(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083310
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】編レース、編レース製品、及び編レースの製造方法
(51)【国際特許分類】
D04B 21/12 20060101AFI20240613BHJP
D04B 21/18 20060101ALI20240613BHJP
D04B 21/08 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
D04B21/12
D04B21/18
D04B21/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207852
(22)【出願日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2022197332
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】597027305
【氏名又は名称】株式会社クロダレース
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 茂男
【テーマコード(参考)】
4L002
【Fターム(参考)】
4L002AA05
4L002AA06
4L002AA07
4L002AA08
4L002AB02
4L002AB04
4L002AC01
4L002AC05
4L002AC06
4L002CA00
4L002CA02
4L002CA03
4L002CA04
4L002CB02
4L002DA01
4L002EA00
4L002EA06
4L002FA01
(57)【要約】
【課題】 透かし感を向上させることができる編レースを提供することを目的とする。
【解決手段】 本実施形態における編レースは、複数の編み目が連続した基本組織12と、伸縮性を有し、複数の編み目が連続する方向において、前記基本組織の複数の編み目に挿入した第1挿入糸20と、伸縮性を有し、複数の編み目が連続する方向において、前記基本組織の複数の編み目に挿入した第2挿入糸22とを有する。第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、互いに同じ編み目に挿入し、かつ、基本組織12の複数の編み目が連続する方向と直交する方向(ウエール方方向)において、基本組織12の編み目に挿入した経路が対称性のある経路となるよう挿入してなる。
【選択図】
図2-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の編み目が連続した基本組織と、
伸縮性を有し、複数の編み目が連続する方向において、前記基本組織に挿入した第1の挿入糸と、
伸縮性を有し、複数の編み目が連続する方向において、前記第1の挿入糸が挿入された前記基本組織に挿入した、第2の挿入糸と
を有し、
前記第1の挿入糸及び前記第2の挿入糸は、少なくとも一部において、前記基本組織の編み目のうち互いに同じ編み目に挿入し、かつ、当該基本組織の複数の編み目が連続する方向と直交する方向において、当該基本組織に挿入した経路が対称性のある経路となるよう挿入してなる
編レース。
【請求項2】
前記基本組織は、複数の編み目が連続する方向と直交する方向に複数設けられ、
複数ある前記基本組織のうち、隣り合う2つの前記基本組織を連結する第3の挿入糸と、
前記第3の挿入糸により連結された2つの前記基本組織のうち、どちらか一方の前記基本組織と、この当該基本組織と隣り合う位置にある前記基本組織とを連結する第4の挿入糸と
をさらに有し、
前記第3の挿入糸及び前記第4の挿入糸は、少なくとも一部において、互いに同じ前記基本組織の同じ編み目に挿入し、かつ、前記基本組織の編み目が連続する方向と直交する方向において、前記基本組織の編み目に挿入した経路が対称性のある経路となるよう挿入してなる
請求項1に記載の編レース。
【請求項3】
前記基本組織は、複数の編み目が連続する方向に、前記第1の挿入糸及び前記第2の挿入糸が挿入された編み目が規則的に配置され、
