(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083158
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】風力発電装置
(51)【国際特許分類】
F03D 13/25 20160101AFI20240613BHJP
F03D 80/50 20160101ALI20240613BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20240613BHJP
【FI】
F03D13/25
F03D80/50
B63B35/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197523
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 和範
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA26
3H178AA43
3H178BB71
3H178BB79
3H178CC22
3H178DD12Z
3H178DD61X
3H178DD67Z
(57)【要約】
【課題】メンテナンスが容易で、軽量化を図った風力発電装置を得る。
【解決手段】風を受けて回転するローターを備えた風車と、ローターの回転力を受けて発電する発電機と、風車を支持する支持部材と、支持部材を取り囲むように支持部材から離間して配置され、金属よりも比重の小さい材料で中空に形成された複数の浮体と、支持部材に連結され、浮体が着脱可能に取り付けられる浮体保持部材と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風を受けて回転するローターを備えた風車と、
前記ローターの回転力を受けて発電する発電機と、
前記風車を支持する支持部材と、
前記支持部材を取り囲むように前記支持部材から離間して配置され、金属よりも比重の小さい材料で中空に形成された複数の浮体と、
前記支持部材に連結され、前記浮体が着脱可能に取り付けられる浮体保持部材と、
を有する、
風力発電装置。
【請求項2】
前記浮体保持部材は、水面よりも上に配置され、
前記浮体は、上部分が水面上に露出するように前記浮体保持部材に取り付けられている、
請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記浮体保持部材は、環状部材と、前記支持部材と前記環状部材とを連結する連結部材と、を含んで構成されている、
請求項1または請求項2に記載の風力発電装置。
【請求項4】
前記浮体保持部材は、径の異なる複数の環状部材を有している、
請求項3に記載の風力発電装置。
【請求項5】
前記浮体は、拡縮可能であり、
前記浮体には、上部分に空気バルブが取り付けられている、
請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項6】
前記浮体を形成する前記材料は、加硫ゴムまたはエラストマー樹脂である、
請求項5に記載の風力発電装置。
【請求項7】
前記浮体は、前記支持部材の下面側にも取り付けられている、
請求項1に記載の風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置として、例えば、特許文献1に記載の風力発電装置がある。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の風力発電装置は、いわゆる浮体式洋上風力発電装置である。この浮体式洋上風力発電装置は、浮力を有する鋼鉄製の基礎を備えており、製造、設置、イニシャルコスト、メンテナンス等に課題を抱えている。
特に、メンテナンスに関しては、洋上での実施が困難な為、大型船等を用い、港まで曳航し、陸揚げする必要があり、多くの作業を必要としている。
【0006】
本開示は上記事実を考慮し、メンテナンスが容易で、軽量化を図った風力発電装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る風力発電装置は、風を受けて回転するローターを備えた風車と、前記ローターの回転力を受けて発電する発電機と、前記風車を支持する支持部材と、前記支持部材を取り囲むように前記支持部材から離間して配置され、金属よりも比重が小さい材料で中空に形成された複数の浮体と、前記支持部材に連結され、前記浮体が着脱可能に取り付けられる浮体保持部材と、を有する。
