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特開2024-83246ウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンの分析方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083246
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンの分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20240613BHJP
   G01N 30/95 20060101ALI20240613BHJP
   G01N 33/02 20060101ALN20240613BHJP
   G01N 30/94 20060101ALN20240613BHJP
【FI】
G01N30/88 M
G01N30/88 E
G01N30/95 A
G01N33/02
G01N30/94
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183954
(22)【出願日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2022197091
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古川 茶勲
(57)【要約】
【課題】
薄層クロマトグラフィーを利用して、12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型とオレアナン型五環性トリテルペンを含む試料中におけるこれら成分を同時に定性分析できる新規な方法を提供するものである。
【解決手段】
下記(1)~(2)の工程を含む、薄層クロマトグラフィーを利用した12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンの分析方法:
(1)12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型の5環性トリテルペンを含む試料を昇華ヨウ素と反応させて、前記ウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンの誘導体を生成すること、
(2)前記誘導体の薄層クロマトグラムを得ること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(2)の工程を含む、薄層クロマトグラフィーを利用した12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンの分析方法:
(1)12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型の5環性トリテルペンを含む試料を昇華ヨウ素と反応させて、前記ウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンの誘導体を生成すること、
(2)前記誘導体の薄層クロマトグラムを得ること。
【請求項2】
12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンが、ウルソール酸、オレアノール酸、コロソリン酸、マスリン酸、α-アミリン、β-アミリン、ウルソン酸、オレアノン酸、ウバオール及びエリスロジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及びオレアナン型五環性トリテルペンが、下記(a)~(e)からなる群から選択される少なくとも一組の五環性トリテルペンである、請求項1に記載の分析方法。
(a)ウルソール酸とオレアノール酸
(b)コロソリン酸とマスリン酸
(c)α-アミリンとβ-アミリン
(d)ウルソン酸とオレアノン酸
(e)ウバオールとエリスロジオール
【請求項4】
試料が天然物である、請求項1~3のいずれかに記載の分析方法。
【請求項5】
試料がウルソール酸及び/又はオレアノール酸を含む天然物であって、前記天然物が、ホーリーバジル、ローズマリー、シソ、リンゴ、ネズミモチ、バジル、セージ、レモンバーム、ラベンダー、オレガノ、ペパーミント、スペアミント、タイム、ブルーベリー、ラズベリー、ビルベリー、オリーブ、サンザシ、セイヨウニワトコ、レモンバーベナ、ビワ、クローブ、トチュウ、ジャスミン、マジョラム、ウツボグサ、バナバからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の分析方法。
【請求項6】
試料がコロソリン酸及び/又はマスリン酸を含む天然物であって、前記天然物が、オリーブ、バナバ、ビワ、クローブ、ネズミモチ及びリンゴからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンを分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウルサン型五環性トリテルペンにはウルソール酸やコロソリン酸などが分類され、オレアナン型五環性トリテルペンにはオレアノール酸やマスリン酸などが分類される。これら五環性トリテルペンは、植物の葉や果皮など広く天然物に含まれており、様々な生理活性を有することが報告されている。例えば、ウルソール酸とオレアノール酸は抗肥満作用、抗炎症作用、抗酸化作用、脂肪酸産生抑制作用、コロソリン酸は血糖値低下作用、マスリン酸は筋力量維持作用が報告されており、人々の健康の維持や増進につながることが期待されることから、これらを含む機能性表示食品の開発が注目されている。一方、機能性表示食品では、機能性関与成分を担保し、品質保証を行うことが重要である。
【0003】
薄層クロマトグラフィーは、複数サンプルを短時間で分離可能であり、高度な技術が不要のため、初心者でも手軽に利用することができる分析法である。低コストで手軽な分析方法のため、医薬品の純度試験や合成実験の追跡確認試験など、様々な分野で使用されている。
【0004】
今までに、ウルソール酸とオレアノール酸を分離定性分析する方法として、ヨウ素をクロロホルムに溶解させた溶液を使用した方法が報告されている(非特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Separation and determination of closely related triterpenic acids by high performance thin-layer chromatography after iodine derivatization(Magdalena Wojciak-Kosior,Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,45,337-340(2007))
【非特許文献2】Simultaneous Quantification of Bioactive Triterpene acids (Ursolic acid and Oleanolic acid) in Different Extracts of Eucalyptus globulus (L) by HPTLC Method(Arti Gupta et al.,Pharmacognosy Journal,10,179-185(2018))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1及び2の分析方法では、薄層板にスポットしたウルソール酸及び/又はオレアノール酸が誘導体化反応の過程で少なからず展開されてしまうことから、正しいRf値が測定できなかった。また、試験者間で生じる展開距離の違いによって反応効率が変化し、Rf値や誘導体生成量にばらつきが生じていた。
【0007】
さらに、ウルソール酸とオレアノール酸は、それぞれ12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型五環性トリテルペンとオレアナン型五環性トリテルペンの構造を持つ異性体同士であり、これらが試料中に含まれている場合、同時に分離し分析することは非常に難しい。同様の理由により、コロソリン酸とマスリン酸、α-アミリンとβ-アミリン、ウルソン酸とオレアノン酸、ウバオールとエリスロジオールなどのウルサン型とオレアナン型の異性体同士の分析も難しい。
【0008】
本発明は、薄層クロマトグラフィーを利用して、12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンを正確に定性分析できる新規な分析法を提供するものである。
【0009】
また、薄層クロマトグラフィーを利用して、12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型とオレアナン型五環性トリテルペンを含む試料中におけるこれら成分を同時に定性分析できる新規な方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、
[1] 下記(1)~(2)の工程を含む、薄層クロマトグラフィーを利用した12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンの分析方法:
