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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083205
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】海苔箱船
(51)【国際特許分類】
   A01G 33/02 20060101AFI20240613BHJP
   B63B 35/14 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
A01G33/02 101F
A01G33/02 101J
B63B35/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075760
(22)【出願日】2023-05-01
(62)【分割の表示】P 2022196015の分割
【原出願日】2022-12-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年11月4日に福岡県漁業協同組合連合会の活性処理船説明会にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000149457
【氏名又は名称】株式会社オーツボ
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】大坪 とも子
(72)【発明者】
【氏名】加賀田 祐次
(72)【発明者】
【氏名】中谷 修一
【テーマコード(参考)】
2B026
【Fターム(参考)】
2B026EA01
2B026HA01
(57)【要約】
【課題】活性処理等後の処理残液の効果的な運用あるいは回収方法(海洋投棄の防止)を実現可能な海苔箱船の構造を提供する。
【解決手段】海苔箱船1は、略矩形箱型の箱船本体2と、当該箱船本体2の上面に設けられた、養殖海苔の活性処理を行う活性処理機構3と、を備えている。活性処理機構3は、海苔の養殖場に展張されている海苔網を活性処理液に浸漬させて養殖海苔の活性処理を行うための活性処理槽4と、活性処理後の処理残液を保存しておくための保存槽5と、を有している。保存槽5は、箱船本体2の上面の略中央に当該箱船本体2と一体に形成されており、その外観は、上端開口の直方体形状を成している。活性処理槽4は、保存槽5の上端開口を被覆し、かつ、保存槽5から分離不能に設けられており、その外観は、上端開口の直方体形状を成している。活性処理槽4の上端開口外周縁には矩形環状のフランジ部4aが形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱船本体と、当該箱船本体の上面に設けられた、養殖海苔の反応液処理を行う反応液処理機構と、を備えた海苔箱船であって、
前記反応液処理機構は、反応液に浸漬させて前記養殖海苔の反応液処理を行うための反応液処理槽と、反応液処理後の処理残液を保存しておくための保存槽と、の上下二槽構造となっており、
前記保存槽は、上端が開口した形状を呈しており、
前記反応液処理槽は、前記保存槽の上端開口を被覆し、かつ、前記保存槽から分離不能に設けられていることを特徴とする海苔箱船。
【請求項2】
前記反応液処理槽の底板には、スカッパが取り付けられており、
前記保存槽には、外部に繋がる空気口が形成されている、請求項1に記載の海苔箱船。
【請求項3】
前記保存槽には、外部に繋がる空気口が形成されているとともに、一端が前記保存槽の底面に位置し、他端側が外部に露見した排水部材が設けられている、請求項1に記載の海苔箱船。
【請求項4】
前記反応液処理槽の上端開口内周縁に、前記反応液処理槽内の前記反応液が外部にこぼれ出ることを防ぐ反応液返し部が設けられている、請求項1に記載の海苔箱船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔箱船に関する。更に詳細には、本発明は、例えば、海苔の養殖中に海苔網に付着した、珪藻、アオノリといった海苔以外の他の海藻(雑藻類)又は赤グサレ菌、糸状細菌といった病原菌の駆除(養殖海苔の活性処理)や、海苔の成長を促進させるための施肥処理液の投与(養殖海苔の施肥処理)を行う際等に用いられる海苔箱船に関する。
【背景技術】
【0002】
現行の養殖海苔の活性処理や施肥処理の多くは、例えば図7に示すような昔ながらの海苔箱船100を用いて行われている。海苔箱船100は、所謂海苔作業船に比べて安価であるため、海苔箱船100を用いる海苔養殖業者は少なくない。
現行の養殖海苔の活性処理は、例えば、以下のようにして行われる。
すなわち、図7に示すように、海苔の養殖場に展張されている海苔網101を、海苔箱船100の上に揚げ、当該海苔箱船100上の活性処理槽102内の活性処理液に浸漬させることで、養殖海苔の活性処理が行われる。そして、この場合、海苔箱船100が海苔網101の下をくぐりながら進むことで、養殖海苔の活性処理が連続して行われる。または、海苔箱船100上に巻き取った海苔網101を養殖場の元の位置に張りなおす作業が行われる。なお、この場合の活性処理液としては、有機酸等の活性処理液原液を海水によって適宜希釈したものが使用される。
