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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008329
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】クレーン及び工事方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/06 20060101AFI20240112BHJP
   B66C 13/08 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B66C13/06 M
B66C13/06 E
B66C13/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110109
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】野島 昌芳
(57)【要約】
【課題】風の影響を受け易い長尺部材を簡便かつ安定的に搬送し得るクレーン等を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、長尺部材を搬送するのに使用可能なクレーンが提供される。このクレーンは、旋回体と、メインクレーンと、タグ機構とを備える。メインクレーンは、ジブと、巻上ウィンチとを有する。タグ機構は、旋回体上にジブの長手方向を中心として、ジブの両側にそれぞれ設けられたタグウィンチと、タグウィンチに巻回されたタグワイヤと、タグワイヤを回転支持するタグシーブと、タグワイヤのタグシーブを介してタグウィンチと反対側に設けられ、長尺部材に取り付け可能な取付具とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺部材を搬送するのに使用可能なクレーンであって、
旋回体と、メインクレーンと、タグ機構とを備え、
前記メインクレーンは、
ジブと、
巻上ウィンチとを有し、
前記タグ機構は、
前記旋回体上に前記ジブの長手方向を中心として、前記ジブの両側にそれぞれ設けられたタグウィンチと、
前記タグウィンチに巻回されたタグワイヤと、
前記タグワイヤを回転支持するタグシーブと、
前記タグワイヤの前記タグシーブを介して前記タグウィンチと反対側に設けられ、前記長尺部材に取り付け可能な取付具とを有する、もの。
【請求項2】
請求項1に記載のクレーンにおいて、
さらに、支持部を備え、
前記支持部は、前記タグシーブを支持し、前記ジブの長手方向に沿って、前記ジブに対する固定位置を変更可能に構成される、もの。
【請求項3】
請求項1に記載のクレーンにおいて、
さらに、移動機構を備え、
前記移動機構は、前記支持部を前記ジブの長手方向に沿って移動可能に構成される、もの。
【請求項4】
請求項1に記載のクレーンにおいて、
前記タグウィンチのトルクは、前記巻上ウィンチのトルクより小さい、もの。
【請求項5】
請求項1に記載のクレーンにおいて、
前記タグウィンチの巻上速度は、前記巻上ウィンチの巻上速度より速い、もの。
【請求項6】
請求項1に記載のクレーンにおいて、
前記メインクレーンにより前記長尺部材を巻き上げている間、前記タグウィンチの作動を継続する、もの。
【請求項7】
請求項1に記載のクレーンにおいて、
前記一対のタグウィンチの作動は、個別に制御可能である、もの。
【請求項8】
請求項1に記載のクレーンにおいて、
前記旋回体は、さらに保持部を有し、
前記保持部は、前記長尺部材に取り付けられていない状態の前記取付具を保持する、もの。
【請求項9】
クレーンを用いて長尺部材の搬送を行う工事方法であって、
前記クレーンは、メインクレーンと、タグ機構とを備え、
外力による前記長尺部材の回転を、前記タグ機構により防止又は抑制しつつ、前記長尺部材の巻上操作を、前記メインクレーンにより行って工事を進行する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン及び工事方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、クレーンを用いて、風力発電設備を建設することが行われている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の方法では、バラストユニットを有する吊りビームを、クレーンのクレーンフックに固定し、バラストユニットの下側における第2のクレーンフックに、ローターブレードを吊りケーブルを用いて固定する。そして、ローターブレード結合部の1つにおいてローターブレードを取り付けるため、吊りビームおよびローターブレードを、クレーンによって吊り上げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-520509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる方法では、ローターブレードが吊りケーブルを介して第2のクレーンフックの一点で吊られるため、風の影響を受けてローターブレードが回転するのを十分に抑制し難い。