(1)12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型の5環性トリテルペンを含む試料を昇華ヨウ素と反応させて、前記ウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンの誘導体を生成すること、
(2)前記誘導体の薄層クロマトグラムを得ること。
[2] 12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンが、ウルソール酸、オレアノール酸、コロソリン酸、マスリン酸、α―アミリン、β-アミリン、ウルソン酸、オレアノン酸、ウバオール及びエリスロジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の分析方法。
[3] 12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及びオレアナン型五環性トリテルペンが、下記(a)~(e)からなる群から選択される少なくとも一組の五環性トリテルペンである、[1]に記載の分析方法。
(a)ウルソール酸とオレアノール酸
(b)コロソリン酸とマスリン酸
(c)α-アミリンとβ-アミリン
(d)ウルソン酸とオレアノン酸
(e)ウバオールとエリスロジオール
[4] 試料が天然物である、[1]~[3]のいずれかに記載の分析方法。
[5] 試料がウルソール酸及び/又はオレアノール酸を含む天然物であって、前記天然物が、ホーリーバジル、ローズマリー、シソ、リンゴ、ネズミモチ、バジル、セージ、レモンバーム、ラベンダー、オレガノ、ペパーミント、スペアミント、タイム、ブルーベリー、ラズベリー、ビルベリー、オリーブ、サンザシ、セイヨウニワトコ、レモンバーベナ、ビワ、クローブ、トチュウ、ジャスミン、マジョラム、ウツボグサ、バナバからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]に記載の分析方法。
[6] 試料がコロソリン酸及び/又はマスリン酸を含む天然物であって、前記天然物が、オリーブ、バナバ、ビワ、クローブ、ネズミモチ及びリンゴからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の分析方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分析方法は、頑健性及び再現性に優れており、従来の薄層クロマトグラフィーでは求めることができなかった12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンのRf値の真値を求めることが可能となった。また、これらが天然物中に含まれる場合であっても分析可能であることが分かった。
【0012】
また、試料中に異性体同士となる12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型五環性トリテルペンとオレアナン型五環性トリテルペンが含まれる場合であっても、これら成分のRf値を同時に求めることが可能となった。また、これらが天然物中に含まれる場合についても同時に分析可能であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、昇華ヨウ素に暴露したウルソール酸/オレアノール酸混合物、オレアノール酸、及びウルソール酸の薄層クロマトグラフの写真である(実施例1~3)。
図2図2は、昇華ヨウ素に暴露しないウルソール酸/オレアノール酸混合物、オレアノール酸、及びウルソール酸の薄層クロマトグラフの写真である(比較例1~3)。
図3図3は、昇華ヨウ素暴露時間5分における、ウルソール酸/オレアノール酸混合物、オレアノール酸、及びウルソール酸の薄層クロマトグラフの写真である(実施例4~6)。
図4図4は、昇華ヨウ素暴露時間20分における、ウルソール酸/オレアノール酸混合物、オレアノール酸、及びウルソール酸の薄層クロマトグラフの写真である(実施例7~9)。
図5図5は、スポット量5μL、10μL、20μLにおける、ウルソール酸/オレアノール酸混合物の薄層クロマトグラフの写真である(実施例10~12)。
図6図6は、展開距離7.0cmにおける、ウルソール酸/オレアノール酸混合物、オレアノール酸、及びウルソール酸の薄層クロマトグラフの写真である(実施例13~15)。
図7図7は、分析日を変更した結果である(実施例16~18)。
図8図8は、分析者を変更した結果である(実施例19~21)。
図9図9は、昇華ヨウ素に暴露したホーリーバジルエキス、ホーリーバジル、ウルソール酸/オレアノール酸混合物、オレアノール酸、及びウルソール酸の薄層クロマトグラフの写真である(実施例22~26)。
図10図10は、昇華ヨウ素に暴露しないホーリーバジルエキス、ホーリーバジル、ウルソール酸/オレアノール酸混合物、オレアノール酸、及びウルソール酸の薄層クロマトグラフの写真である(比較例4~8)。
図11図11は、分析日を変更した結果である(実施例27~31)。
図12図12は、昇華ヨウ素に暴露したローズマリー、シソ、リンゴ、ネズミモチ、バジル、セージ、レモンバーム、ウルソール酸/オレアノール酸混合物、オレアノール酸、及びウルソール酸の薄層クロマトグラフの写真である(実施例32~41)。
図13図13は、昇華ヨウ素に暴露しないローズマリー、シソ、リンゴ、ネズミモチ、バジル、セージ、レモンバーム、ウルソール酸/オレアノール酸混合物、オレアノール酸、及びウルソール酸の薄層クロマトグラフの写真である(比較例9~18)。
図14図14は、昇華ヨウ素に暴露したラベンダー、オレガノ、ペパーミント、スペアミント、タイム、ブルーベリー、ラズベリー、ウルソール酸/オレアノール酸混合物、オレアノール酸、及びウルソール酸の薄層クロマトグラフの写真である(実施例42~51)。
図15図15は、昇華ヨウ素に暴露しないラベンダー、オレガノ、ペパーミント、スペアミント、タイム、ブルーベリー、ラズベリー、ウルソール酸/オレアノール酸混合物、オレアノール酸、及びウルソール酸の薄層クロマトグラフの写真である(比較例19~28)。
図16図16は、昇華ヨウ素に暴露したビルベリー、オリーブ、コリアンダー、サンザシ、ジャーマンカモミール、セイヨウニワトコ、レモンバーベナ、ウルソール酸/オレアノール酸混合物、オレアノール酸、及びウルソール酸の薄層クロマトグラフの写真である(実施例52~59、比較例29~30)。なお、比較例29はコリアンダー、比較例30はジャーマンカモミールである。
図17図17は、昇華ヨウ素に暴露しないビルベリー、オリーブ、コリアンダー、サンザシ、ジャーマンカモミール、セイヨウニワトコ、レモンバーベナ、ウルソール酸/オレアノール酸混合物、オレアノール酸、及びウルソール酸の薄層クロマトグラフの写真である(比較例31~40)。
図18図18は、昇華ヨウ素に暴露したビワ、クローブ、トチュウ、ジャスミン、マジョラム、ウツボグサ、バナバ、ウルソール酸/オレアノール酸混合物、オレアノール酸、及びウルソール酸の薄層クロマトグラフの写真である(実施例60~69)。
図19図19は、昇華ヨウ素に暴露しないビワ、クローブ、トチュウ、ジャスミン、マジョラム、ウツボグサ、バナバ、ウルソール酸/オレアノール酸混合物、オレアノール酸、及びウルソール酸の薄層クロマトグラフの写真である(比較例41~50)。
図20図20は、昇華ヨウ素に暴露したマスリン酸/コロソリン酸混合物、マスリン酸、及びコロソリン酸の薄層クロマトグラフの写真である(実施例70~72)。
図21図21は、昇華ヨウ素に暴露しないマスリン酸/コロソリン酸混合物、マスリン酸、及びコロソリン酸の薄層クロマトグラフの写真である(比較例51~53)。
図22図22は、昇華ヨウ素に暴露したオリーブエキス、オリーブ、バナバ、ビワ、クローブ、ネズミモチ、リンゴ、マスリン酸/コロソリン酸混合物、マスリン酸、及びコロソリン酸の薄層クロマトグラフの写真である(実施例73~82)。
図23図23は、昇華ヨウ素に暴露しないオリーブエキス、オリーブ、バナバ、ビワ、クローブ、ネズミモチ、リンゴ、マスリン酸/コロソリン酸混合物、マスリン酸、及びコロソリン酸の薄層クロマトグラフの写真である(比較例54~63)。
図24図24は、昇華ヨウ素に暴露したβ-アミリン/α-アミリン混合物、β-アミリン、及びα-アミリンの薄層クロマトグラフの写真である(実施例83~85)。
図25図25は、昇華ヨウ素に暴露しないβ-アミリン/α-アミリン混合物、β-アミリン、及びα-アミリンの薄層クロマトグラフの写真である(比較例64~66)。
図26図26は、昇華ヨウ素に暴露したオレアノン酸/ウルソン酸混合物、オレアノン酸、及びウルソン酸の薄層クロマトグラフの写真である(実施例86~88)。
図27図27は、昇華ヨウ素に暴露しないオレアノン酸/ウルソン酸混合物、オレアノン酸、及びウルソン酸の薄層クロマトグラフの写真である(比較例67~69)。
図28図28は、昇華ヨウ素に暴露したエリスロジオール/ウバオール混合物、エリスロジオール、及びウバオールの薄層クロマトグラフの写真である(実施例89~91)。
図29図29は、昇華ヨウ素に暴露しないエリスロジオール/ウバオール混合物、エリスロジオール、及びウバオールの薄層クロマトグラフの写真である(比較例70~72)。
