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特開2024-83242緑茶ペプチド組成物を含む抗疲労用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083242
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】緑茶ペプチド組成物を含む抗疲労用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/18 20160101AFI20240613BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240613BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240613BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240613BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240613BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240613BHJP
   A61K 36/82 20060101ALI20240613BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20240613BHJP
   C07K 4/00 20060101ALN20240613BHJP
   C07K 14/415 20060101ALN20240613BHJP
【FI】
A23L33/18
A23L33/105 ZNA
A61P3/00
A61P43/00 105
A61K38/08
A61K38/16
A61K36/82
A61K35/74 G
C07K4/00
C07K14/415
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180729
(22)【出願日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2022-0171257
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ヒョン ウ
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ジノ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ワンギ
(72)【発明者】
【氏名】ノ, チョン ファ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
4C087
4C088
4H045
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018LE06
4B018MD08
4B018MD09
4B018MD20
4B018MD59
4B018MD86
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF13
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA19
4C084CA13
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZB21
4C084ZC21
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC55
4C087CA16
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZB21
4C087ZC21
4C088AB45
4C088BA09
4C088BA10
4C088BA16
4C088CA25
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZB21
4C088ZC21
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045CA30
4H045EA01
4H045EA20
4H045FA71
4H045GA01
4H045GA05
(57)【要約】
【課題】本開示は、緑茶ペプチド組成物を含む抗疲労用組成物に関する。
【解決手段】本開示に係る緑茶ペプチド組成物は、優れた筋細胞における疲労物質の生成抑制、筋細胞におけるATP生成増加、及び筋細胞における脂肪酸化促進効果によって抗疲労効力を示し、様々な保健機能食品組成物、薬学組成物に適用することができる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑茶ペプチド組成物を有効成分として含み、
前記緑茶ペプチド組成物が、配列番号1~7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1種の緑茶ペプチドを含む、抗疲労用組成物。
【請求項2】
前記緑茶ペプチド組成物が、緑茶タンパク質を植物性乳酸菌で発酵させて得られることを特徴とする、請求項1に記載の抗疲労用組成物。
【請求項3】
前記植物性乳酸菌が、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)である、請求項2に記載の抗疲労用組成物。
【請求項4】
前記緑茶タンパク質が、緑茶を無水または含水C1~C6の低級アルコールで抽出された1次エキスの残渣から得られることを特徴とする、請求項2に記載の抗疲労用組成物。
【請求項5】
前記含水C1~C6の低級アルコール中のアルコールの濃度が、20~80%(v/v)であることを特徴とする、請求項4に記載の抗疲労用組成物。
【請求項6】
前記含水C1~C6の低級アルコールが、20~80%(v/v)エタノール水溶液であることを特徴とする、請求項5に記載の抗疲労用組成物。
【請求項7】
前記緑茶タンパク質が、前記1次エキスの残渣を熱水で抽出した2次エキスの残渣から得られることを特徴とする、請求項4に記載の抗疲労用組成物。
【請求項8】
前記緑茶ペプチド組成物が、筋細胞における疲労物質の生成を抑制することを特徴とする、請求項1に記載の抗疲労用組成物。
【請求項9】
前記疲労物質が、乳酸であることを特徴とする、請求項8に記載の抗疲労用組成物。
【請求項10】
前記緑茶ペプチド組成物が、以下の特性のうち少なくとも1つを示すことを特徴とする、請求項8に記載の抗疲労用組成物:
i)LDHA及びPDKの少なくとも1つの発現を阻害する特性、及び
ii)PDHの発現を増加させる特性。
【請求項11】
前記緑茶ペプチド組成物が、筋細胞における脂肪酸化を促進することを特徴とする、請求項1に記載の抗疲労用組成物。
【請求項12】
前記緑茶ペプチド組成物が、ACO、CPT、mCAD、及びPPARαのうち少なくとも1つの発現を増加させることを特徴とする、請求項11に記載の抗疲労用組成物。
【請求項13】
前記緑茶ペプチド組成物が、筋細胞におけるミトコンドリア生合成を促進することを特徴とする、請求項1に記載の抗疲労用組成物。
【請求項14】
前記緑茶ペプチド組成物が、TFAM、NDUFA9、COX4、及びATP5aのうち少なくとも1つの発現を増加させることを特徴とする、請求項13に記載の抗疲労用組成物。
【請求項15】
前記緑茶ペプチド組成物が、筋細胞におけるATP生合成を促進することを特徴とする、請求項13に記載の抗疲労用組成物。
【請求項16】
前記緑茶ペプチド組成物が、組成物の総重量に対して1~50重量%含まれる、請求項1に記載の抗疲労用組成物。
【請求項17】
前記緑茶ペプチド組成物が、1~400mg/kg/日の量で投与される、請求項1に記載の抗疲労用組成物。
【請求項18】
前記組成物が、薬学組成物または保健機能食品組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の抗疲労用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、緑茶ペプチド組成物を含む抗疲労用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
茶木は、カメリア(Camellia)属に分類される82種のうちの1つで、現在アジアを中心にアフリカ、南アメリカ、オセアニアなどの約50カ国で栽培されている。茶の種類は、茶葉の加工方法により大きく不発酵茶、半発酵茶、発酵緑茶、後発酵茶に区分され、その中で不発酵茶は、茶木に含まれるポリフェノールオキシダーゼを熱処理により失活させたもので、他の茶に比べてフラボノール(flavonol)、フラバノン(flavanone)、フラボノイド(flavonoid)などのポリフェノール(Polyphenol)類が多く含まれており、強い抗酸化力を示し、それらの物質は、茶の乾燥重量の約30%を占める。
【0003】
