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特開2024-83260機械加工が容易なケイ酸リチウムガラスセラミック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083260
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】機械加工が容易なケイ酸リチウムガラスセラミック
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/04 20060101AFI20240613BHJP
   C03B 32/02 20060101ALI20240613BHJP
   A61C 5/70 20170101ALI20240613BHJP
   A61C 13/007 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C03C10/04
C03B32/02
A61C5/70
A61C13/007
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023199189
(22)【出願日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】22212273
(32)【優先日】2022-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ランプ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン リッツベルガー
(72)【発明者】
【氏名】マルク ディトマー
【テーマコード(参考)】
4C159
4G015
4G062
【Fターム(参考)】
4C159GG06
4C159GG15
4C159RR15
4C159SS01
4C159SS02
4C159TT10
4G015EA02
4G062AA11
4G062BB01
4G062CC09
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB03
4G062DB04
4G062DC01
4G062DC02
4G062DC03
4G062DD02
4G062DD03
4G062DE01
4G062DE02
4G062DE03
4G062EA03
4G062EA04
4G062EB01
4G062EB02
4G062EB03
4G062EC01
4G062EC02
4G062EC03
4G062ED01
4G062ED02
4G062ED03
4G062EE01
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4G062EF02
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4G062FD04
4G062FE01
4G062FE02
4G062FE03
4G062FE04
4G062FF01
4G062FF02
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4G062FG01
4G062FG02
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4G062FH03
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4G062FL01
4G062FL02
4G062FL03
4G062FL04
4G062HH02
4G062HH06
4G062HH08
4G062MM20
4G062NN33
4G062QQ03
4G062QQ06
4G062QQ09
4G062QQ20
(57)【要約】
【課題】機械加工が容易なケイ酸リチウムガラスセラミックを提供すること。
【解決手段】本発明は、主結晶相として二ケイ酸リチウムを有し、40重量%以下の二ケイ酸リチウム結晶を含むケイ酸リチウムガラスセラミックに関する。驚くべきことに、本発明によるガラスセラミックは、歯科用修復材料にまさに必要な、非常に望ましい機械的特性および光学特性の組合せを示すことが見出された。このガラスセラミックは、低強度および靭性を有し、したがって、かなり複雑な歯科修復材の形状にさえ、非常に短時間で容易に機械加工することができ、一方でそのような機械加工後には、さらなる熱処理がなくとも、優れた機械的特性、優れた光学特性、および非常に良好な化学安定性を有する歯科修復材として使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主結晶相として二ケイ酸リチウムを含み、40重量%以下の二ケイ酸リチウム結晶を含むケイ酸リチウムガラスセラミック。
【請求項2】
35重量%以下、好ましくは32重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、特に好ましくは28重量%以下、特に10~40重量%、好ましくは15~35重量%、さらに好ましくは20~32重量%、特に好ましくは22~30重量%の二ケイ酸リチウム結晶を含む、請求項1に記載のガラスセラミック。
【請求項3】
前記二ケイ酸リチウム結晶が、10~1000nmの範囲、好ましくは50~750nmの範囲、より好ましくは100~500nmの範囲、最も好ましくは150~250nmの範囲の平均長さ、および1.0~5.0の範囲、好ましくは1.25~3.0の範囲、より好ましくは1.5~2.5の範囲、最も好ましくは1.75~2.0の範囲のアスペクト比を有する、請求項1または2に記載のガラスセラミック。
【請求項4】
62.0~80.0重量%、好ましくは64.0~75.0重量%、特に好ましくは65.0~73.0重量%のSiOを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項5】
7.0~13.0重量%、好ましくは9.0~12.5重量%、特に好ましくは10.0~12.0重量%のLiOを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項6】
2.0~12.0重量%、好ましくは3.0~10.0重量%、特に好ましくは5.0~9.0重量%のさらなる一価元素の酸化物Me Oを含み、Me Oは、NaO、KO、RbO、CsO、およびそれらの混合物から選択され、好ましくは、KOである、請求項1~5のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項7】
3.0~12.0重量%、好ましくは3.0~10.0重量%、特に好ましくは3.0~9.0重量%、最も好ましくは4.0~7.0重量%のAlを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項8】
