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特開2024-83119揚水発電を用いた電力需要調整サーバ及び電力需要調整システム
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  • 特開-揚水発電を用いた電力需要調整サーバ及び電力需要調整システム 図1
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  • 特開-揚水発電を用いた電力需要調整サーバ及び電力需要調整システム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083119
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】揚水発電を用いた電力需要調整サーバ及び電力需要調整システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20240613BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20240613BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240613BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240613BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20240613BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20240613BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J15/00 C
H02J3/38 130
H02J13/00 311R
H02J13/00 301A
H02J3/46
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197461
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 計明
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC08
5G064CB06
5G064CB10
5G064DA02
5G066AA03
5G066AA09
5G066FA01
5G066HA15
5G066HB01
5G066HB02
5G066HB06
5G066HB08
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電力需要調整の要請があったときに、揚水発電装置を運転させるかを判定する揚水発電を用いた電力需要調整サーバ及び電力需要調整システムを提供する。
【解決手段】電力需要調整サーバ20は、電力需要を増加するように調整する際に、電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬と、現在の単位当たりの電気料金とを取得する取得部30と、揚水発電装置の特性と、発電時の単位当たりの電気料金とに基づいて、電力需要の調整において上池に水をくみ上げた場合の揚水発電期待値を算出する算出部32と、電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬と、現在の単位当たりの電気料金と、揚水発電期待値とに基づいて、電力需要を増加するように調整するか否かを判定する判定部34と、判定部による判定結果に応じて揚水発電装置に対して運転指令を出力する出力部36と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車が連結した発電電動機の下部に設置された下池から、上部に設置された上池にくみ上げた水を、前記上池から前記下池に流すことで発電する揚水発電装置を有する需要家の電力需要を調整するための、揚水発電を用いた電力需要調整サーバであって、
電力需要を増加するように調整する際に、電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬と、現在の単位当たりの電気料金とを取得する取得部と、
揚水発電装置の特性と、発電時の単位当たりの電気料金とに基づいて、前記電力需要の調整において前記上池に水をくみ上げた場合の揚水発電期待値を算出する算出部と、
電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬と、現在の単位当たりの電気料金と、前記揚水発電期待値とに基づいて、電力需要を増加するように調整するか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果に応じて前記揚水発電装置に対して運転指令を出力する出力部と、
を含む電力需要調整サーバ。
【請求項2】
