(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083175
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】複合基地局、およびそれに利用する筐体
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/30 20060101AFI20240613BHJP
H01Q 5/30 20150101ALI20240613BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H01Q21/30
H01Q5/30
H01Q1/22 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197544
(22)【出願日】2022-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】512128221
【氏名又は名称】株式会社井上精工
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 重美
【テーマコード(参考)】
5J021
5J047
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA13
5J021JA03
5J021JA08
5J047AA19
5J047EF00
(57)【要約】
【課題】1基の通信基地局で複数の通信事業者に割り当てられた周波数帯の送受信を実現すると共に、無線通信用途以外の機器類が搭載され、多機能化された複合基地局、および、それに利用する筐体を提供する。
【解決手段】底壁20、周囲側壁21および天壁22を有する筐体2と、該筐体2の外部に設けられた外部アンテナ3と、該筐体2の内部に収容された電装部品群4とを有し、基幹ネットワーク50と無線端末6との送受信を中継する基地局1であって、当該外部アンテナ3が、携帯電話、防災無線もしくはテレビ放送の中の2以上の周波数帯を送受信可能なマルチアンテナ30であるか、又は携帯電話、防災無線もしくはテレビ放送の周波数帯を送受信可能な2以上のアンテナからなるアンテナ群31であり、当該電装部品群4が、電波信号およびデータ信号の送受信機40と、電源装置41とを有する複合基地局1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁、周囲側壁および天壁を有する筐体と、
該筐体の外部に設けられた外部アンテナと、
該筐体の内部に収容された電装部品群と、
を有し、基幹ネットワークと無線端末との送受信を中継する基地局であって、
当該外部アンテナが、携帯電話、防災無線もしくはテレビ放送の中の2以上の周波数帯を送受信可能なマルチアンテナであるか、又は携帯電話、防災無線もしくはテレビ放送の周波数帯を送受信可能な2以上のアンテナからなるアンテナ群であり、
当該電装部品群が、電波信号およびデータ信号の送受信機と、電源装置と、を有することを特徴とする複合基地局。
【請求項2】
更に、前記マルチアンテナまたは2以上のアンテナを設置可能なアンテナ取付部を備えており、当該アンテナ取付部は、形状の異なるアンテナ用の取付け構造部を備え、
前記筐体の内部には、送受信する周波数帯に応じた電装部品群を収容する区画された領域が設けられており、
各領域に設けられる電装部品群は、それぞれの周波数帯の送受信を制御するアンテナ制御部と、不要な電波ノイズを削除する電波ノイズフィルターと、電波信号をデータ信号に、データ信号を電波信号に夫々変換する変換器とからなる、請求項1記載の複合基地局。
【請求項3】
筐体の外部に設けられた防災カメラ、環境センサまたは街路灯の少なくとも1つと、
筐体の内部に設けられ当該防災カメラまたは該環境センサからのデータ信号を基幹ネットワークに送信する送受信機と、
筐体の内部に設けられ非常用電源と、
を具備することを特徴とする、請求項1または請求項2何れか一方記載の複合基地局。
【請求項4】
底壁、周囲側壁、天壁の外壁に設けられたジルコニューム化成処理層と、
同ジルコニューム化成処理層の上層に設けられた紫外線に強い塗料からなる防錆層と、
