(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083143
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】生体用硬化性組成物及び絆創膏
(51)【国際特許分類】
C09J 4/04 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
C09J4/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197493
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨岡(一色) 絵利香
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 謙一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 晃
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040FA121
4J040LA08
4J040NA02
(57)【要約】
【課題】硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性に優れる生体用硬化性組成物及び絆創膏の提供。
【解決手段】単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上1.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物(ジエチレングリコールモノエチルエーテルシアノアクリレートを除く)を含有する、又は、単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Paより大きく5.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有する、生体用硬化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上1.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物(ジエチレングリコールモノエチルエーテルシアノアクリレートを除く)を含有する、又は、
単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Paより大きく5.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有する、
生体用硬化性組成物。
【請求項2】
単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Paより大きく5.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有し、
前記多官能シアノアクリレート化合物が、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、両末端にヒドロキシ基を有するシラン化合物及び両末端にヒドロキシ基を有するシロキサン化合物からなる群より選択される化合物の2-シアノアクリル酸エステルを少なくとも1種含む、
請求項1に記載の生体用硬化性組成物。
【請求項3】
前記生体用硬化性組成物を硬化してなる幅5mm、長さ50mm、厚さ1mmの硬化物を、引張試験機に治具間距離20mm(L0)として固定し、印を付け、前記治具間距離が40mm(L1)となるまで20mm/分で引っ張った後、前記治具の固定を解除し、1分経過したときの前記印間の長さ(L2)を測定し、下記計算式から求められる伸長回復率(%)が51%以上である、
請求項1又は請求項2に記載の生体用硬化性組成物。
伸長回復率(%):{(L1-L2)/(L1-L0)}×100
【請求項4】
前記生体用硬化性組成物を硬化してなる幅5mm、長さ50mm、厚さ1mmの硬化物を、引張試験機に治具間距離20mm(L0)として固定し、印を付け、前記治具間距離が40mm(L1)となるまで20mm/分で引っ張った後、前記治具の固定を解除し、5分経過したときの前記印間の長さ(L3)を測定し、下記計算式から求められる伸長回復率(%)が65%以上である、
請求項1又は請求項2に記載の生体用硬化性組成物。
伸長回復率(%):{(L1-L3)/(L1-L0)}×100
【請求項5】
前記生体用硬化性組成物を硬化してなる幅5mm、長さ50mm、厚さ1mmの硬化物を、引張試験機に治具間距離20mm(L0)として固定し、印を付け、前記治具間距離が40mm(L1)となるまで20mm/分で引っ張った後、前記治具の固定を解除し、30分経過したときの前記印間の長さ(L4)を測定し、下記計算式から求められる伸長回復率(%)が70%以上である、
請求項1又は請求項2に記載の生体用硬化性組成物。
伸長回復率(%):{(L1-L4)/(L1-L0)}×100
【請求項6】
JIS Z 0237(2009)に従い、幅25mm×長さ50mmのアルミニウム基材同士の接着面(接着面積:幅12.5mm×長さ25mm)での保持力試験において、23℃の保持時間が4320分以上である、
請求項1又は請求項2に記載の生体用硬化性組成物。
【請求項7】
JIS Z 0237(2009)に従い、幅25mm×長さ50mmのアルミニウム基材同士の接着面(幅12.5mm×長さ25mm)での保持力試験において、40℃の保持時間が4320分以上である、
請求項1又は請求項2に記載の生体用硬化性組成物。
【請求項8】
前記2-シアノアクリレート化合物が、エーテル結合を有する、
請求項1又は請求項2に記載の生体用硬化性組成物。
【請求項9】
前記2-シアノアクリレート化合物が、エーテル結合を2つ以上有する、
請求項1又は請求項2に記載の生体用硬化性組成物。
【請求項10】
前記2-シアノアクリレート化合物が、下記式(1)で表される化合物を含む、
請求項1又は請求項2に記載の生体用硬化性組成物。
【化1】
式(1)中、
L
1はそれぞれ独立に、-CH
2CH
2-、-CH
2CH
2CH
2-、-CH(R
1)CH
2-又は-CH
2CH(R
1)-を表し、
R
1は置換基を有してもよい炭素数1~6の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、
R
2は置換基を有してもよい炭素数1~15の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、
pは1~5の整数を表す。
【請求項11】
前記2-シアノアクリレート化合物を単独重合してなる硬化物の損失正接の極大値(tanδ(max))を示す温度が、80℃以下である、
請求項1又は請求項2に記載の生体用硬化性組成物。
【請求項12】
単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上1.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物(ジエチレングリコールモノエチルエーテルシアノアクリレートを除く)と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有する、又は
単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Paより大きく5.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有し、
前記2-シアノアクリレート化合物100質量部に対し、前記多官能シアノアクリレート化合物を0.01~50質量部含有する、
請求項1又は請求項2に記載の生体用硬化性組成物。
【請求項13】
単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上1.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物(ジエチレングリコールモノエチルエーテルシアノアクリレートを除く)と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有する、又は
単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Paより大きく5.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有し、
前記多官能シアノアクリレート化合物が、ビスシアノアクリレート化合物及びトリスシアノアクリレート化合物の少なくとも一方の多官能シアノアクリレート化合物を含む、
請求項1又は請求項2に記載の生体用硬化性組成物。
【請求項14】
単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上1.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物(ジエチレングリコールモノエチルエーテルシアノアクリレートを除く)と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有する、又は
単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Paより大きく5.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有し、
前記多官能シアノアクリレート化合物の数平均分子量が200~50,000である、
請求項1又は請求項2に記載の生体用硬化性組成物。
【請求項15】
硬化性絆創膏である、請求項1又は請求項2に記載の生体用硬化性組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の生体用硬化性組成物の硬化物を備える絆創膏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体用硬化性組成物及び絆創膏に関する。
【背景技術】
【0002】
2-シアノアクリレート化合物を含有する硬化性組成物は、2-シアノアクリレート化合物が有する特異なアニオン重合性により、被着体表面に付着する僅かな水分等の微弱なアニオンによって重合を開始し、各種材料を短時間で強固に接合することができる。そのため、いわゆる、瞬間接着剤として、工業用、医療用、家庭用等の広範な分野において用いられている。
【0003】
2-シアノアクリレート化合物を含有する硬化性組成物として、特許文献1には、一般式(I)の化合物及び任意的に一般式(III)の化合物を含む2-シアノアクリレート組成物が記載されており、上記一般式(I)の化合物として、2-(1-メトキシ)プロピルシアノアクリレートを使用しうること、上記一般式(III)の化合物として、1,6-ヘキシルビスシアノアクリレート等の多官能シアノアクリレートを使用しうること、上記一般式(III)の化合物の含有量は、一般式(I)及び一般式(III)の化合物の合計質量に基づいて0~50質量%であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0260422
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、硬化性組成物には、その用途によっては、伸長させた硬化物の伸長前の状態の硬化物への変形(伸長回復率)が良好であることが求められる。
使用時の安全性等の観点から硬化性組成物の硬化物には、負荷が加わった際、ヒビ割れの発生を抑制できることが求められる場合がある。
例えば、ヒト等の生体の擦り傷、切り傷において、硬化性組成物を硬化させた場合、上記傷が生じた部位を動かすことにより、硬化性組成物の硬化物に負荷が加わる。この負荷により、硬化物にヒビ割れが生じてしまうと、傷が生じた部分が保護されないこととなってしまう。
そして、今般、本発明者らは、特許文献1において開示される硬化性組成物の硬化物には、伸長回復率及びヒビ割れ抑制性に改善の余地があるとの知見を得た。
【0006】
本開示の解決しようとする課題は、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性に優れる生体用硬化性組成物及び絆創膏を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上1.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物(ジエチレングリコールモノエチルエーテルシアノアクリレートを除く)を含有する、又は、
