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特開2024-83261固液分離装置、固液分離装置の分離液監視装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083261
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】固液分離装置、固液分離装置の分離液監視装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/14 20190101AFI20240613BHJP
【FI】
C02F11/14 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199518
(22)【出願日】2023-11-26
(31)【優先権主張番号】P 2022196148
(32)【優先日】2022-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591162022
【氏名又は名称】巴工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129539
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 康志
(72)【発明者】
【氏名】松本 光司
(72)【発明者】
【氏名】日合 良雄
(72)【発明者】
【氏名】荻原 徹也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 智
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA05
4D059AA23
4D059BE37
4D059BE49
4D059BE56
4D059BE57
4D059BE59
4D059DB21
4D059DB25
4D059EA20
4D059EB11
(57)【要約】
【課題】凝集剤の薬注条件が適正であるか否かを自動で判定することのできる固液分離装置、及び固液分離装置の分離液監視装置を提供する。
【解決手段】本発明の固液分離装置は、固形分を含む処理液に凝集剤を添加する薬注装置と、前記処理液を固液分離する分離装置と、前記分離装置から排出される分離液の泡の画像データを取得する監視部、前記監視部が取得した画像データの少なくとも分離液の泡の量から前記凝集剤の薬注条件を判定する判定部を含む分離液監視装置と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分を含む処理液に凝集剤を添加する薬注装置と、
前記処理液を固液分離する分離装置と、
前記分離装置から排出される分離液の泡の画像データを取得する監視部、前記監視部が取得した画像データの少なくとも分離液の泡の量から前記凝集剤の薬注条件を判定する判定部を含む分離液監視装置と、を備えたことを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
前記分離液監視装置は、前記分離液に残存する固形分の画像データを取得する監視部をさらに備え、少なくとも前記分離液の泡の量と前記分離液中の固形分の量及び/又は凝集粒子の大きさから前記凝集剤の薬注条件を判定することを特徴とする請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
前記分離液監視装置が出力する判定結果は、薬注量適正、薬注量過多、薬注量不足、薬注量適正であるが凝集反応状態が悪いのいずれかを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の固液分離装置。
【請求項4】
前記分離液の泡の画像データを取得する監視部は、前記分離液を放出する液受けボックスに配置され、該液受けボックスに放出される分離液の画像データを取得することを特徴とする請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項5】
前記分離液に残存する固形分の画像データを取得する監視部は、前記分離液が流れる流路の一部を構成する透明性部材を介して該分離液の画像データを取得することを特徴とする請求項2に記載の固液分離装置。
【請求項6】
前記分離液に残存する固形分の画像データを取得する監視部は、前記分離液をサンプリングするポンプと、前記ポンプの吐出側に設けた背圧弁をさらに備え、
前記ポンプから前記背圧弁の間で、前記透明性部材を介して前記分離液の画像データを取得することを特徴とする請求項5に記載の固液分離装置。
【請求項7】
固形分を含む処理液を固液分離する分離装置から排出される分離液の画像データを取得する監視部と、
前記監視部が取得した画像データを解析して前記分離液の泡の量の情報を出力する出力部と、を備えたことを特徴とする固液分離装置の分離液監視装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形分を含む処理液を固液分離する固液分離装置、及び固液分離装置の分離液監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固形分を含む処理液を固液分離する装置として、デカンタと称される遠心分離装置が知られている。デカンタは、例えば下水処理施設内に設置され、汚泥を含む下水由来の処理液を脱水ケーキと分離液に固液分離する。図12は、デカンタの基本構造を、概略的に示している。横型のデカンタ1は、水平軸廻りに回転するボウル11とスクリューコンベア12を備えている。なお、図示は省略するが、ボウル11とスクリューコンベア12が鉛直軸廻りに回転する竪型のデカンタも知られている。
【0003】
ボウル11は、一端側又は両端が円錐形状に形成された円筒形状体で構成されている。スクリューコンベア12は、ボウル11内で固液分離された固形分を搬送するスクリュー羽根12aを備えている。スクリューコンベア12は、回転中心軸線に沿って空洞になっており、遠心分離される処理液の供給ノズル13が、スクリューコンベア12と接触しないように僅かなクリアランスをもって挿入されている。遠心分離される処理液は、凝集剤が添加された後、供給ノズル13を介してデカンタ1に供給する。供給ノズル13の先端から吐出される処理液は、スクリューコンベア12内の処理液室に供給され、遠心力の作用によって外周面に形成されている供給口14から吐出されて、ボウル11内に供給される。
