(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083126
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/75 20180101AFI20240613BHJP
A47C 7/54 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B60N2/75
A47C7/54 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197471
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞谷 健汰
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩介
(72)【発明者】
【氏名】本田 親典
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DC01
(57)【要約】
【課題】携帯装置等を使用する際に手や腕に疲労が生じるのを抑制できる車両用シート。
【解決手段】車両用シート10は、シートクッション12、シートバック14及びシートバックのシート幅方向の外側に配置されたアームレスト20を備え、アームレスト20は、シートバック14に支持された基部22及び基部22の前側に配置された前部24を備えている。前部24は、ヒンジ部を介して基部22に対して回動可能に連結されており、前部24は、先端が前側に向けられた非展開位置と、先端がシート幅方向の内側に向けられた展開位置とに配置可能とされる。これにより、前部24を展開位置に配置することで、乗員が手を実施の前側に配置していても肘を前部24に載せることができて、手、手首や前腕部に疲労が生じるのを抑制できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の腰部及び大腿部を支持するためのシートクッションと、
乗員の背部を支持するためのシートバックと、
シート前後方向に長尺とされて長手方向の一端部が前記シートバックの幅方向外側に配置され、載置面に乗員の肘及び前腕部が載置可能とされたアームレストと、
を備え、
前記アームレストは、
長手方向が前後方向にされて後端側が前記シートバックに支持された基部と、
前記基部の先端側に配置された回動部と、
前記基部の先端側において該基部と前記回動部とを前記載置面と交差する方向に沿う軸回りに回動可能に連結し、前記基部に対して前記回動部の前記基部とは反対側の先端側がシート幅方向の内側に向けられた展開位置と前記回動部の前記先端側が前側に向けられた非展開位置とに配置可能とするヒンジ部と、
を含む車両用シート。
【請求項2】
前記回動部の前記非展開位置から前記展開位置とは反対側への回動を制限すると共に、前記回動部の前記展開位置から前記非展開位置とは反対側への回動を制限する制限部を含む請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記ヒンジ部には、トルクヒンジが用いられている請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記基部は、先端側が前方に向けられた通常位置と、先端側が前記シートバックに沿って上方に向けられた格納位置とに回動可能とされている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記回動部を前記展開位置から前記非展開位置に復帰させる復帰手段を含む請求項1又は請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記復帰手段は、前記基部が前記通常位置から前記格納位置に回動されることで、前記回動部を前記展開位置から前記非展開位置に復帰させる請求項4を引用する請求項5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記復帰手段は、
前記基部が回動されることで、該基部に対して相対回転されるプーリと、
一端が前記プーリに係止されて該プーリの外周部に巻き掛けられ、前記プーリの外周から引き出された他端が前記回動部に係止され、前記基部が前記通常位置から前記格納位置に回動されて前記プーリに巻き取られることで、前記回動部を前記展開位置から前記非展開位置に回動可能に配策されたワイヤと、
を含む請求項6に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前部にコントロールレバーが配置されたアームレスト装置と、アームレスト装置に接続される第1の固定要素と、運転席に固定されうる第2の固定要素とからなるアームレストが開示されている。アームレストは、第1及び第2の固定要素が調整および固定装置により互いに対して調整及び固定され得るようになっており、調整および固定装置は、アームレスト装置を運転席に対して幾何学的回転軸まわりに回転可能とし、第1の固定要素を第2の固定要素に対して幾何学的回転軸まわりに回転可能として、アームレスト装置を運転席に対して横方向位置を調整できるようにしている。
【0003】
特許文献2には、シートに装着されたアームレストが開示されている。アームレストは、後部がシートに固定され、乗員の前腕部が載置される側部の回動部がスライド部を介して後部に連結されており、アームレストは、衝突時又は衝突予測時に側部が後方にスライドされると共に、回動部の後方部がシート幅方向外側に移動される。
【0004】
