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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083249
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】多モード制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190029
(22)【出願日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】202211570026.0
(32)【優先日】2022-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521279527
【氏名又は名称】台達電子工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王▲えい▼
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB62
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE07
5H730EE13
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FG06
5H730FG07
5H730FG22
(57)【要約】
【課題】LLC共振コンバータを充電又は放電制御するための多モード制御方法を提供する。
【解決手段】多モード制御方法は、LLC共振コンバータの出力電流が軽負荷であると判断した場合、LLC共振コンバータをバーストモードで動作させることと、充電制御時に、LLC共振コンバータの負荷の増加又は出力電圧の上昇に応じて、バーストモードであったLLC共振コンバータをPWMモードで動作させる、又は放電制御時に、負荷の増加又は入力電圧の低下に応じて、バーストモードであったLLC共振コンバータをPFMモードで動作させることと、充電制御時に、負荷の更なる増加又は出力電圧の更なる上昇に応じて、PWMモードであったLLC共振コンバータをPFMモードで動作させる、又は放電制御時に、負荷の更なる増加又は入力電圧の更なる低下に応じて、PFMモードであったLLC共振コンバータをPSMモードで動作させることと、を含む。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LLC共振コンバータを充電又は放電制御するための多モード制御方法であって、
前記LLC共振コンバータの出力電流が軽負荷であると判断した場合、前記LLC共振コンバータをバーストモードで動作させるように制御することと、
充電制御時に、前記LLC共振コンバータの負荷の増加又は出力電圧の上昇に応じて、前記バーストモードであった前記LLC共振コンバータをPWMモードで動作させるように制御する、又は放電制御時に、前記LLC共振コンバータの負荷の増加又は入力電圧の低下に応じて、前記バーストモードであった前記LLC共振コンバータをPFMモードで動作させるように制御することと、
充電制御時に、前記LLC共振コンバータの負荷の更なる増加又は出力電圧の更なる上昇に応じて、前記PWMモードであった前記LLC共振コンバータを前記PFMモードで動作させるように制御する、又は放電制御時に、前記LLC共振コンバータの負荷の更なる増加又は入力電圧の更なる低下に応じて、前記PFMモードであった前記LLC共振コンバータをPSMモードで動作させるように制御することと、を含むことを特徴とする多モード制御方法。
【請求項2】
充電制御の前記PFMモードでは、前記LLC共振コンバータの負荷の更なる増加又は出力電圧の更なる上昇に応じて、前記LLC共振コンバータを前記PSMモードで動作させるように制御することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の多モード制御方法。
【請求項3】
前記LLC共振コンバータの入力側は、入力電圧を供給するための直流バス側であり、前記LLC共振コンバータの出力側は、広範囲の出力電圧を供給するための電池負荷側であり、
前記LLC共振コンバータは、出力電圧が入力電圧よりも低い場合に降圧充電制御を行い、又は出力電圧が入力電圧よりも高い場合に昇圧充電制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の多モード制御方法。
【請求項4】
前記バーストモードは一定のデューティサイクル及び一定の周波数で動作することを特徴とする請求項1に記載の多モード制御方法。
【請求項5】
充電制御時に、前記PWMモードは変動するデューティサイクル及び一定の周波数で動作し、
