(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083296
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】断熱ブロック用のアンカー装置
(51)【国際特許分類】
F17C 3/04 20060101AFI20240613BHJP
B65D 90/02 20190101ALI20240613BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20240613BHJP
B63B 25/08 20060101ALI20240613BHJP
B63B 27/24 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
F17C3/04 A
B65D90/02 B
B63B25/16 F
B63B25/16 103
B63B25/08 B
B63B27/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023207384
(22)【出願日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】2213099
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル アリー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ローレン
【テーマコード(参考)】
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E170AA08
3E170AA09
3E170AB29
3E172AA03
3E172AA05
3E172AB04
3E172BA06
3E172BB02
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD02
3E172DA23
3E172EB03
3E172EB10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】密閉断熱タンクの製造中に行われるその場の取付け工程の削減及び容易化を図れるアンカー装置を提供する。
【解決手段】アンカー装置(20)は、下部プレートと、上部プレートと、接続部材と、スペーサ部材と、を備えた挟持アセンブリと、下部プレートの開口にし、下部プレートの開口を通って挟持アセンブリから突出するアンカーロッドであって、下端部と上端部とを有すると共に下部プレートと上部プレートとの間に配されているアンカーロッドと、下部プレートと上部プレートとの間に配されたアンカーロッドの上端部にされたナットと、を備えており、上端部は第1の刻印部を有する上端を有し、第1の刻印部は、アンカーロッドを回動させる第1の駆動具の係合ゾーンとして供され、上部プレートは第1の刻印部に対向して配されて第1の駆動具の通路を形成する第1の開口部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持壁(2)に接触して断熱ブロック(7)を保持するアンカー装置(20,120)であって、
下部プレート(31,131)と、当該下部プレート(31,131)に対して平行な上部プレート(32,132)と、前記下部プレート(31,131)を上部プレート(32,132)に接続する接続部材(34,134)と、前記上部プレート(32,132)と前記下部プレート(31,131)との間に配置されたスペーサ部材(33,133)と、を備えた挟持アセンブリ(30)と、
前記下部プレート(31,131)の貫通口(41,141)にし、前記下部プレート(31,131)の前記貫通口(41,141)を通って前記挟持アセンブリ(30)から突出するアンカーロッド(22,122)であって、前記支持壁(2)に固定される雄ネジ部付きの下端部(61)と、前記下端部(61)とはの雄ネジ部付きの上端部と、有するアンカーロッド(22,122)と、ただし、前記上端部は下部プレート(31,131)と前記上部プレート(32,132)との間に配されており、
前記アンカーロッド(22,122)の前記上端部にされ、前記下部プレート(31,131)と前記上部プレート(32,132)との間に配されたナット(42,142)であって、前記アンカーロッド(22,122)を前記下部プレート(31,131)の上表面にさせて、前記下部プレート(31,131)に復元力を前記下端部(61)の方向に加えることができるようにするナット(42,142)と、
を備えており、
前記上部プレート(32,132)は第1の貫通開口部(47,147)を有する、アンカー装置(20,120)において、
前記上端部は第1の刻印部(60)を有する上端(44)を有し、
前記第1の刻印部(60)は、前記アンカーロッド(22,122)の前記下端部(61)を前記支持壁(2)にするために前記挟持アセンブリ(30)に対して前記アンカーロッド(22,122)を相対回動させる第1の駆動具の係合ゾーンとして供されるものであり、
前記第1の貫通開口部(47,147)は、前記第1の駆動具の通路を形成するように前記第1の刻印部(60)にして配されている
ことを特徴とするアンカー装置(20,120)。
【請求項2】
前記ナット(42,142)は、前記アンカーロッド(22,122)の前記上端(44)の上方に配されたナット頭部を有し、
前記ナット頭部は、前記上部プレート(32,132)と前記アンカーロッド(22,122)の前記上端(44)との間に配された貫通路(64)を有し、
前記貫通路(64)は、前記第1の駆動具を通して前記第1の刻印部(60)に到達可能とするために前記第1の貫通開口部(47,147)及び前記第1の刻印部(60)と整列し、
前記ナット頭部は第2の刻印部(62)を有し、
