IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大坪鉄工の特許一覧

<>
  • 特開-養殖海苔処理装置及び箱船 図1
  • 特開-養殖海苔処理装置及び箱船 図2
  • 特開-養殖海苔処理装置及び箱船 図3
  • 特開-養殖海苔処理装置及び箱船 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083197
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】養殖海苔処理装置及び箱船
(51)【国際特許分類】
   A01G 33/02 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
A01G33/02 101J
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044696
(22)【出願日】2023-03-20
(62)【分割の表示】P 2022196382の分割
【原出願日】2022-12-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000149457
【氏名又は名称】株式会社オーツボ
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】加賀田 祐次
(72)【発明者】
【氏名】菊次 久孝
(72)【発明者】
【氏名】下川 隆弘
【テーマコード(参考)】
2B026
【Fターム(参考)】
2B026AA01
2B026HA01
(57)【要約】
【課題】養殖海苔に対して各種の処理を施す作業性を向上させ、しかも安価な養殖海苔処理装置及び箱船を提供すること。
【解決手段】養殖海苔処理装置16は、処理液を貯える浸漬槽20と、浸漬槽20の内部の壁面に固定され、海苔網の幅方向の両側部に当接して海苔網を処理液に潜らせるようにガイドする一対の海苔網ガイド30を有し、海苔網ガイド30は、海苔網が下面に摺接するガイド板31と、ガイド板31における片方の側部から延出し、浸漬槽20の内部の壁面に固定される固定板32と、を有し、ガイド板31は、浸漬槽20の底面に対向する中央部31aと、中央部31aの両端部から前記海苔網の移動方向上流側上方に延びる前方反り部31bと、を有し、浸漬槽20に一対の海苔網ガイド30を固定した状態において、前方反り部31bに沿って延びる仮想延長線が浸漬槽20の上縁よりも上方を通る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
養殖海苔に対して所定の処理を施す処理液を貯える浸漬槽と、
当該浸漬槽の内部における海苔網の幅方向に対向する壁面に固定され、前記浸漬槽を備えた箱船に引き揚げた前記海苔網の幅方向の両側部に当接して前記海苔網を前記処理液に潜らせるようにガイドする一対のガイド手段を有し、
前記ガイド手段は、
前記海苔網が下面に摺接し、前記海苔網の長手方向に沿って延びるガイド板と、
前記ガイド板における長手方向に延びる片方の側部から前記ガイド板の板面に対して直角方向に延出し、前記浸漬槽の内部の壁面に固定される固定板と、を有し、
前記ガイド板は、前記浸漬槽の底面に対向する平板状の中央部と、当該中央部の前記海苔網の移動方向上流側から上方に延びる傾斜面を有する前方反り部と、を有し、
前記浸漬槽に前記一対のガイド手段を固定した状態において、前記前方反り部の傾斜に沿って延びる仮想延長線が前記浸漬槽の上縁よりも上方を通ることを特徴とする養殖海苔処理装置。
【請求項2】
前記中央部と前記前方反り部との境界部分が円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の養殖海苔処理装置。
【請求項3】
前記ガイド手段は、
前記ガイド板の上面と前記固定板における前記浸漬槽の壁面に対向する面の反対面とを連結するリブ板を更に有することを特徴とする請求項1記載の養殖海苔処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の養殖海苔処理装置を備えたことを特徴とする箱船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖海苔の活性処理や施肥処理に適用する養殖海苔処理装置及び箱船に関する。