前記PWMモードで動作する際のデューティサイクルは、前記バーストモードで動作する際のデューティサイクルよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の多モード制御方法。
【請求項6】
充電制御時に、前記PFMモードは一定のデューティサイクル及び変動する周波数で動作し、
前記PFMモードで動作する際の周波数は、前記PWMモードで動作する際の周波数よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の多モード制御方法。
【請求項7】
充電制御時に、前記PSMモードは一定のデューティサイクル、一定の周波数及び変動する位相シフトで動作し、
前記PSMモードで動作する際の周波数は、前記PFMモードで動作する際の周波数よりも低いことを特徴とする請求項2に記載の多モード制御方法。
【請求項8】
前記バーストモードで動作するとき、前記デューティサイクルは最小値に固定され、前記周波数は最高周波数に固定されることを特徴とする請求項4に記載の多モード制御方法。
【請求項9】
前記PWMモードで動作するとき、前記デューティサイクルは50%と最小値との間で変動し、前記周波数は最高周波数に固定されることを特徴とする請求項5に記載の多モード制御方法。
【請求項10】
前記PFMモードで動作するとき、前記デューティサイクルは50%に固定され、前記周波数は最高周波数と最低周波数との間で変動することを特徴とする請求項6に記載の多モード制御方法。
【請求項11】
前記PSMモードで動作するとき、前記デューティサイクルは50%に固定され、前記周波数は最低周波数に固定され、位相シフトは0%と最大値との間で変動することを特徴とする請求項7に記載の多モード制御方法。
【請求項12】
放電制御時に、前記LLC共振コンバータの負荷の更なる増加又は入力電圧の更なる低下に応じて、前記バーストモードであった前記LLC共振コンバータを前記PWMモードで動作させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の多モード制御方法。
【請求項13】
前記LLC共振コンバータの入力側は、広範囲の入力電圧を供給するための電池負荷側であり、前記LLC共振コンバータの出力側は、出力電圧を供給するための直流バス側であり、
前記LLC共振コンバータは、入力電圧が出力電圧よりも高い場合に降圧放電制御を行い、入力電圧が出力電圧よりも低い場合に昇圧放電制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の多モード制御方法。
【請求項14】
放電制御時に、前記PFMモードは一定のデューティサイクル及び変動する周波数で動作し、
前記PFMモードで動作する際のデューティサイクルは、前記バーストモードで動作する際のデューティサイクルよりも大きく、前記PFMモードで動作する際の周波数は、前記バーストモードで動作する際の周波数よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の多モード制御方法。
【請求項15】
放電制御時に、前記PSMモードは一定のデューティサイクル、一定の周波数及び変動する位相シフトで動作し、
前記PSMモードで動作する際の周波数は、前記PFMモードで動作する際の周波数よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の多モード制御方法。
【請求項16】
放電制御時に、前記PWMモードは変動するデューティサイクル及び一定の周波数で動作し、
前記PWMモードで動作する際のデューティサイクルは、前記バーストモードで動作する際のデューティサイクルよりも大きいことを特徴とする請求項12に記載の多モード制御方法。
【請求項17】
前記PFMモードで動作するとき、前記デューティサイクルは50%に固定され、前記周波数は最高周波数と最低周波数との間で変動する請求項14に記載の多モード制御方法。
【請求項18】
前記PSMモードで動作するとき、前記デューティサイクルは50%に固定され、前記周波数は最低周波数に固定され、位相シフトは0%と最大値との間で変動することを特徴とする請求項15に記載の多モード制御方法。
【請求項19】