0.5~10.0重量%、好ましくは1.0~8.0重量%、より好ましくは1.5~6.0重量%、特に好ましくは1.8~5.0重量%、最も好ましくは2.0~3.0重量%のPを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項9】
以下の成分のうちの少なくとも1つ、好ましくはすべてを、示される量で含み:
成分 重量%
SiO 62.0~75.0
LiO 7.0~12.0
Me O 2.0~12.0、特に5.0~10.0
Al 3.0~12.0
0.5~5.0
MeIIO 0~8.0
MeIII 0~8.0
MeIV 0~12.0
Me 0~9.0
MeVI 0~3.0
フッ素 0~2.0
ここで、Me Oは、NaO、KO、RbO、CsO、およびそれらの混合物から選択され、
MeIIOは、MgO、CaO、SrO、ZnO、およびそれらの混合物から選択され、
MeIII は、B、Y、La、Ga、In、およびそれらの混合物から選択され、
MeIVは、TiO、ZrO、GeO、SnO、CeO、およびそれらの混合物から選択され、
Me は、V、Nb、Ta、およびそれらの混合物から選択され、
MeVIは、MoO、WO、およびそれらの混合物から選択される、
請求項1~8のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項10】
SiOのLiOに対するモル比が、2.5~4.0の範囲、好ましくは2.8~3.8の範囲、特に好ましくは3.0~3.6の範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項11】
12重量%未満、特に10重量%未満、好ましくは8重量%未満、特に好ましくは5重量%未満の二次結晶相、特にメタケイ酸リチウム結晶、リン酸リチウム結晶、SiO結晶、例えば、石英結晶もしくはクリストバライト結晶、SiO固溶体、例えば、石英固溶体、クリストバライト固溶体もしくはアルミノケイ酸リチウム結晶、またはZrO結晶を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項12】
10重量%未満、特に7重量%未満、好ましくは5重量%未満、特に好ましくは3重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の石英結晶および/または石英固溶体を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のガラスセラミックの成分を含み、特に、二ケイ酸リチウム結晶の形成のための核を含む、出発ガラス。
【請求項14】
前記ガラスセラミックまたは出発ガラスが、粉末、粒状物、ブランクまたは歯科修復材の形態である、請求項1~12のいずれか一項に記載のガラスセラミックまたは請求項13に記載の出発ガラス。
【請求項15】
請求項1~12または14のいずれか一項に記載のガラスセラミックを製造するための方法であって、請求項13または14に記載の出発ガラスを、400~1000℃の温度で、特に1~120分、好ましくは5~90分、特に好ましくは10~60分の継続時間にわたって、少なくとも1回の熱処理に供する、方法。
【請求項16】
(a)前記出発ガラスを、400~650℃、好ましくは450~600℃、特に好ましくは480~580℃の温度で、特に1~240分、好ましくは5~120分、特に好ましくは10~60分の継続時間にわたって、熱処理に供して、核を有する出発ガラスを形成し、
(b)核を有する前記出発ガラスを、700~1000℃、好ましくは750~950℃、特に好ましくは800~900℃の温度で、特に1~120分、好ましくは2~90分、特に好ましくは5~60分、最も好ましくは10~30分の継続時間にわたって、熱処理に供して、前記ガラスセラミックを形成する、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
歯科材料としての、好ましくは歯科修復材をコーティングするための、特に好ましくは歯科修復材を製造するための、請求項1~12もしくは14のいずれか一項に記載のガラスセラミック、または請求項13もしくは14に記載の出発ガラスの使用。
【請求項18】
前記ガラスセラミックが、プレスまたは機械加工によって、所望の歯科修復材、特に、ブリッジ、インレー、アンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットの形状を付与される、請求項17に記載の歯科修復材を製造するための使用。
【請求項19】
前記ガラスセラミックが、700~1000℃、好ましくは750~950℃、より好ましくは800~900℃の温度で、特に1~90分、好ましくは2~60分、より好ましくは5~30分、最も好ましくは10~15分の継続時間にわたって、熱処理に供される、請求項17または18に記載の使用。
【請求項20】
歯科修復材、特に、ブリッジ、インレー、アンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットを製造するための方法であって、請求項1~12もしくは14のいずれか一項に記載のガラスセラミック、または請求項13もしくは14に記載の出発ガラスが、プレスまたは機械加工によって、特にCAD/CAM法の一部として、所望の歯科修復材の形状を付与される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、とりわけ歯科における使用、特に歯科修復材の製造に好適なケイ酸リチウムガラスセラミック、およびこのガラスセラミックを製造するための前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ酸リチウムガラスセラミックは、一般に、非常に良好な機械的特性を特徴とし、そのため、歯科分野において、主に歯科用クラウンおよび小さな歯科用ブリッジの製作のために先般来使用されている。
【0003】
WO95/32678A2は、二ケイ酸リチウムガラスセラミックを記載しており、これは、粘稠状態でプレスすることによって歯科修復材に加工される。しかしながら、変形可能なるつぼの使用が必要であり、これにより、加工が非常に複雑になる。
【0004】
EP0827941A1およびEP0916625A1は、二ケイ酸リチウムガラスセラミックを開示しており、これは、プレスまたは機械加工することによって所望の歯科修復材の形状を付与することができる。
【0005】
EP1505041A1およびEP1688398A1は、二ケイ酸リチウムガラスセラミックの歯科修復材の製造のための方法を記載している。これらの方法では、主結晶相としてメタケイ酸リチウムを含むガラスセラミックが、中間段階として最初に製造され、これを、例えば、CAD/CAM法によって機械加工することができる。この中間段階は、次いで、さらなる熱処理に供されて所望の高強度二ケイ酸リチウムガラスセラミックが形成される。
【0006】