前記基本組織は、複数の編み目が連続する方向に、前記第3の挿入糸及び前記第4の挿入糸が挿入された編み目が規則的に配置される
請求項2に記載の編レース。
【請求項4】
前記基本組織を形成する糸、前記第1の挿入糸、前記第2の挿入糸、前記第3の挿入糸、及び前記第4の挿入糸の少なくとも1つが接着性のある糸を含む
請求項1、2又は3に記載の編レース。
【請求項5】
前記基本組織を形成する糸により、隣り合う2つ前記基本組織を連結する連結部
をさらに有する
請求項4に記載の編レース。
【請求項6】
前記基本組織を形成する糸、前記第1の挿入糸、前記第2の挿入糸、前記第3の挿入糸、及び、前記第4の挿入糸は、伸縮性のある素材の単独糸、又は、伸縮性のある糸を含む複合糸である
請求項5に記載の編レース。
【請求項7】
前記基本組織の編み目に挿入された糸により、柄模様を形成した柄部と、
前記柄部から突出した、当該柄部を形成した糸の糸端と
をさらに有し、
前記第1の挿入糸、前記第2の挿入糸、及び前記第3の挿入糸、前記第4の挿入糸のいずれか1つは、前記基本組織の編み目に挿入された前記柄部を形成した糸と接触している
請求項1、2又は3に記載の編レース。
【請求項8】
前記第1の挿入糸、及び、前記第2の挿入糸は、融点が異なる、熱融着性又は熱合着性のある弾性糸であり、
前記第1の挿入糸、及び、前記第2の挿入糸の少なくとも一方は、前記基本組織に挿入された状態で、複数の編み目が連続する方向に連続している
請求項4に記載の編レース。
【請求項9】
複数の編み目が連続した基本組織と、
伸縮性を有し、複数の編み目が連続する方向において、前記基本組織に挿入した第1の挿入糸と、
伸縮性を有し、複数の編み目が連続する方向において、前記第1の挿入糸が挿入された前記基本組織に挿入した、第2の挿入糸と
を有し、
前記第1の挿入糸及び前記第2の挿入糸は、少なくとも一部において、前記基本組織の編み目のうち互いに同じ編み目に挿入し、かつ、当該基本組織の複数の編み目が連続する方向と直交する方向において、当該基本組織に挿入した経路が対称性のある経路となるよう挿入してなる
編みレースを含む編みレース製品。
【請求項10】
複数の編み目が連続する基本組織を形成する工程と、
前記基本組織の複数の編み目が連続する方向において、前記基本組織に伸縮性を有する第1の挿入糸を挿入する工程と、
前記基本組織の複数の編み目が連続する方向において、前記第1の挿入糸が挿入された前記基本組織に、伸縮性を有する第2の挿入糸を挿入する工程と
を有し、
前記基本組織に第1の挿入糸を挿入する工程と、当該基本組織に第2の挿入糸を挿入する工程とにおいて、前記第1の挿入糸及び前記第2の挿入糸は、少なくとも一部において、当該基本組織の編み目のうち互いに同じ編み目に挿入し、かつ、当該基本組織の複数の編み目が連続する方向と直交する方向において、当該基本組織の編み目に挿入した経路が対称性のある経路となるよう挿入する
編レースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編レース、編レース製品、及び編レースの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ハーフゲージのジャカードバーが2つで対になることによりフルゲージになっている一体型ジャカードバーを前後に2つ並べてシングル編みを行い、前記シングル編みにおいて、選択されたゲージ位置のジャカード機構を選択されたラッピング時に作用させて、前記ジャカードバーが備えるジャカードガイドを変位させる経編生地の編成方法が開示されている。
また、非特許文献1には、ガーメント用のレース(パターンNo.139/2013)と、このレースを形成した編機として、1枚の地筬(GB1)と、2枚(JB2筬及びJB3筬)で一組のピエゾジャカード筬と有し、JB2筬及びJB3筬が編み針に対して前後に互い違いに動作する編機により、GB1筬が「1-0/0-1//」の組織である鎖編み組織を形成し、JB2筬が「0-0/2-2//」の組織であるジャカード組織を形成し、JB3筬が「2-2/0-0//」の組織であるジャカード組織を形成しており、JB2筬及びJB3筬は、対称的な動作を行い、GB1筬で形成した鎖編み組織に対して1本置きに正掛け又は逆掛けする点が開示されている。
【0003】
