(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083250
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】電気車両の変速システム及びそれを制御する方法
(51)【国際特許分類】
B60W 10/04 20060101AFI20240613BHJP
F16H 63/18 20060101ALI20240613BHJP
F16H 61/32 20060101ALI20240613BHJP
F16H 59/18 20060101ALI20240613BHJP
F16H 61/02 20060101ALI20240613BHJP
F16H 61/684 20060101ALI20240613BHJP
F16H 63/50 20060101ALI20240613BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240613BHJP
B60W 10/11 20120101ALI20240613BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B60W10/00 106
F16H63/18
F16H61/32
F16H59/18
F16H61/02
F16H61/684
F16H63/50
B60W10/08
B60W10/11 300
B60L15/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191670
(22)【出願日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】111147264
(32)【優先日】2022-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】597127029
【氏名又は名称】光陽工業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リァオ ウェイ シアン
【テーマコード(参考)】
3D241
3J067
3J552
5H125
【Fターム(参考)】
3D241AA11
3D241AC23
3D241AD01
3D241CA08
3D241CC03
3D241CC11
3D241DA05Z
3J067AA21
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3J552MA04
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3J552VD02W
5H125AA01
5H125AB03
5H125BA00
5H125BE05
5H125CA01
5H125CC01
5H125EE08
5H125EE42
(57)【要約】
【課題】電気車両の変速システム及びそれを制御する方法を提供する。
【解決手段】電気車両の制御ユニットは、ギヤシフトを行なうために動力モータの回転速度及び動力モータにより出力されている操作ねじり力に基づいて目標ねじり力を計算し、ギヤシフトを実行している際に、制御ユニットは、動力モータを制御して、ねじり力の出力を操作ねじり力から目標ねじり力となるように変換し、更に、ねじり力の出力を目標ねじり力から操作ねじり力に戻るように変換する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気車両の変速システムを制御するための制御方法であって、
前記電気車両は、制御ユニットと、車両を推進する動力を提供するための動力モータと、前記電気車両のアクセル制御の位置を検出してアクセルポジション信号を生成し且つ前記制御ユニットへ送信するためのアクセルポジションセンサと、変速装置と、を備えており、
前記変速装置は、前記動力モータと接続されて前記動力モータからの動力を伝達するためのギヤセットと、前記ギヤセットと接続されている作動機構と、前記作動機構と接続されているシフトドラムと、前記シフトドラムと接続されて前記シフトドラムの回転角度を制御して、前記作動機構がギヤシフトを行なうことができるように構成されるギヤシフトモータと、を備えており、
前記制御方法は、
前記制御ユニットにより、前記動力モータの回転速度を示す回転速度情報を受信し、前記回転速度情報に基づいて前記ギヤシフトモータを制御してギヤシフトを行なうか否かを判断する判断ステップと、
前記制御ユニットにより、前記ギヤシフトモータを制御してギヤシフトを行なうと判断すると、前記回転速度情報と、前記アクセルポジション信号に対応するとともに前記動力モータにより出力されている操作ねじり力とに基づいて、目標ねじり力を計算する計算ステップと、
前記制御ユニットにより、前記ギヤシフトモータの作動を駆動して、前記シフトドラムの回転を開始させるギヤシフトモータ作動ステップと、
前記制御ユニットにより、前記動力モータを制御して、ねじり力の出力を前記操作ねじり力から前記目標ねじり力となるように変換して、前記ギヤセットに対してギヤシフトを行なう動力変換ステップと、
前記制御ユニットにより、前記動力モータを制御して、前記ねじり力の出力を前記目標ねじり力から前記操作ねじり力に戻るように変換する動力回復ステップと、を含んでいる、
ことを特徴とする電気車両の変速システムの制御方法。
【請求項2】
前記シフトドラムは、ドラム軸と、前記ドラム軸を取り囲んでいるとともに前記ドラム軸の軸方向において移動することができるように配置されている外側スリーブと、前記外側スリーブの両反対側にそれぞれ配置されている2つのバネと、を備えており、