単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Paより大きく5.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有する、
生体用硬化性組成物。
<2> 単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Paより大きく5.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有し、
上記多官能シアノアクリレート化合物が、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、両末端にヒドロキシ基を有するシラン化合物及び両末端にヒドロキシ基を有するシロキサン化合物からなる群より選択される化合物の2-シアノアクリル酸エステルを少なくとも1種含む、
上記<1>に記載の生体用硬化性組成物。
<3> 上記生体用硬化性組成物を硬化してなる幅5mm、長さ50mm、厚さ1mmの硬化物を、引張試験機に治具間距離20mm(L0)として固定し、印を付け、上記治具間距離が40mm(L1)となるまで20mm/分で引っ張った後、上記治具の固定を解除し、1分経過したときの上記印間の長さ(L2)を測定し、下記計算式から求められる伸長回復率(%)が51%以上である、
上記<1>又は<2>に記載の生体用硬化性組成物。
伸長回復率(%):{(L1-L2)/(L1-L0)}×100
<4> 上記生体用硬化性組成物を硬化してなる幅5mm、長さ50mm、厚さ1mmの硬化物を、引張試験機に治具間距離20mm(L0)として固定し、印を付け、上記治具間距離が40mm(L1)となるまで20mm/分で引っ張った後、上記治具の固定を解除し、5分経過したときの上記印間の長さ(L3)を測定し、下記計算式から求められる伸長回復率(%)が65%以上である、
上記<1>~<3>のいずれか1つに記載の生体用硬化性組成物。
伸長回復率(%):{(L1-L3)/(L1-L0)}×100
<5> 上記生体用硬化性組成物を硬化してなる幅5mm、長さ50mm、厚さ1mmの硬化物を、引張試験機に治具間距離20mm(L0)として固定し、印を付け、上記治具間距離が40mm(L1)となるまで20mm/分で引っ張った後、上記治具の固定を解除し、30分経過したときの上記印間の長さ(L4)を測定し、下記計算式から求められる伸長回復率(%)が70%以上である、
上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の生体用硬化性組成物。
伸長回復率(%):{(L1-L4)/(L1-L0)}×100
<6> JIS Z 0237(2009)に従い、幅25mm×長さ50mmのアルミニウム基材同士の接着面(接着面積:幅12.5mm×長さ25mm)での保持力試験において、23℃の保持時間が4320分以上である、
上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の生体用硬化性組成物。
<7> JIS Z 0237(2009)に従い、幅25mm×長さ50mmのアルミニウム基材同士の接着面(接着面積:幅12.5mm×長さ25mm)での保持力試験において、40℃の保持時間が4320分以上である、
上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の生体用硬化性組成物。
<8> 上記2-シアノアクリレート化合物が、エーテル結合を有する、
上記<1>~<7>のいずれか1つに記載の生体用硬化性組成物。
<9> 上記2-シアノアクリレート化合物が、エーテル結合を2つ以上有する、
上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の生体用硬化性組成物。
<10> 上記2-シアノアクリレート化合物が、下記式(1)で表される化合物を含む、
上記<1>~<9>のいずれか1つに記載の生体用硬化性組成物。
【0008】
【0009】
式(1)中、
L1はそれぞれ独立に、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH(R1)CH2-又は-CH2CH(R1)-を表し、
R1は置換基を有してもよい炭素数1~6の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、
R2は置換基を有してもよい炭素数1~15の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、
pは1~5の整数を表す。
<11> 上記2-シアノアクリレート化合物を単独重合してなる硬化物の損失正接の極大値(tanδ(max))を示す温度が、80℃以下である、
上記<1>~<10>のいずれか1つに記載の生体用硬化性組成物。
<12> 単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上1.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物(ジエチレングリコールモノエチルエーテルシアノアクリレートを除く)と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有する、又は
単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Paより大きく5.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有し、
上記2-シアノアクリレート化合物100質量部に対し、上記多官能シアノアクリレート化合物を0.01~50質量部含有する、
上記<1>~<11>のいずれか1つに記載の生体用硬化性組成物。
<13> 単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上1.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物(ジエチレングリコールモノエチルエーテルシアノアクリレートを除く)と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有する、又は
単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Paより大きく5.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有し、
上記多官能シアノアクリレート化合物が、ビスシアノアクリレート化合物及びトリスシアノアクリレート化合物の少なくとも一方の多官能シアノアクリレート化合物を含む、
上記<1>~<12>のいずれか1つに記載の生体用硬化性組成物。
<14> 単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上1.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物(ジエチレングリコールモノエチルエーテルシアノアクリレートを除く)と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有する、又は
単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Paより大きく5.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有し、
上記多官能シアノアクリレート化合物の数平均分子量が200~50,000である、
上記<1>~<13>のいずれか1つに記載の生体用硬化性組成物。
<15> 硬化性絆創膏である、上記<1>~<14>のいずれか1つに記載の生体用硬化性組成物。
<16> 上記<15>に記載の生体用硬化性組成物の硬化物を備える絆創膏。
【発明の効果】
【0010】
本開示の実施形態によれば、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性に優れる生体用硬化性組成物及び絆創膏を提供することできる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0012】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、合成例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0013】
本開示において、「生体」とは、人体又は動物の体(皮膚、体内組織(血管、筋肉、骨、筋、腱等)、爪、毛髪等)、植物、菌類等が挙げられる。
本開示の生体用硬化性組成物は、生体同士、又は、生体と非生体である部材、例えば、以下のような被接着材(部材)を、接着することができる。
被接着材としては、特に制限はなく、金属、宝石等の鉱物、ガラス、セラミック、樹脂、低分子の有機化合物、木材等の材質のものが挙げられる。
【0014】
(生体用硬化性組成物)
本開示の生体用硬化性組成物は、
単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上1.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物(ジエチレングリコールモノエチルエーテルシアノアクリレートを除く)を含有する、又は、
単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Paより大きく5.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有する。
【0015】
本発明者らが鋭意検討した結果、上記構成をとることにより、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性に優れる生体用硬化性組成物を提供することができることを見出した。
これによる優れた効果の作用機構は明確ではないが、以下のように推定している。
生体用硬化性組成物が単独重合してなる硬化物(以下、「単独重合物」とも記す。)の25℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上1.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物を含有する場合、生体用硬化性組成物の硬化物のエントロピー弾性が向上し、被接着物である生体の変形への追従性が向上するため、硬化物の伸長前の状態への変形が促進され、硬化物の伸長回復率が向上すると共に、ヒビ割れ抑制性が向上すると推定される。
生体用硬化性組成物が単独重合物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Paより大きく5.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物と、多官能シアノアクリレート化合物と、を組み合わせて含有することにより、生体用硬化性組成物の硬化物のエントロピー弾性が向上するため、硬化物の伸長前の状態への変形が促進され、硬化物の伸長回復率が向上すると共に、ヒビ割れ抑制性が向上すると推定される。
【0016】
本開示の生体用硬化性組成物を硬化してなる幅5mm、長さ50mm、厚さ1mmの硬化物を、引張試験機に治具間距離20mm(L0)として固定し、印を付け、前記治具間距離が40mm(L1)となるまで20mm/分で引っ張った後、前記治具の固定を解除し、1分経過したときの前記印間の長さ(L2)を測定し、下記計算式から求められる伸長回復率(%)は、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、51%以上であることが好ましく、52%以上であることがより好ましく、53%以上であることがさらに好ましく、100%であってもよい。
なお、上記測定は、23℃環境下において行う。
上記伸長回復率は、生体用硬化性組成物に含まれる2-シアノアクリレート化合物の構造を変更すること、2-シアノアクリレート化合物及び多官能シアノアクリレート化合物の含有率を変更すること等により調整することができる。例えば、後述する一般式(1)2-シアノアクリレート化合物におけるpの値を大きくする、R2の炭素数を少なくする、2-シアノアクリレート化合物が有する酸素原子の割合を大きくする等により身長回復率を上昇させることができる傾向にある。
