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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083170
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】GSR素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
G01R33/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197538
(22)【出願日】2022-12-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】713000630
【氏名又は名称】マグネデザイン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】工藤 一恵
(72)【発明者】
【氏名】田辺 淳一
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 義信
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 晋平
(72)【発明者】
【氏名】菊池 永喜
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AD02
2G017BA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】集積回路基板(ASIC)上にGSR素子を直接形成する際、ポジレジスト系の樹脂被膜にマスク露光、現像、キュア熱処理をすることで逆台形状の溝を形成できるが、ワイヤを配置する直線的な溝を形成できる場所はASIC基板の開口部の配置依存するため、溝上部形状が非対称となってしまい、微細コイルの形成が困難であった。
【解決手段】ASIC基板上にポジレジスト系の樹脂被膜を塗布し、磁性ワイヤを設置するための溝と複数のアライメントマーク用凹部とASIC基板の電極取出し部を同時に露光、現像した後、磁性ワイヤ85を設置するための溝部のみ部分露光を追加した後、キュア熱処理して樹脂被膜を硬化することで、逆台形状かつ左右対称である溝を形成でき、3μm以下の微細コイルピッチを有するGSR素子をASIC基板上に直接製造できる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性ワイヤ、前記磁性ワイヤを周回する下部コイルと上部コイルよりなる10μm以下のコイルピッチを有する検出コイル、および電極配線からなるGSR素子を特定用途向け集積回路(以下、ASICという。)の基板上に直接製造するGSR素子の製造方法において、
(1)前記ASIC基板上にポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂
被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記P系樹脂被膜に前記磁性ワイヤを配置するための溝と前記ASIC基板上の電極取出し用開口部(以下、開口部という。)を同時に形成し、
前記磁性ワイヤを配置するための溝部のみを追加露光した後、キュア熱処理して前記P系樹脂被膜を硬化し、溝上部の対称性を改善した逆台形状溝とASIC基板上の前記開口部を形成する工程と、
(2)前記ASIC基板の全面に金属皮膜を成膜し、前記逆台形状の溝に被覆した前記金属皮膜を使って、前記逆台形状溝の溝面に沿って前記下部コイルを形成する工程と、
(3)前記下部コイルを形成した前記逆台形状溝に張力付加した前記磁性ワイヤを配置して樹脂で仮固定し、次いでキュア熱処理して固定する工程と、
(4)前記磁性ワイヤと前記電極配線を接合する部分のみ、前記磁性ワイヤを被覆している絶縁性ガラスをCF4-RIEにより除去する工程と、
(5)前記ASIC基板の全面に金属皮膜を成膜し、前記上部コイルと前記電極配線を形成する工程と、
(6)前記磁性ワイヤと前記検出コイルと前記電極配線からなる素子の集合体からなる素子基板を個片化する工程と、
からなることを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1の工程(1)において、
(1A)前記ASIC基板上にポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記P系樹脂被膜に前記磁性ワイヤを設置するための溝と前記ASIC基板上の電極取出し用開口部(以下、開口部という。)およびアライメントマークを同時に形成し、
さらに、前記磁性ワイヤを設置するための溝部のみ部分露光を追加した後、キュア熱処理して前記P系樹脂被膜を硬化し、溝上部の対称性を改善した逆台形状溝を形成する、
ことを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1の工程(1)において、
(1B)前記ASIC基板上にネガレジスト系の第一樹脂被膜(以下、N系第一樹脂被膜という。)を塗布、露光、現像して、キュア熱処理後に平坦化処理をして、平坦で硬い樹脂製の第一台座を溝形成部とアライメントマーク形成部に形成した後、
前記ASIC基板に溝深さよりも厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜(以下、P系第二樹脂被膜という。)を塗布して第二台座とし、前記第二台座に前記溝と前記ASIC基板の電極取出し用開口部(以下、開口部という。)と前記アライメントマークを露光、現像して形成し、
さらに溝部のみに追加露光後に第二台座をキュア熱処理して溝上部の対称性を改善した逆台形状溝を形成する、
ことを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1の工程(1)、請求項2の工程(1A)および請求項3の工程(1B)において、
前記逆台形状溝を形成した後、
前記ASIC基板にネガレジスト系の樹脂被膜(以下、N系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記逆台形溝の溝部のみにN系樹脂被膜を残し、キュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成する工程を、
有することを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1の工程(5)において、
(5A)前記逆台形状溝に前記磁性ワイヤを配置後、前記ASIC基板の全面にポジレジスト系樹脂被膜を塗布し、露光、現像して前記溝と磁性ワイヤ部のみにポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂被膜という。)を残し、キュア熱処理して溝と磁性ワイヤの段差を滑らかにする工程と、
前記ASIC基板の全面に金属皮膜を成膜し、前記上部コイルと前記電極配線を形成する工程を、
有することを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項6】
請求項2~請求項4のいずれか一項において、
前記ASIC基板の全面に金属皮膜を成膜し、前記金属皮膜を前記アライメントマーク用凹部の反射膜として使うことにより視認性の高いアライメントマークを形成する工程と、
前記視認性の高いアライメントマークと前記逆台形状溝に被覆した前記金属皮膜を使って、前記逆台形状溝の溝面に沿って前記下部コイルを形成する工程を、
有することを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項7】
請求項3~請求項5のいずれか一項において、
前記第二台座に形成した前記アライメントマーク用凹部以外を保護した後、前記第二台座に形成した前記アライメントマーク用凹部自身をマスクにRIE加工をして前記アライメントマーク用凹部の第一台座を掘りこむことを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1~請求項3のいずれか一項において、
前記磁性ワイヤを配置するための前記溝部のみを追加露光する際の露光量は、前記溝部の前記露光量の4%以下であることを特徴とするGSR素子の製造方法
【請求項9】
請求項1~請求項7のいずれか一項において、
前記溝の前記下部コイルの上に配置する前記磁性ワイヤは、弾性限を超える張力30~100kg/mmを負荷し、樹脂により前記溝内に埋設して250~350℃の温度にて張力熱処理して前記磁性ワイヤを固定することを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項10】
請求項3または請求項4において、
前記N系第一樹脂被膜の膜厚は、前記ASIC基板上の凹凸の3倍以上であることを特徴とするGSR素子の製造方法。




















【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界検出素子と特定用途向け集積回路(以下、ASICと言う)との一体化プロセスによるGSR素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高感度磁気センサには、ホールセンサ、GMRセンサ、TMRセンサ、高周波キャリアセンサ、FGセンサ、MIセンサ、GSRセンサなどがある。これらのセンサのうち、ホールセンサ、GMRセンサ、TMRセンサ、キャリアセンサは素子とASICが一体化されて小型化、薄型化は実現されているが、検出感度の改善が課題である。
一方、FGセンサ、MIセンサ、GSRセンサは高い感度を有するが、素子とASICが別々に配置されてワイヤボンディングで接合されており、センサの薄型化、小型化が課題である。
【0003】
この課題を解決するために、本発明者らは、GSR素子をASIC表面の上に形成する技術開発に取り組んだ結果、センサの小型化、薄型化を実現した(特許文献1)。
特許文献1にて、ASIC面上に絶縁性レジストを塗布し、そこに磁性ワイヤを配置する溝を形成し、磁性ワイヤと磁性ワイヤを周回する検出コイルおよび電極からなるGSR素子をASIC面上に一体形成した薄型高感度磁気センサが開示されている。しかし、その製造方法についてその後の改良が続けられているが、現時点ではその技術の詳細は公開されていない。
【0004】
一方、センサの高感度化のためには、微細ピッチコイルを形成してコイルの巻き数を増やす必要がある。しかし、コイルピッチを微細化するほど、ASIC基板の位置とマスクの位置をさらに精度よく合わせることが求められる。その精度を実現するためには、ASIC基板上に視認性の高いアライメントマークを精度高く形成する必要がある。
【0005】
一般的には、アライメントマークは平坦な部分に作られたSiO2膜に形成するために、視認性に問題はなかった。またアライメントマークの形成方法は、特許文献2、特許文献3および特許文献4などに開示されているが、いずれも感光性樹脂の上にアライメントマークを形成するものではない。感光性樹脂上に視認性の高いアライメントマークを形成する技術の検討も課題のひとつである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】公開特許公報2019-191016
【特許文献2】公開特許公報2006-229132
【特許文献3】公開特許公報2009-004793
【特許文献4】特許公報第2016776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
磁性ワイヤを周回するコイルをワイヤ近傍に形成するためには、磁性ワイヤを配置する溝に沿って下部コイルを形成する必要がある。本発明者らは、Si基板に溝を形成し溝の形状を逆台形状にすることで、断線せずに溝に沿って下部コイルを形成できることを見出した。
【0008】
しかし、ASIC基板上にGSR素子を一体化形成する際には、ASIC基板面上には回路配線が存在するので、ASIC基板に直接溝を加工することはできない。そこで、ASIC基板11上にSiO2などの絶縁膜を成膜し、RIE(Reactive Ion Etching)で溝を作製したが、その形状は図1に示すように直方体形状となってしまい、逆台形状の溝を形成できないことがわかった。
【0009】
そこで、ASIC基板上に磁性ワイヤを配置するための逆台形状の溝を形成するプロセスを検討した結果、以下の3つの課題があることがわかった。
【0010】
第1の課題は、逆台形状の溝の形成方法である。前述のように、SiO2などの絶縁膜を成膜し、RIEで溝を作製するとみぞの形状は直方体となってしまうため、レジストを用い、ホトリソ工程のみで溝形成する検討を行った。一般的に構造物として残す感光性樹脂としてはエポキシ系のネガタイプのレジスト(以下、ネガレジストという。)が知られている。ネガレジストの特徴はパターニング後のエッジ形状が急峻であり、構造物として残すためのキュア熱処理後も直方体形状の溝となって形状変化が起こらなかった。したがって、ネガレジストを用いて溝に沿って下部コイルを形成することは困難であることがわかった。
【0011】
第2の課題は、ネガレジストに代わり、ポジレジスト系樹脂被膜を用いて逆台形状の溝の形成プロセスを検討する過程で起きた溝が非対称となってしまうという問題である。
ASIC基板には既に集積回路配線が存在し、電極取出し用開口部などの配置が決まっており、図2(a)に示すように、磁性ワイヤを配置する直線的な溝231を形成できる場所には制限がある。すなわち、溝の左右の構造はASIC基板の配線に起因するので、ワイヤを配置する直線的な溝を形成する場所近傍のASIC基板の電極取出し部221は溝に対して左右非対称となってしまう。
その結果、ポジレジスト系の樹脂被膜23に溝231とASIC基板の電極取出し部232を同時にマスク露光、現像をした後に逆台形状の溝を形成するためにキュア熱処理を行うと、図2(b)に示すように、溝の上部の形状が左右非対称になってしまうという問題が生じる。尚、ここで溝の上部の形状が左右非対称とは、溝を形成するレジストの高さが、溝の左右で異なることを言う。すなわち、ASIC基板の電極取出し用開口部232に近い側のレジスト233ともう一方のレジスト234のレジスト高さの差23Hが大きく、非対称な溝形状となる。このような溝形状では、焦点深度が変ってしまう、その後の金属膜のつきまわりが変ってしまうなど、微細コイルの形成が困難となる。
【0012】
一般的な方法として、レジストの凸部を平坦にするには、CMP(Chemical-Mechanical Polishing)を用いる方法があるが、磁性ワイヤを配置するための溝部の幅は20μm以下、深さは5~15μmであるため、溝の中に異物が残ってしまう懸念があり、適用は困難である。
【0013】
第3の課題は、アライメントマークの形成方法である。センサの高感度化を達成するためには、コイルピッチを5μm以下へと微細化しコイルの巻き数を増やす必要があるが、コイルピッチを微細化するほど、ASIC基板の位置と複数個のマスクの位置をさらに精度よく合わせることが求められる。そのため本発明者らは、アライメントマークを溝と同時形成することに思い至った。しかし、従来アライメントマークは基板保護膜であるSiO2上に形成するが、溝と同時形成するには樹脂被膜上に形成することになる。しかし、図3に示すようにASIC基板表面には集積回路起因の2~3μmの凹凸があり、溝形成に必要な膜厚(5~15μm程度)の樹脂被膜を塗布しても、その表面には凹凸が転写されてしまい、SiO2上のようにアライメントマーク形成に必要な平坦な面を得ることが困難である。
