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特開2024-83234設定可能なフィードフォワード制御を有するモーションシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083234
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】設定可能なフィードフォワード制御を有するモーションシステム
(51)【国際特許分類】
   G05D 3/12 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
G05D3/12 305
G05D3/12 305Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023172811
(22)【出願日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】22212450
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】502149218
【氏名又は名称】エテル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】バジル・ルノー・グラフ
【テーマコード(参考)】
5H303
【Fターム(参考)】
5H303AA06
5H303BB03
5H303BB08
5H303CC06
5H303JJ05
5H303JJ06
5H303KK27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】モーションハードウエアシステム(100)と、モーションハードウエアシステム(100)の動作を制御するよう構成された運動制御システムとを備えるモーションシステム(10)を提供する
【解決手段】運動制御システムは、動作時に台座(112)の運動ステージ(102)によって作用すると予想される反力に対して、台座(112)上の反作用力(F)が作用することによって、補償するためのアクティブ防振システム(114)の前記少なくとも3DOFの作動を制御するための防振システム制御装置(230)を備えるフィードフォワード制御を備える。フィードフォワード制御が運動ステージ(102)のトポロジーに基づいて運動方程式を定義する文字列を保存するためのメモリ(224)と、前記反作用力(F)を演算する前記文字列を処理するための処理ユニット(222)とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーションハードウェアシステム(100)と、モーションハードウェアシステム(100)の動作を制御するように構成された運動制御システム(200)とを備えるモーションシステム(10)であって、
前記モーションハードウェアシステム(100)は、運動ステージ(102)と、運動ステージ(102)を支持する支持アセンブリ(110)と、地面(300)上に載置する機械フレーム(116)とを備え、
支持アセンブリ(110)が、台座(112)、及び前記台座(112)と機械フレーム(116)との間に配置されるアクティブ防振システム(114)を備え、
前記アクティブ防振システム(114)が、台座(112)の少なくとも3自由度(DOF)の作動を共に提供するアクチュエータを備え、
運動制御システム(200)が、動作時に台座(112)の運動ステージ(102)によって作用する予想される反力に対して、台座(112)上の反作用力(F)が作用することによって、補償するアクティブ防振システム(114)の前記少なくとも3DOFの作動を制御するための防振システム制御装置(230)を備えるフィードフォワード制御(210)を含む、
当該モーションシステム(10)において、
前記フィードフォワード制御(210)が、運動ステージ(102)のトポロジーに基づいて運動方程式を定義する文字列を保存するためのメモリ(224)と、前記反作用力(F)を演算するために前記文字列を処理するための処理ユニット(222)とを備える
ことを特徴とするモーションシステム(10)。
【請求項2】
運動制御システム(200)は、
運動ステージ(102)の運動軸線の位置(x;y)と加速度(x・・、y・・)を取得するように構成された少なくとも一つの位置制御装置(250a、250b)、並びに
前記運動方程式に一致する運動ステージ(102)の運動軸線の位置(x;y)と加速度(x・・、y・・)に対するデータを受信し、かつ処理するように構成された主制御装置(220)、並びに