当該天壁の直下に配された周囲側壁の上部に設けられた換気口と、
該換気口の内側に設けられた湿度・温度センサおよび該湿度・温度センサで起動する強制換気装置とからなる空調装置と、
を具備することを特徴とする、請求項1ないし請求項3何れか一記載の複合基地局用の筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報通信網に接続され、該情報通信網に設けられた基幹ネットワークと無線端末との送受信を中継する基地局と、この基地局に利用される筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、携帯電話などの無線端末が、高速、大容量、高画質を実現するため電波の高周波化が進んでいる。しかし、高周波電波は通信範囲が狭く、切れ目のない情報通信網を構築するためには沢山の通信基地局を必要とする。現在は各通信事業者がそれぞれの規格で通信基地局を展開しているために費用が嵩み、通信利用者の負担増となっている。また、地域による通信格差が発生している。
【0003】
携帯通信事業は、産業や教育、医療、物流、防災などに実用化され、重要な社会インフラとなりつつあり、公共性の高い事業となっている。
【0004】
そこで従前においては、装置内共存干渉回避をサポートする通信方法を提案している。例えば、特許文献1(特開2015-165689号公報)では、基地局により、LTE無線モジュールおよび共同設置されるISM無線モジュールを有するユーザー装置(UE)に条件を設定する工程を含み、前記UEは、前記設定された条件が満たされない限り、サービング周波数の共存問題を示し周波数インデックスまたは周波数配置を含まない装置内共存(IDC)干渉指示の伝送が禁止される工程を含む、装置内共存干渉回避をサポートする黙示的通信方法を提案している。
【0005】
また、NR(New Radio)とLTE(Long Time Evolution)など複数の無線アクセス技術(RAT)の共存を可能とするリソースマッピング処理回路を有するユーザー機器(UE)、基地局及び方法を提案している。例えば、特許文献2(特開2022-8412号公報)では、システムにおいて、ユーザー機器(無線デバイス)は、伝送帯域の少なくとも一部内で第2の無線アクセス技術(RAT)との共存を可能にする、第1のRATのためのリソースマッピングの指示を取得し、取得された前記リソースマッピングの指示に基づいて通信リソースを決定する処理回路を含む、複数の無線アクセス技術の共存シナリオにおける共有チャンネル再マッピングが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-165689号公報
【特許文献2】特開2022-8412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の通り、従来において、通信基地局の共同利用化を可能とする通信方法が開発されているが、そうした新たな通信方法を実現するには、各通信事業者それぞれに異なる複数の規格の通信を可能とすると共に、通信基地局の共同利用化を実現化し、また、今後、搭載が希望されることが考えられるカメラや各種センサなどの各種機器類を搭載可能とする、基地局の多機能化を可能とするものではなかった。
【0008】
そこで本発明では、各通信事業者の周波数帯夫々を送受信可能とするアンテナ技術が搭載され、複数の通信事業者による共同利用化を実現化すると共に、今後ニーズが高まることが予想されるカメラやセンサ類など、無線通信用途以外の機器類が搭載され、多機能化された複合基地局、および、それに利用する筐体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するべく、本発明では、共同利用可能な基本構造を備えた複合基地局を提供する。
即ち、本発明では、底壁、周囲側壁および天壁を有する筐体と、該筐体の外部に設けられた外部アンテナと、該筐体の内部に収容された電装部品群と、を有し、基幹ネットワークと無線端末との送受信を中継する基地局であって、当該外部アンテナが、携帯電話、防災無線もしくはテレビ放送の中の2以上の周波数帯を送受信可能なマルチアンテナであるか、又は携帯電話、防災無線もしくはテレビ放送の周波数帯を送受信可能な2以上のアンテナからなるアンテナ群であり、当該電装部品群が、電波信号およびデータ信号の送受信機と、電源装置と、を有する複合基地局を提供する。