【0004】
このような構成において、下水処理施設内の沈殿槽等で処理が施された下水由来の処理液を連続的にボウル11内に供給すると共に、ボウル11を所定の回転数で回転させると、遠心力の作用によりボウル11内にて処理液が固形相と液相とに分離される。固形分は、スクリューコンベア12によってボウル11の一端側に向けて搬送され、円錐形状となっている部分で液から離脱して、固形分出口15を介して脱水ケーキとして排出される。一方、液相(分離液)は、反対側の分離液出口16から溢流して排出される。
【0005】
上述のデカンタ1で所望の含水率の脱水ケーキを得るための制御因子としては、ボウル11の回転速度で設定される遠心力、ボウル11とスクリューコンベア12の差速、スクリューコンベア12のトルク値、薬液である凝集剤の添加量などがある。近年においては、これら制御因子を適正な値に調整するために、人工知能(Artificial Intelligence; AI)を利用する制御技術の開発が進んでいる。そのため、凝集剤の薬注条件が適正であるか否かを、例えば制御部を構成するコンピューターなどで自動で判定できる手法の確立が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6938159号公報
【特許文献2】特許第7236190号公報
【特許文献3】特開平5-177153号公報
【特許文献4】特許第6701251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、凝集剤の薬注条件を自動で判定することが可能となる固液分離装置、及び固液分離装置の分離液監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1)本発明の固液分離装置は、固形分を含む処理液に凝集剤を添加する薬注装置と、前記処理液を固液分離する分離装置と、前記分離装置から排出される分離液の泡の画像データを取得する監視部、前記監視部が取得した画像データの少なくとも分離液の泡の量から前記凝集剤の薬注条件を判定する判定部を含む分離液監視装置と、を備えたことを特徴とする。
(2)前記分離液監視装置は、前記分離液に残存する固形分の画像データを取得する監視部を備え、少なくとも前記分離液の泡の量と前記分離液中の固形分の量及び/又は凝集粒子の大きさから前記凝集剤の薬注条件を判定する。
(3)前記分離液監視装置が出力する判定結果は、薬注量適正、薬注量過多、薬注量不足、薬注量適正であるが凝集反応状態が悪いのいずれかを含む。
(4)前記分離液の泡の画像データを取得する監視部は、前記分離液を放出する液受けボックスに配置され、該液受けボックスに放出される分離液の画像データを取得する。
(5)前記分離液に残存する固形分の画像データを取得する監視部は、前記分離液が流れる流路の一部を構成する透明性部材を介して該分離液の画像データを取得する。
(6)前記分離液に残存する固形分の画像データを取得する監視部は、前記分離液をサンプリングするポンプと、前記ポンプの吐出側に設けた背圧弁をさらに備え、前記ポンプから前記背圧弁の間で、前記透明性部材を介して前記分離液の画像データを取得する。
(7)本発明の固液分離装置の分離液監視装置は、固形分を含む処理液を固液分離する分離装置から排出される分離液の画像データを取得する監視部と、前記監視部が取得した画像データを解析して前記分離液の泡の量の情報を出力する出力部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固液分離装置から排出される分離液の泡の画像データを判定材料に用いたことにより、例えばコンピューターで画像データを解析して、凝集剤の薬注条件の適否を判定することが可能となる。従って、近年において開発が進められている人工知能(Artificial Intelligence; AI)を利用した固液分離装置の自動制御の実現に貢献することができる。
【0010】
さらに、本発明によれば、分離液の泡の量に着目したことにより、現在の凝集剤の薬注条件が適正であるか否かを精度良く判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に従うデカンタを配置した下水処理施設の構成図である。
図2】上記デカンタの縦断面構成図である。
図3】上記デカンタから排出される分離液の監視装置の構成図である。
図4】上記デカンタから排出される分離液の固形分を撮像した図、分離液の泡を撮像した図、及び薬注条件の判定結果の一覧である。
図5】上記デカンタから排出される分離液の泡を撮像した図である。
図6】流路内を流れる分離液をサイトグラスを介して撮像した図である
図7】上記デカンタから排出される分離液の泡を撮像した図である。
図8】薬注条件及びデカンタの運転条件の判定結果の一覧である。
図9】第2実施形態に従う分離液監視装置の構成図である。
図10】第3実施形態に従う分離液監視装置の判定フロー図である。
図11】第4実施形態に従う分離液監視装置の判定フローを説明する図である。
図12】従来の遠心分離装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態に従う固液分離装置、及び固液分離装置の分離液監視装置について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、以下に説明する実施形態によって本発明の技術的範囲は何ら限定解釈されることはない。
【0013】
[第1実施形態]
(全体構成の説明)
