(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083135
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】熱交換器、熱交換器用伝熱シート、及び熱交換器用伝熱シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20240613BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20240613BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
F28D15/02 102A
F28D15/02 101H
F28D15/02 102G
F28D15/02 L
F28D15/02 106G
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197483
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南谷 広治
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA07
5E322AB08
5E322EA11
5E322FA04
5F136CB07
5F136DA27
5F136FA02
(57)【要約】
【課題】十分な薄型化を図ることができ、設計の自由度が高く、且つ熱交換能が担保される熱交換器、これに用いられる熱交換器用伝熱シート及び熱交換器用伝熱シートの製造方法を提供する。
【解決手段】熱交換器は、熱媒体流入口及び熱媒体流出口を設けてなる外包材を備え、前記外包材は、下記(1)又は(2)のいずれかを満たす。(1)前記熱交換器の内側から順に、内側樹脂層と、伝熱層とを備え、前記内側樹脂層は前記伝熱層の一部に設けられる。(2)前記熱交換器の内側から順に、伝熱層と、外側樹脂層とを備え、前記外側樹脂層は前記伝熱層の一部に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体流入口及び熱媒体流出口を設けてなる外包材を備え、
前記外包材は、下記(1)又は(2)のいずれかを満たす、熱交換器。
(1)前記熱交換器の内側から順に、内側樹脂層と、伝熱層とを備え、前記内側樹脂層は前記伝熱層の一部に設けられる。
(2)前記熱交換器の内側から順に、伝熱層と、外側樹脂層とを備え、前記外側樹脂層は前記伝熱層の一部に設けられる。
【請求項2】
前記外包材は前記(1)を満たし、前記伝熱層における前記内側樹脂層とは反対面の一部又は全面に、さらに外側樹脂層を備える請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記外包材は前記(2)を満たし、前記伝熱層における前記外側樹脂層とは反対面の全面に、さらに内側樹脂層を備える請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記外包材の内部に、熱媒体の流路を複数に仕切る凹凸形状を有する内心材を備える、請求項1又は請求項2に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記内心材が、伝熱層の両面に熱融着性樹脂層を備える、請求項4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記内心材の凹底部及び凸頂部における熱融着性樹脂層と、前記外包材の内側樹脂層とが融着されてなる、請求項5に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記内心材の熱融着性樹脂層と前記外包材の内側樹脂層が、共にポリオレフィン系樹脂で形成されている、請求項5に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記伝熱層の少なくとも一部の表面に腐食防止層を備える、請求項1又は請求項2に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記外包材の前記内側樹脂層及び前記外側樹脂層の少なくとも一方が、熱媒体の流路の構成領域における一部又は全部に設けられていない、請求項1又は請求項2に記載の熱交換器。
【請求項10】
熱融着性樹脂層と伝熱層とが積層され、前記熱融着性樹脂層が前記伝熱層の一部に設けられる、熱交換器用伝熱シート。
【請求項11】
前記伝熱層における前記熱融着性樹脂層とは反対面の一部又は全面に、さらに耐熱性樹脂層を備える、請求項10に記載の熱交換器用伝熱シート。
【請求項12】
伝熱層と耐熱性樹脂層とが積層され、前記耐熱性樹脂層が前記伝熱層の一部に設けられる、熱交換器用伝熱シート。
【請求項13】
前記伝熱層における前記耐熱性樹脂層とは反対面の全面に、さらに熱融着性樹脂層を備える請求項12に記載の熱交換器用伝熱シート。
【請求項14】
伝熱層の一方の面の一部に接着剤を付与し、
前記接着剤を付与した面の全面に熱融着性樹脂層を形成し、
前記接着剤を付与していない領域における前記熱融着性樹脂層を除去する、
熱交換器用伝熱シートの製造方法。
【請求項15】
伝熱層の一方の面の一部に接着剤を付与し、
前記接着剤を付与した面の全面に耐熱性樹脂層を形成し、
前記接着剤を付与していない領域における前記耐熱性樹脂層を除去する、
