(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083120
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ハプテンの分析方法、及びキット
(51)【国際特許分類】
G01N 33/537 20060101AFI20240613BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20240613BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240613BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
G01N33/537
G01N33/536 A
G01N33/536 E
G01N33/543 541A
G01N33/53 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197462
(22)【出願日】2022-12-09
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】座古 保
(72)【発明者】
【氏名】武藤 悠
(57)【要約】
【課題】デジタルイムノアッセイを用いたハプテンの分析方法を実現する。
【解決手段】本発明の一態様に係るハプテンの分析方法は、ハプテンと抗ハプテン抗体と抗イムノコンプレックス抗体との複合体を得る反応工程であって、抗ハプテン抗体及び抗イムノコンプレックス抗体のいずれか一方の抗体が標識を有する、反応工程と、複合体を未反応成分から分離する分離工程と、複合体に含まれていた標識を計数する計数工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハプテンを抗ハプテン抗体と反応させ、得られた前記ハプテンと前記抗ハプテン抗体との複合体である第1複合体を抗イムノコンプレックス抗体と反応させて、前記ハプテンと前記抗ハプテン抗体と前記抗イムノコンプレックス抗体との複合体である第2複合体を得る反応工程であって、前記抗ハプテン抗体及び前記抗イムノコンプレックス抗体のいずれか一方の抗体が標識を有する、反応工程と、
前記反応工程の後、前記第2複合体を未反応成分から分離する分離工程と、
前記分離工程の後、前記第2複合体に含まれていた前記標識を計数する計数工程と、を含む、
ことを特徴とする、ハプテンの分析方法。
【請求項2】
前記抗イムノコンプレックス抗体が前記標識を有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のハプテンの分析方法。
【請求項3】
前記反応工程において、前記標識は、前記いずれか一方の抗体が固定化されているナノ粒子であり、
前記計数工程は、暗視野顕微鏡を用いて前記ナノ粒子を輝点として計数することを含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載のハプテンの分析方法。
【請求項4】
前記ナノ粒子は、金ナノ粒子である、
ことを特徴とする、請求項3に記載のハプテンの分析方法。
【請求項5】
分離工程の後、前記計数工程の前に、前記第2複合体を変性させて、前記標識を前記第2複合体から遊離させる変性工程をさらに含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載のハプテンの分析方法。
【請求項6】
前記反応工程において、前記抗ハプテン抗体及び前記抗イムノコンプレックス抗体のうち前記標識を有しない他方の抗体は、磁性粒子に固定化されており、
前記変性工程は、磁気分離により前記磁性粒子に固定化された前記他方の抗体を除去することを含む、
ことを特徴とする、請求項5に記載のハプテンの分析方法。
【請求項7】
前記変性工程は、前記第2複合体を55℃以上の温度に加温することを含む、
ことを特徴とする、請求項5に記載のハプテンの分析方法。
【請求項8】
前記反応工程は、さらにハプテン類似物質を前記抗ハプテン抗体と反応させ、得られた前記ハプテン類似物質と前記抗ハプテン抗体との複合体である第3複合体を得ることを含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載のハプテンの分析方法。
【請求項9】
前記ハプテンは、エストラジオールである、
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のハプテンの分析方法。
【請求項10】
ハプテンの分析方法において用いるためのキットであって、
前記キットは、抗ハプテン抗体及び抗イムノコンプレックス抗体を含み、
前記抗ハプテン抗体及び前記抗イムノコンプレックス抗体のいずれか一方の抗体は、計数可能な標識を有する、
ことを特徴とする、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハプテンの分析方法、及びキットに関し、より詳細には抗イムノコンプレックス抗体を用いたデジタルイムノアッセイによるハプテンの分析方法、及び当該方法において用いるためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
金ナノ粒子は、局在表面プラズモン共鳴に起因する特徴的な光散乱特性を有しており、暗視野顕微鏡を用いて金ナノ粒子を観察すると、1粒子(又は1つのクラスター)を、1つの輝点として観察することができる(非特許文献1及び2を参照)。これまでに、暗視野顕微鏡を用いた金ナノ粒子のイメージングによりDNA及びタンパク質など様々な分子を検出する手法が開発されている(非特許文献3~5を参照)。
【0003】
また、最近では、金ナノ粒子1粒子を観察可能な暗視野イメージングの特性を活かして、デジタルイムノアッセイにより測定の高感度化を行った例も報告もされている(非特許文献6を参照)。デジタルイムノアッセイの基礎となるデジタル計測の利点は、ターゲットの有無を0又は1の信号として計測可能な点であり、デジタル計測は、シグナル強度の計測によるアナログの手法に比べて信頼性が高いことで知られている(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Nehl, C. L.; Grady, N. K.; Goodrich, G. P.; Tam, F.; Halas, N. J.; Hafner, J. H. Scattering Spectra of Single Gold Nanoshells. Nano Lett. 2004, 4 (12), 2355-2359.
