(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083154
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】耐力壁構造及び建物
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20240613BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
E04B2/56 645B
E04B2/56 604G
E04B2/56 631D
E04B2/56 632
E04B1/76 400A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197513
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄歩
(72)【発明者】
【氏名】山本 篤志
(72)【発明者】
【氏名】増田 宏斗
【テーマコード(参考)】
2E001
2E002
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001EA06
2E001FA04
2E001HD01
2E002EB12
2E002FA02
2E002FB08
2E002FB25
2E002JA01
2E002JA02
2E002JB01
2E002MA32
2E002MA33
(57)【要約】
【課題】骨組部材に囲まれる領域内に耐力面材を配置し、その屋内側に断熱材を配置する構成としても、断熱材による断熱性及び断熱材の施工性、の低下を抑制可能な、耐力壁構造及び建物を提供する。
【解決手段】本発明に係る耐力壁構造は、耐力面材を含む耐力体と、前記耐力体の上端部が取り付けられている上梁と、前記耐力体の下端部が取り付けられている下梁と、前記耐力体の屋内側に配置される断熱材と、を備え、前記耐力体は、鉛直方向で前記上端部及び前記下端部の間に位置する中央部において、前記耐力面材より屋内側に突出する部分を備えておらず、前記断熱材は、前記中央部の屋内側を、前記中央部の幅方向の全域に亘って覆うように、配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐力面材を含む耐力体と、
前記耐力体の上端部が取り付けられている上梁と、
前記耐力体の下端部が取り付けられている下梁と、
前記耐力体の屋内側に配置される断熱材と、を備え、
前記耐力体は、鉛直方向で前記上端部及び前記下端部の間に位置する中央部において、前記耐力面材より屋内側に突出する部分を備えておらず、
前記断熱材は、前記中央部の屋内側を、前記中央部の幅方向の全域に亘って覆うように、配置されている、耐力壁構造。
【請求項2】
前記耐力体は、前記上端部及び前記下端部の少なくとも一方の端部において、前記耐力面材より屋内側に突出する部分を備えておらず、
前記断熱材は、前記少なくとも一方の端部の屋内側を、前記少なくとも一方の端部の幅方向の全域に亘って覆うように、配置されている、請求項1に記載の耐力壁構造。
【請求項3】
前記耐力面材は、平板状の本体部を備え、
前記耐力体は、前記中央部において、前記本体部の屋内側の平面状の内面より更に屋内側に突出する部分を備えておらず、
前記断熱材は、前記中央部の屋内側で、前記本体部の前記内面を前記幅方向の全域に亘って覆うように、配置されている、請求項1又は2に記載の耐力壁構造。
【請求項4】
前記耐力面材は、前記本体部の前記幅方向の両端部それぞれから屋外側に突設されている側板部を備える、請求項3に記載の耐力壁構造。
【請求項5】
前記耐力体が配置されている耐力体領域の両側それぞれに、前記耐力体が配置されていない側方領域が設けられており、
前記耐力体の屋外側に、前記耐力体領域及び前記側方領域に亘って形成されている外皮層が設けられており、
前記耐力体領域及び前記側方領域に亘って形成されている断熱層が設けられており、
前記断熱材を第1断熱材とした場合に、前記断熱層は、
前記耐力体領域で前記耐力体の屋内側を覆う前記第1断熱材と、
前記側方領域で前記外皮層の屋内側を覆う第2断熱材と、
前記耐力体の幅方向の端面を覆い、前記第1断熱材及び前記第2断熱材を連ねる第3断熱材と、を備える、請求項1又は2に記載の耐力壁構造。