前記少なくとも一つの位置制御装置(250a,250b)と主制御装置(220)及び前記主制御装置(220)とアクティブ防振システム制御装置(230)にリンクするデジタルバス(260)、
を更に備え、
主制御装置(220)は、前記文字列に基づいて反作用力(F)をリアルタイムで演算し、かつ演算された反作用力(F)をアクティブ防振システム制御装置(230)に送信するように構成される、請求項1に記載のモーションシステム(10)。
【請求項3】
主制御装置(220)は、記憶された文字列を入力及び/又は編集するためのユーザインターフェースを提供するように構成される、
請求項2に記載のモーションシステム(10)。
【請求項4】
前記ユーザインターフェースは、有線又は無線ネットワークを介して主制御装置に接続される、
請求項3に記載のモーションシステム(10)。
【請求項5】
前記ユーザインターフェースは、コンピュータ、ポータブルコンピュータ、タブレット、スマートフォン、及び/又はタッチスクリーンを含む、
請求項3又は4に記載のモーションシステム(10)。
【請求項6】
専用ソフトウェアを使用して選択することができる、運動ステージの異なるトポロジーに対応する前記運動ステージ(102)の運動方程式を定義する所定の文字列を記憶するための別のメモリをさらに備える、
請求項2~5のいずれか一項に記載のモーションシステム(10)。
【請求項7】
前記文字列は、以下の形式、即ち、
【数1】
の方程式に関する数式を含み、
F=(F,F,F,T,T,Tは、少なくとも3DOFにおける前記反作用力のベクトルであり、
【数2】
は、各々の運動ステージ軸線の位置及び加速度のベクトルであり、
は、調整可能なパラメータのベクトルであり、
fは、所与の運動ステージトポロジーの運動方程式を定義する関数である、
請求項1~6のいずれか一項に記載のモーションシステム(10)。
【請求項8】
前記調整可能なパラメータのベクトル(p)は、質量、寸法、角運動量、及び/又は慣性を表す項目を含む、
請求項7に記載のモーションシステム(10)。
【請求項9】
運動制御システム(200)は、前記調整可能なパラメータのベクトル(p)の値を編集するユーザインターフェースを提供するように構成される、
請求項7又は8に記載のモーションシステム(10)。
【請求項10】
台座(112)の3DOF又は6DOFの運動測定値を共に提供するために、アクティブ防振システム(114)内のセンサと、
前記地面(300)から伝達される地震力によって引き起こされる全ての振動を減衰するために、センサの出力に基づいてアクティブ防振システム(114)の前記3DOF又は前記6DOFのアクチュエータを制御するための減衰制御装置(245)を含むフィードバック減衰システム(240)と
をさらに備える、
請求項7~9のいずれか一項に記載のモーションシステム(10)。
【請求項11】
前記調整可能なパラメータのベクトル(p)の調整は前記減衰制御装置(245)によって生成される出力信号のエネルギーを低減することを可能にするパラメータのセットを取得するために、前記調整可能なパラメータのベクトルの調整をグリッドサーチで実行するソフトウェアによって実行される、
請求項10に記載のモーションシステム(10)。
【請求項12】
前記調整可能なパラメータベクトル(p)の調整は、前記減衰制御装置(245)によって生成される出力信号のエネルギーを低減することを可能にする運動方程式の導関数に基づいて、前記調整可能なパラメータのベクトルのモデルベースの感度分析調整を実行するソフトウェアによって実行される、
請求項10に記載のモーションシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置、特に半導体処理装置に動作を与えるための運動ステージを備える運動システムに関するものである。運動ステージは、アクティブ防振システム上に載置する台座上に取り付けられる。アクティブ防振システムは、動作時に台座上の運動ステージに作用する予想される反力を補償するために、設定可能なフィードフォワード制御によって制御される。
【背景技術】
【0002】
精密運動システム、特に、位置決め装置、座標測定機、またはロボットなどの半導体処理装置は、精密運動システムを地上振動から隔離するための、(特許文献1に開示されているような)いわゆるアクティブ免震システムを備える。アクティブ免震システムは、典型的には、精密運動システムを取り付けることができる花こう岩の台座と、床上に載置する機械フレームとの間に組み立てられるいくつかのアクティブ軸受を備える。したがって、アクティブ免震システムは可能な限り少ない寄生的な運動で精密運動システムの動作を保証し、その結果、高い位置決めまたは測定精度が得られる。
【0003】