本発明では上記事情を鑑み、風の影響を受け易い長尺部材を簡便かつ安定的に搬送し得るクレーン等を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、長尺部材を搬送するのに使用可能なクレーンが提供される。このクレーンは、旋回体と、メインクレーンと、タグ機構とを備える。メインクレーンは、ジブと、巻上ウィンチとを有する。タグ機構は、旋回体上にジブの長手方向を中心として、ジブの両側にそれぞれ設けられたタグウィンチと、タグウィンチに巻回されたタグワイヤと、タグワイヤを回転支持するタグシーブと、タグワイヤのタグシーブを介してタグウィンチと反対側に設けられ、長尺部材に取り付け可能な取付具とを有する。
【0006】
かかる態様によれば、風の影響を受け易い長尺部材を簡便かつ安定的に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のクレーンの第1実施形態を示す模式図である。
図2図1に示すクレーンにブレードを取り付けた状態の模式図である。
図3図1に示すクレーンでブレードを吊り上げた状態の模式図である。
図4】コンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
図5図1に示すクレーンが備えるタグ機構の操作装置の平面図である。
図6】本発明のクレーンの第2実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0009】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0010】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0011】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0012】
<第1実施形態>
まず、本発明のクレーンの第1実施形態について説明する。
1.全体構成
1.1 基本構成
まず、第1本実施形態に係るクレーン1の基本構成を説明する。
図1は、本発明のクレーンの第1実施形態を示す模式図である。図2は、図1に示すクレーンにブレードを取り付けた状態の模式図である。図3は、図1に示すクレーンでブレードを吊り上げた状態の模式図である。図4は、コンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。図5は、図1に示すクレーンの操作装置の平面図である。
【0013】
このクレーン1は、風車のブレード(平板状をなす長尺部材)Bを搬送するのに使用可能である。
以下の説明では、図1図3図6も同様)中、上側(鉛直上方)を単に「上方」又は「上側」と、下側(鉛直下方)を単に「下方」又は「下側」とも記載する。
また、図1図3図6も同様)中、矢印で示すように前後及び左右を規定した。
【0014】
クレーン1は、建造物(本実施形態では、風車)の高さに応じて、それ自身の機構によってクライミングして高さを調整可能なものである。
図1に示すクレーン1は、マスト2と、旋回体3と、メインクレーン4と、タグ機構5とを備えている。換言すると、クレーン1は、マスト2の頂部に旋回体3が設けられ、この旋回体3上にメインクレーン4及びタグ機構5が設けられている。
なお、旋回体3、メインクレーン4及びタグ機構5によりクレーン本体が構成されているとも言える。
【0015】
(マスト2)
マスト2は、クレーン本体を支持するように構成されている。マスト2は、例えば、複数の単位マスト(図示せず。)を長手方向に接続することにより組み立てられて伸長される。
特に、クレーン1においては、マスト2は、接続する単位マストの数を変更することにより、クレーン本体の高さを建造中の風車(建造物)の高さに合わせて調節可能に構成されている。
各単位マストは、例えば、断面矩形の筒状体で構成される。好ましくは、単位マストの4つの側面は、トラス構造である。さらに好ましくは、単位マストの4つの側面には、楕円形状の開口部を有する。
【0016】
(旋回体3)
旋回体3は、マスト2の頂部に設けられた旋回ベアリング(図示せず。)に回転自在に支持されている。
【0017】
(メインクレーン4)
メインクレーン4は、ジブ41と、巻上ウィンチ42と、巻上ワイヤ43と、シーブ44と、フック45とを有している。
ジブ41は、旋回体3に支持され、前後に延在するとともに、起伏可能に構成されている。
巻上ウィンチ42は、旋回体3上のジブ41の後側に設けられ、これに巻回された巻上ワイヤ43を巻上又は巻下可能に構成されている。
ジブ41の先端部(上端部)には、シーブ44が回転可能に設けられ、巻上ワイヤ43の途中が支持されている。
また、フック45は、巻上ワイヤ43の先端(巻上ウィンチ42と反対側の端部)に設けられており、例えば、ブレードBに取り付けられた吊り具B1に引っ掛け可能である。
【0018】
(タグ機構5)
タグ機構5は、一対のタグウィンチ51と、各タグウィンチ51に対応して設けられたタグワイヤ52、タグシーブ53及び取付具54とを有している。
2つのタグウィンチ51は、旋回体3上の前側にジブ41の長手方向を中心として、ジブ41の両側にそれぞれ設けられている。
タグウィンチ51は、これに巻回されたタグワイヤ52を巻上又は巻下可能に構成されている。また、タグワイヤ52の途中は、タグシーブ53により回転支持されている。