【請求項6】
前記第1断熱材及び前記第3断熱材に跨って取り付けられ、前記第1断熱材と前記第3断熱材との相互間を屋内側から覆う、第1気密材と、
前記第2断熱材及び前記第3断熱材に跨って取り付けられ、前記第2断熱材と前記第3断熱材との相互間を屋内側から覆う、第2気密材と、を備える、請求項5に記載の耐力壁構造。
【請求項7】
前記耐力体の前記上端部及び前記下端部の少なくとも一方の端部において、前記耐力面材を屋内外方向に貫通する貫通孔が形成されている、請求項1又は2に記載の耐力壁構造。
【請求項8】
前記下梁に、前記下梁の延在方向と直交する方向に延在する直交梁の一端部が取り付けられており、
前記耐力体の前記下端部は、前記下梁のうち前記直交梁の前記一端部が取り付けられる位置の屋内側を覆うように配置されており、
前記貫通孔は、前記耐力体の前記下端部に少なくとも形成されている、請求項7に記載の耐力壁構造。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の耐力壁構造を備える建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐力壁構造及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ブレース材ではなく耐力面材を利用した耐力壁構造が知られている。特許文献1には、この種の耐力壁構造が記載されている。より具体的に、特許文献1には、耐力面材の外面に断熱材を接合してなる複数の壁パネルを柱又は梁に釘で固定することで耐力壁して構成される外張断熱工法による家屋の壁構造が開示されている。特許文献1の壁構造では、左右方向で他の壁パネルが隣接する壁パネルについては、隣接する壁パネル同士の間において、断熱材による断熱層を連続させるために断熱材同士は隙間なく突き合わせつつも、耐力壁としての性能を保つために耐力面材同士の間は隙間を設けるべく、左右方向で断熱材の長さに比べ、耐力面材の長さが短く設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耐力壁構造としては、特許文献1に記載の外張断熱工法に用いられる耐力壁構造の他に、柱、梁等の骨組部材に囲まれる領域内に耐力面材を配置し、この耐力面材の屋内側に断熱材を配置する耐力壁構造がある。このような構成の場合に、耐力面材の幅方向の両側には、耐力面材を支持する間柱が配置される。この間柱の屋内側の面は、耐力面材の屋内側の面より屋内側に位置する。そのため、骨組部材に囲まれる領域内で、骨組部材より屋内側に突出しないように、耐力面材及び間柱の屋内側に断熱材を配置すると、間柱の位置で断熱材が薄くなり、間柱の位置での断熱性能が十分に確保できない可能性がある。更に、間柱の屋内側に断熱材を配置できない場合もあり、かかる場合には、間柱が熱橋となり得る。
【0005】
このように、骨組部材に囲まれる領域内に耐力面材を配置し、その屋内側に断熱材を配置する場合には、耐力面材より屋内側に突出する間柱の存在により、十分な断熱性能の確保が難しいという問題がある。
【0006】
また、間柱が耐力面材より屋内側に突出していると、断熱材を耐力面材及び間柱それぞれに沿うように配置させる際に手間がかかり、断熱材の施工性が低下する。
【0007】
本発明は、骨組部材に囲まれる領域内に耐力面材を配置し、その屋内側に断熱材を配置する構成としても、断熱材による断熱性及び断熱材の施工性、の低下を抑制可能な、耐力壁構造及び建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様としての耐力壁構造は、
(1)
耐力面材を含む耐力体と、
前記耐力体の上端部が取り付けられている上梁と、
前記耐力体の下端部が取り付けられている下梁と、
前記耐力体の屋内側に配置される断熱材と、を備え、
前記耐力体は、鉛直方向で前記上端部及び前記下端部の間に位置する中央部において、前記耐力面材より屋内側に突出する部分を備えておらず、
前記断熱材は、前記中央部の屋内側を、前記中央部の幅方向の全域に亘って覆うように、配置されている、耐力壁構造、である。
【0009】
本発明の1つの実施形態としての耐力壁構造は、
(2)