図1は、固液分離装置の好ましい一例であるデカンタ2を配置した下水処理施設3の概略構成図である。下水処理施設3は、大別すると水処理施設と汚泥処理施設に分けられる。水処理施設は、最初沈殿槽31、エアレーションタンク、最終沈殿槽等の設備によって構成されている。エアレーションタンクと最終沈殿槽等は、作図の便宜上、「下流工程」と図示している。各市町村等の下水回収対象エリアから回収された下水は、最初沈殿槽31に供給して上澄液と初沈汚泥に固液分離する。上澄液はエアレーションタンクに移送し、初沈汚泥は汚泥処理施設に送る。エアレーションタンクに供給された最初沈殿槽31からの上澄液は、エアレーションタンク内で活性汚泥により生物処理される。生成された活性汚泥の一部は、最終沈殿槽に供給して上澄液と沈殿汚泥に固液分離する。上澄液はさらに無害化した後に放流し、沈殿汚泥は一部をエアレーションタンクに返送し、残りは余剰汚泥として汚泥処理施設に送る。
【0014】
汚泥処理施設は、前述の水処理施設で発生する汚泥を処理する施設であり、濃縮設備、消化設備、脱水設備等によって構成されている。図1には、分離濃縮方式の設備の一例を示している。この場合、最初沈殿槽31からの初沈汚泥を重力式濃縮槽32で重力濃縮し、最終沈殿槽からの余剰汚泥は機械式濃縮機33で機械濃縮する。機械式濃縮機33は、ベルト式濾過濃縮機などであるが、デカンタタイプの遠心濃縮機が使用される場合もある。重力式濃縮槽32及び機械式濃縮機33で濃縮された汚泥(濃縮汚泥)は、濃縮汚泥タンク34から供給ポンプ35を介して脱水機としてのデカンタ2に供給するか、あるいは消化した後にデカンタ2に供給する。
【0015】
デカンタ2は、処理液の一例である汚泥(濃縮汚泥)を脱水ケーキと分離液に固液分離する。そして、デカンタ2から排出される脱水ケーキは、圧送ポンプや搬送コンベアなどの移送設備36を介して焼却炉37に供給して、焼却処理される。焼却以外の処理がなされることもある。一方、デカンタ2から排出される分離液は、詳しくは後述する分離液監視装置4を経由して分離液回収タンク38に回収される。清澄液である分離液は、必要であれば無害化の処理を施して、その後、放流される。
【0016】
下水処理施設3の各設備の運転は、例えば中央制御室39のコンピューターで集中管理する。オペレーターは、例えば端末30を利用して中央制御室39と交信することができる。但し、図1に示した下水処理施設3の全体構成は一例であり、設備構成や処理方式が限定されることはない。
【0017】
図2に示すように、デカンタ2は、固形分出口20と分離液出口21を下面側に有するケーシング2aと、ケーシング2a内に配置したボウル5と、回転するボウル5内で遠心分離された固形分を搬送するスクリューコンベア6と、遠心分離する処理液をボウル5内に供給するパイプ状のフィードチューブ7を備えている。ボウル5は、例えばケーシング2aの外部に配置したベアリング等の軸受機構22によって、その両軸が支持されている。さらにスクリューコンベア6は、コンベアベアリング等の軸受機構23によって、その両軸が支持されている。なお、符号24は、ケーシング2a内の空間を区画する仕切壁である。
【0018】
そして、駆動装置である主モーター25の動力が回転ベルト25aを介してボウル5側のプーリー25bに伝達されると、ボウル5が回転し、さらに差速発生装置であるギアボックス26及びスプラインシャフト26aを通じてスクリューコンベア6に回転動力が伝達され、これによりボウル5とスクリューコンベア6とが相対的な差速をもって回転する。処理液の種類や濃度等によって適宜調整され得るが、通常運転の一例として、500~8000min-1の範囲内で選択した所定の回転数でボウル5を回転させると共に、ボウル5に対して0.5~50min-1の相対的な差速をもってスクリューコンベア6を回転させることによって、処理液を固形分と分離液に分離する。一例として下水由来の汚泥を処理液とする場合、例えば2~25m/Hrの流量でボウル5内に供給する。
【0019】
ギアボックス26には、バックドライブモーター27と称されるモーターを回転ベルト27a及びプーリー27bを介して連結している。バックドライブモーター27は、スクリューコンベア6がボウル5よりも遅く回転するようにブレーキをかけるためのものである。ブレーキをかけることによってバックドライブモーター27に発生する回生電力は、主モーター25に供給することができる。但し、バックドライブモーター27は必ずしも設けなくともよい。なお、符号28は、デカンタ2の支持架台であり、符号29は、フィードチューブ7を支持する支持部材である。
【0020】
ボウル5は、円筒状の胴部の一端側に円錐形状部51を有し、他端側にフロントハブ52と称する円盤状部材を設けている。ボウル5の胴部は、ボウル5内に供給される処理液のプール(液溜り)部を形成する。一方、円錐形状部51は、スクリューコンベア6によって搬送される固形分が液相から離脱するビーチ部を形成しており、その端部に固形分排出口53を設けている。フロントハブ52には、分離液が溢流して排出される分離液排出口54を設けている。分離液排出口54は、フロントハブ52を貫通する例えば円形状の開口穴である。
【0021】
スクリューコンベア6の外周面には、固形分を搬送するためのスクリュー羽根61を螺旋状に設けている。さらに、スクリューコンベア6の外周面には、処理液供給口62を設けている。処理液供給口62は、スクリューコンベア6の内部に形成した処理液供給室63と連通している。
【0022】
フィードチューブ7は、回転するボウル5及びスクリューコンベア6とは接触しないようにして、処理液供給室63内まで接近又は挿入している。処理液供給室63の入口には、供給された処理液が逆流出するのを防ぐ防液堤となる起立壁64を周方向に沿って形成している。一方、フィードチューブ7の基端側は、流路71を介して、供給ポンプ35(図1参照)と接続している。供給ポンプ35から送られてくる処理液は、フィードチューブ7の先端から処理液供給室63内に吐出する。処理液供給室63内に供給された処理液は、回転するスクリューコンベア6の遠心力の作用によって、処理液供給口62から吐出されてボウル5内に供給される。
【0023】
続いて、処理液に例えば薬液の一例である液状の凝集剤を添加する薬注装置8について説明する。本実施形態のデカンタ2は、凝集剤を機外薬注と機内薬注のどちらの方式でも添加可能な構成である。機外薬注は、好ましい一例として、ライン薬注を採用する。具体的には、処理液の流路71(例えば、配管)の途中に薬注ノズル80A,80B,80Cを配置する。薬注ノズル80A,80B,80Cは、凝集反応時間(すなわち、凝集剤を添加した処理液がデカンタ2に供給されるまでの時間)を変えられるように複数設けておく。