従来の二ケイ酸リチウムガラスセラミックの機械加工は、それらが高強度であることに起因して困難であり、したがって、通常、使用器具の激しい摩耗を伴う。メタケイ酸リチウムガラスセラミックの機械加工は、一般に、より容易であり、場合により、器具はそれほど摩耗しない。しかしながら、このようにして得られた成形メタケイ酸リチウムガラスセラミックは、メタケイ酸リチウム結晶が二ケイ酸リチウム結晶に変換され、したがって、十分に高強度の歯科修復材が形成されるために、さらなる熱処理を受けなければならない。これは、多くの場合に望ましい、1回の処置セッションでの患者への歯科修復材の提供(いわゆるチェアサイド処置)の際に、特に問題となる。
したがって、迅速かつ容易に機械加工することができ、さらなる結晶化ステップなしに歯科修復材として使用することができ、また高い耐薬品性および優れた光学特性を示す、ケイ酸リチウムガラスセラミックへの必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第95/32678号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0827941号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0916625号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1505041号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1688398号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
この問題は、請求項1~12および14に記載のケイ酸リチウムガラスセラミックによって解決される。また、本発明の主題は、請求項13および14に記載の出発ガラス、請求項15および16に記載の方法、請求項17~19に記載の使用、ならびに請求項20に記載の方法である。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
主結晶相として二ケイ酸リチウムを含み、40重量%以下の二ケイ酸リチウム結晶を含むケイ酸リチウムガラスセラミック。
(項目2)
35重量%以下、好ましくは32重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、特に好ましくは28重量%以下、特に10~40重量%、好ましくは15~35重量%、さらに好ましくは20~32重量%、特に好ましくは22~30重量%の二ケイ酸リチウム結晶を含む、先行する項目に記載のガラスセラミック。
(項目3)
前記二ケイ酸リチウム結晶が、10~1000nmの範囲、好ましくは50~750nmの範囲、より好ましくは100~500nmの範囲、最も好ましくは150~250nmの範囲の平均長さ、および1.0~5.0の範囲、好ましくは1.25~3.0の範囲、より好ましくは1.5~2.5の範囲、最も好ましくは1.75~2.0の範囲のアスペクト比を有する、先行する項目のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目4)
62.0~80.0重量%、好ましくは64.0~75.0重量%、特に好ましくは65.0~73.0重量%のSiOを含む、先行する項目のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目5)
7.0~13.0重量%、好ましくは9.0~12.5重量%、特に好ましくは10.0~12.0重量%のLiOを含む、先行する項目のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目6)
2.0~12.0重量%、好ましくは3.0~10.0重量%、特に好ましくは5.0~9.0重量%のさらなる一価元素の酸化物Me Oを含み、Me Oは、NaO、KO、RbO、CsO、およびそれらの混合物から選択され、好ましくは、KOである、先行する項目のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目7)
3.0~12.0重量%、好ましくは3.0~10.0重量%、特に好ましくは3.0~9.0重量%、最も好ましくは4.0~7.0重量%のAlを含む、先行する項目のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目8)
0.5~10.0重量%、好ましくは1.0~8.0重量%、より好ましくは1.5~6.0重量%、特に好ましくは1.8~5.0重量%、最も好ましくは2.0~3.0重量%のPを含む、先行する項目のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目9)
以下の成分のうちの少なくとも1つ、好ましくはすべてを、示される量で含み:
成分 重量%
SiO 62.0~75.0
LiO 7.0~12.0
Me O 2.0~12.0、特に5.0~10.0
Al 3.0~12.0
0.5~5.0
MeIIO 0~8.0
MeIII 0~8.0
MeIV 0~12.0
Me 0~9.0
MeVI 0~3.0
フッ素 0~2.0
ここで、Me Oは、NaO、KO、RbO、CsO、およびそれらの混合物から選択され、
MeIIOは、MgO、CaO、SrO、ZnO、およびそれらの混合物から選択され、
MeIII は、B、Y、La、Ga、In、およびそれらの混合物から選択され、
MeIVは、TiO、ZrO、GeO、SnO、CeO、およびそれらの混合物から選択され、
Me は、V、Nb、Ta、およびそれらの混合物から選択され、
MeVIは、MoO、WO、およびそれらの混合物から選択される、
先行する項目のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目10)
SiOのLiOに対するモル比が、2.5~4.0の範囲、好ましくは2.8~3.8の範囲、特に好ましくは3.0~3.6の範囲である、先行する項目のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目11)
12重量%未満、特に10重量%未満、好ましくは8重量%未満、特に好ましくは5重量%未満の二次結晶相、特にメタケイ酸リチウム結晶、リン酸リチウム結晶、SiO結晶、例えば、石英結晶もしくはクリストバライト結晶、SiO固溶体、例えば、石英固溶体、クリストバライト固溶体もしくはアルミノケイ酸リチウム結晶、またはZrO結晶を含む、先行する項目のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目12)
10重量%未満、特に7重量%未満、好ましくは5重量%未満、特に好ましくは3重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の石英結晶および/または石英固溶体を含む、先行する項目のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目13)