取付具54は、タグワイヤ52の先端部(タグシーブ53を介してタグウィンチ51と反対側)に設けられており、例えば、ブレードBに設けられた係止構造(図示せず。)に取り付け(係止)可能である。
【0019】
クレーン1は、さらに、保持部31及び支持軸71を備える。
(保持部31)
保持部31は、旋回体3の各タグウィンチ51の近傍に設けられている。この保持部31は、ブレードBに取り付けられていない状態の取付具54を保持するように構成されている。
保持部31は、例えば、後述するブレードBの取付具54に対する係止構造(取付構造)と同様の構造とすることができる。かかる保持部31を設けることにより、ブレードBに取り付けられていない状態の取付具54が空中で不用意に動き回ることを防止することができるので、安全性が高い。
【0020】
(支持軸71)
支持軸71(支持部7)の形状は、特に限定しないが、好ましくは軸状(円柱状)をなし、その端部のそれぞれにタグシーブ53を支持している。
この支持軸71は、ジブ41の長手方向に沿って、ジブ41に対する固定位置を変更可能に構成されている。かかる構成により、クレーン1の高さとブレード接合部BC(図3参照)の高さとが近接するように、支持軸71をジブ41に対して固定しておけば、ブレードBのブレード接合部BCへの接合作業をより円滑かつ安全に行うことができる。
【0021】
1.2 工事を管理するコンピュータ9
続いて、コンピュータ9について説明する。
図4は、コンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0022】
本実施形態では、図1図3に示すように、メインクレーン4及びタグ機構5を作動させる際に、コンピュータ9が使用されている。
コンピュータ9は、例えば、旋回体3に搭載され、工事の進捗や工程を管理するように構成されている。コンピュータ9は、例えば、専用の制御装置であり、図4に示すように、通信部91と、記憶部92と、制御部93とを有し、これらの構成要素が通信バス90を介して電気的に接続されている。各構成要素についてさらに説明する。
【0023】
通信部91は、コンピュータ9から種々の電気信号を外部の構成要素に送信可能に構成されている。また、通信部91は、外部の構成要素からコンピュータ9への種々の電気信号を受信可能に構成されている。さらに好ましくは、通信部91がネットワーク通信機能を有し、これによりインターネット等のネットワークを介して、外部機器との間で種々の情報を通信可能に実施してもよい。例えば、通信部91は、クレーン1の一部に設けられたセンサ(図示せず。)から、現在の高度に関するデータを取得するとよい。
【0024】
記憶部92は、上述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、制御部93によって実行されるクレーン1に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。記憶部92は、制御部93によって実行されるクレーン1に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。特に好ましくは、クレーン1を用いて行う工事計画に関する情報が記憶されている。
【0025】
制御部93は、例えば不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部93は、記憶部92に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、クレーン1に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶部92に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例である制御部93によって具体的に実現される。なお、制御部93は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部93を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。
【0026】
本実施形態では、制御部93は、予め記憶部92に記憶された専用プログラムに基づいて、工事の進捗を管理している。また、制御部93は、通信部91が取得した現在の高度に関する情報と、記憶部92に記憶された工事計画に関する情報とに基づいて、ブレードBの高さを見積もることができる。
【0027】
2.クレーン1を用いた工事方法
次に、上述のクレーン1を用いた工事方法について説明する。
ここで、タグ機構5の操作は、図5に示す操作装置(タグラインリモコン)8を用いて行われる。図5は、図1に示すクレーンが備えるタグ機構の操作装置の平面図である。
操作装置8には、タグ機構5の左右のタグウィンチ51の電源をオン及びオフする「ON」ボタン801及び「OFF」ボタン802が設けられている。
【0028】
また、操作装置8には、左側のタグウィンチ51の動作(トルクの付与)を開始する「左ON」ボタン803と、右側のタグウィンチ51の動作(トルクの付与)を開始する「右ON」ボタン804とが設けられている。
