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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083156
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
B62D25/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197516
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】前田 祥宏
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BC03
3D203BC08
3D203BC14
3D203CA57
3D203CB26
(57)【要約】
【課題】ストラットタワーの剛性を保つ排水路を構成するとともに、排水路における外部からの雨水等の浸入を防止する。
【解決手段】バルクヘッドフロント部200と、トーボード部100と、複数の部材が相互に結合されて構成されているストラットタワー部300と、を備えた車体前部構造Sにおいて、バルクヘッドフロント部200の車幅方向外側部に第1の排水口としての排水口DR1を備え、排水口DR1は、バルクヘッドフロント部200と、トーボード部100と、ストラットタワー部300を構成する複数の部材と、による閉断面CSに形成された排水路DWに接続され、排水路DWの車両下方側に、ホイールハウス部WHへ貫通した第2の排水口としての排水口DR2が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延在し、フロントガラス等からの水滴を受け、車幅方向外側に導くバルクヘッドフロント部と、車室の車両前方側車幅方向に延在し、前記車室と、前輪用サスペンションが収容されている車体前部と、を区切るトーボード部と、複数の部材が相互に結合されて構成され、前記前輪用サスペンションを支持するストラットタワー部と、を備えた車体前部構造において、
前記バルクヘッドフロント部の車幅方向外側部に第1の排水口が設けられ、
前記第1の排水口は、前記バルクヘッドフロント部と、前記トーボード部と、前記ストラットタワー部を構成する前記複数の部材と、による閉断面に形成された排水路に接続され、前記排水路の車両下方側に、タイヤが収められているホイールハウス部へ貫通した第2の排水口が形成されていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記第2の排水口は、車両の平面視、正面視および側面視において、前記第1の排水口と重複しない位置に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記第2の排水口の開口部面積は、前記第1の排水口の開口部面積よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車体前部には、車両前部の剛性を保つための骨格であるフレーム構造、内燃エンジンあるいは駆動モータ等の駆動ユニット、あるいは、前輪を支えるサスペンションおよびサスペンションを支持するストラットタワー等が収容されている。
【0003】
ストラットタワーには、車両走行に伴い車輪等から、捩れ方向、車両上下方向等の荷重が伝達される。そのため、ストラットタワーは、車両の操縦安定性、乗心地、安全性等を向上させるために、サスペンションから伝達される大きな荷重に耐えられる剛性が求められている。
【0004】
一方で、ストラットタワーの車両上方側には、フロントガラスからの雨水等の水滴を受けて車外へ排水するカウルトップパネルが配置されている。そして、雨水等の排水を確実に行うために、ストラットタワー周辺において排水路が確保されているが、車体前部においては、内燃エンジン自動車から電気自動車への移行を受けて、電気部品等の収容空間を確保するために、車体前部の空間を狭くすることが求められている。
【0005】