特許文献3には、車両用シートの側面に配置され、後部側よりも低くされた基体の前部の段差部に支持部が配置されたアームレストが開示されている。アームレストは、高さアクチュエータにより支持部の支持面の高さが調整され、傾斜角アクチュエータにより支持部の車両前後方向位置及び車両前後方向に対する傾斜角が調整される。また、アームレストは、回転角アクチュエータにより支持部の長手方向の水平面に対する回転角が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006-528528号公報
【特許文献2】特許第6899240号公報
【特許文献3】特許第6948919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両の乗員がスマートフォン等の携帯端末装置を使用する場合、携帯端末装置を体の前面となるように手で持って使用する。この際、顔の前(正面)に手をかざした状態では、アームレストに肘を載せるのは難しく、アームレストに肘を載せるためには姿勢を崩さなければならない。また、携帯端末装置を手で持った状態で、肘を浮かせていると、手や腕に疲労が蓄積してしまう。
【0007】
本発明は、上記事実を鑑みて成されたものであり、携帯端末装置等を手で持って使用しても手や腕が疲労するのを抑制できる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る車両用シートは、乗員の腰部及び大腿部を支持するためのシートクッションと、乗員の背部を支持するためのシートバックと、シート前後方向に長尺とされて長手方向の一端部が前記シートバックの幅方向外側に配置され、載置面に乗員の肘及び前腕部が載置可能とされたアームレストと、を備え、前記アームレストは、長手方向が前後方向にされて後端側が前記シートバックに支持された基部と、前記基部の先端側に配置された回動部と、前記基部の先端側において該基部と前記回動部とを前記載置面と交差する方向に沿う軸回りに回動可能に連結し、前記基部に対して前記回動部の前記基部とは反対側の先端側がシート幅方向の内側に向けられた展開位置と前記回動部の前記先端側が前側に向けられた非展開位置とに配置可能とするヒンジ部と、を含む。
【0009】
請求項1の車両用シートでは、着座する乗員の腰部及び大腿部をシートクッションが支持し、乗員の背部をシートバックが支持する。また、アームレストは、載置面に乗員の肘及び前腕部が載置可能とされている。
【0010】
このアームレストは、後端側がシートバックに支持された基部と、基部の先端側に配置された回動部とを備え、基部と回動部とがヒンジ部により連結されており、回動部は、基部に対して載置面と交差する方向に沿う軸回りに回動可能とされている。
【0011】
ここで、ヒンジ部は、基部に対して回動部の先端側をシート幅方向の内側に向けられた展開位置と、回動部の先端側を前側に向けた非展開位置とに配置可能としている。
【0012】
これにより、アームレストの先端側の回動部を乗員の前側の展開位置に配置できるので、携帯装置等のものを持った手を乗員の前側に配置した際、乗員の肘を回動部に載せることができて、乗員の肘が浮いた状態となるのを抑制できる。
【0013】
請求項2に係る車両用シートは、請求項1の車両用シートにおいて、前記回動部の前記非展開位置から前記展開位置とは反対側への回動を制限すると共に、前記回動部の前記展開位置から前記非展開位置とは反対側への回動を制限する制限部を含む。
【0014】
請求項2の車両用シートでは、制限部が、回動部の非展開位置から展開位置とは反対側への回動を制限すると共に、回動部の展開位置から非展開位置とは反対側への回動を制限する。
【0015】
これにより、回動部の先端側がシート幅方向の外側に向いたり、乗員の体側に向いたりしてしまうのを制限できる。
【0016】
請求項3に係る車両用シートは、請求項1又は請求項2の車両用シートにおいて、前記ヒンジ部には、トルクヒンジが用いられている。
【0017】
請求項3の車両用シートでは、ヒンジ部にトルクヒンジを用いている。これにより、回動部が不必要に回動してしまうのを防止できると共に、非展開位置と展開位置との間の任意の位置に回動部を配置できる。
【0018】
請求項4に係る車両用シートは、請求項1から請求項3の何れか1項の車両用シートにおいて、前記基部は、先端側が前方に向けられた通常位置と、先端側が前記シートバックに沿って上方に向けられた格納位置とに回動可能とされている。
【0019】
請求項4の車両用シートでは、基部が先端側を前方に向けた通常位置と、先端側をシートバックに沿って上方に向けた格納位置とに回動可能とされているので、必要に応じて乗員の体の側方から退避させることができる。
【0020】
請求項5に係る車両用シートは、請求項1から請求項4の何れか1項の車両用シートにおいて、前記回動部を前記展開位置から前記非展開位置に復帰させる復帰手段を含む。
【0021】
請求項5の車両用シートでは、復帰手段が回動部を展開位置から非展開位置に復帰させるので、容易に回動部を乗員の前側から退避させることができる。
【0022】
請求項6に係る車両用シートは、請求項4を引用する請求項5の車両用シートにおいて、前記復帰手段は、前記基部が前記通常位置から前記格納位置に回動されることで、前記回動部を前記展開位置から前記非展開位置に復帰させる。
【0023】
請求項6の車両用シートでは、基部が通常位置から格納位置に回動されることで、復帰手段が、回動部を展開位置から非展開位置に復帰させる。これにより、回動部が展開位置に配置された状態から基部を格納位置に配置する際に、回動部がシートバックや乗員と干渉してしまうのを効果的に防止できる。
【0024】