現行の養殖海苔の施肥処理(施肥処理液の投与)についても、上記した養殖海苔の活性処理の場合と同様の方法で行われる。なお、この場合の施肥処理液としては、例えば、窒素及び燐化合物を主体としたものが多く使用される。
【0003】
ところで、海苔箱船は、通常の船よりも移動効率が悪いため、養殖海苔の活性処理や施肥処理が行われる期間(約3か月程度)においては、海苔の養殖場付近、つまり、海上に停泊されている。
通常、養殖海苔の活性処理や施肥処理の作業を行う際に使用される活性処理液や施肥処理液などの反応液は、海苔箱船とは別の親船によって供給あるいは回収されるが、前記反応液回収時には、親船を稼働させるよりも、作業者のみ帰還させる和船等の小型船の運用の方が効率的であるため、回収時の当該反応液に関しては、本来行ってはならない海中への投棄(海洋投棄)が行われているのが現状である。
【0004】
このため、海苔箱船の移動効率を上げる考案も提案されているが(例えば、特許文献1等を参照)、作業者のみ帰還させる小型船の運用には及ばないため、あまり効果が期待できるものではない。
かかる事情から、活性処理等後の処理残液の効果的な運用あるいは回収方法(海洋投棄の防止)が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3153119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、活性処理等の反応液処理後の処理残液の効果的な運用あるいは回収方法(海洋投棄の防止)を実現可能な海苔箱船の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る海苔箱船の構成は、
(1)箱船本体と、当該箱船本体の上面に設けられた、養殖海苔の反応液処理を行う反応液処理機構と、を備えた海苔箱船であって、
前記反応液処理機構は、反応液に浸漬させて前記養殖海苔の反応液処理を行うための反応液処理槽と、反応液処理後の処理残液を保存しておくための保存槽と、の上下二槽構造となっており、
前記保存槽は、上端が開口した形状を呈しており、
前記反応液処理槽は、前記保存槽の上端開口を被覆し、かつ、前記保存槽から分離不能に設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、「反応液処理」とは、例えば、活性処理や施肥処理等の処理を意味している。また、「反応液」とは、活性処理液や施肥処理液等を意味している。活性処理液としては、例えば、有機酸等の活性処理液原液を海水によって適宜希釈したものが使用される。また、施肥処理液としては、例えば、窒素及び燐化合物を主体としたものが多く使用される。なお、養殖海苔は、通常、海苔網に付着した状態となっている。
【0009】
本発明の海苔箱船の上記(1)の構成は、次のような作用効果を奏する。
すなわち、上記(1)の構成によれば、反応液処理機構が反応液処理後の処理残液を保存しておくための保存槽を有していることにより、処理残液の海洋投棄の防止を実現することが可能となる。また、保存槽内に保存しておいた処理残液を反応液処理槽に移し、この反応液処理後の処理残液に新たな反応液の原液を追加し、海水によって適宜希釈等して新たな反応液を作製するようにすることにより、反応液処理後の処理残液の効果的な運用を実現することが可能となる。
したがって、上記(1)の構成によれば、活性処理等の反応液処理後の処理残液の効果的な運用あるいは回収方法(海洋投棄の防止)を実現可能な海苔箱船の構造を提供することができる。
また、反応液処理槽と保存槽が、上下二槽構造となっていることにより、保存槽を備えながらも、反応液処理槽及び保存槽の前後方向の長さをともに長くして当該反応液処理槽及び保存槽の容量を大きくすることができる。そして、その結果、海苔網の全体を十分に反応液に浸漬させて、十分な反応液処理を効率的に行うことが可能となる。
また、かかる構成の海苔箱船は、既存の(現行の)海苔箱船の反応液処理槽を上下二槽構造に改造するだけで簡単に製造することができるので、製造コストを低く抑えることもできる。
【0010】
本発明の海苔箱船の上記(1)の構成においては、以下の(2)乃至(4)のような構成にすることが好ましい。
【0011】
(2)上記(1)の構成において、前記反応液処理槽の底板には、スカッパが取り付けられており、
前記保存槽には、外部に繋がる空気口が形成されている。
上記(2)の好ましい構成によれば、スカッパを開けて、反応液処理後の処理残液を、反応液処理槽から保存槽に落とし、当該保存槽内に保存しておくことが可能となる。
【0012】
(3)上記(1)の構成において、前記保存槽には、外部に繋がる空気口が形成されているとともに、一端が前記保存槽の底面に位置し、他端側が外部に露見した排水部材が設けられている。
上記(3)の好ましい構成によれば、保存槽内に保存されている処理残液を、その再使用時に、排水部材の他端(吸水口)を通してポンプ等で反応液処理槽に移すことが可能となる。
【0013】
(4)上記(1)の構成において、前記反応液処理槽の上端開口内周縁に、前記反応液処理槽内の前記反応液が外部にこぼれ出ることを防ぐ反応液返し部が設けられている。
