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特開2024-83262ポリカーボネートオリゴマー、その製造方法、硬化性組成物、それによって製造されたエポキシ硬化物、及びエポキシ硬化物のアミン分解方法
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  • 特開-ポリカーボネートオリゴマー、その製造方法、硬化性組成物、それによって製造されたエポキシ硬化物、及びエポキシ硬化物のアミン分解方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083262
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ポリカーボネートオリゴマー、その製造方法、硬化性組成物、それによって製造されたエポキシ硬化物、及びエポキシ硬化物のアミン分解方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/42 20060101AFI20240613BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20240613BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20240613BHJP
   C07C 69/96 20060101ALI20240613BHJP
   C08J 11/24 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C08G64/42 ZAB
C08G59/40
C08G65/40
C07C69/96 Z CSP
C08J11/24
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200302
(22)【出願日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】111147351
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】522336890
【氏名又は名称】上緯創新育成股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SWANCOR INNOVATION & INCUBATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】3F.,No.11,Gongye S.6th Rd.,Nantou City,Nantou County 540028,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100209060
【弁理士】
【氏名又は名称】冨所 剛
(72)【発明者】
【氏名】汪孟緯
(72)【発明者】
【氏名】▲こう▼▲いん▼▲ぶん▼
【テーマコード(参考)】
4F401
4H006
4J005
4J029
4J036
【Fターム(参考)】
4F401AA23
4F401BA06
4F401CA67
4F401CA68
4F401CA75
4F401EA59
4F401FA01Z
4F401FA07Z
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB46
4J005AA24
4J005BA00
4J005BB00
4J029AA09
4J029AB02
4J029AB05
4J029AB07
4J029AC04
4J029AE18
4J029BB13A
4J029JB122
4J029KD02
4J029KD17
4J029KG01
4J029KG03
4J036AA01
4J036AC01
4J036AD08
4J036AD11
4J036AE07
4J036AF06
4J036AF08
4J036DC38
4J036DC40
4J036FB11
4J036HA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポリカーボネートオリゴマー、その製造方法、硬化性組成物、それによって製造されたエポキシ硬化物、及びエポキシ硬化物のアミン分解方法を提供する。
【解決手段】本発明は、式(I)で表される構造を有するポリカーボネートオリゴマーを提供する。これにより、アルコール分解の原理を利用して廃棄ポリカーボネートをポリカーボネートオリゴマーに製造し、ポリカーボネートオリゴマーは、加工性が良く、エポキシ樹脂硬化剤としてエポキシ樹脂と直接混合して硬化することができ、得られるエポキシ硬化物は良好な物理的特性と分解性を併せ持ち、これにより、廃棄物をリサイクルするという目的を達成する。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される構造を有し、
【化1】
は水素原子、炭素数1-6のアルキル基、アリル基、炭素数1-6のアルコキシ基、炭素数6-12の芳香族基又はハロゲン原子であり、Rは炭素数1-10のアルキル基、炭素数1-10のエーテル基、炭素数3-6のシクロアルキル基、式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)又は式(7)で表される構造であり、