【0008】
第1の態様に係る風力発電装置は、ローターが風を受けて回転すると、ローターの回転力を受けて発電機が発電を行う。
【0009】
第1の態様に係る風力発電装置は、金属よりも比重が小さい材料で中空に形成された浮体で浮力を得ているため、浮力を有する鋼製の浮体を備えた風力発電装置よりも全体の質量を軽量化できる。
【0010】
複数の浮体は、夫々が浮体保持部材に着脱可能に取り付けられているため、部分単位、言い換えれば、浮体毎にメンテナンス(修理、交換)を行うことができる。また、浮体は、金属よりも比重の小さい材料で形成されているので、金属で形成された浮体よりもメンテナンス(修理、交換)が容易になる。
【0011】
なお、浮体保持部材に対し、複数の浮体を着脱可能としているので、浮体の数を調整して、浮力の調整を行うことも容易にでき、風車を搭載する基礎部材が水平となるように浮力のバランスをとることも容易にできる。
【0012】
第2の態様に係る風力発電装置は、第1の態様に係る風力発電装置において、前記浮体保持部材は、水面よりも上に配置され、前記浮体は、上部分が水面上に露出するように前記浮体保持部材に取り付けられている。
【0013】
第2の態様に係る風力発電装置では、各浮体は、少なくとも一部が水面上に位置し、かつ水面よりも上に配置された浮体保持部材に着脱可能に取り付けられているため、洋上にて、浮体のメンテナンス、及び交換を容易に行うことができ、曳航、及び陸揚げによるメンテナンス、及び交換に比較して作業が容易になる。
【0014】
第3の態様に係る風力発電装置は、第1の態様、または第2の態様に係る風力発電装置において、前記浮体保持部材は、環状部材と、前記支持部材と前記環状部材とを連結する連結部材と、を含んで構成されている。
【0015】
第3の態様に係る風力発電装置では、浮体を、環状部材、及び連結部材に取り付けることができる。
【0016】
第4の態様に係る風力発電装置は、第3の態様に係る風力発電装置において、前記浮体保持部材は、径の異なる複数の環状部材を有している。
【0017】
第4の態様に係る風力発電装置では、径の異なる複数の環状部材を有しており、各々の環部材に浮体が取り付けられているため、大きな浮力を得ることができる。
【0018】
第5の態様に係る風力発電装置は、第1の態様~第4の態様の何れか一つの態様に係る風力発電装置において、前記浮体は、拡縮可能であり、前記浮体には、上部分に空気バルブが取り付けられている。
【0019】
第5の態様に係る風力発電装置では、空気バルブを介して浮体の内部に空気を充填したり、内部の空気を排出することができる。浮体は、内部の空気を抜くことで縮小させることができ、これにより、浮体の運搬、着脱作業が容易になる。
また、空気バルブが、浮体の上部分に取り付けられているため、水上にて空気バルブへ空気ポンプのホース等を接続する作業が容易になる。
【0020】
第6の態様に係る風力発電装置は、第5の態様に係る風力発電装置において、前記浮体を形成する前記材料は、加硫ゴムまたはエラストマー樹脂である。
【0021】
第6の態様に係る風力発電装置では、浮体を形成する材料が加硫ゴムまたはエラストマー樹脂であるため、金属材料で形成された浮体に比較して軽量化でき、また、内部に空気を充填したり内部の空気を排出することで容易に拡縮できる。
【0022】
さらに、加硫ゴムまたはエラストマー樹脂は弾性変形するので、浮体に何らかの物体が当たったとしても塑性変形し難く、また、物体(波、浮遊物など)が当たった際の衝撃を吸収することもできる。
【0023】
第7の態様に係る風力発電装置は、第1の態様に係る風力発電装置において、前記浮体は、前記支持部材の下面側にも取り付けられている。
【0024】
第7の態様に係る風力発電装置では、浮体が、支持部材の下面側にも取り付けられているため、支持部材の下面側に取り付けられていない場合に比較して大きな浮力を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本開示の風力発電装置によれば、メンテナンスが容易となり、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係る風力発電装置を示す正面図である。