先行する項目のいずれか一項に記載のガラスセラミックの成分を含み、特に、二ケイ酸リチウム結晶の形成のための核を含む、出発ガラス。
(項目14)
前記ガラスセラミックまたは出発ガラスが、粉末、粒状物、ブランクまたは歯科修復材の形態である、先行する項目のいずれか一項に記載のガラスセラミックまたは先行する項目に記載の出発ガラス。
(項目15)
先行する項目のいずれか一項に記載のガラスセラミックを製造するための方法であって、先行する項目のいずれか一項に記載の出発ガラスを、400~1000℃の温度で、特に1~120分、好ましくは5~90分、特に好ましくは10~60分の継続時間にわたって、少なくとも1回の熱処理に供する、方法。
(項目16)
(a)前記出発ガラスを、400~650℃、好ましくは450~600℃、特に好ましくは480~580℃の温度で、特に1~240分、好ましくは5~120分、特に好ましくは10~60分の継続時間にわたって、熱処理に供して、核を有する出発ガラスを形成し、
(b)核を有する前記出発ガラスを、700~1000℃、好ましくは750~950℃、特に好ましくは800~900℃の温度で、特に1~120分、好ましくは2~90分、特に好ましくは5~60分、最も好ましくは10~30分の継続時間にわたって、熱処理に供して、前記ガラスセラミックを形成する、
先行する項目に記載の方法。
(項目17)
歯科材料としての、好ましくは歯科修復材をコーティングするための、特に好ましくは歯科修復材を製造するための、先行する項目のいずれか一項に記載のガラスセラミック、または先行する項目のいずれか一項に記載の出発ガラスの使用。
(項目18)
前記ガラスセラミックが、プレスまたは機械加工によって、所望の歯科修復材、特に、ブリッジ、インレー、アンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットの形状を付与される、先行する項目に記載の歯科修復材を製造するための使用。
(項目19)
前記ガラスセラミックが、700~1000℃、好ましくは750~950℃、より好ましくは800~900℃の温度で、特に1~90分、好ましくは2~60分、より好ましくは5~30分、最も好ましくは10~15分の継続時間にわたって、熱処理に供される、先行する項目のいずれか一項に記載の使用。
(項目20)
歯科修復材、特に、ブリッジ、インレー、アンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットを製造するための方法であって、先行する項目のいずれか一項に記載のガラスセラミック、または先行する項目のいずれか一項に記載の出発ガラスが、プレスまたは機械加工によって、特にCAD/CAM法の一部として、所望の歯科修復材の形状を付与される、方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
概要
本発明は、主結晶相として二ケイ酸リチウムを有し、40重量%以下の二ケイ酸リチウム結晶を含むケイ酸リチウムガラスセラミックに関する。
本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックは、主結晶相として二ケイ酸リチウムを含み、40重量%以下の二ケイ酸リチウム結晶を含むことを特徴とする。
【0010】
驚くべきことに、本発明によるガラスセラミックは、歯科用修復材料にまさに必要な、非常に望ましい機械的特性および光学特性の組合せを示すことが見出された。このガラスセラミックは、低強度および靭性を有し、したがって、かなり複雑な歯科修復材の形状にさえ、非常に短時間で容易に機械加工することができ、一方でそのような機械加工後には、さらなる熱処理がなくとも、優れた機械的特性、優れた光学特性、および非常に良好な化学安定性を有する歯科修復材として使用することができる。
【0011】
「主結晶相」という用語は、ガラスセラミック中に存在するすべての結晶相のうちの最高質量割合を有する結晶相を記載するために使用される。結晶相の質量は、特に、リートベルト法によって決定される。リートベルト法による結晶相の定量分析のための好適な手順は、例えば、M.Dittmerによる学術論文"Glasses and glass ceramics in the system MgO-Al2O3-SiO2 with ZrO2 as nucleating agent", University of Jena 2011に記載されている。
【0012】
好ましくは、本発明によるガラスセラミックは、35重量%以下、好ましくは32重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、特に好ましくは28重量%以下の二ケイ酸リチウム結晶を含む。特に好ましくは、ガラスセラミックは、10~40重量%、好ましくは15~35重量%、さらに好ましくは20~32重量%、とりわけ好ましくは22~30重量%の二ケイ酸リチウム結晶を含む。
【0013】
本発明によるガラスセラミックにおいて、二ケイ酸リチウム結晶は、10~1000nmの範囲、好ましくは50~750nmの範囲、特に好ましくは100~500nmの範囲、最も好ましくは150~250nmの範囲の平均長さを有し、1.0~5.0の範囲、好ましくは1.25~3.0の範囲、特に好ましくは1.5~2.5の範囲、最も好ましくは1.75~2.0の範囲のアスペクト比を有することがさらに好ましい。本文脈において、「平均長さ」という用語は、結晶の最大伸長の数値平均を示し、「平均アスペクト比」という用語は、結晶の最大および最小伸長の比率の数値平均を示す。結晶の伸長の測定は、特に、SEM画像に基づいて実施することができ、SEM画像は、好ましくは、Olympus Stream Motionソフトウェア(オリンパス株式会社、東京、日本)などの画像分析ソフトウェアを使用して、目的のガラスセラミックの、磨かれてHF蒸気エッチングされた表面で撮られる。
【0014】
本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックは、特に、62.0~80.0重量%、好ましくは64.0~75.0重量%、特に好ましくは65.0~73.0重量%のSiOを含む。
【0015】
ガラスセラミックは、7.0~13.0重量%、好ましくは9.0~12.5重量%、特に好ましくは10.0~12.0重量%のLiOを含むことがさらに好ましい。LiOはガラスマトリックスの粘度を低下させ、したがって所望の相の結晶化を促進すると考えられる。
【0016】
別の好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、2.0~12.0重量%、好ましくは3.0~10.0重量%、より好ましくは5.0~9.0重量%のさらなる一価元素の酸化物Me Oを含み、Me Oは、NaO、KO、RbO、CsOおよびそれらの混合物から選択され、好ましくは、KOである。