前記耐力体は、前記上端部及び前記下端部の少なくとも一方の端部において、前記耐力面材より屋内側に突出する部分を備えておらず、
前記断熱材は、前記少なくとも一方の端部の屋内側を、前記少なくとも一方の端部の幅方向の全域に亘って覆うように、配置されている、上記(1)に記載の耐力壁構造、である。
【0010】
本発明の1つの実施形態としての耐力壁構造は、
(3)
前記耐力面材は、平板状の本体部を備え、
前記耐力体は、前記中央部において、前記本体部の屋内側の平面状の内面より更に屋内側に突出する部分を備えておらず、
前記断熱材は、前記中央部の屋内側で、前記本体部の前記内面を前記幅方向の全域に亘って覆うように、配置されている、上記(1)又は(2)に記載の耐力壁構造、である。
【0011】
本発明の1つの実施形態としての耐力壁構造は、
(4)
前記耐力面材は、前記本体部の前記幅方向の両端部それぞれから屋外側に突設されている側板部を備える、上記(3)に記載の耐力壁構造、である。
【0012】
本発明の1つの実施形態としての耐力壁構造は、
(5)
前記耐力体が配置されている耐力体領域の両側それぞれに、前記耐力体が配置されていない側方領域が設けられており、
前記耐力体の屋外側に、前記耐力体領域及び前記側方領域に亘って形成されている外皮層が設けられており、
前記耐力体領域及び前記側方領域に亘って形成されている断熱層が設けられており、
前記断熱材を第1断熱材とした場合に、前記断熱層は、
前記耐力体領域で前記耐力体の屋内側を覆う前記第1断熱材と、
前記側方領域で前記外皮層の屋内側を覆う第2断熱材と、
前記耐力体の幅方向の端面を覆い、前記第1断熱材及び前記第2断熱材を連ねる第3断熱材と、を備える、上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の耐力壁構造、である。
【0013】
本発明の1つの実施形態としての耐力壁構造は、
(6)
前記第1断熱材及び前記第3断熱材に跨って取り付けられ、前記第1断熱材と前記第3断熱材との相互間を屋内側から覆う、第1気密材と、
前記第2断熱材及び前記第3断熱材に跨って取り付けられ、前記第2断熱材と前記第3断熱材との相互間を屋内側から覆う、第2気密材と、を備える、上記(5)に記載の耐力壁構造、である。
【0014】
本発明の1つの実施形態としての耐力壁構造は、
(7)
前記耐力体の前記上端部及び前記下端部の少なくとも一方の端部において、前記耐力面材を屋内外方向に貫通する貫通孔が形成されている、上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の耐力壁構造、である。
【0015】
本発明の1つの実施形態としての耐力壁構造は、
(8)
前記下梁に、前記下梁の延在方向と直交する方向に延在する直交梁の一端部が取り付けられており、
前記耐力体の前記下端部は、前記下梁のうち前記直交梁の前記一端部が取り付けられる位置の屋内側を覆うように配置されており、
前記貫通孔は、前記耐力体の前記下端部に少なくとも形成されている、上記(7)に記載の耐力壁構造、である。
【0016】
本発明の第2の態様としての建物は、
(9)
上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の耐力壁構造を備える建物、である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、骨組部材に囲まれる領域内に耐力面材を配置し、その屋内側に断熱材を配置する構成としても、断熱材による断熱性及び断熱材の施工性、の低下を抑制可能な、耐力壁構造及び建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図1のうち耐力体近傍を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る耐力壁構造及び建物の実施形態について図面を参照して例示説明する。各図において同一の構成には同一の符号を付している。
【0020】
図1は、本発明に係る耐力壁構造の一実施形態としての耐力壁構造1を示す図である。
図1は、耐力壁構造1を屋内側から見た図である。
図1では、説明の便宜上、耐力体2の屋内側に配置される第1~第3断熱材31~33(
図3、
図4参照)及び内装材80(
図3、
図4参照)を省略して描いている。