【0010】
また、本発明では、前記マルチアンテナまたは2以上のアンテナを設置可能なアンテナ取付部を備えており、当該アンテナ取付部は、形状の異なるアンテナ用の取付け構造部を備え、前記筐体の内部には、送受信する周波数帯に応じた電装部品群を収容する区分けされた領域が設けられており、各領域に設けられる電装部品群は、それぞれの周波数帯の送受信を制御するアンテナ制御部と、不要な電波ノイズを削除する電波ノイズフィルターと、電波信号をデータ信号に、データ信号を電波信号に夫々変換する変換器とからなる複合基地局を提供する。
【0011】
また、本発明では、筐体の外部に設けられた防災カメラ、非常用電源、環境センサまたは街路灯の少なくとも1つと、該防災カメラまたは該環境センサからのデータ信号を基幹ネットワークに送信する送受信機と、を具備する複合基地局を提供する。
【0012】
また、本発明では、底壁、周囲側壁、天壁の外壁に設けられたジルコニューム化成処理層と、同ジルコニューム化成処理層の上層に設けられた紫外線に強い塗料からなる防錆層と、当該天壁の直下に配された周囲側壁の上部に設けられた換気口と、該換気口の内側に設けられた湿度・温度センサと、該湿度・温度センサで起動する強制換気装置と、を具備する複合基地局用の筐体を提供する。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明によれば、これまで通信事業者毎に、独自の基地局を設置しなければならなかったが、複数の通信事業者による共同利用化を実現化し、通信利用者の負担を軽減できると共に、今後ニーズが高まることが予想されるカメラやセンサ類など、無線通信用途以外の機器類が搭載可能となり、多機能化された複合基地局、および、それに利用する筐体を提供し、低コスト化、省エネ化と、通信事業者および通信利用者の経済的負担の軽減とを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】複数のアンテナを設置可能なアンテナ取付部を有する複合基地局の筐体の内外構造を示す正断面図(実施例1)
【
図2】マルチアンテナを有する複合基地局を示す斜視図(実施例2)
【
図3】円形マルチ構造のアンテナを有する複合基地局を示す斜視図(実施例3)
【
図4】基幹ネットワークおよび複合基地局が設置された情報通信網を示す全体構成図(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかる複合基地局1、およびそれに利用する筐体2を具体的に説明する。特に本実施例の形態は、地上やビルの屋上や側壁などの屋外に設置される複合基地局1における実施形態を示しているが、その他にも鉄塔、電柱、看板、標識、信号機、トンネル、その他の屋外施設、または、屋内や地下施設内などに設置される複合基地局として具体化することも当然に可能である。
【0016】
図1に示す複合基地局1は、底壁20、周囲側壁21および天壁22からなる筐体2が地上に設置されている。該筐体2の外部は、その天壁22上に外部アンテナ3としてのアンテナ群31が立設され、同アンテナ群31の各アンテナ3は、1個のアンテナ3毎に、1つの通信業者の携帯電話、防災無線もしくはテレビ放送の何れか1つの周波数帯を送受信可能な素材、形状および構造とされている。
【0017】
例えば、現在、携帯電話の事業者が利用している周波数帯は700MHz帯ないし4.6GH帯であり、都道府県及び市町村の移動系防災 行政無線が利用する周波数帯は、従来は150MHz帯及び400MHz帯を用いるアナログ方式であったが、現在は、260MHz帯デジタル方式への移行を進めている。また、テレビ放送が利用している周波数帯は地上波デジタル放送に極超短波(UHF)、放送衛星(BS)用としてセンチメートル波(SHF)、通信衛星(CS)用として通信衛星N-SAT-110から12.2GHz~12.8GHz、その他が割り当てられている。