前記第2の刻印部(62)は、前記アンカーロッド(22,122)に対してナット(42,142)を相対回動させる第2の駆動具の係合ゾーンとして供されるものであり、
前記第1の貫通開口部(47,147)は、前記第2の駆動具の通路を形成するように前記第2の刻印部(62)にして配されている、
請求項1記載のアンカー装置。
【請求項3】
前記第2の刻印部(62)は前記ナット頭部の前記貫通路(64)の周壁によって形成されている、
請求項2記載のアンカー装置。
【請求項4】
前記ナット(42,142)と前記上部プレート(32,132)との間に、当該ナット(42,142)に固定されて当該ナット(42,142)の回転を防止する回転防止プレート(63)が配置されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のアンカー装置。
【請求項5】
前記アンカーロッド(22,122)を取り囲む1つのバネ部材(43,143)が、前記ナット(42,142)と前記下部プレート(31,131)との間に配置されており、
前記1つのバネ部材(43,143)は、にはベルビルワッシャのスタックを有する、
請求項1から4までのいずれか1項記載のアンカー装置。
【請求項6】
前記スペーサ部材(33,133)は、前記下部プレート(31,131)と前記上部プレート(32,132)との間の間隔を画定する当接部を有し、前記下部プレート(131)及び前記上部プレート(132)は、前記当接部のそれぞれの面に当接する、
請求項1から5までのいずれか1項記載のアンカー装置。
【請求項7】
前記スペーサ部材(133)は当接部を有し、
前記当接部は、当該当接部との前記下部プレート(131)及び前記上部プレート(132)の当接位置における前記下部プレート(131)と前記上部プレート(132)との間の最小間隔を画定し、
前記当接部は剛性部を有し、
前記スペーサ部材(133)は、前記下部プレート(131)と前記上部プレート(132)とを離間位置に維持する傾向のある弾性圧縮可能部材(166)をさらに備えており、
前記接続部材(134)は、前記離間位置における前記下部プレート(131)と前記上部プレート(132)との間の最大間隔を画定し、
前記最大間隔は前記最小間隔より大きく、
前記弾性圧縮可能部材(166)は、前記上部プレート(132)を前記下部プレート(131)に向けて移動させる傾向のある力に応答して、前記当接部との前記下部プレート(131)及び前記上部プレート(132)の前記当接位置に到達するようにに圧縮するように構成されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載のアンカー装置。
【請求項8】
前記支持壁(2)に固定されるブッシュ(23)と、前記ブッシュ(23)内で回転しないように前記ブッシュ(23)に収容されたナット(18)と、を備えており、
前記アンカーロッド(22,122)の前記下端部(61)は前記ナット(18)にしている、
請求項1から7までのいずれか1項記載のアンカー装置。
【請求項9】
を貯蔵するための密閉断熱タンクであって、
支持壁(2)と、当該支持壁に固定されたアンカー装置と、前記アンカー装置を用いて前記支持壁(2)に固定されたタンク壁(1)と、を備えており、
前記タンク壁(1)は厚さ方向において前記密閉断熱タンクのからに向かって順に、断熱バリア(3)と、前記断熱バリア(3)に接触して設置された密閉メンブレン(4)と、を備えており、
前記断熱バリア(3)は、前記支持壁(2)に互いに隣接して配置された平行六面体状のの断熱ブロック(7)を有し、
1つの前記断熱ブロック(7)は、前記密閉メンブレン(4)の支持面を形成するカバープレート(15)を備えており、
1つの前記アンカー装置(20,120)は請求項1から8までのいずれか1項記載のアンカー装置であり、
前記アンカーロッド(22,122)の前記下端部(61)は、の前記断熱ブロック(7)間において前記支持壁(2)に固定されており、
前記アンカー装置(20,120)の前記下部プレート(31,131)は前記の断熱ブロック(7)と協働して、前記支持壁(2)の方向に前記の断熱ブロック(7)を挟持する
ことを特徴とする密閉断熱タンク。
【請求項10】
断熱ブロック(7)が、カバープレート(15)に対して平行であると共に当該カバープレート(15)から離隔している底部プレート(14)と、前記カバープレート(15)と前記底部プレート(14)との間に配されたポリマー発泡体ブロック(16)であって繊維により強化されたポリマー発泡体ブロック(16)と、を備えており、
前記アンカー装置(20,120)の前記下部プレート(131)は、前記ポリマー発泡体ブロック(16)にいかなる挟持力も加えることなく前記底部プレート(14)と直接的又は間接的に協働する、
請求項9記載の密閉断熱タンク。
【請求項11】
請求項1から7までのいずれか1項記載のアンカー装置を取り付けるための取付方法であって、
前記支持壁(2)において隣り合う平行六面体状のの断熱ブロック(7)間において前記支持壁(2)に固定されたブッシュ(23)であって、当該ブッシュ(23)内で回転しないようにナット(18)を収容したブッシュ(23)と整列するように、請求項1から7までのいずれか1項記載のアンカー装置(20,120)を配置するステップと、
前記第1の固定具を前記上部プレート(32,132)の前記第1の開口部(47)に通した状態で前記アンカーロッド(22,122)の前記上端(44)の前記第1の刻印部(60)に前記第1の固定具を入れて、前記アンカーロッド(22,122)の前記下端部(61)を前記ナット(18)にするステップと、
前記第2の固定具を前記上部プレート(32,132)の前記第1の開口部(47)に通した状態で前記ナット(42)の前記第2の刻印部(62)に前記第2の固定具を入れて、前記アンカーロッド(22,122)の前記下端(61)の方向に前記ナット(42)をすることにより、前記1つの断熱ブロック(7)に前記下部プレート(31,131)を係合させるステップと、