図1に示すように、本実施形態の耐力壁構造1は、建物100の外周壁101のうちペントハウス部102の外壁部103の位置に設けられている。但し、本発明に係る耐力壁構造は、ペントハウス部102の外壁部103の位置に限られず、建物100の外周壁101のうち他の階層の外壁部の位置に設けられてもよい。以下、本実施形態では、一例として、ペントハウス部102の外壁部103の位置に設けられている耐力壁構造1を説明する。
【0021】
まず、本実施形態の耐力壁構造1が適用されている建物100全体の概要について説明する。建物100は、例えば、鉄骨造の骨組を有する2階建ての戸建て住宅とすることができる。また、本実施形態の建物100の屋根は陸屋根であり、上述したように、屋上階にはペントハウス部102が設けられている。このような建物100は、例えば、地盤に支持された鉄筋コンクリート造の布基礎等である基礎構造体と、柱や梁などの骨組部材で構成された架構を有し、基礎構造体に支持される上部構造体と、を備える。なお、架構を構成する骨組部材は、予め規格化(標準化)された部材とすることができ、予め工場にて製造されたのち建築現場に搬入されて組み立てられる。但し、建物100は、いわゆる在来工法にて建設された木造の住宅であってもよい。また、建物100は2階建てに限られず、1階または3階以上の階層を有していてもよい。更に、建物100は、戸建て住宅に限られず、例えば集合住宅などであってもよい。
【0022】
本実施形態の上部構造体は、複数の柱、及び、これら複数の柱間に架設された複数の梁、から構成される架構と、この架構の外周部に配置される外周壁101と、架構の梁に支持される床と、を備える。
【0023】
外周壁101は、連接された外装材としての外壁パネル70により構成されている外皮層101aと、この外皮層101aの屋内側で、外皮層101aに沿って連接されている断熱材(例えば後述する第1~第3断熱材31~33)により構成されている断熱層101bと、この断熱層101bの屋内側に配置される内装材80(
図3、
図4参照)により構成されている内皮層101cと、を備えている。
【0024】
外壁パネル70としては、例えば、軽量気泡コンクリート(以下、「ALC」と記載する。「ALC」とは「autoclaved light weight concrete」の略である。)のパネル、金属系や窯業系のサイディング、押出成形セメント板、木質系パネルなどを用いることができる。この外壁パネル70を架構の外周部の周囲に連接することにより、外周壁101の外皮層101aを形成することができる。
【0025】
また、断熱材としては、例えば、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡樹脂系の材料からなるパネル状の断熱材を用いることができる。このパネル状の断熱材を外皮層101aの屋内側に、外皮層101aを構成する外壁パネル70の内面に沿って連接して配置することにより、外周壁101の断熱層101bを形成することができる。
【0026】
内装材80(
図3、
図4参照)としては、例えば、石膏ボードを用いることができ、内装材80を断熱層101bの屋内側に連接して配置することにより、内皮層101cを形成することができる。
【0027】
床は、床スラブ材を含む。床スラブ材は、架構の梁間に架設され、梁により直接的又は間接的に支持される。床スラブ材としては、例えば、ALCパネルを用いることできるが、折板、押出成形セメント板、木質パネル材などの別の部材を用いてもよい。床は、床スラブ材に加えて、例えば、床スラブ材に対して直接的又は間接的に取り付けられる、下階の天井面を構成する天井内装材や、床スラブ材上に積層された、上階の床面を構成するフローリング等の床内装材など、を含むものであってもよい。
【0028】
なお、上述したように、本実施形態の建物100の屋根は陸屋根である。陸屋根を構成する屋根床スラブ材についても、ALCパネルを用いることができるが、ALCパネルに限られるものではない。また、屋根床スラブ材は、例えば塩化ビニル樹脂から形成されている防水シート等により覆われることにより、防水処理が施されている。また、建物100の屋根は、陸屋根に限らず、スレート等の屋根外装材を用いた勾配屋根としてもよい。
【0029】