熱交換器用伝熱シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器、熱交換器用伝熱シート、及び熱交換器用伝熱シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、PC等の高機能化に伴い、CPU(Central Processing Unit)周辺の発熱対策が必要になっている。そこで、一部の機種には冷却機構を組み込んで、CPUの発熱による負荷を下げ、筐体にも熱が溜まらないような工夫がなされている。また、電気自動車及びハイブリッド車に搭載される電池モジュールは、充電と放電を繰り返し発熱量が大きいことから、水冷、空冷等の冷却機構が組み込まれている。さらにSiC等のパワーモジュールも発熱量が大きいため、冷却板、ヒートシンク等の冷却機構を配置するなどの発熱対策がなされている。
【0003】
スマートフォン及びノートパソコンのような、筐体が薄く、各部品の設置スペースが限られる電子機器には、薄型で小型の冷却部材が求められる。そこで、例えば特許文献1では、エッチング加工された金属シートを2枚以上積み重ねて、少なくとも外周部の一部が接合により密閉された容器を形成したシート型ヒートパイプが提案されている。また、例えば特許文献2では、第1ヒートパイプと第2ヒートパイプが金属板に添わせて取り付けられ、第1ヒートパイプと第2ヒートパイプの長さ及び配置位置が特定された携帯型電子機器用熱拡散板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-59693号公報
【特許文献2】特開2016-189415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2は金属シート又は金属板を加工して作製されるため、厚さを薄くすることに限界があり、ろう付け等の加工も難易度が高いため、製造コストが高くなりやすい。また、自動車に組み込む電池の冷却機構等も金属の鋳造やろう付けによって加工製造するため、大がかりな製造装置が必要となる。
【0006】
このように、特許文献1、2等の従前の冷却部材は、現行以上に薄型化を図ることが困難であり、生産効率が低下してコストも増大するという課題があった。その上さらに、従前の冷却部材は、金属加工により製作されるため、形状、大きさ等を簡単に変更することができず、設計の自由度に乏しく、汎用性に欠けるという課題も抱えている。
【0007】
本開示では、上記の課題に鑑みてなされたものであり、十分な薄型化を図ることができ、設計の自由度が高く、且つ熱交換能が担保される熱交換器、これに用いられる熱交換器用伝熱シート及び熱交換器用伝熱シートの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1> 熱媒体流入口及び熱媒体流出口を設けてなる外包材を備え、
前記外包材は、下記(1)又は(2)のいずれかを満たす、熱交換器。
(1)前記熱交換器の内側から順に、内側樹脂層と、伝熱層とを備え、前記内側樹脂層は前記伝熱層の一部に設けられる。
(2)前記熱交換器の内側から順に、伝熱層と、外側樹脂層とを備え、前記外側樹脂層は前記伝熱層の一部に設けられる。
<2> 前記外包材は前記(1)を満たし、前記伝熱層における前記内側樹脂層とは反対面の一部又は全面に、さらに外側樹脂層を備える<1>に記載の熱交換器。
<3> 前記外包材は前記(2)を満たし、前記伝熱層における前記外側樹脂層とは反対面の全面に、さらに内側樹脂層を備える<1>に記載の熱交換器。
<4> 前記外包材の内部に、熱媒体の流路を複数に仕切る凹凸形状を有する内心材を備える、<1>~<3>のいずれか1項に記載の熱交換器。
<5> 前記内心材が、伝熱層の両面に熱融着性樹脂層を備える、<4>に記載の熱交換器。
<6> 前記内心材の凹底部及び凸頂部における熱融着性樹脂層と、前記外包材の内側樹脂層とが融着されてなる、<5>に記載の熱交換器。
<7> 前記内心材の熱融着性樹脂層と前記外包材の内側樹脂層が、共にポリオレフィン系樹脂で形成されている、<5>又は<6>に記載の熱交換器。
<8> 前記伝熱層の少なくとも一部の表面に腐食防止層を備える、<1>~<7>のいずれか1項に記載の熱交換器。
<9> 前記外包材の前記内側樹脂層及び前記外側樹脂層の少なくとも一方が、熱媒体の流路の構成領域における一部又は全部に設けられていない、<1>~<8>のいずれか1項に記載の熱交換器。
<10> 熱融着性樹脂層と伝熱層とが積層され、前記熱融着性樹脂層が前記伝熱層の一部に設けられる、熱交換器用伝熱シート。
<11> 前記伝熱層における前記熱融着性樹脂層とは反対面の一部又は全面に、さらに耐熱性樹脂層を備える、<10>に記載の熱交換器用伝熱シート。
<12>伝熱層と耐熱性樹脂層とが積層され、前記耐熱性樹脂層が前記伝熱層の一部に設けられる、熱交換器用伝熱シート。
<13> 前記伝熱層における前記耐熱性樹脂層とは反対面の全面に、さらに熱融着性樹脂層を備える<12>に記載の熱交換器用伝熱シート。
<14> 伝熱層の一方の面の一部に接着剤を付与し、
前記接着剤を付与した面の全面に熱融着性樹脂層を形成し、
前記接着剤を付与していない領域における前記熱融着性樹脂層を除去する、
熱交換器用伝熱シートの製造方法。
<15> 伝熱層の一方の面の一部に接着剤を付与し、
前記接着剤を付与した面の全面に耐熱性樹脂層を形成し、
前記接着剤を付与していない領域における前記耐熱性樹脂層を除去する、
熱交換器用伝熱シートの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、十分な薄型化を図ることができ、設計の自由度が高く、且つ熱交換能が担保される熱交換器、これに用いられる熱交換器用伝熱シート及び熱交換器用伝熱シートの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一態様の熱交換器の外観を表す概略斜視図である。
【
図3】
図1の熱交換器を部品ごとに分けた分解図である。
【
図4】本開示の一態様における内心材の部分的な概略斜視図である。
【