【0014】
また、コイルピッチを微細化するほど、優れた上下のコイルの合わせ精度が必要となり、高度な位置合わせ機能を有するオートアライメント機構などが必要となる。オートアライメント機構は、アライメントマーク画像のコントラストに左右される。前述のようにASIC基板表面の凹凸があると、図4に示すようにシグナルが乱れてマーク画像のコントラストが歪んでしまう。そのため、マークを誤認識し、コイルピッチ5μm以下の微細なコイルを形成しようとすると、下部コイル形成後、上部コイルを形成する際に両者の接続位置がずれ、コイルの接続不良という問題が発生する。
【0015】
本発明は、これらの問題を解決して、磁界検出素子と特定用途向け集積回路(以下、ASICと言う。)との一体化プロセスにおいて、ASIC基板上の樹脂被膜上にワイヤを配置する逆台形状の溝を形成し、さらに溝形状の対称性を改善し、かつ、コントラスト性に優れたアライメントマークを溝と同時に形成し、微細コイルピッチで形成された検出コイルを有するGSR素子をASIC基板上に一体化形成する製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の課題である、逆台形状の溝の形成方法に関し、本発明者らは、熱処理後に形状が変化するため、構造物として残すレジストとしてはあまり使われないポジレジスト系の感光性樹脂の特性に着目し、検討を進めた。
その結果、図5に示すように、(a)ポジレジスト系の樹脂被膜をASIC基板全体に塗布後、マスク材を通して露光、現像後に得られる直方体状の溝形状を、(b)キュア熱処理することで、逆台形状にできることを見出した。キュア熱処理をすると、熱処理時に発生する応力で、溝は直方体形状から逆台形状へと変化する。すなわち、逆台形状の溝を形成するにはポジレジスト系の樹脂被膜が必須となる。
【0017】
第2の課題である、ポジレジスト系の樹脂被膜をASIC基板全体に塗布後、マスク材を通して露光、現像後に得られる直方体状の溝形状を、キュア熱処理後に形成された逆台形状の溝上部の形状が非対称となってしまい、コイルの形成が難しいという問題に関しては、前記ポジレジスト系の樹脂被膜に溝を形成する際、ASIC基板の電極の取出し部を同時に開口させるため、前記溝部の左右のポジレジスト系の樹脂被膜のボリューム差が生じ、キュア熱処理時の収縮の仕方がちがうためと考えた。
そこで、検討を進めた結果、溝、アライメントマーク、ASIC基板の電極取出し用開口部を同時に露光、現像した後、さらに溝部のみ部分露光を追加し、キュア熱処理をすることで、溝部の左右の収縮を制御できる図6に示す方法を見出した。この方法を図6の工程フロー図を使って説明する。
この後のコイル形成工程への影響を考慮し、溝の左右のレジストの高さの差は0.2μm以下とすることが好ましい。
【0018】
図6(a)に示すように、ASIC基板61表面には保護膜62が形成されている。
ASIC基板61全面にポジレジスト系の樹脂被膜63を塗布し、マスク材を通して露光、現像することで、溝631とアライメントマーク用凹部(図示せず)とASIC基板の電極取出し用開口部632を樹脂被膜63に形成する
このままキュア熱処理をすると、図2(b)に示すように溝の形状は逆台形状となるが、溝上部は左右非対称となってしまう。
そこで、さらに溝部のみもう一度追加露光する。その後キュア熱処理を行うと、図6(b)に示すように溝631は逆台形状となり、かつ、追加露光を行っているので、溝上部の形状はASIC基板の開口部の位置によらず、左右対称となる。すなわち、ASIC基板の電極取出し用開口部632に近い側の溝レジスト633ともう一方の溝レジスト634のレジスト高さは溝の左右のレジストの高さの差は0.2μm以下となって、ほぼ同じである。
【0019】
1回目の露光量が1500mJ/cm、溝深さ8μm、溝とASIC基板上の電極取出し用の開口部の距離が50μmの場合の溝上部の非対称性(溝の左右のレジスト高さの差:以下、左右差と言う)の関係を図7に示す。
追加露光をしない場合、左右差は0.6μmであるが、追加露光をすることで、40mJ/cmで左右差が最小となり、それ以上の露光量では、反対側の溝の上部が高くなっていく。
微小ピッチコイル形成には、左右差は0.2μm以下が好ましく、この場合、追加露光量は20~60mJ/cmの範囲で左右差0.2μm以下となっている。すなわち、追加露光量は1回目の露光量の1~4%が好ましい。1%より低いとでは溝上部の左右差が0.2μm以上であり、4%を超えると最初の左右差が逆転し、0.2μm以上の左右差となり、溝の形状が変化してしまう。
【0020】
次に、第3の課題であるアライメントマークを溝と同時に形成する際のASIC基板表面の2~3μmの凹凸により、平坦な面にアライメントマークを形成することができないという問題については、1回の樹脂被膜を使った方法に代えて、機能の異なる樹脂被膜を2回に分けて形成する2層樹脂被膜法を考え、溝とアライメントマークを樹脂被膜上に同時に形成できることを見出した。
【0021】
まず、2層樹脂被膜法を用いて作製したGSR素子の断面図を図8に示し、以下、図9a~図9dを用いて本発明による2層樹脂被膜法について説明する。
図9aに示すように、ASIC基板90の表面にはASIC基板の保護膜901と、回路配線起因の2~3μmの凹凸91が存在する。
第1ステップはまず、この段差を解消すべく、図9bに示すように、溝形成部9Bとアライメントマーク用凹部形成部9Aに第一台座92を形成する。すなわち、ASIC基板90上にネガレジスト系の第一樹脂被膜を塗布し、マスク材を用いて露光、現像を行い、GSR素子形成のための磁性ワイヤ配置用の溝形成部9Bとアライメントマーク形成部9Aからなる第一台座92を形成する。
【0022】
この状態では、第一台座92表面にはまだ凹凸が存在するため、キュア熱処理を行って硬化させた後、表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)で平坦化することで図9cに示すように、溝形成部とアライメントマーク形成部に平坦な第一台座9Cを形成する。
このCMPによりASIC基板の電極開口部の破損が生じる懸念があるので、CMP前にASIC基板全面にレジストを塗布し、台座以外のASIC面を保護してCMPを行い、CMP後にレジスト剥離液で除去することで、ASIC基板の電極開口部の破損を防止できる。
【0023】
第1ステップにおける第一樹脂被膜は台座上部が平坦でかつそのエッジ部は急峻な台座形状を確保することが好ましく、ポリイミド系のネガレジストが好ましいが、ポジレジストの使用も可能である。
【0024】
第2ステップは第一台座9Cの上に溝を形成するためのプロセスである。
図9dに示すように、第一台座9Cの上に、溝の深さより厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜93を塗布し、この第二樹脂被膜93に露光、現像、キュア熱処理をすることで、逆台形状の溝94とアライメントマーク用凹部95を同時に形成する。
第一台座9Cを平坦化しているので、溝部9Bとアライメントマーク部9A自体には凹凸がない。
なお、第1層目の第一台座を形成する第一樹脂被膜の膜厚は、CMPを行うため、ASIC表面の凹凸(通常2~3μm程度)の3倍以上が好ましい。
第2層目の第二樹脂被膜の膜厚は溝形成(溝の深さ5~10μm程度)を可能にするため、最低溝の深さ以上の厚さを確保する必要がある。
【0025】
キュア熱処理した第一台座と二層目の第二樹脂被膜との密着性については、懸念課題であったが樹脂の種類が異なっても強固に一体化することを確認した。
また、アライメントマーク凹部は溝と同時に形成するため、溝と同様に逆台形状になり、視認性が低下する懸念がある。
そこで、図9dに示すように、アライメントマーク部以外をレジストで保護し、この第二樹脂被膜に形成した逆台形状のアライメントマーク凹部そのものをマスクとして第一台座をRIEで掘り込むことで、アライメントマーク凹部の急峻度を高めることができる。
この時、RIEのエッチングの選択比は、第一台座、第二樹脂被膜ともほぼ同じである。したがって、その堀込み量は0.5~1.5μmが好ましい。0.5μm以下では急峻化の効果が小さく、視認性の向上が認められない。1.5μm以上では第二樹脂被膜の膜減りが大きくなり、視認性に影響がでる。
このように2層構造の樹脂被膜を採用することで1層構造では実現できない凹凸の除去が可能になる。
【0026】
しかしながら、この状態ではASIC基板上の凹凸が第一樹脂膜、第二樹脂膜を通して見えてしまうため、アライメントに必要な視認性の高いコントラストが確保できない。
そこで、アライメントマーク上に反射機能を強化する金属膜を成膜することにより、アライメントマークの視認性を高めることとした。
図12に示すように、第一台座まで堀込みさらに、反射膜を形成したアライメントマークのシグナルは基板120上のアライメントマーク凹部121のシグナル123とマスクのアライメントマーク122のシグナル124のみであり、コントラストも問題なく、視認性が向上していることがわかる。
尚、第一台座を平坦化しない場合は、金属膜を成膜してもASIC基板の凹凸が解消できないため、アライメントマークの十分な視認性を確保することができない。つまり、台座の平坦化と反射機能を強化する金属膜の成膜が必須である。
【0027】
他方、逆台形状の溝に下部コイルを形成するために金属膜の成膜が必要であるが、前述のアライメントマークの反射機能を強化するための金属膜と下部コイルのそれとは同じ金属膜とすることが好ましい。
【0028】
また、金属膜を成膜する前に、ネガレジスト系の樹脂被膜を塗布、露光、現像して溝部のみに樹脂被膜を残してキュア処理を行うことで、溝の底部にR形状を形成し、溝底部の金属膜の断線を防止できる。
【0029】
このように、底部がR形状となった溝に金属膜を成膜し、基板全面にレジスト塗布、露光、現像したパターンにめっき後、レジスト除去してコイルパターン以外の下地膜を除去することで下部コイルを形成する。
【0030】
下部コイルを形成した溝に磁性ワイヤを張力30~100kg/mm2を負荷して配置し、ワイヤ両端を接着剤、テープなどで仮固定する。さらに樹脂を塗布、露光、現像、キュア熱処理をすることで、磁性ワイヤを溝内部に固定する。この時、磁性ワイヤは両端を固定されたままであり、張力を保持したままキュア熱処理されることにより、GSR特性の向上を図ることができる。
【0031】
溝内部に固定された磁性ワイヤにワイヤ端子(磁性ワイヤの両端部)を設けるために磁性ワイヤを被覆している絶縁性ガラスの一部を除去する。
一般的には、フッ酸処理が知られているが、ワイヤ端子周辺の損傷が大きく、素子形成に多大な影響を及ぼしてしまうため、検討した結果、CFガスを用いたRIE法でガラス除去できることを見出し、以降、RIE法でガラス除去を行なう。
【0032】
逆台形状溝に磁性ワイヤを配置後、溝と磁性ワイヤとの段差解消のため、ASIC基板の全面にポジレジスト系樹脂被膜を塗布し、露光、現像して溝と磁性ワイヤ部のみにポジレジスト系の樹脂被膜を残し、キュア熱処理して溝と磁性ワイヤの段差を滑らかにする。
一般的には、構造物として残すレジストとしてはネガタイプのレジストが知られているが、ネガタイプのレジストはエッジ形状が急峻となるため、次工程で上部コイル用の金属膜がうまくつきまわらず、断線の懸念がある。
そこで、キュア熱処理後に形状が変化することから構造物として残すレジストとしては一般的に使われないポジレジスト系樹脂被膜について検討した。その結果、ポジレジスト系樹脂被膜はキュア熱処理後にそのエッジ形状をなだらかに改善でき、断線の懸念なく段差を解消することができる。
【0033】
そして、上部コイルを形成するために金属膜を成膜する。その後、レジスト塗布、露光、現像工程により、磁性ワイヤの上には上部コイル、基板上には電極パターン(ワイヤ端子、配線を含む。)を形成し、めっき、ウェット後にレジストを除去することで上部コイルが形成される。
下部コイルとの接続部はなだらかな形状をしており、断線もなく上部コイルを形成できることにより磁性ワイヤを周回する検出コイルが得られる。また、前記アライメントマークを用いることで合わせ精度が向上し微細なコイルピッチにおいても下部コイルとのずれなく上部コイルが形成できる。
このようにASIC基板上の樹脂被膜に逆台形状の溝とアライメントマークを同時に形成し、かつ逆台形状の溝上部の形状の対称性を大幅に改善することで、3μm以下の微細なコイルピッチの形成が可能となることを見出した。
【0034】
以上説明したように、本発明はポジレジスト被膜を活用した逆台形溝の形成法、溝両側の高さの対称性を確保する追加露光法および精度の高いアライメントマークを樹脂被膜上に形成する2層樹脂被膜法という3つの新技術を考案してASIC基板上に直接素子を形成する方法を発明したものである。
【発明の効果】
【0035】
本発明により、ASIC基板にダメージを与えることなく、上部形状の対称性がある磁性ワイヤを配置するための逆台形状の溝と視認性の高いアライメントマークを感光性樹脂被膜上に同時に形成することができ、かつ、溝の対称性を改善できることから、ASIC基板上に5μm以下の微細なコイルピッチを有するGSR素子を一体化形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ASIC基板上のSiO2絶縁膜にRIEで形成した溝を示す図である。
図2】ASIC基板の電極取出し用開口部とワイヤ配置用溝をポジレジスト系樹脂被膜に露光、現像した後の素子の平面図(a)、及びA-A‘断面図(b)である。
図3】ASIC基板表面の凹凸を示す図である。
図4】ASIC基板の金属膜成膜前のアライメントマークとB1-B2線におけるマーク及び、凹凸のシグナルを示す図である。
図5】ASIC基板のポジレジスト系樹脂被膜にワイヤ配置用溝を露光、現像した後の形状(a)、及び、キュア熱処理をして逆台形状になった溝(b)である。
図6】ASIC基板のポジレジスト系樹脂被膜にワイヤ配置用溝とASIC基板の電極取出し用開口部を露光、現像した後の形状(a)、及び、露光、現像後にワイヤ配置用溝部のみ追加露光し、キュア熱処理をした溝とASIC基板の電極取出し用開口部を示す図である。
図7】ASIC基板の電極取出し用開口部とワイヤ配置用溝をポジレジスト系樹脂被膜に露光、現像後、溝部のみに追加露光する追加露光量と左右差の関係を示すグラフである。
図8】本発明により作製したGSR素子を示す断面図である。
図9a】ASIC基板表面の回路配線起因の2~3μmの凹凸を示す図である。
図9b】溝部とアライメントマーク部に形成した第一台座を示す図である。
図9c】溝部とアライメントマーク部に形成した第一台座をCMPで平坦化した図である。
図9d】第2樹脂被膜に逆台形状溝部とアライメントマーク用凹部とASIC基板の電極取出し用開口部を同時に形成し、溝部のみに追加露光後にキュア熱処理をした図である。
図10a】ASIC基板全面にポジレジスト系の樹脂被膜を塗布し、マスク材を通して露光した図である。
図10b】現像後の直方体形状の溝部とASIC基板の電極取出し用開口部を示す図である。
図10c】溝部のみに追加露光した図である。
図10d】キュア熱処理をした溝とASIC基板の電極取出し用開口部を示す図である。
図11a】ASIC基板全面にネガレジスト系の樹脂被膜を塗布し、マスク材を通して露光、現像、キュア熱処理をして、溝の底部にR形状を形成した図である。