【0018】
より具体的に示すと、天壁22のアンテナ取付部23は、形状の異なるアンテナ用の取付け構造部DA,DA,DAが複数設けられており、各取付け構造部DA,DA,DAに対して、夫々の形状に合った(互いに接続部分の形状が異なる)各種外部アンテナ3,3,3が脱着可能に取付けされ、各取付け構造部DA,DA,DAの内部を通じてアンテナ配線されるものである。
【0019】
また、各取付け構造部DA,DA,DAは、互いに共通の接続部分の形状の外部アンテナ3,3,3が脱着可能に取付けされるものに置き換えることができる。例えば、
図1に示すように、各取付け構造部DA,DA,DAが互いに同一の接続形状および構造を有するものとされ、基部に共通の接続部が設けられたアンテナ支柱部32が着脱交換可能に接続され、該アンテナ支柱部32の先端がわには、各種外部アンテナ3を交換可能に装着する取付けブラケット部が設けられ、携帯電話、防災無線、テレビ放送またはWi-Fiなどの各種周波数帯に応じた各種の外部アンテナ3が交換可能とされ、複数個の外部アンテナ3,3,3が設けられ、全体としてアンテナ群31が形成されるものに置き換えることができる。
【0020】
当該取付け構造部DA,DA,DAには、アンテナ支柱部32の他に、防水栓24または防水カバーの何れかが着脱可能に装着され、アンテナ支柱部32が設置されない場合の防水を確保するものとされている。さらに、同
図1に示すように、当該筐体2の周囲側壁21または天壁22の外部には、防災カメラCM、環境センサ、防災スピーカー、公衆Wi-Fiの送受信機または街路灯の少なくとも何れか1が設置されたものとなっている。
【0021】
また、当該筐体2の内部には、例えば送受信する周波数帯に応じた電装部品群4の送受信機40と電源装置41とを分けて収容するよう区分けされた上層の領域A40および下層の領域A41が確保され、該領域A40には接地アースGAされた送受信機40が配され、該送受信機40の内部には、アンテナ制御部、分波器、増幅器、電波ノイズフィルター、変換器が収容され、当該外部アンテナ3,3,3から該筐体2の内部に引き込まれたアンテナ配線が接続されたものとなっている。
【0022】
当該領域A40は、送受信する周波数帯に応じた電装部品群4を収容する如く区画されたものとすることができる。例えば、携帯通信業者の5社それぞれの規格(チャンネルWT1ないしWT5)に対応可能な5つに区画され、外部アンテナ3を設置する業者毎それぞれの区画に周波数帯に応じた電装部品群4を収容可能なものとすることが可能である。また、無線端末6(WT1,~WT5)用の電装部品群4を収容する区画の他に、防災無線、テレビ放送、その他の無線通信(例えばFM放送やAM放送などのラジオ放送)の周波数帯を送受信可能な電装部品群4を収容する区画が設けられたものとすることができる。当該区画された領域A40が金属によって区画されており、且つ密閉されている場合には、領域ごとの電磁遮蔽効果を期待できる。
【0023】
さらに、当該下層の領域A41には電源装置41が配され、同領域A41内の下層には、主電源装置MPとその電源を制御する変圧器や分電盤などの電源制御部が設けられており、当該送受信機40に電力供給するものとされ、該主電源装置MPは商用電源CP、内部バッテリーまたはその他の外部から供給される電力源とすることができる。同領域A41内の上層には、非常用電源APが配され、主電源装置MPの電源供給がストップした際に電力を供給するものとされ、該非常用電源APは、該主電源装置MPからの電力供給によって充電されるバッテリーまたは発電機とすることができる。
【0024】
当該非常用電源APは、災害等で主電源装置MPからの電力供給が失われた場合、送受信機40、防災カメラCM、環境センサ、環境センサ、防災スピーカー、公衆Wi-Fiの送受信機または街路灯などの各機能を一定時間保持し、被災者救助や非常時の情報伝達が可能な構造である。
【0025】
当該送受信機40は、基幹ネットワーク50に繋がる情報通信網5としての光通信ケーブル5や図示しないローカル通信基地を経由するなどして接続され、例えば各携帯電話の通信キャリアである通信業者などが管理する基幹ネットワーク50に接続される。