緑茶に含まれる様々な成分の薬理的なメカニズムが徐々に解明されるにつれて、一般人にもその価値が認識されつつあるが、特に、緑茶の主成分であるポリフェノールによる抗酸化作用、抗癌作用、血中コレステロール低下作用、抗老化作用、重金属解毒作用、虫歯予防及び口臭除去作用などの効果が実証されたことから、大きな注目を集めている。
【0004】
ペプチドは、植物に含まれる物質の中でも酸化に対して安定であり、構造が単純であるので高い皮膚効果が期待される物質である。植物におけるペプチドは、シグナル伝達物質として作用し、特に植物の成長と分化、外部の刺激による反応に関与することが知られている。
【0005】
一方、疲労は、精神的なものと肉体的なものに分けられ、一般的に、肉体的疲労は、筋収縮活動に必要な力を十分に発揮または維持できない状態か、過労またはエネルギー枯渇により、身体的または精神的能力が休息では回復できないほど低下した状態、あるいは作業効率や運動パフォーマンスが低下した状態として定義され、気だるさ、疲れ、疲労感、眠気、集中力の低下、頭痛、筋肉痛などの症状が現れる。
【0006】
肉体的疲労の原因は、体内に貯蔵されているエネルギー源の欠乏または利用不能、代謝作用による疲労物質の蓄積、体内の恒常性失調などに区分されるが、1つの要因で生じるのではなく、多くの要因の相乗作用によって引き起こされる特徴がある。連続運動は疲労を引き起こし、それは栄養補助食品の摂取によって抑制することができ、疲労関連因子(fatigue relevance factors)を抑制する。運動中、多くの組織は、血液から乳酸を除去することを助けるが、高強度の運動では、組織が除去するよりも高い割合で乳酸が生成されるため、それが疲労の原因となる。血液に蓄積された乳酸は、疲労関連因子(fatigue relevance factors)である。
【0007】
そのような肉体的疲労の回復には、十分なエネルギー源の供給と休息、体内疲労物質の生成抑制及び除去などが求められるが、忙しい現代社会では、実際に十分な栄養摂取と休息が取られていない。よって、疲労を回復させたり、抑制したりすることができる機能性物質の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1747200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、緑茶タンパク質と特定の植物性乳酸菌との培養により分離精製された新規なアミノ酸配列を有する緑茶ペプチドを有効成分として含むことで、優れた抗疲労効果を示す組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の一実施例は、緑茶ペプチド組成物を有効成分として含み、前記緑茶ペプチド組成物は、配列番号1~7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1種の緑茶ペプチドを含む、抗疲労用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る緑茶ペプチド組成物は、優れた筋細胞における疲労物質の生成抑制、筋細胞におけるATP生成増加、及び筋細胞における脂肪酸化促進効果によって抗疲労効力を示し、様々な保健機能食品組成物、薬学組成物に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例に係る緑茶ペプチドの調製工程を示す概略図である。
図2A】実験例1による緑茶ペプチド(GTP)組成物の各濃度において、筋細胞における疲労物質の生成抑制効果を確認した結果図である(***P<0.001 vs.CoCl**P<0.01 vs.CoClP<0.05 vs.CoCl)。
図2B】実験例1による緑茶ペプチド(GTP)組成物の各濃度において、筋細胞における疲労物質の生成抑制効果を確認した結果図である(***P<0.001 vs.CoCl**P<0.01 vs.CoClP<0.05 vs.CoCl)。
図2C】実験例1による緑茶ペプチド(GTP)組成物の各濃度において、筋細胞における疲労物質の生成抑制効果を確認した結果図である(***P<0.001 vs.CoCl**P<0.01 vs.CoClP<0.05 vs.CoCl)。
図3A】実験例1による緑茶ペプチド(GTP)組成物の各濃度において、LDHA活性抑制及び筋細胞における乳酸蓄積阻害効果を確認した結果図である(***P<0.001 vs.CoCl**P<0.01 vs.CoClP<0.05 vs.CoCl)。
図3B】実験例1による緑茶ペプチド(GTP)組成物の各濃度において、LDHA活性抑制及び筋細胞における乳酸蓄積阻害効果を確認した結果図である(***P<0.001 vs.CoCl**P<0.01 vs.CoClP<0.05 vs.CoCl)。
図4】実験例2による緑茶ペプチド(GTP)組成物の各濃度において、筋細胞におけるATP生成増加効果を確認した結果図である(***P<0.001 vs.(-)、**P<0.01 vs.(-))。
図5】実験例2による緑茶ペプチド(GTP)組成物の各濃度において、筋細胞におけるミトコンドリア増加効果を確認した結果図である(***P<0.001 vs.(-)、P<0.05 vs.(-))。
図6A】実験例2による緑茶ペプチド(GTP)組成物の各濃度において、筋細胞におけるミトコンドリア電子伝達系関与遺伝子の発現増加効果を確認した結果図である(***P<0.001vs.(-)、**P<0.01 vs.(-))。
図6B】実験例2による緑茶ペプチド(GTP)組成物の各濃度において、筋細胞におけるミトコンドリア電子伝達系関与遺伝子の発現増加効果を確認した結果図である(***P<0.001vs.(-)、**P<0.01 vs.(-))。
図6C】実験例2による緑茶ペプチド(GTP)組成物の各濃度において、筋細胞におけるミトコンドリア電子伝達系関与遺伝子の発現増加効果を確認した結果図である(***P<0.001vs.(-)、**P<0.01 vs.(-))。
図6D】実験例2による緑茶ペプチド(GTP)組成物の各濃度において、筋細胞におけるミトコンドリア電子伝達系関与遺伝子の発現増加効果を確認した結果図である(***P<0.001vs.(-)、**P<0.01 vs.(-))。
図7A】実験例3による緑茶ペプチド(GTP)組成物の各濃度において、筋細胞における脂肪酸化促進効果を確認した結果図である(***P<0.001 vs.(-)、**P<0.01 vs(-)、P<0.05 vs。(-))。
図7B】実験例3による緑茶ペプチド(GTP)組成物の各濃度において、筋細胞における脂肪酸化促進効果を確認した結果図である(***P<0.001 vs.(-)、**P<0.01 vs(-)、P<0.05 vs。(-))。
図7C】実験例3による緑茶ペプチド(GTP)組成物の各濃度において、筋細胞における脂肪酸化促進効果を確認した結果図である(***P<0.001 vs.(-)、**P<0.01 vs(-)、P<0.05 vs。(-))。
図7D】実験例3による緑茶ペプチド(GTP)組成物の各濃度において、筋細胞における脂肪酸化促進効果を確認した結果図である(***P<0.001 vs.(-)、**P<0.01 vs(-)、P<0.05 vs。(-))。
図8】実験例4による加工方法による緑茶ペプチドの筋細胞における乳酸蓄積阻害効果を比較した結果図である(***P<0.001 vs.CoCl**P<0.01 vs.CoClP<0.05 vs.CoCl)。
図9】ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)と、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)との相同性を比較した結果図である。
図10A】ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)及びラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)それぞれによる緑茶タンパク質分解物の分子量分析結果を示す図である。
図10B】ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)及びラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)それぞれによる緑茶タンパク質分解物の分子量分析結果を示す図である。
図11】実験例5による緑茶ペプチド(GTP)組成物の各分子量画分における乳酸蓄積阻害効果を比較した結果図である(***P<0.001 vs.CoCl**P<0.01 vs.CoClP<0.05 vs.CoCl)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本明細書において、「緑茶(茶;カメリアシネンシス;Camellia Sinensis)」は、チャノキ科に属する常緑広葉低木であり、その葉を乾燥した茶は、多方面で活用されている。特に、抗酸化作用、抗癌作用、心血管系において血中脂質減少作用、血液循環促進作用を示すことが知られている。前記緑茶は、茶葉、花、茎、果実、根、茎、及び根の芯からなる群から選択される少なくとも1つを含み、好ましくは葉であってもよい。
【0015】