前記動力変換ステップは、前記ギヤシフトモータ作動ステップの後に、第1遅延期間を経て実施され、
前記動力回復ステップにおいて、ギヤシフトにおいて前記ドラム軸の回転が完了した後、第2遅延期間を経てから前記ねじり力の出力を前記目標ねじり力から前記操作ねじり力に戻るように変換する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気車両の変速システムの制御方法。
【請求項3】
前記計算ステップにおいて、前記制御ユニットにより、動力変換期間及び動力回復期間を更に計算し、
前記動力変換ステップにおいて、前記制御ユニットにより、前記動力モータを制御して、前記動力変換期間において前記ねじり力の出力を前記目標ねじり力となるように変換し、
前記動力回復ステップにおいて、前記制御ユニットにより、前記動力モータを制御して、前記動力回復期間において前記ねじり力の出力を前記操作ねじり力となるように変換する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気車両の変速システムの制御方法。
【請求項4】
前記変速装置の前記ギヤセットは、入力軸組立体と、出力軸組立体と、を備えており、
前記入力軸組立体は、軸体と、前記軸体を取り囲むように配置されている第1入力ギヤと、前記第1入力ギヤと間隔をあけて前記軸体を取り囲むように配置されている第2入力ギヤと、を備えており、
前記出力軸組立体は、軸棒と、前記軸棒を取り囲むように配置されているとともに前記第1入力ギヤと噛み合っている第1出力ギヤと、前記軸棒を取り囲むように配置されているとともに前記第2入力ギヤと噛み合っている第2出力ギヤと、を備えており、
前記作動機構は、前記作動機構が前記第2入力ギヤに連結される第1ギヤ位置と、前記作動機構が前記第2出力ギヤに連結される第2ギヤ位置と、の間で移動することができ、
前記判断ステップにおいて、前記制御ユニットにより、前記動力モータの回転速度が回転速度のアップシフト閾値よりも大きい場合、前記ギヤシフトモータを制御してアップシフトを行なうと判断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気車両の変速システムの制御方法。
【請求項5】
前記判断ステップにおいて、前記制御ユニットにより、前記動力モータの回転速度が回転速度のダウンシフト閾値よりも小さい場合、前記ギヤシフトモータを制御してダウンシフトを行なうと判断する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電気車両の変速システムの制御方法。
【請求項6】
前記変速装置は、角度センサを更に備えており、
前記角度センサは、前記シフトドラムと間隔をあけて前記シフトドラムの回転角度を感知して、前記シフトドラムの前記回転角度を示す角度情報を出力することができるように配置されており、
前記ギヤシフトモータ作動ステップにおいて、前記制御ユニットにより、前記角度情報を受信して前記ギヤシフトモータが正確な位置に回転したか否かを判断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気車両の変速システムの制御方法。
【請求項7】
前記制御ユニットは、前記変速装置の前記ギヤシフトモータと接続されている車両制御ユニットと、前記車両制御ユニット及び前記動力モータと接続されているモータ制御ユニットと、を備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気車両の変速システムの制御方法。
【請求項8】
電気車両の変速制御システムであって、
前記電気車両は、車両を推進する動力を提供するための動力モータを備えており、
前記変速制御システムは、制御ユニットと、アクセルポジションセンサと、変速装置と、を備えており、
前記アクセルポジションセンサは、前記電気車両のアクセル制御の位置を検出してアクセルポジション信号を生成し且つ前記制御ユニットへ送信するためのものであり、
前記変速装置は、前記動力モータと接続されて前記動力モータからの動力を伝達するためのギヤセットと、前記ギヤセットと接続されている作動機構と、前記作動機構と接続されているシフトドラムと、前記シフトドラムと接続されて前記シフトドラムの回転角度を制御して前記作動機構がギヤシフトを行なうことができるように構成されるギヤシフトモータと、を備えており、
前記制御ユニットは、
前記動力モータの回転速度を示す回転速度情報を受信し、
前記回転速度情報に基づいて前記ギヤシフトモータを制御してギヤシフトを行なうか否かを判断し、
前記ギヤシフトモータを制御してギヤシフトを行なうと判断すると、前記回転速度情報と、前記アクセルポジション信号に対応するとともに前記動力モータにより出力されている操作ねじり力とに基づいて、目標ねじり力を計算し、
前記ギヤシフトモータの作動を駆動して、前記シフトドラムの回転を開始させるように構成されている、
ことを特徴とする電気車両の変速制御システム。
【請求項9】
前記制御ユニットは、
動力変換期間及び動力回復期間を計算し、
前記動力モータを制御して、ギヤシフトしている間に前記動力変換期間においてねじり力の出力を前記操作ねじり力から前記目標ねじり力となるように変換し、
前記動力モータを制御して、ギヤシフトにおいて前記ドラム軸の回転が完了した後、前記動力回復期間において前記ねじり力の出力を前記目標ねじり力から前記操作ねじり力に戻るように変換するように更に構成されている、
ことを特徴とする請求項8に記載の電気車両の変速制御システム。
【請求項10】