伸長回復率(%):{(L1-L2)/(L1-L0)}×100
【0017】
本開示の生体用硬化性組成物を硬化してなる幅5mm、長さ50mm、厚さ1mmの硬化物を、引張試験機に治具間距離20mm(L0)として固定し、印を付け、前記治具間距離が40mm(L1)となるまで20mm/分で引っ張った後、前記治具の固定を解除し、5分経過したときの前記印間の長さ(L3)を測定し、下記計算式から求められる伸長回復率(%)は、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、65%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましく、100%であってもよい。
なお、上記測定は、23℃環境下において行う。
上記伸長回復率は、生体用硬化性組成物に含まれる2-シアノアクリレート化合物の構造を変更すること、2-シアノアクリレート化合物及び多官能シアノアクリレート化合物の含有率を変更すること等により調整することができる。例えば、後述する一般式(1)2-シアノアクリレート化合物におけるpの値を大きくする、R2の炭素数を少なくする、2-シアノアクリレート化合物が有する酸素原子の割合を大きくする等により身長回復率を上昇させることができる傾向にある。
伸長回復率(%):{(L1-L3)/(L1-L0)}×100
【0018】
本開示の生体用硬化性組成物を硬化してなる幅5mm、長さ50mm、厚さ1mmの硬化物を、引張試験機に治具間距離20mm(L0)として固定し、印を付け、前記治具間距離が40mm(L1)となるまで20mm/分で引っ張った後、前記治具の固定を解除し、30分経過したときの前記印間の長さ(L4)を測定し、下記計算式から求められる伸長回復率(%)は、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100%であってもよい。
なお、上記測定は、23℃環境下において行う。
上記伸長回復率は、生体用硬化性組成物に含まれる2-シアノアクリレート化合物の構造を変更すること、2-シアノアクリレート化合物及び多官能シアノアクリレート化合物の含有率を変更すること等により調整することができる。例えば、後述する一般式(1)2-シアノアクリレート化合物におけるpの値を大きくする、R2の炭素数を少なくする、2-シアノアクリレート化合物が有する酸素原子の割合を大きくする等により身長回復率を上昇させることができる傾向にある。
伸長回復率(%):{(L1-L4)/(L1-L0)}×100
【0019】
なお、上記伸長回復率の測定に使用される引張試験機としては、株式会社東洋精機製作所のストログラフV20-C又はこれと同程度の装置を使用することができる。
また、上記伸長回復率の測定に使用される硬化物は、下記のようにして製造する。
まず、離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、厚さ1mmのシリコーンゴムの型枠を配置する。
次いで、本開示の生体用硬化性組成物1gに、N,N-ジメチルアニリンを1μL添加し、撹拌した後、上記型枠内へ流し込む。
生体用硬化性組成物の流し込み後、型枠及び生体用硬化性組成物上に、別途用意した上記離型PETフィルムを被せ、ガラス板で挟み込んだ後、温度25℃、相対湿度50%で24時間静置し、完全に硬化させる。
硬化後、型枠及び離型PETフィルムを取り除いて、幅5mm、長さ50mm、厚さ1mmの硬化物を得る。
【0020】
本開示の生体用硬化性組成物は、JIS Z 0237(2009)に従い、幅25mm×長さ50mmのアルミニウム基材同士の接着面(幅12.5mm×長さ25mm)での保持力試験において、23℃の保持時間が1440分以上であることが好ましく、2880分以上であることがより好ましく、4320分以上であることがさらに好ましい。
具体的には、幅25mm×長さ50mmのアルミニウム基材を2枚用意し、一方の面のアルミニウム基材の全面に、生体用硬化性組成物を滴下し、2枚のアルミニウム基材を接着面が幅12.5mm×長さ25mmとなるように貼り合わせ、室温(23℃)で3日間養生し、完全に硬化させ、アルミニウム基材、生体用硬化性組成物の硬化物及びアルミニウム基材の順に備える試験片を作製する。
JIS Z 0237(2009)に準拠した保持力試験装置に、作製した試験片の一方のアルミニウム基材を取り付け、23℃下で、他方のアルミニウム基材に1kgの錘を取り付ける。アルミニウム基材に錘を取り付けてから、錘及びアルミニウム基材が落下するまでの時間を保持時間とし測定する。
上記保持時間は、生体用硬化性組成物に含まれる2-シアノアクリレート化合物の構造を変更すること、2-シアノアクリレート化合物及び多官能シアノアクリレート化合物の含有率を変更すること等により調整することができる。例えば、後述する一般式(1)2-シアノアクリレート化合物におけるpの値を小さくする、R2の炭素数を多くする、2-シアノアクリレート化合物が有する酸素原子の割合を小さくする等により保持時間を上昇させることができる傾向にある。
【0021】
本開示の生体用硬化性組成物は、JIS Z 0237(2009)に従い、幅25mm×長さ50mmのアルミニウム基材同士の接着面(幅12.5mm×長さ25mm)での保持力試験において、40℃の保持時間が1440分以上であることが好ましく、2880分以上であることがより好ましく、4320分以上であることがさらに好ましい。
上記保持時間は、生体用硬化性組成物に含まれる2-シアノアクリレート化合物の構造を変更すること、2-シアノアクリレート化合物及び多官能シアノアクリレート化合物の含有率を変更すること等により調整することができる。例えば、後述する一般式(1)2-シアノアクリレート化合物におけるpの値を小さくする、R2の炭素数を多くする、2-シアノアクリレート化合物が有する酸素原子の割合を小さくする等により保持時間を上昇させることができる傾向にある。
【0022】
本開示の生体用硬化性組成物は、接着剤であることが好ましい。
【0023】
本開示の生体用硬化性組成物は、組織同士を接着する接着剤、出血の防止ための又は開いた創傷を覆うための封止剤等として好適に使用することができる。
より具体的には、本開示の生体用硬化性組成物は、体液の漏出、組織の接近、外科的に切開した又は外傷によって裂かれた組織の付着を防止すること;創傷からの血流を遅延すること;薬物を送達すること;火傷に包帯を巻くこと;皮膚又は他の表面若しくは深部の組織表層の創傷(例えば擦り傷、擦りむいた又は生の皮膚、及び/又は口内炎)に包帯を巻くこと;及び生体組織の修復と再生を助けること、などの用途に使用することができる。
また、本開示の生体用硬化性組成物は、包帯、ガーゼ、絆創膏等にも好適に用いることができ、絆創膏により好適に用いることができ、液体絆創膏に特に好適に用いることができる。
本開示の生体用硬化性組成物を液体絆創膏として用いる場合、23℃における生体用硬化性組成物の粘度は、1000mPa・s~50000mPa・sが好ましく、2000mPa・s~30000mPa・sがより好ましく、3000mPa・s~15000mPa・sが更に好ましい。
本開示において「粘度」は、以下の条件で粘度計を用いて測定する。
粘度計としては、R215型粘度計 (東機産業社製 円錐平板方式)又はこれと同程度の装置を使用することができる。
(測定条件)
・ローター:角度1°34′、半径24mm(518.5~103700mPa・s)
・温度:25℃±0.5℃
・ずり速度:0.5rpm~100rpm
【0024】
さらに、本開示の生体用硬化性組成物は、包帯、ガーゼ、絆創膏に付与及び硬化させることにより、空気及びそれに含まれる細菌、バクテリア等からの密閉剤としても好適に用いることができる。
また、本開示の生体用硬化性組成物は、美容整形等の外科的処置時の仮固定用硬化性組成物としても好適に用いることができる。
本開示の生体用硬化性組成物は、包帯、ガーゼ、絆創膏等の皮膚への接着に用いることができ、また、アクセサリ(例えば、ビンディなど)等の宝飾品、タグ、ヘアーエクステンション、かつら、ウィッグ等の皮膚への接着(固定)に用いることができる。
また、本開示の生体用硬化性組成物は、着色剤等で着色させることにより、それ自体でフェイスペインティング及びボディペインティング用の塗料組成物としても用いることができる。
本開示の生体用硬化性組成物は、ヒト又は動物の爪と人工爪(付け爪等)との接着剤;ネイルアート用の接着剤;ヒト又は動物の爪の保護剤又は補強剤;マニキュア、ジェルネイル、ペディキュア等を塗布する際の保護剤又は剥離剤;等として好適に用いることができる。
本開示の生体用硬化性組成物は、ヒト又は動物のまぶた又はまつ毛と人工まつげ(つけまつ毛、まつ毛エクステンション用のアイラッシュ等)との接着剤等として好適に用いることができる。
【0025】
以下、本開示の生体用硬化性組成物が単独重合物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上1.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物(ジエチレングリコールモノエチルエーテルシアノアクリレートを除く)を含有する場合を、第1の硬化性組成物として説明し、単独重合物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Paより大きく5.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有する場合を第2の硬化性組成物として説明する。
硬化物の耐冷熱サイクル性及び耐水性の観点から、第1の硬化性組成物が好ましい。
【0026】
<第1の硬化性組成物>
第1の硬化性組成物は、単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上1.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物(以下、「第1の2-シアノアクリレート化合物」とも記す。)を含有する。
第1の硬化性組成物において、2-シアノアクリレート化合物にはジエチレングリコールモノエチルエーテルシアノアクリレートが含まれない。
ジエチレングリコールモノエチルエーテルシアノアクリレートは変異原性が高く、安全性の観点から、ジエチレングリコールモノエチルエーテルシアノアクリレート以外の2-シアノアクリレート化合物が好ましい。
【0027】
-第1の2-シアノアクリレート化合物-
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、第1の2-シアノアクリレート化合物の単独重合物の25℃における貯蔵弾性率は、9.0×106Pa以下であることが好ましく、7.0×106Pa以下であることがより好ましい。
単独重合物の25℃における貯蔵弾性率は、第1の2-シアノアクリレート化合物の構造を変更することにより調整することができる。例えば、2-シアノアクリレート化合物が有するエステル鎖長を短くする、エーテル構造を少なくする等により、貯蔵弾性率を上昇させることができる傾向にある。
【0028】
本開示において、2-シアノアクリレート化合物の単独重合物の貯蔵弾性率の測定は下記の通り行う。
2-シアノアクリレート化合物を、N,N-ジメチルアニリンを塗布した動的粘弾性測定装置冶具間に注入後、動的粘弾性測定装置を用いて、周波数1Hz、温度25℃、厚み300μmの条件下、貯蔵弾性率を測定する。
2-シアノアクリレート化合物の貯蔵弾性率の変化がなくなったことを確認し、これを2-シアノアクリレート化合物の硬化物とする。
次いで、上記硬化物を用い、周波数1Hz、昇温速度2℃/分、相対湿度50%の条件で、-50℃~150℃の範囲において、ずりによる硬化物の貯蔵弾性率を測定し、25℃における硬化物の貯蔵弾性率を求める。
なお、動的粘弾性測定装置としては、アントンパール社製のMCR301又はこれと同程度の装置を使用することができる。
【0029】
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、第1の2-シアノアクリレート化合物の単独重合物の損失正接の極大値(tanδ(max))を示す温度は、80℃以下であることが好ましく、65℃以下であることがより好ましく、55℃以下であることがさらに好ましく、45℃以下であることが特に好ましく、40℃以下であることが最も好ましい。
上記温度の下限値は特に限定されるものではないが、例えば、-20℃以上とすることができる。
【0030】
本開示において、2-シアノアクリレート化合物の損失正接の極大値を示す温度の測定は下記の通り行う。