本明細書において、「有効成分」とは、単独で所望の活性を示すか、あるいはそれ自体は活性のない担体と共に活性を示すことができる成分を意味する。
【0016】
本明細書において、「抗疲労」とは、肉体的疲労の蓄積を防止または遅延させることで、疲労を予防または改善するか、あるいは肉体的疲労を軽減、回復または除去することを意味する。肉体的疲労の例としては、筋収縮活動に必要な力を十分に発揮または維持できない状態、過労またはエネルギー枯渇により、身体的または精神的能力が休息では回復できないほど低下した状態、特別な原因疾患なしに臨床的に説明できない疲労が6ヶ月以上継続的または繰り返し現れ、日常生活に重大な影響を及ぼす状態である慢性疲労症候群(Chronic fatigue syndrome;CFS)、作業能率や運動パフォーマンスが低下した状態が挙げられ、認知能力の低下、睡眠障害、気だるさ、疲れ、疲労感、眠気、集中力の低下、頭痛、筋膜疼痛症候群、筋肉の特定の部位の圧痛(筋肉痛)などの症状が現れることがある。
【0017】
具体的には、疲労は、筋肉内のホスホクレアチニンの欠乏、筋肉内のプロトンの蓄積(酸血症)、筋肉内のグルカゴンの欠乏、血液中のグルコース濃度の低下、血漿中の特定アミノ酸比率の増加などにより発生し、末梢、中枢の疲労に影響を与える。中枢神経疲労の場合、骨格筋の活動が低下することを意味し、末梢疲労は、神経筋接合部を変化させる。
【0018】
本発明は、一態様において、緑茶ペプチド組成物を有効成分として含み、前記緑茶ペプチド組成物は、配列番号1~7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1種の緑茶ペプチドを含む、抗疲労用組成物に関する。
【0019】
本発明は、別の様態において、配列番号1~7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1種の緑茶ペプチドを含む、緑茶ペプチド組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、疲労の防止、改善、軽減、回復または除去方法に関する。
【0020】
本発明はさらに別の態様において、抗疲労用組成物を製造するための、配列番号1~7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1種の緑茶ペプチドを含む、緑茶ペプチド組成物の用途に関する。
【0021】
一実施例において、前記緑茶ペプチド組成物は、配列番号1~7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1種の緑茶ペプチドを含んでもよい。具体的に、前記緑茶ペプチドは、AYKRRKGKFA(配列番号1)、FFFFFFFFFFFFFFFFYL(配列番号2)、ISKIWNSEVPETEVKNEAESP(配列番号3)、PFFCEKMMETN(配列番号4)、RFLHERMAYYH(配列番号5)、RNLNRLQRLLSMKQEYSPRNHLGSRWREY(配列番号6)及びTTSSRKKEKPRRFWNNHEEVFLITTK(配列番号7)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0022】
一実施例において、前記緑茶ペプチド組成物の60%(w/w)以上、65%(w/w)以上、70%(w/w)以上、75%(w/w)以上、80%(w/w)以上、85%(w/w)以上、90%(w/w)以上、または95%(w/w)以上が前記1種以上の緑茶ペプチドからなってもよい。
【0023】
一実施例において、前記緑茶ペプチド組成物が、緑茶タンパク質を植物性乳酸菌で発酵させて得られてもよい。
【0024】
一実施例において、前記発酵は、pH5~8の条件で行われてもよい。具体的には、前記発酵は、pH5以上、pH5.2以上、pH5.4以上、pH5.6以上、pH5.8以上、pH6以上、pH6.2以上、pH6.4以上、pH6.6以上、pH6.8以上、pH7以上、pH7.2以上、pH7.4以上、pH7.6以上またはpH7.8以上で行われてもよく、また、前記発酵は、pH8以下、pH7.8以下、pH7.6以下、pH7.4以下、pH7.2以下、pH7以下、pH6.8以下、pH6.6以下、pH6.4以下、pH6.2以下、pH6以下、pH5.8以下、pH5.6以下、pH5.4以下またはpH5.2以下で行われてもよい。好ましくは、前記発酵は、pH6.8で行われてもよい。
【0025】
一実施例において、前記発酵は、25~45℃で行われてもよい。具体的には、前記発酵は、25℃以上、27℃以上、29℃以上、31℃以上、33℃以上、35℃以上、37℃以上、39℃以上、41℃以上または43℃以上で行われてもよく、また、前記発酵は、45℃以下、43℃以下、41℃以下、39℃以下、37℃以下、35℃以下、33℃以下、31℃以下、29℃以下、または27℃以下で行われてもよい。好ましくは、前記発酵は、37℃で行われてもよい。
【0026】
一実施例において、前記発酵は、24~72時間にかけて行われてもよい。具体的には、前記発酵は、24時間以上、26時間以上、28時間以上、30時間以上、32時間以上、34時間以上、36時間以上、38時間以上、40時間以上、42時間以上、44時間以上、46時間以上、48時間以上、50時間以上、52時間以上、54時間以上、56時間以上、58時間以上、60時間以上、62時間以上、64時間以上、66時間以上、68時間以上、または70時間以上にかけて行われてもよく、また、前記発酵は、72時間以下、70時間以下、68時間以下、66時間以下、64時間以下、62時間以下、60時間以下、58時間以下、56時間以下、54時間以下、52時間以下、50時間以下、48時間以下、46時間以下、44時間以下、42時間以下、40時間以下、38時間以下、36時間以下、34時間以下、32時間以下、30時間以下、28時間以下または26時間以下にかけて行われてもよい。好ましくは、前記発酵は、48時間にかけて行われてもよい。
【0027】
一実施例において、前記植物性乳酸菌は、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)であってもよい。より具体的には、前記植物性乳酸菌は、ラクチプランチバチルス・プランタルム APsulloc 331261(Lactiplantibacillus plantarum APsulloc 331261)(韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms)受託番号KCCM11179P、受託日2011年3月28日)である。
【0028】
前記一実施例において、前記緑茶タンパク質は、緑茶を無水または含水C1~C6の低級アルコールで抽出された1次エキス(抽出物)の残渣から得られてもよい。
【0029】
一実施例において、前記含水C1~C6の低級アルコール中のアルコールの濃度は、20~80%(v/v)であってもよい。具体的には、前記含水C1~C6の低級アルコール中のアルコール濃度は、20%(v/v)以上、22%(v/v)以上、24%(v/v)以上、26%(v/v)以上、28%(v/v)以上、30%(v/v)以上、32%(v/v)以上、34%(v/v)以上、36%(v/v)以上、38%(v/v)以上/v)以上、40%(v/v)以上、42%(v/v)以上、44%(v/v)以上、46%(v/v)以上、48%(v/v)以上、50%(v/v)以上、52%(v/v)以上、54%(v/v)以上、56%(v/v)以上、58%(v/v)以上、60%(v/v)以上 v)以上、62%(v/v)以上、64%(v/v)以上、66%(v/v)以上、68%(v/v)以上、70%(v/v)以上、72 %(v/v)以上、74%(v/v)以上、76%(v/v)以上または78%(v/v)以上であってもよく、また、80%(v/v)以下、78%(v/v)以下、76%(v/v)以下、74%(v/v)以下、72%(v/v)以下、70%(v/v)以下、68%(v/v)以下、66%(v/v)以下、64%(v/v)以下、62%(v/v)以下、60%(v/v)以下、58%(v/v)以下、56%(v/v)以下、54%(v/v)以下、52%(v/v)以下、50%(v/v)以下、48%(v/v)以下、46%(v/v)以下、44%(v/v)以下、42%(v/v)以下、40%(v/v)以下、38%(v/v)以下、36%(v/v)以下、34%(v)/v)以下、32%(v/v)以下、30%(v/v)以下、28%(v/v)以下、26%(v/v)以下、24%(v/v)以下または22%(v/v)以下であってもよい。
【0030】