前記制御ユニットは、前記変速装置の前記ギヤシフトモータと接続されている車両制御ユニットと、前記車両制御ユニット及び前記動力モータと接続されているモータ制御ユニットと、を備えている、
ことを特徴とする請求項8に記載の電気車両の変速制御システム。
【請求項11】
前記車両制御ユニットは、前記動力モータの回転速度を示す回転速度情報を受信し、前記回転速度情報に基づいて前記ギヤシフトモータを制御してギヤシフトを行なうか否かを判断することができるように構成されており、
前記車両制御ユニットは、前記ギヤシフトモータを制御してギヤシフトを行なうと判断すると、前記回転速度情報と、前記アクセルポジション信号に対応するとともに前記動力モータにより出力されている前記操作ねじり力とに基づいて、前記目標ねじり力を計算することができるように更に構成されており、
前記モータ制御ユニットは、前記動力モータの回転速度を取得して、前記回転速度情報を生成して前記車両制御ユニットへ送信することができるように構成されている、
ことを特徴とする請求項10に記載の電気車両の変速制御システム。
【請求項12】
前記車両制御ユニットは、
動力変換期間及び動力回復期間を計算し、
前記動力モータを制御して、ギヤシフトしている間に前記動力変換期間においてねじり力の出力を前記操作ねじり力から前記目標ねじり力となるように変換し、
前記動力モータを制御して、ギヤシフトにおいて前記ドラム軸の回転が完了した後、前記動力回復期間において前記ねじり力の出力を前記目標ねじり力から前記操作ねじり力に戻るように変換することができるように更に構成されている、
ことを特徴とする請求項11に記載の電気車両の変速制御システム。
【請求項13】
前記制御ユニットは、前記動力変換期間の前に前記ギヤシフトモータの回転を所定期間内に実行し始めることができるように更に構成されている、
ことを特徴とする請求項9又は請求項12に記載の電気車両の変速制御システム。
【請求項14】
前記制御ユニットは、ギヤシフトしている間に前記シフトドラムの回転が完了した後、所定の遅延期間を経てから前記動力回復期間を開始させて、前記ギヤセット及び前記作動機構が互いに正確に係合することを確保することができるように構成されている、
ことを特徴とする請求項9又は請求項12に記載の電気車両の変速制御システム。
【請求項15】
前記変速装置の前記作動機構は、
複数のドグ歯を有しているスライダと、
前記スライダと前記シフトドラムとの間に連接されているシフトフォークと、を備えている、
ことを特徴とする請求項8に記載の電気車両の変速制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する制御方法及び制御システムに関し、具体的には、電気車両の変速システム及びそれを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された従来の変速機構1は、
図1に示されるように、駆動電源(図示せず)と接続されている入力軸10と、入力軸10を取り囲むように配置されている第1入力ギヤ11と、第1入力ギヤ11に近接しているとともに入力軸10を取り囲むように配置されている第2入力ギヤ12と、径方向に沿って入力軸10と間隔をあけるように配置されている出力軸13と、出力軸13を取り囲んでいるとともに第1入力ギヤ11と着脱可能に噛み合うことができるように配置されている第1出力ギヤ14と、出力軸13を取り囲んでいるとともに第2入力ギヤ12と着脱可能に噛み合うことができるように配置されている第2出力ギヤ15と、出力軸13と連接している一方向クラッチ17と、入力軸10と連接しているクラッチプレッシャープレート18と、入力軸10の軸方向においてクラッチプレッシャープレート18に当接するように配置されている当接機構19と、を備えている。
【0003】
当接機構19の作動によって、入力軸10により導入された動力は、クラッチプレッシャープレート18が係合状態または解除状態になることを制御することに用いられ得る。これによって、従来の変速機構1は、第1入力ギヤ11が第1出力ギヤ14と噛み合っている第1ギヤ位置と、第2入力ギヤ12が第2出力ギヤ15と噛み合っている第2ギヤ位置と、の間で切り替えられ得る。
【0004】
第1ギヤ位置においては、入力軸10により導入された動力が、第1入力ギヤ11及び第1出力ギヤ14を経由して出力軸13に伝達されて出力され得る。この際に、第2入力ギヤ12は入力軸10と共に回転するが、他のギヤと噛み合っていないので、動力は出力されることはない。一方、第2ギヤ位置においては、クラッチプレッシャープレート18の作動によって、入力軸10により導入された動力は、第2入力ギヤ12及び第2出力ギヤ15を経由して出力軸13に伝達され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】台湾特許出願公開第202302408号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように従来の変速機構は一方向クラッチ及びクラッチプレッシャープレートを備えているが、このようなクラッチ構成を有すると、変速機構に対して構成部品が多くて体積が大きいといった問題を招いてしまう。これによって、変速機構の小型化は困難となる。
【0007】
更に、一方向クラッチ及びクラッチプレッシャープレートは、作動の際に他の部品と直接に接触するので、必然的に摩耗が生じ、定期交換を行なう必要がある。このため、モータを動力源とする電気車両の使用者にとって不便である。
【0008】