2-シアノアクリレート化合物を、N,N-ジメチルアニリンを塗布した動的粘弾性測定装置冶具間に注入後、動的粘弾性測定装置を用いて、周波数1Hz、温度25℃、厚み300μmの条件下、貯蔵弾性率を測定する。
2-シアノアクリレート化合物の貯蔵弾性率の変化がなくなったことを確認し、これを2-シアノアクリレート化合物の硬化物とする。上記硬化物を用い、周波数1Hz、昇温速度2℃/分の条件で、-50℃~150℃の範囲において、動的粘弾性スペクトルを求め、損失正接(tanδ)が最大値となる温度を測定する。ピークが2つ以上観察される場合、最も大きいピークとなる損失正接(tanδ)を極大値とする。
なお、使用することができる動的粘弾性測定装置は、上記した通りである。
【0031】
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、第1の2-シアノアクリレート化合物は、エーテル結合を有することが好ましい。また、同様の観点から、第1の2-シアノアクリレート化合物は、エーテル結合を2個以上有することが好ましく、2個~5個有することがより好ましく、2個~4個有することがさらに好ましく、2個又は3個有することが特に好ましい。
なお、本開示の生体用硬化性組成物は、エーテル結合の数が異なる第1の2-シアノアクリレート化合物を2種以上含有していてもよい。
また、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、2-シアノアクリレート化合物がエステル残基を有し、上記エステル残基がエーテル結合を有することが好ましい。
2-シアノアクリレート化合物がエステル残基を有し、上記エステル残基がエーテル結合を有することは、1H-NMRにより確認する。
【0032】
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、第1の2-シアノアクリレート化合物は、下記式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0033】
【0034】
式(1)中、L1はそれぞれ独立に、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH(R1)CH2-又は、-CH2CH(R1)-を表し、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、-CH2CH2-、-CH(R1)CH2-又は-CH2CH(R1)-を表すことが好ましく、-CH(R1)CH2-又は-CH2CH(R1)-を表すことがより好ましい。
【0035】
式(1)中、R1は置換基を有してもよい炭素数1~6、好ましくは炭素数1~3のアルキル基を表し、また、直鎖アルキル基であっても、分岐アルキル基であってもよい。上記置換基としては、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリーロキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基が挙げられる。R1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0036】
式(1)中、R2は置換基を有していてもよい炭素数1~15、好ましくは1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルキル基を表し、また、直鎖アルキル基であっても、分岐アルキル基であってもよい。上記置換基としては、R1において前述した置換基が挙げられる。
式(1)におけるR2は、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0037】
式(1)中、pは1~5の整数を表し、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、1~4の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましく、2又は3であることがさらに好ましい。
【0038】
式(1)で表される第1の2-シアノアクリレート化合物の具体例としては、2-(2-メトキシエトキシ)エチル、2-(2-メトキシプロポキシ)プロピル、2-(2-エトキシエトキシ)エチル、2-(2-プロポキシエトキシ)エチル、2-[2-(1-メチルエトキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-メチルプロポキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(1-メチルプロポキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(1-エチルプロポキシ)エトキシ]エチル、2-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)エチル、2-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)エチル、2-(2-エトキシ-1-メチルエトキシ)エチル、2-(2-エトキシ-2-メチルエトキシ)エチル、1-(2-メトキシエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-メトキシエトキシ)プロピル-1-イル、1-(2-エトキシエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-エトキシエトキシ)プロピル-1-イル、1-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、2-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、1-(2-エトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-エトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-エトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、2-(2-エトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、1-(2-プロポキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-プロポキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-プロポキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、2-(2-プロポキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、1-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-ブトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、2-(2-ブトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、1-(2-ヘキシルオキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-ヘキシルオキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-ヘキシルオキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、2-(2-ヘキシルオキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノペンチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル等の2-シアノアクリル酸エステルが挙げられる。
上記した中でも、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、2-(2-メトキシプロポキシ)プロピル、2-(2-メトキシエトキシ)エチル1-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-1-イル又は2-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イルの2-シアノアクリル酸エステルが好ましく、2-(2-メトキシプロポキシ)プロピル、1-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-1-イル又は2-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イルの2-シアノアクリル酸エステルがより好ましく、2-(2-メトキシプロポキシ)プロピルの2-シアノアクリル酸エステルがさらに好ましい。
【0039】
第1の2-シアノアクリレート化合物に構造異性体が存在する場合、第1の硬化性組成物は、1種のみを含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0040】
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、第1の硬化性組成物の全質量に対する第1の2-シアノアクリレート化合物の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが最も好ましい。
第1の2-シアノアクリレート化合物の含有率の上限値は、特に限定されるものではないが、例えば、99.9質量%以下とすることができる。
【0041】
第1の2-シアノアクリレート化合物が、式(1)で表される化合物を含む場合、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、第1の硬化性組成物に含有される第1の2-シアノアクリレート化合物の全質量に対する式(1)で表される化合物の含有率は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。
【0042】
-多官能シアノアクリレート化合物-
第1の硬化性組成物は、多官能シアノアクリレート化合物を含有してもよい。第1の硬化性組成物は、多官能シアノアクリレート化合物を2種以上含有していてもよい。
また、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、多官能シアノアクリレート化合物は、多官能2-シアノアクリレート化合物であって、第1の2-シアノアクリレート化合物ではない化合物であることが好ましい。
なお、本開示において、多官能シアノアクリレート化合物とは、2個以上のシアノアクリロイル基を有する化合物を意味する。
【0043】
多官能シアノアクリレート化合物としては、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリアミドポリオール、ポリエステルポリアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、エチレン-ブチレン共重合体ポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、両末端にヒドロキシル基を有するシラン化合物、両末端にヒドロキシル基を有するシロキサン化合物等の2-シアノアクリル酸エステルが挙げられる、
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、多官能シアノアクリレート化合物は、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリアミドポリオール、ポリエステルポリアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール及び水添ポリイソプレンポリオールからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール及び水添ポリイソプレンポリオールからなる群より選択される化合物の2-シアノアクリル酸エステルを少なくとも1種を含むことがより好ましい。
上記した中でも、多官能シアノアクリレート化合物は、ポリオキシアルキレンポリオールを含むことが好ましく、ポリオキシプロピレングリコールを含むことがより好ましい。