また、操作装置8には、ブレードBの水平方向を微調整するために、左側のタグウィンチ51の巻上及び巻下動作を行う「左上」ボタン805及び「左下」ボタン806と、右側のタグウィンチ51の巻上及び巻下動作を行う「右上」ボタン807及び「右下」ボタン808とが設けられている。
【0029】
さらに、操作装置8には、風の影響を受けてブレードBに回転が生じた際に姿勢を回復するために、左側のタグウィンチ51のトルクを大きくする操作を行う「左姿勢回復」ボタン809と、右側のタグウィンチ51のトルクを大きくする操作を行う「右姿勢回復」ボタン810とが設けられている。
また、操作装置8には、ブレードBとブレード接合部BCとを接合する際に、ブレードBの姿勢変化(変位)を防止するために、左側のタグウィンチ51の作動を規制する「左B」ボタン811及び右側のタグウィンチ51の作動を規制する「右B」ボタン812が設けられている。
【0030】
まず、図1に示すように、建設すべき風車(風力発電設備)に近接して、クレーン1を組み立てる。
そして、支持軸71の鉛直方向の位置が、ブレード接合部BCの鉛直方向の位置と略一致するように、支持軸71をジブ41に対して位置決めして固定する。
次に、地表付近で、図2に示すように、メインクレーン4のフック45を、ブレードBに取り付けられた吊り具B1に引っ掛ける。この状態で、巻上ウィンチ42を作動させ、巻上ワイヤ43に若干のテンションを付与する。
【0031】
さらに、タグ機構5の左側の取付具54を、ブレードBの係止構造に取り付ける。この状態で、ボタン803を押下して、左側のタグウィンチ51を作動させる(すなわち、左側のタグワイヤ52を介したブレードBに対する張力の付与を開始する)。
同様に、タグ機構5の右側の取付具54を、ブレードBの係止構造に取り付ける。この状態で、ボタン804を押下して、右側のタグウィンチ51を作動させる(すなわち、右側のタグワイヤ52を介したブレードBに対する張力の付与を開始する)。
【0032】
次に、巻上ウィンチ42のトルクを増大させて、巻上ワイヤ43を巻上ウィンチ42に巻き取ることにより、メインクレーン4によるブレードBの巻上操作を開始する。
メインクレーン4によりブレードBを巻き上げている間、タグウィンチ51の作動を継続している。
このとき、各タグウィンチ51のトルクは、巻上ウィンチ42のトルクより小さく設定されている。このため、各タグウィンチ51によるタグワイヤ52の巻き取りが優先して、ブレードBが吊り上げられることを防止することができる。また、ブレードBが3点で吊り下げられる。かかる構成により、ブレードBを鉛直方向に沿って真直ぐに吊り上げ易い。
【0033】
また、タグウィンチ51の巻上速度は、巻上ウィンチ42の巻上速度より速く設定されている。具体的には、タグウィンチ51の巻上速度は、ブレードB(長尺部材)の重量が明確な場合は、巻上ウィンチ42での吊上可能な最高速度より、速ければよい。軽負荷時の巻上ウィンチ42の最高速度が非常に速いクレーン1の場合は、不経済な構造となるためである。このような構成により、ブレードBの巻上作業が進行しても、タグワイヤ52のタグウィンチ51による巻き取りが遅延して、弛むことを防止することができる。
さらに、ブレードBの巻上作業が進行すると、ブレードBは、図3に示すような鉛直上方の位置にまで吊り上げられる。
かかる構成によれば、ブレードBの巻上作業の進行時には、タグ機構5により張力が付与されているため、外力(風力)によるブレードBの回転を防止又は抑制しつつ、ブレードBの巻上操作(工事)を進行することができる。このため、従来、作業を中止せざるを得ない天候であっても、作業を継続することができる。
【0034】
その後、ボタン805~808を押下して、ブレードBとブレード接合部BCとを位置合わせする。
このとき、風の影響を受けてブレードBにフック45を中心とした反時計周りの回転(図中、矢印X)が生じる際には、ボタン809を押圧することにより、左側のタグウィンチ51のトルクを大きくして、ブレードBの姿勢を回復する。
一方、風の影響を受けてブレードBにフック45を中心とした時計周りの回転(図中、矢印Y)が生じる際には、ボタン810を押圧することにより、右側のタグウィンチ51のトルクを大きくして、ブレードBの姿勢を回復する。
【0035】
このように、一対のタグウィンチ51の作動を個別に制御可能とすることにより、ブレードBとブレード接合部BCとを位置合わせを、より容易かつ正確に行うことができる。
ブレードBとブレード接合部BCとの位置合わせが完了すると、ボタン811、812を押下することにより、左側及び右側のタグウィンチ51の作動を規制する。これにより、ブレードBとブレード接合部BCとの位置合わせ状態を維持することができる。
次に、ブレードBとブレード接合部BCとを、例えば、ボルト等で接合(固定)する。
最後に、ブレードBから、フック45、吊り具B1及び取付具54を取り外す。
【0036】
<第2実施形態>
次に、本発明のクレーンの第2実施形態について説明する。ただし、第1実施形態と同様の事項については、その説明を省略し、相違点を中心に説明する。
図6は、本発明のクレーンの第2実施形態を示す模式図である。
第2実施形態のクレーン1では、タグ機構及び支持部の構成が異なること、及び支持部を移動する移動機構を備えること以外は、上記第1実施形態のクレーン1と同様である。