【0024】
図2では3個の薬注ノズル80A,80B,80Cを設けているが、ノズル数は適宜変更してよい。どの薬注ノズル80A,80B,80Cから凝集剤を添加するかは、バルブ81A,81B,81Cの開閉によって切り替える。但し、いずれか一つでなくともよく、薬注ノズル80A,80B,80Cの2以上から添加してよい。その際、バルブ開度を調整することによって添加量の比率を調節してもよい。バルブ81A,81B,81Cの開閉或いは開度調節は、デカンタ2の制御部9が自動で行ってもよく、オペレーターが手動で行ってもよい。但し、薬注位置等を切り替えるか否かは、分離液監視装置4からの情報に基づいて薬注位置等の薬注条件を判定した結果に基づく。
【0025】
デカンタ2から薬注ノズル80Aの添加位置までの距離(すなわち、流路71の長さ)は、例えば10mとする。デカンタ2から薬注ノズル80Bの添加位置までの距離(すなわち、流路71の長さ)は、例えば3~5mとする。デカンタ2から薬注ノズル80Cの添加位置までの距離(すなわち、流路71の長さ)は、例えば1mとする。凝集反応時間は、それぞれの距離と処理液の流速によって決まる(=流速×距離)。すなわち、薬注ノズル80A,80B,80Cとバルブ81A,81B,81Cは、凝集剤の添加位置を調節する手段の一例である。凝集剤の添加位置の下流側に、例えばラインミキサーや混合弁などの撹拌効果を高める手段を設けてもよい。
【0026】
一方、機内薬注は、一例としてフィードチューブ7を利用して行う。フィードチューブ7は、中央に処理液が流れる流路72を形成し、その外周を囲うように凝集剤が流れる流路73を形成した2重管構造とする。そして、流路73と連通するように凝集剤の流路82(例えば、配管)を接続し、さらに流路82にバルブ81Dを設けている。従って、バルブ81A,81B,81C,81Dの開閉によって、機内薬注にするか機外薬注にするかを切り替えることができる。バルブ開度の調整によって機内薬注と機外薬注の両方で凝集剤を添加してもよい。
【0027】
フィードチューブ7の先端側には、中央の処理液の吐出口とは別に、凝集剤の吐出口を形成している。凝集剤の吐出口は、フィードチューブ7の先端部側周面に径方向に貫通するように複数形成した例えば円形の開口穴とする。一方、スクリューコンベア6の内部は、隔壁となる起立壁64を介して処理液供給室63と凝集剤供給室65に分かれている。凝集剤供給室65は、スクリューコンベア6の空洞の内周面に全周に亘って形成した断面溝状の供給室であり、フィードチューブ7から径方向に吐出される凝集剤を受けることができる。さらに凝集剤供給室65の底面にあたる部分に凝集剤吐出口66を形成している。凝集剤吐出口66は、例えばスクリューコンベア6を径方向に貫通する例えば円形の開口穴である。すなわち、凝集剤も処理液と同様に、回転するスクリューコンベア6の遠心力の作用を利用してボウル5内に供給することができる。
【0028】
凝集剤の流路82には、流量計83を設けて、凝集剤供給ポンプ84によって送液される凝集剤の流量を計測できるようにしている。流量制御部85は、例えばフィードバック制御によって、流量計83で計測する流量が、目標流量となるように凝集剤供給ポンプ84の吐出流量を調節する。凝集剤供給ポンプ84は、例えば定量ポンプ、インバーターによる出力可変のポンプなどである。すなわち、流量計83と凝集剤供給ポンプ84は、薬注量を調節する手段の一例である。但し、流量計83と凝集剤供給ポンプ84による流量調節は一例であり、流量を調節可能であれば他の構成を採用してもよい。他の構成の一例は、流量調節バルブを流路82に設けるなどである。
【0029】
凝集剤の流路82の基端側は、凝集剤供給ポンプ84を介して、凝集剤の溶液を貯留したタンク86に接続している。凝集剤は、例えば高分子系凝集剤である。高分子系凝集剤は、両性ポリマー,アニオン性ポリマー又はカチオン性ポリマーのいずれか、或いはそれらの組み合わせを用いることができる。高分子系凝集剤の好ましい一例は、ジメチルアミノエチルメタクリレート,ジメチルアミノエチルアクリレート,ポリビニルアミジンなどの1種以上である。なお、高分子系凝集剤の溶液は、例えば固形の高分子系凝集剤を溶媒(例えば、水)に溶解させて溶解液を生成する溶解装置で生成することができる。機内薬注と機外薬注の高分子系凝集剤は、同種であってもよく、供給源を別にして異なる種類としてもよい。また、処理液に無機凝集剤を添加する構成を追加してもよい。
【0030】
図3に示すように、分離液監視装置4は、デカンタ2の分離液排出口21から排出される分離液の流路21a(例えば、配管)の途中に設ける。下水処理施設3内に複数のデカンタ2を配置する場合、各デカンタ2に分離液監視装置4を設けてもよく、複数のデカンタ2から排出された分離液が合流するところに分離液監視装置4を設けてもよい。
【0031】
分離液監視装置4は、好ましい一例として、流路21a内を流れる分離液の状態を監視する監視部40と、液受けボックス41に放出した分離液の状態を監視する監視部42を備える。
【0032】
監視部40は、好ましい一例として、分離液に残存する固形分の有無とその量と凝集粒子の大きさを判定する。具体的には、流路21aにサイトグラス43A,43Bを配置し、サイトグラス43A,43Bのガラス窓と対向する位置に監視カメラ44A,44Bを夫々設ける。監視カメラ44A,44Bは、流路21a内を流れる分離液を撮像して画像データを取得する。監視カメラ44A,44Bは、例えばCCDカメラなどである。図3の例ではサイトグラス43A,43Bと監視カメラ44A,44Bを2組設けており、バルブ45A,45Bの開閉によってどちらで監視するかを切り替え可能である。監視カメラ44A,44Bで取得した画像データは、例えばデカンタ2の制御部9に送信する(図2参照)。サイトグラス43A,43Bは、流路の一部を構成する透明性部材の一例である。
【0033】