【非特許文献2】Fan, J. A.; Bao, K. ; Lassiter, J. B.; Bao, J.; Halas, N. J.; Nordlander, P.; Capasso, F., Near-Normal Incidence Dark-Field Microscopy: Applications to Nanoplasmonic Spectroscopy. Nano Lett. 2012, 12 (6), 2817-2821.
【非特許文献3】Bu, T.; Zako, T.; Fujita, M.; Maeda, M. Detection of DNA Induced Gold Nanoparticle Aggregation with Dark Field Imaging. Chem. Commun. 2013, 49 (68), 7531-7533.
【非特許文献4】Yoshimura, K.; Patmawati, P.; Maeda, M.; Kamiya, N.; Zako, T. Protein-Functionalized Gold Nanoparticles for Antibody Detection Using the Darkfield Microscopic Observation of Nanoparticle Aggregation. Anal. Sci. 2021, 37 (3), 507-511.
【非特許文献5】Yano-Ozawa, Y.; Lobsiger, N.; Muto, Y.; Mori, T.; Yoshimura, K.; Yano, Y.; Stark, W. J.; Maeda, M.; Asahi, T.; Ogawa, A.; Ogawa, A.; Zako, T. Molecular Detection Using Aptamer-Modified Gold Nanoparticles with an Immobilized DNA Brush for the Prevention of Non-Specific Aggregation. RSC Adv. 2021, 11 (20), 11984-11991.
【非特許文献6】Zhu, L.; Li, G.; Sun, S.; Tan, H.; He, Y. Digital Immunoassay of a Prostate-Specific Antigen Using Gold Nanorods and Magnetic Nanoparticles. RSC Adv. 2017, 7 (44), 27595-27602.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、デジタルイムノアッセイは、直径数ミクロンのビーズ表面に固定化した捕捉抗体と、抗原、酵素又はナノ粒子などで標識化した標識抗体とのサンドイッチイムノアッセイを利用する(非特許文献6を参照)。よって、一般的なデジタルイムノアッセイは、ビーズ表面の抗体で抗原を捕捉し、さらに標識抗体でターゲットを検出する必要があるため、ターゲットとなる抗原は、2つの抗体が結合可能な、ある程度の大きさを有する必要がある。
【0006】
しかしながら、免疫診断の分野で分析のターゲットとなる抗原の中には、タンパク質のような大きな分子だけでなく、甲状腺ホルモン及びステロイドホルモンなどの低分子(ハプテン)も存在する。免疫診断の分野において、ハプテンは、濃度の上昇に応じて得られるシグナルが低下する「競合法」と呼ばれる方法により検出されることが多いが、抗原抗体反応の阻害を利用した競合法は、デジタルイムノアッセイへの適用が困難であった。
【0007】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、本発明の一態様は、デジタルイムノアッセイを用いたハプテンの分析方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るハプテンの分析方法は、ハプテンを抗ハプテン抗体と反応させ、得られた前記ハプテンと前記抗ハプテン抗体との複合体である第1複合体を抗イムノコンプレックス抗体と反応させて、前記ハプテンと前記抗ハプテン抗体と前記抗イムノコンプレックス抗体との複合体である第2複合体を得る反応工程であって、前記抗ハプテン抗体及び前記抗イムノコンプレックス抗体のいずれか一方の抗体が標識を有する、反応工程と、前記反応工程の後、前記第2複合体を未反応成分から分離する分離工程と、前記分離工程の後、前記第2複合体に含まれていた前記標識を計数する計数工程と、を含む。
【0009】
本発明の第2の態様に係るハプテンの分析方法は、第1の態様に係るハプテンの分析方法の構成に加えて、前記抗イムノコンプレックス抗体が前記標識を有する。
【0010】