上記(4)の好ましい構成によれば、反応液処理作業中に海苔箱船が激しく揺れても、反応液処理槽内の反応液が海中にこぼれ出ることを防止することができる。また、後端縁の反応液返し部によって、海苔網に付着した余分な反応液を切ることもできる。そして、その結果、反応液を節約することが可能になるとともに、反応液の海中への流出を極力少なくすることで環境保護に貢献することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、活性処理等の反応液処理後の処理残液の効果的な運用あるいは回収方法(海洋投棄の防止)を実現可能な海苔箱船の構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態1における海苔箱船の構成を示す斜視図(活性処理槽が保存槽に嵌め込まれた状態)である。
図2図2は、本発明の実施形態1における海苔箱船の構成を示す斜視図(活性処理槽が保存槽から取り外された状態)である。
図3図3は、図1のIII-III線矢視縦断面斜視図である。
図4図4(a)は、本発明の実施形態1における海苔箱船の構成要素である活性処理槽の他の構成を示す斜視図、図4(b)は、図4(a)のb-b線矢視拡大縦断面図、図4(c)は、活性処理液返し部の他の例を示す、図4(a)のb-b線矢視拡大縦断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態2における海苔箱船の構成を示す斜視図である。
図6図6は、図5のV-V線矢視縦断面斜視図である。
図7図7は、従来技術における海苔箱船を用いて養殖海苔の活性処理等を行っている様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好適な実施形態を用いて本発明を更に具体的に説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
[実施形態1]
(海苔箱船の構成)
まず、本発明の実施形態1における海苔箱船の構成について、当該海苔箱船が養殖海苔の活性処理に用いられる場合を例に挙げて、図1乃至図3を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態1における海苔箱船の構成を示す斜視図(活性処理槽が保存槽に嵌め込まれた状態)、図2は、当該海苔箱船の構成を示す斜視図(活性処理槽が保存槽から取り外された状態)、図3は、図1のIII-III線矢視縦断面斜視図である。
【0019】
図1乃至図3に示すように、本実施形態の海苔箱船1は、略矩形箱型の箱船本体2と、当該箱船本体2の上面に設けられた、養殖海苔の活性処理を行う活性処理機構3と、を備えている。
本実施形態の海苔箱船1において、活性処理機構3は、海苔の養殖場に展張されている海苔網101(図6を参照)を活性処理液に浸漬させて養殖海苔の活性処理を行うための活性処理槽4と、活性処理後の処理残液を保存しておくための保存槽5と、を有している。
なお、本実施形態の海苔箱船1は、箱船本体2の後部に取り付けられた船外機(図示せず)で前進するようにされている。図1乃至図3中、参照符号8は船外機ガードを示している。
活性処理液としては、有機酸等の活性処理液原液を海水によって適宜希釈したものが使用される。
【0020】
本実施形態の海苔箱船1のかかる構成は、次のような作用効果を奏する。
すなわち、かかる構成によれば、活性処理機構3が活性処理後の処理残液を保存しておくための保存槽5を有していることにより、処理残液の海洋投棄の防止を実現することが可能となる。また、保存槽5内に保存しておいた処理残液を活性処理槽4に移し、この活性処理後の処理残液に新たな活性処理液原液を追加し、海水によって適宜希釈して所望のpH値の新たな活性処理液を作製するようにすることにより、活性処理後の処理残液の効果的な運用を実現することが可能となる。
したがって、かかる構成によれば、活性処理後の処理残液の効果的な運用あるいは回収方法(海洋投棄の防止)を実現可能な海苔箱船の構造を提供することができる。
【0021】
以下、更に詳細に説明する。
図1乃至図3に示すように、箱船本体2の上面の前部には、保存槽5と離間して左右に延びる水切り槽6が箱船本体2と一体に形成されている。水切り槽6は、上端開口の扁平な直方体形状を成している。また、箱船本体2の前部には、当該箱船本体2の前端(船首)から前方に突出した状態で、平面形状が略U字状の案内部材(海苔網揚げフォーク)7が着脱可能かつ上下傾動可能に取り付けられている。海苔箱船1の稼働時において、案内部材7は、箱船本体2の前端から前方に向かって一定の角度で下方傾斜しており、これにより、略U字状に湾曲した先端部が海中に没するようにされている。
かかる構成によれば、海苔箱船1を前進させることにより、案内部材7によって海苔網101(図6を参照)を掬い上げながら箱船本体2上に揚げ、海苔網101に含まれている余分な海水を水切り槽6で取り除いた後に当該海苔網101を活性処理槽4に導くことが可能となる。
【0022】
水切り槽6の前端面(箱船本体2の前端面)には、左右方向に等間隔に配置された3つの水切り用排水孔6aが穿設されている。
かかる構成によれば、水切り槽6内の水切り後の海水を、水切り用排水孔6aを通して船外に排出することが可能となる。