よって、本発明は上記問題点に鑑みて、上記した少なくとも1つの欠点を解決することができる電気車両の変速システム及びそれを制御する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための手段として、本発明は、電気車両の変速システムを制御するための制御方法であって、
前記電気車両は、制御ユニットと、車両を推進する動力を提供するための動力モータと、前記電気車両のアクセル制御の位置を検出してアクセルポジション信号を生成し且つ前記制御ユニットへ送信するためのアクセルポジションセンサと、変速装置と、を備えており、
前記変速装置は、前記動力モータと接続されて前記動力モータからの動力を伝達するためのギヤセットと、前記ギヤセットと接続されている作動機構と、前記作動機構と接続されているシフトドラムと、前記シフトドラムと接続されて前記シフトドラムの回転角度を制御して、前記作動機構がギヤシフトを行なうことができるように構成されるギヤシフトモータと、を備えており、
前記制御方法は、
前記制御ユニットにより、前記動力モータの回転速度を示す回転速度情報を受信し、前記回転速度情報に基づいて前記ギヤシフトモータを制御してギヤシフトを行なうか否かを判断する判断ステップと、
前記制御ユニットにより、前記ギヤシフトモータを制御してギヤシフトを行なうと判断すると、前記回転速度情報と、前記アクセルポジション信号に対応するとともに前記動力モータにより出力されている操作ねじり力とに基づいて、目標ねじり力を計算する計算ステップと、
前記制御ユニットにより、前記ギヤシフトモータの作動を駆動して、前記シフトドラムの回転を開始させるギヤシフトモータ作動ステップと、
前記制御ユニットにより、前記動力モータを制御して、ねじり力の出力を前記操作ねじり力から前記目標ねじり力となるように変換して、前記ギヤセットに対してギヤシフトを行なう動力変換ステップと、
前記制御ユニットにより、前記動力モータを制御して、前記ねじり力の出力を前記目標ねじり力から前記操作ねじり力に戻るように変換する動力回復ステップと、を含んでいる、ことを特徴とする電気車両の変速システムの制御方法を提供する。
【0010】
また、電気車両の変速制御システムであって、
前記電気車両は、車両を推進する動力を提供するための動力モータを備えており、
前記変速制御システムは、制御ユニットと、アクセルポジションセンサと、変速装置と、を備えており、
前記アクセルポジションセンサは、前記電気車両のアクセル制御の位置を検出してアクセルポジション信号を生成し且つ前記制御ユニットへ送信するためのものであり、
前記変速装置は、前記動力モータと接続されて前記動力モータからの動力を伝達するためのギヤセットと、前記ギヤセットと接続されている作動機構と、前記作動機構と接続されているシフトドラムと、前記シフトドラムと接続されて前記シフトドラムの回転角度を制御して前記作動機構がギヤシフトを行なうことができるように構成されるギヤシフトモータと、を備えており、
前記制御ユニットは、
前記動力モータの回転速度を示す回転速度情報を受信し、
前記回転速度情報に基づいて前記ギヤシフトモータを制御してギヤシフトを行なうか否かを判断し、
前記ギヤシフトモータを制御してギヤシフトを行なうと判断すると、前記回転速度情報と、前記アクセルポジション信号に対応するとともに前記動力モータにより出力されている操作ねじり力とに基づいて、目標ねじり力を計算し、
前記ギヤシフトモータの作動を駆動して、前記シフトドラムの回転を開始させるように構成されている、ことを特徴とする電気車両の変速制御システムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電気車両の変速システム及びそれを制御する方法において、制御ユニットは、判断ステップと、計算ステップと、ギヤシフトモータ作動ステップと、動力変換ステップと、動力回復ステップと、を実施することができるように構成されている。これによって、変速装置にクラッチが配置されていない状態で、円滑なギヤシフトを実現することができることに加え、ギヤシフトショックを最小限に抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来の電気車両の変速機構が示される一部断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電気車両の変速システムを制御する方法が示されるフローチャートである。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態に係る電動スクータが示される模式的側面図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態に係る変速装置の構成が示される斜視図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態に係るギヤセットとシフトドラムと作動機構との構成が示される断面図である。
【
図6】本発明に係る変速制御システムの第1実施形態が示されるブロック図である。
【
図7】本発明に係る電気車両の変速システムによりアップシフトを行なっている際に、ねじり力の出力とシフトドラムの回転角度との間の関係の経時変化が示されるタイムチャートである。
【
図8】本発明に係る電気車両の変速システムによりダウンシフトを行なっている際に、ねじり力の出力とシフトドラムの回転角度との間の関係の経時変化が示されるタイムチャートである。
【
図9】本発明に係る変速制御システムの第2実施形態が示されるブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る電気車両の変速システム及びそれを制御する方法について図面を参照して説明する。