図5】熱交換器の変形例を説明する概略斜視図である。
【
図6】外包材の層構成の例を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。但し、本開示の実施形態は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示の実施形態を制限するものではない。
【0012】
本開示における実施形態について図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。また、各図面において、実質的に同じ機能を有する部材には、全図面同じ符号を付与し、重複する説明は省略する。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
【0013】
<熱交換器>
本開示の熱交換器は、熱媒体流入口及び熱媒体流出口を設けてなる外包材を備え、前記外包材は、下記(1)又は(2)のいずれかを満たす。
(1)前記熱交換器の内側から順に、内側樹脂層と、伝熱層とを備え、前記内側樹脂層は前記伝熱層の一部に設けられる。
(2)前記熱交換器の内側から順に、伝熱層と、外側樹脂層とを備え、前記外側樹脂層は前記伝熱層の一部に設けられる。
【0014】
外包材は前記(1)を満たす場合に、伝熱層における内側樹脂層とは反対面の一部又は全面に、さらに外側樹脂層を備えてもよい。
また、外包材は前記(2)を満たす場合に、伝熱層における外側樹脂層とは反対面の全面に、さらに内側樹脂層を備えてもよい。
【0015】
本開示の熱交換器は、伝熱層の上に内側樹脂層及び外側樹脂層の少なくとも一方が設けられる外包材で構成されるため、従前の金属加工により作製されるヒートパイプ等に比べて、十分な薄型化を図ることができ、設計の自由度が高くなる。
そして、本開示の熱交換器は、内側樹脂層及び外側樹脂層の少なくとも一方が、伝熱層の一部に設けられる。内側樹脂層及び外側樹脂層を設ける位置は自由に設計でき、例えば、発熱体等の対象物品を搭載する位置、外包材の内部に設けられる熱媒体の流路に対応する位置等を避けて、これらの位置以外に配置することができる。したがって、内側樹脂層及び外側樹脂層に起因する熱伝導性の低下が抑えられ、熱交換能が担保される。
【0016】
外包材の内側樹脂層及び外側樹脂層の少なくとも一方が、熱媒体の流路の構成領域における一部又は全部に設けられていないことが好ましく、この場合には、内側樹脂層又は外側樹脂層を介さずに発熱体等の対象物品から熱媒体まで熱移動させることができる。熱媒体の流路の構成領域における一部又は全部に内側樹脂層及び外側樹脂層の少なくとも一方が設けられていない熱交換器は、対象物品の形状及び設置位置に関わらず適用することができる。なお、「熱媒体の流路の構成領域」とは、熱交換器を厚み方向から観察したときに、熱媒体の流路が外包材の内部に配置されている領域をいう。
【0017】
なお、外側樹脂層は伝熱層よりも外側に配置され、外部環境に対して保護機能を奏させることができる。外側樹脂層は、例えば、耐候性、耐湿性、耐腐食性、耐薬性、耐傷性等の機能を有してもよい。
内側樹脂層は、外包材の内部に設けられる内心材の位置を固定するのに用いることができる。例えば、内心材が熱媒体の流路を複数に仕切る凹凸形状を有し、熱融着性樹脂層を含んで構成される場合、内心材の凸頂部及び凹底部に存在する熱融着性樹脂層と、外包材の内側樹脂層とを融着させることで、内心材の位置を固定することができる。この場合には、外包材の内側樹脂層は熱融着性樹脂層であることが好ましい。そして、外包材の外側樹脂層は、熱融着性樹脂層の融着のための加熱において溶融しないよう、耐熱性樹脂層であることが好ましい。耐熱性樹脂層とは、熱融着性樹脂層よりも融点が10℃以上高い樹脂層をいう。
また、内側樹脂層は、外包材の内部を流通する熱媒体に対する保護機能を奏させることもでき、熱媒体に対して耐腐食性、耐薬性、耐浸透性等の機能を有してもよい。
【0018】
以下、本開示の熱交換器について図面を参照して説明する。なお、本開示の実施形態は図面に記載の態様に限定されない。
【0019】
図1は、本開示の一態様の熱交換器100の外観を表す概略斜視図であり、
図2は
図1におけるA-A’断面図であり、
図3は
図1の熱交換器100を部品ごとに分けた分解図である。
図1~3に示される熱交換器100は、熱媒体Aの流入口10と流出口20とを有し、外包材30で全体が覆われている。外包材30は上側の外包材30Aと下側の外包材30Bで構成されている。上側の外包材30Aは板状部材であり、下側の外包材30Bは上面が開放される容器状に成形されている。外包材30Bは、板状の外包材を張り出し成形、絞り成形等の成形を行って凹部を形成し、凹部の周囲の未変形部分をフランジの外回り寸法にトリミングして得てもよい。
なお、本開示では図面での上下に即して上及び下と表記するが、上下を逆にしてもよい。
【0020】
上側の外包材30Aには、熱媒体Aの流入口10としてのジョイントパイプ及び流出口20としてのジョイントパイプを貫通させるための穴が設けられている。ジョイントパイプの固定性、組み立て性等の観点から、熱媒体Aの流入口10のジョイントパイプはヘッダー部12の一部として設けられ、流出口20のジョイントパイプはフッダー部22の一部として設けられていることが好ましい。熱媒体Aの流入口10のジョイントパイプは、射出成型等によりヘッダー部12と一体成型されていてもよく、流出口20のジョイントパイプは、射出成型等によりフッダー部22と一体成型されていてもよい。
【0021】