前記PWMモードで動作するとき、前記デューティサイクルは50%と最小値との間で変動し、前記周波数は最高周波数に固定されることを特徴とする請求項16に記載の多モード制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多モード制御方法に関し、特にLLCの広範囲電圧動作に適用される多モード制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境に配慮したグリーンエネルギーへの意識の高まりに伴い、電気自動車の販売台数は倍増傾向にあり、充電スタンドの需要も高まっている。車載(電気自動車)用充電器の適用では、LLC共振コンバータ構成が多く用いられている。例えば、図1に示すLLC共振コンバータ構成を例にとると、正方向充電(即ち、外部電源が電気自動車の電池を充電)では、入力側がVBUS側(入力電圧はVBUS)、出力側がHVDC側、HVDC側が通常電池(出力電圧はHVbattery)であり、電池電圧は満充電時と低充電時の電圧が大きく異なるため、電池電圧(即ち出力電圧)の変化範囲が広い。逆方向放電(即ち、電気自動車の電池の外部への放電)では、入力側がHVDC側(入力電圧はHVbattery)、出力側がVBUS側(出力電圧はVBUS)となり、この場合は入力電圧の範囲が広くなる。
【0003】
従来のLLC共振コンバータのハードウェア設計には、主に2つの問題がある。第一、バーストモード(burst mode)区間が大きすぎる。図1に示すように、入力電圧(放電モード、即ちDCHGモード)又は出力電圧(充電モード、即ちCHGモード)としての電池電圧の変化範囲が広すぎるため、バーストモード区間が過大に設計されることになる。第二、放電モード(DCHGモード)で動作する場合、インバータに必要な電圧を供給できない。逆方向放電動作では、VBUS側に供給される電圧が400ボルトと高く、双方向の動作を両立させるため、インバータに必要な電圧を供給できない。ここで、インバータは、正方向充電時にVBUS側に接続される力率改善器(AC-DCコンバータ)、逆方向放電時に動作すると、インバータ(DC-ACコンバータ)である。
【0004】
従来の制御方法では、充電モードにおいて、低電圧時にHVDC側の利得が高すぎるため、制御モードがパルス周波数変調(PFM:Pulse Frequency Modulation)モードからバーストモード(burst mode)に戻るため、出力電圧に過大なリップルが発生する(この場合、デューティサイクルは50%に固定される)。しかし、異なるハードウェアの共振タンクの設計によっては、HVDC側が低電圧の場合、バーストモードを脱してPFMモードに戻るためにより大きな電流が必要となる。例えば、バーストモードを脱してPFMモードに戻るためには、通常220ボルト、8アンペアが必要となる。
【0005】
一方、放電モード時にHVDC側の電圧が不足する場合には、従来の遅延制御(delay time control)により、出力側のスイッチング信号をシフトしてトランスを短絡させることで、共振エネルギーを増加させ、電圧利得を上げることができる。しかし、従来の遅延制御方法の変位量は、出力電圧と入力電圧に基づいて先にルックアップテーブルの関係を構築するものである。これは開ループのルックアップテーブル方式であるので、入出力の各条件を入念に確認してから設計を行う必要があるため、フトウェアの複雑さと条件の不確かさが増してしまう。
【0006】
そこで、従来技術の問題点や技術的なボトルネックを解決するために、多モード制御方法、特にLLCの広範囲電圧動作に適用される多モード制御方法をどのように設計するかが、本願発明者によって検討された重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、多モード制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る多モード制御方法は、LLC共振コンバータを充電又は放電制御するために用いられ、前記LLC共振コンバータの出力電流が軽負荷であると判断した場合、前記LLC共振コンバータをバーストモードで動作させるように制御することと、充電制御時に、前記LLC共振コンバータの負荷の増加又は出力電圧の上昇に応じて、前記バーストモードであった前記LLC共振コンバータをPWMモードで動作させるように制御する、又は放電制御時に、前記LLC共振コンバータの負荷の増加又は入力電圧の低下に応じて、前記バーストモードであった前記LLC共振コンバータをPFMモードで動作させるように制御することと、充電制御時に、前記LLC共振コンバータの負荷の更なる増加又は出力電圧の更なる上昇に応じて、前記PWMモードであった前記LLC共振コンバータを前記PFMモードで動作させるように制御する、又は放電制御時に、前記LLC共振コンバータの負荷の更なる増加又は入力電圧の更なる低下に応じて、前記PFMモードであった前記LLC共振コンバータをPSMモードで動作させるように制御することと、を含む。
【0009】
一実施形態において、充電制御の前記PFMモードでは、前記LLC共振コンバータの負荷の更なる増加又は出力電圧の更なる上昇に応じて、前記LLC共振コンバータを前記PSMモードで動作させるように制御することをさらに含む。
【0010】