図11b】ASIC基板表面に金属膜を成膜した図である。
図11c】基板全面にレジストを塗布し、マスク材を通して露光、現像を行い、コイルパターンを形成した図である。
図11d】パターン内にめっき後、レジストを剥離し、めっき以外の部分の金属膜をエッチングして下部コイルを形成した図である。
図12】ASIC基板の金属膜成膜後のアライメントマークとB1-B2線におけるマーク及び、凹凸のシグナルを示す図である。
図13】磁界検出素子(集合体)とアライメントマークの平面図を示す図である。
図14】磁界検出素子の平面図を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明のGSR素子の製造方法は、
磁性ワイヤ、前記磁性ワイヤを周回する下部コイルと上部コイルよりなる10μm以下のコイルピッチを有する検出コイル、および電極配線からなるGSR素子を特定用途向け集積回路(以下、ASICという。)の基板上に直接製造するGSR素子の製造方法において、
(1) 前記ASIC基板上にポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂
被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記P系樹脂被膜に前記磁性ワイヤを配置するための溝と前記ASIC基板上の電極取出し用開口部(以下、開口部という。)を同時に形成し、
前記磁性ワイヤを配置するための溝部のみ部分露光を追加した後、キュア熱処理して前記P系樹脂被膜を硬化し、溝上部の対称性を改善した逆台形状溝とASIC基板上の前記開口部を形成する工程と、
(2)前記ASIC基板の全面に金属皮膜を成膜し、前記逆台形状の溝に被覆した前記金属皮膜を使って、前記逆台形状溝の溝面に沿って前記下部コイルを形成する工程と、
(3)前記下部コイルを形成した前記逆台形状溝に張力付加した前記磁性ワイヤを配置して樹脂で仮固定し、次いでキュア熱処理して固定する工程と、
(4)前記磁性ワイヤと前記電極配線を接合する部分のみ、前記磁性ワイヤを被覆している絶縁性ガラスをCF4-RIEにより除去する工程と、
(5)前記ASIC基板の全面に金属皮膜を成膜し、前記上部コイルと前記電極配線を形成する工程と、
(6)前記磁性ワイヤと前記検出コイルと前記電極配線からなる素子の集合体からなる素子基板を個片化する工程と、
からなることを特徴とする。
【0038】
また、請求項1の工程(1)において、
(1A)前記ASIC基板上にポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記P系樹脂被膜に前記磁性ワイヤを設置するための溝と前記ASIC基板上の電極取出し用開口部(以下、開口部という。)およびアライメントマークを同時に形成し、
さらに、前記磁性ワイヤを設置するための溝部のみ部分露光を追加した後、キュア熱処理して前記P系樹脂被膜を硬化し、溝上部の対称性を改善した逆台形状溝を形成することを特徴とする。
【0039】
また、請求項1の工程(1)において、
(1B)前記ASIC基板上にネガレジスト系の第一樹脂被膜(以下、N系第一樹脂被膜という。)を塗布、露光、現像して、キュア熱処理後に平坦化処理をして、平坦で硬い樹脂製の第一台座を溝形成部とアライメントマーク形成部に形成した後、
前記ASIC基板に溝深さよりも厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜(以下、P系第二樹脂被膜という。)を塗布して第二台座とし、前記第二台座に前記溝と前記ASIC基板の電極取出し用開口部(以下、開口部という。)と前記アライメントマークを露光、現像して形成し、
さらに溝部のみに追加露光後に第二台座をキュア熱処理して溝上部の対称性を改善した逆台形状溝を形成することを特徴とする。
【0040】
さらに、請求項1の工程(1)、請求項2の工程(1A)および請求項3の工程(1B)において、
前記逆台形状溝を形成した後、
前記ASIC基板にネガレジスト系の樹脂被膜(以下、N系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記逆台形溝の溝部のみにN系樹脂被膜を残し、キュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成する工程を有することを特徴とする。
【0041】
また、請求項1の工程(5)において、
(5A)前記逆台形状溝に前記磁性ワイヤを配置後、前記ASIC基板の全面にポジレジスト系樹脂被膜を塗布し、露光、現像して前記溝と磁性ワイヤ部のみにポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂被膜という。)を残し、キュア熱処理して溝と磁性ワイヤの段差を滑らかにする工程と、
前記ASIC基板の全面に金属皮膜を成膜し、前記上部コイルと前記電極配線を形成する工程を、
有することを特徴とする。
【0042】
また、請求項3~請求項5のいずれか一項において、
前記ASIC基板の全面に金属皮膜を成膜し、前記金属皮膜を前記アライメントマーク用凹部の反射膜として使うことにより視認性の高いアライメントマークを形成する工程と、
前記視認性の高いアライメントマークと前記逆台形状溝に被覆した前記金属皮膜を使って、前記逆台形状溝の溝面に沿って前記下部コイルを形成する工程を有することを特徴とする。
【0043】
さらに、請求項4~請求項6のいずれか一項において、
前記第二台座に形成した前記アライメントマーク用凹部以外を保護した後、前記第二台座に形成した前記アライメントマーク用凹部自身をマスクにRIE加工をして前記アライメントマーク用凹部の第一台座を掘りこむことを特徴とする。
【0044】
また、請求項1~請求項3のいずれか一項において、
前記磁性ワイヤを配置するための前記溝部のみ追加露光する際の追加露光量は、前記溝部の前記露光量の4%以下であることを特徴とする。
【0045】
さらに、請求項1~請求項8のいずれか一項において、
前記溝の前記下部コイルの上に配置する前記磁性ワイヤは、弾性限を超える張力30~100kg/mmを負荷し、樹脂により前記溝内に埋設して250~350℃の温度にて張力熱処理して前記磁性ワイヤを固定することを特徴とする。
【0046】
また、請求項3または請求項4において、
前記N系第一樹脂被膜の膜厚は、前記ASIC基板上の凹凸の3倍以上であることを特徴とする。
【0047】
これにより、ASIC基板にダメージを与えることなく、上部形状の対称性がある磁性ワイヤを配置するための逆台形状の溝と視認性の高いアライメントマークを感光性樹脂被膜上に同時に形成することができ、かつ、溝の対称性を改善できることから、ASIC基板上に10μm以下の微細なコイルピッチを有するGSR素子を一体化形成することが可能となる。
【0048】
以下、詳細に説明する。
磁性ワイヤと検出コイルおよび電極配線をASICの基板上に直接製造するGSR素子の製造方法である。
磁性ワイヤは、CoFeSiB系アモルファス合金であり、その直径は1~15μmにて、0.5~2μmの厚みの絶縁被膜(ガラス被膜)で周囲を被覆したワイヤである。
検出コイルは、下部コイル、上部コイルおよび接続部とからなり、コイルピッチの幅は1~5μm、コイルの幅は0.5~4.5μm、下部、上部コイルの厚みはそれぞれ0.1~1.0μmである。
【0049】
電極配線は、外部電極、電極(端子)および外部電極と電極(端子)を接続する配線(接続配線)を総称している。
外部電極とは、GSR素子からの入出力の電極にて、本発明ではASICの電極と接続ないし一体的に形成される。磁性ワイヤの両端および検出コイルの両端には電極(端子ともいう。)が形成される。
検出コイルと電極配線は、導電性を有する金属例えば金などを蒸着、めっきなどすることにより形成される。
【0050】
ASIC基板は、GSR素子を多数製造することができるように多数のASICが形成されている所定の大きさからなる。
例えば、ASIC基板の大きさは、縦20mm、横20mmとすると、
1個のGSR素子と1個のASICからなる素子の集合体からなる素子基板に相当し、素子基板の個片化により50~1500個程度の素子を得ることができる。
【0051】
工程(1)、(1A)及び(1B)は、ASIC基板に磁性ワイヤを整列させるための逆台形状の溝を形成する工程である。
図9aに示すように、ASIC基板90の表面には回路配線起因の2~3μmの凹凸91が存在する。
そこで、まず、この段差を解消すべく、図9bに示すように、溝形成部9Bとアライメントマーク用凹部形成部9Aに第一台座92を形成する。すなわち、ASIC基板90上にネガレジスト系の第一樹脂被膜を塗布し、マスク材を用いて露光、現像を行い、GSR素子形成のための磁性ワイヤ配置用の溝形成部9Bとアライメントマーク形成部9Aからなる第一台座92を形成する。
【0052】
この後、キュア熱処理を行い、第一台座92となる第一樹脂膜を硬化させる。この時点においても、第一台座92となる第一樹脂被膜の表面にはASIC基板上の凹凸91が転写されて残存している。
なお、キュア熱処理の温度は250~350℃で行なう。250℃未満では硬化が不十分で後工程で形状が変化する懸念が残り、350℃を超えるとASIC回路に不具合が生じる懸念がある。
この後、凹凸が転写されて硬化している溝形成部とアライメントマーク形成部からなる第一台座92の第一樹脂被膜上に残存している凹凸をCMPにより平坦化して、図9cに示すように、溝形成部とアライメントマーク形成部からなる平坦な第一台座9Cを形成する。
【0053】
また、第一台座9Cの形成において、ASIC基板90の全面にレジストを塗布した後、第一台座92の上のレジストを除去し、第一台座以外のASIC基板の表面を保護した後、第一台座92を平坦化するためCMPを行ない、第一台座以外のASIC基板の表面を保護していたレジストを剥離する方法でもよい。
【0054】
そして、第一台座9Cを形成する第一樹脂被膜の膜厚は、第一台座を配置するASIC基板90表面の凹凸91の3倍以上が好ましい。3倍未満では、本工程のCMPで第一台座の凹凸を平坦化する前に、第一台座自身が薄くなってしまうためである。
【0055】
次に、溝を形成するためのプロセスを図9dに示す。
ASIC基板全面にポジレジスト系の樹脂被膜93を塗布し、マスク材を通して露光、現像することで、直方体形状の溝部94とアライメントマーク用凹部95とASIC基板の電極取出し用開口部96を樹脂被膜に形成する。この時の露光量は1500mmである。次に、溝部94のみに追加露光を行う。この時の露光量は最初の露光量の5%以下つまり、1~4%である。
その後キュア熱処理を行うと、図9dに示すように、溝94の形状は逆台形状となり、かつ、追加露光を行っているので、ASIC基板の電極取出し用開口部96に近い溝のレジスト97ともう一方のレジスト98のレジスト高さは左右対称となる。
また、アライメントマーク凹部95は溝部94と同時に形成するので、溝と同様に逆台形状になり、視認性が低下する懸念があるため、アライメントマーク部以外をレジストで保護し、この第二樹脂被膜に形成した逆台形状のアライメントマーク凹部95そのものをマスクとして第一台座をRIEで掘り込むことで、アライメントマーク凹部の急峻度を高めることができる。
【0056】
工程(2)は、逆台形状の溝に下部コイルを形成する工程である。
図10a~図10dにプロセスフローを示す。
図10a:まず、溝102が形成されたASIC基板101にネガレジスト系の樹脂被膜103(以下、N系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記溝102部のみにN系樹脂被膜103を残し、キュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成する。
図10b:次に、ASIC基板101表面に金属膜104を成膜する。膜厚は0.1~1.0μmである。また、この金属膜はアライメント部においては反射膜105として機能するため、アライメントマークの視認性が向上できる。
図10c:次に、ASIC基板101全面にレジストを塗布し、マスク材を通して露光、現像を行い、コイルパターン106を形成する。
この時、ASIC基板の電極取出し用開口部108も開口される。
図10d:パターン内にめっき後、レジストを剥離し、めっき以外の部分の金属膜をエッチングする。尚、めっきをせずに、コイルパターン形成後に金属膜をエッチングすることで下部コイル107を形成することも、もちろん可能である。この場合、めっきでコイルを形成するマスクパターンとマスクの開口部が反転する。
【0057】
工程(3)は、磁性ワイヤを溝部に配置、固定する工程である。
前述のように溝部の側面に沿って下部コイルが形成されている。ここに、磁性ワイヤを張力30~100kg/mm2を負荷しながら配置する。
この時、磁性ワイヤの両端部を接着剤、テープなどで仮止めし、その後、樹脂被膜を基板全面に塗布、露光、現像により溝部のみに樹脂被膜を残し、250~350℃の温度にてキュア熱処理して磁性ワイヤを固定する。
これにより磁性ワイヤは溝内部に固定されると同時に張力を付加したまま熱処理されるため、GSR特性の向上を図ることができる。
【0058】
工程(4)は、磁性ワイヤに電極を接触させるため、磁性ワイヤを被覆するガラス被膜を部分的に除去する工程である。
まず、基板全面にレジストを塗布する。次に各素子の磁性ワイヤの電極引出部のみレジストを開口する。つまり、電極引出部以外はレジストで保護されている。この状態でCF4-RIEを行うことで、磁性ワイヤの電極引出部のみ被覆されているSiO2を除去することができる。その後、レジストを除去し、ガラス被膜を部分的に除去し、磁性ワイヤに電極を接触させることができる。
【0059】
工程(5)は、磁性ワイヤの上に上部コイルを形成する工程である。
図11a~図11dを用いてプロセスを説明する。
図11a:まず、逆台形状溝に磁性ワイヤを配置後、ASIC基板の全面にポジレジスト系樹脂被膜を塗布し、露光、現像して前記溝と磁性ワイヤ部のみにポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂被膜という。)を残し、キュア熱処理して段差部を滑らかにする。
図11b:その後、基板全面に金属膜を成膜する。膜厚は0.1~1.0μmである。
図11c:次に、基板全面にレジストを塗布し、オートアライメント機構により視認性の高いアライメントマークを使い、マスク材を通して露光、現像を行い、コイルパターンを形成する。
図11d:パターン内にめっき後、レジストを剥離し、めっき以外の部分の金属膜をエッチングする。尚、めっきをせずに、コイルパターン形成後に金属膜をエッチングすることで下部コイルを形成することも、もちろん可能である。この場合、めっきでコイルを形成するマスクパターンとマスクの開口部が反転する。
このプロセスにより、上部コイルは断線なく、かつ、視認性の高いアライメントマークを形成しているため、下部コイルとの合わせも問題ない。
【0060】
工程(6)は、磁性ワイヤと検出コイルと前記電極配線からなる素子の集合体からなる素子基板を個片化する工程である。
図13に本発明によるASIC基板上に作製した素子の平面図を示す。
ASIC基板13はASIC素子の集合体であり、例えば、20mm角のASIC基板は、300個程度のASIC素子からなる。そして、1つのASIC素子上に、1つの磁界検出素子を形成するので、ASIC基板13上には、多数個の磁界検出素子13aと、基板の4隅にアライメントマーク13bが配置されている。磁界検出素子はこの基板単位で製造し、最後に個片化を行う。