図30図30は非特許文献1の方法において、誘導体化反応のための展開距離を短く(スポット下端まで展開)し、頑健性を確認した結果である(比較例73~75)。
図31図19は非特許文献1の方法において、誘導体化反応のための展開距離を長く(スポット上端まで展開)し、頑健性を確認した結果である(比較例76~78)。
図32図32は非特許文献1の方法において、1回目の再現性を確認した結果である(比較例79-1、参考例1-1、参考例2-1)
図33図33は非特許文献1の方法において、2回目の再現性を確認した結果である(比較例79-2、参考例1-2、参考例2-2)
図34図34は非特許文献1の方法において、3回目の再現性を確認した結果である(比較例79-3、参考例1-3、参考例2-3)
図35図35は非特許文献1の方法において、4回目の再現性を確認した結果である(比較例79-4、参考例1-4、参考例2-4)
図36図36は非特許文献1の方法において、5回目の再現性を確認した結果である(比較例79-5、参考例1-5、参考例2-5)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の薄層クロマトグラフィーを使用した12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンの分析方法は、下記(1)~(2)の工程を含む。
(1)12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンを含む試料を昇華ヨウ素と反応させて、前記ウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンの誘導体を生成すること。
(2)前記誘導体の薄層クロマトグラムを得ること。
【0015】
本発明の方法により分析される成分は、12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンである。12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型五環性トリテルペンとしては、例えばウルソール酸、コロソリン酸、α―アミリン、ウルソン酸、ウバオール等が挙げられる。また、本発明の12位,13位の炭素間に二重結合を有するオレアナン型五環性トリテルペンとしては、オレアノール酸、マスリン酸、β-アミリン、オレアノン酸、エリスロジオール等が挙げられる。
【0016】
本発明の分析方法により、これら12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型又はオレアナン型五環性トリテルペンのRf値の真値を求めることができる。
【0017】
また、本発明の分析法により、異性体となる一組の五環性トリテルペンが含まれていても、各トリテルペンのRf値の真値を求めることができる。本発明により分析可能となった一組の異性体の例としては、例えば以下の(a)~(e)のペアが挙げられる。
(a)ウルソール酸とオレアノール酸
(b)コロソリン酸とマスリン酸
(c)α-アミリンとβ-アミリン
(d)ウルソン酸とオレアノン酸
(e)ウバオールとエリスロジオール
【0018】
工程(1)では、試料中の12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型とオレアナン型五環性トリテルペンが昇華ヨウ素と反応し、この反応により、ウルサン型トリテルペンの誘導体とオレアナン型トリテルペンの誘導体が生成される。
本発明の分析方法で対象とする試料は、12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンである。また、これらを含む試料であれば特に制限はなく、天然物そのものでもよく、12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンを含む天然物を含む食品、飲料、医薬品、医薬部外品、化粧品などでもよく、12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンを配合した食品、飲料、医薬品、医薬部外品、化粧品などであってもよい。
好ましくは、12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンを含む天然物であり、さらに好ましくはホーリーバジル、ローズマリー、シソ、リンゴ、ネズミモチ、バジル、セージ、レモンバーム、ラベンダー、オレガノ、ペパーミント、スペアミント、タイム、ブルーベリー、ラズベリー、ビルベリー、オリーブ、サンザシ、セイヨウニワトコ、レモンバーベナ、ビワ、クローブ、トチュウ、ジャスミン、マジョラム、ウツボグサ、バナバである。これら天然物には、ウルソール酸及び/又はオレアノール酸が含まれる。また、オリーブ、バナバ、ビワ、クローブ、ネズミモチ、リンゴには、コロソリン酸及び/又はマスリン酸も含まれる。、
【0019】
12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンを含む試料と昇華ヨウ素との反応は、昇華ヨウ素で飽和した展開槽に、12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型及び/又はオレアナン型五環性トリテルペンを含む試料をスポットした薄層板を入れ、温度、時間などの反応条件を適宜設定することにより反応を行うことができる。
【0020】
昇華ヨウ素の作成は、展開槽にヨウ素とシリカゲルを入れることにより行うことができ、すべてのシリカゲルの色調が紫色になることで昇華ヨウ素が飽和したことを確認できる。
【0021】
工程(2)により、ウルサン型五環性トリテルペンの誘導体又はオレアナン型五環性トリテルペンの誘導体の薄層クロマトグラムを得ることができる。12位,13位の炭素間に二重結合を有するウルサン型とオレアナン型五環性トリテルペンの両方を含む試料の場合、ウルサン型五環性トリテルペンの誘導体とオレアナン型五環性トリテルペンの誘導体に分離される。ウルサン型五環性トリテルペンの誘導体又はオレアナン型五環性トリテルペンの誘導体のクロマトグラムを得る方法は、公知の展開方法で行うことができる。薄層クロマトグラフィーで使用する支持体及び担体は、通常用いられているものを使用することができる。支持体としては、例えばガラスプレートが挙げられ、担体としてはシリカゲル、酸化アルミニウム、セルロースなどが挙げられる。また、展開溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エーテル、アセトン、メタノール、エタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、水など、通常用いられる溶媒を任意の割合で混合したものを使用することができる。また、展開距離は、適宜設定することができる。また、検出法は、公知の方法で行うことができ、例えば希硫酸などの発色試液などの発色処理を行うことによって行うことができる。
【実施例0022】
以下に、実施例を詳細に説明するが、本実施例により本発明が限定されるものではない。
【0023】
1.試料の調製
試料1:オレアノール酸1mgを10mLの酢酸エチルに溶解したオレアノール酸溶液を試料1とした。
試料2:ウルソール酸1mgを10mLの酢酸エチルに溶解したウルソール酸溶液を試料2とした。
試料3:ウルソール酸及びオレアノール酸各1mgを10mLの酢酸エチルに溶解したウルソール酸/オレアノール酸混合溶液を試料3とした。
試料4:ホーリーバジルエキス(ホーリーバジルをアルコール抽出し、乾燥後、粉末化したもの)0.2gに20mLの酢酸エチルを加えて10分間振とうし、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のホーリーバジルエキス試料溶液を試料4とした。
試料5:ホーリーバジル粉末(ホーリーバジルを粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のホーリーバジル試料溶液を試料5とした。
試料6:ローズマリー粉末(ローズマリーを粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のローズマリー試料溶液を試料6とした。
試料7:シソ粉末(蘇葉を粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のシソ試料溶液を試料7とした。
試料8:リンゴ粉末(リンゴ果皮を粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のリンゴ試料溶液を試料8とした。
試料9:ネズミモチ粉末(女貞子を粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のネズミモチ試料溶液を試料9とした。
試料10:バジル粉末(バジルを粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のバジル試料溶液を試料10とした。
試料11:セージ粉末(セージを粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のセージ試料溶液を試料11とした。