前記算出部は、前記揚水発電装置の特性に基づいて、所定時間だけ、前記下池から前記上池に水をくみ上げるように前記揚水発電装置を運転させた場合の揚水量に応じた発電量を算出し、前記算出した前記発電量と、発電時の単位当たりの電気料金とに基づいて、前記揚水発電期待値として、削減できる電気料金を算出する請求項1記載の電力需要調整サーバ。
【請求項3】
前記需要家は、太陽光発電装置を更に有する請求項1記載の電力需要調整サーバ。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項記載の電力需要調整サーバと、
揚水発電装置と、
を含む電力需要調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚水発電を用いた電力需要調整サーバ及び電力需要調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
揚水発電所は、電力需要の少ない時間帯に揚水し、電力需要の多い時間帯に発電するピークシフト電源として一般的である。
【0003】
マイクロ水力発電は、工場排水等の未利用エネルギーを利用した発電システムで、100kW以下容量のものと定義される。小水力発電は、小規模の河川にダム式水力発電所を設置する、1MW以下の容量のものと定義される。
【0004】
電力系統に連系される揚水発電装置を制御する技術として、特許文献1には、電力系統に連系される複数の揚水発電装置と、複数の揚水発電装置に有効電力指令を送信する電力指令装置と、を備え、電力指令装置は、複数の揚水発電装置の各々の有効電力と、複数の揚水発電装置の各々の最低有効電力と、他のシステムとの需給バランスを司る中央制御装置から送信される、需給バランスで必要となるシステム有効電力を指定するためのシステム有効電力指令、および需給バランスで必要となるシステム有効電力に係る変化率と、に基づいて、複数の揚水発電装置のうちの稼動できる揚水発電装置が運転モードの切替えにより稼動できない一または複数の揚水発電装置の最低有効電力を補償できるように複数の揚水発電装置の有効電力指令を決定して送信するようにしたことが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、電力需給制御装置は、電力市場から調達するリスクを伴う調達用電源ごとに、過去に制御を行ったときの制御が指令通りに達成された度合いを示す制御達成確率と、調達用電源ごとの電源出力とをもとに、必要とされる電源出力を調達用電源が出力できなくなる確率である電源調達リスクデータを算出する電源調達リスク算出部と、電源調達リスクデータが所定基準に達するまで、需給制御計画データに対して調達用電源を追加する需給制御計画修正部とを備えることが記載されている。また、揚水発電電源を、調達用電源として用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-176564号公報
【特許文献2】特開2019-91106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
九州地区では、太陽光発電の供給力が電力需要に対して上回り、発電抑制指示が日常的に発出されており、太陽光発電事業者の視点では、売電ができないことで収益難となり、電力送電網管理者の視点では、電力系統の安全確保を最優先とするために致し方ない判断であるとされている。
【0008】
太陽光発電できる時間帯に、発電できていないということは経済的な損失だけでなく、地球温暖化対策の機会逸失となり、国としても補助金を確保して、何とか太陽光発電の発電電力の有効利用化させるために、蓄電池の早期低コスト化の実現のために技術開発補助金支援や高価な蓄電池の設置補助金を拡充している。
【0009】
しかしながら、蓄電池は高価なため普及が伸び悩んでいるのが実態である。
【0010】
上記特許文献2では、電力需給制御において、揚水発電電源を用いることが記載されているが、電力需要を増加するように調整する場合に、揚水発電装置を運転させるかどうか判定する方法については言及されていない。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、電力需要調整の要請があったときに、揚水発電装置を運転させるかどうか判定することができる、揚水発電を用いた電力需要調整サーバ及び電力需要調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る電力需要調整サーバは、水車が連結した発電電動機の下部に設置された下池から、上部に設置された上池にくみ上げた水を、前記上池から前記下池に流すことで発電する揚水発電装置を有する需要家の電力需要を調整するための、揚水発電を用いた電力需要調整サーバであって、電力需要を増加するように調整する際に、電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬と、現在の単位当たりの電気料金とを取得する取得部と、揚水発電装置の特性と、発電時の単位当たりの電気料金とに基づいて、前記電力需要の調整において前記上池に水をくみ上げた場合の揚水発電期待値を算出する算出部と、電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬と、現在の単位当たりの電気料金と、前記揚水発電期待値とに基づいて、電力需要を増加するように調整するか否かを判定する判定部と、前記判定部による判定結果に応じて前記揚水発電装置に対して運転指令を出力する出力部と、を含んで構成されている。