精密運動システムによって生成される反力を補償するためにフィードフォワード制御を使用することが知られている。この補償スキームは既知のステージ運動を使用して、アクチュエータが台座に加えるべき力とトルクとを演算して、反力を補償することで、望ましくない台座運動を回避する。
【0004】
特許文献2は、装置の機械フレームに固定されたレンズシステムを有する光学リソグラフィ装置におけるフィードフォワード制御の実施例を開示している。光学リソグラフィ装置はレンズシステムの下方に位置し、運動ステージに結合された支持部材の案内面上でレンズシステムに対して相対的に変位可能な物体テーブルを有する運動ステージを備える。光学リソグラフィ装置は、デバイスの基準フレームに固定され、フィードフォワード制御によって制御される力アクチュエータシステムが設けられている。力アクチュエータシステムは、動作中、運動ステージによって支持部材に同時に加えられる反力の方向に対向する方向で、かつ反力の値に実質的に等しい値で、機械フレームに補償力を加える。装置はまた、光学リソグラフィ装置が取り付けられている地面から伝達される地震力など、物体テーブル上の位置決め装置によって及ぼされる駆動力以外の力によって引き起こされる機械フレームの動作を防止するためのフィードバック減衰システムを含む。
【0005】
特許文献3は、運動ステージ、フィードフォワード制御、及びフィードバック減衰システムを含む別のモーションシステムを開示している。フィードフォワード制御は、運動ステージによって生成される慣性力の影響を補償するように適合された制御ユニットを備える。制御ユニットは、メモリと、突然発生し得る力のモデルとを備え、前記メモリは、運動ステージダイナミクスを考慮に入れるために準連続的な力を適切にフィルタリングする運動ステージの可動部分の伝達関数を含む。
【0006】
上述の先行技術のモーションシステムのフィードフォワード制御は、運動ステージの自由度の特定のトポロジーに依存することが不便である。この点に関して、特許文献2は面内でX方向及びY方向に移動することができ、面内反力の補償を必要とする運動ステージを開示する、一方、特許文献3は、1自由度のみを有する運動ステージを開示している。しかしながら、自由度の様々なタイプ及び数を有する多種多様な運動ステージトポロジーが存在する。運動ステージの動作に基づいて補償されるべき反作用力の計算は、運動方程式を用いてフィードフォワード制御の内部で実行される。これらは、反作用力を計算するために、各タイプの運動ステージトポロジーに適合されなければならない。
【0007】
運動ステージトポロジーに基づく反作用力のこの計算は、現場ではできないプログラミング言語のプログラミング及びコンパイルを意味する。したがって、開発フェーズ中に動作ステージトポロジーが変化した場合、フィードフォワード制御のための新しいプログラムがコンパイルされる必要があり、これは煩雑であり、遅い。加えて、異なる運動ステージトポロジーをサポートするために、モーションシステムは各トポロジーに対応する運動方程式を実行するために異なるプログラムのライブラリを記憶する必要があり、それによって、後方互換性を破壊することを回避するために、これらのプログラムのいずれもライブラリから除去することができない。時間が経つにつれて、多くの古いエントリを有するライブラリを維持することは、深刻な負担となり、コストを負う可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6021991号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0502578号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1803969号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、運動ステージの特定のトポロジーに容易に適合することができるフィードフォワード制御を有するモーションシステムを提供することである。
【0010】
本発明の別の課題は、現場で直接、任意の新しい運動ステージトポロジーに適合させることができるモーションシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