【0023】
保存槽5は、箱船本体2の上面の略中央に当該箱船本体2と一体に形成されており、その外観は、上端開口の直方体形状を成している。保存槽5の周りには、作業者が作業するのに十分な幅の作業通路9が形成されている。
活性処理槽4は、保存槽5の内周部に上方から緩く嵌め込まれる大きさであり、その外観は、上端開口の直方体形状を成している。活性処理槽4の上端開口外周縁には矩形環状のフランジ部4aが形成されており、当該フランジ部4aを保存槽5の上端上に載せることにより、活性処理槽4の底板4bを保存槽5の底面5aから浮かせた状態にできるようにされている。すなわち、活性処理槽4を保存槽5に嵌め込んだ状態において、保存槽5の底面5aと活性処理槽4の底板4bとの間に処理残液の保存スペースを確保できるようにされている。活性処理槽4は、保存槽5の上端開口を被覆する蓋としても機能するものである。
【0024】
このように、本実施形態の海苔箱船1において、活性処理槽4と保存槽5は、活性処理槽4が保存槽5から分離可能な上下二槽構造となっている。
かかる構成によれば、活性処理槽4と保存槽5を、上下二槽構造とすることにより、保存槽5を備えながらも、活性処理槽4及び保存槽5の前後方向の長さをともに長くして当該活性処理槽4及び保存槽5の容量を大きくすることができる。そして、その結果、海苔網101(図6を参照)の全体を十分に活性処理液に浸漬させて、十分な活性処理を効率的に行うことが可能となる。また、活性処理槽4を保存槽5から分離可能とすることにより、保存槽5から活性処理槽4を取り外して、保存槽5内を掃除することも可能となる。
【0025】
活性処理槽4の底板4bの四隅付近には、それぞれ、第1スカッパ4cが取り付けられている。そして、これにより、第1スカッパ4cを開けて、活性処理後の処理残液を、活性処理槽4から保存槽5に落とし、当該保存槽5内に保存しておくことが可能となる。また、保存槽5の後端壁には、外部に繋がる空気口5dが形成されており、これにより、活性処理槽4から保存槽5への処理残液の移動を促進させることができるようにされている。なお、第1スカッパ4cには、処理残液中のゴミを濾別するための網状のフィルタ(図示せず)が装着されている。
また、活性処理槽4の底板4bは、左右方向の中央部から左右両側壁に向かって下方傾斜した状態となっている。そして、これにより、活性処理槽4内の処理残液を効率的に第1スカッパ4cに導くことが可能となる。
更に、活性処理槽4の左右両側壁には、それぞれ、前後端部に位置して2つの透孔4dが穿設されている。
【0026】
図2及び図3に示すように、保存槽5の底面5aの略中央部には、前後方向に延びる排水溝5bが形成されている。そして、当該排水溝5bの後端面には、一部が箱船本体2中に埋め込まれた排水パイプ(排水部材)5cの一端が臨んでいる。図1乃至図3に示すように、排水パイプ5cの他端(吸水口)側は、保存槽5の後端壁の外側で外部に露見した状態となっている。これにより、保存槽5内に保存されている処理残液を、その再使用時に、排水パイプ5cの他端(吸水口)を通してポンプ等で活性処理槽4に移すことが可能となる。
また、保存槽5の底面5aは、排水溝5b及び排水パイプ5c部分に向かって下方傾斜した状態となっている。そして、これにより、保存槽5内に保存されている処理残液を効率的に排水溝5b内に導くことが可能となる。
【0027】
保存槽5の左右両側壁には、それぞれ、前後端部に位置して2つの第2スカッパ5eが取り付けられている。なお、活性処理槽4が保存槽5に嵌め込まれた状態(図1の状態)においては、第2スカッパ5eの通気孔と、活性処理槽4の左右両側壁に穿設された透孔4dとが連通した状態となるようにされている。
【0028】
活性処理槽4及び保存槽5を以上のように構成したことにより、活性処理槽4を保存槽5に嵌め込んだ状態(図1の状態)で、第1スカッパ4cを閉め、第2スカッパ5eを開けて活性処理槽4内を海水で掃除することが可能となる。活性処理槽4内を掃除した後の海水は、透孔4d及び第2スカッパ5eの通気孔を通して、箱船本体2の上面の作業通路9等に排出される。また、作業通路9等に排出された海水は、後述する排水孔2aを通して船外に排出される。
また、第2スカッパ5eを開放しておくことにより、海苔箱船1の放置時に活性処理槽4内に雨などが溜まらないようにすることもできる。更に、保存槽5から活性処理槽4を取り外して、保存槽5内を海水で掃除することもできる。保存槽5内を掃除した後の海水は、排水パイプ5cの他端(吸水口)を通してポンプ等で船外に排出される。
【0029】
図1及び図2に示すように、箱船本体2の左右両側壁には、それぞれ、前後端部に位置して2つの排水孔2aが穿設されている。そして、これにより、箱船本体2の上面の作業通路9等を海水で掃除し、掃除した後の海水を、当該排水孔2aを通して船外に排出できるようにされている。
【0030】
(海苔箱船を用いた活性処理作業)
次に、本発明の実施形態1における海苔箱船を用いた活性処理作業について、初回の活性処理作業と二回目以降の活性処理作業とに分けて、図1乃至図3及び図7を参照しながら説明する。
【0031】
《初回の活性処理作業》