一実施例において、前記含水C1~C6の低級アルコールは、20~80%(v/v)エタノール水溶液であってもよい。具体的には、前記含水C1~C6の低級アルコールは、20%(v/v)エタノール水溶液、25%(v/v)エタノール水溶液、30%(v/v)エタノール水溶液、35%(v/v)エタノール水溶液、40%(v/v)エタノール水溶液、41%(v/v)エタノール水溶液、42%(v/v)エタノール水溶液、43%(v/v)エタノール水溶液、44%(v/v)エタノール水溶液、45%(v/v)エタノール水溶液、46%(v/v)エタノール水溶液、47%(v/v)エタノール水溶液、48%(v/v)エタノール水溶液、49%(v/v)エタノール水溶液、50%(v/v)エタノール水溶液、51%(v/v)エタノール水溶液、52%(v/v)エタノール水溶液、53%(v/v)エタノール水溶液、54%(v/v)エタノール水溶液、55%(v/v)エタノール水溶液、56%(v/v)エタノール水溶液、57%(v/v)エタノール水溶液、58%(v/v)エタノール水溶液、59%(v/v)エタノール水溶液、60%(v/v)エタノール水溶液、65%(v/v)エタノール水溶液、70%(v/v)エタノール水溶液、75%(v/v)エタノール水溶液または80%(v/v)エタノール水溶液であってもよい。
【0031】
一実施例において、前記緑茶タンパク質は、前記1次エキスの残渣を熱水で抽出した2次エキスの残渣から得られてもよい。
【0032】
一実施例において、緑茶タンパク質は、2次エキスの残渣からアルカリ抽出、ろ過及び酸沈殿の過程を経て得られてもよい。
【0033】
図1に示されるように、本発明の一実施例に係る緑茶ペプチド組成物は、緑茶を酒精で1次抽出し、その後、残った残渣を熱水で2次抽出し、2次抽出後に残った残渣をアルカリで抽出、ろ過及び酸沈殿を経て得られた緑茶タンパク質を乳酸菌培養することで得られてもよい。
【0034】
一実施例において、前記緑茶ペプチド組成物は、筋細胞における疲労物質の生成を抑制してもよい。
【0035】
一実施例において、前記疲労物質は、乳酸であってもよい。
【0036】
一実施例において、前記緑茶ペプチド組成物は、LDHA(乳酸脱水酵素A;Lactate dehydrogenase A)及びPDK(pyruvate dehydrogenase kinase)のうち少なくとも1つの発現を減少させてもよい。
【0037】
一実施例において、前記緑茶ペプチド組成物は、PDH(pyruvate dehydrogenase)の発現を増加させてもよい。
【0038】
具体的には、前記緑茶ペプチド組成物は、LDHA及びPDKのうち少なくとも1つの発現を減少させることによって、筋細胞における乳酸の蓄積を阻害してもよい。さらに、前記緑茶ペプチド組成物は、PDHの発現を増加させることによって、筋細胞における乳酸の蓄積を阻害してもよい。
【0039】
一実施例において、前記緑茶ペプチド組成物は、筋細胞における脂肪酸化を促進してもよい。
【0040】
一実施例において、前記緑茶ペプチド組成物は、ACO(Acyl-CoA oxidase)、CPT(Carnitine-palmitoyl transferase)、mCAD(Medium-chain acyl-CoA dehydrogenase)、及びPPARα(Peroxisome proliferator-activated receptor alpha)のうち少なくとも1つの発現を増加させてもよい。
【0041】
具体的には、緑茶ペプチド組成物は、ACO、CPT、mCAD、及びPPARαのうち少なくとも1つの発現を増加させることによって、筋細胞における脂肪酸化を促進してもよい。
【0042】
一実施例において、前記緑茶ペプチド組成物は、筋細胞におけるミトコンドリア生合成を促進してもよい。
【0043】
一実施例において、前記緑茶ペプチド組成物は、TFAM(Mitochondrial transcription factor A)、NDUFA9(NADH dehydrogenase[ubiquinone]1 alpha subcomplex subunit9)、COX4(Cytochrome coxidase subunit4)、及びATP5a(Adenosine triphosphate synthase, mitochondrial F1 complex、subunit alpha)のうち少なくとも1つの発現を増加させてもよい。
【0044】
具体的には、前記緑茶ペプチド組成物は、TFAM、NDUFA9、COX4、ATP5a、及びUCP2のうち少なくとも1つの発現を増加させることによって、筋細胞におけるミトコンドリア生合成を促進してもよい。
【0045】
一実施例において、前記緑茶ペプチド組成物は、筋細胞におけるATP生合成を促進してもよい。
【0046】
具体的には、前記緑茶ペプチド組成物は、筋細胞におけるミトコンドリアの増加によって、ATP合成を促進してもよい。
【0047】
一実施例において、前記緑茶ペプチド組成物は、抗疲労用組成物の総重量に対して1~50重量%含まれてもよい。具体的には、前記緑茶ペプチド組成物は、抗疲労用組成物の総重量に対して1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、7重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、14重量%以上、16重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、22重量%以上、24重量%以上、26重量%以上、28重量%以上、30重量%以上、32重量%以上、34重量%以上、36重量%以上、38重量%以上、40重量%以上、42重量%以上、44重量%以上、46重量%以上、または48重量%以上の量で含まれてもよく、また、緑茶ペプチド組成物は、抗疲労用組成物の総重量に対して50重量%以下、48重量%以下、46重量%以下、44重量%以下、42重量%以下、40重量%以下、38重量%以下、36重量%以下、34重量%以下、32重量%以下、30重量%以下、28重量%以下、26重量%以下、24重量%以下、22重量%以下、20重量%以下、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、または3重量%以下の量で含まれてもよい。
【0048】
一実施例において、前記緑茶ペプチド組成物は、1~400mg/kg/日の量で投与されてもよい。具体的には、前記緑茶ペプチド組成物は、1mg/kg/日以上、5mg/kg/日以上、10mg/kg/日以上、20mg/kg/日以上、30mg/kg/日以上、40mg/kg/日以上、50mg/kg/日以上、60mg/kg/日以上、70mg/kg/日以上、80mg/kg/日以上、90mg/kg/日以上、100mg/kg/日以上、150mg/kg/日以上、200mg/kg/日以上、250mg/kg/日以上、300mg/kg/日以上、または350mg/kg/日以上の量で投与されてもよく、また、前記緑茶ペプチド組成物は、400mg/kg/日以下、350mg/kg/日以下、300mg/kg/日以下、250mg/kg/日以下、200mg/kg/日以下、150mg/kg/日以下、100mg/kg/日以下、90mg/kg/日以下、80mg/kg/日以下、70mg/kg/日以下、60mg/kg/日以下、50mg/kg/日以下、40mg/kg/日以下、30mg/kg/日以下、20mg/kg/日以下、10mg/kg/日以下、または5mg/kg/日以下の量で投与されてもよい。
【0049】
一実施例において、前記抗疲労用組成物は、薬学組成物または食品組成物であってもよい。より具体的には、前記組成物は、疲労の予防、改善、緩和、回復または除去用の薬学組成物または抗疲労用保健機能食品組成物であってもよい。
【0050】
前記食品組成物の剤形は特に限定されないが、例えば、錠剤、顆粒剤、丸剤、粉末剤、ドリンク剤などの液剤、カラメル、ゲル、バー、ティーバッグなどに剤形化されてもよい。各剤形の食品組成物は、有効成分に加えて当該分野で通常用いられる成分を、剤形または使用目的に応じて当業界の当業者が困難なく適宜選定して配合することができ、他の原料と同時に適用すると、相乗効果が起こり得る。
【0051】
前記組成物は、単なる摂取、飲用、注射投与、スプレー投与またはスクイーズ投与などの様々な方法で投与されてもよい。
【0052】
本発明の一態様に係る食品組成物は、例えば、チューインガム、カラメル製品、キャンディー類、氷果類、菓子類などの各種食品類、清涼飲料、ミネラルウォーター、アルコール飲料などの飲料製品、ビタミンやミネラルなどを含む保健機能食品製品であってもよい。
【0053】
本発明の一態様に係る食品組成物は、その有効成分に加えて食品添加物を含んでもよい。食品添加物は、一般的に食品を製造、加工、または保存する際に食品に添加されて混合または浸潤する物質として理解することができるが、食品と共に毎日、そして長期間にわたって摂取されるものであるため、その安全性が確保されなければならない。食品の製造・流通を規律する各国法律(韓国では「食品衛生法」である)による食品添加物公典には、安全性の確保された食品添加物が成分面または機能面で限定的に規定されている。韓国食品添加物公典(食品医薬品安全処告示「食品添加物基準及び規格」)では、食品添加物が成分面で化学的合成品、天然添加物及び混合製剤類に区分され規定されているが、それらの食品添加物は、機能面においては甘味剤、風味剤、保存剤、乳化剤、酸味料、増粘剤などに分類される。
【0054】
甘味剤は、食品に適切な甘味を付与するために用いられるものであり、天然のものまたは合成されたもののいずれも本発明の一態様に係る食品組成物に使用することができる。好ましくは、天然甘味剤を用いる場合であるが、天然甘味剤としては、トウモロコシシロップ固形物、蜂蜜、スクロース、フルクトース、ラクトース、マルトースなどの糖甘味剤が挙げられる。