特に、これらの課題は、ハードウェアシステムと、ハードウェアシステムの動作を制御するように構成された動き制御システムとを備えるモーションシステムによって達成される。ハードウェアシステムは、運動ステージと、運動ステージを支持するプラットフォームと、地面上に載置する機械フレームとを備える。プラットフォームは、台座、及び台座と機械フレームとの間に配置されたアクティブ防振システムを備える。アクティブ防振システムは、台座の少なくとも3自由度(DOF)の作動を一緒に提供するアクチュエータを備える。運動制御システムは、動作時に運動ステージによって台座に作用する予想される反力に対して、台座に相殺する力を加えることによって補償するために、アクティブ防振システムの少なくとも3DOF作動を制御するための防振システム制御装置を備えるフィードフォワード制御を備える。フィードフォワード制御はオペレータによって入力された文字列を記憶し、かつ運動ステージのトポロジーに基づいて運動方程式を定義するためのメモリと、前記反作用力を演算するために前記文字列を処理するための処理ユニットとを備える。
【0012】
一実施形態では、運動制御システムが、運動ステージの運動軸線の位置及び加速度を取得するように構成された少なくとも1つの位置制御装置と、主制御装置と、デジタルバスとをさらに備える。主制御装置は運動方程式に対応する運動ステージの運動軸線の位置及び加速度に対するデータを受信し、かつ処理するように構成される。デジタルバスは少なくとも1つの位置制御装置を主制御装置に接続し、後者をアクティブ防振システム制御装置に接続する。主制御装置は文字列に基づいて反作用力をリアルタイムで演算し、演算された反作用力をアクティブ防振システム制御装置に送信するように構成される。
【0013】
一実施形態では、主制御装置が記憶された文字列を編集するためのユーザインターフェースを提供するように構成される。
【0014】
一実施形態では、ユーザインターフェースが有線又は無線ネットワークを介して主制御装置に接続される。
【0015】
一実施形態では、ユーザインターフェースがコンピュータ、ポータブルコンピュータ、タブレット、スマートフォン、及び/又はタッチスクリーンを含む。
【0016】
一実施形態では、モーションシステムが専用ソフトウェアを使用して選択することができる、運動ステージの異なるトポロジーに対応する運動ステージの運動方程式を定義する所定の文字列を記憶するための別のメモリ、例えばハードドライブをさらに備える。
【0017】
一実施形態では、文字列が、以下の形式
【数1】
の数式を含み、この数式において、F=(F,F,F,T,T,Tは、少なくとも3DOFにおける前記反作用力のベクトルであり、
【数2】
は、各々の運動ステージ軸線の位置及び加速度のベクトルであり、
は、調整可能なパラメータのベクトルであり、
fは、所与の運動ステージトポロジーの運動方程式を定義する関数である。
【0018】
一実施形態では、調整可能なパラメータが質量、寸法、角運動量、及び/又は慣性を表す項目を含む。
【0019】
一実施形態では、運動制御システムが前記調整可能なパラメータの値を編集するためのユーザインターフェースを提供するように構成される。
【0020】
一実施形態では、モーションシステムが台座の運動の3DOF又は6DOF測定値を共に提供するためのアクティブ防振システム内のセンサと、センサの出力に基づいてアクティブ防振システムの前記3DOF又は6DOFアクチュエータを制御して、例えば前記地面から伝達される地震力によって引き起こされる任意の振動を減衰させるための減衰制御装置とをさらに備える。
【0021】
一実施形態では、調整可能なパラメータpのベクトルの調整が、調整可能なパラメータの前記ベクトルの1つ又は複数の項目を変更することによってグリッドサーチ調整を実行し、前記減衰制御装置によって生成される出力信号のエネルギーを低減することを可能にするパラメータのセットを見つけることによって実行される。
【0022】
一実施形態では、前記調整可能なパラメータpのベクトルの調整が、前記減衰制御装置によって生成される出力信号のエネルギーを低減することを可能にする運動方程式の導関数に基づいて、前記調整可能なパラメータのベクトルのモデルベースの感度分析調整を実行することによって、ソフトウェアによって実行される。
【0023】
本発明は、実施例として与えられ、図によって示されるいくつかの実施形態の説明によってよりよく理解されるのであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、運動ハードウェアシステムと、運動ステージの予想される動作の関数としてハードウェアシステムを制御するように適合された運動制御システムとを備えるモーションシステムのブロック図を示す。
図2図2は、第1のトポロジーの運動ステージを含む図1のモーションシステムの概略図を示す。
図3図3は、図2の運動制御システムのフィードフォワード制御及びフィードバック減衰システムのブロック図を示す。