また、多官能シアノアクリレート化合物は、グリセリンエーテルを含んでいてもよい。
【0044】
ポリオキシアルキレンポリオールとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、ポリエチレントリオール、ポリエチレンテトラオール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレントリオール、ポリプロピレンテトラオール、ポリテトラメチレングリコール等、及びポリオール或いは他のグリコールとの共重合体などを用いることができる。
また、ポリエステルポリオールとしては、特に限定されるものではないが、アジピン酸等の二塩基酸とグリコール、トリオール等との反応により生成する一般的なポリエステルポリオール、カプロラクトンを開環重合させたポリカプロラクトンポリオールなどを用いることができる。
また、ポリカーボネートジオールとしては、特に限定されるものではないが、エチレンカーボネート等から誘導される一般的なポリカーボネートジオール、カーボネートとグリコールとを共重合させたものなどを用いることができる。
また、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオールの2-シアノアクリル酸エステルは、硬化物の柔軟性及び強靭性に加えて、耐温水性の観点からも好ましい。
【0045】
多官能シアノアクリレート化合物は、ビスシアノアクリレート化合物及びトリスシアノアクリレート化合物の少なくとも一方を含むことが好ましい。
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、ビスシアノアクリレート化合物は、アルカンジオールビスシアノアクリレート化合物又はポリオキシアルキレンポリオールビスシアノアクリレート化合物であることが好ましい。
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、トリスシアノアクリレート化合物は、ポリオキシアルキレンポリオールトリシアノアクリレート化合物であることが好ましい。
アルカンジオールビスシアノアクリレート化合物が有する脂肪族基の炭素数は2~18であることが好ましく4~12であることがより好ましい。
また、上記脂肪族基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよい。
アルカンジオールビスシアノアクリレート化合物としては、1,6-ヘキサンジオール-ビスシアノアクリレート、1,4-ブタンジオール-ビスシアノアクリレート、1,8-オクタンジオール-ビスシアノアクリレート、1,9-ノナンジオール-ビスシアノアクリレート、1,10-デカンジオール-ビスシアノアクリレート、1,12-ドデカンジオール-ビスシアノアクリレート、1,5-ペンタンジオール-ビスシアノアクリレート、1,16-ヘキサデカンジオール-ビスシアノアクリレート、1,18-オクタデカンジオール-ビスシアノアクリレート等が挙げられる。上記した中でも、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、1,6-ヘキサンジオール-ビスシアノアクリレート、1,8-オクタンジオール-ビスシアノアクリレート、1,9-ノナンジオール-ビスシアノアクリレート、1,10-デカンジオール-ビスシアノアクリレート、1,12-ドデカンジオール-ビスシアノアクリレート、1,16-ヘキサデカンジオール-ビスシアノアクリレート、1,18-オクタデカンジオール-ビスシアノアクリレートが好ましく、1,6-ヘキサンジオール-ビスシアノアクリレート又は1,10-デカンジオール-ビスシアノアクリレートがより好ましい。
ポリオキシアルキレンポリオールビスシアノアクリレート化合物又はポリオキシアルキレンポリオールトリシアノアクリレート化合物を構成する、ポリオキシアルキレンポリオールとしては、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられる。
上記した中でも、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)-ビスシアノアクリレート又はポリオキシプロピレングリコール(PPG)-トリスシアノアクリレートが好ましい。
【0046】
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、多官能シアノアクリレート化合物の分子量又は数平均分子量(Mn)は、200~50,000であることが好ましく、200~25,000であることがより好ましく、200~23,000であることがさらに好ましい。
なお、本開示において、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて得られた標準ポリスチレン換算値である。
【0047】
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、第1の硬化性組成物に含有される第1の2-シアノアクリレート化合物100質量に対する多官能シアノアクリレート化合物の含有率は、0.01質量部~50質量部であることが好ましく、0.1質量部~30質量部であることがより好ましく、0.5質量部~20質量部であることがさらに好ましく、0.7質量部~10質量部であることが特に好ましい。
硬化物の耐冷熱サイクル性及び耐水性の観点から、第1の硬化性組成物に含有される第1の2-シアノアクリレート化合物100質量に対する多官能シアノアクリレート化合物の含有率は、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、第1の硬化性組成物が多官能シアノアクリレート化合物を含有しないことがさらに好ましい。
【0048】
多官能シアノアクリレート化合物がビスシアノアクリレート化合物及びトリスシアノアクリレート化合物の少なくとも一方を含む場合、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、第1の硬化性組成物に含有される多官能シアノアクリレート化合物の全質量に対するビスシアノアクリレート化合物及びトリスシアノアクリレート化合物の含有率の和は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。
【0049】
<その他の成分>
第1の硬化性組成物は、その特性を著しく損なわない範囲において、第1の2-シアノアクリレート化合物及び多官能シアノアクリレート化合物以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、第1の2-シアノアクリレート化合物以外の2-シアノアクリレート化合物、安定剤、硬化促進剤、可塑剤、増粘剤、粒子、着色剤、香料、溶剤、強度向上剤等が挙げられる。
また、第1の硬化性組成物は、その他の成分として、2-シアノアクリレート化合物の硬化に影響を与えない、抗生物質、抗炎症剤、抗菌剤、血液凝固剤、徐放剤等の公知の薬剤を用いてもよい。
【0050】
第1の2-シアノアクリレート化合物以外の2-シアノアクリレート化合物としては、2-シアノアクリル酸のメチル、エチル、クロロエチル、n-プロピル、i-プロピル、アリル、プロパギル、n-ブチル、i-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、テトラヒドロフルフリル、ヘプチル、2-エチルヘキシル、n-オクチル、2-オクチル、n-ノニル、オキソノニル、n-デシル、n-ドデシル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシイソプロピル、メトキシブチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシイソプロピル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、イソプロポキシエチル、プロポキシプロピル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシイソプロピル、ブトキシブチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ヘキサフルオロイソプロピル等のエステルが挙げられる。これらの2-シアノアクリレート化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
安定剤としては、(1)二酸化硫黄及びメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、三弗化ホウ素メタノール、三弗化ホウ素ジエチルエーテル等の三弗化ホウ素錯体、HBF4、トリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤、(2)ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール、カテコール、ピロガロール等のラジカル重合禁止剤などが挙げられる。これらの安定剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
硬化促進剤としては、第1の硬化性組成物のアニオン重合を促進するものであれば、いずれも使用することができる。硬化促進剤としては、ポリエーテル化合物、カリックスアレン類、チアカリックスアレン類、ピロガロールアレン類、オニウム塩等が挙げられる。これらの硬化促進剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
また、可塑剤としては、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソトリデシル、フタル酸ジペンタデシル、テレフタル酸ジオクチル、イソフタル酸ジイソノニル、トルイル酸デシル、ショウノウ酸ビス(2-エチルヘキシル)、2-エチルヘキシルシクロヘキシルカルボキシレート、フマル酸ジイソブチル、マレイン酸ジイソブチル、カプロン酸トリグリセライド、安息香酸2-エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、2-シアノアクリレート化合物との相溶性がよく、かつ可塑化効率が高いという点から、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、安息香酸2-エチルヘキシル又はジプロピレングリコールジベンゾエートが好ましい。これらの可塑剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
増粘剤としては、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとの共重合体、メタクリル酸メチルとその他のメタクリル酸エステルとの共重合体、アクリルゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル-2-シアノアクリル酸エステル、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの増粘剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
第1の硬化性組成物は、その特性を損なわない範囲において、粒子を含んでいてもよく、これにより、第1の硬化性組成物を使用することにより形成される接着剤層の厚さを調整することができる。
粒子の平均粒子径は、10μm~200μmであることが好ましく、15μm~200μmであることがより好ましく、15μm~150μmであることがさらに好ましい。
粒子の材質は、使用する2-シアノアクリレート化合物等に不溶であり、且つ重合等の変質を引き起こさないものであれば特に限定されない。粒子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド等の熱可塑性樹脂;不飽和ポリエステル、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン-スチレン共重合体、ジビニルベンゼン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ジアリルフタレート重合体等の架橋樹脂;球状シリカ、ガラスビーズ、ガラスファイバー等の無機化合物;シリコーン化合物;有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格を含んでなる有機無機複合粒子等が挙げられる。