ヘッダー部12及びフッダー部22は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂又はそれらの変性樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル樹脂等で構成されてもよい。外包材が内側樹脂層を備える場合は、ヘッダー部12及びフッダー部22は内側樹脂層と同じ樹脂で構成されることが好ましい。これにより、ヘッダー部12及びフッダー部22と外包材との接続部を熱接着により強固に封止することが可能となり、接続部から熱媒体Aが漏れることをより抑えることができる。
【0022】
なお、
図1~3の熱交換器100では、ジョイントパイプの向きが熱交換器100の厚み方向の上外側に延びているが、ジョイントパイプの向きはこれに限定されない。例えば、ジョイントパイプは、熱交換器100の面方向の外側に延びていてもよい。また、流入口10のジョイントパイプと流出口20のジョイントパイプの向きが異なっていてもよい。
【0023】
上側の外包材30Aは、熱交換器の内側から順に、内側樹脂層32Aと、伝熱層31Aと、外側樹脂層33Aとを備えている。内側樹脂層32Aは伝熱層31Aの内側表面の全面に設けられ、外側樹脂層33Aは、伝熱層31Aの外側表面の一部に設けられ、伝熱層31Aの外側表面には、外側樹脂層33Aの未配置領域Sが存在する。
図1~
図3では、外側樹脂層33Aは外包材30Aの周辺部に設けられているが、外側樹脂層33Aの配置位置は自由に変更することができる。また、外包材30Aの外側表面の全面積に対する外側樹脂層33Aの未配置領域Sの占める割合は特に制限されず自由に設計することができる。未配置領域Sは、熱媒体Aの流路の構成領域における一部又は全部であることが好ましい。
【0024】
下側の外包材30Bは、熱交換器100の内側から順に、内側樹脂層32Bと伝熱層31Bと外側樹脂層33Bとを備える。
図1~
図3では、内側樹脂層32Bは伝熱層31Bの内側表面の全面に設けられ、外側樹脂層33Bは伝熱層31Bの外側表面の全面に設けられている。
【0025】
図1~3の熱交換器100では、外包材30の内部に内心材40が配置される。内心材40は、ヘッダー部12からフッダー部22へ流れる熱媒体Aの流路を複数に仕切る。内心材40は、伝熱層41の両面に熱融着性樹脂層42を備える。なお、本開示の熱交換器は、内心材40を有さない形態も包含される。
【0026】
図4は、本開示の一態様における内心材40の部分的な概略斜視図である。内心材40は熱媒体Aの流路を複数に仕切る凹凸形状を有し、複数の凸部45及び複数の凹部46を有している。凹凸形状は特に限定されず、流路の数、幅等によって適宜設計することができる。なお、凹凸の頂部を外包材30の内側樹脂層に融着させる場合には、凹凸の頂部に平坦部を設けることが好ましい。平坦部の面積は特に限定されないが、2mm
2以上の面積があると外包材への融着が確実となりやすい。
【0027】
そして、上側の外包材30Aと下側の外包材30Bの周囲を閉じて密閉させる。外包材30Bの凹部周囲のトリミング部分を外包材30Aに接触させて閉じてもよい。外包材30Aの内側樹脂層32Aと外包材30Bの内側樹脂層32Bを熱融着することにより外包材30Aと外包材30Bの周囲を閉じることができる。この融着の際に、内心材40の凹底部及び凸頂部における熱融着性樹脂層42と外包材30の内側樹脂層とを融着させて内心材の位置を固定することもできる。また、外包材の周囲の融着とは別のタイミングで、内心材40の凹底部及び凸頂部の熱融着性樹脂層42を外包材30の内側樹脂層に融着させてもよい。
【0028】
以下、外包材30、内心材40等の詳細を説明する。
下側の外包材30Aと上側の外包材30Bの材質は同じであっても異なっていてもよい。また、外包材30と内心材40の材質は同じであっても異なっていてもよい。
【0029】
伝熱層31A、31B、41としては、金属箔、グラファイトシート、セラミックスシート等が挙げられ、熱伝導性の観点から金属箔であることが好ましい。金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔、チタン箔、ニッケルめっき加工した銅箔、ニッケル箔及び銅箔のクラッドメタル等が挙げられる。熱伝導性、コスト等の観点からは、アルミニウム箔及び銅箔が好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。アルミニウムはアルミニウムを主成分としアルミニウム以外の金属等を含む合金であってもよい。
伝熱層31A、31B、41は、それぞれ異なる材質であっても、同じ材質であってもよい。
【0030】
金属箔は熱処理を行ったものであっても、行っていないものであってもよい。また、後述の接着剤層との結合性、耐腐食性等の観点から、表面処理(下地層の形成)を行うことが好ましい。表面処理としては、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理、ジルコニウム系化成処理等の化成処理、べーマイト処理などが挙げられる。表面処理層は、腐食防止層として設けられてもよい。
【0031】
伝熱層31A、31B、41の厚みは、外部応力耐性、耐圧性を考慮し、それぞれ独立に、50μm以上が好ましく、80μm以上がより好ましい。また、伝熱層31A、31B、41の厚みは、軽量性、加工性を考慮し、それぞれ独立に、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。
【0032】
内側樹脂層32A、32Bは、熱融着性を有する樹脂で構成されることが好ましい。熱融着性樹脂層42は、熱融着性を有する樹脂で構成される。内側樹脂層32A、32B及び熱融着性樹脂層42の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂又はそれらの変性樹脂、フッ素系樹脂、PET樹脂等のポリエステル系樹脂、塩化ビニル樹脂などが挙げられ、耐薬性ヒートシール性を考慮するとポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムが好ましい。