【化2】
Xは単結合、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)、又は式(18)で表される構造であり、
【化3】
は水素原子、炭素数1-6のアルキル基、アリル基、炭素数1-6のアルコキシ基、炭素数6-12の芳香族基又はハロゲン原子であり、Rは水素原子又はメチル基であり、aは0-4の整数であり、bは0-5の整数であり、nは0-60の任意の数であり、mとpはそれぞれ独立して、0-50の任意の数であり、
及びXはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1-6のアルキル基、又は炭素数6-12の芳香族基であるポリカーボネートオリゴマー。
【請求項2】
ポリカーボネートを溶媒に溶解し、ある加熱温度まで昇温して撹拌して、第1の混合物を形成する溶解工程と、
式(II)で表される化合物を前記第1の混合物に添加し、前記加熱温度のままで反応させて、第2の混合物を形成する添加工程と、
【化4】
前記第2の混合物を冷却し、アルコール系溶媒で沈殿させて洗浄して、第3の混合物を形成する洗浄工程と、
前記第3の混合物を濾過し乾燥して、前記ポリカーボネートオリゴマーを得る濾過工程と、を含む請求項1に記載のポリカーボネートオリゴマーの製造方法。
【請求項3】
前記溶媒は、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アニソール、ジメチルスルホキシド、酢酸プロピレングリコールメチルエーテル、プロピオン酸プロピレングリコールメチルエーテルからなる群から選択される、請求項2に記載のポリカーボネートオリゴマーの製造方法。
【請求項4】
前記加熱温度は100℃-180℃である、請求項2に記載のポリカーボネートオリゴマーの製造方法。
【請求項5】
前記ポリカーボネートと前記式(II)で表される化合物とのモル比は1:10-1:90である、請求項2に記載のポリカーボネートオリゴマーの製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のポリカーボネートオリゴマーと、エポキシ樹脂と、触媒と、を含み、混合温度で混合して調製され、前記ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート基と前記エポキシ樹脂のエポキシ基との当量比が0.5-3.0である硬化性組成物。
【請求項7】
前記触媒は、4-ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールからなる群から選択される請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記触媒の添加量は、前記エポキシ樹脂の含有量の0.05重量%-5.0重量%である、請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記混合温度は90℃-170℃である、請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化反応させて得られるエポキシ硬化物。
【請求項11】
前記硬化反応は、前記硬化性組成物を加熱することによって完了し、前記硬化反応の硬化温度は、150℃-240℃である、請求項10に記載のエポキシ硬化物。
【請求項12】
請求項10に記載のエポキシ硬化物を提供する工程と、
脂肪族アミノ基含有化合物と前記エポキシ硬化物とを反応させて、前記エポキシ硬化物をアミン分解する分解工程と、を含むエポキシ硬化物のアミン分解方法。
【請求項13】
前記エポキシ硬化物は式(III)に表されるフェノキシ樹脂を形成するように分解されて、
【化5】
Yは、単結合、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)、式(18)に表される構造、又は式(19)に表される構造である請求項12に記載のエポキシ硬化物のアミン分解方法。
【化6】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴマー及びその製造方法に関し、特にポリカーボネートオリゴマー、その製造方法、硬化性組成物、それによって製造されたエポキシ硬化物、及びエポキシ硬化物のアミン分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート(Polycarbonate;PC)は現在、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートを高温でエステル交換することによって工業的に製造され、良好な光学と機械的性質を有する高分子材料であり、飲料水バレル、光ディスク、データアクセス、自動車部品等の家庭用品に広く使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、ポリカーボネートのリサイクルは主に機械的処理や物理的混合によって物理的に回収され、リサイクルされた材料の物理的欠陥は新しい材料を追加することで補われる。操作が簡単であるが、ポリカーボネートはリサイクルの過程で物理的特性が破壊されやすいため、その用途は依然として限られており、また、リサイクルされたポリカーボネートとエポキシ樹脂を混合して再硬化する場合、多くの場合、その後の硬化操作を実行するために、ポリカーボネートとエポキシ樹脂を溶媒で溶解する必要がある。したがって、従来のリサイクル後のポリカーボネートの再固化及び再利用は依然として溶液の参加を必要とし、操作しにくく、且つ環境に優しくない。