【0014】
図2~
図9を参照して本発明に係る電気車両の変速システムの構成及びその変速システムを制御するための方法を説明する。ここで、
図2は本発明の一実施形態に係る電気車両2の変速システムを制御する方法が示されるフローチャートであり、
図3は本発明のいくつかの実施形態に係る電動スクータ2が示される模式的側面図であり、
図4は本発明のいくつかの実施形態に係る変速装置4の構成が示される斜視図であり、
図5は本発明のいくつかの実施形態に係るギヤセット40とシフトドラム44と作動機構43との構成が示される断面図であり、
図6は本発明に係る変速制御システムの第1実施形態が示されるブロック図であり、
図7及び
図8は本発明に係る電気車両2の変速システムによりアップシフト及びダウンシフトを行なっている際に、ねじり力の出力とシフトドラム44の回転角度との間の関係の経時変化が示されるタイムチャートである。また、
図9は本発明に係る変速制御システムの第2実施形態が示されるブロック図である。
【0015】
図2及び
図3に示されるように、本発明に係る電気車両2の変速システムの制御方法の一実施形態は、本発明に係る電気車両2の変速システムの第1実施形態によって実施される。該実施形態の電気車両2の変速システムは、制御ユニット3と、制御ユニット3により制御され得る変速装置4と、を備えている。制御ユニット3は、モジュール式で統合されたもの(例えばプロセッサーやマイクロコントローラなど)である。
【0016】
図3に示されるように、該実施形態の電気車両2としては電動スクータ2が挙げられる。ここで、電動スクータ2は、制御ユニット3と、変速装置4(図示せず)と、車両を推進する動力を提供するための動力モータ21と、電動スクータ2のハンドルに設けられて使用者により操作されることができるアクセルグリップ22と、アクセルグリップ22と接続されているスロットルポジションセンサ(throttle position sensor)23と、を備えている。
【0017】
留意されたいのは、スロットルは、ガソリン車両に用いられる機構であって電気車両に存在しない可能性があるが、「スロットルポジションセンサ」という用語は、依然として電気車両2のアクセル制御部(例えば、本実施形態におけるアクセルグリップ22)の位置を検出するように構成されているアクセルポジションセンサを指すことに広く用いられるので、当業者であれば理解できると考えられる。
【0018】
本実施形態では、スロットルポジションセンサ23は、アクセルグリップ22の回転を感知して電圧信号を生成して制御ユニット3へ送信することができるように配置されている。その電圧信号(以下、「アクセルポジション信号」と呼ばれる)は、アクセルグリップ22の感知された角度位置を示している。このため、制御ユニット3は、アクセルポジション信号に基づいて、動力モータ21により出力されている操作ねじり力(或いは、トルク)を計算することができる。
【0019】
変速装置4は、
図3~
図5に示されるように、ギヤセット40と、作動機構43と、シフトドラム44と、角度センサ45と、ギヤシフトモータ46と、を備えている。
【0020】
ギヤセット40は、動力モータ21と接続されてその動力モータ21からの動力を伝達するためのものである。作動機構43は、ギヤセット40と接続されている。シフトドラム44は、作動機構43と接続されている。
【0021】
角度センサ45は、シフトドラム44と間隔をあけて配置され、シフトドラム44の回転角度を感知して、感知した回転角度を示す角度情報を出力することができるように構成されている。
【0022】
ギヤシフトモータ46は、シフトドラム44と接続されてシフトドラム44の回転角度を制御して、作動機構43がギヤシフトを行なうことができるように構成されている。なお、いくつかの実施形態においては、ギヤシフトモータ46は、例えばステッピングモータであるが、本実施形態においてそれに限定されない。
【0023】
ギヤセット40は、
図4に示されるように、入力軸組立体41と、入力軸組立体41に連動される出力軸組立体42と、を備えている。
【0024】
入力軸組立体41は、
図4に示されるように、軸体410と、軸体410を取り囲むように配置されている第1入力ギヤ411と、第1入力ギヤ411と間隔をあけて軸体410を取り囲むように配置されている第2入力ギヤ412と、を備えている。
【0025】
出力軸組立体42は、
図4に示されるように、軸棒420と、軸棒420を取り囲んでいるとともに第1入力ギヤ411と噛み合うように配置されている第1出力ギヤ421と、軸棒420を取り囲んでいるとともに第2入力ギヤ412と噛み合うように配置されている第2出力ギヤ422と、を備えている。
【0026】
作動機構43は、
図4に示されるように、複数のドグ歯439を有しているスライダ431と、スライダ431とシフトドラム44との間に連接されているシフトフォーク432と、を備えている。
【0027】
シフトフォーク432は、スライダ431を第1ギヤ位置と第2ギヤ位置との間で移動させるように制御されることができる。第1ギヤ位置とは、スライダ431における複数のドグ歯439が、第1出力ギヤ421のリムの内側において第1出力ギヤ421に形成されている第1開口部4211に挿入されることによって、第1出力ギヤ421と係合又は連接される位置である。一方、第2ギヤ位置とは、スライダ431における複数のドグ歯439が、第2出力ギヤ422のリムの内側において第2出力ギヤ422に形成されている第2開口部4221に挿入されることによって、第2出力ギヤ422と係合又は連接される位置である。
【0028】