請求項7に係る車両用シートは、請求項6の車両用シートにおいて、前記復帰手段は、前記基部が回動されることで、該基部に対して相対回転されるプーリと、一端が前記プーリに係止されて該プーリの外周部に巻き掛けられ、前記プーリの外周から引き出された他端が前記回動部に係止され、前記基部が前記通常位置から前記格納位置に回動されて前記プーリに巻き取られることで、前記回動部を前記展開位置から前記非展開位置に回動可能に配策されたワイヤと、を含む。
【0025】
請求項7の車両用シートでは、基部が回転された際に基部に対して相対回転するプーリにワイヤの一端が係止されて巻き掛けられ、このワイヤの他端が回動部に係止されている。また、ワイヤは、基部が通常位置から格納位置に回動されてプーリに巻き取られることで、回動部を展開位置から非展開位置に回動させる。
【0026】
これにより、回動部が展開された状態であっても、基部を格納位置に回動させることで回動部及び基部を容易に格納位置に配置できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、回動部を乗員の前側の展開位置に配置できるので、展開位置において回動部に乗員の肘等を載せることができるので、乗員の手や肘、前腕部などに疲労が生じるのを抑制できる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態に係る車両用シートの主要部を示す斜視図である。
【
図2】車両用シートの使用状態の一例を示す斜視図である。
【
図3】車両用シートの主要部の概略を示す平面図である。
【
図4】アームレストの主要部を示す解斜視図である。
【
図6】アームレストの主要部の概略を示す側面図である。
【
図7】アームレストの位置の変化を示す主要部の概略斜視図ある。
【
図8】アームレストの位置の変化を示す主要部の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態では、車両に設置される車両用シート10を例に説明する。
図1には、本実施形態に係る車両用シート10の主要部が車両の前斜め左上方視の斜視図にて示され、
図2には、車両用シート10の使用状態の一例が車両の前斜め左上方視の斜視図にて示されている。また、
図3には、
図2における車両用シート10の主要部の上方視の概略が平面図にて示されている。
【0030】
なお、図面では、車両用シート10の前後方向の前側、シート幅方向の左側及び上下方向の上側が各々矢印FR、LH、UPにて示されている。車両用シート10の前側、左側及び上側は、各々車両の前後方向の前側、車幅方向の左側及び上側と略一致されている。また、本実施形態では、車両用シート10の左側から見て右側及び右側から見て左側をシート幅方向内側とし、車両用シート10の前後方向とシート幅方向とは略直交(互いの間の角度が略90°)しているものとする。
【0031】
本実施形態に係る車両用シート10は、車室内フロア(図示省略)の上面に設置されており、車両に乗車した乗員Pが着座される。なお、車両用シート10は、運転席や助手席などに用いられてもよく、運転席や助手席等の前席に限らず前席の車両後方に配置される後席に用いられてもよい。
【0032】
図1に示すように、車両用シート10は、車室内フロアに固定されたシートクッション12と、下端部がシートクッション12の後端部に連結されたシートバック14とを備えている。また、車両用シート10は、シートバック14の上端部にヘッドレスト16が設けられていてもよい。車両用シート10は、シートクッション12が着座した乗員Pの臀部及び大腿部等を支持し、シートバック14が乗員Pの背部を支持し、ヘッドレスト16が乗員Pの頭部を支持する。
【0033】
車両用シート10には、乗員Pの肘Peや前腕Poを支持するためのアームレスト20が設置されている。
図4には、アームレスト20の主要部が分解斜視図にて示され、
図5には、アームレスト20の主要部がシート幅方向の内側から見た側面図にて示されている。また、
図6には、アームレスト20の主要部がシート幅方向外方視の概略図にて示されている。
【0034】
図1から
図6に示すように、本実施形態に係るアームレスト20は、一例として凡その外形形状が長尺略矩形状(略直方体状)とされており、アームレスト20は、各々が長尺略矩形状とされた基部22及び回動部としての前部24により構成されている。アームレスト20は、基部22の長手方向の一端に前部24の長手方向の一端が連結されている。
【0035】
アームレスト20は、基部22と前部24とを合わせた長手方向寸法が所要の寸法(例えば、一般的なアームレストにおける長手方向寸法)となるように形成されており、アームレスト20では、前部24の長手方向寸法が基部22の長手方向寸法より短くされている。
【0036】
車両用シート10には、シートバック14の側面の所要高さ位置に支持シャフト26(
図5、
図6参照)が突設されている。支持シャフト26は、例えばシートバック14において骨格を形成するシートバックフレーム(図示省略)に回転不能に取り付けられて、シートバック14からシート幅方向の外側に突設されている。アームレスト20は、基部22の後端部(前部24とは反対側の端部)が支持シャフト26に回転可能に連結されており、アームレスト20は、乗員Pの操作により支持シャフト26を軸に回動可能とされてシートバック14に支持されている。
【0037】
車両用シート10には、シートバック14とアームレスト20との間に図示しない制限保持機構が設けられている。制限保持機構は、アームレスト20を通常位置(
図1において実線にて示す位置、アームレストの長手方向が車両前後方向に沿い、前部24側が車両前側とされた位置)と格納位置(
図1において二点鎖線で示す位置、アームレスト20の長手方向が略上下方向に沿い、前部24側が上方に向けられた位置)との間で回動可能としている。
【0038】