【0004】
将来のリサイクル問題に対応して、多くの学術論文に、分解によってビスフェノールAモノマー(BPA)を得て、それをポリカーボネートの合成に戻すケミカルリサイクル方法が議論され始めていたが、この方法で高純度のビスフェノールAモノマーを得るには、多量の溶媒の使用や煩雑な分離・精製工程が必要となり、工業化が困難となる。
【0005】
そこで、廃棄ポリカーボネートをエポキシ樹脂の硬化剤として使用し、エポキシ樹脂と硬化し、廃棄ポリカーボネートの持続可能な利用を実現するように硬化物にリサイクル及び分解できる特性を持たせる方法は、関連業界の目標となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの目的は、アルコール分解の原理を利用して廃棄ポリカーボネートをポリカーボネートオリゴマーに製造し、より加工性に優れ、エポキシ樹脂硬化剤として使用できるポリカーボネートオリゴマー及びその製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、ポリカーボネートオリゴマーとエポキシ樹脂を硬化し、得られる硬化物が優れた物理的特性を持つとともにリサイクル性を有する硬化性組成物、それによって製造されたエポキシ硬化物、及びエポキシ硬化物のアミン分解方法を提供することである。
【0008】
本発明の一実施形態は、式(I)で表される構造を有するポリカーボネートオリゴマーを提供する。
【化1】
は水素原子、炭素数1-6のアルキル基、アリル基、炭素数1-6のアルコキシ基、炭素数6-12の芳香族基又はハロゲン原子であり、Rは炭素数1-10のアルキル基、炭素数1-10のエーテル基、炭素数3-6のシクロアルキル基、式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)又は式(7)で表される構造である。
【化2】
Xは単結合、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)、又は式(18)で表される構造である。
【化3】
は水素原子、炭素数1-6のアルキル基、アリル基、炭素数1-6のアルコキシ基、炭素数6-12の芳香族基又はハロゲン原子であり、Rは水素原子又はメチル基であり、aは0-4の整数であり、bは0-5の整数であり、nは0-60の任意の数であり、mとpはそれぞれ独立して、0-50の任意の数である。X及びXはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1-6のアルキル基、又は炭素数6-12の芳香族基である。
【0009】
本発明の別の実施形態は、ポリカーボネートを溶媒に溶解し、ある加熱温度まで昇温して撹拌して、第1の混合物を形成する溶解工程と、式(II)で表される化合物を第1の混合物に添加し、加熱温度のままで反応させて、第2の混合物を形成する添加工程と、
【化4】
第2の混合物を冷却し、アルコール系溶媒で沈殿させて洗浄して、第3の混合物を形成する洗浄工程と、第3の混合物を濾過し乾燥して、ポリカーボネートオリゴマーを得る濾過工程と、を含む前記ポリカーボネートオリゴマーの製造方法を提供する。
【0010】
上記ポリカーボネートオリゴマーの製造方法によれば、溶媒は、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アニソール、ジメチルスルホキシド、酢酸プロピレングリコールメチルエーテル、プロピオン酸プロピレングリコールメチルエーテルからなる群から選択されてよい。
【0011】
上記ポリカーボネートオリゴマーの製造方法によれば、加熱温度は100℃-180℃であってよい。
【0012】
上記ポリカーボネートオリゴマーの製造方法によれば、ポリカーボネートと式(II)で表される化合物とのモル比は1:10-1:90であってよい。
【0013】
本発明の別の実施形態は、前記ポリカーボネートオリゴマーと、エポキシ樹脂と、触媒とを含み、混合温度で混合して調製され、ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート基とエポキシ樹脂のエポキシ基との当量比が0.5-3.0である硬化性組成物を提供する。
【0014】
上記硬化性組成物によれば、触媒は、4-ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールからなる群から選択されてよい。
【0015】
上記硬化性組成物によれば、触媒の添加量は、エポキシ樹脂の含有量の0.05重量%-5.0重量%であってよい。
【0016】
上記硬化性組成物によれば、混合温度は、90℃-170℃であってよい。
【0017】
本発明のさらに別の実施形態は、前記硬化性組成物を硬化反応させて得られるエポキシ硬化物を提供する。
【0018】
上記エポキシ硬化物によれば、硬化反応は、硬化性組成物を加熱することによって完了し、硬化反応の硬化温度は、150℃-240℃であってよい。
【0019】