【0033】
内側樹脂層32A、32B及び熱融着性樹脂層42は、それぞれ異なる樹脂を用いても同じ樹脂を用いてもよい。内心材40を外包材30に熱融着させる観点からは、内心材40の熱融着性樹脂層42と外包材30の内側樹脂層32A又は32Bとは同種の材質であることが好ましく、共にポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。また、融着によって外包材30Aと外包材30Bの周囲を閉じる場合には、内側樹脂層32Aと32Bとは同種の材質であることが好ましい。
【0034】
内側樹脂層32A、32B及び熱融着性樹脂層42として樹脂フィルムを用いてもよい。樹脂フィルムは延伸フィルムでも、無延伸フィルムでもよいが、溶融温度が低くシールしやすくなり、伝熱層31A、31Bとの接着性が良好となる観点から、無延伸フィルムであることが好ましい。
【0035】
内側樹脂層32A、32B及び熱融着性樹脂層42の厚みは、それぞれ独立に、20μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましい。また、内側樹脂層32A、32B及び熱融着性樹脂層42の厚みは、それぞれ独立に、80μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましい。
【0036】
外側樹脂層33A、33Bは、内側樹脂層32A、32Bより融点が高い樹脂を用いることが好ましく、特に融点が10℃以上高い樹脂を使用することがより好ましい。外側樹脂層33A、33Bの樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等のポリエステル樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂等が挙げられる。外側樹脂層33A、33Bとして樹脂フィルムを用いてもよい。
外側樹脂層33A、33Bとして樹脂フィルムを用いてもよい。樹脂フィルムは延伸フィルムでも、無延伸フィルムでもよいが、融点が高く、耐電解液性に強い延伸フィルムを用いることが好ましい。
【0037】
外側樹脂層33A、33Bの厚みは、それぞれ独立に、9μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、外側樹脂層33A、33Bの厚みは、25μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。
【0038】
伝熱層31Aと内側樹脂層32Aとの間、及び伝熱層31Aと外側樹脂層33Aとの間には、それぞれ独立に他の層(図示せず)が設けられてもよく、設けられなくてもよい。他の層としては、接着剤層、絶縁層等が挙げられる。
【0039】
接着剤層は、内側樹脂層32A及び外側樹脂層33Aが配置される領域に設けることが好ましい。接着剤層に用いる接着剤としては、2液硬化型ウレタン系接着剤、オレフィン系接着剤等が挙げられる。
接着剤層の厚みは、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。また、接着剤層の厚みは、5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましい。
【0040】
絶縁層は、伝熱層31Aの少なくとも一部の表面に設けられ、全面に設けられてもよい。
絶縁層は、絶縁性を有する樹脂で構成されればよく、絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリセルロース等が挙げられ、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂が好ましい。
絶縁層の厚みは、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。また、絶縁層の厚みは、2.0μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましい。
【0041】
同様に、伝熱層31Bと内側樹脂層32Bとの間、伝熱層31Bと外側樹脂層33Bとの間、及び伝熱層41と熱融着性樹脂層42との間、にも他の層を設けてもよい。他の層の種類及び配置位置は上述のとおりである。
【0042】
外包材30A,30Bの最外層として被覆層(図示せず)を設けてもよい。被覆層は、保護層、絶縁層、導電層等として設けてもよい。保護層としての被覆層は、外部環境(光、湿度等)からの影響を抑えることができる。絶縁層としての被覆層は、対象物品である電気機器等と熱交換器とを絶縁することができる。導電層としての被覆層は、帯電を防止することができる。
被覆層の厚みは特に限定されないが、樹脂層と同程度、又は樹脂層よりも薄く設定することが好ましい。例えば、被覆層が絶縁層の場合には、当該被覆層の厚みは、0.1μm~5μmが好ましい。
【0043】
板状部材である外包材30Aの好適な層構成の例は次のとおりである。
外側から順に、外側樹脂層33A/接着剤層/絶縁層/伝熱層31A/接着剤層/内側樹脂層32A
外側から順に、外側樹脂層33A/接着剤層/絶縁層/表面処理層(腐食防止層等)/伝熱層31A/表面処理層(腐食防止層等)/接着剤層/内側樹脂層32A
外側から順に、外側樹脂層33A/接着剤層/表面処理層(腐食防止層等)/伝熱層31A/表面処理層(腐食防止層等)/接着剤層/内側樹脂層32A
【0044】
容器状部材である外包材30Bの好適な層構成の例も、外包材30Aと同様である。
【0045】
