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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083212
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
H01G4/30 201G
H01G4/30 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086447
(22)【出願日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2022-0171355
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ジェオン ピル
(72)【発明者】
【氏名】ソン、スー フワン
(72)【発明者】
【氏名】アン、ヨウン ギュ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC04
5E001AC09
5E001AC10
5E001AD04
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE05
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG04
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】放射線の影響を最小限に抑えることができるセラミック電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態によるセラミック電子部品は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体と、上記本体上に配置され、ボロンを含む外部電極131、132と、を含み、上記ボロン中の同位元素10Bの比率が20%以上である。外部電極に含まれたボロン中の同位元素10Bの比率を制御することで、セラミック電子部品の放射線に対する耐久性を向上させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置され、ボロンを含む外部電極と、を含み、
前記ボロン中の同位元素10Bの比率が20%以上である、セラミック電子部品。
【請求項2】
前記外部電極はガラスを含み、前記ボロンは前記ガラスに含まれた、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記外部電極は前記内部電極と連結され、ガラス及び導電性金属が含まれた電極層を含み、
前記ボロンは前記ガラスに含まれた、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記ボロンはB形態で含まれている、請求項3に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記ボロン中の同位元素10Bの比率が25%以上85%以下である、請求項3に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記外部電極は導電性金属及び樹脂が含まれた導電性樹脂層を含み、
前記ボロンは前記導電性樹脂層に含まれた、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記外部電極はめっき層を含み、
前記ボロンは前記めっき層に含まれた、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記外部電極は前記内部電極と連結される電極層及び前記電極層上に配置されるカバー層を含み、
前記ボロンは前記カバー層に含まれる、請求項1から7のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記カバー層は導電性金属を含み、
前記電極層を全てカバーするように配置される、請求項8に記載のセラミック電子部品。
【請求項10】
前記カバー層は導電性金属を含まず、
前記電極層の少なくとも一部をカバーしないように配置される、請求項8に記載のセラミック電子部品。
【請求項11】
前記ボロン中の同位元素10Bの比率が90%以上である、請求項8に記載のセラミック電子部品。
【請求項12】
前記カバー層はガラスを含み、
前記ボロンは前記ガラスに含まれた、請求項8に記載のセラミック電子部品。
【請求項13】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置され、ボロンを含む外部電極と、を含み、
前記ボロン中の同位元素10Bの比率が20%以上85%以下である、セラミック電子部品。
【請求項14】
前記外部電極はガラスを含み、前記ボロンは前記ガラスに含まれた、請求項13に記載のセラミック電子部品。
【請求項15】
前記ボロンはB形態で含まれている、請求項13に記載のセラミック電子部品。
【請求項16】
前記外部電極は導電性金属及び樹脂が含まれた導電性樹脂層を含み、
前記ボロンは前記導電性樹脂層に含まれた、請求項13から15のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など多様な電子製品の印刷回路基板に装着されて電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
積層セラミックキャパシタは、小型でありながら高容量が保障され、実装が容易であるという長所により、多様な電子装置の部品として使用されることができる。また、MLCC製品は特殊な環境でも使用されている。例えば、原子力発電所内の核燃料の近く、又は、宇宙放射線の影響下にあるスペースシャトルや人工衛星などで用いられる電子部品にMLCCが使用されている。
【0004】
近年、宇宙に対する関心が高まる中、宇宙発射体の内部には宇宙環境でも正常な駆動が可能な特殊電子素子を用いた電子機器が多く搭載されている。
【0005】
これに伴い、宇宙放射線の影響を最小限に抑えることができる電子素子に対する研究開発が要求され、宇宙放射線の影響を最小限に抑えることができる積層セラミックキャパシタに対する研究開発も必要な状況となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の様々な目的の一つは、放射線の影響を最小限に抑えることができるセラミック電子部品を提供することである。