【0013】
第1の発明によれば、取得部によって、電力需要を増加するように調整する際に、電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬と、現在の単位当たりの電気料金とを取得する。算出部によって、揚水発電装置の特性と、発電時の単位当たりの電気料金とに基づいて、前記電力需要の調整において前記上池に水をくみ上げた場合の揚水発電期待値を算出する。そして、判定部によって、電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬と、現在の単位当たりの電気料金と、前記揚水発電期待値とに基づいて、電力需要を増加するように調整するか否かを判定する。出力部によって、前記判定部による判定結果に応じて前記揚水発電装置に対して運転指令を出力する。
【0014】
このように、揚水発電装置の特性と、発電時の単位当たりの電気料金とに基づいて、前記電力需要の調整において前記上池に水をくみ上げた場合の揚水発電期待値を算出し、電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬と、現在の単位当たりの電気料金と、前記揚水発電期待値とに基づいて、電力需要を増加するように調整するか否かを判定することにより、電力需要調整の要請があったときに、揚水発電装置を運転させるかどうか判定することができる。
【0015】
また、第2の発明に係る電力需要調整システムは、上記発明の電力需要調整サーバと、揚水発電装置と、を含む。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の揚水発電を用いた電力需要調整サーバ及び電力需要調整システムによれば、電力需要調整の要請があったときに、揚水発電装置を運転させるかどうか判定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る電力需要調整システムを示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る揚水発電装置の構成を示す概略図である。
図3】本発明の実施の形態に係るサーバを示すブロック図である。
図4】本発明の実施の形態に係るサーバにおける需要調整処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
<電力需要調整システムのシステム構成>
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る電力需要調整システム100は、需要家毎に備えられた、太陽光発電装置10、揚水発電装置12、及び制御装置16と、エネルギーセンター側に設けられたサーバ20とを備えている。需要家毎の制御装置16とサーバ20は、インターネットなどのネットワーク41を介して相互に接続されている。なお、サーバ20が、電力需要調整サーバの一例である。
【0020】
揚水発電装置12は、例えば、屋外に設置される。揚水発電装置12は、図2に示すように、水車(図示省略)が連結した発電電動機54の下部に設置された下池52から、ポンプ56を用いて、上部に設置された上池50にくみ上げた水を、上池50から下池52に流して水車を回すことで発電電動機54が発電する。
【0021】
より具体的には、揚水発電装置12が連系する電力系統内の電力需要が多いときや、単位当たりの電気料金が高いときに、上池50から下池52への水の高低差および流量を利用して水車を回転させて発電電動機54による発電運転を行う。一方、揚水発電装置12が連系する電力系統内の電力需要の少ないときは、電力系統からの電力を利用してポンプ56を作動させることで、下池52から上池50に水を汲み上げる揚水運転を行う。
【0022】
制御装置16は、サーバ20から受信した、サーバ20により決定された当該需要家における揚水発電装置12の運転指令に基づいて、揚水発電装置12の運転を制御する。
【0023】
サーバ20は、太陽光発電装置10と揚水発電装置12を各々有する需要家からなる需要家群の電力需要を調整する。
【0024】
図3に示すように、サーバ20は、通信部22と、演算部24とを備えている。演算部24は、取得部30と、算出部32と、判定部34と、出力部36とを備えている。
【0025】
通信部22は、外部から電力需要調整の要請を受信する。また、通信部22は、外部から、電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬と、現在の単位当たりの電気料金とを受信する。
【0026】
取得部30は、電力需要を増加するように調整する際に、電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬と、現在の単位当たりの電気料金と、予め定められた、各需要家の揚水発電装置12の特性とを取得する。