【背景技術】
【0002】
養殖海苔において活性処理や施肥処理の作業は船によって行われる。この作業に用いる船として、移動用の動力源が着いていない、所謂、箱船が用いられることが多い。活性処理や施肥処理において、作業員が海から海苔網を箱船の一方側から引き上げ、箱船内の処理層に海苔網を潜らせた後に箱船の他方側から海に戻すといった作業が行われる。箱船は、作業員が海苔網を箱船から引き上げた際に引き上げた分だけ海苔網に沿って移動する。
【0003】
従来におけるこの種の技術として、特許文献1又は特許文献2に記載された技術がある。特許文献1には、内部に消毒液を収容し、上面が開口した浅底状の処理箱舟を形成し、消毒液内に少なくとも一部を浸漬させたローラ体を配置させ、処理箱舟を前進させつつローラ体の下部に海苔網を敷き込みながら海苔網を消毒する海苔網の消毒装置について開示されている。
【0004】
特許文献2には、消毒液が貯溜される容器と、この容器に互いに平行に配設されて、消毒液に浸漬される2本の海苔網巻取り体と、この巻取り体に設けられた海苔網の係着部と、この巻取り体を回転させる動力部とからなる海苔の消毒装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-225654号公報
【特許文献2】実開平5-9259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、箱船は、通常の船よりも移動効率が悪いため、活性処理や施肥処理を行う約3ヶ月程度の期間、養殖場付近つまり海上に停泊されている。しかしながら、長期間海上に停泊された状態することにより、箱船の装備が損耗するおそれがある。この損耗によって、例えば、特許文献1に記載されたローラ体の回転が重くなって活性処理や施肥処理の作業性が低下するおそれがあり、少人数(例えば1人)で作業を行うことが困難になる。また、特許文献2に記載された巻取り体や動力部は比較的高価であり、これらが損耗によって故障が発生することは、海苔養殖業者にとって大きな損害になる。
【0007】
このため、活性処理や施肥処理の作業を少人数で行うことが可能であり、しかも安価で作業性のよい箱船が求められている。
【0008】
本発明は、このような問題点に対して鑑みなされたものであり、養殖海苔に対して各種の処理を施す作業性を向上させ、しかも安価な養殖海苔処理装置及び箱船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は次に記載する構成を備える。
【0010】
(1) 養殖海苔を保持する海苔網に対して所定の処理を施す処理液を貯える浸漬槽と、
当該浸漬槽の内部における互いに対向する側壁面に固定され、前記浸漬槽を備えた箱船に引き揚げた前記海苔網の幅方向の両側部に当接して前記海苔網を前記処理液に潜らせるようにガイドする一対のガイド手段を有し、
前記ガイド手段は、
前記海苔網が下面に摺接し、前記海苔網の長手方向に沿って延びる板状のガイド板と、
前記ガイド板における長手方向に延びる片方の側部から前記ガイド板の板面に対して直角方向に延出し、前記浸漬槽の内部の壁面に固定される板状の固定板と、を有し、
前記ガイド板は、前記浸漬槽の底面に対向する中央部と、当該中央部の前記海苔網の移動方向上流側から上方に延びる傾斜面を有する前方反り部と、を有し、
前記浸漬槽に前記一対のガイド手段を固定した状態において、前記前方反り部の傾斜に沿って延びる仮想延長線が前記浸漬槽の上縁よりも上方を通ることを特徴とする養殖海苔処理装置。
【0011】
(1)によれば、海中から引き上げられて浸漬槽に送り込まれた海苔網は、ガイド板の上流側の反り部によって浸漬槽の底面に向かって移動し、ガイド板の中央部を通過する際に海苔網が処理水を潜った後、浸漬槽の外部方向に送り出される。このように、浸漬槽の底面に対向する中央部とこの中央部の前記海苔網の移動方向上流側から上方に延びる傾斜面を有する反り部とを有するガイド板を浸漬槽の内部の壁面に固定するという簡単な構成で海苔網をガイドすることが可能である。しかも、従来のようにコロや動力源を用いた浸漬装置を必要としない。これにより、安価な養殖海苔処理装置を提供することが可能になる。また、浸漬槽に前記一対のガイド手段を固定した状態において、前記前方反り部の傾斜に沿って延びる仮想延長線が前記浸漬槽の上縁よりも上方を通るため、海苔網を処理水に潜らせる際に前記反り部の端部に海苔網が引っ掛かることが低減され、浸漬槽に対する海苔網の出し入れを安定して行うことが可能になる。このように、作業性を向上させることが可能になる。
