(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083248
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】水系メイクアップ化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240613BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188180
(22)【出願日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2022196880
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500470840
【氏名又は名称】アサヌマ コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094570
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼野 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】石井 康司
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB232
4C083AB242
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC862
4C083AD092
4C083AD261
4C083AD262
4C083AD351
4C083AD352
4C083BB21
4C083BB44
4C083BB48
4C083CC14
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】再分散性に優れ、かつ製品の安定性に優れた液状化粧料を提供する。
【解決手段】成分(A)が水性媒体、成分(B)が結晶セルロース、成分(C)が成分(B)を除く粉末、を配合してなる組成物中の粘度が100mPa・s以下である水系メイクアップ化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)が水性媒体、
成分(B)が結晶セルロース、
成分(C)が成分(B)を除く粉末、
を配合してなる組成物中の粘度が100mPa・s以下である水系メイクアップ化粧料。
【請求項2】
成分(B)の平均粒子径が0.5~3.0μmである請求項1記載の水系メイクアップ化粧料。
【請求項3】
成分(B)の配合量が0.05~1.0質量%である請求項1~2のいずれか一項に記載の水系メイクアップ化粧料。
【請求項4】
成分(D)がキサンタムガムである請求項1~3のいずれか一項に記載の水系メイクアップ化粧料。
【請求項5】
水系メイクアップ化粧料であって、アイカラー、マスカラ、アイライナー、及びアイブロウからなる群から選択される請求項1~4のいずれか一項に記載の水系メイクアップ化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系メイクアップ化粧料に関し、さらに詳細には、保存安定性に優れるとともに、塗布時にはなめらかにのび広がり使用感及び使用性が良好で、発色及び多色性に優れ化粧効果が高く、さらに肌への付着性が良好で化粧持続性にも優れる水系メイクアップ化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水系メイクアップ化粧料は、瑞々しい使用感を有し、アイメイクアップ化粧料などに幅広く利用されている。
【0003】
アイメイクアップ化粧料は、まぶたや、睫毛、眉など目の周辺部に塗布して、色や陰影を付加し魅力的な印象を与えるために用いられる。例えば、アイライナー化粧料は、目の輪郭に発色の良いラインを入れることで目を大きく見せるものである。
【0004】
アイライナー化粧料には、睫毛の生え際という微細な部分において目の輪郭に沿ってラインを描くという使用方法から、滑らかにラインを入れられる描きやすさが求められる。また、まばたきなどの動きによって化粧崩れしないよう付着性が高いことが必要とされる。
【0005】
さらに、最近では、目元に鮮やかな色を入れて強調するメイクが流行しており、さらに目元を強調するため、濃くはっきりとしたアイラインを一度で描けるようにしっかりと発色することや、きらびやかな印象を与えるために光沢性に優れることが求められている。
【0006】
優れた多色性を得るために、白色顔料として隠ぺい力に優れた酸化チタンが好適に用いられる。また、有色顔料として酸化鉄やコンジョウなどが用いられる。しかし、それら無機顔料は比重が重く分散安定性に乏しいという欠点を有している。そのため、化粧料にこれらの無機顔料を配合した場合、製品設計に合致する十分な発色が得られなかったり、製に要求される保存安定性が低下したりするという問題点があった。
【0007】
一方、特許文献1には、アクリル酸系の水性エマルジョン、結晶セルロース、無機顔料を配合した水性の液体化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
すなわち、低粘度の液状化粧料に粉末を配合すると経時で沈降し、ケーキングが生じてしまう。このような状態になった場合、粉末を再分散することがなかなか難しいという課題があった。
【0010】
当該技術的課題を解決するため本発明者が鋭意検討した結果、結晶セルロースを、無機顔料を含有する液状化粧料に配合することにより、再分散性に優れ、かつ製品の安定性に優れた化粧料が得られることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は、成分(A)が水性媒体、
成分(B)が結晶セルロース、
成分(C)が成分(B)を除く粉末、