本発明の第3の態様に係るハプテンの分析方法は、第1の態様又は第2の態様に係るハプテンの分析方法の構成に加えて、前記反応工程において、前記標識は、前記いずれか一方の抗体が固定化されているナノ粒子であり、前記計数工程は、暗視野顕微鏡を用いて前記ナノ粒子を輝点として計数することを含む。
【0011】
本発明の第4の態様に係るハプテンの分析方法は、第3の態様に係るハプテンの分析方法の構成に加えて、前記ナノ粒子は、金ナノ粒子である。
【0012】
本発明の第5の態様に係るハプテンの分析方法は、第1の態様~第4の態様のいずれか一態様に係るハプテンの分析方法の構成に加えて、分離工程の後、前記計数工程の前に、前記第2複合体を変性させて、前記標識を前記第2複合体から遊離させる変性工程をさらに含む。
【0013】
本発明の第6の態様に係るハプテンの分析方法は、第5の態様に係るハプテンの分析方法の構成に加えて、前記反応工程において、前記抗ハプテン抗体及び前記抗イムノコンプレックス抗体のうち前記標識を有しない他方の抗体は、磁性粒子に固定化されており、前記変性工程は、磁気分離により前記磁性粒子に固定化された前記他方の抗体を除去することを含む。
【0014】
本発明の第7の態様に係るハプテンの分析方法は、第5の態様又は第6の態様に係るハプテンの分析方法の構成に加えて、前記変性工程は、前記第2複合体を55℃以上の温度に加温することを含む。
【0015】
本発明の第8の態様に係るハプテンの分析方法は、第1の態様~第7の態様のいずれか一態様に係るハプテンの分析方法の構成に加えて、前記反応工程は、さらにハプテン類似物質を前記抗ハプテン抗体と反応させ、得られた前記ハプテン類似物質と前記抗ハプテン抗体との複合体である第3複合体を得ることを含む。
【0016】
本発明の第9の態様に係るハプテンの分析方法は、第1の態様~第8の態様のいずれか一態様に係るハプテンの分析方法の構成に加えて、前記ハプテンは、エストラジオールである。
【0017】
本発明の第10の態様に係るキットは、ハプテンの分析方法において用いるためのキットであって、前記キットは、抗ハプテン抗体及び抗イムノコンプレックス抗体を含み、前記抗ハプテン抗体及び前記抗イムノコンプレックス抗体のいずれか一方の抗体は、計数可能な標識を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、デジタルイムノアッセイを用いたハプテンの分析方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1におけるハプテンの分析方法のスキームを示す模式図である。
【
図2】本発明の実施例1で行ったE2濃度に応じた輝点の計数結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔ハプテンの分析方法〕
本発明の一態様に係るハプテンの分析方法は、ハプテンを抗ハプテン抗体と反応させ、得られた前記ハプテンと前記抗ハプテン抗体との複合体である第1複合体を抗イムノコンプレックス抗体と反応させて、前記ハプテンと前記抗ハプテン抗体と前記抗イムノコンプレックス抗体との複合体である第2複合体を得る反応工程であって、前記抗ハプテン抗体及び前記抗イムノコンプレックス抗体のいずれか一方の抗体が標識を有する、反応工程と、前記反応工程の後、前記第2複合体を未反応成分から分離する分離工程と、前記分離工程の後、前記第2複合体に含まれていた前記標識を計数する計数工程と、を含む。
【0021】
本発明の一態様によれば、デジタルイムノアッセイを用いたハプテンの分析方法を実現することができる。本発明の一態様に係るハプテンの分析方法は、以下の説明から理解されるように、標識を計数することによって間接的にハプテンを計数する方法であり、したがって試料中に含まれるハプテンの検出方法又は定量方法として用いることができる。
【0022】
〔材料〕
本発明の一態様に係るハプテンの分析方法において用いられる材料について、以下に説明する。しかしながら、本発明の一態様に係るハプテンの分析方法において用いられる材料は、以下に説明されるものに限定されず、必要に応じて追加、削除及び代替が行われてもよい。
【0023】
(ハプテン)
本発明の一態様において、分析の対象はハプテンである。ハプテンは、競合法等の免疫診断の分野で用いられる方法で分析され得る低分子であればよく、特に限定されない。ハプテンの分子量は、好ましくは2,000以下であり、より好ましくは1,000以下である。ハプテンの分子量の下限値に特に制限は無いが、ハプテンの分子量は、例えば100以上であってもよい。
【0024】