【0017】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、以下のさらなる一価元素の酸化物Me Oのうちの少なくとも1つ、特にすべてを、示される量で含む。
成分 重量%
NaO 0~5.0
O 0~10.0
RbO 0~8.0
CsO 0~8.0
【0018】
特に好ましい実施形態では、本発明によるガラスセラミックは、2.0~10.0重量%、好ましくは3.0~9.0重量%、とりわけ好ましくは5.0~8.0重量%のKOを含む。
【0019】
ガラスセラミックは、3.0~12.0重量%、好ましくは3.0~10.0重量%、より好ましくは3.0~9.0重量%、最も好ましくは4.0~7.0重量%のAlを含むこともまた、好ましい。
【0020】
別の好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、0.5~10.0重量%、好ましくは1.0~8.0重量%、より好ましくは1.5~6.0重量%、特に好ましくは1.8~5.0重量%、最も好ましくは2.0~3.0重量%のPを含む。Pは、核形成剤として作用すると考えられる。
【0021】
ガラスセラミックは、MgO、CaO、SrO、ZnO、およびそれらの混合物の群から選択される、0~8.0重量%、好ましくは0.5~7.0重量%、より好ましくは1.0~6.0重量%、最も好ましくは2.0~4.0重量%の二価元素の酸化物MeIIOを含むことがさらに好ましい。
【0022】
さらに好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、4.0未満、好ましくは2.0未満、特に好ましくは1.0重量%未満のBaOを含む。特に、ガラスセラミックは、BaOを実質的に含まない。
好ましくは、ガラスセラミックは、以下の二価元素の酸化物MeIIOのうちの少なくとも1つ、特にすべてを、示される量で含む。
成分 重量%
MgO 0~4.0
CaO 0~4.0
SrO 0~10.0
ZnO 0~6.0
【0023】
特に好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、0~4.0重量%、好ましくは0.5~3.5重量%、より好ましくは1.0~3.0重量%のMgOを含む。
【0024】
別の特に好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、0~10.0重量%、好ましくは0.5~8.0重量%、より好ましくは1.0~6.0重量%、最も好ましくは2.0~4.0重量%のSrOを含む。
【0025】
、Y、La、Ga、In、およびそれらの混合物の群から選択される、0~12.0重量%、好ましくは0.5~10.0重量%、特に好ましくは1.0~8.0重量%、とりわけ好ましくは2.0~6.0重量%のさらなる三価元素の酸化物MeIII を含むガラスセラミックが、さらに好ましい。
【0026】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、以下のさらなる三価元素の酸化物MeIII のうちの少なくとも1つ、特にすべてを、示される量で含む。
成分 重量%
0~8.0
0~8.0
La 0~8.0
Ga 0~5.0
In 0~5.0
【0027】
さらに、TiO、ZrO、GeO、SnO、CeO、およびそれらの混合物の群から選択される0~12.0重量%、好ましくは0.5~10.0重量%、特に好ましくは1.0~9.0重量%の四価元素の酸化物MeIVを含むガラスセラミックが好ましい。
【0028】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、以下の四価元素の酸化物MeIVのうちの少なくとも1種、特にすべてを、示される量で含む:
成分 重量%
TiO 0~5.0
ZrO 0~12.0
GeO 0~5.0
SnO 0~5.0
CeO 0~5.0
【0029】
特に好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、0~12.0重量%、好ましくは1.0~10.0重量%、より好ましくは4.0~8.0重量%のZrOを含む。
【0030】
別の実施形態では、ガラスセラミックは、V、Nb、Ta、およびそれらの混合物の群から選択される、0~10.0重量%、好ましくは1.0~9.0重量%、より好ましくは2.0~8.0重量%のさらなる五価元素の酸化物Me を含む。
【0031】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、以下のさらなる五価元素の酸化物Me のうちの少なくとも1つ、特にすべてを、示される量で含む。
成分 重量%
0~2.0
Nb 0~10.0
Ta 0~10.0
【0032】
別の実施形態では、ガラスセラミックは、MoO、WO、およびそれらの混合物の群から選択される0~8.0重量%、好ましくは1.0~6.0重量%、より好ましくは2.0~4.0重量%の六価元素の酸化物MeVIを含む。
【0033】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、以下の酸化物MeVIのうちの少なくとも1種、特にすべてを、示される量で含む。
成分 重量%
MoO 0~3.0
WO 0~3.0
【0034】
さらなる実施形態では、本発明によるガラスセラミックは、0~5.0重量%、好ましくは0.1~2.0重量%、特に好ましくは0.5~1.0重量%のフッ素を含む。
【0035】
以下の成分のうちの少なくとも1つ、好ましくはすべてを、示される量で含むガラスセラミックが特に好ましい。
成分 重量%
SiO 62.0~80.0
LiO 7.0~13.0
Me O 2.0~12.0、特に5.0~10.0
Al 3.0~12.0
0.5~10.0
MeIIO 0~8.0
MeIII 0~12.0
MeIV 0~12.0
Me 0~10.0
MeVI 0~8.0
フッ素 0~5.0
ここで、Me O、MeIIO、MeIII 、MeIV、Me 、およびMeVIは、上で示される意味を有する。
【0036】
別の特に好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、以下の成分のうちの少なくとも1つ、好ましくはすべてを、示される量で含む。
成分 重量%
SiO 62.0~80.0
LiO 7.0~13.0
Al 3.0~12.0
0.5~10.0
NaO 0~5.0
O 0~10.0
RbO 0~8.0
CsO 0~8.0
MgO 0~4.0
CaO 0~4.0
SrO 0~10.0
ZnO 0~6.0
0~8.0
0~8.0
La 0~8.0
Ga 0~5.0
In 0~5.0
TiO 0~5.0
ZrO 0~12.0