外包材30の総厚みは特に制限されない。強度及び熱伝導性の観点からは、外包材30の総厚みは80μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、120μm以上であることがさらに好ましい。薄型化及び変形性の観点からは、外包材30の総厚みは300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましい。かかる観点からは、外包材30の総厚みは、80μm~300μmであることが好ましく、100μm~250μmであることがより好ましく、120μm~200μmであることがさらに好ましい。
【0046】
内心材40は樹脂を含んで構成され、伝熱層41と、伝熱層41の両面に設けられる樹脂層と、を有してもよい。内心材40の表面が樹脂で構成されていると、熱媒体Aによる腐食の発生が抑制されやすくなる。
内心材40は、伝熱層41の両面に熱融着性樹脂層42を備えることが好ましい。内心材40の両面が熱融着性樹脂層42で構成されていると、熱融着性樹脂層42と外包材30の内側樹脂層とを融着させることができる。
【0047】
内心材40の好適な層構成の一例として、熱融着性樹脂層42/接着剤層/表面処理層(腐食防止層等)/伝熱層41/表面処理層(腐食防止層等)/接着剤/熱融着性樹脂層42を配置することが挙げられる。
【0048】
し
内心材40は、金属箔又は金属板に樹脂フィルムを貼付して製造してもよい。樹脂フィルムは延伸フィルムでも、無延伸フィルムでもよい。貼付に接着剤を用いてもよい。
【0049】
内心材40の凹凸形状は、プレス加工、プリーツ加工等によって波板形状に形成されたものであってもよい。波板形状だけでなく、千鳥格子状等に凹部及び凸部が分散したエンボス形状であってもよい。
【0050】
プレス加工は非連続プレス加工であっても連続プレス加工であってもよい。非連続プレス加工としては上型と下型を用いる形成法が挙げられ、連続プレス加工としてはロール成形法が挙げられる。ロール成形法としてはコルゲート加工法が挙げられる。
【0051】
上型と下型を用いる形成法では、上型と下型の各々に凹部及び凸部が交互に並ぶように形成されている。上型の各凹部が下型の各凸部に対応し、上型の各凸部が下型の各凹部に対応し、上型と下型は互いの凹凸部がかみ合うように構成されている。そして加工前の内心材を上型と下型で挟み込み押圧することにより、内心材を波板形状に成形することができる。
【0052】
コルゲート加工法は、一対のコルゲートロールを用いて行うことができる。各コルゲートロールは、その外周面に回転方向に凹部及び凸部が交互に並ぶように形成されている。一方のコルゲートロールの各凹部が他方のコルゲートロールの各凸部に対応し、一方のコルゲートロールの各凸部が他方のコルゲートロールの各凹部に対応し、一対のコルゲートロールが互いの凹凸部がかみ合うように構成されている。そして加工前の内心材を一対のコルゲートロールで挟み込みつつ回転させることにより、内心材を一対のコルゲートロール間に通過させて波板形状に成形することができる。
【0053】
ロール成形法においてエンボス加工を行う場合、一対のエンボスロールを用いて行うことができる。例えばエンボスロールとして、外周面に回転方向及び軸心方向に沿って凹部及び凸部が交互に並んで配置されるように形成されたものが用いられる。さらに一対のエンボスロールのうち、一方のエンボスロールの各凹部を他方のエンボスロールの各凸部に対応し、一方のエンボスロールの各凸部を他方のエンボスロールの各凹部に対応させて、一対のエンボスロールを互いの凹凸部がかみ合うように配置する。そして加工前の内心材を一対のエンボスロールで挟み込みつつ回転させることにより、内心ラミネート材を一対のエンボスロール間に通過させて凹凸加工する。これにより千鳥格子状等に凹部及び凸部が分散したエンボス状の内心材を製作することができる。
【0054】
連続プレス加工では、凹凸加工された内心材を、加工装置の下流側に配置されたシャーナイフ(シャー切断刃)等によって所定長さに切断し内心材40とする。連続プレス加工では、ロールトゥロールによって連続的に行うことができ、生産効率の向上を図ることができる。
【0055】
内心材40の凹凸形状で仕切られる熱媒体流路の断面形状は、半円形状;半楕円形状;三角形、四角形、五角形等の多角形状;異形状;これらの組み合わせなどであってもよい。
複数の凹凸は規則的に配列させてもよく、不規則に配列させてもよい。不規則な配列例としては、凹凸の周期が一律ではないものが挙げられる。規則的な配列の場合、凹部の周期と凸部との周期が同じであっても、異なっていてもよい。
【0056】
熱媒体流路の断面形状が一律の場合には、連続プレス加工によって内心材を加工することが生産効率の観点から好ましく、一律ではない場合には、非連続プレス加工によって内心材を加工することが好ましい。
【0057】
内心材40の凹凸形状により複数に仕切られる流路には、熱媒体Aが流通する。外包材30の内部に内心材40を配置しない場合には、熱媒体Aは仕切られずに外包材に設けられた熱媒体流入口から熱媒体流出口まで流通する。
熱媒体Aの種類は、特に制限されない。熱媒体Aとしては、水、有機溶媒等の液体、空気等の気体などが挙げられる。熱媒体Aとして用いられる水には、不凍液等の成分が含まれていてもよい。
【0058】
図5は、熱交換器の変形例を説明する概略斜視図である。
図5の熱交換器110では、熱媒体Aが外包材30Aに接する熱媒体流路に沿って外側樹脂層33Aの未配置領域Sを設け、外側樹脂層33Aを配置しないようにしている。したがって、外側樹脂層33Aは内心材の凸頂部に対応する位置及び外包材の周囲に配置される。外側樹脂層33Aは熱媒体Aが外包材30Aに接する流路の一部に重なって配置されていてもよい。外側樹脂層33Aの配置位置が異なる以外は、
