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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008319
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】貼付剤用包装袋及び貼付剤包装品
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/00 20230101AFI20240112BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 23/02 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 31/618 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61J1/00 370C
A61K9/70 401
A61P29/00
A61P23/02
A61K45/00
A61K31/405
A61K31/192
A61K31/618
A61K31/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110087
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】594065582
【氏名又は名称】株式会社大石膏盛堂
(74)【代理人】
【識別番号】100139262
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 和昭
(72)【発明者】
【氏名】冨永 健治
(72)【発明者】
【氏名】臼田 一弘
(72)【発明者】
【氏名】草場 裕貴
【テーマコード(参考)】
4C047
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C047AA11
4C047BB13
4C047BB17
4C047BB20
4C047BB35
4C047CC19
4C047GG04
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC05
4C076FF36
4C076FF63
4C084AA17
4C084MA32
4C084MA63
4C084NA03
4C084ZA211
4C084ZA212
4C084ZB111
4C084ZB112
4C086AA10
4C086BC15
4C086DA17
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA03
4C086ZA21
4C086ZB11
4C206AA10
4C206CA13
4C206DA23
4C206DA24
4C206DA25
4C206KA01
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA03
4C206ZA21
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】アルミニウムの使用量を削減しつつ、高いバリア性を有し、貼付剤に含有される有効成分の揮散及び劣化等を防止できる貼付剤用包装袋及びそれを用いた貼付剤包装品を提供する。
【解決手段】貼付剤用包装袋は、ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムからなる最内層と、前記最内層の外側に、直接又は接着剤層を介して接するポリエチレンテレフタレートフィルム又はアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる第2層を有するシートより構成される袋体と、袋体の開口の縁部又はその近傍に、開口を開閉可能に封止するチャックとを有し、袋体を構成するシートは金属箔層を有しない。貼付剤包装品は、前記の貼付剤用包装袋と、その内部に密封された貼付剤を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムからなる最内層と、前記最内層の外側に、直接又は接着剤層を介して接するポリエチレンテレフタレートフィルム又はアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる第2層を有するシートより構成される袋体と、
前記袋体の開口の縁部又はその近傍に、前記開口を開閉可能に封止するチャックとを有し、
前記袋体を構成するシートが金属箔層を有しないことを特徴とする貼付剤用包装袋。
【請求項2】
ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムからなる最内層と、前記最内層の外側に、直接又は接着剤層を介して接するポリエチレンテレフタレートフィルム又はアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる第2層を有するシートより構成される袋体と、前記袋体の開口の縁部又はその近傍に、前記開口を開閉可能に封止するチャックとを有し、前記袋体を構成するシートが金属箔層を有しない包装袋と、
前記包装袋の内部に密封された貼付剤を含む貼付剤包装品。
【請求項3】
前記貼付剤は、支持体層と、前記支持体層上に位置し、粘着剤と有効成分である少なくとも1つの薬剤を含む粘着剤層と、前記粘着剤層の前記支持体と接している面と反対側の面上に位置する剥離ライナーとを有することを特徴とする請求項2に記載の貼付剤包装品。
【請求項4】
前記貼付剤が、パップ剤又はテープ剤であることを特徴とする請求項3に記載の貼付剤包装品。
【請求項5】
前記薬剤が局所性作用薬を含むことを特徴とする請求項2に記載の貼付剤包装品。
【請求項6】