GeO 0~5.0
SnO 0~5.0
CeO 0~5.0
0~2.0
Nb 0~10.0
Ta 0~10.0
MoO 0~3.0
WO 0~3.0
フッ素 0~5.0
【0037】
上記成分のうちのいくつかは、着色料および/または蛍光剤として役立ちうる。本発明によるガラスセラミックは、さらなる着色料および/または蛍光剤をさらに含有していてもよい。これらは、例えば、BiまたはBiから、特に、さらなる無機顔料ならびに/またはdおよびf元素の酸化物、例えば、Mn、Fe、Co、Pr、Nd、Tb、Er、Dy、EuおよびYbの酸化物から選択されてもよい。これらの着色料および蛍光剤によって、ガラスセラミックを容易に着色して、特に天然の歯の材料の、所望の光学特性を模倣することが可能である。
【0038】
ガラスセラミックの好ましい実施形態では、SiOのLiOに対するモル比は、2.5~4.0の範囲、好ましくは2.8~3.8の範囲、特に好ましくは3.0~3.6の範囲である。
【0039】
典型的には、本発明によるガラスセラミックは、主結晶相の二ケイ酸リチウムに加えて、多くとも少量の二次結晶相を含む。好ましくは、ガラスセラミックは、12重量%未満、特に10重量%未満、好ましくは8重量%未満、特に好ましくは5重量%未満の二次結晶相を含む。そのような二次結晶相の例は、メタケイ酸リチウム結晶、リン酸リチウム結晶、SiO結晶、例えば、石英結晶もしくはクリストバライト結晶、SiO固溶体、例えば、石英固溶体、クリストバライト固溶体もしくはアルミノケイ酸リチウム結晶、またはZrO結晶である。ガラスセラミックは、10重量%未満、特に7重量%未満、好ましくは5重量%未満、とりわけ好ましくは3重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の石英結晶および/または石英固溶体を含むことが特に好ましい。また、本発明によるガラスセラミックは、クリストバライトを本質的に含まないことが特に好ましい。
【0040】
形成される結晶相のタイプおよび特に量は、出発ガラスの組成、および出発ガラスからガラスセラミックを生成するために適用される熱処理によって、制御することができる。実施例は、出発ガラスの組成および適用される熱処理を変動させることによってこれを例示する。
【0041】
ガラスセラミックは、好ましくは少なくとも200MPa、特に好ましくは250~600MPaの二軸破壊強度σを有する。二軸破壊強度は、ISO 6872(2008)(ピストンオン3ボール試験)に従って決定した。
【0042】
本発明によるガラスセラミックは、好ましくは8~13・10-6-1の熱膨張係数CTE(100~500℃の範囲において測定)を有する。CTEは、ISO 6872(2015)に従って決定する。熱膨張係数は、特に、ガラスセラミック中に存在する結晶相のタイプおよび量によって、ならびにガラスセラミックの化学組成によって、所望の値に調節される。
【0043】
ガラスセラミックの半透明度は、英国規格BS 5612に従うコントラスト値(CR値)に関して決定し、このコントラスト値は、好ましくは30~90、より好ましくは40~85であった。
【0044】
本発明はまた、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックを熱処理によって製造することができる、対応する組成の様々な前駆体に関する。これらの前駆体は、対応して構成される出発ガラスおよび対応して構成される核を有する出発ガラスである。「対応する組成」という用語は、これらの前駆体が、ガラスセラミックと同じ成分を同じ量で含むことを意味し、成分は、フッ素を除き、ガラスおよびガラスセラミックについて通常であるように酸化物として計算される。
【0045】
したがって、本発明はまた、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックの成分を含む出発ガラスに関する。
【0046】
したがって、本発明による出発ガラスは、特に、好適な量のSiOおよびLiOを含み、これらは、主結晶相として二ケイ酸リチウムを含む本発明によるガラスセラミックを形成するのに必要である。さらに、出発ガラスはまた、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックについて上で示した通りの他の成分を含んでもよい。すべてのそのような実施形態は、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックの成分について好ましいとやはり示される出発ガラスの成分について好ましい。
【0047】
本発明はまた、二ケイ酸リチウム結晶の形成のための核を含むそのような出発ガラスに関する。
【0048】
本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックおよび本発明による出発ガラスは、特に、粉末、顆粒、または任意の形状およびサイズのブランクの形態、例えば、モノリシックブランク、例えば、小板、立方体もしくは円柱、または粉末成形体、焼結されていない形態、部分的に焼結された形態、または緻密に焼結された形態で存在する。これらの形態において、それらは、容易にさらに加工することができる。しかしながら、それらはまた、歯科修復材の形態、例えば、インレー、アンレー、クラウン、ベニア、ファセットまたはアバットメントでありうる。
【0049】
特に、出発ガラスは、好適な出発材料の混合物、例えば、カーボネート、酸化物、ホスフェートおよびフッ化物を、特に1300~1600℃の温度で2~10時間溶融することによって製造される。特に高い均質性を実現するために、得られたガラス溶融物は、ガラス粒状物を形成するために水に注がれ、次いで、得られた粒状物は、再溶融される。
【0050】
次いで、溶融物は、型に注いで、出発ガラスのブランク、いわゆる固体ガラスブランクまたはモノリシックブランクを製造することができる。
【0051】
溶融物は、再度水に注いで、粒状物を製造することも可能である。摩砕、および必要な場合さらなる成分、例えば着色剤および蛍光剤の添加後、この粒状物は、ブランク、いわゆる粉末成形体にプレスすることができる。
【0052】
最後に、出発ガラスはまた、造粒後、粉末に加工することができる。
【0053】
続いて、例えば固体ガラスブランク、粉末成形体の形態、または粉末の形態の出発ガラスは、少なくとも1回の熱処理に供される。まず初めに、第1の熱処理が実施されて、二ケイ酸リチウム結晶の形成のための核を有する本発明による出発ガラスが製造されることが好ましい。次いで、核を有する出発ガラスは、典型的には、より高温での少なくとも1回のさらなる熱処理に供されて、二ケイ酸リチウムの結晶化が起こり、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックが製造される。
【0054】