試料12:レモンバーム粉末(レモンバームを粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のレモンバーム試料溶液を試料12とした。
試料13:ラベンダー粉末(ラベンダーを粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のラベンダー試料溶液を試料13とした。
試料14:オレガノ粉末(オレガノを粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のオレガノ試料溶液を試料14とした。
試料15:ペパーミント粉末(ペパーミントを粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のペパーミント試料溶液を試料15とした。
試料16:スペアミント粉末(スペアミントを粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のスペアミント試料溶液を試料16とした。
試料17:タイム粉末(タイムを粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のタイム試料溶液を試料17とした。
試料18:ブルーベリー粉末(ブルーベリー葉を粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のブルーベリー試料溶液を試料18とした。
試料19:ラズベリー粉末(ラズベリー葉を粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のラズベリー試料溶液を試料19とした。
試料20:ビルベリー粉末(ビルベリー葉を粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のビルベリー試料溶液を試料20とした。
試料21:オリーブ粉末(オリーブ葉を粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のオリーブ試料溶液を試料21とした。
試料22:サンザシ粉末(山査子を粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のサンザシ試料溶液を試料22とした。
試料23:セイヨウニワトコ粉末(エルダーフラワーを粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のセイヨウニワトコ試料溶液を試料22とした。
試料24:レモンバーベナ粉末(レモンバーベナを粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のレモンバーベナ試料溶液を試料24とした。
試料25:コリアンダー粉末(コリアンダー葉を粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のコリアンダー試料溶液を試料25とした。
試料26:ジャーマンカモミール粉末(ジャーマンカモミールを粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のジャーマンカモミール試料溶液を試料26とした。
試料27:ビワ粉末(ビワ葉を粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のビワ試料溶液を試料27とした。
試料28:クローブ粉末(丁字を粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のクローブ試料溶液を試料28とした。
試料29:トチュウ粉末(杜仲葉を粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のトチュウ試料溶液を試料29とした。
試料30:ジャスミン粉末(ジャスミンフラワーを粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のジャスミン試料溶液を試料30とした。
試料31:マジョラム粉末(マジョラムを粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のマジョラム試料溶液を試料31とした。
試料32:ウツボグサ粉末(夏枯草を粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のウツボグサ試料溶液を試料32とした。
試料33:バナバ粉末(バナバ葉を粉末化したもの)2gに20mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のバナバ試料溶液を試料33とした。
試料34:マスリン酸1mgを10mLの酢酸エチルに溶解したマスリン酸溶液を試料34とした。
試料35:コロソリン酸1mgを10mLの酢酸エチルに溶解したコロソリン酸溶液を試料35とした。
試料36:マスリン酸及びコロソリン酸各1mgを10mLの酢酸エチルに溶解したマスリン酸/コロソリン酸混合溶液を試料36とした。
試料37:オリーブエキス(オリーブ果実をアルコール抽出し、乾燥後、粉末化したもの)0.1gに100mLの酢酸エチルを加えて30分間超音波処理を施した後、3000rpmで5分間遠心分離して得た上清のオリーブエキス試料溶液を試料37とした。
試料38:β-アミリン1mgを10mLの酢酸エチルに溶解したβ-アミリン溶液を試料38とした。
試料39:α-アミリン1mgを10mLの酢酸エチルに溶解したα-アミリン溶液を試料39とした。
試料40:β-アミリン及びα-アミリン各1mgを10mLの酢酸エチルに溶解したβ-アミリン/α-アミリン混合溶液を試料40とした。
試料41:オレアノン酸1mgを10mLの酢酸エチルに溶解したオレアノン酸溶液を試料41とした。
試料42:ウルソン酸1mgを10mLの酢酸エチルに溶解したウルソン酸溶液を試料42とした。
試料43:オレアノン酸及びウルソン酸各1mgを10mLの酢酸エチルに溶解したオレアノン酸/ウルソン酸混合溶液を試料43とした。
試料44:エリスロジオール1mgを10mLの酢酸エチルに溶解したエリスロジオール溶液を試料44とした。
試料45:ウバオール1mgを10mLの酢酸エチルに溶解し、ウバオール原液とする。この液1mLをとり、酢酸エチルを加えて10mLとしたウバオール溶液を試料45とした。
試料46:エリスロジオール1mgをウバオール原液1mLに溶解し、酢酸エチルを加えて10mLとしたエリスロジオール/ウバオール混合溶液を試料46とした。
【0024】
2.昇華ヨウ素の調製
約100gのシリカゲル及び約200gのヨウ素を、展開槽(縦21cm、横23.5cm、奥行き10.5cm、ガラス製)に入れ、均一な状態にした後、蓋をして、すべてのシリカゲルの色調が紫になるまで約2時間放置した。
【0025】
3.1%ヨウ素クロロホルム溶液の調製
約2gのヨウ素及び約200gのクロロホルムを、展開槽(縦21cm、横23.5cm、奥行き10.5cm、ガラス製)に入れ、蓋をして、ヨウ素が完全に溶解するまで時々撹拌しながら約3時間放置した。
【0026】
実施例1(昇華ヨウ素暴露あり)
マイクロシリンジを用いて、試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)10μLを薄層板(製品名;TLC Silica gel 60 plate)の下端から約2cmの位置にスポットした。これを上記2.で調製した昇華ヨウ素で飽和した展開槽に入れ、10分間放置したのち、薄層板を取り出し、風乾した。この薄層板を、別のガラス製の展開槽(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル混液(1:1))に入れ、展開操作を行った。展開溶媒がスポットの位置から約10cm上昇したとき薄層板を取り出し、風乾した後、希硫酸を噴霧して呈色し、検出を行った。
実施例2
実施例1と同様の方法で、試料1(オレアノール酸溶液)の分析を行った。
実施例3
実施例1と同様の方法で、試料2(ウルソール酸溶液)の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図1に示す。
比較例1(昇華ヨウ素暴露なし)
マイクロシリンジを用いて、試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)10μLを薄層板(製品名;TLC Silica gel 60 plate)の下端から約2cmの位置にスポットした。この薄層板を、ガラス製の展開槽(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル混液(1:1))に入れ、展開操作を行った。展開溶媒がスポットの位置から約10cm上昇したとき薄層板を取り出し、風乾した後、希硫酸を噴霧して呈色し、検出を行った。
比較例2
比較例1と同様の方法で、試料1の分析を行った。
比較例3
比較例1と同様の方法で、試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図2に示す。
次に、図1及び図2の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
図1図2、及び表1に示す通り、昇華ヨウ素による誘導体化が、ウルソール酸とオレアノール酸の分離に寄与していることが分かった。