【0026】
図2に示すように、本発明の複合基地局1は、その筐体2の天壁22に1本の外部アンテナ3が立設されており、該外部アンテナ3は、携帯電話、防災無線もしくはテレビ放送の中の各周波数帯を送受信可能な1本のマルチアンテナ30とされており、5G共用アンテナ基地となる他、周囲側壁21の正面上部に埋め込まれた液晶ディスプレイLDと、筐体2内の領域A40、領域A41の他に区分けされた図示しない予備領域に設置されたビデオ制御装置と、該筐体2内の同予備領域に設置された公衆Wi-Fi送受信機および環境センサとを備え、当該ビデオ制御装置が、公衆Wi-Fi送受信機のアクセスポイント(SSID)やパスワードなどの案内情報や、環境センサが観測した気温や気圧、湿度、地震の震度、避難情報などのリアルタイムの環境情報およびその他の情報、例えば光通信ケーブル5やローカル通信基地などを経由して受信した外部情報などを表示するよう制御するものとされている。
【0027】
また、当該液晶ディスプレイLDには、光通信ケーブル5や防災無線またはテレビ放送からの映像や文字情報などを、当該ビデオ制御装置を経由して表示するものとすることができ、該液晶ディスプレイLDはプラズマディスプレイや有機ELパネル、高輝度モニター、タッチパネル機能を(地図、周辺施設案内、交通情報、気象情報などを提供する機能を)備えたディスプレイ、その他の表示装置に置き換えられたものとすることができる。
【0028】
図3に示すように、本発明の複合基地局1は、その筐体2の底壁20から周囲側壁21の液晶ディスプレイLDの高さ(周囲側壁21の上部)までが浸水を防止する密閉構造とされており、大雨などによる洪水FDの際にも浸水を防止するものとなっており、さらに、該底壁20、周囲側壁21および天壁22の外壁に設けられたジルコニューム化成処理層と、同ジルコニューム化成処理層の上層に積層された紫外線に強い塗料からなる防錆層とが設けられ、防錆が強化され耐久性および耐候性が高められたものとなっている。
【0029】
また、筐体2の内部の領域A40、領域A41に区分けされた範囲内の何れかの位置に図示しない予備領域が設定され、同予備領域内に図示しない防虫装置が設けられたものとすることができる。該防虫装置は、例えば、虫を忌避する周波数帯の光を発する防虫灯、虫を忌避する周波数帯の音波を発する防虫音波発振装置、防虫剤や虫の忌避剤を収容する防虫・忌避剤箱の少なくとも何れか一つが設けられたものとすることができる。また、筐体2の天壁22の直下に配された周囲側壁21の上部にルーバー型の換気口AVが設けられ、その内部となる位置に、虫や塵埃などを検知する異物センサと、該異物センサが虫や塵埃などを検知したときに作動するエアシャワー装置とを備えたエアシャワー防虫・防塵装置(いずれも図示せず)が設けられたものとすることができる。
【0030】
さらに、当該天壁22には1本の外部アンテナ3が立設されており、該外部アンテナ3はそのアンテナ支柱部32の先端に、互いに同じ直径の円形環が上下に間隔を隔てて配され、該アンテナ支柱部32に対し同心状に配されるよう2重円形マルチ固定金具33が結合支持されている。該2重円形マルチ固定金具33の周囲には、送受信周波数帯(形状および構造)が異なる各種アンテナ34,34,…が、夫々の取付け部に応じたブラケットを介して脱着可能に取り付けられ、複数の通信事業者がそれぞれ自社のアンテナを設置し、容易に共同利用できるものとなっている。
【0031】
また、筐体2の天壁22の直下に配された周囲側壁21の上部に設けられたルーバー型の換気口AVの内側には、当該エアシャワー防虫・防塵装置に置き換えて空調装置ACが設けられたものとすることができる。該空調装置ACは、湿度・温度センサと、該湿度・温度センサで起動し、当該筐体2内の空気を外に放出し、外気を筐体2内に取り込む強制換気装置とからなるものとすることができ、さらに、該湿度・温度センサに加えて異物センサが組み込まれ、当該強制換気装置がエアシャワー装置としても機能し、防虫・防塵装置と空調装置ACとを兼ねるものとすることができる。該空調装置ACは、少ない電力で内部の結露や、温度上昇を防ぎながら、小動物等の侵入を防ぐ、耐候性と耐久性の高い構造とし、インフラとしての機能を保持できる高品質な筐体2を低コストで提供可能とする。