を有することを特徴とする取付方法。
【請求項12】
前記上部プレート(32,132)に通された前記第1の開口部(47)にスタッドをすることにより前記アンカー装置(20,120)に一次連結具を取り付けることをさらに含む、
請求項11記載の取付方法。
【請求項13】
低温液体製品を輸送するための船舶(70)であって、
二重船殻(72)と、当該二重船殻に配置された請求項9又は10に記載の密閉断熱タンク(71)と、を備えていることを特徴とする船舶(70)。
【請求項14】
を移送するためのシステムであって、
請求項13記載の船舶(70)と、
前記船舶の前記密閉断熱タンク(71)を浮体式又は陸上貯蔵設備(77)に接続するように配置された断熱パイプ(73,79,76,81)と、
前記断熱パイプを介して前記浮体式若しくは陸上貯蔵設備から前記船舶の前記密閉断熱タンクへ又は前記密閉断熱タンクから前記浮体式若しくは陸上貯蔵設備へを駆動するためのポンプと、
を備えていることを特徴とするシステム。
【請求項15】
船舶(70)の積込み又は揚げ荷を行う方法であって、
断熱パイプ(73,79,76,81)を介して浮体式若しくは陸上貯蔵設備(77)から請求項13記載の船舶(70)の前記密閉断熱タンク(71)へ又は前記密閉断熱タンク(71)から浮体式若しくは陸上貯蔵設備(77)へを送る
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉断熱メンブレンタンクの分野に関するものである。本発明は特に、液化ガスを低温で貯蔵及び/又は輸送するための密閉断熱タンク、例えば液化天然ガス(LNG)を大気圧で約-163℃で輸送するためのタンク等の分野に関し、特にこの種のタンクで使用可能な機械的なアンカー装置に関するものである。かかるタンクは陸上又は浮体構造物に設置することができる。
【背景技術】
【0002】
例えば国際公開第2014096600号及び同第2019110894号から、支持構造に配置される液化天然ガス貯蔵用の密閉断熱タンクであって、当該密閉断熱タンクの壁は多層構造を有し、すなわち、当該タンクの外部から内部に向かって順に、支持構造に固定された二次断熱バリアと、二次断熱バリアに支持された二次密閉メンブレンと、二次密閉メンブレンに支持された一次断熱バリアと、一次断熱バリアに支持されてタンクに貯蔵されている液化天然ガスに接触する一次密閉メンブレンと、を備えた密閉断熱タンクが公知となっている。
【0003】
一次及び二次の各断熱バリアは、モジュール式の一次及び二次の断熱ブロックの組立体を備えており、各断熱ブロックの全体形状は平行六面体状であり、これらの断熱ブロックは隣り合って配置されて各密閉メンブレンの支持面を形成する。断熱ブロックは、支持構造に固定されると共に一次及び二次断熱ブロックのコーナ部に配置されたアンカー装置によって、当該支持構造に固定される。このようにして、各アンカー装置は4つの隣り合う二次断熱ブロックのコーナ部と、4つの隣り合う一次断熱ブロックのコーナ部と協働して、これらの断熱ブロックを支持構造に接触させて保持する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一部の側面は、上記のタンクの支持壁に接触して断熱ブロックを保持するアンカー装置の取付けは、かかるタンクの製造中にその場で(in situ)行われる取付け工程が数多く含まれるとの認識を背景としている。
【0005】
本発明の基本的思想の1つは、密閉断熱タンクの製造中に行われるその場の取付け工程の削減及び容易化を図れるアンカー装置を提供することである。
【0006】
本発明は一実施形態では、支持壁に接触して断熱ブロックを保持するアンカー装置を提供するものであり、当該アンカー装置は、下部プレートと、当該下部プレートに対して平行な上部プレートと、前記下部プレートを上部プレートに接続する接続部材と、前記上部プレートと前記下部プレートとの間に配置されたスペーサ部材と、を備えた挟持アセンブリと、前記下部プレートの貫通口に係合し、前記下部プレートの前記貫通口を通って前記挟持アセンブリから突出するアンカーロッドであって、前記支持壁に固定される雄ネジ部付きの下端部と、前記下端部とは反対側の雄ネジ部付きの上端部と、有するアンカーロッドと、を備えており、前記上端部は下部プレートと前記上部プレートとの間に配されており、前記アンカー装置はさらに、前記アンカーロッドの前記上端部に螺合され、前記下部プレートと前記上部プレートとの間に配されたナットであって、前記アンカーロッドを前記下部プレートの上表面に係合させて、前記下部プレートに復元力を前記下端部の方向に加えることができるようにするナットを備えており、前記上端部は第1の刻印部を有する上端を有し、前記第1の刻印部は、前記アンカーロッドの前記下端部を前記支持壁に螺合するために前記挟持アセンブリに対して前記アンカーロッドを相対回動させる第1の駆動具の係合ゾーンとして供されるものであり、前記上部プレートは第1の貫通開口部を有し、前記第1の貫通開口部は、前記第1の駆動具の通路を形成するように前記第1の刻印部に対向して配されている。
【0007】
上記構成により、密閉断熱タンクの製造中に上記のようなアンカー装置を迅速かつ容易に取り付けることができる。実際、駆動具を上部プレートの開口部に直接通すことにより、間接的にアンカーロッドを螺合することができる。さらに、上記のようなアンカー装置の組立てを行うためには、基本的にその事前製造をタンクの外で行わなければならないことがあるが、本発明の実施はこれとは異なり、アンカー装置の全ての要素をタンクの内部で組み立てる。
【0008】
上記のアンカー装置の実施形態は、以下の構成のうちいずれか1つ又は複数を具備することができる:
【0009】