ハプテンの例としては、ホルモン、脂質、核酸及び金属が挙げられる。ホルモンの例としては:エストラジオール(E2)、テストステロン、アルドステロン、エストロン(E1)、エストリオール(E3)、プロゲステロン及びコルチゾールなどのステロイドホルモン;並びに、チロキシン(T4)、トリヨードサイロニン(T3)及び5-ジヨード-L-チロニン(T2)などの甲状腺ホルモンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一態様において、ハプテンは、好ましくはステロイドホルモン又は甲状腺ホルモンであり、より好ましくはエストラジオール(E2)である。
【0025】
ハプテンを分析するための試料の例としては、例えば動植物の臓器、体液及びこれらの精製物、細胞培養物及びこれらの精製物、並びに実験用混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。試料は、哺乳動物の血液(全血、血漿又は血清など)又は体液(尿など)であってもよい。
【0026】
(抗ハプテン抗体)
本発明の一態様において、抗ハプテン抗体は、ハプテンを抗原として結合する抗体であればよく、特に限定されない。抗ハプテン抗体は、ハプテンの種類に応じて、適宜に選択され得る。抗ハプテン抗体は、ハプテンへの高い親和性を有するため、抗ハプテンウサギモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0027】
抗ハプテン抗体は、当技術分野で公知の方法によって作製することができ、例えば特開2009-240300号公報に記載の方法によって作製することができる。
【0028】
(抗イムノコンプレックス抗体)
本発明の一態様において、抗イムノコンプレックス抗体は、ハプテンに対する抗体ではなく、ハプテンに対する抗体への抗体でもなく、ハプテンとそれに対する抗体との複合体に対する抗体である。換言すれば、抗イムノコンプレックス抗体は、ハプテン及び抗ハプテン抗体それぞれを単独では認識せず、ハプテンと抗ハプテン抗体との複合体を認識して、当該複合体に特異的に結合する抗体である。抗イムノコンプレックス抗体は、ある程度の大きさを有するハプテンと抗ハプテン抗体との複合体を認識するため、低分子であるハプテンが分析対象であっても、ハプテンを含むサンドイッチ型免疫複合体を形成することができる。抗イムノコンプレックス抗体は、ハプテン及び抗ハプテン抗体の種類に応じて、適宜に選択され得る。
【0029】
抗イムノコンプレックス抗体が由来する免疫動物種は、特に限定されない。免疫動物種の例としては、例えばマウス、ラット、ヤギ及びヒツジが挙げられる。抗ハプテン抗体としてウサギモノクローナル抗体が用いられる場合、ハプテン及び抗ハプテン抗体の複合体への特異的な親和性の観点から、抗イムノコンプレックス抗体は、ウサギ以外の免疫動物種由来であることが好ましく、マウス由来であることがより好ましい。
【0030】
抗イムノコンプレックス抗体は、当技術分野で公知の方法によって作製することができ、例えば特許第6031944号公報に記載の方法によって作製することができる。
【0031】
(標識)
本発明の一態様において、抗ハプテン抗体及び抗イムノコンプレックス抗体のいずれか一方の抗体は、標識を有する。標識は、後述する計数工程における計数の対象である。標識は、当該標識に由来する信号を参照して計数可能なものであればよく、特に限定されない。後述する分離工程において未反応成分をより高い効率で分離する観点から、抗ハプテン抗体及び抗イムノコンプレックス抗体のうち抗イムノコンプレックス抗体が標識を有することが好ましい。
【0032】
標識の例としては、抗体が固定化されているナノ粒子、並びに、抗体に結合した蛍光標識又は化学発光標識が挙げられる。
【0033】
(ナノ粒子)
標識は、計数をより高い精度で実施する観点から、反応工程において抗体が固定化されているナノ粒子であることが好ましい。抗体をナノ粒子に固定化する方法は、当技術分野で公知の方法を用いることができる。固定化する方法の例としては、N-ヒドロキシコハク酸(NHS)エステルなどの架橋性官能基を有する高分子、又はアビジン-ビオチン結合を介して抗体とナノ粒子とを架橋する方法、及び、静電相互作用や疎水性相互作用などの様々な相互作用によって起こる物理吸着によって抗体をナノ粒子に固定化する方法が挙げられるが、これに限定されない。
【0034】
ナノ粒子は、計数可能な粒子であればよく、特に限定されないが、暗視野顕微鏡を用いて輝点として計数可能な粒子であることが好ましい。ナノ粒子としては、例えば金ナノ粒子、銀ナノ粒子、金ナノアーチン、金ナノ粒子凝集体及び量子ドットが挙げられる。
【0035】
ナノ粒子の粒子径は、特に限定されないが、好ましくは10nm以上であり、より好ましくは20nm以上であり、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは100nm以下である。なお、本明細書において、粒子径とは、ナノ粒子が球状粒子である場合には当該球状粒子の直径を指し、ナノ粒子がロッドなどの棒状粒子である場合には当該棒状粒子の長軸方向の長さを指す。また、本明細書において、単に「粒子径」と記載される場合、数平均粒子径を指す。