監視部42は、監視箱の一例である液受けボックス41に放出した分離液の泡の状態、好ましくは泡の量を判定する。さらに色を判定してもよい。具体的には、箱状の液受けボックス41に流路21aの端部を接続して、液受けボックス41内に分離液を放出可能とする。そして、上方に配置した監視カメラ46A,46Bでボックス内の分離液の例えば液面の泡を撮像する。但し、液面の泡に限らない。例えば、液受けボックス41内に流下している分離液の泡を撮像するようにしてもよい。どちらの監視カメラ46A/46Bで撮像するかは、バルブ45A/45Bが開いているラインの方にする。監視カメラ46A,46Bは、例えばCCDカメラなどである。なお、泡は、分離液に残存する凝集剤に起因して発生する。特に高分子系凝集剤の場合に泡が発生し易い。泡の量は、残存する凝集剤の濃度に概ね比例するが、ある濃度を超えると泡の量に変化が見られなくなることを実験によって確認している。
【0034】
監視カメラ46A,46Bで取得した画像データは、例えばデカンタ2の制御部9に送信する(図2参照)。一方、液受けボックス41内に放出した分離液は、ボックス底部側に設けた排出口47から排出し、分離液タンク38などに回収する(図1参照)。デカンタ2の処理液量が多い場合、流路21aを分岐して、分離液の一部をサンプリングし、分離液監視装置4に導入するようにしてもよい。また図3の例は、監視部40と監視部42を2組の監視ライン(サイトグラス43A-監視カメラ44A-監視カメラ46A、サイトグラス43B-監視カメラ44B-監視カメラ46B)で構成したが、いずれか一方でもよい。監視カメラ44A,44Bおよび監視カメラ46A,46Bは、フラッシュ機能を備えているものを使用するか、或いは撮像時にONとなる照明を別途設けてもよい。
【0035】
制御部9は、監視カメラ44A,44Bと監視カメラ46A,46Bから送られてくる画像データに基づき、少なくとも、薬注量適正、薬注量過多、薬注量不足、薬注量適正であるが凝集反応状態が悪いのいずれかの判定結果を出力する。以下に示す例では、より詳細に、“薬注量適正・凝集反応状態適正”、“薬注量適正・凝集反応状態不適正”、“薬注量過多・凝集反応状態適正”、“薬注量過多・凝集反応状態不適正”、“薬注量不足”といった判定結果を出力する。勿論、判定結果の種別は、適宜変更及び追加することができる。このような判定が出来るよう、AI機能を備えたコンピューターにより多くの画像データを読み込ませてディープラーニングなどを行わせることになるが、判定の体系は、以下の通りである。なお、これらの判定を実行する制御部9は、例えば中央制御室39のコンピューターが好ましい。或いは専用のコンピューターであってもよく、デカンタ2の制御盤であってもよい。或いは分離液監視装置4の制御盤などであってもよい。
【0036】
監視カメラ44A,44Bは、分離液を撮像して、分離液中の固形分の画像データを取得する。分離液に残存する固形分は、その濃度と凝集反応の良し悪しによって画像データに表れる状態が種々異なる。図4は、固形分の濃度と凝集剤の薬注量を変えて模擬調製した各分離液の画像データの一例である。図4には、詳しくは後述する各ケース(ケースA1~A6)の分離液の状態を示している。一方、監視カメラ46A,46Bは、液受けボックス41に放出される分離液を撮像して、例えば液受けボックス41内の分離液の泡の画像データを取得する。図5は、泡の量が少ない、泡の量が適正、泡の量が多いときの画像データである。さらに図4には各ケースに対応する泡の画像データを併せて示している。図6は、実際に流路21a内を流れる分離液をサイトグラスを介して撮像した画像データである。図6に示すように、流路21a内を流れる分離液中の固形分およびその大きさを判別可能な画像データを取得できることを確認している。既述のように、分離液の泡の画像データは、液受けボックス41内の分離液の液面の泡を撮像してもよく、液受けボックス41内に流下する分離液の泡を撮像してもよい。図7は、液受けボックス41内に流下している分離液の撮像を継続し、コンピューターで解析した例である。一例として、オペレーターが確認可能なように図7のようにグラフィック表示を出力してもよい。泡の量は、例えば流下している分離液中の泡の面積によって、泡の量が少ない、泡の量が適正、泡の量が多いのいずれであるか判定する。時間によって泡の量が変化する場合は、例えば移動平均で泡の量を判定してよい。
【0037】
図4に示すように、分離液の状態は、例えば固形分濃度400mg/Lでみると、薬注をしない無薬注の場合は、固形分がゾル状に液中に分散している。これに対し、薬注して遠心分離した分離液は、固形分が凝集している。但し、薬注量不足、薬注量適正、薬注量過多の順に、凝集粒子の大きさ(例えば凝集粒子径)が大きくなる。さらに薬注量適正のときは、泡の量が適正であるが凝集粒子径が大きい場合と凝集粒子径が小さい場合とに細分化される。薬注量過多のときは、泡の量は多いが凝集粒子径が小さい場合と、泡の量も多く凝集粒子径も大きい場合に細分化される。他の濃度(100mg/L、2000mg/L)でも同様である。
【0038】
AI機能を有する制御部9は、取得した画像データに基づき、図4に一例を示したいずれのケースに当てはまるかを判定し、その結果を出力する。そのため、制御部9は、まず監視カメラ44A,44Bから送られてくる画像データに基づき、凝集粒子が小さか大きいかを判定する。この判定は、一例として、大きさの閾値を予め設けておき、この閾値よりも取得した画像データ内の凝集粒子が大きいか否かによって行う。凝集粒子の大きさは、例えば凝集粒子径で判定してよい。その際、画像に写ったすべての凝集粒子の平均粒子径でなくその中からサンプリングした一部の凝集粒子の平均粒子径であってよい。また、画像データから凝集粒子の大きさを判別/比較できればよく粒子径まで求める必要はない。以下に説明する判定フローでも同様である。さらに制御部9は、監視カメラ46A,46Bから送られてくる画像データに基づき、泡の量が少ない、泡の量が適正、泡の量が多いのいずれであるかを判定する。この判定は、一例として、監視カメラ46A,46Bの撮像範囲内に写る泡の面積の適正範囲を予め設けておき、取得した画像データの泡の面積がこの範囲内であれば泡の量が適正、範囲を下回れば泡の量が少ない、範囲を上回れば泡の量が多いと判定する。凝集粒子径についても適正範囲を設定するようにしてもよい。
【0039】