一実施形態では、前記ナットは、前記アンカーロッドの前記上端の上方に配されたナット頭部を有し、前記ナット頭部は、前記上部プレートと前記アンカーロッドの前記上端との間に配された貫通路を有し、前記貫通路は、前記第1の駆動具を通して前記第1の刻印部に到達可能とするために前記第1の貫通開口部及び前記第1の刻印部と整列し、前記ナット頭部は第2の刻印部を有し、前記第2の刻印部は、前記アンカーロッドに対してナットを相対回動させる第2の駆動具の係合ゾーンとして供されるものであり、前記第1の貫通開口部は、前記第2の駆動具の通路を形成するように前記第2の刻印部に対向して配されている。
【0010】
かかる構成により、1つ又は複数の適した駆動具を入れることにより、上部プレートの開口部にアンカーロッドを通して螺合し、当該開口部を介してナットに直接螺合することができる。
【0011】
一実施形態では第1の刻印部及び/又は第2の刻印部の形状は、フラット、スプリット、十字形、ポジドライブ、星形、中空六角形、中空、正方形、凹状(internal)、凸状(external)及び凹状シックスローブから選択されたものである。ISO10664に準拠したシックスローブ凹形を用いるのが好適である。
【0012】
刻印部形状は適用先の要求に応じて、締付けの効果、工具の強度、チップの摩耗、締付けトルクの適正な伝達に依存して選択することができる。
【0013】
一実施形態では、前記第2の刻印部は前記ナット頭部の前記通路の周壁によって形成されている。
【0014】
一実施形態では、第1の工具及び/又は第2の工具はスクリュードライバ及び雄型若しくは雌型スパナから選択されたものである。
【0015】
一実施形態では、前記第1の貫通開口部は10mm超、好適には15mm超の径を有し、この径は例えば15~20mmである。
【0016】
一実施形態ではアンカー装置は、前記ナットと前記上部プレートとの間に、当該ナットに固定されて当該ナットの回転を防止する回転防止プレートが配置されている。
【0017】
一実施形態では、前記上部プレートは前記ナットの回転を防止するように前記ナットに固定されている。
【0018】
一実施形態では、前記回転防止プレートの全体形状は矩形である。
【0019】
一実施形態では、前記回転防止プレートは金属製である。
【0020】
一実施形態では前記回転防止プレートは、時計回り又は反時計回りに回転しようとしたときに変位部材に当接することによって移動不能となるように当該変位部材付近に配置されている。
【0021】
一実施形態では前記アンカー装置は、前記アンカーロッドを取り囲む少なくとも1つのバネ部材が、前記ナットと前記下部プレートとの間に配置されており、前記少なくとも1つのバネ部材は、好適にはベルビルワッシャのスタックを有する。
【0022】
一実施形態では前記ベルビルワッシャのスタックを構成する各ベルビルワッシャの寸法は等しいか又は異なる。
【0023】
一実施形態では前記ベルビルワッシャのスタックは少なくとも1つの第1のベルビルワッシャと1つの第2のベルビルワッシャと含み、前記第1のベルビルワッシャの寸法は前記第2のベルビルワッシャの寸法より小さい。
【0024】
一実施形態では、前記ベルビルワッシャのスタックは第1のベルビルワッシャと、当該第1のベルビルワッシャを反転させた第2のベルビルワッシャと、を含む。
【0025】
一実施形態では、前記ベルビルワッシャのスタックのベルビルワッシャ数は2~7である。
【0026】
一実施形態では前記スペーサ部材は、前記下部プレートと前記上部プレートとの間の間隔を画定する当接部を有し、前記下部プレート及び前記上部プレートは、前記当接部のそれぞれ反対側の面に当接する。
【0027】
一実施形態では前記スペーサ部材は当接部を有し、前記当接部は、当該当接部との前記下部プレート及び前記上部プレートの当接位置における前記下部プレートと前記上部プレートとの間の最小間隔を画定し、前記当接部は剛性部を有し、前記スペーサ部材は、前記下部プレートと前記上部プレートとを離間位置に維持する傾向のある弾性圧縮可能部材をさらに備えており、前記接続部材は、前記離間位置における前記下部プレートと前記上部プレートとの間の最大間隔を画定し、前記最大間隔は前記最小間隔より大きく、前記弾性圧縮可能部材は、前記上部プレートを前記下部プレートに向けて移動させる傾向のある力に応答して、前記当接部との前記下部プレート及び前記上部プレートの前記当接位置に到達するように軸方向に圧縮するように構成されている。
【0028】
一実施形態では前記当接部は、互いに離隔した第1の剛性部と第2の剛性部とを有し、前記アンカーロッドの前記上端部及び前記ナットは前記第1の剛性部と前記第2の剛性部との間に配置されている。
【0029】
一実施形態では、前記第1の剛性部及び前記第2の剛性部の全体形状は矩形の平行六面体状である。
【0030】
一実施形態では、前記第1の剛性部と前記第2の剛性部とは等しい寸法を有する。
【0031】
一実施形態では、前記当接部は当該当接部を貫通する2つの孔を有し、前記孔には、前記下部プレート及び上部プレートを前記当接部の2つの相反対側の面にそれぞれ接続する2つの固定ネジが係合しており、各固定ネジのネジ頭部は、前記上部プレートを貫通する第2の開口部及び第3の開口部にそれぞれ収容されて保持され、各固定ネジのネジ端部は前記下部プレートの第1の雌ネジ孔及び第2の雌ネジ孔にそれぞれ収容されている。
【0032】
一実施形態では前記アンカー装置は、前記支持壁に固定されるブッシュと、前記ブッシュ内で回転しないように前記ブッシュに収容されたナットと、を備えており、前記アンカーロッドの前記下端部は前記ナットに螺合している。
【0033】
一実施形態では、本発明は流体を貯蔵するための密閉断熱タンクも提供するものであり、前記密閉断熱タンクは、支持壁と、当該支持壁に固定されたアンカー装置と、前記アンカー装置を用いて前記支持壁に固定されたタンク壁と、を備えており、前記タンク壁は厚さ方向において前記タンクの外部から内部に向かって順に、断熱バリアと、前記断熱バリアに接触して設置された密閉メンブレンと、を備えており、前記断熱バリアは、前記支持壁に互いに隣接して配置された平行六面体状の複数の断熱ブロックを有し、1つの前記断熱ブロックは、前記密閉メンブレンの支持面を形成するカバープレートを備えており、少なくとも1つの前記アンカー装置は上記のアンカー装置であり、前記アンカーロッドの前記下端部は、複数の前記断熱ブロック間において前記支持壁に固定されており、前記アンカー装置の前記下部プレートは前記複数の断熱ブロックと協働して、前記支持壁の方向に前記複数の断熱ブロックを挟持する。