上述の要求に対して、例えば、特許文献1においては、エンジンルームを区画するダッシュパネルに取付けられ車両前方に延びるカウルフロントパネルと、ダッシュパネルの側部から車両前方に延びるダッシュサイドパネルと、ダッシュパネルとカウルフロントパネルとカウルサイドパネルとで囲まれたカウルボックスと、カウルボックスの下方でサスペンションを支持しダッシュパネルとダッシュサイドパネルとで囲まれる排水路をともに形成するストラットタワーと、ストラットタワーからカウルフロントパネルまで延びカウルボックスから排水路までの経路を成すエクステンションパネルと、を備える技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-117370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、排水経路を確保しストラットタワーの剛性を高めるために、エクステンションパネルを設ける必要がある。また、排水口から外部の雨水等が逆流してきた場合には、排水口から雨水等が噴出することによって、乗員の視野を遮る虞があるという課題があった。そして、逆流してきた雨水等がエンジンルーム内に飛散することによって、エンジンルーム内に設けられている車室内への通風孔を介して、車室内へ浸水する虞があるという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、ストラットタワーの剛性を保つ排水路を構成するとともに、排水路における外部からの雨水等の浸入を防止する車体前部構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、車幅方向に延在し、フロントガラス等からの雨水等を受け、車幅方向外側に導くバルクヘッドフロント部と、乗員室の車両前方側車幅方向に延在し、前記乗員室と、前輪用サスペンション等が収容されている車体前部と、を区切るトーボード部と、複数の部材が相互に結合されて構成され、前記前輪用サスペンションを支持するストラットタワー部と、を備えた車体前部構造において、前記バルクヘッドフロント部の車幅方向外側部に第1の排水口を備え、前記第1の排水口は、前記バルクヘッドフロント部と、前記トーボード部と、前記ストラットタワー部を構成する前記複数の部材と、による閉断面に形成された排水路に接続され、前記排水路の車両下方側に、タイヤが収められているホイールハウス部へ貫通した第2の排水口が形成されている車体前部構造を提案している。
【0010】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第2の排水口は、車両の平面視、正面視および側面視において、前記第1の排水口と重複しない位置に配設されている車体前部構造を提案している。
【0011】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第2の排水口の開口部面積は、前記第1の排水口の開口部面積よりも小さい車体前部構造を提案している。
【発明の効果】
【0012】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、ストラットタワーの剛性を保つ排水路を構成するとともに、排水路における外部からの雨水等の浸入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る車体前部構造を上方から見た斜視図である。
図2図1に示されるAA部を拡大して上方から見た斜視図である。
図3図2に示されるAA部を、ブラケットフロントサスロアを透視して上方から見た斜視図である。
図4図3に雨水等の排水経路を示し、正面から見た図3のB-B線に沿う断面図である。
図5図3に雨水等の浸入経路を示し、正面から見た図3のB-B線に沿う断面図である。
図6図2に示されるAA部を、ブラケットフロントサスロアを透視し、ストラットタワーからの荷重伝搬を示した上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1から図6を用いて、本実施形態に係る車体前部構造Sについて説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは、車体前部構造Sが装着される車両Vの前方(正面)を示し、矢印UPは正面視上方を示し、矢印LHは正面視左方を示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、車両Vの正面視での上下方向、正面視での前後方向、正面視での左右方向を示すものとする。
車両Vは、例えば、パワーユニットを駆動源とした電気自動車である。なお、車両Vは、例えば、内燃エンジンを有する車両あるいは、内燃エンジンとパワーユニットとの複数の駆動源を有するハイブリッド電気自動車であってもよい。
【0015】
<実施形態>
図1から図3を用いて、車両Vに備えられた、本実施形態に係る車体前部構造Sの構成について説明する。
【0016】
<車体前部構造Sの構成>
車体前部構造Sは、車両車幅方向において左右対称に構成されている。