そして制御部9は、ケースA1の場合は、薬注の開始が必要であると判定する。凝集粒子径が小さく・泡の量が少ないケースA2の場合、薬注量不足と判定する。凝集粒子径は小さいが泡の量が適正であるケースA3の場合、薬注量適正・凝集反応状態不適正と判定する。凝集粒子径が大きく泡の量が適正であるケースA4の場合、薬注量適正・凝集反応状態適正と判定する。凝集粒子径が小さく泡の量が多いケースA5の場合、薬注量過多・凝集反応状態不適正と判定する。凝集粒子径が大きく泡の量が多いケースA6の場合、薬注量過多・凝集反応状態適正と判定する。すなわち、制御部9は、監視部40と監視部42からの監視情報に基づき凝集剤の薬注量の適否及び/又は凝集反応状態の適否を判定する判定部として機能する。
【0040】
勿論、図4のケースA1~A6は、一例であり、AI機能を備えたコンピューターに、より多くの画像データを読み込ませることによって、より多数のケースに細分化することができる。これにより、どのくらい薬注量が不足/過多なのかといった定量的な判定も実現可能である。
【0041】
さらに制御部9は、各ケースA1~A6に応じた対処を自動で行うか或いはオペレーターの端末30に対処するよう指令を発するのが良い。すなわち、制御部9は、運転制御部として機能する。例えばケースA1の場合は、薬注装置8を起動する。例えばケースA2の場合は、流量制御部85が制御する凝集剤の流量を増やす対処を行う。例えばケースA3の場合は、流量制御部85が制御する凝集剤の流量は維持し、バルブ81A~81Dを切り替えて凝集剤の添加位置を変更する。凝集反応状態は、反応時間が長ければ良いということにならない。例えば下水処理施設3に回収される下水の性状等は日によって変わり、処理液である汚泥の性状も一定でないからである。加えて、デカンタ2の場合、凝集粒子径が大きくなり過ぎると、遠心力を高くした高速回転の運転条件によっては、回転するスクリュー羽根61に当たって凝集粒子が壊れてしまうことがあるからである。さらに機外薬注が適しているか機内薬注が適しているのかも日によって違う。すなわち、いずれの薬注位置が最適かは汚泥の性状等によって変わることがある。ケースA3の場合、凝集剤の添加位置の変更に代えて、デカンタ2の運転条件を変更してもよく、或いは両方を変更してもよい。また凝集剤の添加位置の変更には、複数の添加位置の流量比率を変えることを含めてよい。
【0042】
例えばケース4の場合は、薬注量と薬注位置の両方が適正であるので、その運転条件を維持する。但し、固形分濃度が高い場合(例えば、図4の400mg/L以上の場合)、デカンタ2の運転条件を変更して固形分濃度を下げる対処をしてもよい。例えばケース5の場合は、凝集粒子の破壊が起きているか薬注位置が合っていない可能性があるので、流量制御部85が制御する凝集剤の流量を下げると共に、バルブ81A~81Dを切り替えて凝集剤の添加位置を変更する。例えばケース6の場合は、薬注位置は維持し、流量制御部85が制御する凝集剤の流量を下げられる可能性がある。このケースにおいても固形分濃度が高い場合(例えば、図4の400mg/L以上の場合)、デカンタ2の運転条件を変更してもよい。制御部9は、条件変更が結果に表れる時間後(例えば、1時間後)に再び判定を行って、改善していなければ更に対処する。
【0043】
上述のように分離液を監視して適切な薬注条件にすれば、固形分である脱水ケーキについても好ましい含水率(例えば、含水率60~80%)のものが得られることにつながる。そしてより最適な含水率にするために、デカンタ2の他の運転条件をさらに調整してもよい。デカンタ2の運転条件は、例えば、ボウル5の回転速度で設定される遠心力、ボウル5とスクリューコンベア6の差速、スクリューコンベア6のトルク値、処理液である汚泥の供給流量などである。その他であってもよい。また、泡の量と泡の色の両方で監視するようにしてもよい。例えば泡の量が多くて泡の色が黒ずんでいる場合に反応状態が悪いと判定し、凝集粒子の径が大きくて泡の色が黒ずんでいる場合に凝集剤を過添加している可能性があると判定してもよい。また、監視カメラ44A,44Bの画像データから、分離液の固形分濃度値まで判定してもよい。
【0044】
制御部9は、上述の薬注条件の対応に加えて、デカンタ2の運転条件を調節する対応をも判定/実行するようにしてよい。図8は、その一例である。図8に示すように、ケースB1~B3は、監視カメラ44A,44Bからの画像データに固形分が存在しないか、存在しないとみなすことができる程に固形分が少なかったケースである。ケースB1~B3のうち、監視カメラ46A,46Bからの画像データに基づき泡の量が少ないと判定したのがケースB1であり、泡の量が適正と判定したのがケースB2であり、泡の量が多いと判定したのがケースB3である。分離液に固形分が存在しないか、存在しないとみなすことができる程に少ないケースB1~B3の場合、薬注条件およびデカンタの運転条件は適正であるとしてその条件を維持する。
【0045】
図8のケースB4~B12は、監視カメラ44A,44Bからの画像データに基づき分離液に固形分が残存すると判定したケースである。そのうちケースB4~B6は、固形分の凝集粒子径が小さいと判定したケースである。さらにケースB4~B6は、監視カメラ46A,46Bからの画像データに基づき泡の量が少ないと判定したケースB4、泡の量が適正と判定したケースB5、泡の量が多いと判定したケースB6に分かれる。
【0046】
例えばケースB4の場合は、薬注量不足と判定し、流量制御部85が制御する凝集剤の流量を増やす対処を行う。例えばケースB5の場合は、薬注量やや不足・凝集反応が十分と判定し、流量制御部85が制御する凝集剤の流量をやや増やすと共に凝集剤の添加位置を例えば近くに変更する。例えばケースB6の場合は、凝集反応が不十分であると判定し、凝集剤の添加位置を例えば遠くに変更する。
【0047】
ケースB7~B9は、固形分の凝集粒子径が適正と判定したケースである。さらにケースB7~B9は、監視カメラ46A,46Bからの画像データに基づき泡の量が少ないと判定したケースB7、泡の量が適正と判定したケースB8、泡の量が多いと判定したケースB9に分かれる。
【0048】