【0034】
上記の密閉断熱タンクの実施形態は、以下の構成のうちいずれか1つ又は複数を具備することができる。
【0035】
断熱ブロックを作製できる態様は種々存在する。前記タンクの一実施形態では、断熱ブロックが、カバープレートに対して平行であると共に当該カバープレートから離隔している底部プレートと、前記カバープレートと前記底部プレートとの間に配されたポリマー発泡体ブロックであって繊維により強化されたポリマー発泡体ブロックと、を備えており、前記アンカー装置の前記下部プレートは、前記ポリマー発泡体ブロックにいかなる挟持力も加えることなく前記底部プレートと直接的又は間接的に協働する。
【0036】
一実施形態では、前記タンクはさらに、前記密閉メンブレンに対して設置された一次断熱バリアと、前記一次断熱バリアに接触して設置されて前記流体と接触する一次密閉メンブレンと、を備えている。
【0037】
一実施形態では、前記流体は液化天然ガス、液化石油ガス、液化エチレン又は液化水素等の液化ガスである。
【0038】
上述のタンクは、例えばLNG貯蔵用等の陸上貯蔵設備、海底に設置される貯蔵設備の一部とすることができ、又は、沿岸若しくは深海浮体構造物、特にメタン運搬船、浮体式貯蔵再ガス化設備(FSRU)、浮体式生産貯蔵積出(FPSO)施設等に設置することができる。
【0039】
一実施形態では、流体を輸送するための船舶は二重船殻と、前記二重船殻内に配置された上記の密閉断熱タンクと、を備えている。一実施形態では前記二重船殻は、前記密閉断熱タンクの支持壁となる内部船殻を含む。
【0040】
一実施形態では本発明は、流体を移送するためのシステムも提供するものであり、当該システムは上記の船舶と、前記船舶の前記密閉断熱タンクを浮体式又は陸上貯蔵設備に接続するように構成された断熱パイプと、前記断熱パイプを介して前記浮体式若しくは陸上貯蔵設備から前記船舶の前記密閉断熱タンクへ又は前記密閉断熱タンクから前記浮体式若しくは陸上貯蔵設備へ流体を駆動するためのポンプと、を備えている。
【0041】
一実施形態では本発明は、上記の船舶の積込み又は揚げ荷を行う方法も提供するものであり、当該方法は、断熱パイプを介して浮体式若しくは陸上貯蔵設備から上記の船舶の前記密閉断熱タンクへ又は前記密閉断熱タンクから浮体式若しくは陸上貯蔵設備へ流体を送るものである。
【0042】
一実施形態では本発明は、上記のアンカー装置を取り付けるための取付方法も提供するものであり、当該方法は、
-前記支持壁において隣り合う平行六面体状の複数の断熱ブロック間において前記支持壁に固定されたブッシュであって、当該ブッシュ内で回転しないようにナットを収容したブッシュと整列するように、上述のアンカー装置を配置するステップと、
-前記第1の固定具を前記上部プレートの前記第1の開口部に通した状態で前記アンカーロッドの前記上端の前記第1の刻印部に前記第1の固定具を入れて、前記アンカーロッドの前記下端部を前記ナットに螺合するステップと、
-前記第2の固定具を前記上部プレートの前記第1の開口部に通した状態で前記ナットの前記第2の刻印部に前記第2の固定具を入れて、前記アンカーロッドの前記下端の方向に前記ナットを螺合することにより、前記少なくとも1つの断熱ブロックに前記下部プレートを係合させるステップと、
を有する。
【0043】
かかる構成により、密閉断熱タンクの製造中にその場で実施する必要がある工程数を削減することができる。
【0044】
一実施形態では本方法はさらに、
-前記上部プレートに通された前記第1の開口部にスタッドを螺合することにより前記アンカー装置に一次連結具を取り付けること
を含む。
【0045】
一実施形態では本方法は、
-螺合時に前記ナットの回転を防止するために当該ナットの外形に回転防止プレートを溶接すること
を含み、当該溶接は、前記上部プレートに溶接工具を挿通して行われる。
【0046】
一実施形態では、本方法は前記ナットの位置を測定するステップを有し、本方法は、
前記上部プレートにおいて前記ナットを向いて形成された第1の測定開口部に第1の測定器具を挿入し、前記ナットと前記上部プレートとの間の距離d1を測定することと、
前記上部プレートにおいて前記下部プレートを向いて形成された第2の測定開口部に第2の測定器具を挿入し、その後、前記上部プレートと前記下部プレートとの間の距離d2を測定することと、
前記距離d1と前記距離d2とを比較して、前記下部プレートに対する前記ナットの相対位置を求めることと、
を含む。
【0047】
かかる構成によりナットの位置を求めることができ、これによりナットの締付けが所要のパラメータに合致するか否かを判定することができる。
【0048】
添付の図面を参照して、本発明の特定の実施形態についての以下の説明を読めば、本発明をより良好に理解できると共に、本発明の他の目的、詳細、特徴及び利点がより明らかとなる。以下の説明の特定の実施形態はあくまで例示であり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図2】
図1の矢印 II の方向から見たタンク壁の側面断面図であり、アンカー装置の一実施形態を示す。
【
図3】
図2と同様の一実施形態を透明にしたと仮定して示す拡大側面図である。
【
図4】
図2及び
図3に示されている実施形態のアンカーロッドの部分斜視図である。
【
図6】
図2及び
図3に示されている回転防止プレートの斜視図である。
【
図7】
図2及び
図3に示されているアンカー装置の上面図である。
【
図8】回転防止プレートを省略した
図3と同様の図であり、他の一実施形態のアンカー装置を示す。
【