一実施形態において、前記LLC共振コンバータの入力側は、入力電圧を供給するための直流バス側であり、前記LLC共振コンバータの出力側は、広範囲の出力電圧を供給するための電池負荷側であり、前記LLC共振コンバータは、出力電圧が入力電圧よりも低い場合に降圧充電制御を行い、又は出力電圧が入力電圧よりも高い場合に昇圧充電制御を行う。
【0011】
一実施形態において、前記バーストモードは一定のデューティサイクル及び一定の周波数で動作する。
【0012】
一実施形態において、充電制御時に、前記PWMモードは変動するデューティサイクル及び一定の周波数で動作し、前記PWMモードで動作する際のデューティサイクルは、前記バーストモードで動作する際のデューティサイクルよりも大きい。
【0013】
一実施形態において、充電制御時に、前記PFMモード一定のデューティサイクル及び変動する周波数で動作し、前記PFMモードで動作する際の周波数は、前記PWMモードで動作する際の周波数よりも低い。
【0014】
一実施形態において、充電制御時に、一定のデューティサイクル、一定の周波数及び変動する位相シフトにより、前記LLC共振コンバータを前記PSMモードで動作させるように制御し、前記PSMモードで動作する際の周波数は、前記PFMモードで動作する際の周波数よりも低い。
【0015】
一実施形態において、前記バーストモードで動作するとき、前記デューティサイクルは最小値に固定され、前記周波数は最高周波数に固定される。
【0016】
一実施形態において、前記PWMモードで動作するとき、前記デューティサイクルは50%と最小値との間で変動し、前記周波数は最高周波数に固定される。
【0017】
一実施形態において、前記PFMモードで動作するとき、前記デューティサイクルは50%に固定され、前記周波数は最高周波数と最低周波数との間で変動する。
【0018】
一実施形態において、前記PSMモードで動作するとき、前記デューティサイクルは50%に固定され、前記周波数は最低周波数に固定され、位相シフトは0%と最大値との間で変動する。
【0019】
一実施形態において、放電制御時に、前記LLC共振コンバータの負荷の更なる増加又は入力電圧の更なる低下に応じて、前記バーストモードであった前記LLC共振コンバータを前記PWMモードで動作させるように制御する。
【0020】
一実施形態において、前記LLC共振コンバータの入力側は、広範囲の入力電圧を供給するための電池負荷側であり、前記LLC共振コンバータの出力側は、出力電圧を供給するための直流バス側であり、前記LLC共振コンバータは、入力電圧が出力電圧よりも高い場合に降圧放電制御を行い、入力電圧が出力電圧よりも低い場合に昇圧放電制御を行う。
【0021】
一実施形態において、放電制御時に、前記PFMモードは一定のデューティサイクル及び変動する周波数で動作し、前記PFMモードで動作する際のデューティサイクルは、前記バーストモードで動作する際のデューティサイクルよりも大きく、前記PFMモードで動作する際の周波数は、前記バーストモードで動作する際の周波数よりも低い。
【0022】
一実施形態において、放電制御時に、前記PSMモードは一定のデューティサイクル、一定の周波数及び変動する位相シフトで動作し、前記PSMモードで動作する際の周波数は、前記PFMモードで動作する際の周波数よりも低い。
【0023】
一実施形態において、放電制御時に、前記PWMモードは変動するデューティサイクル及び一定の周波数で動作し、前記PWMモードで動作する際のデューティサイクルは、前記バーストモードで動作する際のデューティサイクルよりも大きい。
【0024】
一実施形態において、前記PFMモードで動作するとき、前記デューティサイクルは50%に固定され、前記周波数は最高周波数と最低周波数との間で変動する。
【0025】
一実施形態において、前記PSMモードで動作するとき、前記デューティサイクルは50%に固定され、前記周波数は最低周波数に固定され、位相シフトは0%と最大値との間で変動する。
【0026】
一実施形態において、前記PWMモードで動作するとき、前記デューティサイクルは50%と最小値との間で変動し、前記周波数は最高周波数に固定される。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る多モードの制御方法によれば、実現できる特徴と利点は次の通りである。(1)広範囲の電圧の適用において、バーストモード(burst mode)区間の大きさを適切に設計することができる。(2)放電モードで動作する時に、インバータに必要な電圧を安定して供給することができる。(3)軽負荷、低出力電圧動作時に、共振コンバータをPWMモード又はバーストモードで動作させるように制御し、出力電圧のリップルを低減する。(4)放電動作時において、重負荷、低入力電圧動作時に、共振コンバータをPSMモードで動作させるように制御し、電圧利得を高め、出力電圧を更に上昇させるように制御する。