車体前部構造Sは、図1に示すように、前輪10と、フレーム構造20と、パワーユニット部30と、トーボード部100と、バルクヘッドフロント部200と、ストラットタワー部300と、を含んで構成されている。ストラットタワー部300の車幅方向外側には、タイヤが収められている空間であるホイールハウス部WHが形成されている。また、バルクヘッドフロント部200の車両後部上方側には、フロントガラスFGが配設されている。
【0017】
フレーム構造20は、車体前部の剛性を保つ骨格であり、車体前部構造Sにおいて車体前部FSの外周部に配設されている。フレーム構造20には、高剛性の金属等の部材で形成された閉断面を有する鋼材が、車両上下方向および車両前後方向にそれぞれ設けられ、溶接等により相互に結合されている。
【0018】
パワーユニット部30は、前輪10を駆動する図示しないモータ、変速機、クラッチ、駆動軸等で構成された駆動装置である。パワーユニット部30は、フレーム構造20に囲まれてフレーム構造20に載置されて固定されている。
【0019】
(トーボード部100について)
トーボード部100は、車室としてのキャビンCAの車両前方側において車幅方向に延在し、キャビンCAと、前輪用サスペンション等が収容されている車体前部FSと、を区切る隔壁である。トーボード部100は、キャビンCAの車両前方側において車両上下方向に立ち上げられ、フレーム構造20に溶接等により結合されている。また、トーボード部100の車両前方側面の一部は、後述する排水構造DSを構成する閉断面CSをなしている。
【0020】
(バルクヘッドフロント部200について)
バルクヘッドフロント部200は、トーボード部100の車両上部前側に車幅方向に延在している。バルクヘッドフロント部200の車両後部上方側には、フロントガラスFGが配設されている。バルクヘッドフロント部200は、鋼板等の部材により形成され、トーボード部100に溶接等により結合されている。
図2に示すように、バルクヘッドフロント部200の車幅方向両側外側部には、略矩形に形成され、バルクヘッドフロント部200を車両上下方向に貫通して開口された第1の排水口としての排水口DR1が設けられている。バルクヘッドフロント部200の車幅方向両端部は、正面視においてL字状に車両上方側に向かって屈曲している。バルクヘッドフロント部200の車両上方側には、図示しないカウルトップパネルが、バルクヘッドフロント部200を覆うように配設されている。カウルトップパネルは、樹脂製の部材であり、フロントガラスFGの車両前方側に車両下方側に凹んだトレイ状に形成されている。
また、バルクヘッドフロント部200には、車幅方向中央部および車幅方向外側から排水口DR1に向かって下がる傾斜SLが設けられている。
【0021】
(ストラットタワー部300について)
ストラットタワー部300は、サスペンションを取付ける車体側の支えであり、トーボード部100の車両前方側の車幅方向両側に設けられている。ストラットタワー部300は、車幅方向上部外側から、車両下部内側に向けて傾斜を有した骨格であり、高剛性を有する金属等により形成されている。ストラットタワー部300は、車両上部外側において、フレーム構造20と結合している。
ストラットタワー部300は、複数の部材が結合されて構成されており、トップマウント部310と、ブラケットフロントサスロア320と、リインフォースサスフロント330と、リインフォースサスサイド340と、を含んで構成されている。
【0022】
トップマウント部310は、高剛性を有した鋼板等の部材で形成され、ストラットタワー部300の車両上方部を形成している。トップマウント部310の車両上方側面には、前輪用サスペンションの車両上方部を支持する、トップマウント部310を車両上下方向に貫通して開口された略円形の貫通孔が形成されている。トップマウント部310の車幅方向外側は、フレーム構造20に溶接等により結合されている。
【0023】
ブラケットフロントサスロア320は、高剛性を有した鋼板等の部材で形成され、ストラットタワー部300の車幅方向内側から車両内部前方側に回り込んで車両上下方向に延在している。ブラケットフロントサスロア320の車両上方側は、トップマウント部310と溶接等により結合されている。ブラケットフロントサスロア320の車両後方側は、トーボード部100およびバルクヘッドフロント部200に溶接等により結合されている。
【0024】