【0029】
実施例4(昇華ヨウ素暴露あり)
マイクロシリンジを用いて、試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)10μLを薄層板(製品名;TLC Silica gel 60 plate)の下端から約2cmの位置にスポットした。これを上記2.で調製した昇華ヨウ素で飽和した展開槽に入れ、5分間放置したのち、薄層板を取り出し、風乾した。この薄層板を、別のガラス製の展開槽(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル混液(1:1))に入れ、展開操作を行った。展開溶媒がスポットの位置から約10cm上昇したとき薄層板を取り出し、風乾した後、希硫酸を噴霧して呈色し、検出を行った。
実施例5
実施例4と同様の方法で、試料1の分析を行った。
実施例6
実施例4と同様の方法で、試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図3に示す。
実施例7(昇華ヨウ素暴露あり)
マイクロシリンジを用いて、試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)10μLを薄層板(製品名;TLC Silica gel 60 plate)の下端から約2cmの位置にスポットした。これを上記2.で調製した昇華ヨウ素で飽和した展開槽に入れ、20分間放置したのち、薄層板を取り出し、風乾した。この薄層板を、別のガラス製の展開槽(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル混液(1:1))に入れ、展開操作を行った。展開溶媒がスポットの位置から約10cm上昇したとき薄層板を取り出し、風乾した後、希硫酸を噴霧して呈色し、検出を行った。
実施例8
実施例7と同様の方法で、試料1の分析を行った。
実施例9
実施例7と同様の方法で、試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図4に示す。
次に、図3及び図4の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を以下表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
図3図4、及び表2より、昇華ヨウ素への暴露時間(誘導体化処理時間)が半分になった場合、2倍になった場合のどちらも得られる結果に影響を与えないことが分かった。
【0032】
実施例10
マイクロシリンジを用いて、試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)5μLを薄層板(製品名;TLC Silica gel 60 plate)の下端から約2cmの位置にスポットした。これを上記2.で調製した昇華ヨウ素で飽和した展開槽に入れ、10分間放置したのち、薄層板を取り出し、風乾した。この薄層板を、別のガラス製の展開槽(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル混液(1:1))に入れ、展開操作を行った。展開溶媒がスポットの位置から約10cm上昇したとき薄層板を取り出し、風乾した後、希硫酸を噴霧して呈色し、発色試液を使用し、検出を行った。
実施例11
スポット量を10μLに変更した以外は実施例10と同様の方法で試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)の分析を行った。
実施例12
スポット量を20μLに変更した以外は実施例10と同様の方法で、試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図5に示す。
次に、図5の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を以下表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
図5及び表3より、スポット量が半分になった場合、2倍になった場合のどちらも得られる結果に影響を与えないことが分かった。
【0035】
実施例13
展開距離を7cmにした以外は実施例1と同様の方法で、試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)の分析を行った。
実施例14
実施例13と同様の方法で、試料1(ウルソール酸溶液)の分析を行った。
実施例15
実施例13と同様の方法で、試料2(オレアノール酸溶液)の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図6に示す。
次に、図6の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を以下表4に示す。
【0036】
【表4】
【0037】
図6及び表4より、展開距離を7cmに短縮した場合であっても、得られる結果に影響を与えないことが分かった。
【0038】
実施例16
実施例1の試験日とは別日に、実施例1と同様に試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)の分析を行った。
実施例17
実施例2の試験日とは別日に、実施例2と同様に試料1の分析を行った。
実施例18
実施例3の試験日とは別日に、実施例3と同様に試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図7に示す。
次に、図7の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を以下表5に示す。
【0039】
【表5】
【0040】
図7及び表5より、分析日を変更した場合であっても、得られる結果に影響を与えないことが分かった。
【0041】
実施例19
実施例1の分析者とは別の分析者が実施例1と同様に試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)の分析を行った。
実施例20
実施例2の分析者とは別の分析者が実施例2と同様に試料1の分析を行った。
実施例21
実施例3の分析者とは別の分析者が実施例3と同様に試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図8に示す。
次に、図8の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を以下表6に示す。
【0042】
【表6】
【0043】
図8及び表6より、分析者を変更した場合であっても、得られる結果に影響を与えないことが分かった。
【0044】
表1~表6、図1図8に示す通り、試験条件にバラつきが生じた際に、得られる結果に影響を与えないことが確認された。また、分析日、分析者が異なった際にも、同様の結果が得られることを確認した。本発明は、頑健性及び再現性に優れることが分かった。
【0045】
実施例22
実施例1と同様の方法で、試料4(ホーリーバジルエキス試料溶液)の分析を行った。
実施例23
実施例1と同様の方法で、試料5(ホーリーバジル試料溶液)の分析を行った。
実施例24
実施例1と同様に試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)の分析を行った。
実施例25
実施例2と同様に試料1の分析を行った。
実施例26
実施例3と同様に試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図9に示す。
比較例4
比較例1と同様の方法で、試料4(ホーリーバジルエキス試料溶液)の分析を行った。
比較例5
比較例1と同様の方法で、試料5(ホーリーバジル試料溶液)の分析を行った。
比較例6
比較例1と同様に試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)の分析を行った。
比較例7
比較例2と同様に試料1の分析を行った。
比較例8
比較例3と同様に試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図10に示す。
次に、図9及び図10の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を以下表7に示す。
【0046】
【表7】
【0047】
図9図10、表7より、天然物試料(ホーリーバジル)中のウルソール酸とオレアノール酸の分離にも適用できることが分かった。また、天然物試料の原生薬及びエキスに対しても適用できることが分かった。
【0048】
実施例27
実施例22の試験日とは別日に、試料4(ホーリーバジルエキス試料溶液)の分析を行った。
実施例28
実施例23の試験日とは別日に、試料5(ホーリーバジル試料溶液)の分析を行った。
実施例29
実施例24の試験日とは別日に、試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)の分析を行った。
実施例30
実施例25の試験日とは別日に、試料1の分析を行った。
実施例31
実施例26の試験日とは別日に、試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図11に示す。