図9】メタンタンカー船タンクの一部を切り取ったものと、当該タンクの積込み/揚げ荷を行うためのターミナルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1に、液化天然ガス(LNG)等の流体の貯蔵用の密閉断熱タンク壁1の多層構造が示されている。タンク壁1は厚さ方向において当該タンクの外部から当該タンクの内部に向かって順に、支持壁2に保持された二次断熱バリア3と、二次断熱バリア3に接触して設置された二次密閉メンブレン4と、二次密閉メンブレン4に接触して設置された一次断熱バリア5と、タンクに入った流体に接触する一次密閉メンブレン6と、を備えている。
【0051】
支持壁2は特に、船舶の船殻又は二重船殻とすることができる。支持壁2は典型的にはタンクの全体形状を画定する複数の壁を備えた支持構造の一部を構成することができ、タンクの全体形状は通常は多面体形である。
【0052】
二次断熱バリア3は複数の二次断熱ブロック7を有し、これらの二次断熱ブロック7は、後で詳細に説明するアンカー装置20によって支持壁2に固定されている。二次断熱ブロック7の全体形状は平行六面体状であり、これらの二次断熱ブロック7は複数の平行な列に配置されている。
【0053】
二次密閉メンブレン4は、隆起縁部を有する金属ストレーキ8の連続した一層を備えている。これら複数の金属ストレーキ8は隆起縁部で、複数の平行な溶接ポートに溶接されており、これらの溶接ポートは、二次断熱ブロック7のカバープレートに形成された溝9に固定されている。金属ストレーキ8は例えば、鉄とニッケルの合金であるインバー(登録商標)製であり、このインバー(登録商標)の膨脹係数は典型的には1.2・10-6~2・10-6K-1である。
【0054】
一次断熱バリア5は複数の一次断熱ブロック11を有し、これらの一次断熱ブロック11の全体形状は平行六面体状であり、一次断熱ブロック11の長さ及び幅の寸法は二次断熱ブロック7の長さ及び幅の寸法に等しい。各一次断熱ブロック11はそれぞれ、タンク壁1の厚さ方向において各二次断熱ブロック7と整列して配置されている。
【0055】
一次密閉メンブレン6を作製できる態様は種々存在する。ここでは、一次密閉メンブレン6は隆起縁部を有する金属ストレーキ8の連続した一層を備えている。二次密閉メンブレン4と同様、金属ストレーキ8の隆起縁部は複数の平行な溶接サポートに溶接されており、これらの溶接サポートは、一次断熱ブロック11のカバープレートに形成された溝に固定されている。
【0056】
図1では、支持壁2の平坦性欠陥を補償するための厚さシム12とマスチックのビード13とを露出するために二次断熱ブロック7が省略されている。
図2に厚さシム12が詳細に示されている。シムの配置は、国際公開第2018069585号に記載されているように行うこともできる。
【0057】
アンカー装置20は好適には、二次断熱ブロック7及び一次断熱ブロック11の4つのコーナ部に配置される。各スタックはそれぞれ二次断熱ブロック7を含み、一次断熱ブロック11は4つのアンカー装置20を用いて支持壁2に固定されている。さらに、各アンカー装置20は4つの隣り合う二次断熱ブロック7のコーナ部と、4つの隣り合う一次断熱ブロック11のコーナ部と協働する。
【0058】
図2を参照すると、一実施形態のアンカー装置20及び二次断熱ブロック7の構造が詳細に示されている。
【0059】
第1及び第2の各二次断熱ブロック7がそれぞれ、断熱ポリマー発泡体層16を底部プレート14とカバープレート15との間に挟んだものを備えている。底部プレート14及びカバープレート15は例えば合板製である。
【0060】
断熱ポリマー発泡体層16は底部プレート14とカバープレート15とに接着されている。断熱ポリマー発泡体は特にポリウレタン系の発泡体とすることができ、かかる発泡体はオプションとして繊維により強化することができる。
【0061】
4つの隣り合う二次断熱ブロック7(
図2の断面図ではこれらの二次断熱ブロック7のうち2つのみが示されている)の4つのコーナ部間にアンカー装置20を配置するため、各二次断熱ブロック7の底部プレート14のコーナ領域に、アンカー装置20を受入する矩形煙突状の空隙を空けるように切欠部が形成されている。
【0062】
二次断熱ブロック7のカバープレート15及び断熱ポリマー発泡体層16は矩形煙突状の開口を有する。
【0063】
コーナ部はアンカー装置20を直接的又は間接的に支持するようになっており、例えば
図2では、二次断熱ブロック7の底部プレート14に支持されているスペーサ部50を介してアンカー装置20がコーナ部に支持されている。
【0064】
不図示の一変形形態では、第1及び第2の断熱ブロックは、カバーパネルに対して平行に当該カバーパネルから離隔した底部パネルを有する箱状であり、底部パネルとカバーパネルとの間に側面パネルが配置されて内部スペースを画定し、この内部スペースには、パーライト、ガラスウール又はロックウール等の断熱性の詰め物が充填される。
【0065】
上記のような断熱箱も、アンカー装置20を受入可能なバッテンの形態のスペーサ部及びコーナ部を備えている。この種の断熱箱は、特に仏国特許出願公開第2973097号明細書に記載されている。
【0066】
次に、一実施形態のアンカー装置20の構造について
図2~7を参照して説明する。
【0067】
アンカー装置20は挟持アセンブリ30とアンカーロッド22とを備えている。
【0068】
アンカーロッド22の下端61はブッシュ23に入れられており、ブッシュ23の底部は、4つの隣り合う二次断熱ブロック7のコーナ領域間の空隙の中央位置において支持壁2に溶接されている。ブッシュ23はアンカーロッド22のボールジョイントとなっている。ブッシュ23はナット18を収容し、アンカーロッド22の下端61が螺入されたブッシュ23によってナット18の回転が防止されている。ナット18は例えば弾性止めナット(elastic stop nut)である。アンカーロッド22はタンク壁1の厚さ方向に延在して、隣り合う二次断熱ブロック7間を通る。