リインフォースサスフロント330は、ブラケットフロントサスロア320の車幅方向外側の剛性を補剛する車両上下方向に延在する剛性壁である。リインフォースサスフロント330は、高剛性を有した鋼板等の部材で形成されている。リインフォースサスフロント330は、ストラットタワー部300の車両後方側に配設され、車両上方部は、トップマウント部310に結合され、車両前部内側における車両上下方向の辺は、ブラケットフロントサスロア320に溶接等により結合されている。また、車両後部における車両上下方向の辺および車幅方向の辺は、トーボード部100およびバルクヘッドフロント部200に溶接等により結合されている。
図3に示すように、リインフォースサスフロント330の車両上方側面には、後述する排水構造DSとして、例えば、車幅方向に向かって凹型状の排水路DWが形成されている。
【0025】
リインフォースサスサイド340は、ブラケットフロントサスロア320の車両前方側の剛性を補剛する車両上下方向に延在する剛性壁である。リインフォースサスサイド340は、高剛性を有した鋼板等の部材で形成されている。リインフォースサスサイド340は、ストラットタワー部300の車両前方側に配設され、車両上方部は、トップマウント部310に結合され、車幅方向後方側は、ブラケットフロントサスロア320に溶接等により結合されている。
【0026】
また、ブラケットフロントサスロア320およびリインフォースサスサイド340が、車幅方向内側と車両前方側とを塞ぎ、トーボード部100およびリインフォースサスフロント330が車両後方側を塞ぐことによって、車体前部FSの内部は、ホイールハウス部WHと隔てられている。
【0027】
(排水構造DSについて)
排水構造DSは、図3に示すように、ドット状ハッチングで示すトーボード部100と、バルクヘッドフロント部200と、透視図として示すブラケットフロントサスロア320と、格子状ハッチングで示すリインフォースサスフロント330と、により構成されている。
具体的には、トーボード部100の車両前方側面と、バルクヘッドフロント部200の車両上方側面に形成されている排水口DR1と、ブラケットフロントサスロア320の車両上方側面および車幅方向内側面と、リインフォースサスフロント330の車幅方向内側面と、排水口DR2とホイールハウス部WHと、により構成されている。
排水構造DSには、図3における太破線で示す閉断面CSが形成されている。具体的には、閉断面CSは、トーボード部100における車両前方側面と、ブラケットフロントサスロア320における車両上方側面および車幅方向内側面と、リインフォースサスフロント330における車両上方面および車幅方向内側面と、により囲まれた空間として形成されている。
また、閉断面CSの内部には、排水路DWが形成されている。排水路DWは、リインフォースサスフロント330の車両上方側面から車幅方向内側面にかけて、例えば、凹形状の溝として形成され、排水口DR1の車両下方側から車幅方向内側に向かい、排水口DR2の車両上方側まで略直線状に形成されている。また、閉断面CSには、エンジンルーム内部に通じる開口部は設けられていない。
また、閉断面CSの車両下方側には、リインフォースサスフロント330を貫通しホイールハウス部WHに向かう排水口DR2が開口されている。排水口DR2は、車両の平面視、正面視および側面視において、排水口DR1と重複しない位置に配設されている。また、排水口DR2の開口部面積は、排水口DR1の開口部面積よりも小さい。
【0028】
<作用・効果>
上記のように構成された本実施形態に係る車体前部構造Sにおいて、図4図6を用いて、排水構造DSの排水作用および補剛作用について説明する。
排水構造DSは、排水口DR1と、閉断面CSと、排水路DWと、排水口DR2と、により構成されている。
【0029】
(排水について)
フロントガラスFG等に雨水等の水滴がかかり、車両前方側に流れ落ちてきた場合には、図4に示すように、矢印AR1に示す方向に雨水等は流れる。
フロントガラスFGから流れ落ちてきた雨水等は、図示しないカウルトップパネルを通り、バルクヘッドフロント部200の車両上方側面に滴下する。そして、バルクヘッドフロント部200に形成されている傾斜SLにより、バルクヘッドフロント部200に滴下した雨水等は、矢印AR2およびAR3に示すように、排水口DR1に向けて流れ込む。
排水口DR1に到達した雨水等は、矢印AR4に示すように、バルクヘッドフロント部200の車両下方側に設けられた閉断面CSに向けて流れ込む。さらに、閉断面CSに向けて流れ込んだ雨水等は、リインフォースサスフロント330の車両上方側に車幅方向に向かって形成された排水路DWに導かれ、矢印AR5から矢印AR6に示すように車両下方側に向けて流れ落ち、閉断面CSの車両下方部に設けられた排水口DR2から、ホイールハウス部WHに向けて排出される。
【0030】
(浸水防止について)