【0007】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によるセラミック電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置され、ボロンを含む外部電極と、を含み、上記ボロン中の同位元素10Bの比率が20%以上であることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の様々な効果の一つとして、外部電極に含まれたボロン中の同位元素10Bの比率を制御することで、セラミック電子部品の放射線に対する耐久性を向上させることができる。
【0010】
本発明の様々な効果の一つとして、放射線による容量電荷を抑制することができる。
【0011】
本発明の様々な効果の一つとして、放射線によるセラミック電子部品の内部に誘導される電流を抑制することができる。
【0012】
但し、本発明の多様且つ有益な長所及び効果は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態によるセラミック電子部品の斜視図を概略的に示した図面である。
図2図1のI-I'断面図を概略的に示した図面である。
図3図1のII-II'断面図を概略的に示した図面である。
図4】本体を分解して概略的に示した図面である。
図5】K領域を拡大した図面である。
図6】本発明の他の一実施形態によるセラミック電子部品の斜視図を概略的に示した図面である。
図7図6のIII-III'断面図を概略的に示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0015】
なお、本発明を明確に説明すべく、図面において説明と関係ない部分は省略し、図面で示された各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜のために任意に示したため、本発明が必ずしも図示されたものに限定されるのではない。また、同一思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0016】
図面において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0017】
セラミック電子部品
図1は、本発明の一実施形態によるセラミック電子部品の斜視図を概略的に示した図面である。
【0018】
図2は、図1のI-I'断面図を概略的に示した図面である。
【0019】
図3は、図1のII-II'断面図を概略的に示した図面である。
【0020】
図4は、本体を分解して概略的に示した図面である。
【0021】
図5は、K領域を拡大した図面である。
【0022】
以下、図1から図5を参照して、本発明の一実施形態によるセラミック電子部品100について詳細に説明する。また、セラミック電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタ(Multi-layered Ceramic Capacitor,以下「MLCC」という。)について説明するが、本発明がこれに限定されるものではなく、セラミック材料を使用する多様なセラミック電子部品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどにも適用されることができる。
【0023】
本発明の一実施形態によるセラミック電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体上に配置され、ボロンを含む外部電極131、132と、を含み、上記ボロン中の同位元素10Bの比率が20%以上であることができる。
【0024】
セラミック電子部品100は、セラミックが主材料であり、一般的に放射線に対して優れた耐久性を有することが知られている。しかしながら、高エネルギーを有する重イオン(Ag7+イオンなど)放射線によって結晶性が非晶形に変化して特性が毀損されたり、その他の低エネルギー準位のイオン化放射線によってもRIC(放射線誘導電流)が発生してノイズが生じたり、キャパシタンス容量が低下することができるという報告がある。中性子放射線もイオン化放射線の一つとして、原子力発電所核燃料の近く、宇宙及び人工衛星の内部などにも存在する。また、宇宙放射線(GCR)と太陽エネルギー粒子(SEP)の作用によっても中性子放射線が生成することができる。
【0025】
本発明の一実施形態によって、外部電極にボロンが含まれ、上記ボロン中の同位元素10Bの比率が20%以上であることによって、セラミック電子部品の中性子放射線に対する耐久度を高めることができる。また、集積回路基板上に実装される場合、周辺電子素子を中性子放射線から保護する役割を果たすことができる。
【0026】
自然状態のボロンは、2つの安定した同位元素を有し、上記2つの安定した同位元素は10B及び11Bであり、10Bは19.8%、11Bは80.2%の比率で存在する。
【0027】
10Bは、周期律表に記載された元素のうち、最大の吸収断面積(absorption cross-section)を有する元素の一つである。ここで、吸収断面積は、中性子吸収に対する断面積を意味し、吸収断面積が大きいほど中性子を吸収する可能性が高くなる。10Bの吸収断面積は3835barn(1barn=10-24cm)であり、11Bの吸収断面積は0.0055barnであって、11Bに比べて10Bは非常に大きい吸収断面積を有する。
【0028】
セラミックが主材料である本体110の場合は中性子に対する耐久性が高いが、外部電極131、132及び内部電極121、122はセラミックではない金属が主材料となるため、本体110に比べて中性子に対する耐久性が相対的に低い。内部電極121、122は中性子に対する耐久性が低いことがあるが、誘電体層111及び外部電極131、132によって保護されることができる。
【0029】
そのため、本発明の一実施形態によると、本体110に比べて中性子に対する耐久性が相対的に低い外部電極131、132にボロンを含ませ、ボロン中の10Bの比率を自然状態より高く制御することで、セラミック電子部品100の中性子吸収効率を大きく増加させることができる。
【0030】
以下、本発明の一実施形態によるセラミック電子部品100に含まれるそれぞれの構成について説明する。
【0031】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が相互に積層されていてよい。