上述したように、本実施形態の屋上階には、ペントハウス部102が設けられている。そして、外周壁101のうち、ペントハウス部102の周囲を取り囲む外壁部103の位置に、本実施形態の耐力壁構造1が設けられている。
【0030】
次に、
図1~
図5を参照して、耐力壁構造1の詳細について説明する。
図2は、
図1のうち耐力体2近傍を拡大した図である。
図3は、耐力壁構造1の水平断面図である。
図4は、耐力壁構造1の鉛直断面図である。
図5は、耐力体2単体の側面図である。
【0031】
図1に示すように、耐力壁構造1は、ペントハウス部102の骨組部材としての2本の柱104、上梁105及び下梁106に囲まれる領域X内に配置される耐力体2を備える。耐力体2は、2本の柱104、上梁105及び下梁106より屋内側に突出しないように、領域X内に配置されている。また、領域X内において、耐力体2が配置されている耐力体領域X1の両側それぞれに、耐力体2が配置されていない側方領域X2が設けられている。
【0032】
図3、
図4に示すように、耐力体2の屋外側には、耐力体領域X1及び側方領域X2に亘って形成されている外皮層101aが設けられている。また、耐力体領域X1及び側方領域X2に亘って形成されている断熱層101bが設けられている。
【0033】
図3に示すように、断熱層101bは、耐力体領域X1で耐力体2の屋内側を覆う第1断熱材31と、側方領域X2で外皮層101aの屋内側を覆う第2断熱材32と、耐力体2の幅方向Aの端面を覆い、第1断熱材31及び第2断熱材32を連ねる第3断熱材33と、を備えている。詳細は後述するが、本実施形態の耐力体2の端面は、耐力面材10の側板部12により構成されている。
【0034】
図3に示すように、第1断熱材31と第3断熱材33との間は、第1気密材41により気密処理されている。本実施形態の第1気密材41は気密テープであり、気密テープは、第1断熱材31及び第3断熱材33に跨って取り付けられ、第1断熱材31と第3断熱材33との相互間を屋内側から覆っている。
【0035】
また、
図3に示すように、第2断熱材32と第3断熱材33との間は、第2気密材42により気密処理されている。本実施形態の第2気密材42は気密テープであり、気密テープは、第2断熱材32及び第3断熱材33に跨って取り付けられ、第2断熱材32と第3断熱材33との相互間を屋内側から覆っている。
【0036】
図1~
図5に示すように、耐力体2は、耐力面材10を含む。耐力体2の上端部2aは、上梁105に取り付けられている。耐力体2の下端部2bは、下梁106に取り付けられている。耐力体2の上端部2aと上梁105とは、例えば、ボルト、ナット等の締結部材を用いて締結されてよい。また、耐力体2の下端部2b及び下梁106についても、例えば、ボルト、ナット等の締結部材を用いて締結されてよい。本実施形態の耐力体2は、耐力面材10の上端に溶接等により接合されている上端接合プレート51を備え、この上端接合プレート51にボルト孔が形成されている。この上端接合プレート51のボルト孔にボルトを挿通し、上端接合プレート51と上梁105とを締結することで、耐力体2の上端部2a及び上梁105は固定されている。また、本実施形態の耐力体2は、耐力面材10の下端に溶接等により接合されている下端接合プレート52を備え、この下端接合プレート52にボルト孔が形成されている。この下端接合プレート52のボルト孔にボルトを挿通し、下端接合プレート52と下梁106とを締結することで、耐力体2の下端部2b及び下梁106は固定されている。なお、本実施形態の上梁105及び下梁106は、H形鋼により構成されており、上述した上端接合プレート51及び下端接合プレート52は、上梁105及び下梁106のフランジと、ボルト等の締結部材により固定されている。
【0037】
耐力体2は、鉛直方向Bで上端部2a及び下端部2bの間に位置する中央部2cにおいて、耐力面材10より屋内側に突出する部分を備えていない。つまり、耐力体2の中央部2cでは、耐力面材10の屋内側の平面状の内面11aが、耐力体2のうちで最も屋内側に位置する。上述したように、第1断熱材31は、耐力体2の屋内側に配置されている。そして、第1断熱材31は、耐力体2の中央部2cの屋内側を、中央部2cの幅方向(耐力体2の幅方向Aと同じ方向)の全域に亘って覆うように、配置されている。
【0038】