排水口DR2が閉断面CSの車両下方部に設けられることによって、雨水等の水滴が排水口DR2から浸入することを防いでいる。
ところが、図5に示すように、車両Vが大量の雨水等が溜まっている場所を走行して、前輪10がホイールハウス部WH内部に雨水等を巻き上げ、矢印BR1に示すように、排水口DR2から雨水等が逆流した場合には、逆流した雨水等は、矢印BR2に示す方向に流れ込む。
ここで、排水口DR2は、車両の平面視、正面視および側面視において、排水口DR1と重複しない位置に配設されている。また、排水口DR2の車両上方側には、閉断面CSが形成されている。そのため、排水口DR2から逆流した雨水等は、矢印BR3に示すように、閉断面CSを構成している車両上方側のバルクヘッドフロント部200の車両下方側面にあたり、車両下方側に滴下し、排水口DR2から排出される。
一方、逆流した雨水等が閉断面CSの内部で跳ね返り、矢印BR4に示す方向に逆流し排水口DR1から飛散した場合には、バルクヘッドフロント部200が有する傾斜SLによって、矢印BR5および矢印BR6に示すように、再び排水口DR1に向けて流れ込む。そして、閉断面CSの車両下方部に設けられた排水口DR2から、ホイールハウス部WHに向けて排出される。
また、排水口DR2から逆流した雨水等は、閉断面CS内部を通過するため、エンジンルーム内部には飛散しない。
また、排水口DR2の開口部面積を排水口DR1の開口部面積よりも小さくさせることによって、排水口DR2は、ホイールハウス部WHから逆流する雨水等の浸入量を制限するとともに、小動物等が、ホイールハウス部WHから排水口DR2に浸入することを制限している。
【0031】
(補剛について)
ストラットタワー部300には、車両Vの走行に伴う振動、捩れ、騒音等および衝突等が発生した場合に、衝突エネルギー等の、多様な方向を向いた荷重が伝達される。そのため、ストラットタワー部300は、車両の操縦安定性、乗心地、安全性等を向上させるために、大きな荷重に耐えられる構造となっており、ストラットタワー部300は、フレーム構造20に強固に結合されている。
【0032】
図6に示すように、ストラットタワー部300から伝達される荷重は、矢印CR1で示すように、トップマウント部310、ブラケットフロントサスロア320、リインフォースサスフロント330およびリインフォースサスサイド340を介して、フレーム構造20に伝達され、分散される。さらに、閉断面CSがトーボード部100およびバルクヘッドフロント部200に結合されていることによって、矢印CR2に示すように、ブラケットフロントサスロア320およびリインフォースサスサイド340を介して、トーボード部100およびバルクヘッドフロント部200に伝達され、分散される。
また、トーボード部100およびバルクヘッドフロント部200に伝達された荷重は、矢印CR3に示すように、フレーム構造20に伝達され、分散される。
また、リインフォースサスフロント330に設けられている排水路DWは、車両上下方向に向いたビードを形成している。そのため、排水路DWは、リインフォースサスフロント330の剛性を高めている。
また、開口部である排水口DR1および排水口DR2は、補剛構造においては脆弱部となる。そこで、開口部である排水口DR1と排水口DR2とが、重複しない位置に配設されていることによって、排水構造DSによる脆弱箇所を分散させている。
【0033】
以上、本実施形態に係る車体前部構造Sは、車幅方向に延在し、フロントガラスFG等からの雨水等を受け、車幅方向外側に導くバルクヘッドフロント部200と、乗員室としてのキャビンCAの車両前方側車幅方向に延在し、キャビンCAと、前輪用サスペンション等が収容されている車体前部FSと、を区切るトーボード部100と、複数の部材が相互に結合されて構成され、前輪用サスペンションを支持するストラットタワー部300と、を備えた車体前部構造Sにおいて、バルクヘッドフロント部200の車幅方向外側部に第1の排水口としての排水口DR1を備え、排水口DR1は、バルクヘッドフロント部200と、トーボード部100と、ストラットタワー部300を構成する複数の部材と、による閉断面CSに形成された排水路DWに接続され、排水路DWの車両下方側に、タイヤが収められているホイールハウス部WHへ貫通した第2の排水口としての排水口DR2が形成されている。