【0061】
次に、図14の平面図を説明する。
磁界検出素子13aは、表面全体が第二樹脂被膜141により被覆され、そのサイズは幅(左右方向)1.2mm、長さ(上下方向)1.2mmよりなる。厚さは0.75mmである。
ASIC基板13上に逆台形状の溝142、下部コイル143が形成され、磁性ワイヤ144が配置・固定されている。磁性ワイヤの周囲は、下部コイル143および上部コイル145からなる検出コイルが周回している。検出コイルのコイルピッチは3.0μmで、線幅は1.2μm、厚さ1.5μmである。
磁性ワイヤ144には、ワイヤ端子146が2個形成され、それぞれワイヤ端子146と接続する配線147およびワイヤ電極148が形成されている。また、下部コイル143及び上部コイル145と接続する配線143a,145aおよびコイル電極149が2個形成されている。
【0062】
このように形成された磁界検出素子の断面構造を図8に示す。図8は、図14に示すA1-A2線の断面図である。また、図13に示したアライメントマーク部13bの断面図も合わせて示してある。
ASIC基板81上には集積回路起因の凹凸811があり、電極取出し用開口部831部以外の表面には保護膜83が形成されている。溝形成部には第一台座891が配置されており、ASIC基板の凹凸811に影響を受けることなく、第二の樹脂膜892には逆台形状の溝82が形成され、溝底部にR形状からなるネガレジスト系樹脂被膜823が形成されている。
【0063】
そのネガレジスト系樹脂被膜823の上に、下部コイル84を形成した後、磁性ワイヤ85が配置され、ネガレジスト系樹脂被膜851により固定されている。
磁性ワイヤ85は、厚さ1.0μmの絶縁性ガラスにより被覆され、その直径は12μmである。
【0064】
溝82と磁性ワイヤ85との段差を解消するために、溝82と磁性ワイヤ85との間にポジレジスト系樹脂被膜852が形成されている。
このポジレジスト系樹脂被膜852は、磁性ワイヤ85の上にも行き渡っており、その上に上部コイル86が形成されている。
下部コイル84と上部コイル86とは、ポジレジスト系樹脂被膜852があり、溝上部の対称性も向上しているため、問題なく接続されている。
【0065】
一方、アライメントマーク部89においても、ASIC基板81上には集積回路起因の凹凸811があるが、アライメントマーク部には第一台座891が配置されており、ASIC基板の凹凸811に影響を受けることなく、第二の樹脂膜892にアライメントマーク凹部894が形成されている。アライメントマーク凹部は第一台座まで掘りこまれ、さらに反射膜893が形成されており、視認性が向上している。
【0066】
以上の工程により、ASIC基板上にネガレジスト系樹脂被膜で第一台座を配置し、その上にポジレジスト系樹脂被膜を用いて磁性ワイヤを設置する溝と複数のアライメントマーク用凹部とASIC基板の電極取出し部を同時に露光、現像後、さらに溝部のみに追加露光しキュア熱処理して、樹脂被膜を硬化させることで、逆台形状で溝の左右の形状が対称である溝を形成することができ、狭ピッチな微細コイルを有するGSR素子をASIC基板上に直接製造することが可能となる。
【実施例0067】
本発明のASIC基板上にポジレジスト系の樹脂被膜を用い磁性ワイヤを設置するための溝と複数のアライメントマークとASIC基板の電極取出し部を同時に露光、現像後、溝部のみに追加露光し、キュア熱処理をすることで、溝形状を対称にし、かつ、視認性の高いアライメントマークを用いて微細ピッチコイルを有するGSR素子を直接形成する製造フローを、
図9a~図9d、図10a~図10dを用いて以下に説明する。
【0068】
工程(ア);
まず、集積回路起因の数μmの凹凸91の存在するASIC基板90上において、ネガレジスト系の第一樹脂被膜92を10μm塗布する。露光、現像後、280℃で1時間、キュア熱処理を行い、逆台形状の溝とアライメントマークを配置する箇所に平坦で硬い第一台座を配置する(図9a、図9b))。
すなわち、溝形成部9Aとアライメントマーク形成部9Bからなる第一台座92を形成する。この時、第一台座の厚さは9μmである。
【0069】
工程(イ);
この状態では、第一台座表面にはまだASIC基板の凹凸91が転写され残っている。そこで、ASIC基板全面にレジストを塗布し、マスク材を用いて露光、現像をして第一台座上のみレジストを除去し、かつ第一台座以外のASIC面を保護した後、キュア熱処理で硬化した第一台座表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)で平坦化する。
その後、レジスト剥離液で第一台座以外のASIC表面を保護していたレジストを除去することで、図9cに示すように、平坦化された第一台座9Cを形成する。この時の第一台座9Cの膜厚は6μm程度である。
【0070】
工程(ウ);
次に、平坦化した第一台座の上にポジレジスト系の第二樹脂被膜93を10μm塗布し、溝部94、アライメントマーク凹部99、ASIC基板電極用取出し部96を同時に露光、現像する。第一台座9Cは平坦化しているので、溝形成部9Bとアライメントマーク形成部9Aの第二台座はASIC基板の凹凸91の影響は受けない。この時の露光量は1500mJ/cmである。
そして、マスクを用いて溝部9Bのみもう一度露光する。この時の露光量は40mJ/cmである。その後、キュア熱処理を行うと、熱処理時に発生する応力により、図9dに示すように、溝は逆台形状へと変化し、かつ、溝の上部の形状はほぼ左右対称となる。すなわち、開口部に近い溝の上部97ともう一方の溝の上部98は形状、高さがほぼ同じであり、非対称性が大幅に改善されている。
【0071】
工程(エ);
次に、ネガレジスト系の樹脂被膜をASIC基板101全体に塗布、露光、現像して溝部102のみにレジストを残す。その後、250℃で1時間キュア熱処理を行うことで、図10aに示すように、溝の底部にR形状103を形成する。
【0072】
工程(オ);
一方、アライメントマーク部も逆台形状であるため、その形状を急峻化するため、アライメントマーク部以外をレジストで保護し、第二樹脂被膜に形成した逆台形状のアライメントマーク凹部そのものをマスクとして第一台座をO2-RIEで1μm掘り込む。その後、保護していたレジストをレジスト剥離液で除去する(図10b)。
【0073】
工程(カ);
次に、ASIC基板全体に、Cr/Auの積層膜を0.01/0.03μm成膜する。この膜はアライメントマーク凹部では反射膜として用い、視認性を高める。そして、このアライメントマーク凹部を使い、ASIC基板全体にレジスト塗布、露光、現像を行う(図10c)。
めっき、エッチング工程を経て、逆台形状の溝面に沿って幅1.2μm、厚さ0.7μmの下部コイルを形成する(図10d)。
【0074】
工程(キ);
次に溝の下部コイルの上に、厚さ1μmの絶縁性ガラスで被覆されたCoFeB系の磁性ワイヤ119を張力76kg/mmを付加しながら配置し、接着剤、テープなどで仮止めする。そして、樹脂112を塗布、露光、現像、250℃、1時間のキュア熱処理をして溝に固定する。この時、磁性ワイヤ19には張力が付加されたまま熱処理されるので、GSR特性を改善できる。
【0075】
工程(ク);
磁性ワイヤはその表面をガラス(SiO2)被膜で覆われているので、磁性ワイヤに電極を接触させるため、この部分のガラス被膜を除去する。
まず、ASIC基板全面にレジストを塗布し、露光、現像して磁性ワイヤに電極を接触させる部分のみレジストを開口する。そして、CF4-RIEでガラス被膜を除去後、基板全体のレジストをレジスト剥離する。
【0076】
工程(ケ);
次に、磁性ワイヤと溝部の段差を解消するため、ポジレジスト113をASIC基板111全体に塗布、露光、現像して、溝部のみレジストを残し、250℃、1時間キュア熱処理することで、レジストを硬化させる。ポジレジストは熱処理をすることで、端部形状がなだらかになることから上部コイルの形成時の断線が防止できる。
【0077】
工程(コ);
そして、上部コイルと磁性ワイヤの導通部の引出し線、ASIC基板の電極取出し用開口部および配線(配線)を形成するため、Cr/Auの積層膜114を0.01/0.03μm成膜する(図11b)。
その後、レジスト塗布、露光、現像を行い、磁性ワイヤ119の上部に上部コイルと磁性ワイヤの導通部の引出し線パターンとASIC基板の電極取出し用開口部を形成する(図11c)。この時、アライメントマークは前述の図9d及び図10bに示したように、第一台座9C及び反射膜105を有することによりシグナル強度も十分にあり、何の問題もなくオートアライメントにより下部コイルとの合わせを行うことができる。
このパターンにめっき、ウェット後にレジストを除去することで磁性ワイヤ119の上部に線幅1.2μm、厚さ0.8μmの上部コイル117が形成される。下部コイルとの接続部はなだらか形状をしており、断線もなく上部コイルも形成される。
併せて、磁性ワイヤの導通部の引出し線、ASIC基板の電極取出し用開口部および配線118も形成される。
【0078】
本発明によりASIC基板上に直接製造したGSR素子の概略図を図8に示す。
ASIC基板81上の段差811を解消するため、溝部82とアライメント部89には、第一台座83が形成されている。ポジレジスト系樹脂被膜892には逆台形状の溝82、アライメントマーク凹部89,ASIC基板の電極取出し部832が形成されている。また、ASIC基板の電極取出し部832に近い側のレジスト821ともう一方のレジスト822のレジスト高さはほぼ同じである。
溝部82には底部にR形状を形成する樹脂被膜823が形成され、その上には溝形状に沿って下部コイル84が形成される。そして、その上に磁性ワイヤ85が配置されている。磁性ワイヤ85を溝部に固定する樹脂被膜851,磁性ワイヤ85と溝部82の段差を解消する樹脂被膜852が形成された後、上部コイル86が形成される。アライメントマーク部には反射膜893が形成されており、その視認性は高く、下部コイルと上部コイルの合わせに問題はない。
このように、ASIC基板上に微細ピッチコイルを有したGSR素子を一体化形成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、GSR素子とASICを一体化してGSRセンサの超薄型化、超小型化を実現するもので、生体内のモーションデバイスのように超小型で高性能を要求される用途での使用が期待される。
【0080】
本発明は、自動車用あるいはウェアラブルコンピュータ用などの小型、高性能のGSRセンサに応用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1:SiO2絶縁膜に溝を形成したASIC基板
11:ASIC基板、12:ASIC基板表面の保護膜、
13:SiO2絶縁膜、14:溝(溝部)
2:ポジレジスト系樹脂被膜にワイヤ配置用の溝とASIC基板の電極取出し用開口部を有するASIC基板
21:ASIC基板、22:ASIC基板表面の保護膜、
23:露光、現像、キュア熱処理後のポジレジスト系樹脂被膜、
23H:逆台形状の溝の左右のレジスト高さの差
231:キュア熱処理後の逆台形状のワイヤ配置用溝、232:ポジレジスト系樹脂被膜に形成したキュア熱処理後の電極取出し用開口部、
233:電極取出し部に近い側のキュア熱処理後の逆台形状のワイヤ配置用溝上部、234:もう一方のキュア熱処理後の逆台形状のワイヤ配置用溝上部
3:ASIC基板表面の凹凸を示す図
4:ASIC基板の金属膜成膜前のアライメントマークとB1-B2線におけるマーク及び、凹凸のシグナル
40:基板、
41:基板上のアライメントマーク凹部、
42:マスクのアライメントマーク
401:ASIC基板の凹凸起因のシグナル、411:アライメントマーク凹部のシグナル、412:マスクのアライメントマークのシグナル
51:ポジレジスト系樹脂被膜に、露光、現像した溝部を有するASIC基板
511:ASIC基板、512:ASIC基板表面の保護膜、
513:ポジレジスト系樹脂被膜、514:ワイヤ配置用溝
52:ポジレジスト系樹脂被膜に、露光、現像後、キュア熱処理をして逆台形状の溝部を有するASIC基板
521:ASIC基板、522:ASIC基板表面の保護膜、
523:キュア熱処理後のポジレジスト系樹脂被膜、524:キュア熱処理後のワイヤ配置用溝
6:露光、現像後のワイヤ配置用溝とASIC基板の電極取出し用開口部を有するASIC基板
61:ASIC基板、62:ASIC基板表面の保護膜、621:ASIC基板表面の保護膜の電極開口部、
63:露光、現像後のポジレジスト系樹脂被膜、631:ワイヤ配置用溝、632:ポジレジスト系樹脂被膜に形成した、ASIC
基板の電極取出し用開口部
81:ASIC基板、
82:逆台形状のワイヤ配置用溝、
821:電極取出し用の開口部に近い逆台形状の溝の上部、822:もう一方の溝の上部、823:逆台形状溝の底部のR形状を形成する樹脂被膜、
83:ASIC基板表面の保護膜
831:ASIC基板表面の保護膜に形成された電極開口部
832:ポリイミド系樹脂被膜に形成したASICの電極取出し用開口部
84:下部コイル、
85:磁性ワイヤ、
851:ワイヤを溝に固定する樹脂被膜、852:ワイヤと溝の段差を解消するための樹脂被膜、
86:上部コイル
89:アライメントマーク
891:第一台座、892:第二台座、893:アライメント部の反射膜
90:ASIC基板、
901:ASIC基板表面の保護膜
91:ASIC基板上の凹凸、92:第一樹脂膜、
9A:アライメントマーク用凹部形成部、9B:溝形成部、
9C:キュア熱処理、平坦化CMP後の第一台座
93:ポジレジスト系の第二樹脂被膜、94:逆台形状の溝、
95:アライメントマーク凹部、96:ASIC電極取出し用開口部、
97:ASIC電極取出し用開口部に近い側の溝レジスト
98:もう一方の側の溝レジスト、99:アライメントマーク凹部
101:ASIC基板、102:溝、103:ネガレジスト系樹脂被膜
104:金属膜、105:反射膜、106:下部コイルパターン、
107:下部コイル、108:ASIC電極取出し用開口部
111:ASIC基板、112:溝、113:ポジレジスト系樹脂被膜
114:金属膜、116:上部コイルパターン、
117:上部コイル、118:ASIC電極取出し用開口部
119:磁性ワイヤ
120:基板、
121:基板上のアライメントマーク凹部、122:マスクのアライメントマーク
123:アライメントマーク凹部のシグナル、124:マスクのアライメントマークのシグナル
13:ASIC基板、
13a:磁界検出素子、13b:アライメントマーク
141:第二樹脂被膜
142:溝
143:下部コイル、143a:下部コイルに接続する配線
144:磁性ワイヤ
145:上部コイル、145a:上部コイルに接続する配線
146:ワイヤ端子
147:ワイヤ配線
148:ワイヤ電極
149:コイル電極

















図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図10a
図10b
図10c
図10d
図11a
図11b
図11c
図11d
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-04-29
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性ワイヤ、前記磁性ワイヤを周回する下部コイルと上部コイルよりなる10μm以下のコイルピッチを有する検出コイル、および電極配線からなるGSR素子を特定用途向け集積回路(以下、ASICという。)の基板上に直接製造するGSR素子の製造方法において、