本実施形態では、電動スクータ2は、上記した2つの位置の間で操作されることができることが例示されるが、それに限定されない。
【0029】
シフトドラム44は、
図5に示されるように、ドラム軸441と、2つの制限部材442と、外側スリーブ443と、2つの遮蔽板444と、2つの位置決め部材445と、2つのバネ446と、を備えている。
【0030】
2つの制限部材442は、
図5に示されるように、互いにドラム軸441の軸方向に沿って間隔をあけるようにドラム軸441にそれぞれ配置されている。
【0031】
外側スリーブ443は、
図5に示されるように、ドラム軸441を取り囲んでおり、ドラム軸441の軸方向において2つの制限部材442の間で移動することができるように配置されている。且つ、その外側スリーブ443の外側面には、螺旋溝4431が形成されている。
【0032】
図5に示されるように、作動機構43のシフトフォーク432が外側スリーブ443に形成された螺旋溝4431内に延伸しているので、シフトドラム44が回転すると、外側スリーブ443がドラム軸441の軸方向において作動機構43に力を与えるようになる。
【0033】
2つの遮蔽板444は、
図5に示されるように、ドラム軸441を取り囲むように2つの制限部材442におけるドラム軸441の軸方向に沿う外側にそれぞれ配置されており、且つドラム軸441の軸方向において移動することができる。
【0034】
2つの位置決め部材445は、
図5に示されるように、ドラム軸441を取り囲むように2つの遮蔽板444におけるドラム軸441の軸方向に沿う外側にそれぞれ配置されている。
【0035】
2つのバネ446は、
図5に示されるように、外側スリーブ443の両反対側にそれぞれ配置されている。各バネ446は、対応する制限部材442の一側にある位置決め部材445と遮蔽板444との間に設けられている。即ち、
図5から見ると、いずれか1つのバネ446は、制限部材442の左側に配置されている一方、他の1つのバネ446は、制限部材442の右側に配置されている。ここで、バネ446の構成によって、作動機構43が第1出力ギヤ421又は第2出力ギヤ422としっかりと係合している状態でシフトドラム44が回転することができる。
【0036】
また、作動機構43が第1出力ギヤ421又は第2出力ギヤ422としっかりと係合している状態でシフトドラム44が回転すると、外側スリーブ443がドラム軸441の軸方向において移動して1つの遮蔽板444を押し、例えば動力モータ21のねじり力の出力の変化によって、作動機構43が第1出力ギヤ421又は第2出力ギヤ422との係合から解放されるまで、対応するバネ446が弾性復元力を蓄える。
【0037】
更に、作動機構43のスライダ431が第1出力ギヤ421又は第2出力ギヤ422と最初にしっかりと係合していないときも、バネ446が弾性復元力を蓄える。それで、第1出力ギヤ421又は第2出力ギヤ422が適当な位置まで回転すると、蓄えられた弾性復元力によってドグ歯439が第1出力ギヤ421の第1開口4211又は第2出力ギヤ422の第2開口4221内に押し込まれる。
【0038】
このような構成によって、作動機構43が不正確な位置に留まることを防止して、作動機構43と第1出力ギヤ421又は第2出力ギヤ422との衝突を効果的に低減して、その衝突による騒音を低減して、ギヤシフトの流暢性を向上させることができる。
【0039】
図2に示されるように、該実施形態に係る電気車両の変速システムの制御方法は、判断ステップS61と、計算ステップS62と、ギヤシフトモータ作動ステップS63と、動力変換ステップS64と、動力回復ステップS65と、を順に含んでいる。
【0040】
該実施形態の電気車両2の変速システムの制御方法は、制御ユニット3により実行される。その制御ユニット3は、
図6に示されるように、動力モータ21とスロットルポジションセンサ23と角度センサ45とギヤシフトモータ46にそれぞれ電気的に接続されている。
【0041】
以下、該実施形態の電気車両2の変速システムの制御方法について作動機構43がシフトドラム44により駆動されて第1ギヤ位置から第2ギヤ位置へ切り替えられることを例として説明する。
【0042】
留意されたいのは、
図7に示されているシフトドラム44の回転角度は、第1ギヤ位置及び第2ギヤ位置に対応する角度の間の範囲にあり、正確な値を示すものではない。
【0043】
判断ステップS61において、制御ユニット3が動力モータ21の回転速度を示す回転速度情報を受信し、回転速度情報に示される回転速度を回転速度の少なくとも1つの所定の閾値と比較して、ギヤシフトを行なうために変速装置4のギヤシフトモータ46を制御して回転させるか否かを判断する。
【0044】
より詳しく言うと、動力モータ21の回転速度が回転速度のアップシフト閾値(例えば5000rpm)よりも大きいと判断すると、制御ユニット3は、ギヤシフトモータ46を制御してアップシフトを行なうように回転させる。一方、動力モータ21の回転速度が回転速度のダウンシフト閾値(例えば3000rpm)よりも小さいと判断すると、制御ユニット3は、ギヤシフトモータ46を制御してダウンシフトを行なう。
【0045】
以下、続いてのステップにおいて動力モータ21の回転速度が回転速度のアップシフト閾値よりも大きくて、アップシフトが行われる場合について説明する。留意されたいのは、回転速度のアップシフト閾値及びダウンシフト閾値は、
図3に示されるような電動スクータ2のタイプ又は動力モータ21の出力形態に応じて、同じ又は異なるように設定されることができる。制御ユニット3がギヤシフトモータ46を制御してギヤシフトを行なうと判断すると、計算ステップS62に進む。