まず、海苔箱船1が停泊している海苔の養殖場に、和船等の小型船で移動する。このとき、全ての作業者が持参できる程度の活性処理液原液とpH計なども一緒に運ぶ。
【0032】
次いで、作業者が、活性処理液原液とpH計などを持って、海苔箱船1の保存槽5の周りの作業通路9上に乗り移る。そして、保存槽5に嵌め込まれた状態の活性処理槽4内に活性処理液原液を投入し、海水によって適宜希釈して所望のpH値の活性処理液を作製する。この時、第1スカッパ4cと第2スカッパ5eは閉めておく。
【0033】
以上のようにして活性処理槽4内で活性処理液を作製したら、以下のようにして養殖海苔の活性処理作業を行う。
すなわち、従来の図6の場合と同様にして、海苔の養殖場に展張されている海苔網101を、海苔箱船1の上に揚げ、当該海苔箱船1上の活性処理槽4内の活性処理液に浸漬させることで、養殖海苔の活性処理を行う。そして、この場合、海苔箱船1が海苔網101の下をくぐりながら進むことで、養殖海苔の活性処理が連続して行われる。
【0034】
養殖海苔の活性処理作業が終了したら、上記したのと同じ和船等の小型船で帰還する。帰還時には、活性処理槽4の底板4bの四隅付近に取り付けられている第1スカッパ4cを開けて、活性処理後の処理残液を、活性処理槽4から保存槽5に落とし、当該保存槽5内に保存しておく。海苔の養殖場に運んできた活性処理液原液は、帰還する時に回収する。
このように活性処理後の処理残液を保存槽5内に保存しておくようにすることにより、処理残液の海洋投棄の防止を実現することが可能となる。
【0035】
《二回目以降の活性処理作業》
二回目以降の活性処理作業を行う場合にも、まず、海苔箱船1が停泊している海苔の養殖場に、和船等の小型船で移動する。このとき、全ての作業者が持参できる程度の活性処理液原液とpH計なども一緒に運ぶ。
【0036】
次いで、作業者が、活性処理液原液とpH計などを持って、海苔箱船1の保存槽5の周りの作業通路9上に乗り移る。
次いで、保存槽5内に保存しておいた処理残液を、排水パイプ5cの他端(吸水口)を通してポンプで活性処理槽4に移す。そして、活性処理槽4内に新たな活性処理液原液を追加して投入し、海水によって適宜希釈して所望のpH値の新たな活性処理液を作製する。この時、第1スカッパ4cと第2スカッパ5eは閉めておく。
このように活性処理後の処理残液に新たな活性処理液原液を追加し、海水によって適宜希釈して所望のpH値の新たな活性処理液を作製するようにすることにより、活性処理後の処理残液の効果的な運用を実現することが可能となる。また、活性処理後の処理残液を廃棄せずに済むため、資源を無駄にすることがなく、SDGsの観点からも好ましいものと言える。
【0037】
以上のようにして活性処理槽4内で新たな活性処理液を作製したら、初回の活性処理作業の場合と同様にして、養殖海苔の活性処理作業を行う。
【0038】
養殖海苔の活性処理作業が終了したら、上記したのと同じ和船等の小型船で帰還する。帰還時には、活性処理槽4の底板4bの四隅付近に取り付けられている第1スカッパ4cを開けて、活性処理後の処理残液を、活性処理槽4から保存槽5に落とし、当該保存槽5内に保存しておく。海苔の養殖場に運んできた活性処理液原液は、帰還する時に回収する。
【0039】
以上の活性処理作業を複数回繰り返し、最終の活性処理作業が完了したら、処理残液を保存槽5内に入れたまま海苔箱船1ごと帰還する。なお、最終の活性処理作業が完了した後の処理残液は、親船に回収させるようにしてもよい。いずれにしても、本実施形態の海苔箱船1を用いれば、親船の稼働を抑えて省エネを実現することが可能となる。
【0040】
二回目以降の活性処理作業においては、保存槽5内に保存しておいた処理残液を活性処理槽4に移す際にポンプの運用が必須となるが、当該ポンプは海苔箱船1上に設置しておき、バッテリーのみを移動させるようにしてもよい。
【0041】
なお、本実施形態においては、活性処理槽4が保存槽5から分離可能である場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。活性処理槽は保存槽に分離不能に固着されていてもよい。かかる構成の海苔箱船は、既存の(現行の)海苔箱船の活性処理槽を上下二槽構造に改造するだけで簡単に製造することができるので、製造コストを低く抑えることができる。
【0042】
また、本実施形態においては、箱船本体2の前部に、当該箱船本体2の前端から前方に突出した状態で、平面形状が略U字状の案内部材(海苔網揚げフォーク)7が取り付けられている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。例えば、案内部材(海苔網揚げフォーク)7を取り付ける代わりに、動力部を有する海苔網巻取り機を備えるようにしてもよい。
【0043】
また、本実施形態においては、上端開口の直方体形状を成し、上端開口外周縁に矩形環状のフランジ部4aが形成された活性処理槽4を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。活性処理槽としては、例えば、図4に示すような構成の活性処理槽4’であってもよい。