図1~3の熱交換器100を参照できる。
【0059】
図6は、外包材30Aの層構成の例を説明する概略断面図である。
図6(A)は、
図1~3、5の熱交換器で用いた外包材30Aであり、内側樹脂層32Aは伝熱層31Aの内側表面の全面に設けられ、外側樹脂層33Aは伝熱層31Aの外側表面の一部に設けられている。
図6(A)の外包材30Aは、冷却効率を高めながら、耐食性、耐薬性等に加えてシール性に優れることから耐圧性に対しても優れる。
【0060】
図6(B)の外包材30Aは、伝熱層31Aの内側表面に内側樹脂層32Aを設けず、外側樹脂層33Aが伝熱層31Aの外側表面の一部に設けられている。外包材30の内部に内心材40を設けない場合、又は内心材40を外包材30に融着せずともよい場合には、内側樹脂層32Aを省略できる。なお、内心材40を設けない場合、及び内心材40を外包材30に融着しない場合であっても、熱媒体Aに対しての耐性等の観点から、内側樹脂層32Aを設けてもよい。
図6(B)の外包材30Aは、内側樹脂層32Aを介さずに熱媒体Aと熱交換できるため冷却効率をより高くできる。また、
図6(B)の外包材30Aは内側樹脂層32Aを設けないため、製造コストを削減しやすい。
【0061】
図6(C)の外包材30Aは、内側樹脂層32Aは伝熱層31Aの内側表面の一部に設けられ、外側樹脂層33Aも伝熱層31Aの外側表面の一部に設けられている。
図6(C)の外包材30Aは、冷却効率を高めながら、所定の箇所には内側樹脂層32Aが配置されているため、熱媒体Aに対して耐腐食性、耐薬性、耐浸透性等が奏されやすい。また、内側樹脂層32Aが熱融着性樹脂層の場合には、内心材40の熱融着性樹脂層42を融着させて内心材40の位置を固定することもできる。そして、所定の箇所に外側樹脂層33Aが配置されているため、外部環境に対して保護されやすい。
【0062】
図6(D)の外包材30Aは、伝熱層31Aの外側表面に外側樹脂層33Aを設けず、内側樹脂層32Aが伝熱層31Aの内側表面の一部に設けられている。熱伝導性が高く求められる用途では、外側樹脂層33Aを省略してもよい。また、例えば、熱交換器が外部環境からの影響が少ない場所に設置される場合には、外側樹脂層33Aを省略することもできる。
図6(D)の外包材30Aは、外側樹脂層33Aを介さずに熱媒体Aと熱交換できるため冷却効率をより高くできる。また、
図6(D)の外包材30Aは外側樹脂層33Aを設けないため、製造コストを削減しやすい。
【0063】
図6(E)の外包材30Aは、伝熱層31Aの外側表面の全面に外側樹脂層33Aを設け、内側樹脂層32Aが伝熱層31Aの内側表面の一部に設けられている。絶縁性が求められる用途では、外側樹脂層33Aを全面に配置することが好ましい。
図6(E)の外包材30Aは、冷却効率を高めながら、外側表面の全面に外側樹脂層33Aが設けられるため、セル間に配置することでセル同士の絶縁性に対しても効果が期待できる。
【0064】
図6(A)~(C)における外側樹脂層33Aの配置位置は、
図1~3、5の熱交換器で説明したとおり、任意であり、適宜設計することができる。
図6(C)~(E)における内側樹脂層32Aの配置位置も任意であり、適宜設計することができる。例えば、内側樹脂層32Aは、内心材40の凸頂部の位置に合わせて配置してもよい。
【0065】
図6(A)~(E)は上側の外包材30Aとして説明したが、下側の外包材30Bも
図6(A)~(E)の層構成としてもよい。
【0066】
本開示の熱交換器は、発熱体の冷却に広く利用可能であり、例えば、スマートフォン、パーソナルコンピューター等の電子機器、電気自動車、ハイブリッド車等に搭載される電池モジュール、パワー半導体モジュールなどの冷却に有効である。
また、本開示の熱交換器は、対象物品の加温にも利用可能である。例えば、寒冷地等で充放電効率を高めるための電池の加温システムとして本開示の熱交換器を用いることができる。
【0067】
<熱交換器用伝熱シート及びその製造方法>
本開示の熱交換器用伝熱シートは、(1)熱融着性樹脂層と伝熱層とが積層され、前記熱融着性樹脂層が前記伝熱層の一部に設けられるか、又は(2)伝熱層と耐熱性樹脂層とが積層され、前記耐熱性樹脂層が前記伝熱層の一部に設けられる。(1)の熱交換器用伝熱シートは、伝熱層における熱融着性樹脂層とは反対面の一部又は全面に、さらに耐熱性樹脂層を備えてもよい。(2)の熱交換器用伝熱シートは、伝熱層における耐熱性樹脂層とは反対面の全面に、さらに熱融着性樹脂層を備えてもよい。
本開示の熱交換器用伝熱シートの層構成は、
図6(A)~(E)を参照できる。
【0068】
熱交換器用伝熱シートにおける、伝熱層、熱融着性樹脂層、及び耐熱性樹脂層は、上述の熱交換器における伝熱層、熱融着性樹脂層、及び耐熱性樹脂層とそれぞれ同義である。また、熱交換器用伝熱シートはその他の層を設けてもよく、その他の層としては、熱交換器で挙げたものを適用することができる。
【0069】
熱交換器用伝熱シートは、上記の形態を形成できればいずれの方法で製造してもよい。例えば、(1)の熱交換器用伝熱シートの製造方法としては、伝熱層の一方の面の一部に接着剤を付与し、前記接着剤を付与した面の全面に熱融着性樹脂層を形成し、前記接着剤を付与していない領域における前記熱融着性樹脂層を除去する方法が挙げられる。また、(2)の熱交換器用伝熱シートの製造方法としては、伝熱層の一方の面の一部に接着剤を付与し、前記接着剤を付与した面の全面に耐熱性樹脂層を形成し、前記接着剤を付与していない領域における前記耐熱性樹脂層を除去する方法が挙げられる。
【0070】
伝熱層上の熱融着性樹脂層又は耐熱性樹脂層の一部を除去する方法としては、レーザー、カッター刃等により熱融着性樹脂層又は耐熱性樹脂層に切り込みを入れ、そして、接着剤を付与していない領域の熱融着性樹脂層又は耐熱性樹脂層を除去する方法が挙げられる。