また、非特許文献2には、アパレル用のレース(パターンNo.33/2021)と、このレースを形成した編機として、3枚の地筬(GB1筬、GB93筬+GB94筬)と、2枚(JB91筬及びJB92筬)で一組のピエゾジャカード筬と有し、JB91筬及びJB92筬が編み針に対して前後に互い違いに動作する編機により、GB1筬が「1-0/0-1//」の組織である鎖編み組織を形成し、JB91筬が「0-0/2-2//」の組織であるジャカード組織を形成し、JB92筬が「2-2/0-0//」の組織であるジャカード組織を形成しており、JB91筬及びJB92筬は、対称的な動作を行い、GB1筬で形成した鎖編み組織に対して1本置きに正掛け又は逆掛けする点、及び、同様にGB93筬とGB94筬も、フルセットの地筬にポリウレタン糸を1in1outの糸入れをそれぞれGB93と94に行い、GB93筬が「0-0/1-1//」の組織、GB94筬が「1-1/0-0//」の組織を形成し同じくGB1筬で形成した鎖編み組織に対しては、1本置きに正掛け又は逆掛けする点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-148124号公報
【非特許文献1】カール・マイヤー社、「Kettenwirk-Praxis 02/2014」(2014年第2版)、第53頁、ガーメント用レース(カール・マイヤー社 パターンNo.139/2013)(デザインNo.JL40 IF 0012)(マシーンタイプ JL40/1F)
【非特許文献2】カール・マイヤー社、「Kettenwirk-Praxis 03/2021」(2021年第3版)、第41頁、アパレル用レース(カール・マイヤー社 パターンNo.33/2021)(デザインNo.Mj92_1_B_0001)(マシーンタイプ MJ92/1B)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、透かし感を向上させ、均一なネット形成を行うことができる編レースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る編レースは、複数の編み目が連続した基本組織と、伸縮性を有し、複数の編み目が連続する方向において、前記基本組織に挿入した第1の挿入糸と、伸縮性を有し、複数の編み目が連続する方向において、前記第1の挿入糸が挿入された前記基本組織に挿入した、第2の挿入糸とを有し、前記第1の挿入糸及び前記第2の挿入糸は、少なくとも一部において、前記基本組織の編み目のうち互いに同じ編み目に挿入し、かつ、当該基本組織の複数の編み目が連続する方向と直交する方向において、当該基本組織に挿入した経路が対称性のある経路となるよう挿入してなる。
【0007】
好適には、前記基本組織は、複数の編み目が連続する方向と直交する方向に複数設けられ、複数ある前記基本組織のうち、隣り合う2つの前記基本組織を連結する第3の挿入糸と、前記第3の挿入糸により連結された2つの前記基本組織のうち、どちらか一方の前記基本組織と、この当該基本組織と隣り合う位置にある前記基本組織とを連結する第4の挿入糸とをさらに有し、前記第3の挿入糸及び前記第4の挿入糸は、少なくとも一部において、互いに同じ前記基本組織の同じ編み目に挿入し、かつ、前記基本組織の編み目が連続する方向と直交する方向において、前記基本組織の編み目に挿入した経路が対称性のある経路となるよう挿入してなる。
【0008】
好適には、前記基本組織は、複数の編み目が連続する方向に、前記第1の挿入糸及び前記第2の挿入糸が挿入された編み目が規則的に配置され、前記基本組織は、複数の編み目が連続する方向に、前記第3の挿入糸及び前記第4の挿入糸が挿入された編み目が規則的に配置される。
【0009】
好適には、前記基本組織を形成する糸、前記第1の挿入糸、前記第2の挿入糸、前記第3の挿入糸、及び前記第4の挿入糸の少なくとも1つが接着性のある糸を含む。
【0010】
好適には、前記基本組織を形成する糸により、隣り合う2つ前記基本組織を連結する連結部をさらに有する。
【0011】
好適には、前記基本組織を形成する糸、前記第1の挿入糸、前記第2の挿入糸、前記第3の挿入糸、及び、前記第4の挿入糸は、伸縮性のある素材の単独糸、又は、伸縮性のある糸を含む複合糸である。
【0012】