前記局所性作用薬が消炎鎮痛薬又は局所麻酔薬を含むことを特徴とする請求項5に記載の貼付剤包装品。
【請求項7】
前記消炎鎮痛薬が、NSAIDs、フェノール類及び環式モノテルペン類のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の貼付剤包装品。
【請求項8】
前記NSAIDsがケトプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム水和物、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム塩、ジクロフェナクエポラミン塩、イブプロフェン、エスフルルビプロフェン、フルルビプロフェン及びフェルビナクからなる群より選択される1又は複数であることを特徴とする請求項7に記載の貼付剤包装品。
【請求項9】
前記フェノール類がサリチル酸メチル及びサリチル酸グリコールの一方又は双方であることを特徴とする請求項7に記載の貼付剤包装品。
【請求項10】
前記環式モノテルペン類がL-メントールであることを特徴とする請求項7に記載の貼付剤包装品。
【請求項11】
前記局所麻酔薬が、リドカインであることを特徴とする請求項6に記載の貼付剤包装品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パップ剤、テープ剤等の貼付剤の包装に用いられる貼付剤用包装袋の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
貼付剤は貼付期間を通して薬剤の血中濃度を一定に保持できること、副作用が発現した場合に直ちに投与を中断できること、嚥下の困難な高齢者や小児にも投与が容易であること等、注射剤や経口投与剤等にない利点を有している。貼付剤は、親水性で水分を多量に含むパップ剤と、水を含まない親油性の貼付製剤であるテープ剤に分類される。貼付剤の主な用途は、局所の消炎鎮痛であり、そうした目的に使用される貼付剤は、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール等のサリチル酸誘導体及びケトプロフェン、インドメタシン、ロキソプロフェン、フェルビナク、ジクロフェナク等の有効成分を含有するものが使用される。
【0003】
従来、貼付剤は、ガス及び水蒸気に対するバリア性を有するフィルムで気密包装され、吸湿、乾燥、有効成分の揮散等を防止した形態で保管されることが多い。この様な目的で使用されるフィルムとして、バリア層としてアルミ箔積層フィルム等の金属箔層を有するものが広く用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-202290号公報
【特許文献2】特開2019-107220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、昨今のエネルギーコスト及び物流コストの高騰等に伴うアルミニウム製品価格の高騰、世界的なカーボンニュートラル及びSDGs等への取り組みの強化、省資源及び廃棄物の削減、製品の包装の簡素化の進展等を背景に、包装材料におけるアルミニウムの使用の削減への要求が高まりつつある。また、従来のアルミニウム箔層を含む従来の貼付剤用包装材料には、アルミニウム箔におけるクラックの発生によりガス及び水蒸気等へのバリア性が低下する問題があった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、アルミニウムの使用量を削減しつつ、高いバリア性を有し、貼付剤に含有される有効成分の揮散及び劣化等を防止できる貼付剤用包装袋及びそれを用いた貼付剤包装品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明の第1の態様は、ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムからなる最内層と、前記最内層の外側に、直接又は接着剤層を介して接するポリエチレンテレフタレートフィルム又はアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる第2層を有するシートより構成される袋体と、前記袋体の開口の縁部又はその近傍に、前記開口を開閉可能に封止するチャックとを有し、前記袋体を構成するシートが金属箔層を有しないことを特徴とする貼付剤用包装袋を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0008】
本発明の第2の態様は、ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムからなる最内層と、前記最内層の外側に、直接又は接着剤層を介して接するポリエチレンテレフタレートフィルム又はアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる第2層を有するシートより構成される袋体と、前記袋体の開口の縁部又はその近傍に、前記開口を開閉可能に封止するチャックとを有し、前記袋体を構成するシートが金属箔層を有しない包装袋と、前記包装袋の内部に密封された貼付剤を含む貼付剤包装品を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0009】
本発明の第2の態様に係る貼付剤包装品において、前記貼付剤は、支持体層と、前記支持体層上に位置し、粘着剤と有効成分である少なくとも1つの薬剤を含む粘着剤層と、前記粘着剤層の前記支持体と接している面と反対側の面上に位置する剥離ライナーとを有するものであってもよい。
【0010】
本発明の第2の態様に係る貼付剤包装品において、前記貼付剤は、例えば、パップ剤又はテープ剤である。
【0011】
本発明の第2の態様に係る貼付剤包装品において、前記薬剤が、例えば、局所性作用薬を含んでいる。
【0012】
