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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083165
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】水上装置及び水上装置制御方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 39/00 20060101AFI20240613BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20240613BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20240613BHJP
   B63B 35/44 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B63B39/00
F03D13/25
B63B35/00 T
B63B35/44 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197530
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 直樹
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA26
3H178AA43
3H178BB41
3H178DD61
(57)【要約】
【課題】水上装置の支持部材に支持された構造物が水面の上下動によって損傷を受けることを抑制できる水上装置を得る。
【解決手段】水上装置(風力発電装置10)は、構造物(風車11)を支持する支持部材12と、支持部材12に取り付けられ、給気により拡大し排気により縮小する1つ又は複数の拡縮浮体(弾性浮体28)と、拡縮浮体が水面下に位置するまで拡縮浮体から排気すること、及び、拡縮浮体の一部が水面上に現れるまで拡縮浮体に給気すること、を行う給排気装置と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を支持する支持部材と、
前記支持部材に取り付けられ、給気により拡大し排気により縮小する1つ又は複数の拡縮浮体と、
前記拡縮浮体が水面下に位置するまで前記拡縮浮体から排気すること、及び、前記拡縮浮体の一部が水面上に現れるまで前記拡縮浮体に給気すること、を行う給排気装置と、
を有する水上装置。
【請求項2】
前記構造物は、
風を受けて回転するロータを備え、前記支持部材に支持される風車と、
前記ロータの回転力を受けて発電する発電機と、
を含んでいる請求項1に記載の水上装置。
【請求項3】
前記構造物が設置された場所の気象データを取得する気象データ取得装置、
を有し、
前記給排気装置は、前記気象データ取得装置で取得した気象データに応じて、前記拡縮浮体からの排気、及び前記拡縮浮体への給気を行うように前記給排気装置を制御する、請求項2に記載の水上装置。
【請求項4】
前記気象データ取得装置で取得した気象データに応じて、前記拡縮浮体の上下動が所定範囲を超えると予測される場合に前記拡縮浮体から排気し、前記上下動が前記所定範囲に回復すると予想される場合に拡縮浮体に給気するように前記給排気装置を制御する制御装置、を有する請求項3に記載の水上装置。
【請求項5】
複数の前記拡縮浮体を備え、
前記給排気装置は、複数の前記拡縮浮体に対し排気及び給気を行う、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の水上装置。
【請求項6】
構造物を支持する支持部材と、
前記支持部材に取り付けられ、給気により拡大し排気により縮小する1つ又は複数の拡縮浮体と、
前記構造物が設置された場所の気象データを取得する気象データ取得装置と、
前記拡縮浮体から排気すること、及び、前記拡縮浮体に給気すること、を行う給排気装置と、
を有する水上装置に対し、