また、粒子の含有量は特に限定されないが、硬化速度、接着強さ等の観点からは、第1の硬化性組成物に含有される第1の2-シアノアクリレート化合物100質量に対する粒子の含有率は、0.1質量部~10質量部であることが好ましく、1質量部~5質量部であることがより好ましく、1質量部~3質量部であることがさらに好ましい。
なお、本開示において、粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した体積基準の平均値である。
【0056】
<第2の硬化性組成物>
第1の硬化性組成物は、単独重合物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Paより大きく5.0×107Pa以下である2-シアノアクリレート化合物(以下、「第2の2-シアノアクリレート化合物」とも記す。)と、多官能シアノアクリレート化合物とを含有する。
【0057】
-第2の2-シアノアクリレート化合物-
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、第2の2-シアノアクリレート化合物の単独重合物の25℃における貯蔵弾性率は、1.1×107Pa~4.0×107Paであることが好ましく、1.1×107Pa~3.0×107Paであることがより好ましい。
単独重合物の25℃における貯蔵弾性率は、第2の2-シアノアクリレート化合物の構造を変更することにより調整することができる。例えば、2-シアノアクリレート化合物が有するエステル鎖長を短くする、エーテル構造を少なくする等により、貯蔵弾性率を上昇させることができる傾向にある。
【0058】
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、第2の2-シアノアクリレート化合物の単独重合物の損失正接の極大値(tanδ(max))を示す温度は、80℃以下であることが好ましく、78℃以下であることがより好ましい。
上記温度の下限値は特に限定されるものではないが、例えば、50℃以上とすることができる。
【0059】
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、第2の2-シアノアクリレート化合物は、エーテル結合を有することが好ましい。また、同様の観点から、第2の2-シアノアクリレート化合物は、エーテル結合を2個以上有することが好ましく、2個~5個有することがより好ましく、2個~4個有することがさらに好ましく、2個又は3個有することが特に好ましい。
なお、本開示の生体用硬化性組成物は、エーテル結合の数が異なる第2の2-シアノアクリレート化合物を2種以上含有していてもよい。
また、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、2-シアノアクリレート化合物がエステル残基を有し、上記エステル残基がエーテル結合を有することが好ましい。
【0060】
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、第2の2-シアノアクリレート化合物は、上記した式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0061】
式(1)中、L1はそれぞれ独立に、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH(R1)CH2-又は-CH2CH(R1)-を表し、硬化物の伸長回復率の観点からは、-CH2CH2-、-CH(R1)CH2-又は-CH2CH(R1)-であることが好ましく、-CH2CH2-であることがより好ましい。
【0062】
式(1)中、R1は置換基を有してもよい炭素数1~6、好ましくは炭素数1~3のアルキル基を表し、また、直鎖アルキル基であっても、分岐アルキル基であってもよい。上記置換基としては、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリーロキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基が挙げられる。R1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、メチル基又はエチル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
【0063】
式(1)中、R2は置換基を有していてもよい炭素数1~15のアルキル基を表し、また、直鎖アルキル基であっても、分岐アルキル基であってもよい。上記置換基としては、R1において前述した置換基が挙げられる。
式(1)におけるR2は、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、炭素数3~15のアルキル基であることが好ましく、4~13のアルキル基であることがより好ましく、炭素数4~10のアルキル基であることがさらに好ましい。
式(1)におけるR2としては、2-エチルへキシル基、2-メチルへキシル基、2-エチルブチル基、2-メチルブチル基、2-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、2-メチルヘプチル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、1-プロピルペンチル基、1-メチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が挙げられ、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、2-エチルへキシル基又はn-ブチル基が好ましい。
【0064】
式(1)中、pは1~5の整数を表し、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、1~4の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
【0065】
式(1)中、pが1又は2であり、且つL1が-CH2CH2-である場合、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、R2は2-エチルへキシル基、2-メチルへキシル基、2-エチルブチル基、2-メチルブチル基、2-メチルペンチル基、2-メチルヘプチル基、2-エチルペンチル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、1-プロピルペンチル基、1-メチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基又はn-オクチル基が好ましく、2-エチルへキシル基又は2-メチルへキシル基であることがより好ましく、2-エチルへキシル基であることがさらに好ましい。
【0066】
式(1)中、pが1であり、且つL1が-CH2CH2CH2-、-CH(R1)CH2-若しくは-CH2CH(R1)-の場合、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、R2は2-エチルへキシル基、2-メチルへキシル基、2-エチルブチル基、2-メチルブチル基、2-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、2-メチルヘプチル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、1-プロピルペンチル基、1-メチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基であることが好ましく、2-エチルへキシル基、2-メチルへキシル基又はn-ブチル基であることがより好ましく、2-エチルへキシル基又はn-ブチル基であることがさらに好ましい。
【0067】
式(1)で表される第2の2-シアノアクリレート化合物の具体例としては、2-(2-エチルヘキシルオキシ)エチル、2-(2-ブトキシエトキシ)エチル、2-(1-メチルブトキシ)エチル、2-(2-エチルブトキシ)エチル、2-(2-メチルブトキシ)エチル、2-ペンチルオキシエチル、2-(2-メチルペンチルオキシ)エチル、2-(2-エチルペンチルオキシ)エチル、2-(2-メチルヘキシルオキシ)エチル、2-(2-メチルヘプチルオキシ)エチル、2-ヘキシルオキシエチル、2-(1-メチルペンチルオキシ)エチル、2-ヘプチルオキシエチル、2-(1-メチルヘキシルオキシ)エチル、2-(1エチルペンチルオキシ)エチル、2-オクチルオキシエチル、2-(1-メチルヘプチルオキシ)エチル、2-(1-エチルヘキシルオキシ)エチル、2-(1-プロピルペンチルオキシ)エチル、2-[2-(2-エチルヘキシルオキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-エチルブトキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-メチルブトキシ)エトキシ]エチル、2-(2-ペンチルオキシエトキシ)エチル、2-[2-(1-メチルブトキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-メチルペンチルオキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-エチルペンチルオキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-メチルヘキシルオキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-メチルヘプチルオキシ)エトキシ]エチル、2-(2-ヘキシルオキシエトキシ)エチル、2-[2-(1―メチルペンチルオキシ)エトキシ]エチル、2-(2-ヘプチルオキシエトキシ)エチル、2-[2-(1-メチルヘキシルオキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(1-エチルペンチルオキシ)エトキシ]エチル、2-(2-オクチルオキシエトキシ)エチル、2-[2-(1-メチルヘプチルオキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(1-エチルヘプチルオキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(1-プロピルペンチルオキシ)エトキシ]エチル、1-(2-エチルヘキシルオキシ)プロピル-2-イル、2-(2-エチルヘキシルオキシ)プロピル-1-イル、2-メトキシプロピル-1-イル、1-エトキシプロピル-2-イル、2-エトキシプロピル-1-イル、1-プロポキシプロピル-2-イル、2-プロポキシプロピル-1-イル、1-(1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(1-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、1-ブトキシプロピル-2-イル、2-ブトキシプロピル-1-イル、1-(2-メチルプロポキシ)プロピル-2-イル、2-(2-メチルプロポキシ)プロピル-1-イル、1-(2-エチルブトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-エチルブトキシ)プロピル-1-イル、1-(1-メチルプロポキシ)プロピル-2-イル、2-(1-メチルプロポキシ)プロピル-1-イル、1-(2-メチルブトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-メチルブトキシ)プロピル-1-イル、1-ペンチルオキシプロピル-2-イル、2-ペンチルオキシプロピル-1-イル、1-(1-メチルブトキシ)プロピル-2-イル、2-(1-メチルブトキシ)プロピル-1-イル、1-(1-エチルプロポキシ)プロピル-2-イル、2-(1-エチルプロポキシ)プロピル-1-イル、1-(2-メチルペンチルオキシ)プロピル-2-イル、2-(2-メチルペンチルオキシ)プロピル-1-イル、1-(2-エチルペンチルオキシ)プロピル-2-イル、2-(2-エチルペンチルオキシ)プロピル-1-イル、1-(2-メチルヘキシルオキシ)プロピル-2-イル、2-(2-メチルヘキシルオキシ)プロピル-1-イル、1-(2-メチルヘプチルオキシ)プロピル-2-イル、2-(2-メチルヘプチルオキシ)プロピル-1-イル、1-ヘキシルオキシプロピル-2-イル、2-ヘキシルオキシプロピル-1-イル、1-(1-メチルペンチルオキシ)プロピル-2-イル、2-(1-メチルペンチルオキシ)プロピル-1-イル、1-ヘプチルオキシプロピル-2-イル、2-ヘプチルオキシプロピル-1-イル、1-(1-メチルヘキシルオキシ)プロピル-2-イル、2-(1-メチルヘキシルオキシ)プロピル-1-イル、1-(1-エチルペンチルオキシ)プロピル-2-イル、2-(1-エチルペンチルオキシ)プロピル-1-イル、1-オクチルオキシプロピル-2-イル、2-オクチルオキシプロピル-1-イル、1-(1-メチルヘプチルオキシ)プロピル-2-イル、2-(1-メチルヘプチルオキシ)プロピル-1-イル、1-(1-エチルヘキシルオキシ)プロピル-2-イル、2-(1-エチルヘキシルオキシ)プロピル-1-イル、1-(1-プロピルペンチルオキシ)プロピル-2-イル、2-(1-プロピルペンチルオキシ)プロピル-1-イル等の2-シアノアクリル酸エステルが挙げられる。
