(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083184
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】環境情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240613BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20240613BHJP
【FI】
G06Q50/04
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022209054
(22)【出願日】2022-12-08
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
(71)【出願人】
【識別番号】515128817
【氏名又は名称】細野 祐一
(72)【発明者】
【氏名】細野 祐一
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】建屋の環境問題を把握し予知し適切に警報を出す。
【解決手段】建屋に於ける現場情報をセンサーで取得するとともに、天気に関する情報をインターネットから取得する取得手段と、
前記現場情報と前記天気に関する情報とに基づいて環境リスクを分析する分析エンジンと、
前記分析エンジンによる分析結果に基づいてアラームを発報するアラーム手段と、
で構成し、集まった情報を元に建屋の環境問題を把握し分析エンジンで予知し、アラーム手段で警報を出す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋に於ける現場情報をセンサーで取得するとともに、天気に関する情報をインターネットから取得する取得手段と、
前記現場情報と前記天気に関する情報とに基づいて環境リスクを分析する分析エンジンと、
前記分析エンジンによる分析結果に基づいてアラームを発報するアラーム手段と、を備えたことを特徴とする環境情報処理装置。
【請求項2】
前記分析エンジンは、
前記取得された現場情報に基づき、所定時間後の前記建屋における露点と前記建屋内に設置された被対象物温度を予測し、前記露点と前記被対象物温度とに基づいて前記被対象物の結露リスクを前記環境リスクとして算出する
ことを特徴とする請求項1記載の環境情報処理装置。
【請求項3】
前記分析エンジンは、
前記天気に関する情報に基づき現在から所定時間後の前記建屋外の露点を算出し、前記建屋内に設置された被対象物温度と前記算出された建屋外の露点に基づいて、外気が前記建屋内に入ってきた場合における前記被対象物の結露リスクを前記環境リスクとして算出する
ことを特徴とする請求項1記載の環境情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や倉庫などの建屋に於ける環境情報(温度、湿度、電力、および機械などの稼働情報)を把握することができる環境情報把握装置、分析エンジン、アラーム手段に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネの重要性が増し如何に少ない稼働で生産するかが重要になっている。また製品を作るに当たり結露による錆の発生や空気の乾燥による静電気の発生による損失も少なくない。IoTによる技術の向上で工場の多くの場所にセンサーを置き、無線で情報を飛ばすことにより、生産現場の様々な状況を見える化し分析・予知し、予報を出すことができるようになった。
機械の稼働についてはパトライトなどの光を出すものや軸の回転などの振動するものから容易に稼働しているかを知ることができる。機械が消費する電力については配電盤に電流計を設置することで測定できる。工場の温度や湿度、照度については、工場に環境用センサーを設置すれば測定可能である。また原材料などの被測定物に温度計を設置すれば、被測定物の温度も同時に測定可能となる。
またインターネットから天気予報の情報を取得することで天候の変化の情報も適時取得できる。
これらの情報を継続的にコンピューターに収集し、定期的に分析することで、状況を的確に把握し状況を知らせ、警報を出すことができる。
たとえば、結露リスクの警報である。結露は空気中の温度が被測定物の温度に冷やされることにより露点温度に達することで空気中の水蒸気が水になることで発生する。これについては室内の温度、湿度、被測定物の温度を観測することで予想が可能となる。