【0055】
風味剤は、味や香りを良くするために用いられるもので、天然のものと合成されたものの両方を用いることができる。好ましくは、天然のものを用いる場合である。天然のものを用いると、風味以外に栄養強化といった目的にも役立つ。天然風味剤としては、リンゴ、レモン、柑橘類、ブドウ、イチゴ、モモなどから得られたものであってもよく、緑茶葉、アマドコロ、竹の葉、シナモン、菊の葉、ジャスミンなどから得られたものであってもよい。また、高麗人参(紅参)、タケノコ、アロエベラ、銀杏などから得られたものを用いてもよい。天然風味剤は、液相の濃縮物または固形相のエキスであってもよい。場合によっては合成風味剤を用いてもよく、合成風味剤としては、エステル、アルコール、アルデヒド、テルペンなどを用いてもよい。
【0056】
保存剤としては、ソルビン酸カルシウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)などを用いてもよく、また乳化剤としては、アカシアガム、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ペクチンなどを用いてもよく、酸味料としては、鉛酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、グルコン酸、酒石酸、アスコルビン酸、酢酸、リン酸などを用いてもよい。酸味料は、味を高める目的に加えて、微生物の増殖を抑制する目的で、食品組成物が適正酸度となるように添加してもよい。増粘剤としては、懸濁化実現剤、沈降剤、ゲル形成剤、膨化剤などを用いてもよい。
【0057】
本発明の一態様に係る食品組成物は、前述の食品添加物に加えて、機能性と栄養性を補充・補強するために、当業界にて公知であり、食品添加物として安定性が確保された生理活性物質やミネラル類を含んでもよい。
【0058】
そのような生理活性物質としては、緑茶などに含まれるカテキン類、ビタミンB1、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB12などのビタミン類、トコフェロール、ジベンゾイルチアミンなどが挙げられ、ミネラル類としては、クエン酸カルシウムなどのカルシウム製剤、ステアリン酸マグネシウムなどのマグネシウム製剤、クエン酸鉄などの鉄製剤、塩化クロム、ヨウ素カリウム、セレニウム、ゲルマニウム、バナジウム、亜鉛などが挙げられる。
【0059】
本発明の一態様に係る食品組成物には、前述の食品添加物が製品の種類に応じて、その添加目的を達成することができる量で含まれてもよい。
【0060】
本発明の一態様に係る食品組成物に含まれ得る他の食品添加物に関しては、各国の食品公典または食品添加物公典を参照してもよい。
【0061】
本発明の一態様に係る前記薬学組成物は、有効成分に加えて薬学的に許容される担体を含む、当技術分野で公知の通常の方法で、投与経路に応じて経口用剤形または非経口用剤形に製造されてもよい。ここで投与経路は、局所経路、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、及び粘膜組織を介した直接吸収を含む任意の適切な経路であってもよく、少なくとも2つの経路を組み合わせて用いてもよい。少なくとも2つの経路の組み合わせの例は、投与経路に応じた少なくとも2つの剤形の薬物が組み合わせられた場合であり、例えば、いずれかの薬物を静脈内経路で1次的に投与し、他の薬物を局所経路で2次的に投与する場合である。
【0062】
薬学的に許容される担体は、投与経路または剤形によって当業界に周知であり、具体的には「大韓民国薬典」を含む各国の薬典を参照してもよい。
【0063】
本発明の一態様に係る薬学組成物が経口剤形に調整される場合、適切な担体と共に当技術分野で公知の方法に従って、粉末、顆粒、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、懸濁液、ウェハなどの剤形に製造されてもよい。そのとき、好適な担体の例としては、ラクトース、グルコース、スクロース、デキストロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトールなどの糖類、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、小麦デンプンなどのデンプン類、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース類、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、麦芽、ゼラチン、タルク、ポリオール、植物油、エタノール、グリセロールなどが挙げられる。製剤化する場合、必要に応じて適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、希釈剤などが含まれてもよい。適当な結合剤としては、デンプン、マグネシウムアルミニウムシリケート、デンプンペースト、ゼラチン、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グルコース、トウモロコシ甘味剤、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられ、潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、シリカ、タルカム、ステアリン酸、そのマグネシウム塩とカルシウム塩、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、崩壊剤としては、メチルセルロース、アガー(agar)、ベントナイト、キサンタンガム、アルギン酸またはそのナトリウム塩などが挙げられる。また希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソビトール、セルロース、グリシンなどが挙げられる。
【0064】
本発明の一態様に係る薬学組成物が非経口用剤形に調製される場合、適切な担体と共に当技術分野で公知の方法に従って、注射剤、経皮投与剤、鼻腔吸入剤及び坐剤の形態に製剤化されてもよい。注射剤として製剤化する場合、適切な担体としては、水性等張溶液または懸濁液を用いてもよく、具体的には、トリエタノールアミンを含有したPBS(phosphate buffered saline)や注射用滅菌水、5%のデキストロースなどの等張溶液などを用いてもよい。経皮投与剤として製剤化する場合、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、外用液剤、パスタ剤、リニメント剤、エアロール剤などの形態で製剤化してもよい。鼻腔吸入剤の場合、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素などの適切な推進剤を用いてエアロゾルスプレーの形態に製剤化してもよく、坐剤に製剤化する場合、その担体としては、ウィテップゾール(witepsol)、ツイン(tween)61、ポリエチレングリコール類、カカオ脂、ラウリン脂、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンステアレート類、ソルビタン脂肪酸エステル類などを用いてもよい。
【0065】
本発明の一態様に係る前記薬学組成物の適用量または投与量は、投与される対象の年齢、性別、体重、病状、及びその重症度、投与経路または処方者の判断に依存するであろう。それらの要因に基づく有効成分投与量の決定は、当技術分野の当業者の水準内に属する。
【0066】
本発明の一態様に係る抗疲労用組成物は、有効成分に加えて、抗疲労効果の上昇・補強のために、または血圧調節活性などの類似活性の付加による服用や摂取の利便性を向上させるために、当業界で既に安全性が確保され、対応する活性を有することが知られている任意の化合物または天然エキスをさらに含んでもよい。それらの化合物またはエキスには、各国薬典(韓国では「大韓民国薬典」)、各国保健機能食品公典(韓国では食品医薬品安全処告示である「健康機能食品基準及び規格」である)などの公定書に載っている化合物またはエキス、医薬品の製造・販売を規律する各国の法律(韓国では「薬事法」である)により、品目許可を受けた化合物またはエキス、保健機能食品の製造・販売を規律する各国の法律(韓国では「健康機能食品に関する法律」である)に従って機能性の認められた化合物またはエキスが含まれる。
【0067】