アームレスト20は、通常位置において長手方向が水平方向となり、乗員Pの肘Peや前腕部Poの支持が可能となっている。また、アームレスト20は、格納位置において長手方向が略上下方向となってシートバック14の側面に沿って配置され、乗員Pの側方から退避される。なお、このような制限保持機構は、公知の構成を適用でき、本実施形態では説明を省略する。
【0039】
また、アームレスト20は、通常位置において基部22に対して前部24が回動可能とされている。前部24は、アームレスト20の通常位置において基部22と前部24とが直線状に配置される位置が非展開位置とされ、基部22に対して前部24が乗員Pの前側に配置される位置が展開位置とされている。アームレスト20では、乗員Pの操作により前部24が展開位置又は非展開位置に配置されるように基部22に対して前部24が回動される。
【0040】
図4に示すように、アームレスト20の基部22は、基部22の外形を形成する樹脂製の外周部30、及び基部22の骨格を構成する基部フレーム32を含んでおり、基部22は、基部フレーム32が外周部30内に収容されて、外周部30により被覆されている。
【0041】
基部フレーム32は、金属製(合成樹脂製等であってもよい)とされた長尺略矩形の箱体状とされている。基部フレーム32には、長手方向と交差する方向に上板32A、上板32Aと対を成す下板32B、及び縦板32Cが設けられている。基部フレーム32は、上板32A、下板32B及び縦板32Cにより長手方向と交差する方向の一面側が開口された矩形状に形成(断面略コ字状に形成)されており、基部フレーム32は、開口側がシート幅方向の内側に向けられている。
【0042】
基部22の外周部30は、一例として略直方体形状とされており、アームレスト20の通常位置において上方側となる面が乗員Pの肘Pe及び前腕部Poを載せることができる載置面30Aとされている。外周部30は、シート幅方向の左側が側部30Lとされ、シート幅方向の右側が側部30Rとされており、外周部30は、側部30Lと側部30Rとが接合されて形成されている。また、外周部30の側部30Lには、側部30R側の面に開口された凹部30Bが形成され、外周部30の側部30Rには、側部30L側の面に開口された凹部30Cが形成されている。凹部30B、30Cは、基部フレーム32の外形形状に合わせて形成されている。
【0043】
基部22は、外周部30の凹部30B、30Cの間に跨って基部フレーム32が収容されて、外周部30と基部フレーム32とが一体にされている。この際、基部フレーム32は、側部30L内の凹部30Bの底面に基部フレーム32の縦板32Cが対向されている。また、基部22では、外周部30内においてシート幅方向内側(側部30R側)に偏寄されて基部フレーム32が収容されている。
【0044】
基部22では、側部30Rにおいてシート幅方向に貫通形成された貫通孔30Dに支持シャフト26(図示省略)が挿通され、この支持シャフト26の先端部が基部フレーム32内(上板32Aと下板32Bとの間)に挿入配置されている。また、基部22は、支持シャフト26の先端部が縦板32Cに相対回転可能に連結されている。これにより、車両用シート10では、基部22がシートバック14に回動可能に支持されて、アームレスト20がシートバック14に回動可能に支持されている。
【0045】
アームレスト20の前部24は、前部24の外形を形成する樹脂製の外周部40、及び前部24の骨格を構成する前部フレーム42を含んでおり、前部24は、前部フレーム42が外周部40内に収容されて外周部40により被覆されている。
【0046】
前部フレーム42は、金属製(合成樹脂製等であってもよい)とされた略矩形の箱体状とされている。前部フレーム42は、長手方向と交差する方向に上板44、上板44に対向された下板46、及び上板44と下板46とを連結する縦板48が設けられている。前部フレーム42は、上板44、下板46及び縦板48により長手方向と交差する方向の一面側が開口された矩形形状に形成(断面略コ字状に形成)されている。前部フレーム42は、通常位置において開口側がシート幅方向の内側に向くように配置されている。
【0047】
前部24の外周部40は、一例として略直方体形状とされており、アームレスト20の通常位置において上方側となる面が乗員Pの肘Pe及び前腕部Poを載せることができる載置面40Aとされている。アームレスト20では、基部22の載置面30A及び前部24の載置面40Aに載置される乗員Pの肘Peや前腕部Poの支持が可能になっている。
【0048】
また、外周部40は、アームレスト20の通常位置におけるシート幅方向の左側が側部40Lとされ、シート幅方向の右側が側部40Rとされており、外周部40は、側部40Lと側部40Rとが接合されて形成されている。外周部40の側部40Lには、側部40R側の面に開口された凹部40Bが形成され、外周部40の側部40Rには、側部40L側の面に開口された凹部40Cが形成されている。凹部40B、40Cは、前部フレーム42の外形形状に合わせて形成されている。
【0049】
前部24は、外周部40の凹部40B、40Cの間に跨って前部フレーム42が収容されて、外周部40と前部フレーム42とが一体にされている。前部フレーム42は、側部40L内の凹部40Bの底面に前部フレーム42の縦板48が対向されている。また、外周部40では、前部フレーム42が上側に偏寄されると共に、左側に偏寄されて配置されるように側部40Lの凹部40B及び側部40Rの凹部40Cが形成されている。
【0050】