図4(a),(b)に示す活性処理槽4’においては、図1乃至図3に示した活性処理槽4の構成に付加して、上端開口内周縁に矩形環状の活性処理液(反応液)返し部4eが設けられている。活性処理液返し部4eは、活性処理槽4’内の活性処理液が外部にこぼれ出ることを防止する機能を有するものである。
かかる構成によれば、活性処理作業中に海苔箱船1が激しく揺れても、活性処理槽4’内の活性処理液が海中にこぼれ出ることを防止することができる。また、後端縁の活性処理液返し部4eによって、海苔網101(図7を参照)に付着した余分な活性処理液を切ることもできる。そして、その結果、活性処理液を節約することが可能になると共に、活性処理液の海中への流出を極力少なくすることで環境保護に貢献することが可能になる。
特に、図4(c)に示すように、活性処理液返し部4e’の下面コーナー部に外側に凸のRをつければ、活性処理液の跳ね返りのベクトルが常に内向き(活性処理槽4’の底板4bの方を向く方向)となるため、活性処理液の海中へのこぼれを確実に防止することが可能になる。
以上の構成は、処理槽4を後述する施肥処理液の投与(養殖海苔の施肥処理)等に用いる場合にも採用することができる。
【0044】
また、本実施形態においては、参照符号4を「活性処理槽」と名称付けし、海苔箱船1を養殖海苔の活性処理に用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の海苔箱船の用途は必ずしもこれだけに限定されるものではない。本発明の海苔箱船は、例えば、海苔の成長を促進させるための施肥処理液の投与(養殖海苔の施肥処理)等に用いることもできる。施肥処理液としては、例えば、窒素及び燐化合物を主体としたものが多く使用される。
【0045】
[実施形態2]
(海苔箱船の構成)
次に、本発明の実施形態2における海苔箱船の構成について、当該海苔箱船が養殖海苔の活性処理に用いられる場合を例に挙げて、図5及び図6を参照しながら説明する。
【0046】
図5は、本発明の実施形態2における海苔箱船の構成を示す斜視図、図6は、図5のV-V線矢視縦断面斜視図である。
【0047】
図5及び図6に示すように、本実施形態の海苔箱船10は、略矩形箱型の箱船本体11と、当該箱船本体11の上面に設けられた、養殖海苔の活性処理を行う活性処理機構12と、を備えている。
本実施形態の海苔箱船10において、活性処理機構12は、海苔の養殖場に展張されている海苔網101(図6を参照)を活性処理液に浸漬させて養殖海苔の活性処理を行うための活性処理槽13と、活性処理後の処理残液を保存しておくための保存槽14と、を有している。
なお、本実施形態の海苔箱船10は、箱船本体11の後部に取り付けられた船外機(図示せず)で前進するようにされている。図5及び図6中、参照符号17は船外機ガードを示している。 活性処理液としては、有機酸等の活性処理液原液を海水によって適宜希釈したものが使用される。
【0048】
本実施形態の海苔箱船10のかかる構成は、上記実施形態1の海苔箱船1の構成による作用効果と同じ作用効果を奏する。
【0049】
以下、更に詳細に説明する。
図5及び図6に示すように、箱船本体11の上面の前部には、活性処理槽13に隣接して左右に延びる水切り15が箱船本体11と一体に形成されている。水切り15は、上端開口でかつ後端が開放された扁平な直方体形状を成している。また、箱船本体11の前部には、当該箱船本体11の前端から前方に突出した状態で、平面形状が略U字状の案内部材(海苔網揚げフォーク)16が着脱可能かつ上下傾動可能に取り付けられている。海苔箱船10の稼働時において、案内部材16は、箱船本体11の前端から前方に向かって一定の角度で下方傾斜しており、これにより、略U字状に湾曲した先端部が海中に没するようにされている。
かかる構成による作用効果は、上記実施形態1の海苔箱船1の構成による作用効果と同じである。
【0050】
活性処理機構12は、箱船本体11の上面の略中央に当該箱船本体11と一体に形成されており、前部に活性処理槽13が配置され、後部に活性処理槽13と隣接する保存槽14が配置されている。活性処理機構12の左右両側及び後ろ側には、作業者が作業するのに十分な幅の作業通路18が形成されている。
【0051】
保存槽14の外観は、前面が略四分の一円筒面を呈した略直方体形状を成している。
活性処理槽13は、水切り15と保存槽14との間に形成されており、その外観は、上端開口の略直方体形状を成している。但し、活性処理槽13は、保存槽14と隣接するものであるため、後端面は略四分の一円筒面を呈している。
【0052】
このように、本実施形態の海苔箱船10において、活性処理槽13と保存槽14は、前後二槽構造となっている。
かかる構成の海苔箱船10は、既存の(現行の)海苔箱船の活性処理槽の後部に保存槽14を構築するだけで簡単に製造することができるので、製造コストを低く抑えることができる。
【0053】
活性処理槽13の前部の左右両側壁には、対向して一対の上端が開口した凹所13aが形成されている。そして、通称「コロ」と呼ばれる、重量のある穴開きの円筒管(浸漬用コロ)19を上方から落とし込んで、当該浸漬用コロ19の左右両端部をそれぞれ左右の凹所13aに保持させておくことができるようにされている。
この浸漬用コロ19は、その下に海苔網101(図6を参照)を通すことで、当該海苔網101を確実に活性処理液に浸漬させるためのものである。