本発明の更なる実施形態は、前記エポキシ硬化物を提供する工程と、脂肪族アミノ基含有化合物とエポキシ硬化物とを反応させてエポキシ硬化物をアミン分解する分解工程とを含む、エポキシ硬化物のアミン分解方法を提供する。
【0020】
上記エポキシ硬化物のアミン分解方法によれば、エポキシ硬化物は式(III)に表されるフェノキシ樹脂を形成するように分解される。
【化5】
Yは、単結合、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)、式(18)に表される構造、又は式(19)に表される構造である。
【化6】
【発明の効果】
【0021】
これにより、本発明のポリカーボネートオリゴマーは、ポリカーボネートを再利用してエポキシ樹脂硬化剤とし、且つ上記両者の混合には溶媒が必要とされず、エポキシ樹脂成形用コンパウンド(epoxy molding compound;EMC)に適用することができ、触媒の作用により優れた性質を持つエポキシ硬化物を形成し、分解してリサイクル・再利用でき、環境に優しい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の上記及び他の目的、特徴、利点及び実施例をより明確且つ理解しやすくするために、添付図面を以下に説明する。
図1】本発明の一実施形態によるポリカーボネートオリゴマーの製造方法を示す工程フローチャートである。
図2】本発明の別の実施形態によるエポキシ硬化物の製造方法を示す工程フローチャートである。
図3】本発明の更なる実施形態によるエポキシ硬化物のアミン分解方法を示す工程フローチャートである。
図4】実施例1のH-NMRスペクトルを示す図である。
図5】比較例1のH-NMRスペクトルを示す図である。
図6】実施例1のフーリエ赤外スペクトルを示す図である。
図7】実施例4のフーリエ赤外スペクトルを示す図である。
図8】実施例7のH-NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の各実施形態について更に詳細に説明する。しかしながら、これらの実施形態は、様々な発明概念の適用であってよく、様々な特定の範囲内で具体的に実行されてよい。特定の実施形態は説明を目的とするものに過ぎす、開示される範囲に限定されない。
【0024】
本発明では、化合物構造をスケルトン式(skeleton formula)で表す場合があるが、このような表記法は炭素原子、水素原子及び炭素水素結合を省略してよい。構造式中に官能基が明確に記載されているものがあれば、記載されているものを基準とする。
【0025】
本発明において、「ポリカーボネートオリゴマーは、式(I)で表される構造を有する」との記載は、簡潔且つ流暢にするために、式(I)で表されるポリカーボネートオリゴマー、又はポリカーボネートオリゴマー(I)として記載される場合があり、他の化合物又は基の記載も同様である。
【0026】
<ポリカーボネートオリゴマー>
【0027】
本発明は、式(I)で表される構造を有するポリカーボネートオリゴマーを提供する。
【化7】
は水素原子、炭素数1-6のアルキル基、アリル基、炭素数1-6のアルコキシ基、炭素数6-12の芳香族基又はハロゲン原子であり、Rは炭素数1-10のアルキル基、炭素数1-10のエーテル基、炭素数3-6のシクロアルキル基、式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)又は式(7)で表される構造である。
【化8】
Xは単結合、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)、又は式(18)で表される構造である。
【化9】
は水素原子、炭素数1-6のアルキル基、アリル基、炭素数1-6のアルコキシ基、炭素数6-12の芳香族基又はハロゲン原子であり、Rは水素原子又はメチル基であり、aは0-4の整数であり、bは0-5の整数であり、nは0-60の任意の数であり、mとpはそれぞれ独立して、0-50の任意の数である。X及びXはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1-6のアルキル基、又は炭素数6-12の芳香族基である。
【0028】
これにより、本発明のポリカーボネートオリゴマーは、高分子量のポリカーボネートに比べて、加工性が良く、エポキシ樹脂との相溶性が良く、エポキシ樹脂硬化剤として使用できる。
【0029】
<ポリカーボネートオリゴマーの製造方法>
【0030】
図1を参照されたい。それは本発明の一実施形態によるポリカーボネートオリゴマーの製造方法100を示す工程フローチャートである。図1において、ポリカーボネートオリゴマーの製造方法100は、工程110、工程120、工程130、及び工程140を含む。
【0031】
工程110は、ポリカーボネートを溶媒に溶解し、ある加熱温度まで昇温して撹拌して、第1の混合物を形成する溶解工程を行う。具体的には、溶媒は、好ましくは沸点が110℃より高く、且つポリカーボネートを溶解できる非アルコール系または非アミン系溶媒である。したがって、本発明の溶媒は、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アニソール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸プロピレングリコールメチルエーテル、プロピオン酸プロピレングリコールメチルエーテルからなる群から選択されてよく、且つ加熱温度は100℃-180℃であってよく、好ましくは130℃-170℃である。