したがって本発明はまた、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックの製造のための方法であって、出発ガラスまたは核を有する出発ガラスを、400~1000℃の温度で、特に1~120分、好ましくは5~90分、特に好ましくは10~60分の継続時間にわたって、少なくとも1回の熱処理に供する、方法に関する。
【0055】
本発明による方法において実施される少なくとも1回の熱処理はまた、本発明による出発ガラスまたは本発明による核を有する出発ガラスの熱間プレスまたは焼結の過程で実施することができる。
【0056】
二ケイ酸リチウムの結晶化のための核を有する出発ガラスを製造する目的で、出発ガラスを、400~650℃、好ましくは450~600℃、特に好ましくは480~580℃の温度で、特に1~240分、好ましくは5~120分、特に好ましくは10~60分の継続時間にわたって、熱処理に供することが好ましい。
【0057】
ケイ酸リチウムガラスセラミックを製造する目的で、核を有する出発ガラスを、700~1000℃、好ましくは750~950℃、特に好ましくは800~900℃の温度で、特に1~120分、好ましくは2~90分、特に好ましくは5~60分、最も好ましくは10~30分の継続時間にわたって、熱処理に供することがさらに好ましい。所与のガラスセラミックのために好適な条件は、例えば、異なる温度においてX線回折分析を実施することによって決定することができる。
【0058】
好ましい実施形態では、したがって、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックを製造するための方法は、
(a)核を有する出発ガラスを形成するために、出発ガラスを、400~650℃、好ましくは450~600℃、より好ましくは480~580℃の温度で、特に1~240分、好ましくは5~120分、より好ましくは10~60分の継続時間にわたって、熱処理に供すること、および
(b)核を有する出発ガラスを、700~1000℃、好ましくは750~950℃、特に好ましくは800~900℃の温度で、特に1~120分、好ましくは2~90分、特に好ましくは5~60分、最も好ましくは10~30分の継続時間にわたって、熱処理に供して、ガラスセラミックを形成すること
を含む。
【0059】
本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスの上記の特性に起因して、それらは、特に歯科における使用に好適である。したがって、本発明はまた、歯科材料として、特に歯科修復材の製造のため、または歯科修復材のためのコーティング材料としての、本発明によるガラスセラミックまたは本発明によるガラスの使用に関する。
【0060】
特に、本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスを使用して、歯科修復材、例えば、ブリッジ、インレー、アンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットを製造することができる。したがって、本発明はまた、歯科修復材の製造のための、本発明によるガラスセラミックまたは本発明によるガラスの使用に関する。この文脈において、ガラスセラミックまたはガラスは、プレスまたは機械加工によって所望の歯科修復材の形状を付与されることが好ましい。
【0061】
本発明はまた、歯科修復材を製造するための方法であって、本発明によるガラスセラミックまたはガラスが、プレスまたは機械加工によって所望の歯科修復材の形状を付与される、方法に関する。
【0062】
プレスは、通常、高圧および高温下で実施される。プレスは、700~1200℃の温度で実施されることが好ましい。プレスは、2~10barの圧力で実施されることがさらに好ましい。プレスの間、形状の所望の変化が、使用される材料の粘性流によって実現される。本発明による出発ガラス、特に本発明による核を有する出発ガラス、および本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックは、プレスに使用することができる。本発明によるガラスおよびガラスセラミックは、特に、任意の形状およびサイズのブランクの形態、例えば固体ブランク、または粉末成形体、例えば、焼結されていない、部分的に焼結された、または緻密に焼結された形態で使用することができる。
【0063】
機械加工は、通常、材料除去処理によって、特にミリングおよび/または摩砕によって実施される。機械加工は、CAD/CAM法の一部として実施されることが特に好ましい。本発明による出発ガラス、本発明による核を有する出発ガラス、および本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックは、機械加工に使用することができる。この文脈において、本発明によるガラスおよびガラスセラミックは、特に、ブランクの形態、例えば固体ブランク、または粉末成形体、例えば、焼結されていない、部分的に焼結されたまたは緻密に焼結された形態で使用することができる。本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックは、好ましくは、機械加工に使用される。
【0064】
驚くべきことに、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックは、同じ力が適用された場合に、公知のケイ酸リチウムガラスセラミックよりも高速で機械加工することができることが示された。この特性を説明するために、特に、ガラスセラミックの試料体での除去速度が決定されうる。この目的で、小板は、標本を切り出され、秤量される。次いで、小板は、ホルダーに接着され、水で冷却しながら、自動摩砕装置、例えば、Struersから利用可能なもので、例えば20μmの粒径のダイアモンド砥石を使用して、摩砕される。摩砕装置の圧力は、同じ力、例えば15Nが各小板に適用されるように選択される。小板は1分間摩砕された後、乾燥され、再度秤量される。次いで、除去速度が、以下の式に従って計算される:
除去速度[重量%・分-1]=100×(1-(m摩砕:m未摩砕))
【0065】
ガラスセラミックを、所望の歯科修復材の形状で得た後、さらなる熱処理に供して、二ケイ酸リチウム結晶をさらに成長させることができる。例えば、この目的で、ガラスセラミックは、700~1000℃、好ましくは750~950℃、特に好ましくは800~900℃の温度で、特に1~90分、好ましくは2~60分、より好ましくは5~30分、最も好ましくは10~15分の継続時間にわたって、熱処理に供される。
【0066】
しかしながら、驚くべきことに、主結晶相として二ケイ酸リチウムを含む機械加工可能なケイ酸リチウムガラスセラミックは、さらなる熱処理がなくとも、機械的特性、例えば、十分な強度を示すだけでなく、歯科修復材のための材料に必要な他の特性も示すことが示された。したがって、本発明によるガラスセラミックは、好ましくはさらなる熱処理なしに、歯科材料として使用される。