【0054】
保存槽14の天壁の後部には、左右端部に位置して2つのスカッパ兼給気口14aが設けられている。そして、これにより、2つのスカッパ兼給気口14aを開放して、活性処理槽13内の活性処理後の処理残液を、一方のスカッパ兼給気口14aを通してポンプ等で保存槽14に移し、当該保存槽14内に保存しておくことが可能となる。この場合、他方のスカッパ兼給気口14aが空気抜き孔として機能し、活性処理槽13から保存槽14への処理残液の移動を促進させることが可能となる。なお、スカッパ兼給気口14aには、処理残液中のゴミを濾別するための網状のフィルタ(図示せず)が装着されている。
【0055】
図5に示すように、保存槽14の底面14bは、上記実施形態1の保存槽5の底面5aと同様の構造を有している(図2及び図3を参照)。
すなわち、保存槽14の底面14bの略中央部には、前後方向に延びる排水溝14cが形成されている。そして、当該排水溝14cの後端面には、一部が箱船本体11中に埋め込まれた排水パイプ14dの一端が臨んでいる。図4及び図5に示すように、排水パイプ14dの他端(吸水口)側は、保存槽14の後端壁の外側で外部に露見した状態となっている。これにより、保存槽14内に保存されている処理残液を、その再使用時に、排水パイプ14dの他端(吸水口)を通してポンプ等で活性処理槽13に移すことが可能となる。
また、保存槽14の底面14bは、排水溝14c及び排水パイプ14d部分に向かって下方傾斜した状態となっている。そして、これにより、保存槽14内に保存されている処理残液を効率的に排水溝14c内に導くことが可能となる。
【0056】
(海苔箱船を用いた活性処理作業)
次に、本発明の実施形態2における海苔箱船を用いた活性処理作業について、初回の活性処理作業と二回目以降の活性処理作業とに分けて、図5乃至図7を参照しながら説明する。
【0057】
《初回の活性処理作業》
まず、海苔箱船10が停泊している海苔の養殖場に、和船等の小型船で移動する。このとき、全ての作業者が持参できる程度の活性処理液原液とpH計なども一緒に運ぶ。
【0058】
次いで、作業者が、活性処理液原液とpH計などを持って、海苔箱船10の活性処理機構12の左右両側及び後ろ側の作業通路18上に乗り移る。そして、活性処理槽13内に活性処理液原液を投入し、海水によって適宜希釈して所望のpH値の活性処理液を作製する。この時、2つのスカッパ兼給気口14aは閉めておく。
【0059】
以上のようにして活性処理槽13内で活性処理液を作製したら、以下のようにして養殖海苔の活性処理作業を行う。
すなわち、従来の図6の場合と同様にして、海苔の養殖場に展張されている海苔網101を、海苔箱船10の上に揚げ、当該海苔箱船10上の活性処理槽13内の活性処理液に浸漬させることで、養殖海苔の活性処理を行う。この場合、浸漬用コロ19の下に海苔網101を通すことで、当該海苔網101を確実に活性処理液に浸漬させることができる。そして、この場合、海苔箱船10が海苔網101の下をくぐりながら進むことで、養殖海苔の活性処理が連続して行われる。
【0060】
養殖海苔の活性処理作業が終了したら、上記したのと同じ和船等の小型船で帰還する。帰還時には、保存槽14の天壁の後部に設けられている2つのスカッパ兼給気口14aを開放して、活性処理槽13内の活性処理後の処理残液を、一方のスカッパ兼給気口14aを通してポンプで保存槽14に移し、当該保存槽14内に保存しておく。活性処理後の処理残液を保存槽14に移したら、2つのスカッパ兼給気口14aを閉める。海苔の養殖場に運んできた活性処理液原液は、帰還する時に回収する。
このように活性処理後の処理残液を保存槽14内に保存しておくようにすることにより、処理残液の海洋投棄の防止を実現することが可能となる。
【0061】
《二回目以降の活性処理作業》
二回目以降の活性処理作業を行う場合にも、まず、海苔箱船10が停泊している海苔の養殖場に、和船等の小型船で移動する。このとき、全ての作業者が持参できる程度の活性処理液原液とpH計なども一緒に運ぶ。
【0062】
次いで、作業者が、活性処理液原液とpH計などを持って、海苔箱船10の活性処理機構12の左右両側及び後ろ側の作業通路18上に乗り移る。
次いで、保存槽14内に保存しておいた処理残液を、排水パイプ14dの他端(吸水口)を通してポンプで活性処理槽13に移す。この時、少なくとも1つのスカッパ兼給気口14aは開放しておき、処理残液を活性処理槽13に移し終わったら、スカッパ兼給気口14aを閉める。そして、活性処理槽13内に新たな活性処理液原液を追加して投入し、海水によって適宜希釈して所望のpH値の新たな活性処理液を作製する。
このように活性処理後の処理残液に新たな活性処理液原液を追加し、海水によって適宜希釈して所望のpH値の新たな活性処理液を作製するようにすることにより、活性処理後の処理残液の効果的な運用を実現することが可能となる。また、活性処理後の処理残液を廃棄せずに済むため、資源を無駄にすることがなく、SDGsの観点からも好ましいものと言える。
【0063】
以上のようにして活性処理槽13内で新たな活性処理液を作製したら、初回の活性処理作業の場合と同様にして、養殖海苔の活性処理作業を行う。
【0064】