前記気象データ取得装置で取得した気象データに基づき、前記給排気装置により、前記拡縮浮体が水面下に位置するまで前記拡縮浮体から排気を行い、前記拡縮浮体の一部が水面上に現れるまで前記拡縮浮体に給気を行う、水上装置制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は、水上装置及び水上装置制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロータ、ナセルを搭載したタワーを中心としてタワー基部に浮力室を設け、タワー基部の水平方向に鋼管製の放射梁を設け、放射梁の先端を結ぶ鋼管製の外周梁を設けた、浮体式洋上風力発電装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-172211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水上に設けられる水上装置では、水面の上下動によって水上装置も上下動する。水上装置の支持部材に支持された構造物が、この上下動により損傷を受けることを抑制することが望まれる。
【0005】
本開示の目的は、水上装置の支持部材に支持された構造物が水面の上下動によって損傷を受けることを抑制できる水上装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様の水上装置では、構造物を支持する支持部材と、前記支持部材に取り付けられ、給気により拡大し排気により縮小する1つ又は複数の拡縮浮体と、前記拡縮浮体が水面下に位置するまで前記拡縮浮体から排気すること、及び、前記拡縮浮体の一部が水面上に現れるまで前記拡縮浮体に給気すること、を行う給排気装置と、を有する。
【0007】
この水上装置では、支持部材が構造物を支持している。複数の拡縮浮体は、支持部材に取り付けられている。給排気装置は、拡縮浮体が水面下に位置するまで拡縮浮体から排気する。たとえば、水面の上下動が所定範囲を超えると予測される場合に、拡縮浮体を水面下に位置させることで、水面の上下動に伴う支持部材の上下動を抑制できる。支持部材の上下動を抑制することで、支持部材に支持された構造物の損傷を抑制できる。
【0008】
また、給排気装置は、拡縮浮体の一部が水面上に現れるまで拡縮浮体に給気する。これにより、たとえば、水面に対する拡縮浮体の上下動が所定範囲に回復すると予想される場合は、拡縮浮体を元の位置に戻すことができる。
【0009】
第二態様では、第一態様の水上装置において、前記構造物は、風を受けて回転するロータを備え、前記支持部材に支持される風車と、前記ロータの回転力を受けて発電する発電機と、を含んでいる。
【0010】
構造物は、風車と発電機を含んでいる。このため、風車のロータが風を受けて回転すると、発電機がロータの回転力を受けて発電する。
【0011】
第三態様では、第二態様の水上装置において、前記構造物が設置された場所の気象データを取得する気象データ取得装置、を有し、前記給排気装置は、前記気象データ取得装置で取得した気象データに応じて、前記拡縮浮体からの排気、及び前記拡縮浮体への給気を行うように前記給排気装置を制御する。
【0012】
気象データ取得装置は、構造物が設置された場所の気象データを取得する。この予測に基づいて、給排気装置は、拡縮浮体からの排気、及び拡縮浮体への給気を行うので、水面の変動を検知するためのセンサが不要である。
【0013】
第四態様では、第三態様の水上装置において、前記気象データ取得装置で取得した気象データに応じて、前記拡縮浮体の上下動が所定範囲を超えると予測される場合に前記拡縮浮体から排気し、前記上下動が前記所定範囲に回復すると予想される場合に拡縮浮体に給気するように前記給排気装置を制御する制御装置、を有する。
【0014】
制御装置は、気象データ取得装置で取得した気象データに応じて、水面変動に応じた拡縮浮体の上下動が所定範囲を超えると予測される場合に拡縮浮体から排気するように給排気装置を制御するので、拡縮浮体の浮力を小さくする操作が自動で行われる。また、制御装置は、気象データ取得装置で取得した気象データに応じて、拡縮浮体の上下動が所定範囲に回復すると予想される場合に拡縮浮体に給気するように給排気装置を制御するので、拡縮浮体の浮力を大きくする操作が自動で行われる。
【0015】
第五態様では、第一~第四のいずれか一態様の水上装置において、複数の前記拡縮浮体を備え、前記給排気装置は、複数の前記拡縮浮体に対し排気及び給気を行う。
【0016】
複数の拡縮浮体を備えるので、1つの拡縮浮体を備える場合と比較して、大きな浮力が得られる。給排気装置は、複数の拡縮浮体に対し排気及び給気を行うので、複数の拡縮浮体で浮力の調整ができる。
【0017】