このように、耐力体2の中央部2cでは、耐力面材10の屋内側の平面状の内面11aが、耐力体2のうちで最も屋内側に位置する。つまり、耐力体2では、中央部2cにおいて、耐力面材10の幅方向(耐力体2の幅方向Aと同じ方向)の両側に、耐力面材10の内面11aより屋内側に突出する間柱等が設けられてない。そのため、パネル状の第1断熱材31を、耐力面材10の内面11aに沿うように、中央部2cの幅方向Aの全域に亘って容易に配置することできる。また、耐力体2が、中央部2cにおいて、耐力面材10より屋内側に突出する部位を備えないため、中央部2cの幅方向の全域に亘って、第1断熱材31の厚みを十分確保できる。したがって、耐力体2の中央部2cにおける第1断熱材31による断熱性が、幅方向Aの位置によって部分的に低下することを抑制できる。このように、耐力壁構造1によれば、第1断熱材31による断熱性、及び、第1断熱材31の施工性、を高めることができる。
【0039】
なお、耐力体2の中央部2cとは、鉛直方向における上端部2aと下端部2bとの間の部分を意味し、中央部2cの鉛直方向長さLcは、上端部2aの鉛直方向長さLaより長く、かつ、下端部2bの鉛直方向長さLbより長い(
図2参照)。したがって、中央部2cは、少なくとも耐力体2の鉛直方向長さLの1/3の長さより長い。また、上端部2a及び下端部2bそれぞれは、少なくとも耐力体2の鉛直方向長さLの1/3未満の長さを有する。ここで、耐力体2の鉛直方向長さLとは、耐力体2の上端及び下端の最短長さを意味し、本実施形態の耐力体2では、
図2の耐力体2の左端での上端及び下端の長さを意味している。
【0040】
ここで、断熱性及び施工性の観点では、中央部2cの鉛直方向長さLcが長く、上端部2aの鉛直方向長さLa及び下端部2bの鉛直方向長さLbが短いことが好ましい。そのため、上端部2aの鉛直方向長さLa、及び、下端部2bの鉛直方向長さLbそれぞれは、耐力体2の鉛直方向長さLの1/4未満とすることが好ましく、1/5未満とすることがより好ましく、1/6未満とすることが特に好ましい。逆に、中央部2cの鉛直方向長さLcは、耐力体2の鉛直方向長さLの1/2の長さより長いことが好ましく、3/5の長さより長いことがより好ましく、2/3の長さより長いことが特に好ましい。なお、
図2では、一例として、上端部2aの鉛直方向長さLa、及び、下端部2bの鉛直方向長さLbそれぞれが、耐力体2の鉛直方向長さLの1/6の長さで、中央部2cの鉛直方向長さLcが、耐力体2の鉛直方向長さLの2/3の長さとしている。
【0041】
更に、耐力体2は、上述した中央部2cのみならず、上端部2a及び下端部2bの少なくとも一方の端部においても、耐力面材10より屋内側に突出する部分を備えていないことが好ましい。このようにすることで、耐力面材10より屋内側に突出する部分を備えていない、上端部2a及び下端部2bの少なくとも一方の端部においても、第1断熱材31を容易に配置できると共に、幅方向Aの全域に亘って第1断熱材31の厚みを十分確保できる。つまり、耐力体2の中央部2cのみならず、耐力体2の上端部2a及び下端部2bの少なくとも一方の端部においても、第1断熱材31による断熱性、及び、第1断熱材31の施工性、を高めることができる。なお、第1断熱材31による断熱性、及び、第1断熱材31の施工性、の観点では、上端部2a及び下端部2bの両方の端部で、耐力面材10より屋内側に突出する部分を備えていないことが、より好ましい。このようにすることで、上端部2a、下端部2b及び中央部2cの鉛直方向Bの全域で、その屋内側に第1断熱材31を容易に配置できると共に、上端部2a、下端部2b及び中央部2cの鉛直方向Bの全域で、第1断熱材31の厚みを十分確保でき、高い断熱性を確保できる。
【0042】
以上のように、耐力壁構造1では、耐力体2が、少なくとも中央部2cにおいて(好ましくは中央部2cに加えて上端部2a及び下端部2bの少なくとも一方の端部において)、耐力面材10より屋内側に突出する部分を備えていないことにより、その屋内側に配置される第1断熱材31による断熱性、及び、第1断熱材31の施工性、を高めることができる。
【0043】
なお、