【0067】
しかしながら、本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスはまた、例えばセラミックおよびガラスセラミックのコーティング材料としても好適である。したがって、本発明はまた、セラミック、ガラスセラミック、および特に歯科修復材をコーティングするための、本発明によるガラスまたは本発明によるガラスセラミックの使用に向けられる。
【0068】
本発明はまた、セラミック、金属、金属合金およびガラスセラミックをコーティングするための方法であって、本発明によるガラスセラミックまたはガラスを、セラミックまたはガラスセラミックに塗布し、高温に供する、方法に関する。
【0069】
これは、特に、CAD-CAMによって生成されたオーバーレイを焼結することによって、またはそれを好適なガラスはんだもしくは接着剤と合わせ、好ましくはプレスすることによって行うことができる。焼結する場合、ガラスセラミックまたはガラスは、通常の方法で、例えば、粉末として、セラミックまたはガラスセラミックなどのコーティング対象の材料に塗布され、次いで、高温で焼結される。好ましいプレス処理において、例えば粉末成形体またはモノリシックブランクの形態の本発明によるガラスセラミックまたはガラスは、例えば、700~1200℃の高温で、例えば2~10barの圧力を加えながらプレスされる。特に、EP231773に記載される方法およびそこに開示されるプレス炉を、この目的のために使用することができる。好適な炉は、例えば、Ivoclar Vivadent AG、Liechtenstein製のProgramat EP 5000である。
【0070】
コーティング処理の完了後、ケイ酸リチウム、特に二ケイ酸リチウムを含むガラスセラミックが、主結晶相として存在することが好ましい。なぜなら、このようなガラスセラミックは特に良好な特性を有するからである。
【0071】
本発明を、それを限定しない実施例によって、下記により詳細に説明する。
【実施例0072】
表Iに示される組成を有する合計77個の本発明によるガラスおよび1個の比較例を製造した。ガラスを、表IIに従って、ガラスセラミックに結晶化させた。以下の意味を適用する。
:DSCによって決定したガラス転移温度
およびt:溶融に用いた温度および時間
およびt:1回目の熱処理に用いた温度および時間
およびt:2回目の熱処理に用いた温度および時間
【0073】
最初に、表Iに示される組成を有する出発ガラスを、100~200gの規模で、温度Tで継続時間tにわたって、共通の原材料から溶融させ、溶融は、泡または縞が形成することなく非常に良好に行うことができた。ガラス顆粒を、これらの出発ガラスを水に注ぐことによって製造した。
【0074】
実施例1~70において、ガラス顆粒を、均質化のために再度、温度Tで継続時間tにわたって溶融した。得られた出発ガラスの溶融物をグラファイト製の型に注いで、固体ガラスブロックを製造した。得られたガラスモノリシックの、温度Tで継続時間tにわたる1回目の熱処理の結果、核を有するガラスが形成した。これらの核形成ガラスを、温度Tで継続時間tにわたるさらなる熱処理によってガラスセラミックに結晶化させた。
【0075】
実施例71~77において、ガラス顆粒を、乾燥炉中150℃で1時間乾燥し、酸化ジルコニウムでライニングされたミルで<90μmに摩砕し、篩分けした。得られたガラス粉末を、一軸プレスを使用して10barで立方体ブランクにプレスした。ブランクを、まず、真空下、10K/分の加熱速度で温度Tに加熱し、この温度で継続時間tにわたって維持した。続いて、ブランクを、10K/分の加熱速度で温度Tにさらに加熱し、この温度で継続時間tにわたって維持した。最後に、ブランクを室温に冷却した。
【0076】
室温でX線回折研究によって決定した場合、主結晶相として二ケイ酸リチウムを含むガラスセラミックが、すべての場合に得られた。
【0077】
結晶相の量を、X線回折によって決定した。この目的で、それぞれのガラスセラミックの粉末を、摩砕し、篩分け(<45μm)することによって調製し、内部標準としてのAl(Alfa Aesar、製品No.42571)と、80重量%のガラスセラミック対20重量%のAlの比で混合した。この混合物をアセトンによりスラリー化して、可能な最良の混合を実現した。次いで、混合物を約80℃で乾燥した。次いで、ディフラクトグラムを、CuKα線および0.014°2θのステップサイズを使用し、Bruker製のD8 Advance回折計を使用して、10~100°2θの範囲で記録した。次いで、このディフラクトグラムを、リートベルト法を使用するBrukerのTOPAS 5.0ソフトウェアを使用して評価した。
【0078】
二ケイ酸リチウム結晶の平均長さおよび平均アスペクト比を、SEM画像から決定した。この目的で、それぞれのガラスセラミックの表面を磨き(<0.5μm)、40%HF蒸気で少なくとも30秒間エッチング処理し、次いで、Au-Pd層でスパッタリングした。SEM画像を、Supra 40VP走査型電子顕微鏡(Zeiss、Oberkochen、Germany)を使用して、この方法で処理した表面で撮影した。SEM画像を、後処理して、一般的な画像処理プログラムを使用して、結晶とガラス相との間のコントラストを改善した。続いて、結晶の平均長さおよび平均アスペクト比を、Olympus Stream Motion 2.4画像分析ソフトウェア(オリンパス株式会社、東京、日本)を使用して決定した。
【0079】
機械加工性を決定するために、各々170mm±10mm(約12.5mm×13.8mm)の面積および4.0±0.5mmの厚さを有する2つの小板を、このようにして得られたガラスセラミックブロックから切り出し、精密秤で秤量した。次いで、小板を、ホルダーに接着し、水で冷却しながら、自動摩砕装置(LaboForche-100、Struers)で、20μmの粒径のダイアモンド砥石を使用して、摩砕した。摩砕装置の圧力は、15Nの力が各小板に適用されるように選択した。ダイアモンド砥石が取付けられたターンテーブル、および標本を有するホルダーが取付けられた摩砕装置のヘッドは、同じ回転方向を有した。ターンテーブルの速度は、300rpm-1であった。小板を1分間摩砕し、次いで、乾燥し、再秤量した。除去速度を、以下の式に従って計算した:
除去速度[重量%・分-1]=100×(1-(m摩砕:m未摩砕))
【0080】
表IIから分かる通り、本発明による実施例の除去速度は、比較例における除去速度よりも、一貫して高かった。これは、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックが、同じ力が適用された場合に、公知の二ケイ酸リチウムガラスセラミックよりも高速で機械加工することができることを示している。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【外国語明細書】