好適には、前記基本組織の編み目に挿入された糸により、柄模様を形成した柄部と、
前記柄部から突出した、当該柄部を形成した糸の糸端とをさらに有し、前記第1の挿入糸、前記第2の挿入糸、及び前記第3の挿入糸、前記第4の挿入糸のいずれか1つは、前記基本組織の編み目に挿入された前記柄部を形成した糸と接触している。
【0013】
好適には、前記第1の挿入糸、及び、前記第2の挿入糸は、融点が異なる、熱融着性又は熱合着性のある弾性糸であり、前記第1の挿入糸、及び、前記第2の挿入糸の少なくとも一方は、前記基本組織に挿入された状態で、複数の編み目が連続する方向に連続している。
【0014】
また、本発明に係る編みレース製品は、複数の編み目が連続した基本組織と、伸縮性を有し、複数の編み目が連続する方向において、前記基本組織に挿入した第1の挿入糸と、伸縮性を有し、複数の編み目が連続する方向において、前記第1の挿入糸が挿入された前記基本組織に挿入した、第2の挿入糸とを有し、前記第1の挿入糸及び前記第2の挿入糸は、少なくとも一部において、前記基本組織の編み目のうち互いに同じ編み目に挿入し、かつ、当該基本組織の複数の編み目が連続する方向と直交する方向において、当該基本組織に挿入した経路が対称性のある経路となるよう挿入してなる編みレースを含む。
【0015】
また、本発明に係る編レースの製造方法は、複数の編み目が連続する基本組織を形成する工程と、前記基本組織の複数の編み目が連続する方向において、前記基本組織に伸縮性を有する第1の挿入糸を挿入する工程と、前記基本組織の複数の編み目が連続する方向において、前記第1の挿入糸が挿入された前記基本組織に、伸縮性を有する第2の挿入糸を挿入する工程とを有し、前記基本組織に第1の挿入糸を挿入する工程と、当該基本組織に第2の挿入糸を挿入する工程とにおいて、前記第1の挿入糸及び前記第2の挿入糸は、少なくとも一部において、当該基本組織の編み目のうち互いに同じ編み目に挿入し、かつ、当該基本組織の複数の編み目が連続する方向と直交する方向において、当該基本組織の編み目に挿入した経路が対称性のある経路となるよう挿入する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、透かし感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態における柄模様入り編レース1を例示する図である。
【
図2-1】編レース1の編成組織において、基本組織12に挿入された第1挿入糸20及び第2挿入糸22を説明する第1図である。
【
図2-2】編レース1の編成組織において、基本組織12に挿入された第1挿入糸20及び第2挿入糸22を説明する第2図である。
【
図2-3】編レース1の編成組織において、基本組織12に挿入された第3挿入糸30及び第4挿入糸32を説明する第1図である。
【
図2-4】編レース1の編成組織において、基本組織12に挿入された第3挿入糸30及び第4挿入糸32を説明する第2図である。
【
図3】柄模様入り編レース1の編成組織の詳細を説明する平面図である。
【
図4】柄模様入り編レース1の編成組織の詳細を説明する側面図である。
【
図5】柄模様入り編レース1の組織図を例示する図である。
【
図6】柄模様入り編レース1の製造方法(S10)を説明するフローチャートである。
【
図7】実施形態の柄模様入り編レース1における変形例2の編成組織の詳細を説明する平面図である。
【
図8】実施形態の柄模様入り編レース1における変形例2の編成組織の詳細を説明する側面図である。
【
図9】実施形態の柄模様入り編レース1における変形例2の組織図を例示する図である。
【
図10】実施形態の柄模様入り編レース1における変形例3を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。ただし、本発明の範囲は、図示例に限定されるものではない。
まず、
図1~
図5を参照し、柄模様入り編レース1の構成を説明する。
図1は、本実施形態における柄模様入り編レース1を例示する図である。