第六態様の水上装置制御方法では、構造物を支持する支持部材と、前記支持部材に取り付けられ、給気により拡大し排気により縮小する1つ又は複数の拡縮浮体と、前記構造物が設置された場所の気象データを取得する気象データ取得装置と、前記拡縮浮体から排気すること、及び、前記拡縮浮体に給気すること、を行う給排気装置と、を有する水上装置に対し、前記気象データ取得装置で取得した気象データに基づき、前記給排気装置により、前記拡縮浮体が水面下に位置するまで前記拡縮浮体から排気を行い、前記拡縮浮体の一部が水面上に現れるまで前記拡縮浮体に給気を行う。
【0018】
この水上装置制御方法における制御対象である水上装置では、支持部材が構造物を支持している。複数の拡縮浮体は、支持部材に取り付けられている。気象データ取得装置は、構造物が設置された場所の気象データを取得する。この予測に基づいて、給排気装置により、拡縮浮体が水面下に位置するまで拡縮浮体から排気を行う。これにより、水面の上下動に伴う支持部材の上下動を抑制できる。支持部材の上下動を抑制することで、支持部材に支持された構造物の損傷を抑制できる。しかも、拡縮浮体に対する給排気の手動操作が不要である。
【0019】
また、制御装置により、拡縮浮体の一部が水面上に現れるまで拡縮浮体に給気を行う。これにより、水面に対する拡縮浮体の位置を元の状態に戻すことができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示の技術では、水上装置の支持部材に支持された構造物が水面の上下動によって損傷を受けることを抑制できる水上装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は第一実施形態の風力発電装置を示す正面図である。
図2図2は第一実施形態の風力発電装置を示す側面図である。
図3図3は第一実施形態の風力発電装置を示す平面図である。
図4図4は第一実施形態の風力発電装置を示すブロック図である。
図5図5は第一実施形態の風力発電装置のコンピュータの構成図である。
図6図6は第一実施形態の風力発電装置における制御の一例を示すフローチャートである。
図7図7は第一実施形態の風力発電装置を浮体が水面下に位置している状態で示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第一実施形態]
【0023】
図1図11を用いて、本開示の第一実施形態の風力発電装置10について説明する。風力発電装置10は、本開示の技術の水上装置の一例である。
【0024】
図3に示すように、風力発電装置10は、一例として、平面視で円形の鋼製またはコンクリート製の支持部材12を備えている。支持部材12は、本開示の技術の支持部材の一例である。
【0025】
図1、及び図3に示すように、支持部材12の中心部には、タワー14が立設されている。支持部材12とタワー14とは、一例としてボルト、溶接等で固定されている。
【0026】
図2にも示すように、タワー14の上部にはナセル16が設けられている。ナセル16には、ロータ18の回転で発電する発電機20が収容されている。タワー14は、一例として中空構造であり、鋼材等で形成されている。タワー14は、内部に雨水、海水等が進入しないように密閉されている。ロータ18は、中心のハブ18Aと、このハブ18Aから放射状に延在する複数のブレード18Bを有している。タワー14、ナセル16、及びロータ18で風車11が構成されている。すなわち、支持部材12の中心部に風車11が支持されている構造である。
【0027】
図1、及び図2に示すように、本参考例の風車11は、一例として、ハブ18Aにブレード18Bが設けられたプロペラ型と呼ばれる水平軸風車である。
【0028】
図3に示すように、支持部材12には、浮体支持部24が取り付けられている。支持部材12と浮体支持部24とは、一例としてボルト、溶接等で固定されている。
【0029】
浮体支持部24は、支持部材12から放射方向(径方向外側)へ向けて延びる複数本(本実施形態では5本)の連結部材24Aを備えている。各連結部材24Aの端部には円環状の大径環状部材24Bが固定されている。大径環状部材24Bの内側には、大径環状部材24Bよりも小径の小径環状部材24Cが配置されている。小径環状部材24Cは、連結部材24Aの長手方向中間部に固定されている。
【0030】
本実施形態では、支持部材12の中心と、大径環状部材24Bの中心と、小径環状部材24Cの中心とを一致させている。
【0031】
浮体支持部24を構成する連結部材24A、大径環状部材24B、及び小径環状部材24Cは、一例として、鋼材等で形成することができる。浮体支持部24は、鋼鉄製骨格、弾性浮体支持部材、補強材などと呼ぶことができる。