【0036】
ナノ粒子の材質は、計数可能なものであればよく、特に限定されないが、暗視野顕微鏡を用いた観察下で当該ナノ粒子が特徴的な輝点を生じる材質であることが好ましい。ナノ粒子の材質は、より明るい輝点を生じる観点から、可視光線~近赤外線の波長帯においてプラズモン共鳴特性を示す金属であることが好ましく、例えば金又は銀であることが好ましい。ナノ粒子は、中でも、より明るい輝点を生じ且つ均一な粒子径のものが得られやすいという観点から、金ナノ粒子であることが好ましい。
【0037】
(磁性粒子)
以下、抗ハプテン抗体及び抗イムノコンプレックス抗体のうち、標識を有する一方の抗体ではない、標識を有しない抗体を、他方の抗体という。他方の抗体は、後述する分離工程及び変性工程を磁気分離によって簡便に行う観点から、磁性粒子に固定化されていることが好ましい。磁性粒子としては、当技術分野で公知の磁性粒子を用いることができる。
【0038】
他方の抗体を磁性粒子に固定化する方法は、当技術分野で公知の方法を用いることができる。固定化する方法の例としては、磁性粒子に固定化した任意の抗体と、他方の抗体に修飾した任意の抗原と、磁性粒子に固定化した当該抗原の抗体との抗原抗体結合を用いる方法が挙げられる。抗原の例としては、ジニトロフェニル(DNP)基が挙げられるが、これに限定されない。
【0039】
磁性粒子の粒子径は、特に限定されないが、例えば0.1μm以上、1μm以上又は10μm以上であり、10,000μm以下、1000μm以下又は100μm以下であってもよい。
【0040】
(ハプテン類似物質)
ハプテン類似物質は、抗ハプテン抗体が認識して結合することができる物質であり、かつ、抗ハプテン抗体と結合した際に得られるハプテン類似物質と抗ハプテン抗体との複合体である第3複合体は、抗イムノコンプレックス抗体が認識せず、当該複合体に結合しないものである。抗イムノコンプレックス抗体を用いる測定系に対してハプテン類似物質を添加することによって、複合体を形成しない抗イムノコンプレックス抗体による望まない反応によって生じる測定のバックグランドを減じることができる。
【0041】
ハプテン類似物質は、ハプテンと構造的類似を有する物質であり得る。例えばハプテンがエストラジオールである場合には、ハプテン類似物質としてβ-エストラジオール-6-オン6-(O-カルボキシメチルオキシム)(E2-CMO)を用いることができる。また例えばハプテンがL-チロキシンである場合には、ハプテン類似物質としてD-チロキシンを用いることができるが、これらに限定されない。
【0042】
〔操作工程〕
本発明の一態様に係るハプテンの分析方法が含む操作工程について、以下に説明する。しかしながら、本発明の一態様に係るハプテンの分析方法が含む操作工程は、以下に説明されるものに限定されず、必要に応じて追加、削除及び代替が行われてもよい。
【0043】
(反応工程)
本発明の一態様に係るハプテンの分析方法は、反応工程を含む。反応工程は、ハプテンを抗ハプテン抗体と反応させ、得られたハプテンと抗ハプテン抗体との複合体である第1複合体を抗イムノコンプレックス抗体と反応させて、ハプテンと抗ハプテン抗体と抗イムノコンプレックス抗体との複合体である第2複合体を得る工程である。反応工程によれば、標識を有する第2複合体が得られる。
【0044】
反応工程は、当技術分野で公知の方法によって行うことができ、例えばハプテン、抗ハプテン抗体、抗イムノコンプレックス抗体それぞれを含む溶液を混合することによって行ってもよい。溶液の緩衝液は、適宜に選択され得る。緩衝液の例としては、PBS、HEPES及びTrisが挙げられる。
【0045】
反応工程において、ハプテンに対する、用いられる抗ハプテン抗体及び抗イムノコンプレックス抗体の量は、適宜に選択することができる。ハプテンをより高い精度で定量する観点から、抗ハプテン抗体及び抗イムノコンプレックス抗体のうちいずれか一方が有する標識の量がハプテンの量よりも多いことが好ましい。例えば、標識を有する抗体が金ナノ粒子に固定化されている場合、系に存在するハプテンの物質量よりも、系に添加される金ナノ粒子の粒子数(物質量換算)が多いことが好ましい。このような場合、系に添加される金ナノ粒子の量は、試料中に含まれると予想されるハプテンの量に応じて選択できるが、十分量として、添加後の溶液のO.D.520値が0.0001以上となるように、金ナノ粒子に固定化された抗体を添加してもよい。なお、本明細書において、O.D.520値とは、波長520nmの光線についての吸光度の値を意味する。
【0046】