【0032】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示されたように、本体110は六面体状やこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0033】
本体110は、第1方向に対向する第1面1及び第2面2、上記第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に対向する第3面3及び第4面4、第1面1及び第2面2と連結され且つ第3面3及び第4面4と連結され、第3方向に対向する第5面5及び第6面6を有することができる。
【0034】
誘電体層111上に内部電極121、122が配置されていないマージン領域が重なることで内部電極121、122の厚さによる段差が発生し、第1面と第3面から第5面を連結するコーナー及び/又は第2面と第3面から第5面を連結するコーナーは、第1面又は第2面を基準に見た場合、本体110の第1方向中央側に収縮した形態を有することができる。或いは、本体の焼結過程での収縮挙動によって第1面1と第3面から第6面(3、4、5、6)を連結するコーナー及び/又は第2面2と第3面から第6面(3、4、5、6)を連結するコーナーは、第1面又は第2面を基準に見た場合、本体110の第1方向中央側に収縮した形態を有することができる。若しくは、チッピング不良などを防止するために本体110の各面を連結する角部を別途の工程を行ってラウンド処理することで、第1面と第3面から第6面を連結するコーナー及び/又は第2面と第3面から第6面を連結するコーナーはラウンド形状を有することができる。
【0035】
一方、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後に内部電極が本体の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成する場合には、第1面と第5面及び第6面を連結する部分及び第2面と第5面及び第6面を連結する部分が収縮した形態を有しなくてもよい。
【0036】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。誘電体層の積層数は特に制限する必要はなく、セラミック電子部品のサイズを考慮して決定することができる。例えば、400層以上の誘電体層を積層して本体を形成することができる。
【0037】
誘電体層111は、セラミック粉末、有機溶剤及びバインダーを含むセラミックスラリーを製造し、上記スラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥してセラミックグリーンシートを設けた後、上記セラミックグリーンシートの焼成することで形成することができる。セラミック粉末は、十分な静電容量が得られる限り特に制限されないが、例えば、セラミック粉末としてチタン酸バリウム(BaTiO)系粉末を使用することができる。より具体的な例を挙げると、セラミック粉末は、BaTiO、(Ba1-xCa)TiO(0<x<1)、Ba(Ti1-yCa)O(0<y<1)、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O(0<x<1、0<y<1)、及びBa(Ti1-yZr)O(0<y<1)のうち一つ以上であることができる。
【0038】
誘電体層111の平均厚さtdは特に限定する必要はないが、例えば、10μm以下であることができる。また、誘電体層111の平均厚さtdは希望の特性や用途に応じて任意に設定することができる。また、セラミック電子部品の小型化及び高容量化をさらに容易に達成するためには誘電体層111の平均厚さtdが0.4μm以下であることができる。
【0039】
ここで、誘電体層111の平均厚さtdは、内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の第1方向サイズを意味する。誘電体層111の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的には、一つの誘電体層111の多数の地点、例えば、第2方向に等間隔である30個の地点においてその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は、後述する容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して求めると、誘電体層111の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0040】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Acと、上記容量形成部Acの第1方向上部及び下部に形成されたカバー部112、113と、を含むことができる。
【0041】
また、上記容量形成部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を間に挟んで複数の第1内部電極121及び第2内部電極122を繰り返し積層して形成されることができる。
【0042】
カバー部112、113は、上記容量形成部Acの第1方向上部に配置される上部カバー部112及び上記容量形成部Acの第1方向下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0043】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0044】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は内部電極を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。
【0045】
即ち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0046】
一方、カバー部112、113の厚さは特に限定する必要はない。但し、セラミック電子部品の小型化及び高容量化をさらに容易に達成するためには、カバー部112、113の厚さtcが15μm以下であることができる。
【0047】
カバー部112、113の平均厚さtcは、第1方向サイズを意味することができ、容量形成部Acの上部又は下部において等間隔の5個地点で測定したカバー部112、113の第1方向サイズを平均した値であることができる。
【0048】
また、上記容量形成部Acの側面には、マージン部114、115が配置されることができる。
【0049】
マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1マージン部114と、第6面6に配置された第2マージン部115と、を含むことができる。即ち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向両端面(end surfaces)に配置されることができる。
【0050】
マージン部114、115は、図3に図示されたように、上記本体110を幅-厚さW-T方向に切った断面(cross-section)において第1内部電極12及び第2内部電極122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0051】
マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0052】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される箇所を除いて、導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することによりなるものであることができる。
【0053】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後に内部電極が本体の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成してもよい。
【0054】
一方、マージン部114、115の幅は特に限定する必要はない。但し、セラミック電子部品の小型化及び高容量化をさらに容易に達成するためには、マージン部114、115の平均幅が15μm以下であることができる。
【0055】
マージン部114、115の平均幅は、内部電極が第5面と離隔した領域の第3方向平均サイズMW1、及び内部電極が第6面と離隔した領域の第3方向平均サイズMW2を意味することができ、容量形成部Acの側面において等間隔の5個地点で測定したマージン部114、115の第3方向サイズを平均した値であることができる。
【0056】
したがって、一実施形態において、内部電極121、122が第5面及び第6面と離隔した領域の第3方向平均サイズMW1、MW2は、それぞれ、15μm以下であることができる。
【0057】
内部電極121、122は、第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができる。第1内部電極121及び第2内部電極122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ露出することができる。
【0058】
第1内部電極121は、第4面4と離隔して第3面3に露出し、第2内部電極122は第3面3と離隔して第4面4に露出することができる。本体の第3面3には第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体の第4面4には第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0059】
即ち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず第2外部電極132と連結される。したがって、第1内部電極121は第4面4から一定距離離隔して形成され、第2内部電極122は第3面3から一定距離離隔して形成されることができる。また、第1内部電極121及び第2内部電極122は本体110の第5面及び第6面と離隔して配置されることができる。
【0060】
内部電極121、122に含まれる導電性金属は、Ni、Cu、Pd、Ag、Au、Pt、In、Sn、Al、Ti、及びこれらの合金のうち一つであることができ、本発明がこれに限定されるものではない。
【0061】
内部電極121、122を形成する方法は特に制限しない。例えば、内部電極121、122は、セラミックグリーンシート上に導電性金属を含む内部電極用導電性ペーストを塗布して焼成することで形成されることができる。内部電極用導電性ペーストの塗布方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0062】
他の例として、内部電極121、122は、スパッタリング工法、真空蒸着法及び/又は化学気相蒸着法を用いて形成してもよい。
【0063】
内部電極の平均厚さteは特に限定する必要はない。このとき、内部電極121、122の厚さは内部電極121、122の第1方向サイズを意味することができる。例えば、セラミック電子部品の小型化及び高容量化をさらに容易に達成するためには、内部電極121、122の平均厚さteが0.4μm以下であることができる。
【0064】
ここで、内部電極の平均厚さteは、本体110の第1方向及び第2方向断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的には、一つの内部電極121、122の多数の地点、例えば、第2方向に等間隔である30個の地点においてその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は、容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極121、122に拡張して求めると、内部電極121、122の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0065】
外部電極131、132はボロンを含み、上記ボロン中の10Bの比率は20%以上である。
【0066】
上述したように、セラミックが主材料である本体110の場合は中性子に対する耐久性が高いが、外部電極131、132及び内部電極121、122はセラミックではない金属が主材料となるため、本体110に比べて中性子に対する耐久性が相対的に低い。内部電極121、122は中性子に対する耐久性が低いことがあるが、誘電体層111及び外部電極131、132によって保護されることができる。
【0067】
そのため、本発明の一実施形態によると、本体110に比べて中性子に対する耐久性が相対的に低い外部電極131、132にボロンを含ませ、ボロン中の10Bの比率を20%以上に制御することで、セラミック電子部品100の中性子吸収力を効率的に増加させることができる。
【0068】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置されることができる。