【0012】
(2) (1)において、前記中央部と前記前方反り部との境界部分が円弧状に形成されていることを特徴とする養殖海苔処理装置。
【0013】
(2)によれば、ガイド板に沿って中央部と前方反り部との境界部分を通過する際に、海苔網や海苔を傷つけないように海苔網をスムーズに移動させることが可能になる。このように、作業性を更に向上させることが可能になる。
【0014】
(3) (1)~(2)において、前記ガイド手段は、
前記ガイド板の上面と前記固定板における前記浸漬槽の壁面に対向する面の反対面とを連結するリブ板を更に有することを特徴とする養殖海苔処理装置。
【0015】
(3)によれば、リブ板によってガイド手段の剛性が高められる。このため、ガイド板が海苔網を浸漬槽の底面にガイドする際に、ガイド板に対して上方の力が作用しても、ガイド板が損傷することを低減することができる。
【0016】
(4) (1)~(3)の何れかの養殖海苔処理装置を備えたことを特徴とする箱船。
【0017】
(4)によれば、(1)~(3)による作用効果を有する箱船を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、養殖海苔に対して各種の処理を施す作業性を向上させ、しかも安価な養殖海苔処理装置及び箱船を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態における箱船1の外観を示す斜視図である。
図2図1に対して更に箱船1を前方かつ上方寄りから視た外観を示す斜視図である。
図3】海苔網ガイド30の外観を示す斜視図である。
図4】箱船1の使用方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態における箱船1の外観を示す斜視図である。図2は、図1に対して更に箱船1を前方かつ上方寄りから視た外観を示す斜視図である。箱船1は、本体10と、前方ガイドアーム12と、後方ガイドアーム14と、を備えている。
【0022】
本体10は、略直方体形の容器体であり、内部に前方ガイドアーム12、後方ガイドアーム14及び浸漬槽20が設置されている。浸漬槽20は本体10の中央部に、前方ガイドアーム12及び後方ガイドアーム14は、浸漬槽20に対して本体10の長手方向両側部に配置される。なお、以下の説明の便宜上、箱船1の進行方向側を前方或いは前側、その反対側を後方或いは後側と称する。本実施形態によれば、本体10の長手方向の一端部が前側となり、他端部が後側となる。本体10の後部の中央には欠落部10aが形成されている。箱船1においてこの欠落部10aに、箱船1に推進力を与えるエンジン等の動力源を配置することも可能であるが、本実施形態においては、このような動力源を取り付ないものとする。
【0023】
前方ガイドアーム12は、海中の海苔網100(図4参照)を掬い上げて箱船1内にガイドするものである。前方ガイドアーム12は、金属棒によって構成され、U字形に曲げを施してなるU字部12aと、U字部12aにおいて互いに対向する一対の棒状部分の中央部の間に架設する棒状の水平シャフト部12bと、U字部12aと水平シャフト部12bとによって囲まれた空間に配置され、U字部12aの先端部と水平シャフト部12bの中央部との間に架設する2本の棒状の直角シャフト部12c、12cと、を備えている。
【0024】
U字部12aの両端の幅は、本体10の内側の幅より若干狭く設定されている。U字部12aにおける水平シャフト部12bとの接続部分から先端までの部位において、下方に向けたくの字型の曲げが二箇所に施されている。
【0025】
U字部12aの両端部は、本体10の内部の前方に固定され、U字部12aの先端側が、本体10の外側に配置される。前方ガイドアーム12は、U字部12aの端部に形成した二箇所の曲げにより、本体10の上縁部から外部に配置された部位が、緩やかに下方に向かって延びる。
【0026】