反応工程において、ハプテンに加えて、ハプテン類似物質を反応させてもよい。換言すれば、反応工程は、さらにハプテン類似物質を抗ハプテン抗体と反応させ、得られたハプテン類似物質と抗ハプテン抗体との複合体である第3複合体を得ることを含んでもよい。反応工程においてハプテン類似物質を用いることにより、複合体を形成しない抗イムノコンプレックス抗体による望まない反応によって生じる測定のバックグランドを減じることができる。
【0047】
反応工程は、ハプテンを抗ハプテン抗体と反応させて第1複合体を得る第1反応工程と、第1複合体を抗イムノコンプレックス抗体と反応させて第2複合体を得る第2反応工程とを含んでもよい。また、反応工程は、第1反応工程と第2反応工程との間に、第1複合体を未反応成分から分離する予備分離工程を含んでもよい。予備分離工程は、後述する分離工程と同様に行うことができる。
【0048】
(分離工程)
本発明の一態様に係るハプテンの分析方法は、分離工程を含む。分離工程は、反応工程の後、第2複合体を未反応成分から分離する工程である。分離工程によれば、第2複合体を形成していないハプテン、抗ハプテン抗体及び抗イムノコンプレックス抗体などの、系中に含まれる未反応成分から、第2複合体が分離回収される。
【0049】
分離工程は、第2複合体の構成に応じて、当技術分野で公知の方法によって行うことができ、例えば磁気分離、遠心分離又はクロマトグラフィによって行ってもよい。例えば反応工程において他方の抗体が磁性粒子に固定化されている場合、分離工程において、磁石を用いて磁性粒子を集めた後、液体を除き、洗浄液を加える一連の操作を複数回行うことにより、磁性粒子上に形成された第2複合体を分離回収してもよい。
【0050】
(変性工程)
本発明の一態様に係るハプテンの分析方法は、変性工程を含んでもよい。変性工程は、分離工程の後、計数工程の前に、第2複合体を変性させて、標識を第2複合体から遊離させる工程である。変性工程によれば、遊離した標識を有する抗体が得られるため、続く計数工程において、輝点の計数が容易になる。変性工程において、標識は、反応工程において標識を有していた抗体と結合した形態で第2複合体から遊離してもよく、当該抗体から遊離した形態で第2複合体から遊離してもよい。
【0051】
変性工程は、第2複合体から標識を遊離させることができる当技術分野で公知の方法を用いて行うことができる。変性工程は、変性剤の添加、加温、及びこれらの組み合わせによって、行ってもよい。変性剤の例としては、尿素、及びグアニジン塩酸塩が挙げられる。加温の温度は、第2複合体の構成に応じて適宜に選択することができ、好ましくは55℃以上、より好ましくは70℃以上である。変性を効率的に行う観点から、変性工程は、第2複合体を55℃以上の温度に加温することを含むことが好ましい。
【0052】
変性工程は、変性によって第2複合体から遊離した他方の抗体を除去することを含んでもよい。除去の方法は、適宜に選択され得る。例えば他方の抗体が磁性粒子に固定化されている場合には、続く計数工程においてノイズを減じる観点から、変性工程は、磁気分離により磁性粒子に固定化された他方の抗体を除去することを含むことが好ましい。
【0053】
(計数工程)
本発明の一態様に係るハプテンの分析方法は、計数工程を含む。計数工程は、分離工程の後、第2複合体に含まれていた標識を計数する工程である。計数工程によれば、反応工程においてハプテンと第2複合体を形成していた抗ハプテン抗体又は抗イムノコンプレックス抗体が有していた標識が計数される。したがって、計数結果を参照することによって、反応工程において系中に存在していたハプテンの検出を行うことができる。また、計数された標識の数を、既知濃度のハプテン試料を用いて作成された、ハプテン濃度と標識の数との関係性を示す検量線と照合することによって、ハプテンの定量を行うことができる。
【0054】
計数工程は、標識の種類に応じて当技術分野で公知の方法を用いて行うことができ、例えば暗視野下での輝点計数、又は1分子蛍光イメージングによる蛍光点計数によって行うことができる。
【0055】
標識がナノ粒子である場合には、計数を精度よく行う観点から、計数工程は、暗視野顕微鏡を用いてナノ粒子を輝点として計数することを含むことが好ましい。暗視野顕微鏡による試料観察は、試料に斜めから光を当て、試料からの散乱光および反射光等のみを観察する、従来公知の暗視野観察手法であればよい。照明法は、透過型及び落射型のどちらでもよく、適宜選択すればよい。
【0056】
暗視野顕微鏡観察下で生じる輝点を高い精度で画像解析する観点から、観察画像をカラー画像として取得してもよい。観察画像を取得するための撮像装置は、カラー画像として撮像可能な撮像装置であればよく、特に限定はない。なお、試料中のナノ粒子を基板上に固定化せずに観察を行う場合には、シャッタースピードの速い撮像装置を用いることが好ましい。