(1)前記ASIC基板上にポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂
被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記P系樹脂被膜に前記磁性ワイヤを配置するための溝と前記ASIC基板上の電極取出し用開口部(以下、開口部という。)を同時に形成し、
前記磁性ワイヤを配置するための溝部のみ追加露光した後、キュア熱処理して前記P系樹脂被膜を硬化し、溝上部の対称性を改善した逆台形状溝とASIC基板上の前記開口部を形成する工程と、
(2)前記ASIC基板の全面に金属膜を成膜し、前記逆台形状溝に被覆した前記金属膜を使って、前記逆台形状溝の溝面に沿って前記下部コイルを形成する工程と、
(3)前記下部コイルを形成した前記逆台形状溝に張力付加した前記磁性ワイヤを配置して樹脂で仮固定し、次いでキュア熱処理して固定する工程と、
(4)前記磁性ワイヤと前記電極配線を接合する部分のみ、前記磁性ワイヤを被覆している絶縁性ガラスをCF -RIEにより除去する工程と、
(5)前記ASIC基板の全面に金属膜を成膜し、前記上部コイルと前記電極配線を形成する工程と、
(6)前記磁性ワイヤと前記検出コイルと前記電極配線からなる素子の集合体からなる素子基板を個片化する工程と、
からなることを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記工程(1)が、
(1A)前記ASIC基板上にポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記P系樹脂被膜に前記磁性ワイヤを設置するための溝と前記ASIC基板上の電極取出し用開口部(以下、開口部という。)アライメントマークとを同時に形成し、
さらに、前記磁性ワイヤを設置するための溝部のみに追加露光した後、キュア熱処理して前記P系樹脂被膜を硬化し、溝上部の対称性を改善した逆台形状溝を形成する、
ことを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、前記工程(1)が、
(1B)前記ASIC基板上にネガレジスト系の第一樹脂被膜(以下、N系第一樹脂被膜という。)を塗布、露光、現像して、キュア熱処理後に平坦化処理をして、平坦で硬い樹脂製の第一台座を溝形成部とアライメントマーク形成部に形成した後、
前記ASIC基板に溝深さよりも厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜(以下、P系第二樹脂被膜という。)を塗布して第二台座とし、前記第二台座に前記溝と前記ASIC基板の電極取出し用開口部(以下、開口部という。)とアライメントマークを露光、現像して形成し、
さらに溝部のみに追加露光した後に第二台座をキュア熱処理して溝上部の対称性を改善した逆台形状溝を形成する、
ことを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1において、前記工程(1)が、
(1C)前記ASIC基板上にポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記P系樹脂被膜に前記磁性ワイヤを配置するための溝と前記ASIC基板上の電極取出し用開口部(以下、開口部という。)を同時に形成し、
前記磁性ワイヤを配置するための溝部のみに追加露光した後、キュア熱処理して前記P系樹脂被膜を硬化し、溝上部の対称性を改善した逆台形状溝とASIC基板上の前記開口部を形成し、
さらに、前記ASIC基板にネガレジスト系の樹脂被膜(以下、N系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記逆台形状溝の溝部のみにN系樹脂被膜を残し、キュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成する、
ことを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項5】
請求項2において、前記工程(1A)が、
(1D)前記ASIC基板上にポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記P系樹脂被膜に前記磁性ワイヤを設置するための溝と前記ASIC基板上の電極取出し用開口部(以下、開口部という。)とアライメントマークとを同時に形成し、
前記磁性ワイヤを設置するための溝部のみに追加露光した後、キュア熱処理して前記P系樹脂被膜を硬化し、溝上部の対称性を改善した逆台形状溝を形成し、
さらに、前記ASIC基板にネガレジスト系の樹脂被膜(以下、N系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記逆台形状溝の溝部のみにN系樹脂被膜を残し、キュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成する、
ことを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項6】
請求項3において、前記工程(1B)が、
(1E)前記ASIC基板上にネガレジスト系の第一樹脂被膜(以下、N系第一樹脂被膜という。)を塗布、露光、現像して、キュア熱処理後に平坦化処理をして、平坦で硬い樹脂製の第一台座を溝形成部とアライメントマーク形成部に形成した後、
前記ASIC基板に溝深さよりも厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜(以下、P系第二樹脂被膜という。)を塗布して第二台座とし、前記第二台座に前記溝と前記ASIC基板の電極取出し用開口部(以下、開口部という。)とアライメントマークを露光、現像して形成し、
次いで、溝部のみに追加露光した後に第二台座をキュア熱処理して溝上部の対称性を改善した逆台形状溝を形成し、
さらに、前記ASIC基板にネガレジスト系の樹脂被膜(以下、N系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記逆台形状溝の溝部のみにN系樹脂被膜を残し、キュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成する、
ことを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1において、前記工程(5)が、
(5A)前記逆台形状溝に前記磁性ワイヤを配置後、前記ASIC基板の全面にポジレジスト系樹脂被膜を塗布し、露光、現像して前記溝と磁性ワイヤ部のみにポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂被膜という。)を残し、キュア熱処理して溝と磁性ワイヤの段差を滑らかにする工程と、
前記ASIC基板の全面に金属皮膜を成膜し、前記上部コイルと前記電極配線を形成する工程を、
有することを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項において、
前記磁性ワイヤを配置するための前記溝部のみを追加露光する際の露光量は、前記溝部の前記露光量の4%以下であることを特徴とするGSR素子の製造方法
【請求項9】
請求項3または請求項6において、
前記N系第一樹脂被膜の膜厚は、前記ASIC基板上の凹凸の3倍以上であることを特徴とするGSR素子の製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界検出素子と特定用途向け集積回路(以下、ASICと言う)との一体化プロセスによるGSR素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高感度磁気センサには、ホールセンサ、GMRセンサ、TMRセンサ、高周波キャリアセンサ、FGセンサ、MIセンサ、GSRセンサなどがある。これらのセンサのうち、ホールセンサ、GMRセンサ、TMRセンサ、キャリアセンサは素子とASICが一体化されて小型化、薄型化は実現されているが、検出感度の改善が課題である。
一方、FGセンサ、MIセンサ、GSRセンサは高い感度を有するが、素子とASICが別々に配置されてワイヤボンディングで接合されており、センサの薄型化、小型化が課題である。
【0003】
この課題を解決するために、本発明者らは、GSR素子をASIC表面の上に形成する技術開発に取り組んだ結果、センサの小型化、薄型化を実現した(特許文献1)。
特許文献1にて、ASIC面上に絶縁性レジストを塗布し、そこに磁性ワイヤを配置する溝を形成し、磁性ワイヤと磁性ワイヤを周回する検出コイルおよび電極からなるGSR素子をASIC面上に一体形成した薄型高感度磁気センサが開示されている。しかし、その製造方法についてその後の改良が続けられているが、現時点ではその技術の詳細は公開されていない。
【0004】
一方、センサの高感度化のためには、微細ピッチコイルを形成してコイルの巻き数を増やす必要がある。しかし、コイルピッチを微細化するほど、ASIC基板の位置とマスクの位置をさらに精度よく合わせることが求められる。その精度を実現するためには、ASIC基板上に視認性の高いアライメントマークを精度高く形成する必要がある。
【0005】
一般的には、アライメントマークは平坦な部分に作られたSiO2膜に形成するために、視認性に問題はなかった。またアライメントマークの形成方法は、特許文献2、特許文献3および特許文献4などに開示されているが、いずれも感光性樹脂の上にアライメントマークを形成するものではない。感光性樹脂上に視認性の高いアライメントマークを形成する技術の検討も課題のひとつである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】公開特許公報2019-191016
【特許文献2】公開特許公報2006-229132
【特許文献3】公開特許公報2009-004793
【特許文献4】特許公報第2016776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
磁性ワイヤを周回するコイルをワイヤ近傍に形成するためには、磁性ワイヤを配置する溝に沿って下部コイルを形成する必要がある。本発明者らは、Si基板に溝を形成し溝の形状を逆台形状にすることで、断線せずに溝に沿って下部コイルを形成できることを見出した。
【0008】
しかし、ASIC基板上にGSR素子を一体化形成する際には、ASIC基板面上には回路配線が存在するので、ASIC基板に直接溝を加工することはできない。そこで、ASIC基板11上にSiO などの絶縁膜を成膜し、RIE(Reactive Ion Etching)で溝を作製したが、その形状は図1に示すように直方体形状となってしまい、逆台形状の溝を形成できないことがわかった。
【0009】
そこで、ASIC基板上に磁性ワイヤを配置するための逆台形状の溝を形成するプロセスを検討した結果、以下の3つの課題があることがわかった。
【0010】
第1の課題は、逆台形状溝の形成方法である。前述のように、SiO2などの絶縁膜を成膜し、RIEで溝を作製するとみぞの形状は直方体となってしまうため、レジストを用い、ホトリソ工程のみで溝形成する検討を行った。一般的に構造物として残す感光性樹脂としてはエポキシ系のネガタイプのレジスト(以下、ネガレジストという。)が知られている。ネガレジストの特徴はパターニング後のエッジ形状が急峻であり、構造物として残すためのキュア熱処理後も直方体形状の溝となって形状変化が起こらなかった。したがって、ネガレジストを用いて溝に沿って下部コイルを形成することは困難であることがわかった。
【0011】
第2の課題は、ネガレジストに代わり、ポジレジスト系樹脂被膜を用いて逆台形状溝の形成プロセスを検討する過程で起きた溝が非対称となってしまうという問題である。
ASIC基板には既に集積回路配線が存在し、電極取出し用開口部などの配置が決まっており、図2(a)に示すように、磁性ワイヤを配置する直線的な溝231を形成できる場所には制限がある。すなわち、溝の左右の構造はASIC基板の配線に起因するので、ワイヤを配置する直線的な溝を形成する場所近傍のASIC基板表面の保護膜21の電極開口部221は溝に対して左右非対称となってしまう。
その結果、ポジレジスト系の樹脂被膜23に溝231とASIC基板の電極開口部221を同時にマスク露光、現像をした後に逆台形状溝を形成するためにキュア熱処理を行うと、図2(b)に示すように、溝の上部の形状が左右非対称になってしまうという問題が生じる。尚、ここで溝の上部の形状が左右非対称とは、溝を形成するレジストの高さが、溝の左右で異なることを言う。すなわち、ASIC基板の電極取出し用開口部232に近い側のレジスト233ともう一方のレジスト234のレジスト高さの差23Hが大きく、非対称な溝形状となる。このような溝形状では、焦点深度が変ってしまう、その後の金属膜のつきまわりが変ってしまうなど、微細コイルの形成が困難となる。
【0012】
一般的な方法として、レジストの凸部を平坦にするには、CMP(Chemical-Mechanical Polishing)を用いる方法があるが、磁性ワイヤを配置するための溝部の幅は20μm以下、深さは5~15μmであるため、溝の中に異物が残ってしまう懸念があり、適用は困難である。
【0013】
第3の課題は、アライメントマークの形成方法である。センサの高感度化を達成するためには、コイルピッチを5μm以下へと微細化しコイルの巻き数を増やす必要があるが、コイルピッチを微細化するほど、ASIC基板の位置と複数個のマスクの位置をさらに精度よく合わせることが求められる。そのため本発明者らは、アライメントマークを溝と同時形成することに思い至った。しかし、従来アライメントマークは基板保護膜であるSiO 上に形成するが、溝と同時形成するには樹脂被膜上に形成することになる。しかし、図3に示すようにASIC基板表面には集積回路起因の2~3μmの凹凸があり、溝形成に必要な膜厚(5~15μm程度)の樹脂被膜を塗布しても、その表面には凹凸が転写されてしまい、SiO 上のようにアライメントマーク形成に必要な平坦な面を得ることが困難である。
【0014】
また、コイルピッチを微細化するほど、優れた上下のコイルの合わせ精度が必要となり、高度な位置合わせ機能を有するオートアライメント機構などが必要となる。オートアライメント機構は、アライメントマーク画像のコントラストに左右される。前述のようにASIC基板表面の凹凸があると、図4に示すようにシグナルが乱れてマーク画像のコントラストが歪んでしまう。そのため、マークを誤認識し、コイルピッチ5μm以下の微細なコイルを形成しようとすると、下部コイル形成後、上部コイルを形成する際に両者の接続位置がずれ、コイルの接続不良という問題が発生する。
【0015】
本発明は、これらの問題を解決して、磁界検出素子と特定用途向け集積回路(以下、ASICと言う。)との一体化プロセスにおいて、ASIC基板上の樹脂被膜上にワイヤを配置する逆台形状の溝を形成し、さらに溝形状の対称性を改善し、かつ、コントラスト性に優れたアライメントマークを溝と同時に形成し、微細コイルピッチで形成された検出コイルを有するGSR素子をASIC基板上に一体化形成する製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の課題である、逆台形状溝の形成方法に関し、本発明者らは、熱処理後に形状が変化するため、構造物として残すレジストとしてはあまり使われないポジレジスト系の感光性樹脂の特性に着目し、検討を進めた。