図4図4は、別のトポロジーを有する運動ステージを含む、図2のハードウェアシステムと同様の運動ハードウェアシステムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照すると、モーションシステム10は、モーションハードウエアシステム100と、運動制御システム200とを備え、前記運動制御システム200は、ハードウェアシステム100の運動ステージ102を制御し、かつデジタルバス260を介してアクティブ防振システム114を制御することによって、運動ステージ102によって台座112作用する予想される反力を補償するように構成される。
【0026】
図2を参照すると、モーションハードウエアシステム100は、特定のトポロジーの運動ステージ102と、運動ステージ102を支持する支持アセンブリ110と、支持アセンブリ110を保持し、地面300上に載置する機械フレーム116とを備える。支持アセンブリ110は、台座112、例えば花こう岩スラブと、台座112と機械フレーム116との間に取り付けられたアクティブ防振システム114とを備える。
【0027】
運動ステージ102の静止部は、台座112に固定されている。アクティブ防振システム114は、台座112の少なくとも3自由度(DOF)の作動を共に提供するためのアクチュエータ(図示せず)を備える。図2の図示された実施形態では、運動ステージ102が、座標系x、y、zにおいて2つの直交軸線x、yに沿ってキャリッジを移動させるように配置された第1及び第2の直線運動軸線103a、103bを備える。図2の実施形態では、第2直線運動軸線103bが、第1直線運動軸線103aのキャリッジに取り付けられることによって、第1直線運動軸線103a上に積み重ねられる。したがって、運動が第1の直線運動軸線103aで行われる場合、運動質量は、第1の直線運動軸線103aのキャリッジの質量と第2の直線運動軸線103bの総質量との和である。運動方程式は、反作用力を計算するためにこれを考慮しなければならない。トポロジーが反転され、第1の直線運動軸線103aが第2の直線運動軸線103b上に積み重ねられる場合、このトポロジーに対応する異なる運動方程式を必要とする。
【0028】
図3を参照すると、運動制御システムは、運動ステージ102が装置、特に半導体処理装置を特定の位置に移動させるための動作中であるときに、台座112上の運動ステージ102の第1及び第2の直線運動軸103a、103bの動作によって作用する予想される反力に対して、台座112に反作用力Fが作用することによって補償するために、アクティブ防振システム114の少なくとも3DOFの作動を制御するための防振システム制御装置230を備えるフィードフォワード制御部210を備え、これによって、台座上の運動ステージによって生成される反力に影響されない正確な位置決めシステムを提供する。
【0029】
フィードフォワード制御210は、運動ステージ102のトポロジーに基づいて運動方程式を定義する文字列を記憶するためのメモリ224と、反作用力ベクトルFを演算するために文字列を処理するための処理ユニット222とを備える。
【0030】
有利には、反作用力ベクトルFを決定する文字列が、その使用前にコンパイルされる必要がないので、特定のプログラミング言語で提供される必要はない。この特徴は、運動ステージのトポロジーに関する重要なレベルの柔軟性を可能にする。
【0031】
一実施形態では、ユーザは、反作用力Fを演算するための処理ユニット222によって読み取られるべき文字列を含むテキストファイルを提供してもよい。
【0032】
一実施形態では、ユーザは、反作用力Fを演算するための処理ユニット222によって読み取られるべき文字列を生成するために、グラフィカルプログラミング言語またはグラフィカルシステムモデリングを使用してもよい。
【0033】
図2を参照すると、運動制御システムは、運動ステージ102の第1及び第2の位置制御装置250a、250bを備える。第2位置制御部250bは、第1直線運動軸線103aがy軸に沿って駆動するように、かつ第2直動軸103bが取り付けられたキャリッジの動作の位置y及び加速度y・・を取得するように、構成されている。第1の位置制御部250aは、第2直線運動軸線103bがx軸に沿って駆動するように、かつそのキャリッジの動作の位置x及び加速度x・・を取得するように、構成されている。運動制御システム200は、主制御装置220と、第1及び第2の位置制御装置250a、250bを主制御装置220に接続し、かつ主制御装置220をアクティブ防振システム制御装置230に接続するデジタルバス260とをさらに備える。
【0034】