アームレスト20では、基部22に前部24を連結するための連結部50が基部22と前部24との間に跨って形成されている。前部24の前部フレーム42には、上板44の基部22側に段差部52が形成されている。前部フレーム42では、段差部52により上板44の基部22側(以下、上板44Aとする)が下板46に接近されている(間隔が狭められている)。また、前部フレーム42では、上板44A及び下板46の基部22側の端部が上方視において略半円状に形成されている。なお、前部フレーム42には、下板46に段差部が設けられてもよく、上板44と下板46の各々に段差部が設けられてもよく、段差部が設けられずに上板44Aと下板46との間隔で長手方向の略全域が形成されていてもよい。
【0051】
また、前部フレーム42の基部22側には、上板44Aと下板46に貫通孔54が形成されており、上板44Aの貫通孔54と下板46の貫通孔54は、開口中心が上下に重なる位置とされると共に、開口寸法が同径の円孔とされている。
【0052】
前部24の外周部40には、基部22側の端面40Dから舌片部56が形成されており、舌片部56は、側部40L及び側部40Rの各々から突出された部分が接合されることにより一体とされている。舌片部56は、前部フレーム42の上板44Aと下板46の間隔及び基部22側の先端部形状に合わせて突出形成されており、舌片部56は、上板44Aと下板46とを一体に被覆している。これにより、舌片部56は、側方視における上下方向の寸法が前部24における基部22とは反対側の部分よりも狭められて、上方視において端面40Dから突出され、突出先端部が略半円状に湾曲されている。
【0053】
また、舌片部56には、側部40R側に貫通孔56Aが形成されており、貫通孔56Aは、舌片部56における側部40Rの上側及び下側の各々に互いの開口の中心位置が重なる円形とされて上下方向に貫通形成されている(
図4では一方のみを図示)。また、側部40Rの貫通孔56Aの各々は、開口中心が前部フレーム42の上板44A及び下板46の各々の貫通孔54の開口中心に重なると共に、開口寸法が貫通孔54の開口寸法と同径か僅かに大きくされている。
【0054】
一方、基部22には、基部フレーム32の前部24側に切欠き部58が形成されている。切欠き部58は、基部フレーム32の前端面(前部24側の端面)においてシート幅方向の内側から縦板32Cに達するように形成され、さらに、縦板32Cの前側端から後側に延在されて縦板32Cにおいて矩形状に形成されている。
【0055】
また、基部22の外周部30(側部30L、30R)には、前側(前部24側)の端部に、前部24の舌片部56が差し込まれる凹部60が設けられている。凹部60は、側部30Lと側部30Rとに跨って形成されており、凹部60は、左側の側部30Lに略溝状に形成された凹部62、及び右側の側部30Rに形成された切込み部64により構成されている。
【0056】
側部30Lの凹部62は、側部30Lの前側端面に矩形状に開口されると共に、側部30Rのシート幅方向内側面(側部30R側の面)に矩形状に開口され、シート幅方向内側面の開口が後方側に延設されている。また、凹部62の底面62Aは、前側端から後方に所定幅で延設され、後側においてシート幅方向内側の開口を閉じるように円弧状に湾曲されている。この凹部62には、非展開位置において前部24の舌片部56の左側の一部(側部40L側の部分)が挿入配置される。
【0057】
側部30Rの切込み部64は、側部30Rの前側端部においてシート幅方向に沿う所定幅の溝状に形成されており、切込み部64は、前側、シート幅方向内側及びシート幅方向外側(側部30L側)の各々に開口されている。また、切込み部64の底面64Aは、側部30L側の凹部62の底面62Aからシート幅方向に連続するように形成されている。この切込み部64には、非展開位置において前部24の舌片部56の右側の一部(側部40R側の部分)が挿入配置される。
【0058】
これにより、基部22の外周部30には、上方視において左後側の角部が湾曲された略矩形状とされ、前側からシート幅方向内側に向けて開口された凹部60が形成されている。また、外周部30の凹部60は、側部30L側の底面62Aが前後方向に沿い、側部30R側の底面64Aがシート幅方向に沿っており、凹部60は、底面62Aと底面64Aとの間の角度が略直角とされている。
【0059】
基部22の基部フレーム32には、上板32A及び下板32Bの各々に貫通孔66が設けられており、貫通孔66の各々は、中心位置が上下に重なる位置とされて上下方向に貫通形成されている。貫通孔66の各々の中心位置は、凹部60に前部24の舌片部56が配置された際、舌片部56の貫通孔56A(貫通孔54も同様)の中心位置と上下に重なる位置とされている。
【0060】
また、基部22の側部30Rには、切込み部64(凹部60)の上側内面及び下側内面の各々に貫通溝68が形成されており(
図4では一方のみ図示)、貫通溝68は、側部30L側からシート幅方向の内側に向けて形成されて、内側端が略半円状に湾曲されている。貫通溝68の各々は、内側部分の中心位置が側部30R(外周部30)内に収容されている基部フレーム32の貫通孔66の中心位置に重なるように貫通形成されている。
【0061】
これにより、アームレスト20では、基部22の凹部60に前部24の舌片部56を挿入する(差し込む)ことで前部24が基部22への連結位置に配置される。アームレスト20では、基部22と前部24との連結位置において、基部22の基部フレーム32の貫通孔66の中心位置の各々と、前部24の前部フレーム42の貫通孔54の中心位置の各々とが上下に重ねられる。
【0062】
一方、連結部50には、基部22と前部24との間にヒンジ部70が設けられている。ヒンジ部70には、軸状のトルクヒンジ72が用いられており、トルクヒンジ72は、軸心部に対して外周部が相対回転可能とされていると共に、軸心部と外周部との間に摩擦力が生じるようになっている。トルクヒンジ72は、軸方向の長さ寸法が基部フレーム32の上板32Aの内面(下板32B側の面)と下板32Bの内面(上板32A側の面)との間隔寸法と同様とされている。