後方ガイドアーム14は、箱船1内の海苔網100(図4参照)を海に向けてガイドするものである。後方ガイドアーム14は、金属棒によって構成されるくの字形状を有する2本のガイドアーム部14aと、金属棒によって構成される略U字形の支持アーム部14bと、を備えている。2本のガイドアーム部14a、14aは、一端部がそれぞれ浸漬槽20の後部に固定され、浸漬槽20の上縁から外側に斜め上方に延び、更に欠落部10aにおいて互いに対向する本体10の側板部の上方において水平方向に延びる。
【0027】
支持アーム部14bの両端部は、本体10の内部の後方に固定され、支持アーム部14bの中央部に2本のガイドアーム部14a、14aの他端部が並べて接続される。2本のガイドアーム部14a、14aの間にくの字形の曲げを有する平板15が設けられる。この平板15によって欠落部10aの上部が覆われ、欠落部10aの上部に浸漬槽20の上縁から後方に延びる斜面、及びこの斜面の上端部から後方に延びる水平面が形成される。
【0028】
養殖海苔処理装置16は、浸漬槽20と、海苔網ガイド30と、を備え、処理水を貯えた浸漬槽20内に、海苔養殖中の海苔網100(図4参照)を海苔網ガイド30に沿ってさせることにより、処理水に海苔網100を潜らせるものである。処理水としては活性処理や施肥処理を行う液体が適用可能であるが、それ以外の処理水であってもよい。
【0029】
浸漬槽20は、本体10よりも小さい略直方体形の容器体であり、長方形の前壁部と、前壁よりも長尺の長方形の互いに対向する一対の側壁部と、長方形の下部が等脚台形状に延出した略ホームベース形の後壁部と、前壁部、一対の側壁部及び後壁部が外周から立設する底面部と、を備えている。底面部は、後壁部の下部から一対の側壁部の長手方向に沿って水平方向に延びる、細長い矩形の最底面と、一対の側壁部の下端から最底面の両側辺に延びる台形の下り傾斜面と、前壁部の下端から最底面の前方の端辺に延びる等脚台形の下り傾斜面と、を備えている。最底面には、浸漬槽20内に貯えられた処理水を排出するための排出口22が形成されている。
【0030】
浸漬槽20の一対の側壁部にそれぞれ海苔網ガイド30が固定されている。
【0031】
図3は海苔網ガイド30の外観を示す斜視図であり、図3(a)は海苔網ガイド30を後方でかつ上方から視た外観、図3(b)は、図3(a)の海苔網ガイド30を反対側から視た外観を示す。図3に示す海苔網ガイド30は、箱船1に乗船した作業員が前方を向いたときに右側にある側壁部に固定される。なお、左側にある側壁部に固定される海苔網ガイド30は、図3に示す海苔網ガイド30に対して面対称に構成されたものである。このため、図3に示す右側の海苔網ガイド30について詳述することにより、左側の海苔網ガイド30についての説明は省略する。
【0032】
海苔網ガイド30は、浸漬槽20の側壁部の壁面(以下、側壁面と称する)に対して直角方向に延び、浸漬槽20の底面部に対向するガイド板31と、長手方向に延びる片方の側部から直角方向に延出し、浸漬槽20の側壁面に当接しかつ固定される固定板32と、ガイド板31と固定板32とを連結するリブ板33と、を備えている。
【0033】
ガイド板31は、浸漬槽20の底面部に対向する中央部31aと、中央部31aの前側端部から上方向に傾斜する前方反り部31bと、中央部31aの後側端部から上方向に傾斜する後方反り部31cと、を有する。中央部31aの板面に対する前方反り部31bの板面の角度(角度α)は、後方反り部31cの板面の角度(角度β)よりも小さい。また、前方反り部31bの長さは後方反り部31cの長さよりも長い。また、中央部31aと前方反り部31b或いは後方反り部31cとの境界部分の板面が円弧状に形成されている。
【0034】
本実施形態によれば、ガイド板31の板厚は3mm、ガイド板31の幅は238mm、中央部31aの長さは500mm、前方反り部31bの長さは506mm、後方反り部31cの長さは150mm、角度αは40°、角度βは45°、中央部31aと前方反り部31bとの境界部分の曲率はR294、中央部31aと後方反り部31cとの境界部分の曲率はR94に設定されている。なお、これらの寸法の値はあくまで一例であり、他の値でもよいことは言うまでもない。
【0035】
また、前方反り部31b及び後方反り部31cにおける浸漬槽20の側壁面から延出する部分の角部には面取りが施されている。更に、ガイド板31における浸漬槽20の側壁面から延出する部分の外周端に円柱状の針金部材34が固定されている。本実施形態によれば、針金部材34の直径は12mmに設定されている。すなわち、ガイド板31の幅は針金部材34の直径分を含めると250mmになる。