その結果、図5に示すように、(a)ポジレジスト系の樹脂被膜をASIC基板全体に塗布後、マスク材を通して露光、現像後に得られる直方体状の溝形状を、(b)キュア熱処理することで、逆台形状にできることを見出した。キュア熱処理をすると、熱処理時に発生する応力で、溝は直方体形状から逆台形状へと変化する。すなわち、逆台形状溝を形成するにはポジレジスト系の樹脂被膜が必須となる。
【0017】
第2の課題である、ポジレジスト系の樹脂被膜をASIC基板全体に塗布後、マスク材を通して露光、現像後に得られる直方体状の溝形状を、キュア熱処理後に形成された逆台形状の溝上部の形状が非対称となってしまい、コイルの形成が難しいという問題に関しては、前記ポジレジスト系の樹脂被膜に溝を形成する際、ASIC基板の電極の取出し部を同時に開口させるため、前記溝部の左右のポジレジスト系の樹脂被膜のボリューム差が生じ、キュア熱処理時の収縮の仕方がちがうためと考えた。
そこで、検討を進めた結果、溝、アライメントマーク、ASIC基板の電極取出し用開口部を同時に露光、現像した後、さらに溝部のみ部分露光を追加し、キュア熱処理をすることで、溝部の左右の収縮を制御できる図6に示す方法を見出した。この方法を図6の工程フロー図を使って説明する。
この後のコイル形成工程への影響を考慮し、溝の左右のレジストの高さの差は0.2μm以下とすることが好ましい。
【0018】
図6(a)に示すように、ASIC基板61表面には保護膜62が形成されている。
ASIC基板61全面にポジレジスト系の樹脂被膜63を塗布し、マスク材を通して露光、現像することで、溝631とアライメントマーク用凹部(図示せず)とASIC基板の電極取出し用開口部632を樹脂被膜63に形成する
このままキュア熱処理をすると、図2(b)に示すように溝の形状は逆台形状となるが、溝上部は左右非対称となってしまう。
そこで、さらに溝部のみもう一度追加露光する。その後キュア熱処理を行うと、図6(b)に示すように溝631は逆台形状となり、かつ、追加露光を行っているので、溝上部の形状はASIC基板の開口部の位置によらず、左右対称となる。すなわち、ASIC基板の電極取出し用開口部632に近い側の溝レジスト633ともう一方の溝レジスト634のレジスト高さは溝の左右のレジストの高さの差は0.2μm以下となって、ほぼ同じである。
【0019】
1回目の露光量が1500mJ/cm、溝深さ8μm、溝とASIC基板上の電極取出し用の開口部の距離が50μmの場合の溝上部の非対称性(溝の左右のレジスト高さの差:以下、左右差と言う)の関係を図7に示す。
追加露光をしない場合、左右差は0.6μmであるが、追加露光をすることで、40mJ/cmで左右差が最小となり、それ以上の露光量では、反対側の溝の上部が高くなっていく。
微小ピッチコイル形成には、左右差は0.2μm以下が好ましく、この場合、追加露光量は20~60mJ/cmの範囲で左右差0.2μm以下となっている。すなわち、追加露光量は1回目の露光量の1~4%が好ましい。1%より低いとでは溝上部の左右差が0.2μm以上であり、4%を超えると最初の左右差が逆転し、0.2μm以上の左右差となり、溝の形状が変化してしまう。
【0020】
次に、第3の課題であるアライメントマークを溝と同時に形成する際のASIC基板表面の2~3μmの凹凸により、平坦な面にアライメントマークを形成することができないという問題については、1回の樹脂被膜を使った方法に代えて、機能の異なる樹脂被膜を2回に分けて形成する2層樹脂被膜法を考え、溝とアライメントマークを樹脂被膜上に同時に形成できることを見出した。
【0021】
まず、2層樹脂被膜法を用いて作製したGSR素子の断面図を図8に示し、以下、図9a~図9dを用いて本発明による2層樹脂被膜法について説明する。
図9aに示すように、ASIC基板90の表面にはASIC基板の保護膜901と、回路配線起因の2~3μmの凹凸91が存在する。
第1ステップはまず、この段差を解消すべく、図9bに示すように、溝形成部9Bとアライメントマーク用凹部形成部9Aに第一台座92を形成する。すなわち、ASIC基板90上にネガレジスト系の第一樹脂被膜を塗布し、マスク材を用いて露光、現像を行い、GSR素子形成のための磁性ワイヤ配置用の溝形成部9Bとアライメントマーク形成部9Aからなる第一台座92を形成する。
【0022】
この状態では、第一台座92表面にはまだ凹凸が存在するため、キュア熱処理を行って硬化させた後、表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)で平坦化することで図9cに示すように、溝形成部とアライメントマーク形成部に平坦な第一台座9Cを形成する。
このCMPによりASIC基板の電極開口部の破損が生じる懸念があるので、CMP前にASIC基板全面にレジストを塗布し、台座以外のASIC面を保護してCMPを行い、CMP後にレジスト剥離液で除去することで、ASIC基板の電極開口部の破損を防止できる。
【0023】
第1ステップにおける第一樹脂被膜は台座上部が平坦でかつそのエッジ部は急峻な台座形状を確保することが好ましく、ポリイミド系のネガレジストが好ましいが、ポジレジストの使用も可能である。
【0024】
第2ステップは第一台座9Cの上に溝を形成するためのプロセスである。
図9dに示すように、第一台座9Cの上に、溝の深さより厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜93を塗布し、この第二樹脂被膜93に露光、現像、キュア熱処理をすることで、逆台形状溝94とアライメントマーク用凹部95を同時に形成する。
第一台座9Cを平坦化しているので、溝部9Bとアライメントマーク部9A自体には凹凸がない。
なお、第1層目の第一台座を形成する第一樹脂被膜の膜厚は、CMPを行うため、ASIC表面の凹凸(通常2~3μm程度)の3倍以上が好ましい。
第2層目の第二樹脂被膜の膜厚は溝形成(溝の深さ5~10μm程度)を可能にするため、最低溝の深さ以上の厚さを確保する必要がある。
【0025】
キュア熱処理した第一台座と二層目の第二樹脂被膜との密着性については、懸念課題であったが樹脂の種類が異なっても強固に一体化することを確認した。
また、アライメントマーク凹部は溝と同時に形成するため、溝と同様に逆台形状になり、視認性が低下する懸念がある。
そこで、図9dに示すように、アライメントマーク部以外をレジストで保護し、この第二樹脂被膜に形成した逆台形状のアライメントマーク凹部そのものをマスクとして第一台座をRIEで掘り込むことで、アライメントマーク凹部の急峻度を高めることができる。
この時、RIEのエッチングの選択比は、第一台座、第二樹脂被膜ともほぼ同じである。したがって、その堀込み量は0.5~1.5μmが好ましい。0.5μm以下では急峻化の効果が小さく、視認性の向上が認められない。1.5μm以上では第二樹脂被膜の膜減りが大きくなり、視認性に影響がでる。
このように2層構造の樹脂被膜を採用することで1層構造では実現できない凹凸の除去が可能になる。
【0026】
しかしながら、この状態ではASIC基板上の凹凸が第一樹脂膜、第二樹脂膜を通して見えてしまうため、アライメントに必要な視認性の高いコントラストが確保できない。
そこで、アライメントマーク上に反射機能を強化する金属膜を成膜することにより、アライメントマークの視認性を高めることとした。
図12に示すように、第一台座まで堀込みさらに、反射膜を形成したアライメントマークのシグナルは基板120上のアライメントマーク凹部121のシグナル123とマスクのアライメントマーク122のシグナル124のみであり、コントラストも問題なく、視認性が向上していることがわかる。
尚、第一台座を平坦化しない場合は、金属膜を成膜してもASIC基板の凹凸が解消できないため、アライメントマークの十分な視認性を確保することができない。つまり、台座の平坦化と反射機能を強化する金属膜の成膜が必須である。
【0027】
他方、逆台形状の溝に下部コイルを形成するために金属膜の成膜が必要であるが、前述のアライメントマークの反射機能を強化するための金属膜と下部コイルのそれとは同じ金属膜とすることが好ましい。
【0028】
また、金属膜を成膜する前に、ネガレジスト系の樹脂被膜を塗布、露光、現像して溝部のみに樹脂被膜を残してキュア処理を行うことで、溝の底部にR形状を形成し、溝底部の金属膜の断線を防止できる。
【0029】
このように、底部がR形状となった溝に金属膜を成膜し、基板全面にレジスト塗布、露光、現像したパターンにめっき後、レジスト除去してコイルパターン以外の下地膜を除去することで下部コイルを形成する。
【0030】
下部コイルを形成した溝に磁性ワイヤを張力30~100kg/mm を負荷して配置し、ワイヤ両端を接着剤、テープなどで仮固定する。さらに樹脂を塗布、露光、現像、キュア熱処理をすることで、磁性ワイヤを溝内部に固定する。この時、磁性ワイヤは両端を固定されたままであり、張力を保持したままキュア熱処理されることにより、GSR特性の向上を図ることができる。
【0031】
溝内部に固定された磁性ワイヤにワイヤ端子(磁性ワイヤの両端部)を設けるために磁性ワイヤを被覆している絶縁性ガラスの一部を除去する。
一般的には、フッ酸処理が知られているが、ワイヤ端子周辺の損傷が大きく、素子形成に多大な影響を及ぼしてしまうため、検討した結果、CFガスを用いたRIE法でガラス除去できることを見出し、以降、RIE法でガラス除去を行なう。
【0032】
逆台形状溝に磁性ワイヤを配置後、溝と磁性ワイヤとの段差解消のため、ASIC基板の全面にポジレジスト系樹脂被膜を塗布し、露光、現像して溝と磁性ワイヤ部のみにポジレジスト系の樹脂被膜を残し、キュア熱処理して溝と磁性ワイヤの段差を滑らかにする。
一般的には、構造物として残すレジストとしてはネガタイプのレジストが知られているが、ネガタイプのレジストはエッジ形状が急峻となるため、次工程で上部コイル用の金属膜がうまくつきまわらず、断線の懸念がある。
そこで、キュア熱処理後に形状が変化することから構造物として残すレジストとしては一般的に使われないポジレジスト系樹脂被膜について検討した。その結果、ポジレジスト系樹脂被膜はキュア熱処理後にそのエッジ形状をなだらかに改善でき、断線の懸念なく段差を解消することができる。
【0033】
そして、上部コイルを形成するために金属膜を成膜する。その後、レジスト塗布、露光、現像工程により、磁性ワイヤの上には上部コイル、基板上には電極パターン(ワイヤ端子、配線を含む。)を形成し、めっき、ウェット後にレジストを除去することで上部コイルが形成される。
下部コイルとの接続部はなだらかな形状をしており、断線もなく上部コイルを形成できることにより磁性ワイヤを周回する検出コイルが得られる。また、前記アライメントマークを用いることで合わせ精度が向上し微細なコイルピッチにおいても下部コイルとのずれなく上部コイルが形成できる。
このようにASIC基板上の樹脂被膜に逆台形状の溝とアライメントマークを同時に形成し、かつ逆台形状の溝上部の形状の対称性を大幅に改善することで、3μm以下の微細なコイルピッチの形成が可能となることを見出した。
【0034】
以上説明したように、本発明はポジレジスト被膜を活用した逆台形状溝の形成法、溝両側の高さの対称性を確保する追加露光法および精度の高いアライメントマークを樹脂被膜上に形成する2層樹脂被膜法という3つの新技術を考案してASIC基板上に直接素子を形成する方法を発明したものである。
【発明の効果】
【0035】
本発明により、ASIC基板にダメージを与えることなく、上部形状の対称性がある磁性ワイヤを配置するための逆台形状の溝と視認性の高いアライメントマークを感光性樹脂被膜上に同時に形成することができ、かつ、溝の対称性を改善できることから、ASIC基板上に5μm以下の微細なコイルピッチを有するGSR素子を一体化形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ASIC基板上のSiO 絶縁膜にRIEで形成した溝を示す図である。
図2】ASIC基板の電極取出し用開口部とワイヤ配置用溝をポジレジスト系樹脂被膜に露光、現像した後の素子の平面図(a)、及びA-A‘断面図(b)である。
図3】ASIC基板表面の凹凸を示す図である。
図4】ASIC基板の金属膜成膜前のアライメントマークとB1-B2線におけるマーク及び、凹凸のシグナルを示す図である。
図5】ASIC基板のポジレジスト系樹脂被膜にワイヤ配置用溝を露光、現像した後の形状(a)、及び、キュア熱処理をして逆台形状になった溝(b)である。
図6】ASIC基板のポジレジスト系樹脂被膜にワイヤ配置用溝とASIC基板の電極取出し用開口部を露光、現像した後の形状(a)、及び、露光、現像後にワイヤ配置用溝部のみ追加露光し、キュア熱処理をした溝とASIC基板の電極取出し用開口部を示す図である。
図7】ASIC基板の電極取出し用開口部とワイヤ配置用溝をポジレジスト系樹脂被膜に露光、現像後、溝部のみに追加露光する追加露光量と左右差の関係を示すグラフである。
図8】本発明により作製したGSR素子を示す断面図である。
図9a】ASIC基板表面の回路配線起因の2~3μmの凹凸を示す図である。
図9b】溝部とアライメントマーク部に形成した第一台座を示す図である。
図9c】溝部とアライメントマーク部に形成した第一台座をCMPで平坦化した図である。
図9d】第2樹脂被膜に逆台形状溝部とアライメントマーク用凹部とASIC基板の電極取出し用開口部を同時に形成し、溝部のみに追加露光後にキュア熱処理をした図である。
図10aASIC基板全面にネガレジスト系の樹脂被膜を塗布し、マスク材を通して露光、現像、キュア熱処理をして、溝の底部にR形状を形成した図である。
図10bASIC基板表面に金属膜を成膜した図である。
図10c基板全面にレジストを塗布し、マスク材を通して露 光、現像を行い、コイルパターンを形成した図である。
図11aASIC基板全面にポジレジスト系の樹脂被膜を塗布し、マスク材を通して露光した図である。
図11b基板全面に金属膜を成膜する図である
図11c上部コイルパターンを形成した図である。
図11d上部コイルを形成した図である。
図12】ASIC基板の金属膜成膜後のアライメントマークとB-B2線におけるマーク及び、凹凸のシグナルを示す図である。
図13】磁界検出素子(集合体)とアライメントマークの平面図を示す図である。
図14】磁界検出素子の平面図を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明のGSR素子の製造方法は、
磁性ワイヤ、前記磁性ワイヤを周回する下部コイルと上部コイルよりなる10μm以下のコイルピッチを有する検出コイル、および電極配線からなるGSR素子を特定用途向け集積回路(以下、ASICという。)の基板上に直接製造するGSR素子の製造方法において、
(1)前記ASIC基板上にポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂
被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記P系樹脂被膜に前記磁性ワイヤを配置するための溝と前記ASIC基板上の電極取出し用開口部(以下、開口部という。)を同時に形成し、
前記磁性ワイヤを配置するための溝部のみ追加露光した後、キュア熱処理して前記P系樹脂被膜を硬化し、溝上部の対称性を改善した逆台形状溝とASIC基板上の前記開口部を形成する工程と、
