なものとなる可能性がある。不均質な断層破壊を想定するために、以下の方法によって破壊伝播のゆらぎを考慮する。
【0133】
一例として
図14に示すように、各メッシュの中心座標(x
0i,y
0i,z
0i)を、メッシュの長さl
mesh(km)、メッシュの幅W
mesh(km)の範囲内でランダムに変更して、ゆらぎを考慮した中心座標(x
i,y
i,z
i)を求める。
【0134】
そして、ゆらぎを考慮した中心座標(xi,yi,zi)を用いて、各メッシュのすべり出し時間tbegiを算出する。
【0135】
ステップ140で、CPU11は、断層面の幅W(km)、及び破壊伝播速度Vr(km/s)から、次の式(13)及び式(14)によってライズタイムtrを算出する。この値を模擬地震動の算定に使用する。
【0136】
【0137】
【0138】
ステップ142で、CPU11は、以上の各ステップで算出したパラメータを用いて模擬地震動の算定を行い、その後に本地震情報入力支援処理を終了する。
【0139】
以上説明したように、本実施形態によれば、対象とする地盤の3次元構造を示す地盤モデル、及び地盤に影響する断層面を模した平面状の断層モデルを表示部(本実施形態では、ARグラスのレンズ)に3次元表示する制御を行い、地盤モデル及び断層モデルを表示部に3次元表示した状態で、当該断層モデルに対する仮想的な操作を受け付け、受け付けた操作に応じて、断層モデルの表示状態を変更し、断層モデルの変更後の表示状態、及び地盤モデルの断層モデルの表示位置に対する位置関係に応じて、地盤に対して影響する情報であり、かつ、断層面のすべりに関する物理量である地震情報を導出している。従って、仮想的な空間での操作による情報の入力を行わない場合に比較して、より容易に地震情報の入力を行うことができる。
【0140】
また、本実施形態によれば、断層モデルを、平面状で、かつ、正面視矩形状のモデルとしている。従って、断層モデルを他の形状のモデルとする場合に比較して、操作性を、より向上させることができる。
【0141】
また、本実施形態によれば、地震情報に、断層面の位置、断層面の規模、アスペリティの面積、アスペリティの位置、破壊開始点、及び破壊方向を含めている。従って、これらの物理量を容易に入力することができる。
【0142】
また、本実施形態によれば、上記操作として、断層モデルを、各々、移動させる操作、拡大及び縮小させる操作、傾斜させる操作、なでる操作、及び回転させる操作を適用している。従って、比較的簡易な操作によって地震情報を入力することができる。
【0143】
更に、本実施形態によれば、導出した地震情報を用いて、断層面をメッシュ状に分割した分割断層モデルを更に導出している。従って、より高精度に地震情報を導出することができる。
【0144】
なお、上記実施形態では、本発明を、AR技術による仮想空間を適用して実現する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、本発明を、タッチパネルディスプレイを備えた携帯型の端末装置を適用して実現する形態としてもよい。
【0145】
図15には、この場合の地震情報入力支援システム1の構成の一例を示すブロック図が示されている。なお、
図15では、
図1と同一の構成要素に対して
図1と同一の符号を付している。
【0146】
図15に示す形態例は、上記実施形態に係る地震情報入力支援システム1に対して、タッチパネルディスプレイ80Aを備えた携帯型の端末装置80を更に適用する点が、当該地震情報入力支援システム1と相違している。
【0147】
この形態では、地震情報入力支援装置10のCPU11は、地盤モデル画像70Aについては上記実施形態と同様にARグラス70に仮想的に表示させる制御を行う一方、断層モデル画像70BについてはARグラス70への表示は行わない。そして、この形態では、ユーザが、タッチパネルディスプレイ80Aの表示面をすべり面と見立てて、当該表示面に対して、上述した断層モデル画像70Bに対する操作と同様に操作する。その一方で、地震情報入力支援装置10のCPU11は、タッチパネルディスプレイ80Aの表示面を断層面として、断層モデル画像70Bに代えてARグラス70により仮想的に表示させる制御を行う。
【0148】
この際、CPU11は、断層面の表示位置を、タッチパネルディスプレイ80Aの表示面の実際の位置より前方側に表示するように制御する形態としてもよい、この形態によれば、タッチパネルディスプレイ80Aの画面上で断層面の位置を確認することができるため、ユーザにとっての利便性を、より向上させることができる。
【0149】
また、この形態において、タッチパネルディスプレイ80Aにスライダーを表示することで、当該スライダーを用いて地震の規模を入力する形態としてもよい。更に、この形態において、断面層を拡大表示することで、アスペリティの位置や、破壊伝播速度、破壊伝播方向、及び破壊開始点等を、タッチ操作やドラッグ操作等によって入力する形態としてもよい。
【0150】
また、本発明は、以上のようなAR技術による仮想空間を適用して実現する形態や、携帯型の端末装置を適用して実現する形態の他、VR(Virtual Reality:仮想現実)技術による仮想空間を適用して実現する形態としてもよい。この場合、ARグラス70に代えてVRゴーグルを用いることとなる。
【0151】
また、上記実施形態では、地盤モデル画像70A、断層モデル画像70B、及び地震情報を仮想的に表示する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、表示制御部11Aにより、対象地盤に関する地球物理学に関する地球物理学情報を表示する制御を更に行う形態としてもよい。また、この形態において、地球物理学情報に、プレート構造に関する情報、震源分布に関する情報、地表の活断層線に関する情報、及び地震発生層に関する情報を含める形態としてもよい。この形態によれば、直感的に各種情報との位置関係を把握しながら震源パラメータを設定できるようになり、ユーザにとっての利便性を、より向上させることができる。以下、この形態について、具体的に説明する。