主制御装置220はデジタルバス260を伝送手段として使用し、反作用力ベクトルFを演算するための文字列に従って動作するとき、運動ステージ102の第1直線運動軸103aおよび第2直線運動軸103bの位置xおよび加速度x・・、y・・に対するデータを受信し、処理するように構成される。主制御装置220の演算能力は文字列がユーザによって修正されるたびに、文字列の解釈が数式および数学演算のシーケンスを導出することを可能にする。主制御装置220の演算能力はまた、前記一連の数学演算を使用して、ほぼリアルタイムでの反作用力ベクトルFの演算を可能にする。演算された反作用力ベクトルFは、デジタルバス260を使用してアクティブ防振システム制御装置230に送信され、運動ハードウェアステージ100の支持アセンブリ110のアクチュエータを制御して、運動ステージによって生成される反作用力を反作用させる。
【0035】
有利には、主制御装置220は、オペレータが反作用力Fを決定する運動方程式を入力及び/又は編集することを可能にするユーザインターフェースを備える。一実施形態では、ユーザインターフェースは、ユーザが運動ステージのトポロジーに対応する文字列を入力することを可能にする。
【0036】
一実施形態では、ユーザインターフェースを主制御装置に統合してもよく、または有線ネットワークを介して主制御装置と接続してもよい。代替的に、無線ネットワークを介してユーザインターフェースを主制御装置に接続してもよく、遠隔デバイスからのその使用を可能にできる。
【0037】
例えば、ユーザインターフェースは、ユーザが文字列を含むファイルを転送することを可能にするUSBポートなどのデータ転送のための単純なバスであってもよい。代替的または相補的に、ユーザインターフェースは、ユーザが主制御装置220に文字列を直接入力(書き込み)するための手段を含んでもよい。ユーザインターフェースは、コンピュータ、遠隔接続されたコンピュータ、タブレット、スマートフォン、または主制御装置とデータを共有することを可能にする任意の他のそのようなタイプの電子デバイスを含んでもよい。
【0038】
第1及び第2の位置制御装置250a、250bはそれぞれ、主制御装置の演算時間およびデジタルバス待ち時間を考慮するために、運動ステージ102の第1及び第2の直線運動軸線103a、103bを駆動するために、信号を数ミリ秒だけ遅延させる遅延回路を備える。これにより、アクティブ防振システム114のアクチュエータが、運動ステージ102によって台座112に加えられる反力と同期してアクティブ防振システム制御装置230によって制御されることを保証する。
【0039】
有利な実施形態では、アクティブ防振システム114が慣性センサ、例えば、台座112の運動の3DOFまたは6DOF測定値を共に提供する地震センサ(図示せず)をさらに備える。支持アセンブリは、各サンプリング期間において、例えば地面300から伝達される地震力によって引き起こされる任意の振動を減衰させる慣性センサの出力に基づいてアクティブ防振システム114のアクチュエータを制御するための、慣性センサからの測定値を減衰制御装置245に送信するフィードバック減衰システム240を備える。減衰制御装置245の力ベクトル出力は、演算された反作用力Fに加えられ、台座112の少なくとも3自由度(DOF)作動を提供するアクチュエータ(図示せず)のための力基準として使用される。したがって、運動システム10は、地面300からの振動から隔離されている間、運動ステージの反力に対抗できる。
【0040】
文字列は、異なる所定の運動ステージトポロジーに対応する運動方程式の構成可能なセットを含んでもよい構成ファイルから取り出すことができる。このファイルは、主制御装置220のメモリ224にダウンロードすることができる。
【0041】
反作用力Fを演算するために主制御装置220によって使用される式
【数3】
を表すことができ、ここで、
F=(F,F,F,T,T,Tは、少なくとも3DOFにおける反作用力のベクトルであり、
【数4】
は、それぞれの運動ステージ軸線位置と加速度のベクトルであり、
は、調整可能なパラメータのベクトルであり、
fは、所与の運動ステージトポロジーの運動方程式を定義する関数である。
【0042】
運動方程式は、各サンプリング期間において、運動ステージ反力を補償するための6DOFシステムについての3つの力F、F、Fおよび3つのトルクT、T、Tを計算するための少なくとも3つの式の形で与えられる。力の計算はニュートンの運動の第二法則F=m・aと回転運動に対するその等価を用いた。トルクの値の式は運動ステージが平面内を移動するとき、台座水平を維持するための重力補償を含んでもよい。
【0043】
調整可能なパラメータpのベクトルは、運動ステージの質量、長さ、幅、高さ、直径などの寸法、角運動量、慣性を表す項目を含む。反作用力Fを決定するための任意の他の関連する物理量を、調整可能なパラメータのベクトルに含めることができる。
【0044】
運動制御システムは、これらの調整可能なパラメータの値を編集するためのユーザインターフェースを提供してもよい。
【0045】