【0063】
トルクヒンジ72は、前部24において側部40Rの貫通孔56Aの各々に挿入されると共に、前部フレーム42の上板44A及び下板46の各々に形成されている貫通孔54に嵌入されて、外周部が前部フレーム42に固定される。
【0064】
また、トルクヒンジ72は、基部22において側部30Rの切込み部64の内面に形成された貫通溝68に挿通されて、中心位置が基部フレーム32の貫通孔66の中心位置に合わせられて上板32Aと下板32Bとの間に配置される。また、トルクヒンジ72は、貫通孔66の各々に挿入されたネジ72Aが軸方向の両端部の各々に螺合されて基部フレーム32に固定される。
【0065】
これにより、アームレスト20では、基部22に前部24が連結されると共に、前部24がトルクヒンジ72を軸に基部22に対して相対回転可能とされる。また、基部22に対して前部24を回転させる際には、トルクヒンジ72の摩擦力により所定の回転負荷が付与される。また、基部22に対する前部24の回転は、舌片部56の周縁部が凹部60の底面62A及び底面64Aに当接することで、略90°(直角)の範囲に制限される。
【0066】
また、アームレスト20には、基部22に対する前部24の回動範囲を制限するための制限部74が形成されている。アームレスト20における制限部74は、基部22の外周部30(側部30L、30R)の前端面74Aと、外周部30(側部30R)のシート幅方向内側の側面74Bと、前部24の外周部40(側部40L、40R)の基部22側の端面40Dとにより構成されている。
【0067】
アームレスト20では、トルクヒンジ72の中心位置に対して、基部22の外周部30の前端面74Aと側面74Bとが略同様の距離(寸法)とされている。また、アームレスト20の基部22の外周部30は、前端面74Aと側面74Bとの間の角部に上方視円弧状に湾曲された湾曲面74Cが形成されており、前端面74A、湾曲面74C及び側面74Bが連続されている。湾曲面74Cの湾曲径は、他の角部の湾曲径より小さくされ、かつトルクヒンジ72の中心位置に対する湾曲径の寸法が、トルクヒンジ72の中心位置に対する前端面74A及び側面74Bの各々と同様の寸法(距離)とされている。
【0068】
アームレスト20において前部24の長手方向が基部22の長手方向と同方向となる非展開位置では、基部22の外周部30(側部30L、30R)の前端面74Aに前部24の外周部40(側部40L、40R)の端面40Dが当接される。また、前部24の長手方向が基部22の長手方向に対して略直交する展開位置では、基部22の外周部30(側部30L)の側面74Bに前部24の外周部40(側部40L、40R)の端面40Dが当接される。
【0069】
これにより、前部24は、非展開位置において基部22の外周部30の前端面74Aと前部24の外周部40の端面40Dとが当接して、展開位置側への回動が制限される。また、前部24は、展開位置において基部22の外周部30の側面74Bと前部24の外周部40の端面40Dとが当接して、非展開位置側への回動が制限される。また、前部24は、基部22の外周部30に形成された湾曲面74Cにより非展開位置から展開位置及び展開位置から非展開位置への回動が制限されない(許容される)。
【0070】
一方、アームレスト20には、復帰手段としての復帰部76が設けられている。復帰部76は、展開位置に配置されている前部24を非展開位置へ復帰させる。また、アームレスト20に設けている復帰部76は、アームレスト20を通常位置から格納位置へ回動させることで、前部24を展開位置から非展開位置へ復帰させる。
【0071】
復帰部76は、ワイヤ78及び略円板状のプーリ80を含んで構成されている。プーリ80には、係止孔80Aが形成されており、係止孔80Aは、プーリ80の軸方向に貫通されていると共に、径方向外側に開口されている。
【0072】
プーリ80は、基部22の前部24とは反対側の端部において基部フレーム32内に配置されており、プーリ80は、基部22(アームレスト20)を支持する支持シャフト26が軸心部に嵌入されて一体回転可能に係止されている。これにより、基部22が支持シャフト26回りに回動されることで、基部22に対してプーリ80が相対回転される。
【0073】
ワイヤ78には、一端に係止部78Aが取り付けられ、他端に係止部78Bが取り付けられており、係止部78A、78Bは、各々同様に略円柱状とされている。ワイヤ78は、一方の係止部78Aがプーリ80の係止孔80A内に配置されてプーリ80に係止されている。また、ワイヤ78は、プーリ80の外周部に巻き掛けられたのち係止部78Aとは反対側がプーリ80から引き出されており、ワイヤ78は、シート幅方向外方視(左方視)において右回りでプーリ80に巻き掛けられたのちに引き出されている。
【0074】
ここで、プーリ80へのワイヤ78の巻き掛け位置は、プーリ80の相対回転により変化し、ワイヤ78のプーリ80への巻き取り量は、プーリ80への巻き掛け位置の変化量とプーリ80の半径により定まる。例えば、プーリ80の半径(巻き掛け位置の半径)rのプーリ80において、回転角θ1だけ回転されることで、巻き掛け位置の回転角θ2は、回転角θ1に応じて変化し、巻き取り量(巻取長さ)は、半径rと回転角θ2により定まる。
【0075】
これにより、ワイヤ78は、基部22が通常位置から格納位置に回動されることでプーリ80の約1/4周分の長さがプーリ80に巻き取られる。また、ワイヤ78は、基部22が格納位置から通常位置に回動されることでプーリ80の約1/4周分の長さがプーリ80から送り出される。