【
図2】本開示の第1の実施形態に係る風力発電装置のタワー上部側を示す側面図である。
【
図3】本開示の第1の実施形態に係る風力発電装置の支持部材、及び骨格を示す平面図である。
【
図5】本開示の第2の実施形態に係る風力発電装置のタワー基部周辺を示す断面図である。
【
図6】本開示の第2の実施形態に係る風力発電装置の滑り支承周辺を示す一部を断面にした斜視図である。
【
図7】本開示の第2の実施形態に係る風力発電装置に用いた滑り支承を示す断面図である。
【
図8】振動吸収体の水平変位と水平荷重曲線を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1の実施形態]
図1乃至
図4を用いて、本開示の第1の実施形態に係る風力発電装置10について説明する。
【0028】
図3に示すように、風力発電装置10は、一例として、平面視で円形の鋼製またはコンクリート製の支持部材12を備えている。
【0029】
図1、及び
図3に示すように、支持部材12の中心部には、タワー14が立設されている。支持部材12とタワー14とは、一例としてボルト、溶接等で固定されている。
【0030】
図2に示すように、タワー14の上部にはナセル16が設けられており、ナセル16には、ローター18の回転で発電する発電機20が収容されている。タワー14は、一例として中空構造であり、鋼材等で形成されている。タワー14の内部は、雨水、海水等が進入しないように密閉されている。
【0031】
上記タワー14、ナセル16、ローター18、発電機20に関しては、従来一般の構造のものを用いることができる。本実施形態では、ハブ18A、及びブレード18Bでローター18が構成されており、タワー14、ナセル16、ローター18で風車11が構成されている。
【0032】
図1、及び
図2に示すように、本実施形態の風車11は、一例として、プロペラ型と呼ばれる風車である。
【0033】
図3に示すように、支持部材12には、浮体保持部材24が取り付けられている。支持部材12と浮体保持部材24とは、一例としてボルト、溶接等で固定されている。
【0034】
浮体保持部材24は、支持部材12から放射方向(径方向外側)へ向けて延びる複数本(本実施形態では5本)の連結部材24Aを備え、各連結部材24Aの端部には円環状の大径環状部材24Bが固定されている。大径環状部材24Bの内側には、大径環状部材24Bよりも小径の小径環状部材24Cが配置されている。小径環状部材24Cは、連結部材24Aの長手方向中間部に固定されている。
【0035】
本実施形態では、支持部材12の中心と、大径環状部材24Bの中心と、小径環状部材24Cの中心とを一致させている。
【0036】
浮体保持部材24を構成する連結部材24A、大径環状部材24B、及び小径環状部材24Cは、一例として、鋼材等で形成することができる。浮体保持部材24は、鋼鉄製骨格、浮体支持部材、補強材などと呼ぶことができる。
【0037】
図1、及び
図3に示すように、本実施形態では、支持部材12の下部の中心に、鋼製の中空構造とされた浮体26が取り付けられている。
【0038】
支持部材12の下部、大径環状部材24Bの下部、及び小径環状部材24Cの下部には、周方向に沿って複数の弾性浮体28が配置されている。これらの弾性浮体28は、支持部材12の下部、大径環状部材24Bの下部、及び小径環状部材24Cの下部において、周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0039】
弾性浮体28は、中空体であり、使用時の形状(空気を充填した状態の形状)は、一例として球形である。なお、弾性浮体28の使用時の形状は球形に限定されず、円柱形状、中央部が膨らんだ樽形状、立方体形状等であってもよい。
【0040】
弾性浮体28を構成する材料は、弾性材料、一例として、加硫ゴム、ウレタン樹脂等の弾性を有する合成樹脂(エラストマー樹脂)であり、金属よりも比重の小さい材料である。弾性浮体28を構成する弾性材料には、補強用のコードや織物シート等が埋設されていてもよい。
【0041】
各弾性浮体28は、個別に交換が可能なように、支持部材12、及び浮体保持部材24に対して、一例として、チェーン、ロープ、バンド等の取付部材32を用いて着脱可能に取り付けられている。図示は省略するが、弾性浮体28は、チェーン、ロープ、バンド等に限らず、ボルト等を用いて取り付けられていてもよい。