【0046】
計算ステップS62において、制御ユニット3は、動力モータ21の回転速度、及びスロットルポジションセンサ23により出力されたアクセルポジション信号に対応するとともに動力モータ21により出力されている操作ねじり力を、電動スクータ2のパラメータに基づいて予め設計した計算式に代入することによって、操作ねじり力よりも小さな目標ねじり力(アップシフトが行われる場合)、動力変換期間T1、及び動力回復期間T2を計算する。
【0047】
ギヤシフトモータ作動ステップS63において、制御ユニット3は、シフトドラム44の回転を開始させるためにギヤシフトモータ46の作動を駆動し、角度センサ45から角度情報を受信してギヤシフトモータ46が目標位置まで正確に回転したか否かを判断するとともに、シフトドラム44の第1ギヤ角度位置と第2ギヤ角度位置との間での回転を制御することを確保する。ここで、
図7に示されるように、アップシフトが行われる場合、ギヤシフトモータ46がシフトドラム44を第1ギヤ角度位置から第2ギヤ角度位置まで回転させるように駆動される。
【0048】
動力変換ステップS64は、ギヤシフトモータ作動ステップS63の後に第1遅延期間D1を経て実施される。
【0049】
動力変換ステップS64において、制御ユニット3は、動力モータ21を制御して、動力変換期間T1においてねじり力の出力を操作ねじり力から目標ねじり力となるように変換することによって、作動機構43が第1出力ギヤ421又は第2出力ギヤ422との係合を解除するとともに、ギヤセット40に対してギヤシフトを実行する。
【0050】
アップシフトが行われる場合、目標ねじり力は操作ねじり力よりも小さいので、動力変換期間T1においてねじり力の出力は操作ねじり力から目標ねじり力まで減少する。
【0051】
ギヤシフトモータ作動ステップS63が動力変換ステップS64の前に実施されるので、シフトドラム44は目標角度位置まで早く回転して、動力変換を行なう時間を短縮することができることに加え、ギアシフトショックを最小限に抑えることができる。
【0052】
図5~
図7に示されるように、予め計算した動力変換期間T1は、作動機構43が第2出力ギヤ422と即時且つ正確に係合しない状況に対応するために、シフトドラム44のバネ446によって一時的に形成された緩衝効果を考慮して、動力モータ21がそのねじり力の出力を操作ねじり力から目標ねじり力となるように変更するよう設計される適切な時間長である。
【0053】
動力変換期間T1を利用することによって、クラッチ操作が不要であるクイックシフター機制と類似する機制が生じて、適正な時間間隔でねじり力の出力の変化を完了させることができる。それにより、ギアシフトショックを最小限に抑え、作動機構43とギアセット40との衝撃による騒音を低減することができる。
【0054】
動力回復ステップS65は、
図2と
図5と
図7に示されるように、ギヤシフトにおいてシフトドラム44の回転が完了した後、第2遅延期間D2を経てから実施される。
【0055】
動力回復ステップS65において、制御ユニット3は、動力モータ21を制御して、動力回復期間T2においてねじり力の出力を目標ねじり力から操作ねじり力に戻るように変換する。つまり、動力回復ステップS65は、ギヤシフトモータ作動ステップS63においてギヤシフトモータ46の作動によって開始されたシフトドラム44の回転が完了した後に第2遅延期間D2の追加遅延を経て実施される。
【0056】
これによって、動力モータ21が適切な時間長(即ち、動力回復期間T2)においてねじり力の出力を操作ねじり力まで上げ始める前に、作動機構43が第2出力ギヤ422と正確に係合することを確保することができる。
【0057】
動力回復期間T2を利用することによって、クラッチ操作が不要であるクイックシフター機制と類似する機制が生じて、適正な時間間隔においてねじり力の出力の変化を完了させることができる。それにより、ギアシフトショックを最小限に抑え、作動機構43とギアセット40との衝撃による騒音を低減することができる。
【0058】
図2と
図6と
図8に示されるように、第1の実施形態の変速制御システムがダウンシフトを行う場合、ギヤシフトモータ46は、シフトドラム44をシフトアップにおける回転方向と反対する方向に回転するように駆動するので、
図8に示されるシフトドラム44の回転角度の変化傾向は、
図7に示されるものと異なるとともに、ねじり力の出力の変化傾向も異なっている。
【0059】
更に、ダウンシフトにおいて動力変換期間T1と動力回復期間T2と目標ねじり力とを計算するためのパラメータは、アップシフトにおいて動力変換期間T1と動力回復期間T2と目標ねじり力とを計算するためのパラメータと当然に異なるとともに、計算ステップS62において用いられる所定の計算式を設計するために用いられる。
【0060】
より詳しく言うと、ダウンシフトが行われる場合、制御ユニット3は、動力モータ21の回転速度及び動力モータ21により出力されている操作ねじり力に関する情報を取得し、計算ステップS62において操作ねじり力よりも大きな目標ねじり力を適切に計算し、アップシフトが行われる場合と同様に続いてのギヤシフトモータ作動ステップS63と動力変換ステップS64と動力回復ステップS65とを実施する。これによって、迅速なギヤシフトを達成することができ、且つギヤシフトショックを最小限に抑えることもできる。
【0061】
以下、本発明に係る電気車両の変速システムの第2実施形態について
図2と
図3と
図9を参照しながら説明する。以下では、本発明に係る第2実施形態の電気車両の変速システムの、上記した第1実施形態の電気車両の変速システムと異なっている点について説明する。