上記した中でも、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、2-(2-エチルヘキシルオキシ)エチル-2-シアノアクリレート、2-[2-(2-エチルヘキシルオキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアクリレート又は2-(2-ブトキシエトキシ)エチル-2-シアノアクリレートが好ましく、2-[2-(2-エチルヘキシルオキシ)エトキシ]エチル-2-シアノアクリレート又は2-(2-ブトキシエトキシ)エチル-2-シアノアクリレートがより好ましい。
【0068】
第2の2-シアノアクリレート化合物に構造異性体が存在する場合、第2の硬化性組成物は、1種のみを含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0069】
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、第2の硬化性組成物の全質量に対する第2の2-シアノアクリレート化合物の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが最も好ましい。
第1の2-シアノアクリレート化合物の含有率の上限値は、特に限定されるものではないが、例えば、99.9質量%以下とすることができる。
【0070】
第2の2-シアノアクリレート化合物が、式(1)で表される化合物を含む場合、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、第2の硬化性組成物に含有される第2の2-シアノアクリレート化合物の全質量に対する式(1)で表される化合物の含有率は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。
【0071】
-多官能シアノアクリレート化合物-
第2の硬化性組成物は、多官能シアノアクリレート化合物を含有する。
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、多官能シアノアクリレート化合物は、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、両末端にヒドロキシ基を有するシラン化合物及び両末端にヒドロキシ基を有するシロキサン化合物からなる群より選択される化合物の2-シアノアクリル酸エステルを少なくとも1種含むことが好ましく、ポリオキシアルキレンポリオール及びアクリルポリオールからなる群より選択される化合物の2-シアノアクリル酸エステルを含むことが好ましく、ポリオキシアルキレンポリオールの2-シアノアクリル酸エステルを含むことがより好ましい。ポリオキシアルキレンポリオール等については、第1の硬化性組成物において説明したため、ここでは記載を省略する。
【0072】
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、多官能シアノアクリレート化合物は、官能基数2~12であるシアノアクリル酸エステルを含むことが好ましく、官能基数2~6であるシアノアクリル酸エステルを含むことがより好ましく、官能基数2~4であるシアノアクリル酸エステルを含むことがさらに好ましく、官能基数2又は3であるシアノアクリル酸エステル(ビスシアノアクリレート化合物又はトリスシアノアクリレート化合物)を含むことが特に好ましい。
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、多官能シアノアクリレート化合物は、ビスシアノアクリレート化合物及びトリスシアノアクリレート化合物の少なくとも一方を含むことが好ましい。
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、ビスシアノアクリレート化合物は、ポリオキシアルキレンポリオールビスシアノアクリル酸エステル又はアルカンジオールビスシアノアクリル酸エステルであることが好ましい。
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、トリスシアノアクリレート化合物は、ポリオキシアルキレンポリオールトリシアノアクリル酸エステルであることが好ましい。
ポリオキシアルキレンポリオールビスシアノアクリレート化合物又はポリオキシアルキレンポリオールトリシアノアクリル酸エステルを構成する、ポリオキシアルキレンポリオールとしては、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられる。
上記した中でも、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)-ビスシアノアクリレート又はポリオキシプロピレングリコール(PPG)-トリスシアノアクリレートが好ましい。
アルカンジオールビスシアノアクリル酸エステルとしては、1,6-ヘキサンジオール-ビスシアノアクリレート、1,4-ブタンジオール-ビスシアノアクリレート、1,8-オクタンジオール-ビスシアノアクリレート、1,9-ノナンジオール-ビスシアノアクリレート、1,10-デカンジオール-ビスシアノアクリレート、1,12-ドデカンジオール-ビスシアノアクリレート等が挙げられる。
【0073】
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、多官能シアノアクリレート化合物の分子量又は数平均分子量(Mn)は、200~50,000であることが好ましく、1,000~50,000であることがより好ましく、1,000~10,000であることがさらに好ましく、1,000~5,000であることが特に好ましい。
【0074】
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、第2の硬化性組成物に含有される第2の2-シアノアクリレート化合物100質量部に対する多官能シアノアクリレート化合物の含有量は、0.01質量部~50質量部であることが好ましく、0.05質量部~50質量部であることがより好ましく、0.07質量部~30質量部であることがさらに好ましく、0.1質量部~20質量部であることが特に好ましく、0.5質量部~18質量部であることが最も好ましい。
【0075】
硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性の観点から、第2の硬化性組成物に含有される多官能シアノアクリレート化合物100質量部に対するポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール及び水添ポリイソプレンポリオールからなる群より選択される化合物の2-シアノアクリレート化合物の含有量の和は、70質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、90質量部以上であることがさらに好ましく、95質量部以上であることが特に好ましく、100質量部であってもよい。
【0076】
<その他の成分>
第2の硬化性組成物は、その特性を損なわない範囲において、第2の2-シアノアクリレート化合物及び多官能シアノアクリレート化合物以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、第2の2-シアノアクリレート化合物以外の2-シアノアクリレート化合物、安定剤、硬化促進剤、可塑剤、増粘剤、粒子、着色剤、香料、溶剤、強度向上剤等が挙げられる。安定剤等については、第1の硬化性組成物において説明したため、ここでは記載を省略する。
また、第2の硬化性組成物は、その他の成分として、2-シアノアクリレート化合物の硬化に影響を与えない、抗生物質、抗炎症剤、抗菌剤、血液凝固剤、徐放剤等の公知の薬剤を用いてもよい。
【0077】
第2の2-シアノアクリレート化合物以外の2-シアノアクリレート化合物としては、2-シアノアクリル酸のメチル、エチル、クロロエチル、n-プロピル、i-プロピル、アリル、プロパギル、n-ブチル、i-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、テトラヒドロフルフリル、ヘプチル、2-エチルヘキシル、n-オクチル、2-オクチル、n-ノニル、オキソノニル、n-デシル、n-ドデシル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシイソプロピル、メトキシブチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシイソプロピル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、イソプロポキシエチル、プロポキシプロピル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシイソプロピル、ブトキシブチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ヘキサフルオロイソプロピル等のエステルが挙げられる。これらの2-シアノアクリレート化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
(生体用接着性部材)
本開示の生体用接着性部材は、部材、及び、本開示の生体用硬化性組成物からなる層又は本開示の生体用硬化性組成物を硬化してなる層を有する。
部材の種類及び材質としては、金属、宝石等の鉱物、ガラス、セラミック、樹脂、低分子の有機化合物、木材等の材質等が挙げられる。
また、部材の形状は、特に制限はなく、所望に応じ、適宜選択することができる。
また、上記記層の厚さは、特に制限はないが、例えば、0.1μm~2mmが好ましく挙げられる。
【0079】
また、本開示の生体用接着性部材は、剥離フィルムをさらに有していてもよい。
一実施形態において、本開示の生体用接着性部材は、部材、本開示の生体用硬化性組成物からなる層又は本開示の生体用硬化性組成物を硬化してなる層、及び剥離フィルムをこの順に有する。
剥離フィルムとしては、特に制限はなく、公知の剥離フィルムを用いることができ、例えば、樹脂フィルム(易接着性フィルム等)、剥離紙などが挙げられる。
また、剥離フィルムの厚さは、特に制限はなく、所望に応じ、適宜選択することができる。
【0080】
本開示の生体用接着性部材の用途としては、テーピングテープ、又は出血や創傷の防止ための若しくは開いた創傷を覆うための封止剤や保護パッド等が好適に挙げられ、包帯、ガーゼ、絆創膏、パッド止血剤、スキンクロージャー等がより好適に挙げられる。
【実施例0081】
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下において「部」は、特に断らない限り、「質量部」を意味する。
【0082】
各種物性値は、以下のように測定した。
【0083】
<2-シアノアクリレート化合物を単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率>
2-シアノアクリレート化合物を、N,N-ジメチルアニリンを塗布した動的粘弾性測定装置冶具間に注入後、動的粘弾性測定装置(アントンパール社製、製品名「MCR301」)を用いて、周波数1Hz、温度25℃、厚み300μmの条件下、貯蔵弾性率を測定した。
2-シアノアクリレート化合物の貯蔵弾性率の変化がなくなったことを確認し、これを2-シアノアクリレート化合物の硬化物とした。上記硬化物を用い、周波数1Hz、昇温速度2℃/分、相対湿度50%の条件で、-50℃~150℃の範囲において、ずりによる硬化物の貯蔵弾性率を測定し、硬化物の25℃における貯蔵弾性率を求めた。