図5に示すように、本実施形態の耐力体2は、上端部2a及び下端部2bにおいて、上梁105及び下梁106との接合強度を補強するため、耐力面材10より屋内側に突出する板状補強フランジ部61、62を備えている。これら板状補強フランジ部61、62を備えない構成とすることで、耐力体2は、上端部2a、下端部2b及び中央部2cの鉛直方向Bの全域で、耐力面材10より屋内側に突出する部分を備えない構成とすることができる。このようにすることで、上端部2a、下端部2b及び中央部2cの鉛直方向Bの全域で、第1断熱材31による断熱性、及び、第1断熱材31の施工性、を高めることができる。
【0044】
図3等に示すように、本実施形態の耐力面材10は、平板状の本体部11と、この本体部11の幅方向(耐力体2の幅方向Aと同じ方向)の両端部それぞれから屋外側に突設されている側板部12と、を備えている。平板状の本体部11は、その厚み方向が屋内外方向Cとなるように配置されている。そして、本実施形態の耐力体2は、少なくとも中央部2cにおいて、本体部11の屋内側の平面状の内面11aより更に屋内側に突出する部分を備えていない。つまり、耐力体2の中央部2cにおいて、本体部11の屋内側の鉛直平面状の内面11aが、耐力体2の最も屋内側に位置する。第1断熱材31は、中央部2cの屋内側で、本体部11の内面11aを幅方向Aの全域に亘って覆うように、配置されている。
【0045】
また、上述した第3断熱材33は、側板部12に対して、耐力体2の幅方向Aの外側を覆い、第1断熱材31及び第2断熱材32と連続するように配置されている。これにより、第1断熱材31、第2断熱材32及び第3断熱材33が連続し、耐力体領域X1及び側方領域X2に亘って連続する断熱層101bが形成されている。
図3に示すように、第1~第3断熱材31~33はいずれもパネル状であるため、第1~第3断熱材31~33を容易に配置でき、容易に断熱層101bを形成できる。更に、第1~第3断熱材31~33の相互間を屋内側から第1気密材41及び第2気密材42としての気密テープにより覆うことで、容易に気密処理を実行できる。つまり、断熱層101bの形成の施工性を高めることができると共に、気密処理の施工性についても、高めることができる。
【0046】
本実施形態の耐力面材10は、上述した本体部11及び側板部12を備えるが、この構成に限られない。耐力面材10は、例えば、本体部11のみからなる構成であってもよい。但し、側板部12を設けることで、耐力面材10の強度を高めることができる。
【0047】
また、本実施形態の耐力面材10は、鋼材により形成されており、溝状の断面形状を有し、上述した本体部11が溝底板部により構成され、上述した側板部12が溝壁部により構成されている。溝状の断面形状を有する耐力面材10は、例えば、溝形鋼、C形鋼により構成されてよい。また、溝状の断面形状を有する耐力面材10は、例えば、鋼板を溝形状又はC形状に折り曲げて形成されてもよい。
【0048】
なお、
図5に示すように、本実施形態の耐力体2は、耐力面材10に加えて、上述した上端接合プレート51、下端接合プレート52、及び、板状補強フランジ部61、62を備えている。上端接合プレート51は、耐力面材10の本体部11及び側板部12の上端を覆うようにして、例えば、本体部11及び側板部12の上端に溶接等により接合されてよい。また、下端接合プレート52は、耐力面材10の本体部11及び側板部12の下端を覆うようにして、例えば、本体部11及び側板部12の下端に溶接等により接合されてよい。板状補強フランジ部61、62は、本体部11の内面11aから屋内側に突出するように、例えば、本体部11に溶接等により接合されてよい。
【0049】
また、本実施形態では、下梁106に、下梁106の延在方向と直交する方向に延在する直交梁107(
図3参照)の一端部107aが取り付けられている。そして、
図3に示すように、耐力体2の下端部2bは、下梁106のうち直交梁107の一端部107aが取り付けられる位置の屋内側を覆うように配置されている。かかる場合に、直交梁107の一端部107aと下梁106との接合位置は、耐力体2により覆われる。そのため、直交梁107の一端部107aと下梁106との接合位置の点検作業が困難になる。そのため、本実施形態では、耐力体2の下端部2bにおいて、耐力面材10を屋内側方向に貫通する貫通孔11bが形成されている。より具体的に、本実施形態の貫通孔11bは、本体部11に形成されている。このような貫通孔11bを設けることで、直交梁107の一端部107aと下梁106との接合位置の点検を、貫通孔11bを通じて実行することができる。