【0152】
従来は、複数枚の平面図や断面図、或いは数値情報と見比べながら震源パラメータを設定する必要があり、直感的にパラメータを設定することができず、作業に手間がかかっていた。また、震源分布やプレート構造は3次元的に分布しているため、平面図や断面図といった2次元の図だけでは情報を網羅できているか確認することができず、作業者以外が妥当性を検証する際に時間がかかっていた。
【0153】
これに対し、各種情報の表示と震源パラメータの操作を同一の空間上で行うことで、直感的にパラメータを設定でき、かつ第三者の目から見ても妥当性が容易に確認できるようになる。
【0154】
3次元で地震情報を表示するシステム自体は既に存在している(例えば、防災科学技術研究所の3次元震源分布、インターネット<URL:https://www.hinet.bosai.go.jp/topics/ThreeJS/?LANG=ja>等)。しかしながら、情報の表示と同一の空間内で震源を操作してパラメータを設定できるシステムは存在しない。
【0155】
以下、空間上に表示する地球物理学情報と、その情報に基づいて断層モデルを配置する場合の形態例について説明する。
【0156】
<プレート構造>
【0157】
一例として
図16(出典:https://www.jishin.go.jp/main/yogo/e.htm)に示すような日本周辺のプレート構造を仮想空間上に表示する。南海トラフに代表されるようなプレート境界地震は、プレート同士の境界部でひずみが蓄積することにより周期的に発生すると考えられている地震である。この地震について計算する場合は、断層面をプレート境界部に沿うように設定する必要がある。一例として
図17に示すように、自動でプレート境界部に沿うような形で断層モデルを設定する機能を設けることで、容易にプレート境界地震について計算することができる。
【0158】
<震源分布>
【0159】
一例として
図18に示すように、震源分布を仮想空間上に表示する。この場合、発震時や地震の規模を指定、若しくは選択して、当該震源分布を表示する形態が考えられる。過去に発生した地震について断層モデルを設定する際、余震を含めた一連の地震活動の分布を参考にして設定する必要がある。そこで、過去の震源分布を確認しながら断層モデルを配置することができる機能を装備する。
【0160】
<活断層線>
【0161】
地震調査研究推進本部等で公開されている活断層の評価をもとに、一例として
図19に示すように、活断層の地表トレース線を仮想空間上に表示する。活断層について地震動の計算を実施したい場合は、操作者は表示した活断層線から任意のものを選択する。その線に上端が沿うように断層モデルが表示され、当該断層モデルを深さ方向に拡大や縮小を行ったり、傾斜角を変更したりすることで、調査結果に基づいた断層モデルを容易に設定することができる。また、地殻内の地震が発生すると考えられる領域(地震発生層)を合わせて表示することによって、不自然な断層面を設定しないように補助することができるようになる。
【0162】
また、上記実施形態では、本発明の地震情報入力支援装置を、地震情報入力支援装置10及び情報蓄積装置90の各装置を用いて適用した場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、地震情報入力支援装置10及び情報蓄積装置90を一体化した単一の装置で本発明の地震情報入力支援装置を構成する形態としてもよいし、ARグラス70に対して本発明の地震情報入力支援装置を組み込む形態としてもよい。この形態においては、地震情報入力支援装置10において実行した地震情報入力支援処理をARグラス70において実行することになる。
【0163】
また、上記実施形態では、本発明の断層モデルとして、平面状で、かつ、正面視矩形状のモデルを適用した場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、本発明の断層モデルとして、矩形が複数連なった形状のモデルや、予測精度向上のため、より複雑な曲線や曲面のモデル等を適用する形態としてもよい。
【0164】
また、上記実施形態において、例えば、表示制御部11A、受付部11B、変更部11C、及び導出部11Dの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0165】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0166】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0167】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0168】
1 地震情報入力支援システム
10 地震情報入力支援装置
11 CPU
11A 表示制御部
11B 受付部
11C 変更部
11D 導出部
12 メモリ
13 記憶部
13A 地震情報入力支援プログラム
14 入力部
15 表示部
15A 入力領域
15B 入力領域
15C 終了ボタン
16 媒体読み書き装置
17 記録媒体
18 通信I/F部
70 ARグラス
70A 地盤モデル画像
70A1 地図
70B 断層モデル画像
71 CPU
72 メモリ
73 記憶部
73A 情報処理プログラム
74 入力部
75 投影部
77 撮影部
78 無線通信部
80 端末装置
80A タッチパネルディスプレイ
90 情報蓄積装置
92 記憶部
92A 地盤モデルデータベース
92B 断層モデルデータベース