【0032】
工程120は、式(II)で表される化合物を第1の混合物に添加し、加熱温度のままで反応させて、第2の混合物を形成する添加工程を行う。
【化10】
の定義については、上記を参照されたい。ここで説明を省略する。また、前記ポリカーボネートと前記式(II)で表される化合物とのモル比は、1:10-1:90であってよく、好ましくは1:40-1:70である。
【0033】
工程130は、第2の混合物を冷却し、アルコール系溶媒で沈殿させて洗浄して、第3の混合物を形成する洗浄工程を行う。具体的には、アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノールであってよいが、これらに限定されない。
【0034】
工程140は、第3の混合物を濾過して乾燥して、粉末生成物であるポリカーボネートオリゴマーを得る濾過工程を行う。
【0035】
<硬化性組成物>
【0036】
本発明は、前記ポリカーボネートオリゴマーと、エポキシ樹脂と、触媒とを含み、ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート基とエポキシ樹脂のエポキシ基との当量比が0.5-3.0である硬化性組成物を提供する。
【0037】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(Diglycidyl ether of Bisphenol A;DGEBA)、フェノールノボラックエポキシ樹脂(Phenol novolac epoxy;PNE)、クレゾールノボラックエポキシ樹脂(Cresol novolac epoxy;CNE)、ジシクロペンタジエンフェノールエポキシ樹脂(Dicyclopentadiene-phenol epoxy;DNE)、ナフタレン含有エポキシ樹脂(Naphthalene-containing epoxy)、リン系エポキシ樹脂、又はこれらの組み合わせであってよい。即ち、前記エポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよく、二種以上を使用する場合は、任意の割合で混合してよい。これにより、適切なエポキシ樹脂を選択することにより、後の硬化物に所望の性質を付与することができる。
【0038】
前記触媒は、4-ジメチルアミノピリジン(4-Dimethylaminopyridine;DMAP)、イミダゾール(Imidazole)、2-メチルイミダゾール(2-Methylimidazole)、2-フェニルイミダゾール(2-Phenylimidazole)、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2-Ethyl-4-methylimidazole)からなる群から選択されてよい。これにより、触媒は、エポキシ樹脂のエポキシ基と相互作用して、その後の硬化反応を開始させるのに有利である。具体的には、前記触媒の添加量は、エポキシ樹脂の含有量の0.05重量%-5.0重量%であってよく、好ましくは0.1重量%-0.5重量%である。
【0039】
詳細には、前記硬化性組成物は、式(I)で表されるポリカーボネートオリゴマー、エポキシ樹脂、及び触媒を混合温度で混合して製造される。混合温度は90℃-170℃であってよく、好ましくは110℃-140℃であり、温度が低すぎると混合が不均一となり、温度が高すぎると硬化反応によりゲル化し、サンプル調製がうまく進行できない。
【0040】
<エポキシ硬化物>
【0041】
本発明は、前記硬化性組成物を硬化反応させて得られるエポキシ硬化物を更に提供し、前記硬化反応については、以下の図2を参照しながら簡単に説明する。図2は、本発明の別の実施形態によるエポキシ硬化物の製造方法200を示す工程フローチャートである。図2において、エポキシ硬化物の製造方法200は、工程210及び工程220を含む。
【0042】
工程210は、式(I)で表されるポリカーボネートオリゴマーと、エポキシ樹脂と、触媒とを混合して硬化性組成物を得る混合工程を行う。具体的には、工程210により、ポリカーボネートオリゴマー、エポキシ樹脂、及び触媒は、硬化性組成物を含む固体プレポリマーを形成することができる。ポリカーボネートオリゴマー、エポキシ樹脂、及び触媒の詳細については、上記を参照されたい。ここでは説明を省略する。
【0043】
工程220は、ポリカーボネートオリゴマーとエポキシ樹脂とを触媒の作用により架橋させてエポキシ硬化物を形成する硬化工程を行う。硬化反応は、硬化性組成物を加熱することによって完了し、硬化反応の硬化温度は、150℃-240℃であってよく、好ましくは170℃-200℃である。
【0044】
<エポキシ硬化物のアミン分解方法>
【0045】
図3を参照されたい。それは、本発明の更なる実施形態によるエポキシ硬化物のアミン分解方法300を示す工程フローチャートである。図3において、エポキシ硬化物のアミン分解方法300は、工程310及び工程320を含む。
【0046】
工程310では、前記エポキシ硬化物を提供する。工程320では、脂肪族アミノ基含有化合物とエポキシ硬化物とを反応させて、エポキシ硬化物をアミン分解する分解工程を行う。
【0047】