【0032】
図1及び図3に示すように、本実施形態では、支持部材12の下部の中心に、鋼製の中空構造とされた剛性浮体26が取り付けられている。
【0033】
支持部材12の下部、大径環状部材24Bの下部、及び小径環状部材24Cの下部には、周方向に沿って複数の弾性浮体28が配置されている。弾性浮体28は、開示の技術における拡縮浮体の一例である。これらの弾性浮体28は、支持部材12の下部、大径環状部材24Bの下部、及び小径環状部材24Cの下部において、周方向に沿って等間隔に配置されている。すなわち複数の弾性浮体28は、支持部材12を取り囲む位置に配置されている。
【0034】
本開示の技術において、弾性浮体28は拡縮浮体の一例である。拡縮浮体としては、弾性を有していなくても、給気により拡大し、排気により縮小するように形成された部材であればよい。たとえば、薄膜の樹脂によって袋状に形成された部材(袋体)でもよい。また、有底の筒状で、外周面の一部が蛇腹状に形成された部材であってもよい。さらには、シリンダの内部をピストンが移動する部材であってもよい。
【0035】
また、図示の例では、弾性浮体28は上下には1段で配置されているが、上下に複数段で配置される構成でもよい。
【0036】
弾性浮体28は、中空体であり、使用時の形状(空気を充填した状態の形状)は、一例として球形である。なお、弾性浮体28の使用時の形状は球形に限定されず、円柱形状、中央部が膨らんだ樽形状、立方体形状等であってもよい。
【0037】
弾性浮体28を構成する材料は、弾性体、一例として、ゴム、ウレタン樹脂等の弾性を有する合成樹脂(エラストマー樹脂)であり、金属よりも比重の軽い材料である。弾性浮体28を構成する弾性材料には、補強用のコードや織物シート等が埋設されていてもよい。
【0038】
各弾性浮体28は、個別に交換が可能なように、支持部材12、及び浮体支持部24に対して、一例として、チェーン、ロープ、バンド等の取付部材32を用いて着脱可能に取り付けられている。図示は省略するが、弾性浮体28は、チェーン、ロープ、バンド等に限らず、ボルト等を用いて固定してもよい。
【0039】
なお、取付部材32は、弾性浮体28の着脱作業が、水上、例えば、支持部材12や浮体支持部24の上で出来るように設けることが好ましい。
【0040】
弾性浮体28は、空気の給排により拡縮可能、言い換えれば体積を変更することが可能である。より具体的には、弾性浮体28は、給気により拡大して体積が増加し、排気により縮小して体積が減少する。
【0041】
図4に示すように、弾性浮体28には切替装置214が取り付けられている。切替装置214により、後述するエアタンク208から弾性浮体28が給気される状態、及び真空タンク212に向けて弾性浮体28から排気される状態、を切り替えることができる。さらに、切替装置214を閉じることで、弾性浮体28を密閉できる。
【0042】
支持部材12、及び浮体支持部24に取り付ける弾性浮体28の数、及び位置は、図1及び図3に示す例に限らず、必要に応じて適宜変更可能である。本実施形態では、水上での風力発電装置10の使用状態において、弾性浮体28の少なくとも一部が水面WFより上側に露出するように、弾性浮体28の数、言い換えれば、浮力が決められている。
【0043】
図1に示すように、本実施形態の風力発電装置10は、従来の浮体式洋上風力発電装置と同様に、係留ライン34によって海底(図示省略)に係留することができる。
【0044】
さらに、本実施形態の風力発電装置10では、図4に示すように、気象データ取得装置252を有している。気象データ取得装置252は、風力発電装置10が設置された場所の気象データを取得する。特に、本実施形態の風力発電装置10では、風力発電装置10の周囲の水面変動及び風車11の傾斜が所定の範囲を超えるような場合に、これを予測することに有効な気象データを取得する。一例として、台風等による暴風雨や地震等による津波を挙げることができる。気象データ取得装置252は、たとえば、外部のサーバ(天気予報の情報を提供しているサーバ)等から気象データを取得する構成を採り得る。
【0045】
図1に示すように、タワー14の内側又は外側には、各種の機器254が取り付けられている。後述するように、弾性浮体28から排気されることによって、風力発電装置10の位置が下がった場合でも、これらの機器254が水没することがないように、取り付けの高さ位置が設定されている。
【0046】
発電機20で発電された電力は、一例として、送電線36を介して陸地等にある電力供給先へ送電することができる。