ケースB7~B9は、薬注条件ではなくデカンタ2の運転条件に起因するものと判定し、デカンタ2の運転条件を変更して対処する。例えばケースB7とB8の場合は、ボウル5とスクリューコンベア6の差速を大きくするなどデカンタ2の運転条件を変更する。例えばケースB9の場合は、ボウル5とスクリューコンベア6の差速を大きくするなどデカンタ2の運転条件を変更する一方で、薬注量を下げることができる可能性ありと判定する。薬注量を下げられれば運転コストを下げることができる。
【0049】
ケースB10~B12は、固形分の凝集粒子径が大きいと判定したケースである。さらにケースB10~B12は、監視カメラ46A,46Bからの画像データに基づき泡の量が少ないと判定したケースB10、泡の量が適正と判定したケースB11、泡の量が多いと判定したケースB12に分かれる。
【0050】
ケースB10~B12も、薬注条件ではなくデカンタ2の運転条件に起因するものと判定し、デカンタ2の運転条件を変更して対処する。例えばケースB10とB11の場合は、ボウル5とスクリューコンベア6の差速を大きくするなどデカンタ2の運転条件を変更する。例えばケースB12の場合は、ボウル5とスクリューコンベア6の差速を大きくするなどデカンタ2の運転条件を変更する一方で、薬注量を下げることができる可能性ありと判定する。
【0051】
[第2実施形態]
続いて、図9を参照しながら、第2実施形態に従うデカンタ2の分離液監視装置4を詳述する。本実施形態の分離液監視装置4は、第1実施形態(図3)における2組の監視ラインのうち一方を、流路21a内を流れる分離液の状態を監視する監視部40用のラインとし、他方を、液受けボックス41に放出した分離液の状態を監視する監視部42用のラインとして用いる。
【0052】
監視部40用のラインには、ダイヤフラムポンプ48、サイトグラス43B、監視カメラ44B、背圧弁49を配置している。ダイヤフラムポンプ48は、サイトグラス43Bに向けて分離液を送液する。サイトグラス43Bは、分離液が下から上に向かって上下方向に流れるよう縦置きに配置している。背圧弁49は、サイトグラス43Bよりも下流側に配置する。バルブ45Bからダイヤフラムポンプ48の吸引口までの間の流路、ダイヤフラムポンプ48の吐出口からサイトグラス43Bまでの間の流路には、例えばホース21bなどのフレキシブルな配管材又は継手を配置するのが好ましい。同様に、サイトグラス43Bから背圧弁49までの間の流路、背圧弁49から液受けボックス41までの間の流路にも、例えばホース21bなどのフレキシブルな配管材又は継手を配置するのが好ましい。
【0053】
ダイヤフラムポンプ48は、分離液をサイトグラス43Bに向けて送液する。すなわち、分離液を定量的にサンプリングし、サイトグラス43Bに送り込む。サイトグラス43Bを流れる分離液の流量は、一例として、50~500L/hとなるようにする。ダイヤフラムポンプ48は、監視部40で監視する分離液をサンプリングするのに好ましいポンプの一例である。但し、容積式往復動ポンプであれば、ダイヤフラムポンプ以外のポンプを用いることを制限しない。他のポンプの一例は、プランジャーポンプ、ピストンポンプなどである。容積式往復動ポンプは、吐出する流体に脈動が発生し易い構造になっている。そのため、吐出側に背圧弁49を設けて脈動を抑制することが多い。
【0054】
上記構成において、サイトグラス43Bを定量的に流れる分離液を、監視カメラ44Bで撮像し、分離液中の固形分の画像データを取得する。本実施形態は、容積式往復動ポンプを採用すると共に、ポンプ48と背圧弁49の間にサイトグラス43Bを配置したことにより、脈動の作用を利用して、分離液に残存する固形分の画像データを取得し易くする。すなわち、サイトグラス43Bを流れる分離液に脈動を作用させ、凝集粒子を壊さずに固形分を満遍なく液中に分散させた画像データを取得可能にする。これにより、分離液に残存する固形分の有無と凝集粒子の大きさを制御部9が判定する際の精度を高めることが可能となる。
【0055】
実際に試験を行ったところ、ダイヤフラムポンプ48と背圧弁49の間にサイトグラス43Bを配置するのに加えて、サイトグラス43Bを縦置きに配置して分離液が下から上に流れるようにすると安定した判定結果が得られることを確認している。ダイヤフラムポンプ48による定量的なサンプリングは、例えばデカンタ2の処理流量の変化などの外乱の影響を受け難いという利点もある。さらに、サイトグラス43Bの2次側(液排出側)は、配管の先にエルボ21cを設けて流路を90度曲げた後に、ホース21bを介して背圧弁49を接続するのが好ましいことも確認している。
【0056】
一方、監視部42用のラインは、第1実施形態(図3)ではサイトグラス43Aと監視カメラ44Aを設けたが、本実施形態では省略し、バルブ45Aから液受けボックス41までを直接的に流路で接続する。そして、第1実施形態と同様に、監視カメラ46Aを用いて液受けボックス41内の分離液の液面の泡を撮像する。
【0057】
監視カメラ44Bによって取得した分離液中の固形分の画像データ、及び、監視カメラ46Aによって取得した分離液の泡の画像データは、制御部9による判定に用いる。詳細は、第1実施形態と同様である。
【0058】
[第3実施形態]
続いて、図10を参照しながら、第3実施形態に従うデカンタ2の分離液監視装置4を詳述する。本実施形態の分離液監視装置4は、図10に示すフローで薬注条件等を判定する。上述の第1実施形態と第2実施形態は、特に限定するものではないが、説明の便宜上、固形分の有無等→泡の量の順で判定する例とした。本実施形態は、図10に示すように、先ず分離液の泡の量を判定する。泡の量の判定は、例えば第1実施形態と同様に、取得した分離液の画像データの泡の面積等に基づく。判定結果は、例えば“少(無を含む)”、“中”、“多”である。“少(無を含む)”、“中”、“多”のいずれであるかは、一例として、“少(無を含む)”、“中”、“多”のそれぞれに予め泡の面積の範囲を設定しておき、取得した分離液の画像データの泡の面積がいずれの範囲内にあるかによって判定する。
【0059】
分離液監視装置4は、取得した分離液の画像データの泡の面積の数値を出力するようにしてもよい。泡の面積の数値は、分離液の画像データを連続的に取得し、移動平均によって算出した値が好ましい。すなわち、分離液監視装置4の出力部から泡の量の情報を出力する。出力した泡の量の情報は、例えばオペレーターが確認可能なようにモニター画面に表示する。このように、分離液監視装置4は、判定まで行わず、薬注条件の現状を監視・確認するのに使用することもできる。