また、前記エポキシ硬化物を分解した後、アルコールで洗浄して式(III)で表されるフェノキシ樹脂を得ることができる。
【化11】
Xの定義については上記を参照すればよく、ここでは説明を省略する。Yは単結合、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)、式(18)に表される構造、又は式(19)に表される構造である。
【化12】
また、式(III)で表されるフェノキシ樹脂は、助剤としての再利用に有利である。
【0048】
以下の具体的な実施例で本発明を更に例示的に説明することにより、当業者は、過度に解読する必要がない状況で本発明を完全に利用して実施することができ、これらの実施例は、本発明の材料及び方法をどのように実施するかを説明するためだけに用いられるが、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではない。
【0049】
<実施例/比較例>
【0050】
<ポリカーボネートオリゴマーの調製>
【0051】
実施例1:100g(4×10-3mole)のポリカーボネートペレット(奇美実業から購入、製品コードPC-122)に150gのN,N-ジメチルアセトアミド溶媒を加え、150℃に昇温した後、温度を維持して撹拌し、ポリカーボネートペレットを溶媒に溶解させて第1の混合物を形成し、続いて18.3g(0.17mole)のベンジルアルコールを加えて9時間反応させて第2の混合物を形成し、その後、第2の混合物を降温してメタノールに注ぎ、洗浄と沈殿を行って第3の混合物を形成し、更に、第3の混合物を吸引濾過によって濾過して白色粉末を得て、110℃の真空オーブンに入れて乾燥させ、実施例1のポリカーボネートオリゴマー粉末を得て、その収率は75%であった。具体的には、ポリカーボネートPC-122は、数平均分子量(Mn)が24400、重量平均分子量(Mw)が45488であるのに対し、実施例1のポリカーボネートオリゴマーは、ゲルクロマトグラフィー(GPC)によって測定したところ、数平均分子量(Mn)が2391、重量平均分子量(Mw)が3532であった。
【0052】
実施例2:100g(4.1×10-3mole)のポリカーボネートペレット(奇美実業から購入、製品コードPC-122)に150gのN,N-ジメチルアセトアミド溶媒を加え、150℃に昇温した後、温度を維持して撹拌し、ポリカーボネートペレットを溶媒に溶解させて第1の混合物を形成し、続いて27.41g(0.25mole)のベンジルアルコールを加えて9時間反応させて第2の混合物を形成し、その後、第2の混合物を降温してメタノールに注ぎ、洗浄と沈殿を行って第3の混合物を形成し、更に、第3の混合物を吸引濾過によって濾過して白色粉末を得て、110℃の真空オーブンに入れて乾燥させ、実施例2のポリカーボネートオリゴマー粉末を得て、その収率は45%であった。具体的には、ポリカーボネートPC-122は、数平均分子量(Mn)が24400、重量平均分子量(Mw)が45488であるのに対し、実施例2のポリカーボネートオリゴマーは、ゲルクロマトグラフィー(GPC)によって測定したところ、数平均分子量(Mn)が2163、重量平均分子量(Mw)が2747であった。
【0053】
実施例3:100g(4.3×10-3mole)の廃棄ポリカーボネートに150gのN,N-ジメチルアセトアミド溶媒を加え、150℃に昇温した後、温度を維持して撹拌し、ポリカーボネートペレットを溶媒に溶解させて第1の混合物を形成し、続いて18.3g(0.17mole)のベンジルアルコールを加えて9時間反応させて第2の混合物を形成し、その後、第2の混合物を降温してメタノールに注ぎ、洗浄と沈殿を行って第3の混合物を形成し、更に、第3の混合物を吸引濾過によって濾過して白色粉末を得て、110℃の真空オーブンに入れて乾燥させ、実施例3のポリカーボネートオリゴマー粉末を得て、その収率は78%であった。具体的には、ゲルクロマトグラフィー(GPC)によって測定したところ、廃棄ポリカーボネートは、数平均分子量(Mn)が23512、重量平均分子量(Mw)が44758であるのに対し、実施例3のポリカーボネートオリゴマーは、数平均分子量(Mn)が3561、重量平均分子量(Mw)が5707であった。
【0054】
比較例1:100g(4.1×10-3mole)のポリカーボネートペレット(奇美実業から購入、製品コードPC-122)に150gのN,N-ジメチルアセトアミド溶媒を加え、150℃に昇温した後、温度を維持して撹拌し、ポリカーボネートペレットを溶媒に溶解させて第1の混合物を形成し、続いて4.58g(0.04mole)のベンジルアルコールを加えて9時間反応させて第2の混合物を形成し、その後、第2の混合物を降温してメタノールに注ぎ、洗浄と沈殿を行って第3の混合物を形成し、更に、第3の混合物を吸引濾過によって濾過して白色粉末を得て、110℃の真空オーブンに入れて乾燥させ、比較例1のポリカーボネートオリゴマー粉末を得て、その収率は88%であった。具体的には、ポリカーボネートPC-122は、数平均分子量(Mn)が24400、重量平均分子量(Mw)が45488であるのに対し、比較例1のポリカーボネートオリゴマーは、ゲルクロマトグラフィー(GPC)によって測定したところ、数平均分子量(Mn)が8798、重量平均分子量(Mw)が10777であった。
【0055】
実施例1-3及び比較例1についての反応式は、以下の表1に示す。