【0047】
さらに、本実施形態の風力発電装置10は、図4に示すように、充電器202、制御装置204、エアコンプレッサ206、エアタンク208、真空ポンプ210及び真空タンク212を有している。また、弾性浮体28のそれぞれに対応して、切替装置214が設けられている。充電器202、制御装置204、エアコンプレッサ206、エアタンク208、真空ポンプ210、真空タンク212及び切替装置214によって、給排気装置200が構成されている。
【0048】
エアコンプレッサ206で生成された圧縮空気は、エアタンク208へ送られる。真空ポンプ210は、真空タンク212を吸引し、真空タンク212の内圧を負圧にすることができる。
【0049】
切替装置214は、エアタンク208及び真空タンク212のいずれか一方と選択的に接続され、対応する弾性浮体28に、給気(エアタンク208と接続した場合)又は排気(真空タンク212と接続した場合)を切り替えることができる。さらに、エアタンク208及び真空タンク212のいずれとも接続されず、弾性浮体28を密閉することも可能である。
【0050】
エアタンク208には圧力計216が、真空タンク212には圧力計218がそれぞれ設けられている。また、弾性浮体28のそれぞれにも、圧力計220が備えられている。
【0051】
制御装置204は、圧力計216によって検知された圧力値から、エアタンク208が所定の内圧(正圧)となるようにエアコンプレッサ206を制御する。また、制御装置204は、圧力計218によって検知された圧力値から、真空タンク212が所定の内圧(負圧)となるように真空ポンプ210を制御する。
【0052】
さらに、制御装置204は、圧力計218によって検知された圧力値から、対応する弾性浮体28のそれぞれにおいて、真空タンク212へ排気すること、及びエアタンク208から給気を受けること、の一方が行われるように、切替装置214を制御する。
【0053】
充電器202は、発電機20で発電された電力を充電する。この充電器202の電力は、制御装置204に供給される。さらに、エアコンプレッサ206、真空ポンプ210、切替装置214等、電力を必要とする各要素に、充電器202から電力供給線を通じて、電力が供給される。
【0054】
図5には、第一実施形態において、各弾性浮体28への給排気を制御するコンピュータ54の内部構成が示されている。
【0055】
コンピュータ54は、プロセッサ56、メモリ58、ストレージ60、表示部62、入力部64、受付部66及び通信部68を有している。
【0056】
ストレージ60には、コンピュータ54を制御装置として機能させるための制御プログラム70が記憶されている。この制御プログラム70がメモリ58上で展開され、さらにプロセッサ56において実行されることにより、コンピュータ54は制御装置として機能する。本願の開示の技術では、制御プログラム70は、各弾性浮体28に対し給排気を行う給排気プログラムを含んでいる。
【0057】
表示部62は、たとえばディスプレイ及び表示ランプ等である。表示部62は、コンピュータ54の状態や、このコンピュータ54に接続された各種機器の状態等を表示する。入力部64は、たとえばキーボード、マウス及びスイッチ等である、入力部64は、作業者からコンピュータ54に対する各種の入力を受け付ける。受付部66は、後述するように、弾性浮体28への給排気を実行する指示を受け付ける。実質的に、入力部64の一部が受付部66の機能を有するように構成できる。表示部62をタッチパネルとして構成し、入力部64及び受付部66を兼ねるようにしてもよい。表示部62、入力部64及び受付部66は、たとえば陸上の管理センター等に設置され、有線又は無線で、プロセッサ56、メモリ58、ストレージ60等と接続されている。
【0058】
通信部68は、圧力計216、218、220と通信し、これらの圧力計とデータの送受信を行う。また、通信部68は、エアコンプレッサ206、真空ポンプ210及び切替装置214と通信し、これらの装置を制御する信号の送受信を行う。
【0059】
プロセッサ56では、圧力計220で検知された圧力のデータから、波WVの向き、高さ及び速さを解析することが可能である。この解析は、たとえば、あらかじめメモリ58に格納されているデータベースに基づいて行うことが可能である。さらには、たとえば、風力発電装置10が水上に設置された後の検知データを蓄積し、機械学習により波WVの向き、高さ及び速さを解析するようにしてもよい。