なお、取付部材32は、弾性浮体28の着脱作業が、水上、例えば、支持部材12や浮体保持部材24の上で出来るように設けることが好ましい。
【0042】
弾性浮体28は、空気の充填量により拡縮可能、言い換えれば体積を変更することが可能である。
【0043】
図4に示すように、弾性浮体28には空気バルブ30が取り付けられており、空気バルブ30を介して弾性浮体28に空気を充填したり、弾性浮体28の内部の空気を外部に排出することができる。作業性を考慮し、空気バルブ30は、弾性浮体28の水面WFの上に露出している部分に設けることが好ましい。
【0044】
支持部材12、及び浮体保持部材24に取り付ける弾性浮体28の数、及び位置は、
図1、及び
図3に示す例に限らず、必要に応じて適宜変更可能である。
本実施形態では、洋上での風力発電装置10の使用状態において、弾性浮体28の少なくとも一部が水面WFより上側に露出するように、弾性浮体28の数、言い換えれば、浮力が決められている。
【0045】
図1に示すように、本実施形態の風力発電装置10は、従来の浮体式洋上風力発電装置と同様に、係留ライン34によって海底(図示省略)に係留することができる。
【0046】
なお、発電機20で発電された電力は、一例として、送電線36を介して陸地へ送電することができる。
【0047】
(作用、効果)
本実施形態の弾性浮体28は、構成する材料が、金属よりも比重の小さいゴム、合成樹脂等の弾性体であるため、金属材料を用いた浮体より軽量になる。本実施形態の風力発電装置10では、金属製の浮体で浮力を得ている風力発電装置に比較して、全体の重量を軽量化できる。これにより、ローターのサイズアップ、及び大型化が可能となり、発電量を増加させることも可能となる。
【0048】
単一の金属製の浮体が固定されている風力発電装置では、浮体のメンテナンスを行う場合や、浮体に不具合(例えば、亀裂、孔が空く等)が生じた場合は、曳航し、陸揚げしてメンテナンス、または修理する必要があり、メンテナンス、及び修理に多大な手間、及びコストが掛かる。また、金属製の浮体内に水が入った場合、浮力のバランスが崩れ、タワーが必要以上に傾く虞がある。
【0049】
一方、本実施形態の風力発電装置10では、複数の弾性浮体28を用いているので、フェイルセ―フが可能となる。例えば、何れかの弾性浮体28に不具合が生じた場合でも、浮力のバランスが大きく崩れることが抑制され、タワー14が必要以上に傾くことを抑制できる。
【0050】
複数の弾性浮体28は、夫々が浮体保持部材24に着脱可能に取り付けられているため、部分単位、言い換えれば、弾性浮体28毎でメンテナンス(修理、交換)を行うことができる。
【0051】
各弾性浮体28は、少なくとも一部が水面WFに露出しており、また、ボルト、チェーン、ロープ、バンド等の取付部材32を、水上、例えば、支持部材12や浮体保持部材24の上で弾性浮体28の着脱作業が出来るように設けることで、水上にて、不具合を生じた弾性浮体28をメンテナンスしたり、新たな弾性浮体28と交換することが容易となる。したがって、曳航、及び陸揚げによるメンテナンス、及び交換に比較して作業が容易になる。
さらに、弾性浮体28は、空気バルブ30を介して弾性浮体28の内部に空気を充填したり、内部の空気を排出することができる。弾性浮体28は、内部の空気を抜くことで縮小させることができ、これにより、弾性浮体28の運搬、着脱作業が容易になる。
また、空気バルブ30は、弾性浮体28の上部分に取り付けられているため、水上にて空気バルブ30へ空気ポンプのホース等を接続する作業が容易になる。
【0052】
弾性材料からなる弾性浮体28は、着脱可能であり、金属製の浮体に比較して軽量であるため、弾性浮体28を取り外して洋上で回転させることも容易である。例えば、弾性浮体28を回転させ、水に浸かっていた下部を上側にして水に浸かっていた部分を検査したり、下部の付着物の除去などのメンテナンスも容易になる。
【0053】
なお、弾性材料は弾性変形するので、弾性浮体28に何らかの物体が当たったとしても塑性変形し難く、また、物体(波、浮遊物など)が当たった際の衝撃を吸収することもできる。
【0054】