【表1】
【0056】
実施例1-3及び比較例1の構造を確認するために、実施例1-3及び比較例1に対してH-NMR分析を行う。図4及び図5を合わせて参照されたい。図4は、実施例1のH-NMRスペクトルを示す図であり、図5は、比較例1のH-NMRスペクトルを示す図である。実施例2及び実施例3のH-NMRスペクトルは、実施例1と同様であるため、ここでは図示しない。図4及び図5の結果から分かるように、実施例1-3の生成物はいずれもポリカーボネートオリゴマーであり、比較例1の分子量は実施例1-3よりも大きい。
【0057】
<エポキシ硬化物の調製>
【0058】
実施例4:2gの実施例1のもの(127.14g/eq)と2.91gのビスフェノールA型エポキシ樹脂(長春樹脂から購入、製品コードBE188)を、前記両者の当量比を1として、110℃で溶融撹拌し、混合した後に90℃で0.006gの2-フェニルイミダゾール(BE188の0.2wt%)を触媒として加えて、均一に溶融撹拌した後、混合プレポリマーを得て、更に175℃のオーブンに入れて硬化させ、硬化時間を30分間とし、これにより実施例4のエポキシ硬化物を得ることができる。
【0059】
実施例5:2gの実施例2のもの(127.14g/eq)と2.91gのビスフェノールA型エポキシ樹脂(長春樹脂から購入、製品コードBE188)を、前記両者の当量比を1として、110℃で溶融撹拌し、混合した後に90℃で0.006gの2-フェニルイミダゾール(BE188の0.2wt%)を触媒として加えて、残りの工程はいずれも実施例4と同じであり、これにより、実施例5のエポキシ硬化物を得ることができる。
【0060】
実施例6:2gの実施例3のもの(127.14g/eq)と2.91gのビスフェノールA型エポキシ樹脂(長春樹脂から購入、製品コードBE188)を、前記両者の当量比を1として、110℃で溶融撹拌し、混合した後に90℃で0.006gの2-フェニルイミダゾール(BE188の0.2wt%)を触媒として加えて、残りの工程はいずれも実施例4と同じであり、これで実施例6のエポキシ硬化物を得ることができる。
【0061】
比較例2:2gのポリカーボネート(奇美実業から購入、製品コードPC-122、127.14g/eq)と2.91gのビスフェノールA型エポキシ樹脂(長春樹脂から購入、製品コードBE188)を、前記両者の当量比を1として、140℃で溶融撹拌したが、完全に溶融混合できなかった。また、140℃で0.006gの2-フェニルイミダゾール(BE188の0.2wt%)を触媒として加えたが、すぐにゲル化するので、うまく混合してプレポリマーを得ることができなかった。
【0062】
比較例3:2gのポリカーボネート(奇美実業から購入、製品コードPC-122、127.14g/eq)と2.91gのビスフェノールA型エポキシ樹脂(長春樹脂から購入、製品コードBE188)を、前記両者の当量比を1として、140℃で溶融撹拌し、混合した後に140℃で0.006gの4-ジメチルアミノピリジン(BE188の0.2wt%)を触媒として加えたが、すぐにゲル化するので、うまく混合してプレポリマーを得ることができなかった。
【0063】
比較例4:2gの廃棄ポリカーボネート(127.14g/eq)と2.91gのビスフェノールA型エポキシ樹脂(長春樹脂から購入、製品コードBE188)を、前記両者の当量比を1として、140℃で溶融撹拌し、混合した後に140℃で2-フェニルイミダゾール(BE188の0.2wt%)0.006gを触媒として加えたが、すぐにゲル化するので、うまく混合してプレポリマーを得ることができなかった。
【0064】
比較例5:2gの比較例1のポリカーボネートオリゴマー(127.14g/eq)と2.91gのビスフェノールA型エポキシ樹脂(長春樹脂から購入、製品コードBE188)を、前記両者の当量比を1として、140℃で溶融撹拌し、混合した後に140℃で2-フェニルイミダゾール(BE188の0.2wt%)0.006gを触媒として加えたが、すぐにゲル化するので、うまく混合してプレポリマーを得ることができなかった。
【0065】
比較例6:2gのフェノール樹脂(長春樹脂から購入、製品コードPF8110、127.14g/eq)と2.91gのビスフェノールA型エポキシ樹脂(長春樹脂から購入、製品コードBE188)を、前記両者の当量比を1として、140℃で溶融撹拌し、混合した後に90℃で0.006gの2-フェニルイミダゾール(BE188の0.2wt%)を触媒として加えて、残りの工程はいずれも実施例4と同じであり、これにより、比較例6のエポキシ硬化物を得ることができる。
【0066】
図6及び図7を参照されたい。図6は、実施例1のフーリエ赤外スペクトル(FTIR)を示す図であり、図7は、実施例4のフーリエ赤外スペクトル(FTIR)を示す図である。図6の結果から分かるように、実施例1のポリカーボネートオリゴマーにおけるカルボニル基(carbonyl)のC=O特徴ピークは1764cm-1にあるが、図7の結果から分かるように、実施例1とエポキシ樹脂を硬化して得られた実施例4のエポキシ硬化物におけるカルボニル基のC=O特徴ピークは1748cm-1にシフトした。それは、カルボニル基が芳香族のカーボネート構造から脂肪族のカーボネート構造(carbonate)に変換されたことを示し、その反応は以下の表2に示される。
【表2】
【0067】