次に、図11の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を以下表8に示す。
【0049】
【表8】
【0050】
図11、表8より、分析日を変更し、再度試験を実施した場合であっても得られる結果影響を与えないことが分かった。
【0051】
実施例32
実施例1と同様の方法で、試料6(ローズマリー試料溶液)の分析を行った。
実施例33
実施例1と同様の方法で、試料7(シソ試料溶液)の分析を行った。
実施例34
実施例1と同様の方法で、試料8(リンゴ試料溶液)の分析を行った。
実施例35
実施例1と同様の方法で、試料9(ネズミモチ試料溶液)の分析を行った。
実施例36
実施例1と同様の方法で、試料10(バジル試料溶液)の分析を行った。
実施例37
実施例1と同様の方法で、試料11(セージ試料溶液)の分析を行った。
実施例38
実施例1と同様の方法で、試料12(レモンバーム試料溶液)の分析を行った。
実施例39
実施例1と同様に試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)の分析を行った。
実施例40
実施例2と同様に試料1の分析を行った。
実施例41
実施例3と同様に試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図12に示す。
【0052】
比較例9
比較例1と同様の方法で、試料6(ローズマリー試料溶液)の分析を行った。
比較例10
比較例1と同様の方法で、試料7(シソ試料溶液)の分析を行った。
比較例11
比較例1と同様の方法で、試料8(リンゴ試料溶液)の分析を行った。
比較例12
比較例1と同様の方法で、試料9(ネズミモチ試料溶液)の分析を行った。
比較例13
比較例1と同様の方法で、試料10(バジル試料溶液)の分析を行った。
比較例14
比較例1と同様の方法で、試料11(セージ試料溶液)の分析を行った。
比較例15
比較例1と同様の方法で、試料12(レモンバーム試料溶液)の分析を行った。
比較例17
比較例1と同様に試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)の分析を行った。
比較例17
比較例2と同様に試料1の分析を行った。
比較例18
比較例3と同様に試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図13に示す。
次に、図12及び図13の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を以下表9、表10に示す。
【0053】
【表9】
【0054】
【表10】
【0055】
実施例42
実施例1と同様の方法で、試料13(ラベンダー試料溶液)の分析を行った。
実施例43
実施例1と同様の方法で、試料14(オレガノ試料溶液)の分析を行った。
実施例44
実施例1と同様の方法で、試料15(ペパーミント試料溶液)の分析を行った。
実施例45
実施例1と同様の方法で、試料16(スペアミント試料溶液)の分析を行った。
実施例46
実施例1と同様の方法で、試料17(タイム試料溶液)の分析を行った。
実施例47
実施例1と同様の方法で、試料18(ブルーベリー試料溶液)の分析を行った。
実施例48
実施例1と同様の方法で、試料19(ラズベリー試料溶液)の分析を行った。
実施例49
実施例1と同様に試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)の分析を行った。
実施例50
実施例2と同様に試料1の分析を行った。
実施例51
実施例3と同様に試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図14に示す。
【0056】
比較例19
比較例1と同様の方法で、試料13(ラベンダー試料溶液)の分析を行った。
比較例20
比較例1と同様の方法で、試料14(オレガノ試料溶液)の分析を行った。
比較例21
比較例1と同様の方法で、試料15(ペパーミント試料溶液)の分析を行った。
比較例22
比較例1と同様の方法で、試料16(スペアミント試料溶液)の分析を行った。
比較例23
比較例1と同様の方法で、試料17(タイム試料溶液)の分析を行った。
比較例24
比較例1と同様の方法で、試料18(ブルーベリー試料溶液)の分析を行った。
比較例25
比較例1と同様の方法で、試料19(ラズベリー試料溶液)の分析を行った。
比較例26
比較例1と同様に試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)の分析を行った。
比較例27
比較例2と同様に試料1の分析を行った。
比較例28
比較例3と同様に試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図15に示す。
次に、図14及び図15の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を以下表11、表12に示す。
【0057】
【表11】
【0058】
【表12】
【0059】
実施例52
実施例1と同様の方法で、試料20(ビルベリー試料溶液)の分析を行った。
実施例53
実施例1と同様の方法で、試料21(オリーブ試料溶液)の分析を行った。
実施例54
実施例1と同様の方法で、試料22(サンザシ試料溶液)の分析を行った。
実施例55
実施例1と同様の方法で、試料23(セイヨウニワトコ試料溶液)の分析を行った。
実施例56
実施例1と同様の方法で、試料24(レモンバーベナ試料溶液)の分析を行った。
実施例57
実施例1と同様に試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)の分析を行った。
実施例58
実施例2と同様に試料1の分析を行った。
実施例59
実施例3と同様に試料2の分析を行った。
比較例29
実施例1と同様の方法で、試料25(コリアンダー試料溶液)の分析を行った。
比較例30
実施例1と同様の方法で、試料26(ジャーマンカモミール試料溶液)の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図16に示す。
【0060】
比較例31
比較例1と同様の方法で、試料20(ビルベリー試料溶液)の分析を行った。
比較例32
比較例1と同様の方法で、試料21(オリーブ試料溶液)の分析を行った。
比較例33
比較例1と同様の方法で、試料25(コリアンダー試料溶液)の分析を行った。
比較例34
比較例1と同様の方法で、試料22(サンザシ試料溶液)の分析を行った。
比較例35
比較例1と同様の方法で、試料26(ジャーマンカモミール試料溶液)の分析を行った。
比較例36
比較例1と同様の方法で、試料23(セイヨウニワトコ試料溶液)の分析を行った。
比較例37
比較例1と同様の方法で、試料24(レモンバーベナ試料溶液)の分析を行った。
比較例38
比較例1と同様に試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)の分析を行った。
比較例39
比較例2と同様に試料1の分析を行った。
比較例40
比較例3と同様に試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図17に示す。
次に、図16及び図17の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を以下表13、表14に示す。
【0061】
【表13】
【0062】
【表14】
【0063】
表7~14、図9図17に示す通り、天然物試料中のウルソール酸とオレアノール酸の分離にも適用できることが分かった。また、コリアンダー試料溶液とジャーマンカモミール試料からはオレアノール酸及びウルソール酸のスポットは得られなかった。
【0064】
実施例60
実施例1と同様の方法で、試料27(ビワ試料溶液)の分析を行った。
実施例61
実施例1と同様の方法で、試料28(クローブ試料溶液)の分析を行った。
実施例62
実施例1と同様の方法で、試料29(トチュウ試料溶液)の分析を行った。
実施例63
実施例1と同様の方法で、試料30(ジャスミン試料溶液)の分析を行った。
実施例64
実施例1と同様の方法で、試料31(マジョラム試料溶液)の分析を行った。
実施例65
実施例1と同様の方法で、試料32(ウツボグサ試料溶液)の分析を行った。
実施例66
実施例1と同様の方法で、試料33(バナバ試料溶液)の分析を行った。
実施例67
実施例1と同様に試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)の分析を行った。
実施例68
実施例2と同様に試料1の分析を行った。
実施例69
実施例3と同様に試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図18に示す。
【0065】
比較例41
比較例1と同様の方法で、試料27(ビワ試料溶液)の分析を行った。
比較例42
比較例1と同様の方法で、試料28(クローブ試料溶液)の分析を行った。
比較例43
比較例1と同様の方法で、試料29(トチュウ試料溶液)の分析を行った。