本実施形態の風力発電装置10では、弾性浮体28が着脱可能であるので、弾性浮体28の数を調整して、浮力の調整や浮力のバランスを取ることも容易である。また、タワー14を搭載する基礎部材が水平となるように浮力のバランスをとることも容易にできる。
【0055】
[第2の実施形態]
図5~
図8を用いて、本開示の第2の実施形態に係る風力発電装置10について説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0056】
図5に示すように、本実施形態の風力発電装置10では、タワー14が、滑り支承110を介して支持部材12の上に設けられている。
【0057】
本実施形態のタワー14は、底部がタワーベース板120に固定されている。
図5~
図7に示すように、滑り支承110は、タワーベース板120に取り付けられる支承部130と、支持部材12に取り付けられ支承部130に当接し支承部130を支持する滑り板140と、を含んで構成されている。
【0058】
滑り支承110は、タワーベース板120と支持部材12との間に設置される免震装置として用いることができる。
滑り支承110を備えた免震装置は、風により、タワー14に横からの曲げ力が作用した際に、支承部130と滑り板140とを相対的に滑らせることができる。また、タワーベース板120に固定されたタワー14は、滑り支承110によって免震性能を与えられる。
【0059】
図6、及び
図7に示すように、タワーベース板120には、底面122にボルト孔125が形成され、後述するように支承部130のフランジ131がボルト接合される。
【0060】
(支承部)
支承部130は、タワー14を支え続ける部材である。支承部130は、ローター18、ナセル16、タワー14、タワーベース板120等の荷重を支持部材12に伝える部材である。支承部130は、タワーベース板120の底面122に取り付けられるフランジ131と、フランジ131の下部に形成され、振動を吸収する振動吸収体132と、振動吸収体132の下部に形成され滑り板140の滑り面141と当接する滑り材133とを含んで構成されている。
【0061】
フランジ131にはボルト挿通孔135が形成され、フランジ131とタワーベース板120とがボルト138で接合されている。フランジ131と、振動吸収体132及び滑り材133とは相互に鉛直方向に接合されている。振動吸収体132は、ゴム132aと鋼板132bとを順に積層した積層ゴムで形成されている。
【0062】
(滑り板)
滑り板140は、物が表面を滑る板材であり、表面には支承部130の滑り材133が当接する滑り面141が形成されている。滑り面141の表面にはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等が焼結コーティングされている。また滑り板140は支承部130と接合されておらず、水平方向の力が作用した場合、支承部130の滑り材133は滑り面141を滑り可能となる。
【0063】
図6に示すように、滑り板140は、四角形に形成されている。
図6、及び
図7に示すように、滑り板140の四隅にはボルト挿通孔145が形成され、支持部材12にはボルト孔155が形成されている。滑り板140は、支持部材12にボルト158で固定されている。
【0064】
図5、及び
図6に示すように、風力発電装置10は、ダンパー160と、変位規制部材162とを備えている。
【0065】
支持部材12の上面には、滑り板140の各辺と対向した位置にダンパー160が設置されている。ダンパー160は、タワーベース板120の水平方向の揺れを抑制する減衰力を発生する。言い換えれば、ダンパー160は、減衰力を発生する。ダンパー160としては、オイルダンパー、空気ダンパー、減衰率の大きなゴム等の粘弾性体を用いることができ、特に形式は問わない。
【0066】
支持部材12とタワーベース板120とは、支持部材12とタワーベース板120との相対変位を規制する変位規制部材162で連結されている。変位規制部材162は、一例としてゴムで被覆した金属製のチェーンを挙げることができ、タワーベース板120の必要以上の変位を規制するストッパの役目を有している。なお、変位規制部材162の形式は特に問わず、一例として、支持部材12に固定され、タワーベース板120の端部から水平方向に離間した位置に設けたブロック状のものであってもよい。
【0067】