(2)前記ASIC基板の全面に金属膜を成膜し、前記逆台形状溝に被覆した前記金属膜を使って、前記逆台形状溝の溝面に沿って前記下部コイルを形成する工程と、
(3)前記下部コイルを形成した前記逆台形状溝に張力付加した前記磁性ワイヤを配置して樹脂で仮固定し、次いでキュア熱処理して固定する工程と、
(4)前記磁性ワイヤと前記電極配線を接合する部分のみ、前記磁性ワイヤを被覆している絶縁性ガラスをCF -RIEにより除去する工程と、
(5)前記ASIC基板の全面に金属膜を成膜し、前記上部コイルと前記電極配線を形成する工程と、
(6)前記磁性ワイヤと前記検出コイルと前記電極配線からなる素子の集合体からなる素子基板を個片化する工程と、
からなることを特徴とする。
【0038】
また、上記の工程(1)において、
(1A)前記ASIC基板上にポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記P系樹脂被膜に前記磁性ワイヤを設置するための溝と前記ASIC基板上の電極取出し用開口部とアライメントマークとを同時に形成し、
さらに、前記磁性ワイヤを設置するための溝部のみに追加露光した後、キュア熱処理して前記P系樹脂被膜を硬化し、溝上部の対称性を改善した逆台形状溝を形成することを特徴とする。
【0039】
また、上記の工程(1)において、
(1B)前記ASIC基板上にネガレジスト系の第一樹脂被膜(以下、N系第一樹脂被膜という。)を塗布、露光、現像して、キュア熱処理後に平坦化処理をして、平坦で硬い樹脂製の第一台座を溝形成部とアライメントマーク形成部に形成した後、
前記ASIC基板に溝深さよりも厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜(以下、P系第二樹脂被膜という。)を塗布して第二台座とし、前記第二台座に前記溝と前記ASIC基板の電極取出し用開口部とアライメントマークを露光、現像して形成し、
さらに溝部のみに追加露光した後に第二台座をキュア熱処理して溝上部の対称性を改善した逆台形状溝を形成することを特徴とする。
【0040】
また、上記の工程(1)において、
(1C)前記ASIC基板上にポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記P系樹脂被膜に前記磁性ワイヤを配置するための溝と前記ASIC基板上の開口部を同時に形成し、
前記磁性ワイヤを配置するための溝部のみに追加露光した後、キュア熱処理して前記P系樹脂被膜を硬化し、溝上部の対称性を改善した逆台形状溝とASIC基板上の前記開口部を形成し、
さらに、前記ASIC基板にネガレジスト系の樹脂被膜(以下、N系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記逆台形状溝の溝部のみにN系樹脂被膜を残し、キュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成することを特徴とする。
【0041】
また、上記の工程(1A)が、
(1D)前記ASIC基板上にポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記P系樹脂被膜に前記磁性ワイヤを設置するための溝と前記ASIC基板上の開口部とアライメントマークとを同時に形成し、
前記磁性ワイヤを設置するための溝部のみに追加露光した後、キュア熱処理して前記P系樹脂被膜を硬化し、溝上部の対称性を改善した逆台形状溝を形成し、
さらに、前記ASIC基板にネガレジスト系の樹脂被膜(以下、N系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記逆台形状溝の溝部のみにN系樹脂被膜を残し、キュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成する、
ことを特徴とする。
【0042】
また、上記の工程(1B)が、
(1E)前記ASIC基板上にネガレジスト系の第一樹脂被膜(以下、N系第一樹脂被膜という。)を塗布、露光、現像して、キュア熱処理後に平坦化処理をして、平坦で硬い樹脂製の第一台座を溝形成部とアライメントマーク形成部に形成した後、
前記ASIC基板に溝深さよりも厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜(以下、P系第二樹脂被膜という。)を塗布して第二台座とし、前記第二台座に前記溝と前記ASIC基板の電極取出し用開口部(以下、開口部という。)とアライメントマークを露光、現像して形成し、
次いで、溝部のみに追加露光した後に第二台座をキュア熱処理して溝上部の対称性を改善した逆台形状溝を形成し、
さらに、前記ASIC基板にネガレジスト系の樹脂被膜(以下、N系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記逆台形状溝の溝部のみにN系樹脂被膜を残し、キュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成する、
ことを特徴とする。
【0043】
また、上記の工程(5)において、
(5A)前記逆台形状溝に前記磁性ワイヤを配置後、前記ASIC基板の全面にポジレジスト系樹脂被膜を塗布し、露光、現像して前記溝と磁性ワイヤ部のみにポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂被膜という。)を残し、キュア熱処理して溝と磁性ワイヤの段差を滑らかにする工程と、
前記ASIC基板の全面に金属膜を成膜し、前記上部コイルと前記電極配線を形成することを特徴とする。
【0044】
また、前記磁性ワイヤを配置するための前記溝部のみ追加露光する際の追加露光量は、前記溝部の前記露光量の4%以下であることを特徴とする。
【0045】
また、平坦で硬い樹脂製の第一台座を形成するために塗布する前記N系第一樹脂被膜の膜厚は、前記ASIC基板上の凹凸の3倍以上であることを特徴とする。
【0046】
さらに、前記ASIC基板の全面に金属皮膜を成膜し、前記金属皮膜を前記アライメントマーク用凹部の反射膜として使うことにより視認性の高いアライメントマークを形成する工程と、
前記視認性の高いアライメントマークと前記逆台形状溝に被覆した前記金属皮膜を使って、前記逆台形状溝の溝面に沿って前記下部コイルを形成する工程を有することが好ましい。
【0047】
さらに、前記第二台座に形成した前記アライメントマーク用凹部以外を保護した後、前記第二台座に形成した前記アライメントマーク用凹部自身をマスクにRIE加工をして前記アライメントマーク用凹部の第一台座を掘りこむことが好ましい。
【0048】
さらに、前記溝の前記下部コイルの上に配置する前記磁性ワイヤは、弾性限を超える張力30~100kg/mm を負荷し、樹脂により前記溝内に埋設して250~350℃の温度にて張力熱処理して前記磁性ワイヤを固定することが好ましい。
【0049】
これにより、ASIC基板にダメージを与えることなく、上部形状の対称性がある磁性ワイヤを配置するための逆台形状溝と視認性の高いアライメントマークを感光性樹脂被膜上に同時に形成することができ、かつ、溝の対称性を改善できることから、ASIC基板上に10μm以下の微細なコイルピッチを有するGSR素子を一体化形成することが可能となる。
【0050】
以下、詳細に説明する。
磁性ワイヤと検出コイルおよび電極配線をASICの基板上に直接製造するGSR素子の製造方法である。
磁性ワイヤは、CoFeSiB系アモルファス合金であり、その直径は1~15μmにて、0.5~2μmの厚みの絶縁被膜(ガラス被膜)で周囲を被覆したワイヤである。
検出コイルは、下部コイル、上部コイルおよび接続部とからなり、コイルピッチの幅は1~5μm、コイルの幅は0.5~4.5μm、下部、上部コイルの厚みはそれぞれ0.1~1.0μmである。
【0051】
電極配線は、外部電極、電極(端子)および外部電極と電極(端子)を接続する配線(接続配線)を総称している。
外部電極とは、GSR素子からの入出力の電極にて、本発明ではASICの電極と接続ないし一体的に形成される。磁性ワイヤの両端および検出コイルの両端には電極(端子ともいう。)が形成される。
検出コイルと電極配線は、導電性を有する金属例えば金などを蒸着、めっきなどすることにより形成される。
【0052】
ASIC基板は、GSR素子を多数製造することができるように多数のASICが形成されている所定の大きさからなる。
例えば、ASIC基板の大きさは、縦20mm、横20mmとすると、
1個のGSR素子と1個のASICからなる素子の集合体からなる素子基板に相当し、素子基板の個片化により50~1500個程度の素子を得ることができる。
【0053】
工程(1)、(1A)及び(1B)は、ASIC基板に磁性ワイヤを整列させるための逆台形状溝を形成する工程である。
図9aに示すように、ASIC基板90の表面には回路配線起因の2~3μmの凹凸91が存在する。
そこで、まず、この段差を解消すべく、図9bに示すように、溝形成部9Bとアライメントマーク用凹部形成部9Aに第一台座92を形成する。すなわち、ASIC基板90上にネガレジスト系の第一樹脂被膜を塗布し、マスク材を用いて露光、現像を行い、GSR素子形成のための磁性ワイヤ配置用の溝形成部9Bとアライメントマーク形成部9Aからなる第一台座92を形成する。
【0054】
この後、キュア熱処理を行い、第一台座92となる第一樹脂膜を硬化させる。この時点においても、第一台座92となる第一樹脂被膜の表面にはASIC基板上の凹凸91が転写されて残存している。
なお、キュア熱処理の温度は250~350℃で行なう。250℃未満では硬化が不十分で後工程で形状が変化する懸念が残り、350℃を超えるとASIC回路に不具合が生じる懸念がある。
この後、凹凸が転写されて硬化している溝形成部とアライメントマーク形成部からなる第一台座92の第一樹脂被膜上に残存している凹凸をCMPにより平坦化して、図9cに示すように、溝形成部とアライメントマーク形成部からなる平坦な第一台座9Cを形成する。
【0055】
また、第一台座9Cの形成において、ASIC基板90の全面にレジストを塗布した後、第一台座92の上のレジストを除去し、第一台座以外のASIC基板の表面を保護した後、第一台座92を平坦化するためCMPを行ない、第一台座以外のASIC基板の表面を保護していたレジストを剥離する方法でもよい。
【0056】
そして、第一台座9Cを形成する第一樹脂被膜の膜厚は、第一台座を配置するASIC基板90表面の凹凸91の3倍以上が好ましい。3倍未満では、本工程のCMPで第一台座の凹凸を平坦化する前に、第一台座自身が薄くなってしまうためである。
【0057】
次に、溝を形成するためのプロセスを図9dに示す。
ASIC基板全面にポジレジスト系の樹脂被膜93を塗布し、マスク材を通して露光、現像することで、直方体形状の溝部94とアライメントマーク用凹部95とASIC基板の電極取出し用開口部96を樹脂被膜に形成する。この時の露光量は1500mJ/cm である。次に、溝部94のみに追加露光を行う。この時の露光量は最初の露光量の5%以下つまり、1~4%である。
その後キュア熱処理を行うと、図9dに示すように、溝94の形状は逆台形状となり、かつ、追加露光を行っているので、ASIC基板の電極取出し用開口部96に近い溝のレジスト97ともう一方のレジスト98のレジスト高さは左右対称となる。
また、アライメントマーク凹部95は溝部94と同時に形成するので、溝と同様に逆台形状になり、視認性が低下する懸念があるため、アライメントマーク部以外をレジストで保護し、この第二樹脂被膜に形成した逆台形状のアライメントマーク凹部95そのものをマスクとして第一台座をRIEで掘り込むことで、アライメントマーク凹部の急峻度を高めることができる。
【0058】
工程(2)は、逆台形状の溝に下部コイルを形成する工程である。
図10a~図10にプロセスフローを示す。
図10a:まず、溝102が形成されたASIC基板101にネガレジスト系の樹脂被膜103(以下、N系樹脂被膜という。)を塗布し、露光、現像して前記溝102部のみにN系樹脂被膜103を残し、キュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成する。
図10b:次に、ASIC基板101表面に金属膜104を成膜する。膜厚は0.1~1.0μmである。また、この金属膜はアライメント部においては反射膜105として機能するため、アライメントマークの視認性が向上できる。
図10c:次に、ASIC基板101全面にレジストを塗布し、マスク材を通して露光、現像を行い、コイルパターン106を形成する。
この時、ASIC基板の電極取出し用開口部108も開口される。
次いで、パターン内にめっき後、レジストを剥離し、めっき以外の部分の金属膜をエッチングする。尚、めっきをせずに、コイルパターン形成後に金属膜をエッチングすることで下部コイルを形成することも、もちろん可能である。この場合、めっきでコイルを形成するマスクパターンとマスクの開口部が反転する。
【0059】
工程(3)は、磁性ワイヤを溝部に配置、固定する工程である。
前述のように溝部の側面に沿って下部コイルが形成されている。ここに、磁性ワイヤを張力30~100kg/mm を負荷しながら配置する。
この時、磁性ワイヤの両端部を接着剤、テープなどで仮止めし、その後、樹脂被膜を基板全面に塗布、露光、現像により溝部のみに樹脂被膜を残し、250~350℃の温度にてキュア熱処理して磁性ワイヤを固定する。
これにより磁性ワイヤは溝内部に固定されると同時に張力を負荷したまま熱処理されるため、GSR特性の向上を図ることができる。
【0060】
工程(4)は、磁性ワイヤに電極を接触させるため、磁性ワイヤを被覆するガラス被膜を部分的に除去する工程である。
まず、基板全面にレジストを塗布する。次に各素子の磁性ワイヤの電極引出部のみレジストを開口する。つまり、電極引出部以外はレジストで保護されている。この状態でCF -RIEを行うことで、磁性ワイヤの電極引出部のみ被覆されているSiO を除去することができる。その後、レジストを除去し、ガラス被膜を部分的に除去し、磁性ワイヤに電極を接触させることができる。
【0061】
工程(5)は、磁性ワイヤの上に上部コイルを形成する工程である。
図11a~図11dを用いてプロセスを説明する。
図11a:まず、逆台形状溝に磁性ワイヤを配置後、ASIC基板の全面にポジレジスト系樹脂被膜を塗布し、露光、現像して前記溝と磁性ワイヤ部のみにポジレジスト系の樹脂被膜(以下、P系樹脂被膜という。)を残し、キュア熱処理して段差部を滑らかにする。
図11b:その後、基板全面に金属膜を成膜する。膜厚は0.1~1.0μmである。
図11c:次に、基板全面にレジストを塗布し、オートアライメント機構により視認性の高いアライメントマークを使い、マスク材を通して露光、現像を行い、コイルパターンを形成する。
図11d:パターン内にめっき後、レジストを剥離し、めっき以外の部分の金属膜をエッチングする。尚、めっきをせずに、コイルパターン形成後に金属膜をエッチングすることで下部コイルを形成することも、もちろん可能である。この場合、めっきでコイルを形成するマスクパターンとマスクの開口部が反転する。
このプロセスにより、上部コイルは断線なく、かつ、視認性の高いアライメントマークを形成しているため、下部コイルとの合わせも問題ない。
【0062】
工程(6)は、磁性ワイヤと検出コイルと前記電極配線からなる素子の集合体からなる素子基板を個片化する工程である。