【0057】
ナノ粒子の暗視野顕微鏡観察のために、ナノ粒子を含む試料を基板上に展開してもよい。基板の例としては、例えばスライドガラス及びガラスシャーレが挙げられる。基板の材質は、液状試料が展開できる限り特に制限はなく、ソーダガラス、石英ガラス、アクリル樹脂およびポリカーボネート等の材料を例示できる。
【0058】
暗視野顕微鏡観察において、ナノ粒子を基板上に固定化してもよい。ナノ粒子を基板上に固定化することにより、取得される観察画像の鮮明さを向上させることができる。ナノ粒子を基板上に固定化する方法としては、ナノ粒子と基板表面との相互作用を利用した手法が挙げられるが、これに限定されない。例えば、ナノ粒子として金ナノ粒子を用いる場合、基板表面をアミノ基で修飾することにより、負に帯電した金ナノ粒子との静電的な相互作用により、金ナノ粒子を基板上に固定化することができる。あるいは、ナノ粒子を含む試料中の塩濃度を上昇させ、基板としてスライドガラスを用いることにより、ナノ粒子を基板上に固定化することができる。
【0059】
〔キット〕
本発明の一態様は、キットに関する。本発明の一態様に係るキットは、ハプテンの分析方法において用いるためのキットであって、キットは、抗ハプテン抗体及び抗イムノコンプレックス抗体を含み、抗ハプテン抗体及び抗イムノコンプレックス抗体のいずれか一方の抗体は、計数可能な標識を有する。キットに含まれる各材料は、本発明の一態様に係るハプテンの分析方法について上述した材料と同一の機能及び構成を有するため、その説明を繰り返さない。
【0060】
本発明の一態様に係るキットは、抗ハプテン抗体及び抗イムノコンプレックス抗体を希釈するための溶媒、分離工程を行うために用いられる洗浄液、変性工程を行うために用いられる変性剤、又はこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0061】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0062】
〔実施例1〕
本発明の実施例1について以下に説明する。実施例1において、ハプテンとしてエストラジオール(E2)が用いられ、抗ハプテン抗体として抗E2ウサギモノクローナル抗体が用いられ、抗イムノコンプレックス抗体として抗イムノコンプレックスマウスモノクローナル抗体が用いられた。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。
【0063】
(1)抗E2ウサギモノクローナル抗体の作製
抗E2ウサギモノクローナル抗体を特開2009-240300号公報に記載の実施例に従って作製した。
【0064】
(2)抗イムノコンプレックスマウスモノクローナル抗体の作製
抗イムノコンプレックスマウスモノクローナル抗体を特許第6031944号公報に記載の実施例に従って作製した。得られた抗イムノコンプレックスマウスモノクローナル抗体は、E2と抗E2ウサギモノクローナル抗体との免疫複合体に対する抗体である。
【0065】
(3)抗E2ウサギモノクローナル抗体修飾磁性粒子の作製
(3-1)抗DNP抗体修飾磁性粒子の作製
磁性粒子の懸濁液(DynabeadsTM M-280 Tosylactivated、Thermo Fisher Scientific社製)165μLを1.5mLマイクロチューブに移した。磁石を用いて、磁性粒子を集めた後、溶液を除いた。次いで、このマイクロチューブに、1mg/mL抗ジニトロフェニルマウスモノクローナル抗体(抗DNP抗体、コスモバイオ社)を100μL添加し、さらに0.1Mホウ酸バッファー(pH9.5)を50μL添加して、混合した。次いで、このマイクロチューブに3M硫酸アンモニウムを含む0.1Mホウ酸バッファー(pH9.5)を100μL添加し、37℃で18時間撹拌した。磁石を用いて磁性粒子を集めた後、溶液を除き、0.5%BSAを含むPBS溶液(pH7.4)を1mL添加し、37℃で1時間撹拌した。磁石を用いて磁性粒子を集め、0.1%BSAを含むPBS溶液(pH7.4)により2回洗浄を行い、0.1%BSAを含むPBS溶液(pH7.4)240μLに懸濁した。得られた懸濁液を続く実験に用いた。
【0066】
(3-2)DNP修飾抗E2ウサギモノクローナル抗体の作製
2mg/mL抗E2ウサギモノクローナル抗体のPBS溶液1mLに、10mM N-スクシニミジルN-(2,4-ジニトロフェニル)-6-アミノキャプロエート(NHS-DNP、Merck社)DMSO溶液を27μL添加し、室温で1時間静置した。Tris-HCl溶液(pH8.0)100μLを添加した後、PBS溶液により透析を行い、未反応のNHS-DNPを除いた。
【0067】
(3-3)DNP修飾抗E2ウサギモノクローナル抗体の抗DNP抗体修飾磁性粒子への結合