図5に示すように、タワーベース板120の外周部分と支持部材12の上面とは、可撓性を有する材料からなる防水カバー164で接続されており、滑り支承110、ダンパー160、及び変位規制部材162等に水がかからないようにしている。
【0068】
(作用)
風力発電装置10は、構造上、ローター18が風を受けると、タワー14の基部で曲げが発生し、かつ風の影響から繰り返し荷重を受けることになる。繰り返し荷重は、疲労破壊の原因となる。
タワー14の基部の疲労破壊を解決する手段として、タワー構造の剛性を上げることが考えられるが、部材厚の増加や重量増加により、コストアップとなってしまう。また、疲労破壊発生後の部材交換には大規模な重機等が必要となり、初期設置時相当の非常に高額なメインテナンスコストが発生してしまう。さらに、部分的な補修は新たな強度的弱点部が発生するだけであり、同様な不具合が継続して発生するため、本質的な対策とはなり得ない。
【0069】
本実施形態の風力発電装置10では、ローター18が風を受け、タワー14の上部に水平方向の外力が入力されると、タワー14を搭載したタワーベース板120と支持部材12との間に水平変位が生じて、タワー14の基部に曲げ応力が生じ難くなる。タワー14の基部に曲げ応力が生じ難くなることで、タワー14の耐久性を向上させることができる。
また、タワー14の耐久性が向上することで、ローター18を大型化し、発電量を増大させることも可能となる。
【0070】
なお、変位が小さな場合は振動吸収体132がせん断変形することにより変位エネルギーを吸収し、変位が大きくなると、支承部130の滑り材133と滑り板140の滑り面41との間の静摩擦限界を超え、支承部130が滑り板140の上を滑る。
【0071】
図8は、支承部130の振動吸収体(積層ゴム部)132の水平変位と水平荷重曲線を示しており、滑りだす前の低荷重領域では、支承部130の積層ゴム部が弾性変形をし、常にタワー14が移動している状態を回避可能となる。支承部130の積層ゴム部の弾性率は、ゴム材質、製品形状で調整することが可能である。
ちなみに、積層ゴム部の弾性率=せん断弾性係数×ゴム部有効面積/ゴム層厚である。
【0072】
なお、ダンパー160は、タワーベース板120の水平方向の揺れを抑制し、変位規制部材162は、タワーベース板120の必要以上の変位を規制する。
【0073】
本実施形態では、単一の滑り支承110でタワー14を支持したが、タワー14は、複数の滑り支承110で支持してもよい。
【0074】
[その他の実施形態]
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0075】
上記実施形態の浮体保持部材24は、大径環状部材24B、及び小径環状部材24Cの径の異なる2つの環状部材を備えていたが、何れか一方だけでもよく、さらに、径の異なる別の環状部材を追加してもよい。
【0076】
上記実施形態では、弾性浮体28の数を調整して、浮力の調整を調整したが、弾性浮体28へ充填する空気の量を調整し、弾性浮体28の体積を調整することで浮力の調整を行うことも可能である。
【0077】
上記実施形態では、支持部材12の下部に弾性浮体28が設けられていたが、弾性浮体28必要に応じて支持部材12の下部に設ければよく、支持部材12の下部に弾性浮体28を設けなくてもよい。
【0078】
弾性浮体28は、大径環状部材24B、及び小径環状部材24Cの下部に設けることに限らず、連結部材24Aの下部に設けてもよい。
【0079】
第2の実施形態では、滑り支承110でタワー14を支持したが、例えば、タワー14を、支持部材12の上に滑り板を有していない通常の免震装置(一例として、上記実施形態の支承部130)で支持してもよい。
【0080】
本実施形態の風車11は、プロペラ型と呼ばれる水平軸風車であったが、風車11の形式は本実施形態のものに限らず、垂直軸風車等、他の形式のものであってもよい。
【符号の説明】
【0081】
10:風力発電装置、11:風車、12:支持部材、14:タワー(風車)、16:ナセル(風車)、18:ローター(風車)、20:発電機(風車)、24:浮体保持部材、24A:連結部材(浮体保持部材)、24B:大径環状部材(環状部材、浮体保持部材)、24C:小径環状部材(環状部材、浮体保持部材)、28:弾性浮体、30:空気バルブ、32:取付部材。