【0069】
挟持アセンブリ30は壁の厚さ方向に順に、下部プレート31と、スペーサ部材33と、上部プレート32と、を備えている。
【0070】
下部プレート31及び上部プレート32の全体形状は矩形の平行六面体状であり、当該プレートの大きい両面は支持壁2に対して平行である。
【0071】
挟持アセンブリ30は例えば矩形であり、同じ寸法を有する。これに代えて、挟持アセンブリ30の外形を別の形状とすることもでき、例えば六角形又は円形とすることができる。
【0072】
下部プレート31はアンカーロッド22によって支持壁2の方向に保持されて、下部プレート31と底部プレート14との間に配されたスペーサ部50に支持され、これにより挟持アセンブリ30から挟持力が支持壁2の方向に伝達する。
【0073】
アンカーロッド22の上端部は下部プレート31の中央孔41に通されて係合している。上端部は、下部プレート31と上部プレート32とスペーサ部材33との間のスペースによって形成された収容部45内に位置する。
【0074】
アンカーロッド22の上端部の高さに形成された雄ネジ部とナット42が協働して下部プレート31を支持壁2の方向に保持する。
【0075】
図中に示されている実施形態では、アンカー装置20は1つ又は複数のベルビルワッシャ型のバネ部材43を備えている。バネ部材43はナット42の上端52と下部プレート31との間でアンカーロッド22に螺合しており、これにより二次断熱ブロック7が支持壁2に弾性係留することを保証することができる。
【0076】
アンカーロッド22の上端部は刻印部60を有する上端44を有し、この刻印部60は、前記アンカーロッド22の前記部分61をナット18に螺入するために前記挟持アセンブリに対して前記アンカーロッド22を相対回動させるスクリュードライバ等の第1の駆動具の係合ゾーンとして供されるものである。
図4に、上述のようなアンカーロッド22の上端部が詳細に示されている。
【0077】
ナット42は、貫通路64が形成されたナット頭部を有し、貫通路64は、第1の駆動具が刻印部60に到達できるように、上部プレート32とアンカーロッド22の上端44との間に刻印部60と整列して配置されている。
【0078】
ナット42の頭部は刻印部62を有し、この刻印部62は、挟持アセンブリ30に対してナット42を相対回動させる第2の駆動具の係合ゾーンとして供されるものである。
【0079】
上部プレートは、第1及び第2の駆動具の通路を提供するため、当該上部プレートの中心に配されてアンカーロッド22の刻印部60とナット42の刻印部62とに対向する貫通開口部47を有する。ナット42は、当該ナット42の上端52の高さに円形突起51を有する。ナット42が外れるのを防止するため、ナットの円形突起51を取り囲む中央の開口部53を有する回転防止プレート63が、当該円形突起51の高さにおいてナット42の上端52に局所的に溶接されている。
【0080】
ナット42は、下部プレートの孔41に係合する下部分を有する。
【0081】
スペーサ部材33はさらに、当該スペーサ部材33をタンク壁の厚さ方向に貫通する2つの孔を有し、これらの孔には、下部プレート31及び上部プレート32をスペーサ部材33の2つの相反対側の面にそれぞれ接続する2つの固定ネジ34が係合している。より具体的には、各固定ネジ34の下端35に雄ネジ部が形成されており、この下端35は下部プレート31の雌ネジ孔38に螺入している。
【0082】
固定ネジ34は反対側の端部に頭部36を有し、この頭部36は上部プレート32の孔46にスライド可能に収容されており、頭部36は例えば円錐又はフラット頭部である。頭部36が孔46の底部と当接する位置位置が
図2及び
図3に示されており、この位置が両プレート32及び31の最大間隔の位置を決定する。この最大間隔の寸法は、下部プレート31と上部プレート32との間の固定ネジ34の使用可能な長さによって決定される。この長さは、製造中に雌ネジ孔38に螺入する長さを調整するために微調整することができる。
【0083】
スペーサ部材は、プレート32及び31に対して平行な下面及び上面を有する当接部を備えている。スペーサブロック33の下面と上面との間の厚さが、下部プレート31と上部プレート32との間の最小間隔を決定する。例えば
図2及び
図3に示されている当接位置で上記の最小間隔となり、この当接位置は、下部プレート31及び上部プレート32がスペーサブロック33の下面及び上面48に当接する位置である。
【0084】
スペーサ部材33は例えば、第2の剛性部から平行に離隔した第1の剛性部を有する。代替的に、スペーサ部材33はブリッジ状の当接部を備え、その一部が回転防止プレート63と上部プレート32との間を通る。この変形形態では上記の一部は、アンカーロッド22の刻印部60及びナット42の刻印部62まで第1及び第2の駆動具を通すことができるように当該一部を貫通する通路65を有する。
【0085】
ナット42の調整、特にナット42の締付けが所要パラメータに合致するか否かを測定するためには、
図7に示されているように、上部プレート32に第1の測定開口部58及び第2の測定開口部59を設けることができる。
【0086】
第1の測定開口部58は貫通開口部47付近に位置し、ナット42に対向して、あるいは回転防止プレート63に対向して開口している。貫通開口部47から第2の測定開口部59までの距離は、貫通開口部47から第1の測定開口部58までの距離より大きく、第2の測定開口部59は下部プレート31に対向して開口している。
【0087】
測定を行うためには、第1の測定開口部58に例えば測定ロッド等の測定器具を挿入してナット42の上端52と上部プレート32との間の距離を求め、その後、当該測定器具又は他の測定器具を第2の測定開口部59に挿入して上部プレート32と下部プレート31との間の距離を求める。これらの測定結果が得られた後、下部プレート31に対するナット42の相対位置を求めることができ、これにより当該ナット42を高信頼性で調整することができる。