【0028】
本発明の目的を達成するためになされた本発明の技術、手段、及び効果をより良く理解するために、本発明の目的及び特徴は、本発明の詳細な説明及び添付図面を参照することによってより良く理解されると考えられるが、添付図面は、参照及び説明のみを提供するものであり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明のLLC共振コンバータの回路構成図である。
図2】本発明の充電動作における第1動作モードの概略図である。
図3】本発明の充電動作における第2動作モードの概略図である。
図4】本発明の放電動作における第1動作モードの概略図である。
図5】本発明の放電動作における第2動作モードの概略図である。
図6】本発明の充電動作における1次側及び2次側アクティブスイッチの制御信号の概略図である。
図7】本発明の放電動作における1次側と2次側のアクティブスイッチの制御信号の概略図である。
図8】本発明の多モード制御方法の第1動作モードのフローチャートである。
図9】本発明の多モード制御方法の第2動作モードのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の技術的内容及び詳細な説明について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0031】
図1は、本発明のLLC共振コンバータの回路構成図である。同図を参照すると、本発明において、この構成は、双方向車両用充電器の適用で動作する。上記構成の2次側(secondary side)の負荷は、通常に電池であり、1次側(primary side)と2次側はすべてアクティブスイッチを提供する。例えば、1次側はアクティブスイッチVBUS_A~VBUS_Dを提供し、2次側はアクティブスイッチHVDC_A~HVDC_Dを提供する。場面に応じて、正方向充電(以下、充電、充電動作又は充電モード(CHGモード)と略称する)又は逆方向放電(以下、放電、放電動作又は放電モード(DCHGモード)と略称する)の使用を決定できる。
【0032】
充電の場合、入力側はVBUS側であり、通常その電圧変化率が低く(入力電圧VBUSは固定とみなすことができる)、単相系であれば、入力電圧は例えば400ボルトであってもよいが、これに限定されず、出力側はHVDC側であり、通常電池であり、電池の電圧は使用状態によって電圧(即ち出力電圧HVbattery)の変化範囲が広く、例えば220~430ボルトであってもよいが、これに限定されない。したがって、充電動作では、LLC共振コンバータは、出力電圧が入力電圧より低い場合(例えば、入力電圧が400ボルト、出力電圧が220ボルト)、降圧方式で電池を充電し、出力電圧が入力電圧より高い場合(入力電圧が400ボルト、出力電圧が430ボルト)、昇圧方式で電池を充電する。
【0033】
放電(パワーフローの方向が充電と逆方向)の場合、入力側がHVDC側、出力側がVBUS側となり、この場合は、出力電圧が400ボルトに固定され、入力電圧の変化範囲が広く、例えば220~430ボルトであってもよいが、これに限定されない。したがって、放電動作では、LLC共振コンバータは、入力電圧が出力電圧より低い場合(例えば、入力電圧220ボルト、出力電圧400ボルト)、昇圧方式で放電を行い、入力電圧が出力電圧より高い場合(例えば、入力電圧が430ボルト、出力電圧が400ボルト)、降圧方式で放電を行うことになる。
【0034】
充電モード(CHGモード)では、コントローラは電池側の電圧Vo及び電流Ioを取り出し、2つの制御ループ(電圧制御ループと電流制御ループ)から制御量の小さい方を選択して演算した後、PWM信号を出力して1次側スイッチ(VBUS_A~VBUS_D)及び2次側スイッチ(HVDC_A~HVDC_D)を制御する。放電モード(DCHGモード)では、VBUSのみを制御すればよいため、単一の制御ループ(電圧ループ)となる。なお、ここで説明する1次側と2次側は、充電モードと放電モードのパワーフローの違いによって定義が異なる。充電モードでは、VBUS側が1次側、HVDC側が2次側となり、逆に、放電モードでは、HVDC側が1次側、VBUS側が2次側となることを意味する。
【0035】
図2は、本発明の充電動作における第1動作モードの概略図である。図2には、バーストモード(burst mode)がパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)モードとPFMモードとを統合する方法が示されている。前述のとおり、充電動作では、LLC共振コンバータは、降圧(buck)変換方式で電池を充電する(入力電圧が電池電圧より高い場合)、又は昇圧(boost)変換方式で電池を充電する(電池電圧が徐々に上昇するように電池が満充電になると、入力電圧が電池電圧より低くなる)。