【0062】
第2実施形態の制御ユニット3は、
図9に示されるように、ギヤシフトモータ46と接続されている車両制御ユニット(vehicle control unit)31と、車両制御ユニット31及び動力モータ21と接続されているモータ制御ユニット(motor control unit)32と、を備えている。
【0063】
つまり、
図6に示される第1実施形態の変速システムにおいて、制御ユニット3は、車両制御ユニット31及びモータ制御ユニット32の機能を統合した単一モジュール式の制御ユニットであるが、
図9に示される第2実施形態の変速システムにおいて、制御ユニット3は、互いに通信することができる別個の構成部品である車両制御ユニット31及びモータ制御ユニット32を備えている。
【0064】
第2実施形態において、モータ制御ユニット32は、動力モータ21を制御するために用いられるものであり、動力モータ21の回転速度を取得して回転速度情報を生成して、その回転速度情報を車両制御ユニット31へ送信することができる。車両制御ユニット31は、
図2に示されるように、判断ステップS62と、計算ステップS62と、ギヤシフトモータ作動ステップS63と、動力変換ステップS64と、動力回復ステップS65と、を実施する。
【0065】
また、車両制御ユニット31は、スロットルポジションセンサ23により送信されたアクセルポジション信号を受信し、アクセルグリップ22の操作に応じるトルク指令をモータ制御ユニット32へ送信することによって、動力モータ21の作動を制御することもできる。
【0066】
第2実施形態において、車両制御ユニット31は、モータ制御ユニット32から回転速度情報を受信して、ギヤシフトモータ46を制御してギヤシフトを行なうか否かを判断する。車両制御ユニット31は、第1実施形態の制御ユニット3のように、回転速度情報、及びアクセルポジション信号に対応するとともに動力モータ21により出力されている操作ねじり力に基づいて、目標ねじり力を計算する。
【0067】
第1実施形態のように、円滑なギヤシフトを実現し、シフトショックを低減するために、車両制御ユニット31は、動力変換期間T1及び動力回復期間T2も計算する。ここで、動力変換期間T1は、制御ユニット3がギヤシフトモータ46を回転させてから、第1遅延期間D1が経過した後に開始される。且つ、第2遅延期間D2は、シフトドラム44の回転が完了した後と動力回復期間T2の前との間に挿入され、作動機構43とギヤセット40との係合が完了したことを確保することができるように設計される期間である。
【0068】
即ち、制御ユニット3による機能は、制御対象(例えば、動力モータ21やギヤシフトモータ46)に応じて、第2実施形態の車両制御ユニット31及びモータ制御ユニット32に分配される。
【0069】
結果として、第2実施形態の変速システムも、第1実施形態の変速制御システムによって得られる効果(例えば、円滑なギヤシフト、ギヤシフトショックの最小化、ギヤシフトにおいて機械部品間の衝撃による騒音の低減など)を達成することができる。
【0070】
総括すると、本発明に係る電気車両の変速システム及びそれを制御する方法において、第1実施形態の制御ユニット3又は第2実施形態の車両制御ユニット31は、判断ステップS61と、計算ステップS62と、ギヤシフトモータ作動ステップS63と、動力変換ステップS64と、動力回復ステップS65と、を実施することができるように構成されている。
【0071】
これによって、変速装置4にクラッチが配置されていない状態で、円滑なギヤシフトを実現することができることに加え、ギヤシフトショックを最小限に抑えることもできる。
【0072】
上記においては、本発明の全体的な理解を促すべく、多くの具体的な詳細が示された。しかしながら、当業者であれば、一またはそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施形態及び変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る電気車両の変速システム及びそれを制御する方法によれば、変速システムの小型化、円滑なギヤシフト、及びギヤシフトショックを最小限に抑えることを実現することができる。そのため、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0075】
1 従来の変速機構
10 入力軸
11 第1入力ギヤ
12 第2入力ギヤ
13 出力軸
14 第1出力ギヤ
15 第2出力ギヤ
17 一方向クラッチ
18 クラッチプレッシャープレート
19 当接機構
2 電気車両(電動スクータ)
21 動力モータ
22 アクセルグリップ
23 スロットルポジションセンサ
3 制御ユニット
31 車両制御ユニット
32 モータ制御ユニット
4 変速装置
40 ギヤセット
41 入力軸組立体
410 軸体
411 第1入力ギヤ
412 第2入力ギヤ
42 出力軸組立体
420 軸棒
421 第1出力ギヤ
4211 第1開口部
422 第2出力ギヤ
4221 第2開口部
43 作動機構
431 スライダ
432 シフトフォーク
439 ドグ歯
44 シフトドラム
441 ドラム軸
442 制限部材
443 外側スリーブ
4431 螺旋溝
444 遮蔽板
445 位置決め部材
446 バネ
45 角度センサ
46 ギヤシフトモータ
S61 判断ステップ
S62 計算ステップ
S63 ギヤシフトモータ作動ステップ
S64 動力変換ステップ
S65 動力回復ステップ
T1 動力変換期間
T2 動力回復期間
D1 第1遅延期間
D2 第2遅延期間