例えば、韓国の「健康機能食品に関する法律」に基づき、「体脂肪減少」として機能性が認められたガルシニアカンボジアの皮エキス、共役リノレン酸(遊離脂肪酸)、共役リノレン酸(トリグリセリド)、緑茶エキス、キトサン、ラクトバチルス・ガセリBNR17(Lactobacillus gasseri BNR17)、L-カルニチン酒石酸塩、グリーンマテエキス、グリーンコーヒービンエキス、エゴマの葉エキス、大豆胚芽エキスなどの複合物、アマチャヅル葉酒精抽出粉末、ラクトフェリン(牛乳精製タンパク質)、レモンバームエキス混合粉末、マテ熱水エキス、ワカメ複合エキス(ザンシゲン)、発酵酢ザクロ複合体、プーアル茶エキス、ソモッテ(ネズミ目豆)ペプチド複合体、ワイルドマンゴー種子エキス、重鎖脂肪酸(MCFA)含有油脂、コレウス・フォルスコリエキス、キトオリゴ糖、グラチャーイ(Finger Root)抽出粉末、ハイビスカスなどの複合エキスなどと、「血圧調節」で機能性が認められたL-グルタミン酸由来GABA含有粉末、カツオブシオリゴペプチド、納豆菌培養粉末、サーモンペプチド、オリーブ葉エキス、イワシペプチド、カゼイン加水分解物、コエンザイムQ10、ブドウ種子酵素分解抽出粉末、海苔オリゴペプチドなどと、「血中中性脂肪改善」機能性が認められたDHA濃縮油脂、グロビン加水分解物、難消化性マルトデキストリン、竹葉エキス、植物油脂ジグリセリド、イワシ精製魚油、精製イカ油などと、「血糖制御」として機能性が認められたL-arabinose、nopalエキス、シナモン抽出粉末、グアバ葉エキス、難消化性マルトデキストリン、凍結乾燥カイコ粉末、ナガイモ酒精エキス、バナバ葉エキス、桑葉エキスなどと、「疲労改善」で機能性が認められた発酵生成アミノ酸複合物、ケンポナシ果柄エキス、紅景天エキスなどと、「抗ストレス」として機能性が認められたL-テアニン、アシュアガンダエキス、乳タンパク質加水分解物、アマチャヅル葉エキスなどと、が、そのような化合物またはエキスに対応する。
【0068】
本発明は、一実施例として以下の実施形態を提供することができる。
【0069】
第1の実施形態は、緑茶ペプチド組成物を有効成分として含み、
前記緑茶ペプチド組成物が、配列番号1~7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1種の緑茶ペプチドを含む、抗疲労用組成物を提供することができる。
【0070】
第2の実施形態は、第1の実施形態において、前記緑茶ペプチド組成物は、緑茶タンパク質を植物性乳酸菌で発酵させて得られることを特徴とする、抗疲労用組成物を提供することができる。
【0071】
第3の実施形態は、第1の実施形態及び第2の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記植物性乳酸菌は、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)である、抗疲労用組成物を提供することができる。
【0072】
第4の実施形態は、第1の実施形態ないし第3の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記緑茶タンパク質は、緑茶を無水または含水C1~C6の低級アルコールで抽出された1次エキスの残渣から得られることを特徴とする、抗疲労用組成物を提供することができる。
【0073】
第5の実施形態は、第1の実施形態ないし第4の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記含水C1~C6の低級アルコール中のアルコールの濃度は、20~80%(v/v)であることを特徴とする、抗疲労用組成物を提供することができる。
【0074】
第6の実施形態は、第1の実施形態ないし第5の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記含水C1~C6の低級アルコールは、20~80%(v/v)エタノール水溶液であることを特徴とする、抗疲労用組成物を提供することができる。
【0075】
第7の実施形態は、前記緑茶タンパク質は、前記1次エキスの残渣を熱水で抽出した2次エキスの残渣から得られることを特徴とする、請求項4に記載の抗疲労用組成物を提供することができる。
【0076】
第8の実施形態は、第1の実施形態ないし第7の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記緑茶ペプチド組成物は、筋細胞における疲労物質の生成を抑制することを特徴とする、抗疲労用組成物を提供することができる。
【0077】
第9の実施形態は、第1の実施形態ないし第8の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記疲労物質は、乳酸であることを特徴とする、抗疲労用組成物を提供することができる。
【0078】
第10の実施形態は、第1の実施形態ないし第9の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記緑茶ペプチド組成物は、以下の特性のうち少なくとも1つを示すことを特徴とする、抗疲労用組成物を提供することができる:
i)LDHA及びPDKの少なくとも1つの発現を阻害する特性、及び
ii)PDHの発現を増加させる特性。
【0079】
第11の実施形態は、第1の実施形態ないし第10の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記緑茶ペプチド組成物は、筋細胞における脂肪酸化を促進することを特徴とする、抗疲労用組成物を提供することができる。
【0080】
第12の実施形態は、第1の実施形態ないし第11の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記緑茶ペプチド組成物は、ACO、CPT、mCAD、及びPPARαのうち少なくとも1つの発現を増加させることを特徴とする、抗疲労用組成物を提供することができる。
【0081】
第13の実施形態は、第1の実施形態ないし第12の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記緑茶ペプチド組成物は、筋細胞におけるミトコンドリア生合成を促進することを特徴とする、抗疲労用組成物を提供することができる。
【0082】
第14の実施形態は、第1の実施形態ないし第13の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記緑茶ペプチド組成物は、TFAM、NDUFA9、COX4、及びATP5aのうち少なくとも1つの発現を増加させることを特徴とする、抗疲労用組成物を提供することができる。
【0083】
第15の実施形態は、第1の実施形態ないし第14の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記緑茶ペプチド組成物は、筋細胞におけるATP生合成を促進することを特徴とする、抗疲労用組成物を提供することができる。
【0084】
第16の実施形態は、第1の実施形態ないし第15の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記緑茶ペプチド組成物は、組成物の総重量に対して1~50重量%含まれることを特徴とする、抗疲労用組成物を提供することができる。
【0085】
第17の実施形態は、第1の実施形態ないし第15の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記緑茶ペプチド組成物は、1~400mg/kg/日の量で投与されることを特徴とする、抗疲労用組成物を提供することができる。
【0086】
第18の実施形態は、第1の実施形態ないし第17の実施形態のうち少なくとも1つにおいて、前記組成物は、薬学組成物または保健機能食品組成物であることを特徴とする、抗疲労用組成物を提供することができる。
【0087】
以下、実施例及び試験例を挙げて、本発明の内容をより具体的に説明する。しかしながら、そのような実施例及び試験例は、本発明の内容の理解を助けるために提示されるものに過ぎず、そのような実施例及び試験例によって本発明の権利範囲が限定されるものではなく、当業界において通常周知の変形、置換及び挿入などが行われてもよく、それらも本発明の範囲に含まれる。
【0088】
[実施例1]
緑茶ペプチド(GTP)組成物の調製
緑茶(camelia sinensis,(株)農業法人オソルロック農場)50kgを1トンの抽出タンクに入れ、50%(v/v)エタノールを15倍数で加え、次に70℃で2時間抽出(1次抽出)及びろ過してカテキン類を除去し、緑茶1次エキスの残渣を得た。得られた緑茶1次エキスの残渣固形分に15倍の割合で精製水を添加し、90℃で3時間抽出(2次抽出)及びろ過して水溶性多糖などを除去し、緑茶2次エキスの残渣を得た。得られた緑茶2次エキスの残渣固形分に10倍の割合で2%(w/w)NaOH(98%,(株)ヨンジン)水溶液を添加し、70℃で3時間抽出(アルカリ抽出)及びろ過してろ液を得た。得られたろ液を常温まで冷却し、35%(w/w)塩酸(大井化金)を添加してpHを3.5~4.5以下にした。上澄み液を除去し、沈殿物を精製水で3~7回洗浄した後、大川原制OC-16スプレードライヤー(inlet 220℃,outlet 90℃)を用いて沈殿物を噴霧乾燥することで、粗タンパク質含量が50%(w/w)以上の緑茶タンパク質を得た。緑茶タンパク質を1%(w/w)含有したラクチプランチバチルス・プランタルム APsuloc 331261(Lactiplantibacillus platarum APsuloc 331261)培地(精製水、ビタミン溶液、アミノ酸溶液、ミネラル溶液含有)を嫌気発酵槽に入れ、pH6.8及び37℃で48時間培養した後、培養液を4℃、10,000gで20分間遠心分離(Labogene 1580R(Serial No.KLG4226180220023))して上清みを得た。得られた上清みを70℃のドライオーブンで濃縮し、濃縮液を4℃、100,000gで1時間遠心分離(Hitachi centrifuge CS150NX)して上清みを得た。得られた上澄み液を膜ろ過(pore size 0.22μm)してろ液を取得し、得られたろ液を凍結乾燥することで、緑茶ペプチド組成物(Green Tea Peptide;GTP)(緑茶ペプチド含有量14%(w/w))を得た。