本発明の第2の態様に係る貼付剤包装品において、前記局所性作用薬が、例えば、消炎鎮痛薬又は局所麻酔薬を含んでいる。
【0013】
本発明の第2の態様に係る貼付剤包装品において、前記消炎鎮痛薬が、NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)、フェノール類及び環式モノテルペン類のいずれかであることが好ましい。
【0014】
本発明の第2の態様に係る貼付剤包装品において、前記NSAIDsがケトプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム水和物、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム塩、ジクロフェナクエポラミン塩、イブプロフェン、エスフルルビプロフェン、フルルビプロフェン及びフェルビナクからなる群より選択される1又は複数であることが好ましい。
【0015】
本発明の第2の態様に係る貼付剤包装品において、前記フェノール類がサリチル酸メチル及びサリチル酸グリコールの一方又は双方であることが好ましい。
【0016】
本発明の第2の態様に係る貼付剤包装品において、前記環式モノテルペン類がL-メントールであることが好ましい。
【0017】
本発明の第2の態様に係る貼付剤包装品において、前記局所麻酔薬が、リドカインであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、アルミニウム箔を使用することなく、アルミニウム箔層を有する従来の包装材と同等以上の性能を有し、貼付剤に含まれる有効成分の揮散や乾燥等から貼付剤を保護することが可能な貼付剤用包装袋、及びそれを用い、貼付剤の経時安定性に優れた貼付剤包装品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施の形態に係る貼付剤用包装袋(以下、「貼付剤用包装袋」と略称する場合がある。)は、2以上の樹脂フィルムが積層した構造を有する積層体を袋状に加工した袋体を有する。袋体を構成するシートは、ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムからなる最内層と、前記最内層の外側に、直接又は接着剤層を介して接するポリエチレンテレフタレートフィルム又はアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる第2層を有し、アルミニウム箔等の金属箔層を有しない。
【0020】
<最内層>
貼付剤用包装袋を構成する積層体の最内層は、ポリエチレンフィルム(低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、メタロセン触媒ポリエチレン又は高密度ポリエチレンからなるフィルム)又はポリプロピレンフィルム(無延伸ポリプロピレン又は二軸延伸ポリプロピレンからなるフィルム)により構成されている。最内層の厚さは特に制限されないが、機械的強度、ガス又は水蒸気等に対するバリア性、コスト及び扱いやすさ等を考慮すると、通常、10~50μmであり、好ましくは10~40μm、より好ましくは10~35μmである。
【0021】
<第2層>
貼付剤用包装袋を構成する積層体において、最内層の外側に積層され、直接又は接着剤層を介して最内層の外側に接する第2層は、ポリエチレンテレフタレートフィルム又はアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムにより構成されている。後者は、前者に比べ、ガスバリア性、水蒸気バリア性、遮光性等において優れているが、本実施の形態に係る貼付剤用包装袋において、アルミニウム蒸着を行っていないポリエチレンテレフタレートフィルムも第2層の構成材料として好適に用いることができる。最内層の厚さは特に制限されないが、機械的強度、ガス又は水蒸気等に対するバリア性、コスト及び扱いやすさ等を考慮すると、通常、10~50μmであり、好ましくは10~40μm、より好ましくは10~35μmである。
【0022】
<積層体の製造方法>
最内層と第2層との積層は、当業者に公知の任意の積層方法及び装置を適宜使用して行うことができる。積層方法の具体例としては、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、ホットメルトラミネート法、押出しラミネート等が挙げられる。積層のために接着剤を使用することがあるが、本実施形態において、接着剤層は、独立した1層としてカウントしない。
【0023】
第2層の外側には、必要に応じて、ポリエチレンフィルム(低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、メタロセン触媒ポリエチレン又は高密度ポリエチレンからなるフィルム)又はポリプロピレンフィルム(無延伸ポリプロピレン又は二軸延伸ポリプロピレンからなるフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等の樹脂フィルム、金属蒸着樹脂フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム等の透明蒸着フィルム、不織布、紙等の抄造体等(ただし、アルミニウム箔等の金属箔を除く。)からなる1又は複数の層が更に積層されていてもよく、これらの層を設ける目的は特に制限されないが、具体例としては、ガス、水蒸気等に対するバリア性の向上、包装袋の機械的強度の向上、意匠性の向上等が挙げられる。
【0024】