【0060】
通信部68は、エアコンプレッサ206、真空ポンプ210及び切替装置214と通信し、これらの装置を制御する信号の送受信を行う。
【0061】
プロセッサ56では、気象データ取得装置252で取得した気象データから、水面の液面変動(上下動)及び風車11の傾きを予測することが可能である。
【0062】
本開示の技術では、制御装置204は、弾性浮体28から排気する場合は、弾性浮体28の浮力が低下し、弾性浮体28が水面WFの下に位置するまで排気するように切替装置214を制御する。また、制御装置204は、弾性浮体28に給気する場合は、弾性浮体28の一部が水面WFの上に現れるまで給気するように切替装置214を制御する。
【0063】
次に、本実施形態の動作及び作用を説明する。
【0064】
本実施形態では、図6に示すフローに従い、制御装置204が、弾性浮体28のそれぞれに対し給排気を行う。
【0065】
制御装置204は、ステップS250において、気象データ取得装置252により、将来の気象データを取得する。この気象データの取得は、たとえば、一定の時間毎に定期的に行う。そして、制御装置204は、ステップS252において、気象データ取得装置252により取得された気象データから、所定の時間範囲(たとえば3時間)での風力発電装置10の周囲の水面の上下動を、時刻の関数として予測する。また、気象データ取得装置252は、緊急の気象に関する警報、注意報等を含む情報が発令された場合には、これらの情報のデータも取得する。
【0066】
ステップS254では、制御装置204は、水面の上下動が、所定の範囲を超えていると予測した時間帯がある場合に、この時間帯では弾性浮体28から排気されている状態が維持されるように切替装置214を制御する。これにより、弾性浮体28の浮力が小さくなるので、図7に示すように、風力発電装置10が全体として降下している状態が維持される。弾性浮体28の全体が水面WFよりも下に位置している状態になることで、弾性浮体28は水面の上下動の影響を受けづらくなる。このため、支持部材12の上下動が抑制される。
【0067】
なお、ステップS254における切替装置214の制御は、上記した一定の時間範囲で行う。
【0068】
また、このように弾性浮体28の全体が水面WFよりも下に位置している状態であっても、タワー14の内側及び外側に配置された各種の機器254は水面WFよりも下に位置することがないように、複数の弾性浮体28による浮力が調整されている。
【0069】
一定の時間範囲を経過すると、制御装置204は、ステップS256に移行する。ステップS256では、エアタンク208から弾性浮体28に給気されている状態(所定の空気圧の状態)となるように、切替装置214を制御する。これにより、弾性浮体28の浮力が大きい状態となり、弾性浮体28の一部が水面WFの上に現れている状態となる。そして、この制御を終える。
【0070】
このように、本実施形態の風力発電装置10では、気象データに基づいて水面の上下動を予測し、弾性浮体28の浮力を小さくすることで風力発電装置10の上下動を抑制しているので、支持部材12に支持された風車11の損傷を抑制できる。
【0071】
本実施形態において、風車11及び発電機20は、構造物の一例である。そして、風力発電装置10は、水上装置の一例である。すなわち、構造物は、風車11及び発電機20を含んでいる。
【0072】
風車11のロータ18が風を受けて回転すると、発電機20がロータ18の回転力を受けて回転し、発電する。そして、発電機20及び風車11の損傷を抑制できるので、発電可能な状態を維持できる。風力発電装置10として発電可能な状態を長く確保できることで、発電コストを向上させることができる。
【0073】
発電機20及び風車11の損傷を抑制できることにより、発電機20及び風車11のメンテナンスや復旧作業に要する時間も短くなる。このように、発電機20及び風車11のメンテナンスや復旧作業に要する時間が短くなることでも、風力発電装置10の稼働時間を長く確保し、発電コストを向上させる効果がある。
【0074】
本開示の技術において、風車11は構造物の一例である。構造物の種類は限定されないが、風車11以外の例としては、太陽光発電設備を挙げることができる。太陽光発電設備では、複数の太陽光パネルと、これら大陽光パネルどうしを電気的に接続するケーブル、及び各種の制御装置を備えていることが多いが、これらの各種機器を、支持部材12で支持した構造を採り得る。
【0075】