【0089】
一方、前記緑茶ペプチド組成物に含まれる緑茶ペプチドの配列は、以下のステップを経て分析した:
1)前記緑茶タンパク質を含有するラクチプランチバチルス・プランタルム APsulloc 331261(Lactiplantibacillus plantarum APsulloc 331261)培地を遠心分離して上清みを分離し、その後、膜ろ過及びサイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatograph)を経て低分子ペプチド区間で分画されたペプチドのみを取得するステップと、
2)1)で取得したペプチドを凍結乾燥及び脱塩(de-salting)し、その後、0.1%(w/w)ギ酸に溶解してLC-MS/MSで分析するステップと、であり、
そのとき、試料3μg(タンパク質定量基準)を対象にLC-MS/MS分析を行った。使用した機器及び分析条件は以下のとおりである。
【0090】
【表1】
【0091】
3)2)でLC-MS/MS分析により得られたスペクトルファイル(spectra file)を対象に緑茶(camelia sinensis[UniProt Proteome ID:UP000327468])及び乳酸菌(L.plantarum DSM 20174[NCBI accession:GCA_014131735.1]、L.plantarum APsulloc 331261)タンパク質配列データベースを利用してペプチド配列を探索するステップであり、
そのとき活用した分析条件は以下のとおりである。
【0092】
【表2】
【0093】
前記ステップを経て分析された本発明の一実施例に係る緑茶ペプチド配列は、以下のとおりである。
【0094】
【表3】
【0095】
[実験例1]緑茶ペプチド(GTP)組成物の濃度ごとの処理による筋細胞における疲労物質(乳酸)の生成阻害効果の確認
一般に、細胞は生存に必要なエネルギー(ATP)をミトコンドリアで生成する。様々な同化過程を経て巨大栄養素をアセチル-CoAに分解し、その後、クレブス回路とミトコンドリア電子伝達系を経て複雑ではあるが、効率的な方法でATPを生成する。細胞が休止期の状態であれば、そのような方法でATPを合成してもあまり影響がないが、激しい運動などで細胞内のATP消費量がATP生成量を凌駕すると、効率的であるものの遅い酸化的な酸化反応を利用せず、ピルビン酸から乳酸への代謝によって少量ではあるが、早くATPを生成する過程を経る。その過程によって、細胞の生存に必要なATPを非効率的であるものの迅速に補充するが、その代わりに乳酸が細胞に蓄積されてしまう。蓄積した乳酸は、疲労や筋肉痛などを誘発するため、一般的に疲労物質として認識され、実際に韓国食品医薬品安全処で制定した機能性素材の開発ガイドラインにも、疲労マーカーであり、また細胞損傷マーカーとして紹介されている。言い換えれば、細胞内乳酸の蓄積が阻害される状況は、細胞損傷なしに効率的にATPを合成できる状況であることを意味する。
【0096】
乳酸は、乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase;LHD)によってピルビン酸から生成される。本発明の一実施例に係る緑茶ペプチド組成物(GTP)が疲労物質である乳酸の生成を阻害できるかどうかを確認するために、細胞を酸素欠乏状態であると認識させ、酸化的な酸化過程を経ずにLDHを介したATP(及び乳酸)生成過程に変換するCoClを用いた。
【0097】
まず、C2C12筋細胞株(ATCC)をDMEM(Sigma Aldrich)+10%bovine calf serum(Gibco)培地で100%まで満たされるように培養し、その後、DMEM+2%horse serum(Gibco)培地でserum starvationを経て筋細胞への分化が起こるように誘導した。筋細胞の分化には約1週間程度かかり、筋芽細胞の60%以上が筋細胞に分化し、multinucleated fiberが生成したときを分化終了時点に設定した。分化した筋細胞に、実施例1による緑茶ペプチド組成物(GTP)を10、50、100μg/mLの濃度で24時間前処理し、その後、CoCl(Sigma Aldrich)100μMでさらに24時間処理した。LDHなどの発現を確認するために、TaKaRa MiniBEST Universal RNA Extraction Kit(Takara Bio)、RevertAid 1st-strand cDNA Synthesis Kit(Thermo Fisher Scientific)を順次用いてRNA抽出及びcDNA合成作業を完了した。合成されたcDNAは、CFX96 thermocycler(Bio-Rad)を用いたLDH mRNA発現の観察に用いられた。その結果を図2A図2C図3A及び図3Bに示す。
【0098】
まず、図2A図2Cに示されるように、CoClを処理する際に、乳酸を生成するLDHAの発現が増加し、逆に、ピルビン酸をアセチル-CoAに変換し、ミトコンドリアにおける電子伝達系反応によるATP生成を誘導するPDH(pyruvate dehydrogenase)の発現は減少した。また、PDHの活性を抑制するPDK(pyruvate dehydrogenase kinase)の発現が増加したが、それはCoCl処理により、細胞が酸化的な酸化反応の代わりに乳酸発酵によってATPを生成し、それによって細胞に乳酸が蓄積する状況が誘導されたと判断できる。そのような状況で、実施例1による緑茶ペプチド組成物(GTP)を前処理した群は、CoCl処理によるLDHA発現の増加、PDKの増加、及びそれによるPDHの減少効果が有意に軽減されることが確認された。
【0099】
また、図3Aに示されるように、遺伝子発現だけでなく、乳酸生成酵素の活性(Lactate Dehydrogenase Activity Assay Kit,Sigma Aldrich)も実施例1による緑茶ペプチド組成物(GTP)処理により低下することが確認された。そして、図3Bに示されるように、それによる筋細胞における乳酸蓄積(L-Lactate Assay Kit,abcam)もまた大幅に阻害されることが確認された。そのことから、本発明の一実施例に係る緑茶ペプチド組成物(GTP)は、LDHの発現及び活性を抑制し、乳酸蓄積を減少させる抗疲労効果を示すことが分かる。
【0100】
[実験例2]緑茶ペプチド(GTP)組成物の濃度ごとの処理による筋細胞におけるミトコンドリア及びATP増加の確認
実験例1の結果から、本発明の一態様に係る緑茶ペプチド組成物は、LDHを抑制することで、細胞内乳酸蓄積が阻害されることを確認し、それは、緑茶ペプチドが乳酸発酵を使用しない方法でATPを生成することを意味する。そこで、実際に本発明の一態様に係る緑茶ペプチド組成物が、筋細胞におけるATP生成を促進するかどうかを確認するために、実験例1において分化した筋細胞に実施例1による緑茶ペプチド組成物(GTP)を濃度ごと(10、50、100μg/mL)で処理し、ATP Determination Kit(Invitrogen)を用いて細胞内のATP量を測定した。その結果を図4に示す。図4に示されるように、実際に筋細胞を緑茶ペプチド組成物で処理すると、濃度依存的に細胞内のATP濃度が増加することが分かる。
【0101】
そこで、緑茶ペプチド組成物がどのようにATPを増加させるかを確認するために、細胞内のATP合成工場であるミトコンドリアの変化を観察した。実験例1において分化した筋細胞に、実施例1による緑茶ペプチド組成物を様々な濃度(10、50、100μg/mL)で処理し、その後、ミトトラッカーTM Green FM dye(Invitrogen)を用いて細胞内のミトコンドリアを蛍光染色した後、Tecan Infinite M200 Multiplate Reader(Tecan Trading AG;excitation 490nm、emission 516nm)機器を用いて定量した。その結果を図5に示す。
【0102】
図5に示されるように、本発明の一態様に係る緑茶ペプチド組成物(GTP)を処理すると、筋細胞におけるミトコンドリアの数が有意に増加することが確認された。さらに、図6A図6Dに示されるように、本発明の一態様に係る緑茶ペプチド組成物(GTP)処理により、筋細胞におけるミトコンドリア及び電子伝達系構成遺伝子(tfam、NDUFA9、COX4、ATP5a)の発現も増加することが確認された。
【0103】
それから、本発明の一態様に係る緑茶ペプチド組成物が、筋細胞におけるミトコンドリアの増加によって、ATP合成を促進することが分かる。
【0104】
[実験例3]緑茶ペプチド(GTP)組成物の筋細胞における脂肪酸化促進効果の確認