【0036】
したがって、充電動作時に、コンバータが固定された最高周波数で動作している場合、デューティサイクル(duty cycle)を調整し、例えば最大デューティサイクル(50%)と最小デューティサイクルとの間で調整して、コンバータがPWMモードで動作するようにする。PFMモードとバーストモードの間にPWMモードを加えた目的を以下に説明する。広範囲の入力電圧又は出力電圧の適用において、PFMモードのバーストモードは、一定のデューティサイクル及び一定の周波数の制御方式、即ち、最高周波数を維持(固定)し、デューティサイクルを最大の50%に維持するものの、出力電圧にリップルが発生する。そこで、PWMモードを導入することで、デューティ(duty)を最大50%に固定するように調整するのではなく、50%未満の最低デューティ(例えば10%)でバーストモードを使用する、即ち、変動するデューティサイクル及び一定の周波数の制御方式により、共振コンバータをPWMモードで動作させることで、出力電圧のリップルをバーストモード区間でより小さくすることができ、より軽い負荷でも出力電圧のリップルを低減する効果を得ることができる。
【0037】
具体的には、図2に示すように、横軸は出力電圧(HVDC側電圧)、縦軸は出力電力(即ち出力電流に相当)を表している。例えば、出力電圧が最小電圧(HVDC_min、例えば220ボルト)に近い場合、出力電流が小さく出力電力も小さい(最小電力Po_minより低い)場合、即ち、共振コンバータの出力電流が軽負荷であり、共振コンバータは通常、バーストモードで動作する。出力電力が増加すると、バーストモードを脱してPWMモードに入る。出力電力がさらに増加して境界電力(Po_boundary)を超えると、PWMモードを脱してPFMモードに入る。なお、異なる出力電圧(即ちHVDC側電圧)に応じたコンバータの出力電流(出力電力)の変動に対応するため、図2に示すように、境界電力(Po_boundary)及び最小電力(Po_min)は、出力電圧(HVDC側電圧)が増加するにつれて減少する。つまり、境界電力(Po_boundary)及び最小電力(Po_min)は、一定の出力値ではない。また、図3~5にも同様の特性が示されているが、ここでは詳細な説明を省略する。
【0038】
また、出力電圧が高くなると、例えば、出力電圧がブレークオーバー電圧(HVDC_break、例えば300ボルト)である場合、共振コンバータがバーストモードを脱してPWMモードに入るのに必要な出力電力は、それほど大きくなくてもよい。つまり、共振コンバータがバーストモードを脱してPWMモードに入るのに必要な出力電力は、それほど大きくなくてもよい。さらに、PWMモードの区間範囲が狭いため、出力電力をもう少し多く出せば、PWMモードを脱してPFMモードに入ることができる。同様に、出力電圧がさらに高くなると、共振コンバータはバーストモードを脱してPWMモードに入りやすくなり、一定のデューティサイクル(例えば、デューティサイクルは50%に固定)及び変動する周波数(最高周波数と最低周波数との間で変動)での制御により、共振コンバータは、PWMモードを脱してPFMモードに入りやすくなり、正常な動作モードに入るようになる。なお、本発明の最高周波数は、電力と効率に基づいたり、及び/又はデジタルチップの性能に基づいたりして設計されてもよい。ハードウェアの共振タンクの特性や実験結果によれば、高周波において、利得曲線はあまり変化しないが、デジタルチップは解像度が悪いので、デジタルチップの性能を考量して最高周波数の設計が評価されている。また、本発明の最低周波数は、電力と効率に基づいて設計されてもよく、及び/又は利得ピーク(gain peak)を越える場合、電圧を円滑に輸出できることが考量されている。その理由は、ハードウェアの共振タンクの特性や実験結果によれば、低周波において、利得ピーク(gain peak)を越えて出力電圧が達成できなくなる問題があるので、最低周波数の設計は、この点を考量することが必要である。さらに、最高周波数及び最低周波数は、充放電プロセス全体の極値も考慮して設計されている。
【0039】
言い換えれば、広範囲の出力電圧に対応し、軽負荷であっても極軽負荷の動作時に出力電圧のリップルを減らす目的を達成するために、特に極軽負荷での動作の場合、PWMモードを導入して、PFMモードがバーストモードの動作に入っても電圧のリップルを減らす効果が得られないという問題を解決する。
【0040】
このようにして、PWMモードによってPFMモードとバーストモードを統合することで、低電圧出力又は高電圧入力の場合に電圧利得が高すぎる状况を解决することができ、出力電圧がバーストモードに入っても、過大な変動が生じず、より安定した出力効果を達成することができる。
【0041】