各実施例及び各比較例において使用した2-シアノアクリレート化合物を単独重合してなる硬化物の25℃における貯蔵弾性率(表中においては、2-シアノアクリレート化合物の貯蔵弾性率と記載)を表1にまとめた。
【0084】
<2-シアノアクリレート化合物を単独重合してなる硬化物の損失正接の極大値(tanδ(max))を示す温度>
2-シアノアクリレート化合物を、N,N-ジメチルアニリンを塗布した動的粘弾性測定装置冶具間に注入後、動的粘弾性測定装置(アントンパール社製、製品名「MCR301」)を用いて、周波数1Hz、温度25℃、厚み300μmの条件下、貯蔵弾性率を測定した。
2-シアノアクリレート化合物の貯蔵弾性率の変化がなくなったことを確認し、これを2-シアノアクリレート化合物の硬化物とした。上記硬化物を用い、周波数1Hz、昇温速度2℃/分の条件で、-50℃~150℃の範囲において、動的粘弾性スペクトルを求め、損失正接(tanδ)が最大値となる温度を測定した。ピークが2つ以上観察される場合、最も大きいピークとなる損失正接(tanδ)を極大値とした。
各実施例及び各比較例において使用した2-シアノアクリレート化合物を単独重合してなる硬化物の損失正接の極大値(tanδ(max))を示す温度(表中においては、2-シアノアクリレート化合物の損失正接の極大値(tanδ(max))を示す温度(℃)と記載)を表1にまとめた。
【0085】
(実施例1~実施例2及び実施例4)
表1に記載の2-シアノアクリレート化合物100部に、表1に記載の多官能シアノアクリレート化合物を表1に記載の含有量となるように配合し、均一になるまで攪拌し、生体用硬化性組成物(硬化性絆創膏)を製造した。
なお、実施例3及び実施例4では、2-シアノアクリレート化合物として製品(異性体混合物)を用いた。製品(異性体混合物)は、下記の比率の4種類の異性体を含む。
<製品(異性体混合物)に含まれる異性体の比率>
1-メチル-2-(2-メチル-2-メトキシエチル)シアノアクリレート 89.20質量部
2-メチル-2-(2-メチル-2-メトキシエチル)シアノアクリレート 9.43質量部
1-メチル-2-(1-メチル-2-メトキシエチル)シアノアクリレート 0.96質量部
2-メチル-2-(1-メチル-2-メトキシエチル)シアノアクリレート 0.40質量部
【0086】
(実施例3及び比較例1~比較例6)
表1に記載の2-シアノアクリレート化合物を生体用硬化性組成物とした。
【0087】
表1中における多官能シアノアクリレート化合物の略号の詳細は、以下の通りである。
・PPG4000TCA:3官能2-シアノアクリレート化合物(PPG(Mn4,000)-トリスシアノアクリレート)、Mn4,640
・PPG3000BCA:2官能2-シアノアクリレート化合物(PPG(Mn3,000)-ビスシアノアクリレート)、Mn4,035
・HBCA:2官能2-シアノアクリレート化合物(1,6-ヘキサンジオール-ビスシアノアクリレート)、分子量:276.29
【0088】
なお、PPG4000TCAは、下記方法により合成した。
攪拌機、温度計、リービッヒ冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを備える容量500mLのフラスコに、シアノアクリル酸クロライド2.40g(20.8ミリモル)と、ベンゼン135mLとを仕込んだ。その後、反応系を60℃に昇温させ、窒素吹き込み管から窒素ガスを吹き込みながら、ポリオキシプロピレングリコール[数平均分子量;4000(カタログ値)、ポリエーテルトリオール型、ADEKA社製、商品名「アデカポリエーテルG-4000」]25.2gを16mLのベンゼンに溶解させた溶液を加えた。
次いで、温度を60℃に維持し、30分間攪拌した。その後、25℃まで冷却後、減圧下、ベンゼンを留去して、無色で粘ちょうなオイル状の多官能シアノアクリレート化合物(PPG4000TCA)28.1gを得た。なお、ベンゼンとしては乾燥ベンゼンを使用し、ガラス器具は十分加熱乾燥させたものを用いた。
【0089】
なお、PPG3000BCAは、下記方法により合成した。
攪拌機、温度計、リービッヒ冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを備える容量500mLのフラスコに、シアノアクリル酸クロライド2.40g(20.8ミリモル)と、ベンゼン135mLとを仕込んだ。その後、反応系を60℃に昇温させ、窒素吹き込み管から窒素ガスを吹き込みながら、ポリオキシプロピレングリコール[数平均分子量;3000(カタログ値)、両末端ヒドロキシ基型、ADEKA社製、商品名「アデカポリオールP-3000」]28.4gを18mLのベンゼンに溶解させた溶液を加えた。
次いで、温度を60℃に維持し、30分間攪拌した。その後、25℃まで冷却後、減圧下、ベンゼンを留去して、無色で粘ちょうなオイル状の多官能シアノアクリレート化合物(PPG3000BCA)31.1gを得た。なお、ベンゼンとしては乾燥ベンゼンを使用し、ガラス器具は十分加熱乾燥させたものを用いた。
【0090】
なお、HBCAは、下記方法により合成した。
攪拌機、温度計、リービッヒ冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを備える容量500mLのフラスコに、シアノアクリル酸クロライド4.80g(41.6ミリモル)と、ベンゼン270mLとを仕込んだ。その後、反応系を60℃に昇温させ、窒素吹き込み管から窒素ガスを吹き込みながら、1,6-ヘキサンジオール(試薬)5.22gを5mLのベンゼンに溶解させた溶液を加えた。
次いで、温度を60℃に維持し、30分間攪拌した。その後、25℃まで冷却後、減圧下、ベンゼンを留去後、ペンタン/ヘキサン=7/4混合液中で-20℃に冷却することによる再結晶を2度繰り返して、固体の多官能シアノアクリレート化合物(HBCA)5.02gを得た。
なお、ベンゼンとしては乾燥ベンゼンを使用し、ガラス器具は十分加熱乾燥させたものを用いた。以下の合成例でも同様である。
【0091】
<分子量測定>
得られたPPG4000TCA、PPG3000BCA、HBCAについて、以下に記載の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、ポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)を得た。
○測定条件
カラム:東ソー社製「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」×2本+「TSKgel SuperHZ2500」×2本
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
検出器:RI
流速:350μL/min
【0092】
<伸長回復率の評価>
離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人フィルムソリューション株式会社製、製品名「ピューレックス(登録商標)A31」)上に、厚さ1mmのシリコーンゴムの型枠を配置した。
上記実施例及び比較例において製造した生体用硬化性組成物1gに、N,N-ジメチルアニリンを1μL添加し、撹拌した後、上記型枠内へ流し込んだ。
生体用硬化性組成物の流し込み後、型枠及び生体用硬化性組成物上に、別途用意した上記離型PETフィルムを被せ、ガラス板で挟み込んだ後、温度25℃、相対湿度50%で24時間静置し、完全に硬化させた。
硬化後、型枠及び離型PETフィルムを取り除いて、幅5mm、長さ50mm、厚さ1mmの硬化物を得た。
【0093】
引張試験機(株式会社東洋精機製作所製、製品名「ストログラフV20-C」)を用い、治具間距離20mm(L0)として固定し、治具固定位置に印を付けた硬化物を、治具間距離が40mm(L1)となるまで、20mm/分の引張速度で引っ張った。
治具の固定を解除した後、1分、5分、30分経過したときのそれぞれの印間の長さ(L)を測定し、下記計算式から伸長回復率(%)を算出した。算出結果を表1に示す。
なお、上記測定は、23℃環境下において行った。
なお、比較例1の生体用硬化性組成物は、引っ張りにより、硬化物が破損したため、測定不可であり、表1においては、「-」で示す。
また、比較例6の生体用硬化性組成物は、硬化物の治具への固定の際に、大きく変形したため、測定不可であり、表1においては、「-」で示す。
伸長回復率(%):{(L1-L)/(L1-L0)}×100
【0094】
<保持力の評価>
厚さ2mm×幅25mm×長さ50mmのアルミニウム基材(JIS A 6061Pに規定された材質)に、上記実施例及び比較例において製造した生体用硬化性組成物を滴下し、接着面積が幅12.5mm×長さ25mmとなるように厚さ2mm×幅25mm×長さ50mmのアルミニウム基材を被せて貼り合わせ、室温(23℃)で3日間養生し、完全に硬化させ、アルミニウム基材、生体用硬化性組成物の硬化物及びアルミニウム基材の順に備える試験片を作製した。
JIS Z 0237(2009)に準拠した保持力試験装置に、作製した試験片の一方のアルミニウム基材を取り付けた。室温又は40℃下で、他方のアルミニウム基材に1kgの錘を取り付けた。アルミニウム基材に錘を取り付けてから、錘及びアルミニウム基材が落下するまでの時間を保持時間とし、表1に示す。
【0095】
<ヒビ割れ抑制性の評価>
上記実施例及び比較例において製造した生体用硬化性組成物に、2-シアノアクリレート化合物100部に対し4部となるよう、増粘剤としてセルロースアセテートブチレートを配合し、均一になるまで攪拌した。
人工皮革を幅20mmに切り出した試験片を、2枚用意した。
試験片同士を、増粘剤を配合した柔軟性物品用硬化性組成物により、幅方向に貼り合わせ、室温(23℃)で3日間養生し、完全に硬化させ、積層試験片を得た。
用意した。
人工皮革の表面に生体用硬化性組成物を塗布し、室温(23℃)で3日間養生し、完全に硬化させた。
積層試験片を接着部分で折り曲げ、ヒビ割れ抑制性を下記の判定基準で評価した。評価結果を表1に示す。
なお、比較例6では、べたつきにより測定負荷であり、表1においては、「-」で示す。
(判定基準)
A:接着部分を180°折り曲げても、接着部分の硬化物にヒビ割れが生じなかった。
B:接着部分を90°折り曲げても、接着部分の硬化物にヒビ割れが生じなかった。しかし、接着部分を90°を超えて折り曲げた場合、接着部分の硬化物にヒビ割れが生じた。
C:接着部分を90°折り曲げた場合、接着部分の硬化物にヒビ割れが生じた。
【0096】
<耐冷熱サイクルの評価>
幅15mm×長さ15mmの抜き枠のある、厚さ25μmのスペーサー(離型PETフィルム、東洋紡(株)製「TN200」)を用意した。
上記スペーサーを、厚さ2mm×幅25mm×長さ50mmのアルミニウム板(JIS A6061Pに規定された材質)に乗せ、スペーサー枠内のアルミニウム板上に、上記実施例及び比較例において製造した生体用硬化性組成物を滴下した。
その上に、厚さ3mm×幅25mm×長さ50mmのABS樹脂板(新神戸電機(株)製「ABS-N-WN」)を被せて貼り合わせ、室温(23度)で3日間静置し、完全に硬化させた。
硬化後の試験片について、JIS K 6861(1995)に準じて引張せん断接着強さを測定した(これを初期強度とする)。
また、硬化後の試験片について、冷熱衝撃試験機を用いて-20℃で1時間保持、60℃で1時間保持する冷熱サイクルを1サイクルとして100サイクル後の引張せん断接着強さを上記と同様にして測定した(これを試験後強度とする。)。
そして、下記式から保持率を算出し、表にまとめた。
保持率(%)=(試験後強度/初期強度)×100
【0097】
<耐水性の評価>
厚さ2mm×幅25mm×長さ50mmのアルミニウム板(JIS A6061Pに規定された材質)上に、実施例及び比較例において製造した生体用硬化性組成物を滴下し、同じアルミニウム板を被せて貼り合わせ、室温(23℃)で3日間静置し、完全に硬化させた。
硬化後の試験片について、JIS K 6861(1995)に準じて引張せん断接着強さを測定した(これを初期強度とする)。
また、硬化後の試験片について、23℃条件下で3日間水に完全に浸漬させた後の引張せん断接着強さを上記と同様にして測定し(これを試験後強度とする。)、下記のようにして保持率を算出した。
保持率(%)=(試験後強度/初期強度)×100
【0098】
【0099】
表1から、本開示の生体用硬化性組成物は、硬化物の伸長回復率及びヒビ割れ抑制性に優れることが分かる。