【0060】
さらに分離液監視装置4は、分離液中の固形分の量を判定する。固形分の量の判定は、分離液の固形分の画像データに基づく。一例として、固形分濃度と対応付けた分離液の画像データを利用する。すなわち、図4に一例を示したように、分離液は、固形分濃度に応じて画像データに表れる状態が異なるので、予め固形分濃度と対応付けた分離液の画像データの多くを例えば制御部9などのコンピューターに読み込ませて機械学習させておき、これを利用して実際の分離液の画像データから固形分の量を判定する。判定結果は、例えば“少(無を含む)”、“中”、“多”である。或いは、固形分の濃度の値を算出するようにしてもよい。
【0061】
分離液監視装置4は、算出した濃度の値を出力するようにしてもよい。濃度の値は、分離液の画像データを連続的に取得し、移動平均によって算出した値が好ましい。すなわち、分離液監視装置4の出力部から固形分の濃度の情報を出力する。出力した固形分の濃度の情報は、例えばオペレーターが確認可能なようにモニター画面に表示する。
【0062】
さらに分離液監視装置4は、固形分の凝集粒子径を判定する。固形分の凝集粒子径の判定は、例えば第1実施形態と同様に、取得した分離液の画像データの凝集粒子の大きさに基づく。判定結果は、例えば“小”、“中”、“大”である。
【0063】
分離液監視装置4は、算出した凝集粒子径の値を出力するようにしてもよい。凝集粒子径の値は、分離液の画像データを連続的に取得し、移動平均によって算出した値が好ましい。すなわち、分離液監視装置4の出力部から固形分の凝集粒子径の情報を出力する。出力した固形分の凝集粒子径の情報は、例えばオペレーターが確認可能なようにモニター画面に表示する。
【0064】
そして図10に示すように、各判定結果のそれぞれに、上述の第1実施形態や第2実施形態で例示した様な、薬注条件の対応及び/又はデカンタ2の運転条件の調節を割り当て、該当する制御を実行する。
【0065】
[第4実施形態]
薬注条件の判定は、コストを考慮してもよい。好ましい一例として、分離液の泡の量から、汚泥処理のトータルコストが抑えられる薬注条件を判定する。
既述のように、分離液の泡の量は、分離液中の凝集剤の濃度が増えると多くなる。よって、図11(a)に模式的に示すように、薬注率(=薬注量/汚泥処理量×100)を増やすと泡の量も多くなる。一方、脱水ケーキの含水率は、図11(a)に模式的に示すように、薬注率がある一定以上になると、それ以上は下がらなくなる。
【0066】
さらに、既述のように、デカンタ2から排出される脱水ケーキは、焼却炉37に供給して焼却処理される。或いは、焼却以外の処理がなされることもある。脱水ケーキを処分するコストは、脱水ケーキの含水率によって変動するが、薬注率と含水率は図11(a)のように下げ止まりになる関係にあるので、図11(b)に模式的に示すように、薬注率を上げてもコストがそれ以上下がらなくなる。一方、凝集剤のコスト(薬品コスト)は、図11(b)に模式的に示すように、薬注率と比例的に増える。
【0067】
そのため、汚泥処理のトータルコスト(=脱水ケーキ処分コスト+薬品コスト)は、図11(b)に模式的に示すように、概ねU字状となり、トータルコストが抑えられる薬注条件が存在する。そこで、AI機能を有する制御部9は、分離液の泡の量から、トータルコストが抑えられる薬注条件になっているか判定する。さらに、トータルコストが抑えられる薬注条件となるように、薬注装置8及び/又はデカンタ2の制御を実行してもよい。具体的な一例として、トータルコストが抑えられる薬注条件に対応する泡の量を、例えば泡面積割合(図7参照)で予め設定しておき、取得した画像データの分離液の泡面積割合が設定値に近づくように制御する。
【0068】
トータルコストが抑えられる薬注条件と泡の量の関係は、凝集剤の種類やデカンタ2の運転条件ごとに予め試験等で確認し、各試験データを例えば制御部9などのコンピューターに読み込ませて機械学習させておく。そして、トータルコストが抑えられる薬注条件と泡の量の関係その情報を制御部9に格納しておく。
【0069】
以上のように、第1~第4実施形態のデカンタ2によれば、分離液に残存する固形分の画像データと分離液の泡の画像データを判定材料に用いたことにより、例えばコンピューターで画像データを解析して、凝集剤の薬注条件を判定することが可能となる。好ましい一例として、凝集剤の薬注量の適否及び/又は凝集反応状態の適否を判定することが可能となる。従って、近年において開発が進められている人工知能(Artificial Intelligence; AI)を利用した固体分離装置の自動制御の実現に貢献することができる。なお、固液分離装置は、デカンタ2に限定されることはなく、他の固液分離装置であってもよい。また、監視部40と監視部42がそれぞれ取得した画像データに基づき凝集剤の薬注量の適否か凝集反応状態の適否のいずれか一方を判定してもよい。また、分離液に残存する固形分の画像データ或いは分離液の泡の画像データのいずれか一方で判定するようにしてもよい。さらに、必ずしも分離液の泡の量、固形分の量、凝集粒子の大きさのすべてを利用しなくともよく、少なくとも1種であってもよい。また、分離液監視装置4は、薬注条件の判定まで行わなくともよく、泡の量、固形分の濃度、凝集粒子径のいずれかの値などを出力するにとどめてもよい。
【0070】
以上、本発明を具体的な実施形態に則して詳細に説明したが、形式や細部についての種々の置換、変形、変更等が、特許請求の範囲の記載により規定されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることが可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0071】
2 デカンタ
3 下水処理施設
4 分離液監視装置
5 ボウル
6 スクリューコンベア
8 薬注装置
9 制御部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12