【0069】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ配置され、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結された第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。
【0070】
図1を参照すると、外部電極131、132は、サイドマージン部114、115の第2方向両端面を覆うように配置されることができる。
【0071】
本実施形態では、セラミック電子部品100が2個の外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変わることができる。
【0072】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0073】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a、及び電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bを含むことができる。
【0074】
電極層131a、132aに対してより具体的な例を挙げると、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であるか、又は、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0075】
また、電極層131a、132aは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順に形成された形態であることができる。また、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式によって形成されるか、又は、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式によって形成されたものであることができる。
【0076】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属としては、電気伝導性に優れた材料を使用することができるが、特に限定しない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及びこれらの合金のうち一つであることができる。
【0077】
一実施形態において、外部電極131、132はガラスGを含み、ボロンは上記ガラスGに含まれることができる。より好ましくは、図5を参照すると、外部電極131、132は、内部電極121、122と連結され、ガラスG及び導電性金属Mが含まれた電極層131a、132aを含み、ボロンは上記ガラスGに含まれることができる。
【0078】
外部電極131、132は、内部電極121、122との電気的連結性が十分に確保されなければならず、本体と物理的に十分な強度を持って接合されなければならない。このために、一般的に、外部電極は導電性金属及びガラスを含むペーストを塗布して焼成することで形成されることができる。ガラスGは、本体110及び外部電極131、132間の結合力を向上させる役割を果たし、導電性金属Mは、外部電極131、132と内部電極121、122を電気的に連結させる役割を果たすことができる。
【0079】
また、外部電極に含まれるガラスGは、ガラス相の安定性のために、一般的にボロンを含む。したがって、ガラスGに10Bの比率が20%以上であるボロンを含ませる場合、別途の組成設計の変更が必要ではないため、セラミック電子部品の中性子に対する耐久性をより効率的に向上させることができる。
【0080】
ガラスGに含まれるボロンは、酸化物形態で含まれることができ、具体的には、B形態で含まれることができる。ガラスに含まれるボロンの含量は、特に限定する必要はなく、該当製品の他の特性のために設定した含量で含まれることができる。例えば、ガラスは、外部電極ペーストと対比して1wt%以上8wt%添加されることができ、ボロンはガラスと対比して5mol%以上50mol%以下含まれることができる。
【0081】
但し、ボロンが必ずしもガラスに含まれたり、B形態で含まれる必要はないことに留意すべきである。例えば、ボロンは、B形態以外にも、ボロンカーバイド、ボロンナイトライドなどの形態としても外部電極131、132に含まれることができる。また、ボロンは、導電性金属及び樹脂が含まれた導電性樹脂層に含まれるか又はめっき層131b、132bに含まれてもよい。
【0082】
一方、ボロン中の同位元素10Bの比率を制御する方法は特に制限しない。例えば、同位元素である10Bの比率を制御する方法としては、ハロゲン化ホウ素中の10B同位体の比率を公知の化学交換法によって高める方法を挙げることができる。BFとアニソール(COCH)のエーテル錯体を形成させて、これとBFの化学交換反応(10BF11BF・COCH11BF10BF・COCH)と蒸留を組み合わせた反応蒸留塔によって10Bの比率を調整することができる。このように10Bの比率を調整してから、希望の形態で化合物を形成した後、外部電極131、132に含ませることができる。
【0083】
また、ボロン中の同位元素10Bの比率を確認する方法は、公知の方法を使用することができるが、特に制限しない。例えば、ボロンがガラスGに含まれた場合、外部電極をポリッシングしてガラスからボロン化合物を別に分離した後、ボロン化合物において10Bと11Bを区分して11Bと10Bの比率を求めることができる。10Bと11Bを区分する公知の方法としては、質量差をプラズマで測定するICP-OES方法とICP-MS方法、磁気力で測定するPTIMSとNTIMS、並びに、非質量測定法としては、Spectrophotometryと中性子分析法などが存在する。最も広く使用されるICP-MS(或いは、MC-ICP-MS方法)は、プラズマでイオン化されたボロンのmass-to-charge ratio(m/z)の差を分析してミリグラム単位の少量のサンプルによってもナノグラム単位で元素を分析することができ、正確度が高い。一般的に、ボロンを1対100に希釈された硝酸溶液に溶かした後、サンプルサイズ1mLで5回測定を行い、1mL溶液には最小0.01ナノグラム以上のボロンを含有させるが、測定方法はこのような方法に限定されない。
【0084】
一実施形態において、ボロン中の同位元素10Bの比率が25%以上85%以下であることができる。
【0085】