たとえば熱中症リスクに関する警報である。熱中症は工場内では温度と湿度から計算できるWBGTにより、そのリスクが計算可能である。したがって工場の温度、湿度の継続的な把握で予測が可能となる。
たとえば、省電力に対する警報である。一般に機械は稼働しているときと稼働していないときに分けられ、非稼働時間でも電気が投入されている限り電力を消費している。したがって工場が操業している時間の中で非稼働時間を短くし、非稼働時間は電源を切ることが望ましい。稼働時間と電力を観察することで非稼働時間のムダな電力を可視化し警告を与えることができる。
。
【0003】
特許文献1には、結露の予測精度を高める装置であるが、感応材料を元に結露を予知するもの方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、基準温度と基準湿度に基づき計算した基準飽和水蒸気量と現在の飽和水蒸気量に基づき結露防止のヒーター通電制御を行うシステムを開示している。
特許文献3には、本出願の情報収集機構にあたるシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-300721公報
【特許文献2】特開2015-158634公報
【特許文献3】特開2021-89738公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、個別の場所に装置を置いて結露予測をする装置であるため、工場の各所にある環境情報の状況を同時に捉えることが困難である。また現時点の状況推移での結露可能性は分かるもの、外気がはいってきた時の結露の予測は困難である。
今回の技術は、各所にセンサーを無線で配置する事で、センサー設置が容易であり工場全体の環境リスクを同時に可視化することが可能である。また天気に関する情報をインターネットから取得することで外気が入ってきた時のリスクを予測することができる。
特許文献2に記載された技術も同様に、特定の機械の結露リスクを、ヒーター起動を介して実施することができるが、各所に広がる結露リスクを同時に把握することはできない。
また結露以外のリスクを可視化することは出来ない。
特許文献3に記載された技術は、今回技術の基礎となるものでありデータ収集手法として有効である。しかしながら工場の環境リスクを可視化し警告を与えることはできない。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、工場全体の環境問題を把握し予知し適切に警報を出すことで環境問題を解決するための環境情報収集、環境情報分析、アラーム発信を行うことを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するため、本発明に係る環境情報処理装置の第1の特徴は、
建屋に於ける現場情報をセンサーで取得するとともに、天気に関する情報をインターネットから取得する取得手段と、
前記現場情報と前記天気に関する情報とに基づいて環境リスクを分析する分析エンジンと、
前記分析エンジンによる分析結果に基づいてアラームを発報するアラーム手段と、
で構成されることである。
【0010】
上記目的を解決するため、本発明に係る環境情報処理装置の第2の特徴は、
前記分析エンジンは、
前記取得された現場情報に基づき、所定時間後の前記建屋における露点と前記建屋内に設置された被対象物温度を予測し、前記露点と前記被対象物温度とに基づいて前記被対象物の結露リスクを前記環境リスクとして算出する
ことにある。
【0011】
上記目的を解決するため、本発明に係る環境情報処理装置の第3の特徴は、
前記分析エンジンは、
前記天気に関する情報に基づき現在から所定時間後の前記建屋外の露点を算出し、前記建屋内に設置された被対象物温度と前記算出された建屋外の露点に基づいて、外気が前記建屋内に入ってきた場合における前記被対象物の結露リスクを前記環境リスクとして算出する
ことにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る環境情報処理装置によれば、建屋内の環境情報を元にリスクを判断し関係者や関係装置に信号を送り被害を事前に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】 本発明の環境情報処理装置の概略構成を示した概略構成図である。
【