【0036】
固定板32は、浸漬槽20の側壁部に固定される。固定板32の板面に、ガイド板31の中央部の板面に対して直角方向に延びる長孔32aが3箇所形成されている。この長孔32aにネジ或いはボルトを通すことによって、海苔網ガイド30が浸漬槽20の側壁部に固定される。本実施形態によれば、固定板32の板面において、ガイド板31の中央部31aの範囲に2つの長孔32aが形成され、前方反り部31bの範囲に1つの長孔32aが形成されている。固定板32は、ガイド板31における前方の端部及び中央部の側部から延出しており、3箇所の長孔32aは互いに平行に形成されている。このため、ガイド板31の上下位置及び角度を調整することができる。
【0037】
リブ板33は、ガイド板31の上面及び固定板32における浸漬槽20の側壁面に対向する面の反対面から立設し、ガイド板31と固定板32とを連結する略直角三角形の板状の部材である。
【0038】
海苔網ガイド30は、ガイド板31と、固定板32と、リブ板33と、をピッチ溶接等で接合することによって組み立てられる。
【0039】
海苔網ガイド30が浸漬槽20内の側壁部に固定された状態において、図1に示すように、ガイド板31における中央部31aの下面が浸漬槽20内の底面に対して所定の間隔を空けて配置され、前方反り部31bが浸漬槽20内の前壁部に対向し、後方反り部31cが浸漬槽20内の後壁部に対向する。また、前方反り部31b或いは後方反り部31cの傾斜に沿って延びる仮想延長線は浸漬槽20の上縁よりも上方を通る。言い換えれば、この仮想延長線が浸漬槽20内の前壁部或いは後壁部を通過することはない。本実施形態においては、前方反り部31bの傾斜に沿って延びる仮想延長線は、前方ガイドアーム12よりも上方を通り、後方反り部31cの傾斜に沿って延びる仮想延長線は、後方ガイドアーム14よりも上方を通る。
【0040】
次に、箱船1の使用方法について説明する。
【0041】
図4は、箱船1の使用方法を示す説明図であり、図4(a)は箱船1を前方でかつ上方から視た外観、図4(b)は箱船1を後方でかつ上方から視た外観を示す。
【0042】
図4に示すように、海苔網100は、箱船1の前方から前方ガイドアーム12上を通って箱船1の内部に導入され、浸漬槽20の内部に通される。この際、海苔網100は、海苔網100の両側部が海苔網ガイド30のガイド板31を下方に通されることにより、浸漬槽20の底面近くを通過する。そして、浸漬槽20を通過した海苔網100は、浸漬槽20の後部から平板15を通って、海中に戻される。
【0043】
海苔網100は、帯状の延びる長尺の部材であり海中に張設されている。海苔網100の一端部に箱船1が配置される。この際、浸漬槽20に予め処理水を貯えておく。箱船1には1人或いは2人の作業員が乗船する。
【0044】
そして、作業員が箱船1の内部に海苔網100を引き入れることにより、箱船1が前方に移動する。この移動の際に、浸漬槽20の手前の海苔網100が浸漬槽20に移動する。浸漬槽20に移動した海苔網100は、幅方向の両側部がガイド板31の下面に摺接しながらガイド板31の下面に沿って処理水にガイドされ、処理水によって所定の処理がなされる。処理水を通過した後の海苔網100は箱船1の後方から後方ガイドアーム14及び平板15上を通って海中に戻される。このように、作業員が海苔網100を引き入れ続けることによって、箱船1は海苔網100に所定の処理を施しながら海苔網100に沿って移動し、海苔網100の他端部に箱船1が到着した時に海苔網100に対する処理が終了する。
【0045】
ここで、ガイド板31において、海苔網100の移動方向上流側に前方反り部31bが位置し、下流側に後方反り部31cが位置する。また、前述したように、本実施形態によれば前方反り部31bの傾斜に沿って延びる仮想延長線は、前方ガイドアーム12よりも上方を通り、後方反り部31cの傾斜に沿って延びる仮想延長線は、後方ガイドアーム14よりも上方を通る。このため、海苔網100がガイド板31の中央部31aに入り込む角度よりも前方反り部31bの傾斜角が大きく、中央部31aを通過した海苔網100が後方ガイドアーム14に向かう角度よりも後方反り部31cの傾斜角が大きい。これにより、中央部31aと前方反り部31b或いは後方反り部31cとの境界部分に近い部位で海苔網100が摺接するようになり、前方反り部31b或いは後方反り部31cにおける海苔網100が摺接する領域を小さくすることが可能になる。したがって、海苔網100が前方反り部31b或いは後方反り部31cの先端部に引っ掛かることが低減でき、しかも、養殖海苔の成長によって海苔網100が膨らんだ状態でガイド板31を通過する際に、前方反り部31b或いは後方反り部31cによって養殖海苔を傷付けることを低減することができる。