比較例44
比較例1と同様の方法で、試料30(ジャスミン試料溶液)の分析を行った。
比較例45
比較例1と同様の方法で、試料31(マジョラム試料溶液)の分析を行った。
比較例46
比較例1と同様の方法で、試料32(ウツボグサ試料溶液)の分析を行った。
比較例47
比較例1と同様の方法で、試料33(バナバ試料溶液)の分析を行った。
比較例48
比較例1と同様に試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)の分析を行った。
比較例49
比較例2と同様に試料1の分析を行った。
比較例50
比較例3と同様に試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図19に示す。
次に、図18及び図19の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を以下表15、表16に示す。
【0066】
【表15】
【0067】
【表16】
【0068】
実施例70(昇華ヨウ素暴露あり)
マイクロシリンジを用いて、試料36(マスリン酸/コロソリン酸混合溶液)10μLを薄層板(製品名;TLC Silica gel 60 plate)の下端から約2cmの位置にスポットした。これを上記2.で調製した昇華ヨウ素で飽和した展開槽に入れ、10分間放置したのち、薄層板を取り出し、風乾した。この薄層板を、別のガラス製の展開槽(展開溶媒:酢酸エチル)に入れ、展開操作を行った。展開溶媒がスポットの位置から約10cm上昇したとき薄層板を取り出し、風乾した後、希硫酸を噴霧して呈色し、検出を行った。
実施例71
実施例70と同様の方法で、試料34(マスリン酸溶液)の分析を行った。
実施例72
実施例70と同様の方法で、試料35(コロソリン酸溶液)の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図20に示す。
比較例51(昇華ヨウ素暴露なし)
マイクロシリンジを用いて、試料36(マスリン酸/コロソリン酸混合溶液)10μLを薄層板(製品名;TLC Silica gel 60 plate)の下端から約2cmの位置にスポットした。この薄層板を、ガラス製の展開槽(展開溶媒:酢酸エチル)に入れ、展開操作を行った。展開溶媒がスポットの位置から約10cm上昇したとき薄層板を取り出し、風乾した後、希硫酸を噴霧して呈色し、検出を行った。
比較例52
比較例51と同様の方法で、試料34の分析を行った。
比較例53
比較例51と同様の方法で、試料35の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図21に示す。
次に、図20及び図21の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を表17に示す。
【0069】
【表17】
【0070】
図20図21、及び表17に示す通り、昇華ヨウ素による誘導体化が、マスリン酸とコロソリン酸の分離に寄与していることが分かった。
【0071】
実施例73
実施例70と同様の方法で、試料37(オリーブエキス試料溶液)の分析を行った。
実施例74
実施例70と同様の方法で、試料21(オリーブ試料溶液)の分析を行った。
実施例75
実施例70と同様の方法で、試料33(バナバ試料溶液)の分析を行った。
実施例76
実施例70と同様の方法で、試料27(ビワ試料溶液)の分析を行った。
実施例77
実施例70と同様の方法で、試料28(クローブ試料溶液)の分析を行った。
実施例78
実施例70と同様の方法で、試料9(ネズミモチ試料溶液)の分析を行った。
実施例79
実施例70と同様の方法で、試料8(リンゴ試料溶液)の分析を行った。
実施例80
実施例70と同様に試料36(マスリン酸/コロソリン酸混合溶液)の分析を行った。
実施例81
実施例71と同様に試料34の分析を行った。
実施例82
実施例72と同様に試料35の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図22に示す。
【0072】
比較例54
比較例51と同様の方法で、試料37(オリーブエキス試料溶液)の分析を行った。
比較例55
比較例51と同様の方法で、試料21(オリーブ試料溶液)の分析を行った。
比較例56
比較例51と同様の方法で、試料33(バナバ試料溶液)の分析を行った。
比較例57
比較例51と同様の方法で、試料27(ビワ試料溶液)の分析を行った。
比較例58
比較例51と同様の方法で、試料28(クローブ試料溶液)の分析を行った。
比較例59
比較例51と同様の方法で、試料9(ネズミモチ試料溶液)の分析を行った。
比較例60
比較例51と同様の方法で、試料8(リンゴ試料溶液)の分析を行った。
比較例61
比較例51と同様に試料36(マスリン酸/コロソリン酸混合溶液)の分析を行った。
比較例62
比較例52と同様に試料34の分析を行った。
比較例63
比較例53と同様に試料35の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図23に示す。
次に、図22及び図23の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を以下表18、表19に示す。
【0073】
【表18】
【0074】
【表19】
【0075】
図22図23、表18、表19より、天然物試料(オリーブ、バナバ、ビワ、クローブ、ネズミモチ、リンゴ)中のマスリン酸とコロソリン酸の分離にも適用できることが分かった。また、天然物試料の原生薬及びエキスに対しても適用できることが分かった。
【0076】
実施例83(昇華ヨウ素暴露あり)
マイクロシリンジを用いて、試料40(β-アミリン/α-アミリン混合溶液)10μLを薄層板(製品名;TLC Silica gel 60 plate)の下端から約2cmの位置にスポットした。これを上記2.で調製した昇華ヨウ素で飽和した展開槽に入れ、24時間放置したのち、薄層板を取り出し、風乾した。この薄層板を、別のガラス製の展開槽(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル混液(1:1))に入れ、展開操作を行った。展開溶媒がスポットの位置から約10cm上昇したとき薄層板を取り出し、風乾した後、希硫酸を噴霧して呈色し、検出を行った。
実施例84
実施例83と同様の方法で、試料38(β-アミリン溶液)の分析を行った。
実施例85
実施例83と同様の方法で、試料39(α-アミリン溶液)の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図24に示す。
比較例64(昇華ヨウ素暴露なし)
マイクロシリンジを用いて、試料40(β-アミリン/α-アミリン混合溶液)10μLを薄層板(製品名;TLC Silica gel 60 plate)の下端から約2cmの位置にスポットした。この薄層板を、ガラス製の展開槽(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル混液(1:1))に入れ、展開操作を行った。展開溶媒がスポットの位置から約10cm上昇したとき薄層板を取り出し、風乾した後、希硫酸を噴霧して呈色し、検出を行った。
比較例65
比較例64と同様の方法で、試料38の分析を行った。
比較例66
比較例64と同様の方法で、試料39の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図25に示す。
次に、図24及び図25の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を表20に示す。
【0077】
【表20】
【0078】
図24図25、及び表20に示す通り、昇華ヨウ素による誘導体化が、β-アミリンとα-アミリンの分離に寄与していることが分かった。
【0079】
実施例86(昇華ヨウ素暴露あり)
マイクロシリンジを用いて、試料43(オレアノン酸/ウルソン酸混合溶液)10μLを薄層板(製品名;TLC Silica gel 60 plate)の下端から約2cmの位置にスポットした。これを上記2.で調製した昇華ヨウ素で飽和した展開槽に入れ、10分間放置したのち、薄層板を取り出し、風乾した。この薄層板を、別のガラス製の展開槽(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル混液(1:1))に入れ、展開操作を行った。展開溶媒がスポットの位置から約10cm上昇したとき薄層板を取り出し、風乾した後、希硫酸を噴霧して呈色し、検出を行った。
実施例87
実施例86と同様の方法で、試料41(オレアノン酸溶液)の分析を行った。
実施例88
実施例86と同様の方法で、試料42(ウルソン酸溶液)の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図26に示す。
比較例67(昇華ヨウ素暴露なし)
マイクロシリンジを用いて、試料43(オレアノン酸/ウルソン酸混合溶液)10μLを薄層板(製品名;TLC Silica gel 60 plate)の下端から約2cmの位置にスポットした。この薄層板を、ガラス製の展開槽(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル混液(1:1))に入れ、展開操作を行った。展開溶媒がスポットの位置から約10cm上昇したとき薄層板を取り出し、風乾した後、希硫酸を噴霧して呈色し、検出を行った。