上記のように調製した抗DNP抗体修飾磁性粒子50μLと、DNP修飾抗E2ウサギモノクローナル抗体(200μg/mL)1mLとを混合し、30℃で2時間撹拌した。磁石を用いて磁性粒子を集めた後、溶液を除去し、0.1M Tris-HCl+0.1%BSA(pH8.0)溶液で3回洗浄を行った。その後、0.1M Tris-HCl+0.1%BSA(pH8.0)溶液500μLに懸濁して、抗E2ウサギモノクローナル抗体修飾磁性粒子として続く実験に用いた。
【0068】
(4)抗イムノコンプレックス抗体修飾金ナノ粒子の作製
金ナノ粒子(粒子径60nm)溶液9mLと50mM KH2PO4バッファー(pH7.0)1mLとを混合した。得られた混合溶液に、純水を用いて100μg/mLに調製した抗イムノコンプレックス抗体を1mL添加した。10分静置した後、DMSOで250mMに調製したMS(PEG)24(Methyl-PEG24-NHS Ester、Thermo Fisher Scientific社製)20μLを添加し、室温で30分静置した。混合溶液に、1%PEG20,000溶液(ポリエチレングリコール20,000溶液)0.55mLを添加し、撹拌した。続けて10%BSA溶液1.1mLを添加し撹拌した後、遠心(8,000g、15分)した。溶液を除いた後、金ナノ粒子保存バッファー(20mM Tris、pH8.2、1%BSA、0.1%NaN3、0.05%PEG20,000,150mM NaCl)を用いて3回洗浄し、O.D.520値=6.0となるように金ナノ粒子保存バッファーで希釈し、保存した。
【0069】
(5)暗視野イメージングによるE2の分析方法
本実施例におけるハプテンの分析方法のスキームを
図1に示す。
(5-1)反応工程
(5-1-1)第1反応工程
抗E2ウサギモノクローナル抗体修飾磁性粒子溶液4μL及びPBS46μLを混合した。混合溶液に、濃度0pg/mL、0.01pg/mL、0.1pg/mL、1pg/mL、10pg/mL又は100pg/mLのE2溶液50μLを添加し、室温で1時間静置して、E2と抗E2ウサギモノクローナル抗体修飾磁性粒子との複合体を得た。結合体(複合体)と遊離物とを分離させる(B/F分離)ため、磁石を用いて磁性粒子を集め、TBSTバッファー(20mM Tris、pH7.4、500mM NaCl、0.05%Tween20)を用いて3回洗浄した。
【0070】
(5-1-2)第2反応工程
混合溶液に、0.1%スキムミルク及び100ng/mLβ-エストラジオール-6-オン6-(O-カルボキシメチルオキシム)(E2-CMO、E2類似物質)を含むPBS溶液を用いてO.D.520値=0.3となるように調製した抗イムノコンプレックス抗体修飾金ナノ粒子溶液を100μL添加し、室温で1時間静置して、E2と抗E2ウサギモノクローナル抗体修飾磁性粒子と抗イムノコンプレックス抗体修飾金ナノ粒子との複合体を得た。
【0071】
(5-2)分離工程
B/F分離のため、溶液において磁石を用いて磁性粒子を集め、TBSTバッファーを用いて5回洗浄して、複合体を未反応成分から分離した。
【0072】
(5-3)変性工程
溶液を除いたあと、10μLの4M尿素を加え、E2と抗E2ウサギモノクローナル抗体修飾磁性粒子と抗イムノコンプレックス抗体修飾金ナノ粒子との複合体を70℃に加温して変性させ、複合体から抗イムノコンプレックス抗体と金ナノ粒子とを遊離させた。20分後に磁石を用いて磁性粒子を除き、上澄みに抗イムノコンプレックス抗体と金ナノ粒子との溶液を得た。
【0073】
(5-4)計数工程
(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)処理したスライドガラスを次の方法で作製した。スライドガラスを1%APTES溶液(東京化成工業社製)に室温で1時間浸し、超純水を用いて洗浄した後、超純水中で10分間超音波処理を2回行った。その後、APTES処理したスライドガラスを乾燥させ、室温にて保管した。
【0074】
APTES処理され、その表面にNH
3
+基を有するスライドガラス上に、得られた抗イムノコンプレックス抗体と金ナノ粒子との溶液3μLを滴下し、静電吸着により金ナノ粒子をスライドガラス上に固定化して、カバーガラスをかぶせて暗視野顕微鏡により観察した。暗視野イメージングにより得られた画像(各濃度で10枚ずつ)において、ImageJ(画像解析ソフト)を用いて金ナノ粒子の輝点を計数し、画像1枚における輝点数の平均値を算出した。算出結果を
図2に示す。
【0075】
図2に示すように、E2濃度に応じて輝点の数が増加することを確認でき、したがって、E2を検出及び定量することができた。換言すれば、暗視野イメージングにより、分析対象濃度に応じて数が増加する輝点が得られたことから、ハプテンをデジタルイムノアッセイにより分析可能であることが示された。