調整可能なパラメータpのベクトルの1つ以上のパラメータは、制御運動システムの性能を高めるために専用ソフトウェアを使用して調整することができる。文字列をソフトウェアに提供することができ、パラメータ調整実験を実行することを可能にする反作用力を決定する方程式の評価を可能にする。
【0046】
一実施形態では、グリッドサーチパラメータチューニングが1つ以上のパラメータを同時に最適化するように、ソフトウェアによって実行することができる。典型的には、調整可能なパラメータPのベクトルの2つのパラメータ(P,P’)が同時に調整される。テストパラメータ(P,P’)の各対について、運動ステージのステージ運動が繰り返される。各実験について、台座112の運動が測定される。次に、PCA(主成分分析)などの次元削減アルゴリズムを使用して、コスト関数を定義することができる。このコスト関数の最小値は、反作用力Fを演算するために使用することができるパラメータの最適な組み合わせを提供する。コスト関数は、前記減衰制御装置によって生成された出力信号のエネルギーとして定義することができる。
【0047】
別の実施形態では、モデルベースの感度分析チューニングが実行され、高速収束チューニング方式を可能にする。ここで、表現モデルベースの手段とは、運動ステージのトポロジーに対応する特定の運動方程式を考慮した解析のことであり、したがって、適用されるべき反作用力も考慮される。図3を参照すると、減衰制御装置245および支持アセンブリ110を備える下部は、線形システムによって十分に近似することができる。さらに、運動ステージダイナミクスは、すべての構成要素がユーザによって選択および定義してもよく、通常、高精度でモデル化することができる。したがって、反作用力Fから測定出力
【数5】
への伝達関数を、専用ソフトウェアを使用してモデル化し、シミュレーションすることができる。反作用力Fを演算する役割を果たすフィードフォワード制御210である上部は、非線形となり得る。
【0048】
モデルベースの感度分析は、所与の開始点の周りの調整可能なパラメータpのベクトルを形成するパラメータpに対するQの変動の推定に依存する。換言すれば、pに対する偏導関数Qは、測定信号の周囲で推定される。次いで、信号Qから導出されるコスト関数を低減するように、pの成分の更新が演算される。この方法は、オンラインパラメータチューニング、最適制御、反復制御および反復学習制御の十分に確立された理論に基づいている。
【0049】
代替的または相補的に、通信バス伝送時間及び/又は制御ループ全体内の様々な累積位相遅延を補償するための遅延調整を適用することができる。
【0050】
一実施形態では、適用されるこの遅延がすべての運動ステージ軸線に対して1つの追加のパラメータτと見なされる。感度は、このパラメータτに対する出力信号Qの変動として定義され、わずかに異なるステージ遅延で実行される追加の測定を使用して、有限差分によって推定することができる。このアプローチは、記載されたチューニング技術の両方と併せて使用することができる。
【0051】
図4は3自由度、すなわち、x軸、y軸に沿った2つの直交する直線運動と、z軸の周りの1つの回転動作とを有する異なるトポロジーを有する運動ステージ102を有する運動ハードウェアシステム100を示す。運動方程式を定義する際のこのレベルの柔軟性は、支持アセンブリ110上に取り付けられた運動ステージの実質的に任意のトポロジーの反力の補償を可能にする。運動ステージは、積み重ねられた線形システムおよび回転システム、平行運動学システム、任意の数の自由度を有するシステムなどであってもよい。
【0052】
より複雑な例では、ユーザが中間一時変数を導入して、操作の全体数を減らしてもよい。運動ステージの剛体モデルに対応する上記運動方程式は、入力フィルタまたは出力フィルタのいくつかの内部ダイナミクスを用いて拡張することができ、それによって、運動ステージおよび運動ステージ制御のより詳細なモデリングをカバーすることができる。
【符号の説明】
【0053】
10 モーションシステム
100 モーションハードウエアシステム
102 運動ステージ
103a、103b 第一及び第二直線運動軸線
110 支持アセンブリ
112 台座(例えば、花こう岩)
114 アクティブ防振システム
116 機械フレーム
200 運動制御システム
210 フィードフォワード制御
220 主制御装置
222 処理ユニット
224 メモリ
230 防振システム制御装置
240 フィードバック減衰システム
245 減衰制御装置
250a、250b 位置制御装置
252 遅延タイマ
260 デジタルバス
300 地面
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】