【0088】
図8では回転防止プレートを意図的に省略しており、同図では同一又は類似の要素について、同じ符号に100を足したものを符号として使用しており、これらについては再度説明しない。本変形形態では、スペーサ部材133はさらに、下部プレート131及び上部プレート132を離間位置に保持する傾向のある弾性圧縮可能部材166を備えている。弾性圧縮可能部材166は下部プレート131と上部プレート132との間に配置され、スペーサ部材133の孔に入れられて固定ネジ134を取り囲む。弾性圧縮可能部材166は
図8ではコイルスプリングの形態であるのが示されており、これは、上部プレート132を下部プレート131に向けて移動させる傾向のある力に応答して、当接部33との下部プレート131及び上部プレート132の当接位置に弾性圧縮するように構成されている。弾性圧縮可能部材のさらなる詳細については、国際公開第2021239712号を参照されたい。
【0089】
次に、
図2を参照して、上記のアンカー装置20を取り付けるための取付方法を説明する。ここで説明されている方法は例えば、密閉断熱タンクの製造中に技術者によって直接行われる。
【0090】
取付方法は以下のステップを有する:
-上記にて
図2を参照して説明したように、すなわち二次断熱ブロック7の4つのコーナ部間に、アンカー装置20を配置するステップ、
-ブッシュ23にアンカーロッド22を挿入して、当該ブッシュ23に入っているナット18に挿入するステップ、
-
図2中矢印55によって示されているように、第1の駆動具を上部プレート32の貫通開口部47と、アンカープレートの開口部53と、ナット頭部42の貫通路64とに挿通して、アンカーロッド22の刻印部60に到達させるステップ、
-ナット18にアンカーロッド22を螺入して、ブッシュ23によってナット18の回転を防止し、その後、刻印部60から第1の駆動具を外すステップ、
-矢印56で示すように、第2の駆動具を第1の駆動具と同様に挿通してナット42の刻印部62に到達させるステップ、
-ナット42を回して降下させて、必要な調整によりベルビルワッシャを挟持し、支持壁2の方向に下部プレート31をスペーサ50に接触させて固定し、その後、刻印部62から第2の駆動具を外すステップ、
-例えば、スポット溶接機を上部プレート32の貫通開口部47に直接通してスポット溶接技術等により、回転防止プレート63を円形突起51の高さで溶接するステップ。
【0091】
かかる構成により、アンカー装置20の取付方法の工程数が、当該分野の従来のタンクでアンカー装置を取り付けるために行われていた工程数より少なくなる。
【0092】
図8に示されているアンカー部材については、オプションとして上記の方法にさらに以下のステップが含まれる:
-矢印57で示されているように、2つの固定ネジ34の締付けを修正するステップ。
このステップは、弾性圧縮可能部材166の付勢を調整するために特に有利である。
【0093】
図9を参照すると、メタンタンカー船70の一部を切り取った図が、当該船70の二重船殻72内に取り付けられた全体形状が角柱形の密閉断熱タンク71を示している。密閉断熱タンク71の壁は、当該タンクに入ったLNGと接触する一次密閉バリアと、一次密閉バリアと船舶70の二重船殻72との間に配置された二次密閉バリアと、一次密閉バリアと二次密閉バリアとの間及び二次密閉バリアと二重船殻72との間にそれぞれ配置された2つの断熱バリアと、を備えている。
【0094】
自明の通り、LNGの貨物を密閉断熱タンク71へ又は密閉断熱タンク71から移送するため、適切なコネクタを用いて、船舶70の上甲板上に配置された荷役パイプ73を海上又は港湾ターミナルに接続することができる。
【0095】
図9は、荷役ステーション75と海中パイプ76と陸上設備77とを備えた海上ターミナルの一例を示す。荷役ステーション75は、可動アーム74と、当該可動アーム74を支持するタワー78とからなる固定式の沖合設備である。可動アーム74は、荷役パイプ73に接続可能な断熱可撓管79の束を支持する。方向調整可能なこの可動アーム74は、あらゆるメタンタンカー積載量型式に適合する。タワー78の内部には、不図示の接続パイプが延在する。荷役ステーション75は、船舶70から陸上設備77への揚げ荷及び陸上設備77から船舶への積込みを行えるものである。陸上設備77は、液化ガス貯蔵タンク80と、海中パイプ76を介して荷役ステーション75に接続される接続パイプ81と、を備えている。海中パイプ76は、荷役ステーション75と陸上設備77との間で例えば5km等の長距離にわたって液化ガスを移送するためのものであり、これにより、荷役作業中にメタンタンカー船70を海岸から遠距離の場所に離した状態に維持することができる。
【0096】
液化ガスの移送に必要な圧力を発生させるため、船舶70に搭載されたポンプ及び/又は陸上設備77に装備されたポンプ及び/又は荷役ステーション75に装備されたポンプが使用される。
【0097】
複数の特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらの特定の実施形態に何ら限定されず、上記の手段の技術的均等物や、上記の手段の技術的に均等な組み合わせは全て、本発明の範囲に属するものであれば本発明に含まれることが明らかである。例えば、アンカー装置は、支持壁に保持された1つの断熱バリアと、当該断熱バリアに接触して設置され、タンクに入っている流体と接触する密閉メンブレンと、を有する構造を備えたタンクに設けられた複数の断熱ブロックを固定するように調整される。
【0098】
動詞「含む(include)」又は「含む(comprise)」及びその共役形の使用は、請求項に記載されたもの以外の要素又はステップの存在を排除しない。
【0099】
特許請求の範囲において、いかなる括弧書きの符号も、特許請求の範囲の限定と解すべきものではない。
【外国語明細書】