【0027】
算出部32は、各需要家について、揚水発電装置12の特性と、発電時の単位当たりの電気料金とに基づいて、電力需要の調整において上池50に水をくみ上げた場合の揚水発電期待値を算出する。
【0028】
具体的には、算出部32は、各需要家について、当該需要家が有する揚水発電装置12の特性に基づいて、所定時間だけ、下池52から上池50に水をくみ上げるように揚水発電装置12を運転させた場合の揚水量に応じた発電量を算出し、算出した発電量と、発電時の単位当たりの電気料金とに基づいて、揚水発電期待値として、削減できる電気料金を算出する。
【0029】
より具体的には、太陽光発電装置10の発電しない夜間時間帯に、電力需要を増加するように電力需要調整の要請があった場合は、揚水発電期待値[円/kWh]は以下の計算で求められる。
【0030】
ここで、例えば、揚水ポンプの消費電力、発電電力は以下の式で求められる。
【0031】
(揚水ポンプの消費電力)=9.8QH/η
(発電電力)=9.8QHη
【0032】
ここで、揚水発電装置12の特性として、流量をQ(m/s)、全揚程をH(m)、ポンプ効率をη、発電効率をηとする。一般にη、ηは0.6程度である。
【0033】
例えば、定格出力100kWのモータで駆動するポンプ56を用い、所定時間として3時間揚水した場合、
理論流量Q=消費電力×ポンプ効率η/(重力加速度×全揚程H)
であるため、全揚程H=10m、ポンプ効率η=0.6とすれば、理論流量Qは約36.7m/min(=100(kW)×0.6×10/(9.8(m/s)×10(m))なので、3時間で6612m(=36.7×180)の水を上池50に揚水できる。一般的には100kW出力のIE3グレードの高効率モータの効率は96%程度であるが、ここではモータ効率は計算の便宜上100%と考える。
【0034】
発電時の流量を36.7m/minとし、全落差を10mとし、発電効率η=0.6とすると、36kW(=9.8×0.612×10×0.6。ただし、0.612(m/s)=36.7(m/min)/60)の発電を3時間継続することができ、合計108kWhの発電をすることができる。また、発電時の単位当たりの電気料金を30円とすると、揚水発電期待値は、3240円(=108×30)となり、3240円の電気料金を削減することができる。
【0035】
判定部34と、電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬と、現在の単位当たりの電気料金と、揚水発電期待値とに基づいて、電力需要を増加するように調整するか否かを判定する。
【0036】
具体的には、太陽光発電装置10の発電しない夜間時間帯において電力需要を増加させるように揚水する場合は、
(電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬[円]+揚水発電期待値[円])>当該時間帯の電気代[円]
である場合には、ポンプ56による揚水を実行して、電力需要を増加するように調整すると判定する。
【0037】
例えば、消費電力100[kW]のポンプ56で3時間揚水するとき、電力需要の調整に応じた1kWhあたりの報酬(20円)を3時間にわたり得ることができる。
ポンプ56の消費電力単位は(kW)であり、消費電力100(kW)で一時間ポンプ揚水すれば、100(kW)×1(h)=100(kWh)であり、100(kW)で3時間ポンプ揚水すれば、100(kW)×3(h)=300(kWh)となる。
従って、報酬は6000円(=300(kWh)×20(円/kWh))となる。
【0038】
ただし、計算の便宜上、モータ効率を100%とし、ポンプ効率を0.6と仮定しているため、モータ入力電力100(kW)=モータ定格出力100(kW)であり、ポンプ機械出力60(kW)である。
【0039】
このように、3時間の揚水で100kWhの電力需要を増加する場合、6000円の報酬を得ることができる。さらに、揚水発電装置12により放水発電する時間帯を、ダイナミックプライシング制度の電気代が高い時間帯とし、電気代が30円/kWhの時間帯を選択し、放水発電したと考える。報酬[円]+揚水発電期待値[円]は、9240円となる。一方、当該時間帯の電気代は、9000円(=3×100×30)である。
【0040】
従って、9240円>9000円であるため、電力需要を増加するように調整すると判定する。
【0041】
上記のように、揚水発電による発電電力量や、揚水消費電力量は一定値となるが、時間帯によって報酬額と当該時間帯の電気代単価は市場により変動する。従って、リアルタイムで電力市場価格を参照して、過去の電気代推移から、いつ放水発電すべきかを、学習モデルを用いて、最大利益を得られるように決定してもよい。
【0042】
出力部36は、各需要家に対して、判定結果に応じて揚水発電装置12に対して運転指令を出力する。
【0043】
<電力需要調整システム100の動作>
次に、本実施形態に係る電力需要調整システム100の動作について説明する。