【0076】
ワイヤ78は、基部22の基部フレーム32内を配策され、トルクヒンジ72の外側に廻されて前部24の前部フレーム42内に配策されている。前部フレーム42には、下板46の一部が切起こされて係止片82が形成されており、係止片82には、前部フレーム42内に引き入れられているワイヤ78の係止部78Bが係止される。
【0077】
また、前部24の前部フレーム42には、トルクヒンジ72(貫通孔54)の周囲に複数(本実施形態では2本)のガイド(ガイドローラ)84が配置されており、ガイド84の各々は円筒状に形成されている。ガイド84の各々には、略L字形状のワイヤガイド86が取り付けられている。
【0078】
ガイド84は、トルクヒンジ72の軸心を中心とした所定半径の円周上に配置されている。アームレスト20には、2本のガイド84が用いられており、2本のガイド84は、トルクヒンジ72の軸心を中心とした互いの間の角度が略直角となる位置に配置されている。また、2本のガイド84は、例えば、前部24の非展開位置において、一方がトルクヒンジ72よりも後側となり、他方がトルクヒンジ72によりも前側となる位置に配置されている。
【0079】
ガイド84及びワイヤガイド86は、ネジ84Aによって前部フレーム42の下板46に取り付けられており、ワイヤガイド86は、ガイド84に対してトルクヒンジ72の軸心を中心とした径方向外側に配置されている(垂下されている)。
【0080】
ワイヤ78は、トルクヒンジ72の周囲においてガイド84とワイヤガイド86との間を通されて配策されている。これにより、ワイヤ78は、トルクヒンジ72を中心に前部24が回動された際、トルクヒンジ72に接触したり、トルクヒンジ72から離れるように撓んでしまったりするのが防止されている。
【0081】
一方、ワイヤ78は、アームレスト20が通常位置に配置され、かつ前部24が展開位置に配置されたときに、プーリ80から引き出されている長さが、係止部78Bが前部24の係止片82に係止できる長さとされている。すなわち、ワイヤ78は、アームレスト20が通常位置に配置され、かつ前部24が展開位置に配置された状態で弛みが生じない長さとされている。
【0082】
このように構成されている車両用シート10では、乗員Pが着座することで乗員Pの臀部及び大腿部をシートクッション12が支持し、背部をシートバック14が支持し、頭部をヘッドレスト16が支持する。
【0083】
車両用シート10には、アームレスト20が設置されており、車両用シート10では、アームレスト20の載置面30A、40Aに乗員Pの肘Peや前腕部Poが載せられることで、乗員Pの肘Peや前腕部Poを支持できて、乗員Pの疲労を抑制できる。
【0084】
図7には、アームレスト20の配置位置の概略が主要部の斜視図にて示され、
図8には、アームレスト20の配置位置の概略が平面図及び側面図にて示されている。なお、
図7及び
図8では、紙面右側に格納位置が示され、紙面中央部に通常位置及び前部24の非展開位置が示され、紙面左側に前部24の展開位置が示されている。
【0085】
車両用シート10のアームレスト20では、連結部50により基部22の先端側に前部24が連結されている。また、連結部50には、トルクヒンジ72を用いたヒンジ部70が設けられており、連結部50では、トルクヒンジ72を軸に基部22に対して前部24が回動可能としている。このため、アームレスト10では、乗員Pが手で前部24を廻すことで、前部24を非展開位置から乗員Pの前側となる展開位置に配置できる(
図2及び
図3参照)と共に、前部24を展開位置から非展開位置に戻すことができる。
【0086】
これにより、車両用シート10に着座している乗員Pが、手にしているスマートフォン等の携帯装置90などを乗員Pの正面(前側)に持ってきた際、乗員Pの肘Peを前部24の載置面40Aに容易に載せることができる。したがって、乗員Pは、携帯装置90などを正面(前側)に持ってきても、肘Peが浮いてしまうことがなく、肘Peが浮いていることにより生じる手や手首、前腕部などの疲労を抑制できる。また、肘Peを前部24に載せることができるので、手に持っている携帯装置90などがブレたり、振動したりしてしまうのを抑制できて、安定させて保持できる。
【0087】
また、基部22に対して前部24を回動させる際、トルクヒンジ72に生じる摩擦力に応じた回動負荷を受ける。このため、前部24が不必要に回動してしまうのを防止できると共に、展開位置と非展開位置の間の任意の回動位置に前部24を配置できる。また、車両緊急時(急減速時)等においては、乗員Pの体が前方に移動してしまうことがあるが、この際、乗員Pの体が前部24を押すことで、前部24を容易に回転させることができるので、前部24は、乗員Pの体の移動を不必要に阻害することがない。
【0088】
アームレスト20では、基部22と前部24との間に制限部74が構成されている。制限部74は、非展開位置において前部24の端面40Dが基部22の前端面74Aに当接することで、前部24が展開位置とは反対側のシート幅方向外側に回動してしまうのを制限する。
【0089】
これにより、前部24がシート幅方向外側に向いてしまうのを防止できる。この際、前部24の舌片部56が基部22の凹部60(凹部62)内の底面62Aに当接することで、前部24がシート幅方向外側に回動してしまうのをより効果的に制限できる。
【0090】
また、制限部74は、展開位置において前部24の端面40Dが基部22の側面74Bに当接することで、前部24が展開位置からさらに乗員側に回動してしまうのを制限する。これにより、前部24の先端が乗員Pの体に接触する等の干渉が生じるのを防止できる。この際、前部24の舌片部56が基部22の凹部60(切込み部64)内の底面64Aに当接することで、前部24が乗員P側に回動してしまうのをより効果的に制限できる。