貼付剤用包装袋の製袋は、当業者に公知の任意の積層方法及び装置を適宜使用して行うことができる。製袋方法及びそれにより得られる貼付剤用包装袋の構造の具体例としては、1枚のフィルムを2つ折りにして折り部を底部とし、両側面をシールする二方袋、二枚のフィルムを重ね合わせ、底部及び両側面をシールする三方袋、1枚のフィルムを長手方向に沿って巻き、両端を合掌状に合わせてシールしてこれを背部(合掌部)とし、次いで底部をシールする合掌袋等が挙げられる。その他、底部又は側部にマチを有するガゼット袋、底部を円状等の形状にして自立性を持たせたスタンド袋等も存在する。シール部の密封には、最内層のポリエチレン又はポリプロピレンの溶融温度以上にシール部を加熱し、溶融接合させるヒートシール(熱圧着)による密封が通常広く行われている。
【0025】
<チャック>
貼付剤用包装袋には、通常複数枚の貼付剤が収容されており、必要な枚数を取り出した後、袋体の開口を密閉できる必要がある。袋体を構成するシートが金属箔層を含む場合、金属箔層が塑性を有するため、開口の近傍を折り返すことにより、袋体をある程度気密に密閉することが可能である。しかし、本実施の形態に係る貼付剤用包装袋は金属箔層を有しないため、開口の近傍を折り曲げた状態を維持することが困難である。そのため、開口の縁部又はその近傍に、開口を開閉可能に封止するチャックを有する。チャックは、袋体を形成するシートの内面側に、互いに対向するように設けられ、噛み合い構造で互いに脱着自在に連結可能で、連結状態で袋体の開口の縁部又はその近傍を気密に密閉するように構成されている。チャックの噛み合い構造は、袋体の開口の縁部又はその近傍を開閉可能に密閉できるものであれば特に制限されないが、例えば、互いに対向するチャックの一方が、凸条を有するもので、他方が当該凸条を脱着自在に案内する嵌合溝を有するものであってもよい。なお、袋体の開口の縁部又はその近傍に上記の様なチャックが設けられる場合、袋体の製袋構造は、合掌部を有しないものであることが好ましい。
【0026】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る貼付剤包装品(以下、「貼付剤包装品」又は「包装品」と略称する場合がある。)について説明する。本実施の形態に係る貼付剤包装品は、本発明の第1の実施の形態に係る貼付剤用包装袋と、その内部に密封された貼付剤とを含んでいる。貼付剤用包装袋は、本発明の第1の実施の形態の説明において説明したので、詳細な説明は省略する。
【0027】
貼付剤は、当業者に公知の任意の形態のものであってよいが、具体的には、支持体と、その支持体上に位置し、粘着剤と有効成分である少なくとも1の薬剤を含む粘着剤層(膏体)と、粘着剤層上に位置し、支持体と接している面と反対側の面上に位置する剥離ライナーとを含み、粘着剤層が患者の皮膚に粘着し、薬物を皮膚中に放出する形態のものが挙げられる。貼付剤の具体例として、テープ剤、パップ剤、プラスター剤が挙げられる。
【0028】
支持体の材質は特に限定されず、その例として、ポリエチレン、ポリプロピレン等から製造された伸縮性もしくは非伸縮性の織布又は不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル等から製造されたフィルム、あるいは、ウレタン、ポリウレタン等から製造された発泡性支持体が挙げられる。これらを1種単独で又は複数種を積層もしくは混合したものを支持体として使用してもよい。
【0029】
貼付剤の粘着剤層に含まれる薬剤は、具体的な貼付剤の医学的用途に応じて、様々な薬物であり得る。粘着剤層に含まれる薬剤は1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。薬剤は全身性作用薬であっても局所性作用薬でもよいが、消炎鎮痛薬又は局所麻酔薬等の局所性作用薬であることが好ましい。消炎鎮痛薬の具体例としては、ケトプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム水和物、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム塩、ジクロフェナクエポラミン塩、イブプロフェン、エスフルルビプロフェン、フルルビプロフェン及びフェルビナク等のNSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)、サリチル酸メチル、NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)、フェノール類及び環式モノテルペン類等のフェノール類及びL-メントール等の環式モノテルペン類が挙げられる。また、局所麻酔薬の具体例としては、リドカイン等が挙げられる。
【0030】
粘着剤層中の各薬剤の含有量は、当業者が適宜決定することができ、例えば0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは、10質量%以上であり得る。またその含有量は例えば40質量%以下であり、好ましくは30質量%以下、より好ましく25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0031】
粘着剤層は少なくとも1つの添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤の例としては、可塑剤、抗酸化剤、粘着付与剤、防腐剤、pH調整剤、キレート剤、経皮吸収促進剤、賦形剤、香料、色剤、脂肪酸、油脂、コレステロール等が挙げられる。
【0032】
可塑剤としては、例えば、オクタン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、乳酸ミリスチル等の一価アルコールの脂肪酸エステル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジオクチル、コハク酸ジオクチル等の二塩基酸エステル、ジカプリン酸プロピレングリコール、トリオクタン酸グリセリル、トリ(オクタン酸/デカン酸)グリセリル、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の多価アルコール等の脂肪酸エステル等が挙げられ、特にミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、及び中鎖脂肪酸トリグリセリド等の脂肪酸エステルが好適に使用される。なお、これらの化合物は、可塑化以外の目的で添加されていてもよい。