図13に本発明によるASIC基板上に作製した素子の平面図を示す。
ASIC基板13はASIC素子の集合体であり、例えば、20mm角のASIC基板は、300個程度のASIC素子からなる。そして、1つのASIC素子上に、1つの磁界検出素子を形成するので、ASIC基板13上には、多数個の磁界検出素子13aと、基板の4隅にアライメントマーク13bが配置されている。磁界検出素子はこの基板単位で製造し、最後に個片化を行う。
【0063】
次に、図14の平面図を説明する。
磁界検出素子13aは、表面全体が第二樹脂被膜141により被覆され、そのサイズは幅(左右方向)1.2mm、長さ(上下方向)1.2mmよりなる。厚さは0.75mmである。
ASIC基板13上に逆台形状溝142、下部コイル143が形成され、磁性ワイヤ144が配置・固定されている。磁性ワイヤの周囲は、下部コイル143および上部コイル145からなる検出コイルが周回している。検出コイルのコイルピッチは3.0μmで、線幅は1.2μm、厚さ1.5μmである。
磁性ワイヤ144には、ワイヤ端子146が2個形成され、それぞれワイヤ端子146と接続する配線147およびワイヤ電極148が形成されている。また、下部コイル143及び上部コイル145と接続する配線143a,145aおよびコイル電極149が2個形成されている。
【0064】
このように形成された磁界検出素子の断面構造を図8に示す。図8は、図14に示すA1-A2線の断面図である。また、図13に示したアライメントマーク部13bの断面図も合わせて示してある。
ASIC基板81上には集積回路起因の凹凸811があり、電極取出し用開口部831部以外の表面には保護膜83が形成されている。溝形成部には第一台座891が配置されており、ASIC基板の凹凸811に影響を受けることなく、第二の樹脂膜892には逆台形状溝82が形成され、溝底部にR形状からなるネガレジスト系樹脂被膜823が形成されている。
【0065】
そのネガレジスト系樹脂被膜823の上に、下部コイル84を形成した後、磁性ワイヤ85が配置され、ネガレジスト系樹脂被膜851により固定されている。
磁性ワイヤ85は、厚さ1.0μmの絶縁性ガラスにより被覆され、その直径は12μmである。
【0066】
溝82と磁性ワイヤ85との段差を解消するために、溝82と磁性ワイヤ85との間にポジレジスト系樹脂被膜852が形成されている。
このポジレジスト系樹脂被膜852は、磁性ワイヤ85の上にも行き渡っており、その上に上部コイル86が形成されている。
下部コイル84と上部コイル86とは、ポジレジスト系樹脂被膜852があり、溝上部の対称性も向上しているため、問題なく接続されている。
【0067】
一方、アライメントマーク部89においても、ASIC基板81上には集積回路起因の凹凸811があるが、アライメントマーク部には第一台座891が配置されており、ASIC基板の凹凸811に影響を受けることなく、第二の樹脂膜892にアライメントマーク凹部894が形成されている。アライメントマーク凹部は第一台座まで掘りこまれ、さらに反射膜893が形成されており、視認性が向上している。
【0068】
以上の工程により、ASIC基板上にネガレジスト系樹脂被膜で第一台座を配置し、その上にポジレジスト系樹脂被膜を用いて磁性ワイヤを設置する溝と複数のアライメントマーク用凹部とASIC基板の電極取出し部を同時に露光、現像後、さらに溝部のみに追加露光しキュア熱処理して、樹脂被膜を硬化させることで、逆台形状溝の左右の形状が対称である溝を形成することができ、狭ピッチな微細コイルを有するGSR素子をASIC基板上に直接製造することが可能となる。
【実施例0069】
本発明のASIC基板上にポジレジスト系の樹脂被膜を用い磁性ワイヤを設置するための溝と複数のアライメントマークとASIC基板の電極取出し部を同時に露光、現像後、溝部のみに追加露光し、キュア熱処理をすることで、溝形状を対称にし、かつ、視認性の高いアライメントマークを用いて微細ピッチコイルを有するGSR素子を直接形成する製造フローを、
図9a~図9d、図10a~図10を用いて以下に説明する。
【0070】
工程(ア);
まず、集積回路起因の数μmの凹凸91の存在するASIC基板90上において、ネガレジスト系の第一樹脂被膜92を10μm塗布する。露光、現像後、280℃で1時間、キュア熱処理を行い、逆台形状溝とアライメントマークを配置する箇所に平坦で硬い第一台座を配置する(図9a、図9b))。
すなわち、溝形成部9Aとアライメントマーク形成部9Bからなる第一台座92を形成する。この時、第一台座の厚さは9μmである。
【0071】
工程(イ);
この状態では、第一台座表面にはまだASIC基板の凹凸91が転写され残っている。そこで、ASIC基板全面にレジストを塗布し、マスク材を用いて露光、現像をして第一台座上のみレジストを除去し、かつ第一台座以外のASIC面を保護した後、キュア熱処理で硬化した第一台座表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)で平坦化する。
その後、レジスト剥離液で第一台座以外のASIC表面を保護していたレジストを除去することで、図9cに示すように、平坦化された第一台座9Cを形成する。この時の第一台座9Cの膜厚は6μm程度である。
【0072】
工程(ウ);
次に、平坦化した第一台座の上にポジレジスト系の第二樹脂被膜93を10μm塗布し、溝部94、アライメントマーク凹部99、ASIC基板電極用取出し部96を同時に露光、現像する。第一台座9Cは平坦化しているので、溝形成部9Bとアライメントマーク形成部9Aの第二台座はASIC基板の凹凸91の影響は受けない。この時の露光量は1500mJ/cmである。
そして、マスクを用いて溝部9Bのみもう一度露光する。この時の露光量は40mJ/cmである。その後、キュア熱処理を行うと、熱処理時に発生する応力により、図9dに示すように、溝は逆台形状へと変化し、かつ、溝の上部の形状はほぼ左右対称となる。すなわち、開口部に近い溝の上部97ともう一方の溝の上部98は形状、高さがほぼ同じであり、非対称性が大幅に改善されている。
【0073】
工程(エ);
次に、ネガレジスト系の樹脂被膜をASIC基板101全体に塗布、露光、現像して溝部102のみにレジストを残す。その後、250℃で1時間キュア熱処理を行うことで、図10aに示すように、溝の底部にR形状103を形成する。
【0074】
工程(オ);
一方、アライメントマーク部も逆台形状であるため、その形状を急峻化するため、アライメントマーク部以外をレジストで保護し、第二樹脂被膜に形成した逆台形状のアライメントマーク凹部そのものをマスクとして第一台座を -RIEで1μm掘り込む。その後、保護していたレジストをレジスト剥離液で除去する(図10b)。
【0075】
工程(カ);
次に、ASIC基板全体に、Cr/Auの積層膜を0.01/0.03μm成膜する。この膜はアライメントマーク凹部では反射膜として用い、視認性を高める。そして、このアライメントマーク凹部を使い、ASIC基板全体にレジスト塗布、露光、現像を行う(図10c)。
めっき、エッチング工程を経て、逆台形状の溝面に沿って幅1.2μm、厚さ0.7μmの下部コイルを形成する。
【0076】
工程(キ);
次に溝の下部コイルの上に、厚さ1μmの絶縁性ガラスで被覆されたCoFeB系の磁性ワイヤ119を張力76kg/mm負荷しながら配置し、接着剤、テープなどで仮止めする。そして、樹脂112を塗布、露光、現像、250℃、1時間のキュア熱処理をして溝に固定する。この時、磁性ワイヤ19には張力が負荷されたまま熱処理されるので、GSR特性を改善できる。
【0077】
工程(ク);
磁性ワイヤはその表面をガラス(SiO )被膜で覆われているので、磁性ワイヤに電極を接触させるため、この部分のガラス被膜を除去する。
まず、ASIC基板全面にレジストを塗布し、露光、現像して磁性ワイヤに電極を接触させる部分のみレジストを開口する。そして、CF -RIEでガラス被膜を除去後、基板全体のレジストをレジスト剥離する。
【0078】
工程(ケ);
次に、磁性ワイヤと溝部の段差を解消するため、ポジレジスト113をASIC基板111全体に塗布、露光、現像して、溝部のみレジストを残し、250℃、1時間キュア熱処理することで、レジストを硬化させる。ポジレジストは熱処理をすることで、端部形状がなだらかになることから上部コイルの形成時の断線が防止できる。
【0079】
工程(コ);
そして、上部コイルと磁性ワイヤの導通部の引出し線、ASIC基板の電極取出し用開口部および配線(配線)を形成するため、Cr/Auの積層膜114を0.01/0.03μm成膜する(図11b)。
その後、レジスト塗布、露光、現像を行い、磁性ワイヤ119の上部に上部コイルと磁性ワイヤの導通部の引出し線パターンとASIC基板の電極取出し用開口部を形成する(図11c)。この時、アライメントマークは前述の図9d及び図10bに示したように、第一台座9C及び反射膜105を有することによりシグナル強度も十分にあり、何の問題もなくオートアライメントにより下部コイルとの合わせを行うことができる。
このパターンにめっき、ウェット後にレジストを除去することで磁性ワイヤ119の上部に線幅1.2μm、厚さ0.8μmの上部コイル117が形成される。下部コイルとの接続部はなだらか形状をしており、断線もなく上部コイルも形成される。
併せて、磁性ワイヤの導通部の引出し線、ASIC基板の電極取出し用開口部および配線118も形成される。
【0080】
本発明によりASIC基板上に直接製造したGSR素子の概略図を図8に示す。
ASIC基板81上の凹凸811を解消するため、溝部82とアライメント部89には、第一台座83が形成されている。ポジレジスト系樹脂被膜892には逆台形状の溝82、アライメントマーク凹部89,ASIC基板の電極取出し部832が形成されている。また、ASIC基板の電極取出し部832に近い側のレジスト821ともう一方のレジスト822のレジスト高さはほぼ同じである。
溝部82には底部にR形状を形成する樹脂被膜823が形成され、その上には溝形状に沿って下部コイル84が形成される。そして、その上に磁性ワイヤ85が配置されている。磁性ワイヤ85を溝部に固定する樹脂被膜851,磁性ワイヤ85と溝部82の段差を解消する樹脂被膜852が形成された後、上部コイル86が形成される。アライメントマーク部には反射膜893が形成されており、その視認性は高く、下部コイルと上部コイルの合わせに問題はない。
このように、ASIC基板上に微細ピッチコイルを有したGSR素子を一体化形成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、GSR素子とASICを一体化してGSRセンサの超薄型化、超小型化を実現するもので、生体内のモーションデバイスのように超小型で高性能を要求される用途での使用が期待される。
【0082】
本発明は、自動車用あるいはウェアラブルコンピュータ用などの小型、高性能のGSRセンサに応用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1:SiO 絶縁膜に溝を形成したASIC基板
11:ASIC基板、12:ASIC基板表面の保護膜、
13:SiO 絶縁膜、14:溝(溝部)
2:ポジレジスト系樹脂被膜にワイヤ配置用の溝とASIC基板の電極取出し用開口部を有するASIC基板
21:ASIC基板、22:ASIC基板表面の保護膜、221:ASIC基板表面の保護膜の電極開口部
23:露光、現像、キュア熱処理後のポジレジスト系樹脂被膜
23H:逆台形状の溝の左右のレジスト高さの差
231:キュア熱処理後の逆台形状のワイヤ配置用溝、232:ポジレジスト系樹脂被膜に形成したキュア熱処理後の電極取出し用開口部、
233:電極取出し部に近い側のキュア熱処理後の逆台形状のワイヤ配置用溝上部、234:もう一方のキュア熱処理後の逆台形状のワイヤ配置用溝上部
3:ASIC基板表面の凹凸を示す図
4:ASIC基板の金属膜成膜前のアライメントマークとB1-B2線におけるマーク及び、凹凸のシグナル
40:基板、
41:基板上のアライメントマーク凹部、
42:マスクのアライメントマーク
401:ASIC基板の凹凸起因のシグナル、411:アライメントマーク凹部のシグナル、412:マスクのアライメントマークのシグナル
51:ポジレジスト系樹脂被膜に、露光、現像した溝部を有するASIC基板
511:ASIC基板、512:ASIC基板表面の保護膜、
513:ポジレジスト系樹脂被膜、514:ワイヤ配置用溝
52:ポジレジスト系樹脂被膜に、露光、現像後、キュア熱処理をして逆台形状の溝部を有するASIC基板
521:ASIC基板、522:ASIC基板表面の保護膜、
523:キュア熱処理後のポジレジスト系樹脂被膜、524:キュア熱処理後のワイヤ配置用溝
6:露光、現像後のワイヤ配置用溝とASIC基板の電極取出し用開口部を有するASIC基板
61:ASIC基板、62:ASIC基板表面の保護膜、621:ASIC基板表面の保護膜の電極開口部、
63:露光、現像後のポジレジスト系樹脂被膜、631:ワイヤ配置用溝、632:ポジレジスト系樹脂被膜に形成した、ASIC基板の電極取出し用開口部、633:電極取り出し用開口部に近い側の溝レジストの上部、634:他方の溝レジストの上部
81:ASIC基板、
811:凹凸
82:逆台形状のワイヤ配置用溝、
821:電極取出し用の開口部に近い逆台形状の溝の上部、822:もう一方の溝の上部、823:逆台形状溝の底部のR形状を形成する樹脂被膜、
83:ASIC基板表面の保護膜
831:ASIC基板表面の保護膜に形成された電極開口部
832:ポリイミド系樹脂被膜に形成したASICの電極取出し用開口部
85:磁性ワイヤ、
851:ワイヤを溝に固定する樹脂被膜、852:ワイヤと溝の段差を解消するための樹脂被膜、
86:電極配線
89:アライメントマーク
891:第一台座、892:第二台座、893:アライメント部の反射膜
90:ASIC基板、
901:ASIC基板表面の保護膜
91:ASIC基板上の凹凸、92:第一樹脂膜、
9A:アライメントマーク用凹部形成部、9B:溝形成部、
9C:キュア熱処理、平坦化CMP後の第一台座
93:ポジレジスト系の第二樹脂被膜、94:逆台形状の溝、
95:アライメントマーク凹部、96:ASIC電極取出し用開口部、
97:ASIC電極取出し用開口部に近い側の溝レジスト
98:もう一方の側の溝レジスト、99:アライメントマーク凹部
101:ASIC基板、102:溝、103:ネガレジスト系樹脂被膜
104:金属膜、105:反射膜、106:下部コイルパターン、
107:下部コイル、108:ASIC電極取出し用開口部
111:ASIC基板、112:溝、113:ポジレジスト系樹脂被膜
114:金属膜、116:上部コイルパターン、
117:上部コイル、118:ASIC電極取出し用開口部
119:磁性ワイヤ
120:基板、
121:基板上のアライメントマーク凹部、122:マスクのアライメントマーク
123:アライメントマーク凹部のシグナル、124:マスクのアライメントマークのシグナル
13:ASIC基板、
13a:磁界検出素子、13b:アライメントマーク
141:第二樹脂被膜
142:溝
143:下部コイル、143a:下部コイルに接続する配線
144:磁性ワイヤ
145:上部コイル、145a:上部コイルに接続する配線
146:ワイヤ端子
147:ワイヤ配線
148:ワイヤ電極
149:コイル電極
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10
【補正方法】削除
【補正の内容】