脂肪酸化が促進され、ミトコンドリア電子伝達系が活性化されると、細胞は最も効率的にATPを産生することができる。実験例2により、本発明の一態様に係る緑茶ペプチド組成物が、筋細胞におけるミトコンドリアを増加させることが確認された。さらに、緑茶ペプチド組成物が脂肪酸化も活性化できるかどうかをさらに調べるために、実験例1において分化した筋細胞に実験例2と同様に、実施例1の緑茶ペプチド組成物を様々な濃度(10、50、100μg/mL)で処理し、実験例1と同様の方法を用いて、脂肪酸酸化関連遺伝子(ACO、CPT、mCAD、PPARα)の発現を確認した。その結果を図7A図7Dに示す。
【0105】
図7A図7Dに示されるように、本発明の一態様に係る緑茶ペプチド組成物を処理すると、筋細胞における脂肪酸化関連遺伝子の発現が濃度依存的に有意に増加することが確認された。それを実験例2の結果と総合してみると、本発明の一態様に係る緑茶ペプチド組成物は、筋細胞における脂肪酸化を促進し、代謝産物がATPの合成に利用しやすいように、ミトコンドリアを増加させて細胞が多量のATPを生成するのに役立つことが分かる。
【0106】
[実験例4]異なる製造方法による緑茶ペプチド(GTP)組成物の筋細胞における乳酸蓄積阻害効果の確認
調製方法による緑茶ペプチドの抗疲労効力を比較するために、i)実施例1の緑茶ペプチド組成物の調製過程中に得られた緑茶粗タンパク質、ii)実施例1の緑茶ペプチド組成物の調製過程中に得られた緑茶タンパク質を、精製水を用いて1:40(w/v)の濃度で調製し、その後、35%(w/w)塩酸を加えてpH5に滴定してから、37℃で6時間加水分解し、4℃、10,000gで遠心分離(Labogene 1580R(Serial No.KLG4226180220023))で得られた上清み(緑茶タンパク質酸処理画分)、iii)実施例1の緑茶ペプチド組成物の調製過程で得られた緑茶タンパク質を、0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液(sodium phosphate buffer、pH8)を用いて1:40(w/v)の濃度で調製し、その後、タンパク質分解酵素のブロメライン(bromelain)を緑茶タンパク質に対して1%(w/v)加え、45℃、pH6.2で24時間加水分解した。次いで、90℃で30分間加熱し、4℃、10,000gで遠心分離(Labogene 1580R(Serial No.KLG4226180220023))により得られた上清み(緑茶タンパク質酵素処理画分)、及びiv)実施例1において、ラクチプランチバチルス・プランタルム APsulloc 331261(Lactiplantibacillus plantarum APsulloc 331261)の代わりに、動物性乳酸菌であるラクチカゼイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei KCTC 3510(ATCC菌株番号:ATCC 25302、生物資源センター(KCTC))を用いた以外は、同様の方法で調製したペプチド組成物を一緒に処理し、抗疲労効力を比較した。具体的な実験方法は、緑茶粗タンパク質、緑茶タンパク質酸処理画分、緑茶タンパク質酵素(bromelain)処理画分、動物性乳酸菌であるラクチカゼイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei;L.paracasei)発酵ペプチド組成物、実施例1による緑茶ペプチド組成物をそれぞれ100μg/mLの濃度で24時間処理したことを除いては、実験例1と同様に行った。その結果を図8に示す。
【0107】
図8の結果から、緑茶粗タンパク質及び動物性乳酸菌発酵ペプチド組成物は、有意な乳酸蓄積阻害効力を示さず、酸分解ペプチド、酵素分解ペプチドは、ごく僅かな効力を示すのに対し、本発明の一実施例に係る緑茶ペプチド組成物処理群では、最も優れた乳酸蓄積阻害活性を示すことが確認された。
【0108】
一方、図9は、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)と、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)との相同性を分析した結果図である。相同性分析は、NCBI(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)から各菌株のゲノム情報(genbank)をダウンロードし、アノテーション(annotation)された保存タンパク質(conserved protein)の遺伝情報のみを残し、残りは捨てた後、集計全体数に対する比率で計算して算出した。そのとき、POCP(percentage of conserved proteins)の計算のためにRプログラムを利用し(コードソース:https://github.com/hoelzer/pocp.git)、分析条件は、次のとおりである:
‐E値=1×e-5
‐配列相同性(Sequence identity)=0.4
‐整列長さ(Alignment length)=0.5。
【0109】
そのうち、2つのゲノムが50%以上の相同性を示す場合、同じクラスター(cluster)に分類し、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)とラクチカゼイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)は、相同性が46.84%であって、非常に似ていることが分かった。そのように、実施例1で使用したラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)と非常に類似した動物性乳酸菌であるラクチカゼイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)で発酵して得られた緑茶ペプチド組成物(PCasei)の場合には、筋細胞における乳酸蓄積阻害効力、すなわち、抗疲労効力を示さないことが確認された。故に、本発明の一実施例に係る緑茶ペプチド組成物の抗疲労効力は、植物性乳酸菌であるラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)を用いた発酵によって得られることが分かる。
【0110】
[実験例5]緑茶ペプチド(GTP)の分子量による抗疲労効果の確認
実施例1で調製した緑茶ペプチド組成物から分離・精製したペプチドの配列分析の結果、配列番号1~7のアミノ酸配列を有するペプチドを同定した。
【0111】
図10A及び図10Bは、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)及びラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)それぞれによる緑茶タンパク質分解物の分子量分析結果を示す図である。具体的には、分子量分析は、FPLC(Faste Protein Liquid Chromatography)を用いてサイズ排除クロマトグラフィーを行い、FPLC施行装置及び緩衝液に対する具体的な条件は、以下のとおりである。
【0112】
【表4】
【0113】
図10A及び図10Bに示されるように、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)の発酵により得られた緑茶ペプチド組成物は、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)で発酵した緑茶ペプチド(PCasei)とは異なり、ほとんどが10kDa以下の低分子ペプチドを含むことが確認された。
【0114】
そこで、実施例1で調製された緑茶ペプチド組成物を、分子量10kDa基準で、dialysis kit(Sigma Aldrich)を用いて低分子画分及び高分子画分に分離し、各試料を表4に記載の濃度で処理し、実験例1及び4と同様の方法で、各試料の筋細胞における乳酸蓄積阻害効力を比較した。その結果を図11に示す。
【0115】
図11に示されるように、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)の発酵によって生成された新規ペプチドを多く含む低分子画分では、優れた乳酸蓄積阻害効力を示すのに対し、新規ペプチドを含まない高分子画分では、乳酸蓄積阻害効力が現れていないことが確認された。故に、本発明の一実施例に係る緑茶ペプチド組成物の抗疲労効力は、発酵乳酸菌であるラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)によって分解された新規ペプチドによることが分かる。
【0116】
[受託番号]
寄託機関名:韓国微生物保存センター(国外)
受託番号:KCCM11179P
受託日:2011年3月28日
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10A
図10B
図11
【配列表】
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