【0044】
電力需要調整の要請があったときに、サーバ20により、図4に示す需要調整処理ルーチンが実行される。
【0045】
まず、ステップS100において、取得部30は、電力需要を増加するように調整する際に、電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬と、現在の単位当たりの電気料金と、揚水発電装置12を有する各需要家の揚水発電装置12の特性とを取得する。
【0046】
ステップS102において、算出部32は、揚水発電装置12を有する各需要家に対して、揚水発電装置12の特性と、発電時の単位当たりの電気料金とに基づいて、電力需要の調整において上池50に水をくみ上げた場合の揚水発電期待値を算出する。
【0047】
ステップS104において、判定部34は、揚水発電装置12を有する各需要家に対して、電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬と、現在の単位当たりの電気料金と、揚水発電期待値とに基づいて、電力需要を増加するように調整するか否かを判定する。
【0048】
ステップS106において、出力部36は、揚水発電装置12を有する各需要家に対して、判定結果に応じて揚水発電装置12に対して運転指令を出力する。そして、需要調整処理ルーチンを終了する。
【0049】
そして、需要家毎の制御装置16は、受信した当該需要家の揚水発電装置12の運転指令に基づいて、揚水発電装置12の運転を制御する。
【0050】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る電力需要調整システムによれば、揚水発電装置の特性と、発電時の単位当たりの電気料金とに基づいて、電力需要の調整において上池に水をくみ上げた場合の揚水発電期待値を算出し、電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬と、現在の単位当たりの電気料金と、揚水発電期待値とに基づいて、電力需要を増加するように調整するか否かを判定することにより、電力需要調整の要請があったときに、揚水発電装置を運転させるかどうか判定することができる。
【0051】
また、太陽光発電の供給力が電力需要に対して上回り太陽光発電事業者が売電できなくなることを抑制することができるため、太陽光発電事業者は、太陽光発電設備利用率を高め、発電事業の収益性を改善できる。
【0052】
また、蓄電池は満充電になると電力消費できなくなるため、電力需要を増加するように調整する対応には限界があるが、揚水発電装置は、満水となっても自然循環させることで時間無制限に電力需要を増加するように調整することができる。具体的には、電力需要を増加させるように電力需要調整を要請する指示が長期間にわたり、上池容量が満杯になった場合に、揚水発電運転の制御を行うようにしてもよい。この場合、(電力需要の調整に応じた単位当たりの報酬[円/kWh])>(当該時間帯の電気代[円/kWh])の条件を満たす場合、揚水運転を継続させてもよい。蓄電池は満充電になると、電力需要を増加させる電力需要調整のために使用できないが、一方、揚水発電装置では、無制限に電力需要を増加させる電力需要調整のために使用することができる。
【0053】
また、揚水発電装置では、貯水槽である上池、下池と、既存の予備ポンプと発電機の追加設置で、自然動力を活用した蓄エネルギーシステムを実現することができるため、蓄電池に比較して産業廃棄物が少なく電力需要調整を実現できる。また、上池は非常時の備蓄水槽とみなすこともできる。
【0054】
また、各需要家において揚水発電装置を設けることで、電力送電網管理者は、自らの投資で揚水発電所や、蓄電池導入等の設備投資を軽減させることができる。
【0055】
また、需要家の電力需要がオーバーしないように、上池の放水発電することで電力需要調整を行うことができる。
【0056】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0057】
例えば、電力需要調整の要請がないときに、揚水発電運転の制御を行うようにしてもよい。電力需要調整の要請がなくとも、電気代が安い時に揚水して、電気代が高い時間帯に発電することで、収益が出る場合は、自動的に揚水発電を実行することで、収益性を高めることができる。例えば、揚水電力が100kWh必要な場合、発電で得られる電力量はηP×ηG=0.6×0.6=0.36のため、期待発電量が36kWhとなるが、電気代が5円/kWhの時間帯に揚水し、電気代が20円/kWhの時間帯に発電すれば、差し引きの収入は、(発電収入)-(揚水支出)=20×36(円)-100×5(円)=220円となる。この場合、経済的なメリットがあるため、揚水発電装置を運転させると判定する。
【符号の説明】
【0058】
10 太陽光発電装置
12 揚水発電装置
16 制御装置
20 サーバ
22 通信部
24 演算部
30 取得部
32 算出部
34 判定部
36 出力部
50 上池
52 下池
54 発電電動機
56 ポンプ
100 電力需要調整システム
図1
図2
図3
図4