養殖海苔の活性処理作業が終了したら、上記したのと同じ和船等の小型船で帰還する。帰還時には、保存槽14の天壁の後部に取り付けられている2つのスカッパ兼給気口14aを開放して、活性処理槽13内の活性処理後の処理残液を、一方のスカッパ兼給気口14aを通してポンプで保存槽14に移し、当該保存槽14内に保存しておく。活性処理後の処理残液を保存槽14に移したら、2つのスカッパ兼給気口14aを閉める。海苔の養殖場に運んできた活性処理液原液は、帰還する時に回収する。
【0065】
以上の活性処理作業を複数回繰り返し、最終の活性処理作業が完了したら、処理残液を保存槽14内に入れたまま海苔箱船10ごと帰還する。なお、最終の活性処理作業が完了した後の処理残液は、親船に回収させるようにしてもよい。いずれにしても、本実施形態の海苔箱船10を用いれば、親船の稼働を抑えて省エネを実現することが可能となる。
【0066】
本実施形態の活性処理作業においては、活性処理槽13内の活性処理後の処理残液を保存槽14に移す際と、保存槽14内に保存しておいた処理残液を活性処理槽13に移す際にポンプの運用が必須となるが、当該ポンプは海苔箱船10上に設置しておき、バッテリーのみを移動させるようにしてもよい。
【0067】
なお、本実施形態においては、箱船本体11の前部に、当該箱船本体11の前端から前方に突出した状態で、平面形状が略U字状の案内部材(海苔網揚げフォーク)16が取り付けられている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。例えば、案内部材(海苔網揚げフォーク)16を取り付ける代わりに、動力部を有する海苔網巻取り機を備えるようにしてもよい。
【0068】
また、本実施形態においては、活性処理槽13内に、海苔網101を確実に活性処理液に浸漬させるための浸漬用コロ19が設置される場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。浸漬用コロ19は、任意的構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0069】
また、本実施形態においては、保存槽14の天壁の後部に、左右端部に位置して2つのスカッパ兼給気口14aが設けられる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。スカッパ兼給気口は、例えば、保存槽の側壁に設けるようにしてもよい。また、スカッパ兼給気口の個数は、少なくとも2つであればよく、3つ以上設けることもできる。
【0070】
また、本実施形態においても、上記実施形態1の場合と同様に、活性処理槽13の構成に付加して、上端開口内周縁に活性処理液返し部が設けられることが好ましい。
【0071】
また、本実施形態においては、参照符号13を「活性処理槽」と名称付けし、海苔箱船10を養殖海苔の活性処理に用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の海苔箱船の用途は必ずしもこれに限定されるものではない。本発明の海苔箱船は、例えば、海苔の成長を促進させるための施肥処理液の投与(養殖海苔の施肥処理)等に用いることもできる。施肥処理液としては、例えば、窒素及び燐化合物を主体としたものが多く使用される。
【符号の説明】
【0072】
1,10 海苔箱船
2,11 箱船本体
3,12 活性処理機構(反応液処理機構)
4,13 活性処理槽(反応液処理槽)
5,14 保存槽
101 海苔網
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱船本体と、当該箱船本体の上面に設けられた、養殖海苔の反応液処理を行う反応液処理機構と、を備えた海苔箱船であって、
前記反応液処理機構は、反応液に浸漬させて前記養殖海苔の反応液処理を行うための反応液処理槽と、反応液処理後の処理残液を保存しておくための保存槽と、の上下二槽構造となっており
記反応液処理槽は、前記保存槽の上部に、当該保存槽から分離不能に設けられていることを特徴とする海苔箱船。
【請求項2】
前記反応液処理槽の底板には、スカッパが取り付けられており、
前記保存槽には、外部に繋がる空気口が形成されている、請求項1に記載の海苔箱船。
【請求項3】
前記保存槽には、外部に繋がる空気口が形成されているとともに、一端が前記保存槽の底面に位置し、他端側が外部に露見した排水部材が設けられている、請求項1に記載の海苔箱船。
【請求項4】
前記反応液処理槽の上端開口内周縁に、前記反応液処理槽内の前記反応液が外部にこぼれ出ることを防ぐ反応液返し部が設けられている、請求項1に記載の海苔箱船。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る海苔箱船の構成は、
(1)箱船本体と、当該箱船本体の上面に設けられた、養殖海苔の反応液処理を行う反応液処理機構と、を備えた海苔箱船であって、
前記反応液処理機構は、反応液に浸漬させて前記養殖海苔の反応液処理を行うための反応液処理槽と、反応液処理後の処理残液を保存しておくための保存槽と、の上下二槽構造となっており
記反応液処理槽は、前記保存槽の上部に、当該保存槽から分離不能に設けられていることを特徴とする。