図2】 本発明の概略構成を情報の流れと機能で示した機能構成図である。
【
図3-1】 本発明の一実施形態に係る環境情報処理装置が備えるデータの変換計算部の一例を示した図である。
【
図3-2】 本発明の一実施形態に係る環境情報処理装置が備える天気に関する情報をインターネットから取得する取得手段の一例を示した図である。
【
図4】 本発明の一実施形態に係る環境情報処理装置が備える分析エンジンの分析計算部の一例を示した図である。
【
図5】 本発明の一実施形態に係る環境情報処理装置が備えるアラーム機構の一例を示した図である。
【
図6】 本発明の一実施形態に係る結露リスクを把握するためのデータ処理の流れの一例を示した図である。
【
図7】 本発明の一実施形態に係る熱中症リスクを把握するためのデータ処理の流れの一例を示した図である。
【
図8】 本発明の一実施形態に係る無駄な電力消費リスクを把握するためのデータ処理の流れの一例を示した図である。
【
図9】 本発明の一実施形態に係る無駄な電力消費リスクを把握するための機械の稼働と電力の使用状況を一覧で示した分析リストの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0018】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態である環境情報処理装置の概略構成を示した概略構成図であり、
図2は、本発明の一実施形態である環境情報処理装置を情報の流れと機能で示した機能構成図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る環境情報処理装置のハードウェア構成は、センサー2と、現場情報コンピュータ3と、ルーター4と、コンピュータ6とを備えている。
センサー2は、1a,1b.1c,1dに示される配電盤の電線、機械装置、屋内・屋外の空気、被対象物の断面に備えられ、電源の電流値、機械装置の稼働信号、空気の温度・湿度、被対象物の温度などを検出する。
また1eのようにインターネットを通じて外部の気象情報をコンピュータ3bにて取得する。
【0021】
現場情報コンピュータ3aは、センサー2の情報を読み取り、ルーター4を経由して情報プール5に情報を書き込む。現場情報コンピュータ3aは、計算カプセルを通じて電流、温度、湿度の情報を電力、露点、WBGT(熱中症リスク度数値)に変換して情報プール5に情報を書き込む。
またコンピュータ3bは、インターネット情報1eを読み取りルーター4を経由して情報プール5に情報を書き込む。
【0022】
コンピュータ6は分析エンジン6aとアラーム手段構6bからなり、この分析エンジン6aとアラーム機構6bは定期的に繰り返し実行することで、時間の変化に伴う事象を検知する。
分析エンジン6aは、
図2に示すように情報プールの情報を入力として、室内の温度推移、今後の室内温度・湿度予想、露点温度推移予想、被対象物推移温度予想、稼働時間の電力、電力推移・電力累計などを分析する。予想においては、AIや移動平均などを手法を用いる。分析エンジン6aは
図2に示すように、アラーム指標aを計算する。
アラーム手段6bは、
図2に示すようにアラーム制御と警報制御の機能をもつ。アラーム制御はアラーム指標aを与えられた閾値を元に警報、注意報、解除という警報レベルを判断し、警報制御は与えられた警報手段に基づきパトライト、メール、line、電源制御に対して情報を発信する。
【0023】
図3―1は、コンピュータ3a内の情報変換を行う3c計算カプセルを示すものである。計算カプセルは温度、湿度や電流というセンサーから上がった情報を露点、電力という環境評価に役立つ情報に現場で変換する機能をもつ。計算カプセル内ではセンサーから得られる値を一定の意味を持つ値に変換する変換式を持っている。例えば、200V、3相電源時の電流を電力に変換するためには電流に「200V×√3×力率」を掛ける必要がある。このように変換式を与え、入力となるセンサー値の誤差補正や表す意味の変換を行う。
図3―2は、天気に関する情報をインターネットから取得する取得手段についての説明である。コンピュータ3bではインターネットに掲載される天気に関する情報をRPA(データ取得ロボット)で定期的に取り込み露点を計算し値を情報プールに書き込む。
【0024】
図4に示す分析エンジンは、情報プールの情報を元に一定時間後の環境リスクを予測する。