図3は、本発明の充電動作における第2動作モードの概略図である。図2に示す第1動作モードと比べて、第2動作モードにさらに移相変調モード(PSM)制御を加える。充電動作では、2次側が同期整流側となる。PFMモードとPWMモードでは、効率の要求に応じて、同期整流機能をオンにするかどうかを决定することができる。さらに、本来開ループの移相制御方式を、閉ループの制御方式に変更してもよい。電圧利得が不足するため周波数が徐々に最低周波数まで低下していく場合に、同期整流側の位相シフトを一定の周波数及びデューティで行う、即ち、一定のデューティサイクル(例えば、デューティサイクルは50%に固定)、一定の周波数(例えば、周波数は最低周波数に固定)、及び変動する位相シフト(例えば、位相シフトは0%と最大値との間で変動)の制御方式により、電圧変換比を高めることができ、最低周波数を決定し、位相シフトの最大量を制限するだけでパラメータを簡単に調整することができる。したがって、遅延制御によるPSMモード制御により、閉ループかつ低周波の場合、PFMモード動作のみでは達成できない、高出力電圧や重負荷時の高電圧利得を実現することができる。なお、本発明の位相シフトの最大値は、電力と効率に基づいて設計されてもよく、及び/又は利得ピーク(gain peak)を越える場合、電圧を円滑に輸出できることが考量されている。その理由は、ハードウェアの共振タンクの特性や実験結果によれば、低周波において、利得ピーク(gain peak)を越えて出力電圧が達成できなくなる問題があるので、位相シフトの最大値の設計は、この点を考量することが必要である。さらに、位相シフトの最大値は、充放電プロセス全体の極値も考慮して設計されている。
【0042】
図6は、本発明の充電動作における1次側及び2次側アクティブスイッチの制御信号の概略図であり、最小値と最大値の間で制御されるデューティサイクルを示している。同図に示すように、実線で示す最小値のデューティサイクルから、破線で示す最大値のデューティサイクルへと拡大することにより、最小値と最大値の間で制御される。例えば、負荷の増加に応じて、デューティサイクルを最小値から最大値に増加させたり、周波数を可変するPFMモード(通常動作モード)に移行させたりすることができる。なお、本発明のデューティサイクルの最小値は、電力と効率、及び/又はゲートドライバの性能やデジタルチップの性能に基づいて設計されてもよい。また、本発明のデューティサイクルの最大値は、本発明が共振コンバータ共振型コンバータであることに基づいて、最大デューティサイクルは50%である。さらに、デューティサイクルの最小値及び最大値は、充放電プロセス全体の極値も考慮して設計されている。
【0043】
図4は、本発明の放電動作における第1動作モードの概略図である。共振コンバータが通常の動作、即ちPFMモードで動作し、周波数が徐々に減少して最低制限周波数に達すると、遅延時間(delay time)制御を開始し、共振コンバータをPSMモードで動作させ、このモードでは、スイッチング信号の位相シフトにより、遅延時間制御の目的を実現し、出力電圧を安定させる。
【0044】
具体的には、放電動作時に負荷が重くなり、入力電圧が不足して安定した出力電圧を供給できない場合、遅延時間(delay time)制御により、2次側のスイッチング信号をシフトしてトランスを短絡させ、強制的に共振エネルギーを増加させることで、電圧利得を増加させ、出力電圧を安定に保つように制御することができる。
【0045】
図5は、本発明の放電動作における第2動作モードの概略図である。図4に示す第1動作モードと比べて、第2動作モードでは、PFMモードとバーストモードの間にPWMモードが加えられる。異なる入力電圧と出力電圧の条件に応じて、動作モードの調整を行う。例えば、軽負荷、入力電圧が低い場合、バーストモード又はPWMモードで動作することができる。負荷が重くなったり、入力電圧が下がったりした場合、PFMモードに切り替えて動作するように調整する。また、負荷がさらに増加したり、入力電圧がさらに低下したりして、周波数が最低周波数になった場合には、PSMモードに切り替えて動作するように調整する。これにより、電圧利得を高め、出力電圧を安定に保つように制御することができる。
【0046】