【0037】
図6に示すように、タグ機構5は、さらにシーブ55とシーブ56とを有している。そして、各シーブ56に取付具54が固定されている。
また、支持部7は、一対の支持管72a、72bで構成されている。各支持管72a、72bの下端部には、タグシーブ53が回転可能に支持され、タグシーブ53より上方にはシーブ55が回転可能に支持されている。
【0038】
移動機構6は、ジブ41に固定された枠体81を有している。そして、枠体61の長手方向に沿ったガイド61a、61bがそれぞれ支持管72a、72bに挿通されている。
また、移動機構6は、支持管72a、72bをガイド61a、61bに沿って移動させる駆動部(図示せず。)を有している。すなわち、移動機構6は、支持管72a、72bをジブ41の長手方向に沿って移動(スライド)可能に構成されている。
【0039】
タグワイヤ52は、タグシーブ53、シーブ56及びシーブ55の順に巻装され、その先端部が枠体61の上端部に固定されている。したがって、取付具54は、タグワイヤ52のタグシーブ53を介してタグウィンチ51と反対側に設けられている。
かかる第2実施形態のクレーン1においても、第1実施形態のクレーン1と同様の作用・効果が得られる。
【0040】
特に、第2実施形態では、移動機構6が支持部7(支持管72a、72b)をジブ41の長手方向に沿って移動可能に構成されている。
このため、ボタン805~808を押下して、ブレードBとブレード接合部BCとを位置合わせする際に、大きくブレードBを移動(変位)させる必要が生じた場合、移動機構6により支持部7の移動操作を行えば、ブレードBとブレード接合部BCとを位置合わせを、より迅速かつ正確に行うことができる。
【0041】
以上のようなクレーン1によれば、高額なウィンチを用いることなく、風の影響を受け易い長尺部材を簡便かつ安定的に搬送することができる。
なお、搬送する長尺部材は、風車のブレードに限定されず、ブレードの形状も平板状に限定されない。長尺部材は、風の影響を受け易い部材であり、例えば、鉄塔の構成部材等が挙げられる。
また、クレーンは、固定式クレーンに限らず、移動式クレーンであってもよい。
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0042】
(1)長尺部材を搬送するのに使用可能なクレーンであって、旋回体と、メインクレーンと、タグ機構とを備え、前記メインクレーンは、ジブと、巻上ウィンチとを有し、前記タグ機構は、前記旋回体上に前記ジブの長手方向を中心として、前記ジブの両側にそれぞれ設けられたタグウィンチと、前記タグウィンチに巻回されたタグワイヤと、前記タグワイヤを回転支持するタグシーブと、前記タグワイヤの前記タグシーブを介して前記タグウィンチと反対側に設けられ、前記長尺部材に取り付け可能な取付具とを有する、もの。
【0043】
(2)上記(1)に記載のクレーンにおいて、さらに、支持部を備え、前記支持部は、前記タグシーブを支持し、前記ジブの長手方向に沿って、前記ジブに対する固定位置を変更可能に構成される、もの。
【0044】
(3)上記(1)又は(2)に記載のクレーンにおいて、さらに、移動機構を備え、前記移動機構は、前記支持部を前記ジブの長手方向に沿って移動可能に構成される、もの。
【0045】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1項に記載のクレーンにおいて、前記タグウィンチのトルクは、前記巻上ウィンチのトルクより小さい、もの。
【0046】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1項に記載のクレーンにおいて、前記タグウィンチの巻上速度は、前記巻上ウィンチの巻上速度より速い、もの。
【0047】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1項に記載のクレーンにおいて、前記メインクレーンにより前記長尺部材を巻き上げている間、前記タグウィンチの作動を継続する、もの。
【0048】
(7)上記(1)~(6)のいずれか1項に記載のクレーンにおいて、前記一対のタグウィンチの作動は、個別に制御可能である、もの。
【0049】
(8)上記(1)~(7)のいずれか1項に記載のクレーンにおいて、前記旋回体は、さらに保持部を有し、前記保持部は、前記長尺部材に取り付けられていない状態の前記取付具を保持する、もの。
【0050】
(9)クレーンを用いて長尺部材の搬送を行う工事方法であって、前記クレーンは、メインクレーンと、タグ機構とを備え、外力による前記長尺部材の回転を、前記タグ機構により防止又は抑制しつつ、前記長尺部材の巻上操作を、前記メインクレーンにより行って工事を進行する、方法。
もちろん、この限りではない。
【0051】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
1 :クレーン
3 :旋回体
4 :メインクレーン
41 :ジブ
42 :巻上ウィンチ
5 :タグ機構
51 :タグウィンチ
52 :タグワイヤ
53 :タグシーブ
54 :取付具
B :ブレード
図1
図2
図3
図4
図5
図6