比較例68
比較例67と同様の方法で、試料41の分析を行った。
比較例69
比較例67と同様の方法で、試料42の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図27に示す。
次に、図26及び図27の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を表21に示す。
【0080】
【表21】
【0081】
図26図27、及び表21に示す通り、昇華ヨウ素による誘導体化が、オレアノン酸とウルソン酸の分離に寄与していることが分かった。
【0082】
実施例89(昇華ヨウ素暴露あり)
マイクロシリンジを用いて、試料46(エリスロジオール/ウバオール混合溶液)10μLを薄層板(製品名;TLC Silica gel 60 plate)の下端から約2cmの位置にスポットした。これを上記2.で調製した昇華ヨウ素で飽和した展開槽に入れ、30分間放置したのち、薄層板を取り出し、風乾した。この薄層板を、別のガラス製の展開槽(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル混液(1:1))に入れ、展開操作を行った。展開溶媒がスポットの位置から約10cm上昇したとき薄層板を取り出し、風乾した後、希硫酸を噴霧して呈色し、検出を行った。
実施例90
実施例89と同様の方法で、試料44(エリスロジオール溶液)の分析を行った。
実施例91
実施例89と同様の方法で、試料45(ウバオール溶液)の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図28に示す。
比較例70(昇華ヨウ素暴露なし)
マイクロシリンジを用いて、試料46(エリスロジオール/ウバオール混合溶液)10μLを薄層板(製品名;TLC Silica gel 60 plate)の下端から約2cmの位置にスポットした。この薄層板を、ガラス製の展開槽(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル混液(1:1))に入れ、展開操作を行った。展開溶媒がスポットの位置から約10cm上昇したとき薄層板を取り出し、風乾した後、希硫酸を噴霧して呈色し、検出を行った。
比較例71
比較例70と同様の方法で、試料44の分析を行った。
比較例72
比較例70と同様の方法で、試料45の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図29に示す。
次に、図28及び図29の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を表22に示す。
【0083】
【表22】
【0084】
図28図29、及び表22に示す通り、昇華ヨウ素による誘導体化が、エリスロジオールとウバオールの分離に寄与していることが分かった。
【0085】
<非特許文献1の頑健性確認>
比較例73
マイクロシリンジを用いて、試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)10μLを薄層板(製品名;TLC Silica gel 60 plate)の下端から約2cmの位置にスポットした。これを上記3.で調製した1%ヨウ素クロロホルム溶液に入れ、展開操作を行った。1%ヨウ素クロロホルム溶液がスポット下端の位置まで上昇したとき薄層板を取り出し、スポット付近をガラス板で覆い、暗所で10分間放置したのち、薄層板を風乾してヨウ素を除去した。この薄層板を、別のガラス製の展開槽(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル混液(1:1))に入れ、展開操作を行った。展開溶媒がスポットの位置から約10cm上昇したとき薄層板を取り出し、風乾した後、希硫酸を噴霧して呈色し、検出を行った。
比較例74
比較例73と同様の方法で、試料1の分析を行った。
比較例75
比較例73と同様の方法で、試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図30に示す。
【0086】
<非特許文献1の頑健性確認2>
比較例76
マイクロシリンジを用いて、試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)10μLを薄層板(製品名;TLC Silica gel 60 plate)の下端から約2cmの位置にスポットした。これを上記3.で調製した1%ヨウ素クロロホルム溶液に入れ、展開操作を行った。1%ヨウ素クロロホルム溶液がスポット上端の位置まで上昇したとき薄層板を取り出し、スポット付近をガラス板で覆い、暗所で10分間放置したのち、薄層板を風乾してヨウ素を除去した。この薄層板を、別のガラス製の展開槽(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル混液(1:1))に入れ、展開操作を行った。展開溶媒がスポットの位置から約10cm上昇したとき薄層板を取り出し、風乾した後、希硫酸を噴霧して呈色し、検出を行った。
比較例77
比較例76と同様の方法で、試料1の分析を行った。
比較例78
比較例76と同様の方法で、試料2の分析を行った。
このようにして得られた薄層板を図31に示す。
次に、図30及び図31の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を表23に示す。
【0087】
【表23】
【0088】
図30より、標準溶液のスポット下端の位置まで1%ヨウ素クロロホルム溶液を展開した場合、誘導体化されたオレアノール酸のスポットは確認できたものの、誘導体化されていないオレアノール酸のスポットも同時に認められた。このことから、展開距離が短い場合、誘導体化処理が不十分となる可能性が示唆された。
また、図31において、標準溶液のスポット上端の位置まで1%ヨウ素クロロホルム溶液を展開した場合、誘導体化されたウルソール酸及びオレアノール酸のスポットを確認できたものの、それらのRf値が高値となった。このことから、展開距離が長い場合、誘導体化されたウルソール酸及びオレアノール酸が原線の位置から展開されてしまうことが分かった。
図30図31及び表23より、非特許文献1では試験条件にバラつきが生じた際に、誘導体生成量が低下すること、Rf値が期待値(真値)から外れた結果が得られることが分かった。非特許文献1の方法は、頑健性に問題があることが分かった。
一方、本願発明の方法は、非特許文献1と比べて頑健性に優れていた。
【0089】
<非特許文献1の再現性確認>
比較例79-1
マイクロシリンジを用いて、試料3(ウルソール酸/オレアノール酸混合溶液)10μLを薄層板(製品名;TLC Silica gel 60 plate)の下端から約2cmの位置にスポットした。これを上記3.で調製した1%ヨウ素クロロホルム溶液に入れ、展開操作を行った。1%ヨウ素クロロホルム溶液がスポット中心の位置まで上昇したとき薄層板を取り出し、スポット付近をガラス板で覆い、暗所で10分間放置したのち、薄層板を風乾してヨウ素を除去した。この薄層板を、別のガラス製の展開槽(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル混液(1:1))に入れ、展開操作を行った。展開溶媒がスポットの位置から約10cm上昇したとき薄層板を取り出し、風乾した後、希硫酸を噴霧して呈色し、検出を行った。
参考例1-1
比較例79-1と同様の方法で、試料1の分析を行った。
参考例2-1
比較例79-1と同様の方法で、試料2の分析を行った。
比較例79-1、参考例1-1、参考例2-1の操作をさらに4回行った(比較例79-2~比較例79-5、参考例1-2~参考例1-5、参考例2-2~参考例2-5)。
【0090】
このようにして得られた薄層板を図32~36に示す。
次に、図32~36の薄層板を用いて、原線から溶媒先端までの展開距離、原線からスポット中心までの距離、Rf値を算出した。結果を表24に示す。
【0091】
【表24】
【0092】
図32~36、及び表24より、非特許文献1ではウルソール酸及びオレアノール酸のRf値の幅がそれぞれ0.40~0.45、0.49~0.52であり、Rf値は高値になる傾向が確認された。また、非特許文献1の方法はRf値のバラつきが大きく、再現性に問題があることが分かった。
一方、本願発明の方法は、非特許文献1と比べて再現性に優れていた(本願発明におけるウルソール酸及びオレアノール酸のRf値の幅がそれぞれ0.39~0.41、0.48~0.50であった)。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の分析方法によれば、薄層クロマトグラフィーを利用し、試料中に含まれるウルソール酸及び/又はオレアノール酸を容易に分析することできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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