外部電極131、132に含まれるガラスG及びガラスに含まれたボロンの一般的な含量を考慮すると、内部電極方向に直線移動する中性子が外部から外部電極131、132を介して本体110に到達するまで4個以上のボロン結晶に遭遇することができる。よって、ボロン中の同位元素10Bの比率が25%以上である場合、安定的に中性子を捕捉することができ、中性子に対する耐久性をさらに向上させることができる。
【0086】
一方、下記式1を参照すると、10Bが中性子nを吸収する場合、11Bになるか、アルファ線とLi又はガンマ線とLiに変換されることができる。
【0087】
【数1】
【0088】
中性子と結合したボロンはリチウムに変換されることができ、10Bの比率が85%を超えた場合、過多な中性子が照射される状況では、ガラスに含まれたボロンが失われてガラス相の安定性が落ちるおそれがあり、これによって失透現象が発生することがある。ここで、失透現象とは、ガラスから結晶が析出する現象を意味する。
【0089】
したがって、ガラスに含まれたボロンの同位元素10Bの比率を25%以上85%以下に制御すると、中性子に対する耐久性をさらに向上させることができ、ガラス相の安定性を維持することができる。
【0090】
めっき層131b、132bは、実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131b、132bの種類は特に限定しないが、Ni、Sn、Pd、及びこれらの合金のうち一つ以上を含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることができる。
【0091】
めっき層131b、132bに対してより具体的な例を挙げると、めっき層131b、132bは、Niめっき層又はSnめっき層であることができ、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順に形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層が順に形成された形態であることができる。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0092】
図6は、本発明の他の一実施形態によるセラミック電子部品の斜視図を概略的に示した図面である。
【0093】
図7は、図6のIII-III'断面図を概略的に示した図面である。
【0094】
以下、図6及び図7を参照して、本発明の他の一実施形態によるセラミック電子部品200について説明する。但し、上述した内容と重複する内容は省略する。
【0095】
本発明の他の一実施形態によるセラミック電子部品200の外部電極231、232は、内部電極121、122と連結される電極層231a、232a及び上記電極層上に配置されるカバー層231b、232bを含み、同位元素10Bの比率が20%以上のボロンがカバー層231b、232bに含まれることができる。
【0096】
電極層231a、232aが内部電極121、122との電気的連結性を確保し、カバー層231b、232bは電極層231a、232a上に配置されて電極層231a、232aを中性子から保護する役割を果たすことができる。
【0097】
カバー層231b、232bは導電性金属を含んでもよく、この場合、電極層231a、232aを全てカバーするように配置されることができる。
【0098】
但し、電極層231a、232aが内部電極121、122との電気的連結性を確保することができることから、カバー層231b、232bは導電性金属を含まなくてもよい。
【0099】
即ち、カバー層231b、232bは、導電性金属を含まなくてもよく、この場合、図6及び7に図示したように、実装基板及び内部電極121、122間の電気的連結性を確保するために、電極層231a、232aの少なくとも一部をカバーしないように配置されることができる。このとき、電極層231a、232a上にカバー層231b、232bが配置されていない領域にはめっき層を配置することができる。
【0100】
また、カバー層231b、232bはガラスを含み、ボロンは上記ガラスに含まれることができる。
【0101】
一実施形態において、ボロン中の同位元素10Bの比率が90%以上であることができる。
【0102】
電極層231a、232aが内部電極121、122との電気的連結性を確保することができることから、カバー層231b、232bに含まれた10Bが中性子を吸収してLiに変換されてもセラミック電子部品の性能に及ぼす影響は制限的である。したがって、電極層231a、232aに含まれたボロン中の10Bの比率を90%以上にすることで、中性子に対する耐久性をさらに向上させることができる。
【0103】
以上では、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付された図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野の通常の知識を有する者によって様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0104】
また、本発明で使用された「一実施形態」という表現は、互いに同一の実施形態を意味せず、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されるものである。しかしながら、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態で説明された事項が他の一実施形態で説明されていなくても、他の一実施形態でその事項と反対であるか矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明であると理解されることができる。
【0105】
本発明で使用された用語は、一実施形態を説明するために使用されたものであるだけで、本発明を限定しようとする意図ではない。この際、単数の表現は、文脈上明白に異なる意味を有しない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0106】
100:セラミック電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:マージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
131a、132a、231a、232a:電極層
131b、132b:めっき層
231b、232b:カバー層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7