上記では、切替装置214による弾性浮体28に対する排気及び給気を、制御装置204が切替装置214を制御することにより行う例を挙げた。しかし、切替装置214による弾性浮体28に対する排気及び給気を、制御装置204の制御によらずに、手動で行ってもよい。手動で行う場合は、たとえば、陸上の遠隔操作センターと各切替装置214とを無線により送受信可能に接続し、遠隔操作センターに設置した操作部を手動操作することで、切替装置214による弾性浮体28に対する排気及び給気を行うようにすればよい。
【0076】
本開示の技術では、弾性浮体28を構成する材料が、金属よりも比重の小さいゴム、合成樹脂等の弾性体である。このため、金属材料を用いた浮体よりも、同程度の浮力を得る構成において、軽量にすることが可能である。本実施形態の風力発電装置10では、金属製の浮体のみで浮力を得ている風力発電装置に比較して、全体として軽量化できる。これにより、風車のサイズアップ、及び大型化が可能となり、発電量を増加させることも可能となる。
【0077】
浮体が固定されている風力発電装置では、浮体のメンテナンスを行う場合や、浮体に不具合(例えば、亀裂、穿孔等)が生じた場合は、曳航し、陸揚げしてメンテナンス、または修理する必要があり、メンテナンス、及び修理に多大な手間、及びコストが掛かる。また、浮体内に水が入った場合、浮力のバランスが崩れ、タワーが必要以上に傾く虞がある。
【0078】
一方、本実施形態の風力発電装置10では、複数の弾性浮体28を用いているので、フェイルセ―フが可能となる。例えば、何れかの弾性浮体28に不具合が生じた場合でも、他の弾性浮体28の浮力を調整することで、浮力のバランスが大きく崩れることを抑制でき、タワー14が必要以上に傾くことを抑制できる。
【0079】
複数の弾性浮体28は、夫々が浮体支持部24に着脱可能に取り付けられているため、部分単位、言い換えれば、弾性浮体28毎でメンテナンス(修理、交換)を行うことができる。
【0080】
各弾性浮体28は、通常状態において、少なくとも一部が水面WFに露出する構成とすることが可能である、弾性浮体28の少なくとも一部が水面WFに露出していることで、また、ボルト、チェーン、ロープ、バンド等の取付部材32を、水上、例えば、支持部材12や浮体支持部24との上で弾性浮体28の着脱作業が出来るように設けることで、水上にて、不具合を生じた弾性浮体28をメンテナンスしたり、新たな弾性浮体28と交換したりすることが容易となる。したがって、曳航、及び陸揚げによるメンテナンス、及び交換に比較して作業が容易になる。
【0081】
弾性浮体28は、着脱可能であり、金属製の浮体に比較して軽量であるため、弾性浮体28を取り外して水上で回転させることも容易である。例えば、弾性浮体28を回転させ、水に浸かっていた下部を上側にして水に浸かっていた部分を検査したり、下部の付着物を除去したりするなどのメンテナンスも容易になる。
【0082】
本実施形態の風力発電装置10では、弾性浮体28が着脱可能であるので、弾性浮体28の数を調整して、浮力の調整や浮力のバランスを取ることも容易である。また、タワー14を搭載する基礎部材が水平となるように浮力のバランスをとることも容易にできる。
【0083】
本開示の技術の風車として、上記ではプロペラ型と呼ばれる水平軸風車を挙げたが、風車としては、たとえば垂直軸風車等、他の形式のものであってもよい。
【0084】
本開示の技術の水上装置としては、洋上に設置される洋上装置の他に、湖上に設置される湖上装置等が含まれる。すなわち、水上装置が設置される場所は、要するに水上であればよく、海洋、湖、池等が広く含まれる。
【符号の説明】
【0085】
10…風力発電装置、11…風車、12…支持部材、14…タワー、16…ナセル、18…ロータ、18A…ハブ、18B…ブレード、20…発電機、24…浮体支持部、24A…連結部材、24A…連結部材、24B…大径環状部材、24C…小径環状部材、26…剛性浮体、28…弾性浮体、32…取付部材、34…係留ライン、36…送電線、54…コンピュータ、56…プロセッサ、58…メモリ、60…ストレージ、62…表示部、64…入力部、66…受付部、68…通信部、70…制御プログラム、202…充電器、204…制御装置、206…エアコンプレッサ、208…エアタンク、210…真空ポンプ、212…真空タンク、214…切替装置、216…圧力計、218…圧力計、220…圧力計、252…気象データ取得装置
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