n時間後の露点と被対象物温度の予測においては露点温度の情報プールと被対象物の情報プールから、その温度変化の傾向を分析し一定時間先を予測する。その予測式は以下の通りである。
Td_▲2n2n時間前の露点
Td_▲n n時間前の露点
Td_0 今の露点
Ti_▲2n2n時間前の被対象物温度
Ti_▲n n時間前の被対象物温度
Ti_0 今の被対象物温度
n時間後の露点予測
Td_n=Td_0+(Td_0-Td_▲n)×(Td_0-Td_▲n)/(Td_▲n-Td_▲-2n)
但し Td_▲n-Td_▲2n≒0の時はTd_n=Td_0とする。
n時間後の被対象物温度予測
Ti_n=Ti_0+(Ti_0-Ti_▲n)×(Ti_0-Ti_▲n)/(Ti_▲n-Ti_▲-2n)
但し Ti_▲n-Ti_▲2n≒0の時はTi_n=Ti_0とする
その予測値に基づきアラーム指標aを設定する。
その設定式は以下の通りである。
a:アラームの発動を制御するパラメータ
a=n時間後の被対象物の温度予測-n時間後の露点温度予測
外気導入時の結露リスク予測を行う。現時点と今後、外気を取り入れた時の結露リスクを室外露点と現在の被対象物の温度で予測するものである。室外とは建屋から10Km以内の天候条件が近いところを指す。
そのアラーム指標aは以下の通りとなる。
a=現在の被対象物の温度-室外露点
また、今後の所定時間毎の室外露点は室外露点予測表として提示することで、いつごろ結露リスクが減るのかを示すことができる。
【0025】
図5はアラーム機構の一例を示した図である。
アラーム機構はアラーム制御と警報制御からなっている。
アラーム機構は、警報種類ごと、場所IDごとにアラームの閾値と警報手段を持っている。そして分析エンジンから与えられたアラームの発動を制御するパラメーターaを元にアラームの種類(警報、注意報、解除)をアラーム制御を用いて発信する。
アラーム制御は、アラームをアラーム発信手段を動かして発信するものである。パトライト、メール、Line、電気制御などがある。
【0026】
本発明は、以上のような形態よりなる環境情報処理装置である。
【0105】
図6は、本発明の応用例としての結露リスク表示である。
センサーでは建屋に於ける温度・湿度を測定し、露点計算カプセルで露点を算出し情報プールにデータを入れる。屋内の被対象物の温度を測定し情報プールに入れる。またインターネットから気象情報をコンピュータ経由で情報プールにデータを入れる。分析エンジンでは、今後の露点温度と被対象物の温度を算出する。また外気を入れた時の結露リスクを算出する。そして今後の被対象物の温度と露点温度の差をアラームの発動を制御するパラメーターaとして算出する。気象情報に基づき今後の外気の露点の推移予想し室外露点予測表として出力する。
アラーム機構ではアラームの発動を制御するパラメーターaを元に閾値に従って指定された媒体に対しアラームを発信する。
【0106】
図7は、本発明の応用例としての熱中症リスク表示である。
センサーでは工場室内の温度・湿度、工場室外の温度・湿度を測定し、現場コンピュータ経由で情報プールにデータを入れる。またWBGT計算カプセルで熱中症リスク値WBGTを算出する。そしてWBGTをアラームの発動を制御するパラメーターaとする。
アラーム機構ではアラームの発動を制御するパラメーターaを元に閾値に従って指定された媒体に対しアラームを発信する。
【0107】
図8は、本発明の応用例としての無駄な電力消費表示である。
センサーでは工場室内の配電盤などの電源ケーブルに取り付けた電流センサーなどから電流値を取り出し情報プールに書き込む。電力計算カプセルで電流を電力に変換し電力プール変換カプセルに書き込む。また機械の稼働を示す信号を機械のパトライトなどに取り付けたセンサーから取り出し、機械の稼働情報を情報プールに書きだす。
分析エンジンでは、機械毎の1日の総電力使用量と機械毎の1日の非稼働時間電力使用量を算出し、非稼働時間の電力量の割合 非稼働時間電力使用量/総電力使用量をアラームの発動を制御するパラメーターaとして算出する。
アラーム機構ではアラームの発動を制御するパラメーターaを元に閾値に従って指定された媒体に対しアラームを発信する。
図9は分析エンジンが出力した分析リストの一例である。機械の稼働と電力の消費を図示することで無駄な電力の使用状況が分かる。
【符号の説明】
【0108】
1 情報発信元(センサー取付場所、インターネット)
2 センサー
3 現場コンピュータ
4 ルーター
5 情報プール
6 コンピュータ
7 分析リスト