【0091】
さらに、制限部74は、前部24が前後方向と直交する方向よりも乗員P側に向くのを制限している。車両緊急時(急減速時)等において乗員Pにより前部24が確実に回動できる共に、前部24が回動しないために逆に前部24の先端で乗員を押してしまうのを確実に防止できる。
【0092】
一方、車両用シート10では、シートバック14側からシート幅方向外側に突設された支持シャフト26にアームレスト20が回動可能に支持されている。これにより、乗員Pが手で基部22を回動させることで、アームレスト20は、支持シャフト26を軸に通常位置から格納位置に配置されるので、乗員Pの側方から退避できる。
【0093】
また、アームレスト20には、復帰部76が形成されている。復帰部76では、ワイヤ78の一端がプーリ80に巻き掛けられて係止されており、アームレスト20が通常位置から退避位置に回動されることで、プーリ80が基部22に対して相対回転してワイヤ78を巻き取る。このワイヤ78の他端は、前部24に係止されており、ワイヤ78は、プーリ80に巻き取られることで基部22側に引かれる。
【0094】
このため、前部24が非展開位置となっている状態ではワイヤ78に弛みが生じているが、前部24が展開位置に配置されることでワイヤ78の弛みが除かれる。また、アームレスト20では、前部24が展開位置に配置されている状態でワイヤ78が基部22側に引かれることで、ワイヤ78が前部24をトルクヒンジ72回りに回動させて前部24を非展開位置に戻す。これにより、アームレスト20では、前部24が展開位置に配置されている状態で通常位置から格納位置に回動されることで、前部24が展開位置から非展開位置に戻される。
【0095】
したがって、アームレスト20では、前部24を展開位置から非展開位置に容易に戻すことができる。また、アームレスト20では、格納位置に戻される際、前部24が展開位置に配置されていても、この前部24が乗員Pやシートバック14に干渉してしまうのを確実に防止できる。
【0096】
したがって、アームレスト20では、通常位置から格納位置、及び格納位置から通常位置への各々の回動(
図7及び
図8の紙面右側と紙面中央部との間の移動)を円滑に行うことができる。また、アームレスト20では、通常位置における前部24の非展開位置から展開位置、及び展開位置から非展開位置への各々の回動(
図7及び
図8の紙面中央部と紙面左側の間の移動)を円滑に行うことができる。さらに、アームレスト20では、前部24の展開位置から全体の格納位置への移動をより円滑に行うことができる(
図7及び
図8の紙面左側から紙面右側への移動)。
【0097】
なお、以上説明した本実施形態では、アームレスト20を各々が長尺箱体状とされた基部22及び前部24により構成した。しかしながら、アームレストは、基部のシート前側に回動部が配置されて、回動部が基部に対して回動可能とされた構成であれば任意の形状を適用できる。
【0098】
また、アームレスト20では、基部22の前端面74A、基部22の側面74B、及び前部24の端面40Dにより制限部74を構成した。しかしながら、制限部は、回動部の非展開位置から展開位置とは反対側への回動を制限すると共に、回動部の展開位置から非展開位置とは反対側への回動を制限できる構成であればよい。
【0099】
また、アームレスト20では、ヒンジ部70にトルクヒンジ72を用いた。しかしながら、ヒンジ部は、基部に対して回動部を回動させる際、所要の回動負荷を生じさせることができる構成であればよく、例えば、クリック機構等を用いて回動部の複数の回動位置で回動のための負荷が生じる構成を適用してもよい。
【0100】
さらに、アームレスト20では、基部22が通常位置と格納位置との間で回動される際に基部22に対して相対回転されるプーリ80と、プーリ80が回転されることで巻き取り又は送り出し可能に係止されたワイヤ78を用いた。しかしながら、復帰手段は、回動部を展開位置から非展開位置に復帰できる構成であればよい。例えば、付勢手段を用い、回動部が付勢力に抗して非展開位置から展開位置に回動されることで蓄勢し、蓄勢された付勢力を解除させる際に回動部が展開位置から非展開位置に回動される構成を適用することもできる。
【0101】
また、本実施形態では、前部24に伸縮しない構成を適用した。しかしながら、回動部は、基部側の部分に対して基部とは反対側の部分が離間する方向に移動可能とする伸縮機能を備えてもよい。この場合、例えば、復帰手段を構成するワイヤを回動部の基部側部分に係止し、基部とは反対側の部分が基部側部分に対して接離方向に移動可能としてもよい。
【0102】
また、本実施形態では、車両用シート10のシート前側及びシート幅方向を車両の前側及び幅方向とした。しかしながら、車両用シートは、シート前側及びシート幅方向が車両における水平面内であれば任意の方向にでき、例えば、車両用シートは、シート前側及びシート幅方向を各々車両の方向及び前後方向とした所謂横向きであってもよい。
【0103】
なお、本実施形態では、車両用シート10を用いた。しかしながら、本発明における開示の技術は、車両に限らず、船舶や航空機等の移動体に設置されるシートに適用できる。
【符号の説明】
【0104】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
20 アームレスト
22 基部
24 前部(回動部)
30、40 外周部
30A、40A 載置面
32 基部フレーム
42 前部フレーム
50 連結部
56 舌片部
60 凹部
70 ヒンジ部
72 トルクヒンジ
74 制限部
76 復帰部
78 ワイヤ
80 プーリ