図7は、本発明の放電動作における1次側と2次側のアクティブスイッチの制御信号の概略図である。前述のとおり、放電モード(DCHGモード)で動作する場合、入力電圧が不足したり、出力負荷が過大になったりすると、共振コンバータがインバータに必要な電圧を供給できなくなるため、位相シフト制御により、インバータに必要な電圧を供給できるように出力電圧を維持するようにしている。同図に示すように、通常の同期整流制御では、1次側スイッチ(HVDC_A~HVDC_D)と2次側スイッチ(VBUS_A~VBUS_D)が対応して制御される。しかし、PSMモード動作では、2次側(即ちVBUS側)のスイッチをシフトさせることにより、例えばスイッチA(即ちVBUS_A)をスイッチAとスイッチC(即ちVBUS_C)の導通時間が重なるように位相シフトさせて、トランスを短絡させ、強制的に共振エネルギーを増加させ、同様に、スイッチB(即ちVBUS_B)をスイッチBとスイッチD(即ちVBUS_D)の導通時間が重なるように位相シフトさせて、トランスを短絡させ、強制的に共振エネルギーを増加させることで、電圧利得を増加させて出力電圧を維持する。なお、充電モードでのPSMモード動作は、この段落で説明したように、2次側スイッチ(即ち、同期整流側のスイッチHVDC_A及びHVDC_B)も同様に位相シフトして電圧利得を上げる。
【0047】
図8は、本発明の多モード制御方法の第1動作モードのフローチャートである。多モード制御方法は、LLC共振コンバータを充電又は放電制御するために用いられ、LLC共振コンバータの出力電流が軽負荷であると判断した場合には、充電制御又は放電制御のいずれにおいても、LLC共振コンバータをバーストモードで動作させるように制御すること(S11、S21)を含む。
【0048】
充電制御時に、LLC共振コンバータの負荷の増加又は出力電圧の上昇に応じて、LLC共振コンバータをPWMモードで動作させるように制御する(S12)、又は放電制御時に、LLC共振コンバータの負荷の増加又は入力電圧の低下に応じて、LLC共振コンバータをPFMモードで動作させるように制御する(S22)。
【0049】
充電制御時に、LLC共振コンバータの負荷の更なる増加又は出力電圧の更なる上昇に応じて、LLC共振コンバータをPFMモードで動作させるように制御する(S13)、又は放電制御時に、LLC共振コンバータの負荷の更なる増加又は入力電圧の更なる低下に応じて、LLC共振コンバータをPSMモードで動作させるように制御する(S23)。
【0050】
また、図9は、本発明の多モード制御方法の第2動作モードのフローチャートである。具体的には、充電制御時に、図9のS10は図8のS11に対応し、S20は図8のS12に対応し、S30は図8のS13に対応する。図8に示す第1動作モードと比べて、充電制御のPFMモード(S13)時には、LLC共振コンバータの負荷の更なる増加又は入力電圧の更なる低下に応じて、LLC共振コンバータをPSMモードで動作させるように制御する(S40)。一方、放電制御時に、図9のS10は図8のS21に対応し、S20は図8のS22に対応し、S30は図8のS23に対応する。図8に示す第1動作モードと比べて、放電制御のバーストモード(S21)時には、LLC共振コンバータの負荷の更なる増加又は入力電圧の更なる低下に応じて、LLC共振コンバータをPWMモードで動作させるように制御する(S20)。このようにして、図9に示すように、LLC共振コンバータは、充電制御又は放電制御のいずれであっても、バーストモード、PWMモード、PFMモード及びPSMモードを含む多モードで動作することができ、広範囲の電圧の充電、放電動作に応じて動作することができる。
【0051】
以上をまとめると、本発明の特徴と利点は次の通りである。
(1)広範囲の入力電圧又は出力電圧の適用において、バーストモード(burst mode)区間の大きさを適切に設計する。
(2)放電モードで動作する時に、インバータに必要な電圧を安定して供給する。
(3)充電動作時において、軽負荷、低出力電圧動作時に、共振コンバータをPWMモード又はバーストモードで動作させるように制御し、出力電圧のリップルを低減する。
(4)放電動作時において、重負荷、低入力電圧動作時に、共振コンバータをPSMモードで動作させるように制御し、電圧利得を高め、出力電圧を安定に保つように制御する。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもなく、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の全ての範囲は以下の特許請求の範囲に基づくものであり、本発明の特許請求の範囲に合致する精神とその類似の変形例は、本発明の範囲に含まれるべきであり、当業者であれば、本発明の技術的範囲内において、容易に思いつくことができ、また、その変形例や修正例も、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
VBUS_A~VBUS_D アクティブスイッチ
HVDC_A~HVDC_D アクティブスイッチ
HVDC_min 最小電圧
HVDC_break ブレークオーバー電圧
HVDC_max 最大電圧
Po_min 最小電力
Po_boundary 境界電力
Po_max 最大電力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9