を配合してなる組成物中の粘度が100mPa・s以下である水系メイクアップ化粧料を提供するものである。
【0012】
また本発明は、成分(B)の平均粒子径が0.5~3.0μmである前記の水系メイクアップ化粧料を提供するものである。
【0013】
さらに本発明は、成分(B)の配合量が0.05~1.0質量%である前記の水系メイクアップ化粧料を提供するものである。
【0014】
また本発明は、成分(D)がキサンタムガムである前記の水系メイクアップ化粧料を提供するものである。
【0015】
さらに本発明は、水系メイクアップ化粧料であって、アイカラー、マスカラ、アイライナー及びアイブロウからなる群から選択される前記の水系メイクアップ化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、再分散性に優れ、かつ製品の安定性に優れた液状化粧料を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に用いる成分(B)である結晶セルロースとは、粉末状の形状をしており、増粘剤として機能するだけでなく、粉末の沈降を防止する沈降防止剤、さらに粉末間に入り込むクッション材として機能するものである。一般的に増粘剤として使用されるセルロースナノファイバーとは異なるものである。
【0018】
成分(B)の平均粒子径は、再分散性の観点から0.5~3.0μmであることが好ましい。0.5μmより小さい場合には、再分散性やクッション材としての機能を発揮することができない。また3.0μmより大きい粒子径のものは、安定性などの点で好ましくない場合がある。また粒子径の測定は、市販のレーザー回折/散乱式粒度分布計を用い、得られる累積粒度分布曲線におけるD50(累積粒度分布が50%である粒径)を平均粒径とした。
【0019】
成分(B)の配合量は、0.01~10質量%であることが好ましい、さらに0.05~1質量%であることがさらに好ましい。0.01質量%未満では再分散性やクッション性としての機能を発揮することができない。また10質量%を超えると粘度が高くなり過ぎて再分散できなくなるため好ましくない。
【0020】
成分(C)の粉末としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、無機粉末(例えば、無機体質粉末、又は無機顔料)、有機粉末(例えば、有機体質粉末、又は有機顔料)、光輝性粉末(パール剤又はラメ剤)、金属粉末、又はそれらを組み合わせた複合粉末が挙げられる。
【0021】
無機体質粉末としては、限定されるものではないが、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、アルミナ、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、合成金雲母、酸化セリウム、窒化ホウ素、硫酸Ba、硫酸Ca、金属セッケンとしてステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、又はウンデシレン酸亜鉛が挙げられるが、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
無機顔料としては、限定されるものではないが、酸化チタン、酸化亜鉛、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、マンガンバイオレット、又はコンジョウを挙げることができるが、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
有機体質粉末としては、限定されるものではないが、デンプン、ナイロン末、シリコーン、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリスチレン、又はポリ乳酸が挙げられる。
【0024】
有機顔料としては、例えば赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色305号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号及び青色404号や、更に赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号又は青色1号を挙げることができるが、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの有機顔料のジルコニウムレーキ、バリウムレーキ、又はアルミニウムレーキを用いることもできる。
【0025】
前記パール剤としては、限定されるものではないが、雲母チタン、ベンガラ被覆雲母、ベンガラ被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、酸化チタン被覆合成金雲母、ベンガラ・酸化チタン被覆合成金雲母、酸化チタン被覆ガラスフレーク、酸化チタン被覆アルミナフレーク、酸化チタン被覆シリカフレーク、シリカ被覆アルミニウム、酸化鉄・シリカ被覆アルミニウム、シリカ被覆鉄を挙げることができる。
【0026】
ラメ剤としては、限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、エポキシ樹脂被覆アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート、ウレタン樹脂被覆アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂被覆アルミニウム末を挙げることができる。
【0027】
成分(C)の配合量としては、0.1~30質量%が好ましく、さらに0.2~20質量%が好ましい。この配合量から濃い色から薄い色(パステルカラー)、光輝性を表現することができるため、水系メイクアップ化粧料としては優れたものである。
【0028】
本発明において、色ブレ防止や分散性をさらに向上させる観点から、さらに成分(D)を配合することも可能である。