上記結果によると、比較例1のもの及びポリカーボネートをエポキシ硬化剤として使用する場合、140℃まで加熱しなければ溶融混合することができず、温度を下げるとサンプルブロックが固体となるため、触媒を高温でしか添加することができない。また触媒を高温で加えたら、混合過程において反応の進行をトリガーし、それによりサンプルブロックが途中でゲル化しやすく、サンプル調製がうまく進行できない。本発明の実施例1-3のポリカーボネートオリゴマーは、分子量が比較例1のもの及びポリカーボネートよりも低く、溶融混合時に混合性が良く、110℃でエポキシ樹脂と溶融混合し、90℃まで降温しても溶融状態を維持することができ、触媒の添加が容易となり、加工範囲も良く、硬化性組成物が175℃で硬化すれば完全に反応することができ、エポキシ樹脂との反応性が良好であることが確認され、エポキシ硬化剤として明らかに使用できる。更に、それは高温溶融条件で均一に混合することができ、且つ触媒添加後も操作性を有し、すぐにゲル化しないため、加工時間も良い。
【0068】
<熱特性評価>
【0069】
実施例4-6及び比較例6のエポキシ硬化物に熱特性評価を行う。示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter;DSC)を用いて10℃/minの昇温速度でガラス転移温度(T)の測定を行い、T測定結果を下記表3に示す。
【表3】
【0070】
上記表3の結果から分かるように、実施例4-6のガラス転移温度は、オリゴマーの分子量の大きさによって変動し、フェノール硬化剤で硬化したエポキシ硬化物の物理的特性よりやや劣るように見えるが、120℃を超えた耐熱性を示し、多くの適用場面に対応できる。
【0071】
<エポキシ硬化物の分解>
【0072】
本発明のポリカーボネートオリゴマーで硬化したエポキシ硬化物の分解性を知るために、まず、0.2gの実施例4-6及び比較例6のエポキシ硬化物と4gのエタノールアミン(MEA)をそれぞれ反応器に置いて、オーブンで加熱し、反応終了後にエタノールアミンを抽出し、分解を完了した実施例7-9及び比較例7のものを得ることができる。実施例7-9はそれぞれ実施例4-6のエポキシ硬化物に分解反応を行った結果であり、比較例7は比較例6のエポキシ硬化物に分解反応を行った結果である。実施例7-9及び比較例7において選択したエポキシ硬化物の種類、反応温度(℃)、反応時間(hrs)、及び残存重量(%)は、以下の表4に示す。
【表4】
【0073】
表4の結果から分かるように、実施例4-6ではいずれも本発明のポリカーボネートオリゴマーをエポキシ硬化剤とし、エポキシ樹脂と反応して形成されたエポキシ硬化物を分解しようとする場合、脂肪族アミン類を添加して加熱するだけでアミン分解反応を行うことができ、最終的にエポキシ硬化物が完全に分解され、残存重量がいずれも0%である。これに対して、比較例6ではフェノール樹脂を硬化剤とし、分解性がないため、最終的には元のエポキシ硬化物の状態のままである。
【0074】
また、図8を参照されたい。それは実施例7のH-NMRスペクトルを示す図である。実施例7では、本発明の実施例4のエポキシ硬化物とエタノールアミンに分解反応を行い、反応終了後、過剰のエタノールアミンを除去し、そしてエタノールで洗浄し、濾過して乾燥すれば、淡黄色の固体生成物を得ることができる。淡黄色の固体生成物をH-NMRで分析した結果は図8に示され、実施例4のエポキシ硬化物とエタノールアミンと反応した後の分解生成物は高純度のフェノキシ樹脂(phenoxy resin)であり、その反応方程式は以下の表5に示す。ゲルクロマトグラフィー(GPC)によって測定したところ、数平均分子量(Mn)は8391、重量平均分子量(Mw)は10612であり、ポリオールオリゴマーとして変性したり、コーティング助剤として使用したりでき、これにより、完全リサイクルという目標を達成する。
【表5】
【0075】
以上より、本発明は、廃棄ポリカーボネートをアルコール分解してポリカーボネートオリゴマーを得ることができ、それをエポキシ樹脂硬化剤として使用できる。また、本発明のポリカーボネートオリゴマーは、エポキシ樹脂と直接混合すれば硬化することができ、従来技術に比べて溶媒の使用が削減され、エポキシ樹脂の溶融加工に顕著なブレークスルーがあり、高温で硬化させることにより耐高温の硬化物を得ることができ、この硬化物を脂肪族アミン類で浸漬して加熱した後に完全にアミン分解することができ、最終的に高純度のフェノキシ樹脂が得られ、製品サイクルにおける添加剤としての使用が可能であり、これにより、廃棄物リサイクルの目的を達成する。
【0076】
本発明は、実施形態に基づいて以上のように開示されたが、それは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更や修正を行うことができ、よって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に定義される範囲を基準とする。
【符号の説明】
【0077】
100 ポリカーボネートオリゴマーの製造方法
200 エポキシ硬化物の製造方法
300 エポキシ硬化物のアミン分解方法
110、120、130、140、210、220、310、320 工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8