【0032】
図4に示すように、この発明の複合基地局1は、それ1基で、例えば5社またはそれ以上の通信事業者、例えば各携帯電話の通信キャリアである通信業者の5社それぞれの規格(チャンネルWT1ないしWT5)の通信を中継可能とするものとされている。また、6社以上の各規格(チャンネル)の通信を中継可能なものとすることができる。
【0033】
また、当該複合基地局1は、光通信ケーブル5などの情報通信網5を通じて基幹ネットワーク50に接続され、該基幹ネットワーク50を介して、地域通信センターRC、図示しない他の基幹ネットワークや他の基地局または他の複合基地局1、さらにインターネットTNやクラウドCDなどと同時通信可能とされている。地域通信センターRCは、例えば地域の各種データ解析、防災計画、避難指示、環境監視、その他の機能を担うものである。
【0034】
そして、5社それぞれの通信利用者の規格の異なるスマートフォンその他の無線端末(チャンネル1ないし5)WT1,~WT5が、当該複合基地局1を通じて通信可能なものとなっている。当該複合基地局1は、公衆Wi-Fi(Wi-Fiルーター)、環境センサ(温度計、湿度計、気圧計、雨量計、風速計、風向計、震度計)、街路灯(ランプ)、防災カメラ(カメラ)、緊急警報拡声器(スピーカー)、デジタル案内版(ディスプレイ)、非常用電源(バッテリー)およびそれらの制御装置が設けられたものとすることができる。
【0035】
当該複合基地局1は、環境センサ、街路灯、防災カメラおよび非常用電源などをそれらの制御装置を介して光通信ケーブル(情報通信網)5および基幹ネットワーク50に接続され、当該環境センサや防災カメラから得られたデータは、それら環境センサ、街路灯、防災カメラおよび非常用電源などの設置設備を管理する地域通信センターRCにリアルタイム送信され、該地域通信センターRCがそれらの各種データを利用可能とし、公共性の高い次世代社会インフラとしての機能を備える。
【0036】
当該複合基地局1の筐体2は、利用者のニーズや街並みの景観に合わせ、基本機能を損なわない範囲で自由な形状とすることが可能であり、デザイン性や機能性に優れた形状、寸法のものとすることにより、スマートシティ・ローカルコミュニケーション構築を実現化することが出来る。例えば、筐体2が、ビルの外壁に設置可能な薄型のものや、電柱、交通標識の標識板、識柱または信号機などの周囲に設置可能な平面視C型の形状とされたもの、また、自動販売機、バス停留所、ごみ収集所など人が集まる既存設備に対し、当該複合基地局1を併設し、新たな設置場所を設けることなく、コスト削減しながら通信エリアを拡充できるものとなる。より具体的には、自動販売機、バス停留所またはごみ収集所などの天井部に設置できる上下端間寸法が短い箱型のもの、駅や停留所の路線案内や時刻表の標識柱や表示板に置き換えられたものなどとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
上記本発明にかかる複合基地局、およびそれに利用する筐体は、通信基地局の共同利用化と多機能化に係わる分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 複合基地局
2 筐体
20 同 底壁
21 同 周囲側壁
LD 同 液晶ディスプレイ
AV 同 換気口
22 同 天壁
23 同 アンテナ取付部
DA 同 アンテナ用の取付け構造部
24 同 防水栓
A40 上層の領域(区画)
A41 下層の領域(区画)
3 外部アンテナ
30 同 マルチアンテナ
31 同 アンテナ群
32 同 アンテナ支柱部
33 同 2重円形マルチ固定金具
34 同 規格の異なる各種アンテナ
CM 防災カメラ(または環境センサ、街路灯、その他)
4 電装部品群
40 同 送受信機
41 同 電源装置
MP 同 主電源装置
AP 同 非常用電源
AC 同 空調装置
GA 同 接地アース
CP 商用電源
5 情報通信網(光通信ケーブル)
50 同 基幹ネットワーク
TN 同 インターネット
CD 同 クラウド
RC 同 地域通信センター
6 無線端末(WT1,~WT5)
FD 大雨などによる洪水