つまり、フロントガラスFGから流れ落ちてきた雨水等は、バルクヘッドフロント部200に形成されている傾斜SLにより、排水口DR1に向けて流れ込む。排水口DR1に到達した雨水等は、バルクヘッドフロント部200の車両下方側に設けられた閉断面CSに向けて流れ込む。雨水等は、リインフォースサスフロント330の車両上方側面に車幅方向に向かって形成された排水路DWに導かれ、車両下方側に向けて流れ落ちる。そして、排水構造DSは、閉断面CSの車両下方部に設けられた排水口DR2からホイールハウス部WHに向けて、雨水等を排出させることができる。そして、閉断面CSには、エンジンルーム内への開口部が設けられていないことによって、逆流した雨水等をエンジンルーム内に飛散させないため、通風孔を介して、車室内へ浸水することを防止することができる。
また、排水構造DSは、排水口DR2が閉断面CSの車両下方部に設けられていることによって、雨水等が排水口DR2から浸入することを防止することができる。また、バルクヘッドフロント部200と、トーボード部100と、ストラットタワー部300を構成する複数の部材と、による閉断面CSが構成されていることによって、ストラットタワー部300は、高い剛性を得ることができる。
そのため、ストラットタワーの剛性を保つ排水路を構成するとともに、排水路における外部からの雨水等の浸入を防止することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る車体前部構造Sは、排水口DR2は、車両Vの平面視、正面視および側面視において、排水口DR1と重複しない位置に配設されている。
つまり、排水口DR2は、排水口DR1と重複しない位置に配設されているため、ホイールハウス部WHからタイヤによって巻き上げられた雨水等が逆流した場合でも、排水口DR2から逆流した雨水等は、閉断面CSを構成している車両上方側のバルクヘッドフロント部200の車両下方側面に当たり、車両下方側に滴下する。そして、排水構造DSは、逆流した雨水等をエンジンルーム内に飛散させずに排水口DR2から排出させることができる。また、逆流した雨水等が閉断面CSの内部で跳ね返り、排水口DR1から飛散した場合には、バルクヘッドフロント部200が有する傾斜SLによって、逆流した雨水等は、再び排水口DR1に向けて流れ込む。そして、排水構造DSは、逆流した雨水等を閉断面CSの車両下方部に設けられた排水口DR2からホイールハウス部WHに向けて排出させることができる。
また、開口部である排水口DR1と排水口DR2とが、重複しない位置に配設されていることによって、排水構造DSは、排水構造DSにおける脆弱部を分散させることができる。
そのため、ストラットタワーの剛性を保つ排水路を構成するとともに、排水路における外部からの雨水等の浸入を防止することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る車体前部構造Sは、本実施形態に係る車体前部構造Sは、排水口DR2の開口部面積は、排水口DR1の開口部面積よりも小さい。
つまり、排水口DR2の開口部面積を排水口DR1の開口部面積よりも小さくさせることによって、ホイールハウス部WHから逆流する雨水等の浸入量を制限することができる。また、小動物等が、ホイールハウス部WHから排水口DR2に浸入することを制限することができる。また、閉断面CSによって形成されている補剛構造の面積を大きくすることによって、補剛構造の強度を向上させることができる。
そのため、ストラットタワーの剛性を保つ排水路を構成するとともに、排水路における外部からの雨水等の浸入を防止することができる。
【0036】
なお、本発明の実施形態として、閉断面CSの内部には、形成されている排水路DWは、リインフォースサスフロント330の車幅方向内側面に凹形状の溝として形成され、排水口DR1の車両下方側から車幅方向内側に向かい、排水口DR2の車両上方側まで略直線状に形成されるとして例示したが、リインフォースサスフロント330の剛性を高めるためにビードを複数本形成するようにしてもよい。また、ブラケットフロントサスロア320の車幅方向外側面に車両上下方向あるいは車両上下方向から車両前後方向に傾斜させて、排水路DWとしてビードを形成させてもよい。
【0037】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0038】
10;前輪
20;パワーユニット部
30;フレーム構造
100;トーボード部
200;バルクヘッドフロント部
300;ストラットタワー部
310;トップマウント部
320;ブラケットフロントサスロア
330;リインフォースサスフロント
340;リインフォースサスサイド
CA;キャビン(乗員室)
CS;閉断面
DR1;排水口
DR2;排水口
DW;排水路
FS;車体前部
WH;ホイールハウス
S;車体前部構造
V;車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6