【実施例0071】
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
<実施例1>
(板状の外包材の作製)
厚さ120μmのアルミニウム箔(A8079アルミニウム箔)の両面に、ポリアクリル酸、三価クロム化合物、水及びアルコールからなる化成処理液を塗布し、150℃で乾燥を行うことによって、アルミニウム箔の両面に化成皮膜を形成した。この化成皮膜によるクロム付着量は、片面当たり5mg/m2であった。
化成皮膜を形成したアルミニウム箔とポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)をポリウレタン系接着剤(塗布厚さ3μm)を介して貼り合わせ、50℃で3日間養生した。その際、後の工程においてPETフィルムを除去する予定の領域には接着剤を付与しないように、パターンコートにより接着剤を塗工した。
【0073】
アルミニウム箔におけるPETフィルムとは反対面に、酸変性ポリプロピレン系接着剤(塗布厚さ3μm)を介してグラビアロールを使用して無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚さ40μm)を貼り合わせ、40℃で3日間養生した。
これにより、PETフィルム/接着剤層/化成皮膜/アルミニウム箔/化成皮膜/接着剤層/CPPフィルムの積層体を得た。
【0074】
得られた積層体において、接着剤を塗工していない領域に配置されているPETフィルムをカッターを使って60mm×120mmの面積を切り取り、PETフィルムの未配置領域を形成した。PETフィルムの未配置領域は、化成皮膜/アルミニウム箔/化成皮膜/接着剤層/CPPフィルムの積層構造となっている。
そして、PETフィルムの未配置領域が中央位置になるように配置し、幅80mm、長さ200mmにトリミング加工した。幅方向の中央部で、且つ長さ方向の端から21mmの位置の両端にヘッダー及びフッターノズル用の14mmφの穴をあけ、板状の外包材を得た。
【0075】
(容器状の外包材の作製)
上述の板状の外包材と同様の方法で、但し、PETフィルム側のアルミニウム箔の表面には、ポリウレタン系接着剤を全面に塗工して、PETフィルム/接着剤層/化成皮膜/アルミニウム箔/化成皮膜/接着剤層/CPPフィルムの積層体を得た。
得られた積層体において、CPP面が凹側になるようにプレス金型を使用して深さ4mm、幅60mm、長さ176mm、コーナーR15mmの深絞り成形を行い、さらに周囲を幅80mm、長さ200mmにトリミング加工し、容器状の外包材を得た。
【0076】
(内心材の作製)
上述の板状の外包材の作製と同様の方法で、厚さ120μmのアルミニウム箔(A8079アルミニウム箔)の両面に化成皮膜を形成した。化成皮膜を形成したアルミニウム箔に、酸変性ポリプロピレン系接着剤(塗布厚さ3μm)を介してグラビアロールを使用してCPPフィルム(厚さ40μm)を貼り合わせ、40℃で3日間養生した。また、CPPフィルムを設けていないアルミニウム箔の他方の面にも同様の方法でCPPフィルム(厚さ40μm)を貼り合わせ、40℃で3日間養生した。
これにより、CPPフィルム/接着剤層/化成皮膜/アルミニウム箔/化成皮膜/接着剤層/CPPフィルムの積層体を得た。
【0077】
得られた積層体を120mm幅とし、さらにギア加工にて長さ方向に凹凸を加工した。凹凸形状は、凹凸高さ4mm、矩形型の頂部2mm、ピッチ4mmとした。これにより、幅120mm、長さ60mmの内心材を得た。
【0078】
(熱交換器の作製)
容器状の外包材の凹部の中央に内心材を配置し、容器状の外包材の長さ方向における両端にPP製のノズル付き樹脂ヘッダー及びフッダーを配置した。そして、板状の外包材と容器状の外包材のそれぞれのCPP面同士が面するように重ねた。この状態で190℃に熱した熱板によって上下から0.3MPaの圧力で7秒間加熱し、容器状の外包材と板状の外包材の周囲、内心材の凹凸頂部と外包材との接触部、ヘッダ部、及びフッダー部をヒートシールし、熱交換器を作製した。
【0079】
<実施例2>
実施例1の板状の外包材の作製では、PETフィルムを60mm×120mmの面積で一部切り取ってPETフィルムの未配置領域を形成した。これに対して、実施例2では、PETフィルムは一方の面の全面に配置し、他方の面のCPPフィルムについて60mm×120mmの面積で一部切り取ってCPPフィルムの未配置領域を形成した。CPPフィルムの未配置領域には、予め酸変性ポリプロピレン系接着剤を付与しないようにした。CPPフィルムの未配置領域は、PETフィルム/接着剤層/化成皮膜/アルミニウム箔/化成皮膜の積層構造となっている。その他は実施例1と同様の方法で、実施例2の熱交換器を作製した。
【0080】
<比較例1>
実施例1と同様の方法で、但し、板状の外包材の作製において、アルミニウム箔の全面にポリウレタン系接着剤を塗工し、PETフィルムを除去せずに、比較例1の熱交換器を作製した。
【0081】
<熱交換性能の評価>
発熱体を想定して、厚さ20mm、幅60mm、横120mmのアルミブロックを準備した。アルミブロックを高温槽で80℃に加熱した後、熱交換器の長さ方向の中央部付近に熱交換器の最外面に接触させて設置した。そして、恒温恒湿試験機の試験機内を25℃、90%RHの雰囲気に設定し、その中に熱交換器を垂直に設置した。
熱交換器に20℃の水道水を流量0.25L/minの速度で流し、アルミブロックの表面温度を中心部(幅30mm、横60mmの部分)において所定時間毎に測定した。結果を表1に示す。
【0082】
【0083】
実施例1及び2は比較例1に比べて、アルミブロックの表面温度の低下速度が速く、熱交換性能が向上していた。