【0033】
粘着剤層中の添加剤の含有量は、その添加剤の性質に応じて当業者が適宜決定することができ、例えば、0.01~30質量%、好ましくは0.05~20質量%、さらに好ましくは0.1~15質量%であり得る。添加剤が複数ある場合にはその合計含有量がこれらの範囲になり得る。
【0034】
貼付剤の粘着剤層に含まれる粘着剤の具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコン系粘着剤等が挙げられる。
【0035】
粘着剤の含有量は、粘着剤層中に例えば50~95質量%であり、好ましくは55~90質量%、より好ましくは60~85質量%であり得る。
【0036】
粘着剤層中で、粘着剤と薬物とが互いに均一に混合されて存在する態様が好ましい。
【0037】
粘着剤層の上(すなわち、支持体とは反対の側)に剥離ライナーが配置される。剥離ライナーは粘着剤層を保護するものであり、貼付剤を皮膚に貼り付ける前にユーザーによって剥離される。剥離ライナーの材料は当業者が適宜選択することができ、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、PET、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル等から製造されたフィルム、あるいはアルミニウム蒸着の金属性のフィルム等が使用できる。酸素不透過性のライナーが好ましい。包装袋の最内層と、貼付剤の支持体と、貼付剤の剥離ライナー本体とが、いずれもPETで形成されていることが特に好ましい。ライナー本体表面にシリコン及びフッ素処理等の剥離処理が施されたものを使用してもよい。さらに、ライナーには、剥離を容易にするため、直線又は曲線状の切れ込みが設けられていてもよく、2以上のライナーが一部重畳されたものや、折返し部を有するものでもよい。
【0038】
貼付剤を調製する方法は特に限定されず、公知の方法を適宜組み合わせて調製することができる。例えば、粘着剤層を構成する成分を均一に撹拌及び混合し、得られた組成物を、塗工機を用いて支持体又は剥離ライナーの表面上に塗布し、乾燥して貼付剤を得ることができる。
【0039】
貼付剤包装品は、予め一端側に開口部を残した状態で製袋した貼付剤用包装袋に貼付剤を入れ、開口部をシールすることにより製造してもよく、フィルム状の積層体上に貼付剤を載置した状態で積層体を筒状に成形し、両端部をヒートシールすることにより製造してもよい。貼付剤包装品中に、貼付剤とは別個に酸素吸収剤等を収容していてもよく、包装体中の気体を、窒素等の不活性ガスで置換してもよい。開封を容易にするために、開封部にノッチを形成し、又はレーザーカット加工等の易開封加工を行ってもよい。
【実施例0040】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
(1)貼付剤用包装袋の調製
下記の表1に示す組成を有する貼付剤用包装袋に使用する積層体(包装材)(実施例1~6及び比較例1~2)を調製した。右から左に向かって、最内層側から最外層側に使用されているフィルムの材質(PE:ポリエチレン、PP:ポリプロピレン、PET:ポリエチレンテレフタレート、VM-PET:アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート、AL:アルミニウム箔、EMAA:エチレン-メタクリル酸共重合体)及び厚さ(単位:μm)を示す。各層の貼り合わせは、ウレタン系接着剤を使用してこれらをドライラミネートすることにより行った。袋体を形成するシートの内面側の開口の近傍に、互いに対向するように設けられ、噛み合い構造で互いに脱着自在に連結可能で、連結状態で袋体の開口の縁部又はその近傍を気密に密閉するように構成されたチャックを設けた。
【0041】
【表1】
【0042】
(2):貼付剤包装体の調製
(2-1)貼付剤の調製
下記の表1の組成を有する4種類の膏体(粘着剤)組成物を調製し、シリコーン離型処理がなされた剥離ライナーにこれらを塗布し、離型ライナーに積層された膏体を調製した。支持体を用意し、支持体の一面に積層された膏体の膏体面が対向するように重ね合わせ、貼付剤(貼付剤1~4:貼付剤1~3はプラスター剤、貼付剤4はパップ剤)を調製した。
【0043】
【表2】
【0044】
(2-2)貼付剤包装体の調製
上記(2-1)で調製した貼付剤1~4を、実施例1~6及び比較例1~2の積層体を用いて包装し、貼付剤包装品を調製した。積層体の製袋は、筒状の胴部を160℃でヒートシールした背貼合掌法(合掌部の幅10mm)で形成し、内容物として貼付剤1~4を充填すると共に、底部形成部をフラット刃型のシールバーを用いて200℃、幅25mm、2秒間ヒートシールした。その後、ヒートシール部を中央で切断し、両端にヒートシール部が形成された合掌袋の内部に貼付剤が収容された貼付剤包装品を得た。
【0045】
(3):安定性試験(1)
上記(2-2)により調製された貼付剤包装品を、60℃条件下で2週間保存した。その後、各貼付剤の粘着材層中の有効成分の含量についてGCを用いて測定し、高温保存直前の含量との比較を行うことにより、薬物安定性を評価した。結果を表3~6に示す。貼付剤1~4のいずれについても、実施例に係る積層体を用いた貼付剤包装品は、アルミニウム箔層を含む比較例に係る積層体を用いた貼付剤包装品と同等以上の性能を示すことが確認された。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】