【0050】
なお、貫通孔11bは、直交梁107の一端部107aと下梁106との接合位置の点検の目的に限られず、別の部材同士の接合位置の点検の目的で設けられてもよい。つまり、貫通孔11bは、その目的に応じて、耐力体2の上端部2a及び下端部2bの少なくとも一方の端部に設けられてよい。
【0051】
また、
図3に示すように、本実施形態の耐力体2は、外皮層101aのうち、隣接する2つの外壁パネル70の境界位置の屋内側を覆うように配置されている。なお、
図4に示すように、外皮層101aを構成する各外壁パネル70は、上梁105及び下梁106に対して、取付金具71を介して取り付けられ、上梁105及び下梁106により支持されている。
【0052】
本発明に係る耐力壁構造は、上述した実施形態に示す具体的な構成に限られず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。
【0053】
図1では、領域X内で、幅方向Aの略中央部に、耐力体2を配置した構成を示しているが、この構成に限られない。耐力体2は、領域X内で、幅方向Aの一方側に偏って配置されていてもよい。また、
図1では、領域X内に、1つのみの耐力体2を配置しているが、幅方向Aに間隔を隔てて複数の耐力体2を配置してもよい。
【0054】
図1、
図2では、上梁105が傾斜して延在する構成を示しているが、この構成に限られない。上梁105は水平方向に延在する構成であってもよい。
【0055】
図5に示すように、上述した実施形態では、耐力体2が板状補強フランジ部61、62を備える構成であるが、この構成に限られない。耐力体2は、板状補強フランジ部61、62を備えない構成であってもよい。
【0056】
なお、従来のブレース材を用いた耐力壁構造では、パネル状の断熱材を、ブレース材を避けて配置できるように複雑な形状に加工する必要がある。そのため、断熱材の施工性の観点では、従来のブレース材を用いた耐力壁構造に比べて、本発明に係る耐力面材10を用いた耐力壁構造1の方が好ましい。また、従来のブレース材を用いた耐力壁構造では、ブレース材の屋内側が断熱材により覆われないため、ブレース材自体が熱橋となり得る。更に、従来のブレース材を用いた耐力壁構造では、複雑な形状に加工された断熱材同士を配設して断熱層を形成するため、断熱材同士の隙間など、断熱欠損部が形成され易い。そのため、断熱性の観点でも、従来のブレース材を用いた耐力壁構造に比べて、本発明に係る耐力面材10を用いた耐力壁構造1の方が好ましい。また更に、本発明に係る耐力面材10を用いた耐力壁構造1では、複雑な形状に断熱材を加工する必要がないため、断熱材同士の間の気密処理が容易である。また、従来のブレース材を用いた耐力壁構造では、ブレース材の両端接合部の近傍の気密処理に手間がかかるのに対して、本発明に係る耐力面材10を用いた耐力壁構造1では、ブレース材を用いないため、上記のようなブレース材の両端接合部の近傍の気密処理の手間を要しない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は耐力壁構造及び建物に関する。
【符号の説明】
【0058】
1:耐力壁構造
2:耐力体
2a:耐力体の上端部
2b:耐力体の下端部
2c:耐力体の中央部
10:耐力面材
11:本体部
11a:本体部の内面
11b:貫通孔
12:側板部
31:第1断熱材
32:第2断熱材
33:第3断熱材
41:第1気密材
42:第2気密材
51:上端接合プレート
52:下端接合プレート
61、62:板状補強フランジ部
70:外壁パネル
71:取付金具
80:内装材
100:建物
101:外周壁
101a:外皮層
101b:断熱層
101c:内皮層
102:ペントハウス部
103:ペントハウス部の外壁部
104:柱(骨組部材)
105:上梁(骨組部材)
106:下梁(骨組部材)
107:直交梁(骨組部材)
107a:直交梁の一端部
A:耐力体の幅方向
B:鉛直方向
C:屋内外方向
L:耐力体の鉛直方向長さ
La:上端部の鉛直方向長さ
Lb:下端部の鉛直方向長さ
Lc:中央部の鉛直方向長さ
X:骨組部材に囲まれた領域
X1:耐力体領域
X2:側方領域