成分(D)としては、天然の水溶性高分子として、例えば、植物系高分子(例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸);微生物系高分子(例えば、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等);動物系高分子(例えば、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等)等が挙げられる。
【0029】
半合成の水溶性高分子としては、例えば、デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等);セルロース系高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等);アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)等が挙げられる。
【0030】
合成の水溶性高分子としては、例えば、ビニル系高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等);ポリオキシエチレン系高分子(例えば、ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等);アクリル系高分子(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等);ポリエチレンイミン;カチオンポリマー等が挙げられる。
【0031】
増粘剤としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVA、PVM、PVP、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸A1Mg(ビーガム)、ラポナイト、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0032】
その中でもキサンタンガムなどpHの影響により粘度が大幅に変化しない物が好適である。その配合量は適宜決定され限定されないが、化粧料全量に対して0.001~1.0質量%が好ましく、さらに好ましくは0.005~0.5質量%である。
【0033】
0.001質量%未満では、色ブレ防止や再分散性の効果は認められない。また1.0質量%を超えてしまうと粘度が増加し塗布性に影響を及ぼすため好ましくない。
【0034】
本発明の組成物の粘度は、再分散性と塗布性の観点から100mPa・s以下が好ましい。100mPa・sを超えてしまうと再分散できなくなり、塗布性に影響を及ぼすため好ましくない。
【0035】
その他の成分も影響を及ぼさない範囲で配合することが可能である。その他の成分としては、界面活性剤、被膜剤、保湿剤(例えば、ジプロピレングリコール、グリセリン、ブチレングリコール、ポリオキシプロピレン(9)グリセリルエーテル、ジヒドロキシプロピルアルギニン溶液、トリメチルグリシン、濃グリセリン、ソルビット、キシリトール、ヒアルロン酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、セラミド類、又は加水分解ケラチン)、粘度調整剤(例えば、メチルセルロース、ポリエチレングリコール)、塩類(例えば、塩化ナトリウム)、植物エキス類(例えば、カミツレエキス)、防腐剤(例えば、安息香酸ナトリウム)、防腐助剤(例えば、フェノキシエタノール、ペンチレングリコール、カプリル酸グリセリル、又は1,2-ヘキサンジオール)、ビタミン剤、香料、紫外線吸収剤、抗酸化剤、湿潤剤、キレート剤(EDTA-2Na)、pH調整剤(例えば、クエン酸、又は酒石酸)が挙げられる。その他の成分の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば0~20質量%であり、好ましくは0~10質量%である。
【0036】
本発明の水性メーキャップ化粧料は、アイカラー、マスカラ、アイライナー、及びアイブロウなどである。
【実施例0037】
下記「表1」に示す実施例と比較例を常法により製造し、その効果を常法により検討した。
【0038】
安定性:各試料をガラスびんに充填して、室温で1晩放置し、色むら及び沈殿の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
◎:非常に良好(色むら及び沈殿がほとんど生じなかった)
〇:良好(色むら及び沈殿がほとんど生じなかった)
×:不良(著しい色むら及び沈殿が生じた)
【0039】
再分散性:各試料をガラスびんに充填して、室温で7日間放置し、手で上下に振とうし、沈降した粉体が再分散するまでの往復振とう回数を計測し、以下の基準で評価した。
◎:非常に良好(10回未満)
〇:良好(10回以上20回未満)
×:不良(20回以上)
【0040】
塗布性:各試料を容器に充填して、上腕内側部に幅1mm、長さ5cmの線を2本塗布した際の吐出の良さを目視で観察し、以下の基準で評価した。
◎:非常に良好(描線に色むらがほとんど生じなかった)
〇:良好(描線に色むらが生じなかった)
×:不良(著しい色むら及び沈殿が生じた)
【0041】
粘度:各試料について、ブルックフィールド型粘度計(BL型)を用いて、ローターNo1、60rpm、1分、25℃の条件下で測定を行った。
【0042】
【表1】
※1 結晶セルロース:MOISPRAYC(大東化成工業製)、平均粒径 1.5μm
※2 セルロース :アウロ・ヴィスコ CS(日光ケミカルズ製)、セルロースナノファイバーのため、測定不可
※3 結晶セルロース:レオクリスタC-2SP(第一工業製)、セルロースナノファイバーのため、測定不可
【0043】
上記「表1」からわかるように、本発明の液状化粧料は安定性、再分散性、肌への塗布性のすべての評価項目において優れている。