【0046】
また、海苔網ガイド30が海苔網100を浸漬槽20の底面部に向けてガイドする際に、ガイド板31に対して上方の力が作用する。ここで、リブ板33によって海苔網ガイド30の剛性が高められているため、ガイド板31が海苔網100を安定してガイドすることが可能になる。
【0047】
以上説明したように構成された本実施形態によれば、海中から引き上げられて浸漬槽20内に送り込まれた海苔網100は、ガイド板31の前方反り部31bによって浸漬槽20の底面部に向かって移動し、ガイド板31の中央部31aを通過する際に海苔網100が処理水を潜った後、後方反り部31cを通過して浸漬槽の外部方向に送り出される。このように、浸漬槽20の底面部に対向する平板状の中央部31aとこの中央部31aの両端部からそれぞれ上方に延びる前方反り部31b及び後方反り部31cとを有するガイド板31を浸漬槽20の内部の壁面に固定するという簡単な構成で海苔網100をガイドすることが可能であり、従来のようにローラ体や動力源を用いた浸漬装置を必要としないため、安価な養殖海苔処理装置16を提供することが可能になる。しかも、その分、箱船1のコストダウンを図ることが可能になる。また、浸漬槽20に一対の海苔網ガイド30を固定した状態において、前方反り部31b及び後方反り部31cの傾斜に沿って延びる仮想延長線が浸漬槽20の上縁よりも上方を通る。このため、前方反り部31b及び後方反り部31cの端部に海苔網100が引っ掛かることが低減され、浸漬槽20の処理水に海苔網100を潜らせる作業を安定して行うことが可能になる。
【0048】
また本実施形態によれば、後方反り部31cは、前方反り部31bよりも傾斜が大きくかつ長さが短い。このため、ガイド板31に沿って海苔網100を処理水に潜らせてから海に送り出す際に、ガイド板31に接触する領域を少なくすることが可能になり、海苔網100や海苔を傷つけないように海苔網100をスムーズに移動させることが可能になる。
【0049】
また本実施形態によれば、中央部31aと前方反り部31b或いは後方反り部31cとの境界部分が円弧状に形成されているため、ガイド板31に沿って中央部31aと前方反り部31b或いは後方反り部31cとの境界部分を通過する際に、海苔網100や海苔を傷つけないように海苔網をスムーズに移動させることが可能になる。
【0050】
また本実施形態によれば、ガイド板31の上面と固定板32における浸漬槽20の壁面に対向する面の反対面とを連結するリブ板33を更に有するため、リブ板33によって海苔網ガイド30の剛性が高められる。これにより、ガイド板31が海苔網100を浸漬槽20の底面部にガイドする際に、ガイド板31に対して上方に持ち上げる力が作用しても、ガイド板31が損傷することを低減することができる。
【0051】
また本実施形態によれば、浸漬槽20を搭載する箱船1であれば、海苔網ガイド30を浸漬槽20に取り付けることによって、容易に養殖海苔処理装置16を構成することができるため、様々な形の現行の箱船1に養殖海苔処理装置16を取り付けることが可能になる。
【0052】
また、固定板32に3つの長孔32aが形成されているため、浸漬槽20における海苔網ガイド30の取付位置や角度を調整することができるようになり、海苔網ガイド30を海苔網100がスムーズに移動できるような姿勢で固定することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 箱船
10 本体
10a 欠落部
12 前方ガイドアーム
12a U字部
12b 水平シャフト部
12c 直角シャフト部
14 後方ガイドアーム
14a ガイドアーム部
14b 支持アーム部
15 平板
16 養殖海苔処理装置
20 浸漬槽
22 排出口
30 海苔網ガイド
31 ガイド板
31a 中央部
31b 前方反り部
31c 後方反り部
32 固定板
32a 長孔
33 リブ板
34 針金部材
100 海苔網
図1
図2
図3
図4