図1に例示するように、柄模様入り編レース1(以下、編レース1)は、例えば編レース製品の少なくとも一部に使用される編レースである。編レース製品とは、少なくとも一部に編レース1を含む編レース製品であり、例えばインナーウエア、アウターウエア若しくはスポーツウエア等の衣服、包帯等の医療用具、コルセット、矯正ベルト若しくは矯正バンド等のサポーター、アンダーアイマスク、シートマスク若しくはフェイスマスク等のスキンケア用品、又は、カーテン等のインテリア用品である。なお、本例の編レース製品は、衣服である。本例での衣服とは、例えば、女性用のインナーウエア(下着)の全部又は一部に使用される。なお、女性用インナーウエアには、ファンデーション(基礎下着)、ランジェリー(装飾下着)、及びアンダーウエア(肌着)が含まれる。
この編レース1は、例えば、ラッセル機などの経編機によって編成された経編地のラッセルレースであり、複数の透孔が形成され、各透孔の形状および配置の組合せによりレース模様が形成される。編レース1は、地組織2と、地組織2に編み込まれた柄部6とを有する。なお、編レース1は、本発明に係る編レースの一例である。
【0019】
地組織2は、隣り合う2つの基本となる組織(後述する基本組織12)を互いに連結して形成された編み地組織である。地組織2は、例えば、鎖編組織、チュール組織、アトラス組織、又はパワーネット組織等である。なお、本例の地組織2は、鎖編組織であり、隣り合う2つの基本組織12(ウェール)を行き来するラン止め(ほつれ防止)機能を有してもよい。
また、地組織2は、透かし部4と、地模様5とを含む。
透かし部4は、単位面積あたりに配置される糸の量が疎な領域であり、様々な複数のネット目である透孔が配置される。
地模様5は、単位面積あたりに配置される糸の量が密な領域であり、所定の模様に形成される。
柄部6は、地組織2に柄糸が編み込まれ、地組織2を装飾する領域である。柄部6は、編み込まれた柄糸の太さや疎密度合いにより、花柄模様など(以下、柄モチーフと称呼することもある)の輪郭、濃淡、或いは凹凸を現出させる。
【0020】
次に、柄模様入り編レース1の詳細な構成を説明する。
図2-1は、編レース1の編成組織において、基本組織12に挿入された第1挿入糸20及び第2挿入糸22を説明する第1図である。
図2-2は、編レース1の編成組織において、基本組織12に挿入された第1挿入糸20及び第2挿入糸22を説明する第2図である。
図2-3は、編レース1の編成組織において、基本組織12に挿入された第3挿入糸30及び第4挿入糸32を説明する第1図である。
図2-4は、編レース1の編成組織において、基本組織12に挿入された第3挿入糸30及び第4挿入糸32を説明する第2図である。
なお、
図2-1において、第3挿入糸30及び第4挿入糸32は、説明の便宜上、不図示とし、
図2-3において、第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、説明の便宜上、不図示とする。また、
図2-1及び
図2-3において、説明の便宜上、各糸同士に間隔を設けているが、実際に各糸同士は密着している。また、第1挿入糸20及び第2挿入糸22と、第3挿入糸30及び第4挿入糸32とは、説明の便宜上、
図2-1及び
図2-3に分けて図示するが実際には同一の編レース1中に配置される。また、
図2-2は、
図2-1の他形態であり、
図2-4は、
図2-3の他形態である。
図2-1及び
図2-3に例示するように、編レース1は、鎖編糸10、鎖編糸10により形成された基本組織12、第1挿入糸20、第2挿入糸22、第3挿入糸30、及び、第4挿入糸32を有する。
【0021】
鎖編糸10は、複数の鎖編み目が連続する基本組織12(後述)を形成する編糸である。鎖編糸10が形成する鎖編み目は、ニードルループ10Aとシンカーループ10Bとを含む。鎖編糸10は、鎖編み目を連続して形成することにより、地組織2の基礎となる基本組織12を形成する。
また、鎖編糸10は、例えば合成繊維で形成した糸であり、単独素材糸又は複合糸である。例えば、鎖編糸10が単独素材糸(例えばフィラメント糸)である場合、ポリアミドナイロン(ナイロン)、アクリル、又は、ポリエステル等で形成される。また、鎖編糸10が複合糸である場合、例えば、ポリウレタンにナイロン糸を被覆した複合糸であり、具体的には、熱により材料が融解することで他の糸と接着する熱融着性弾性糸
、又は、熱により材料の表面形状が変形し、その変形形状を保持することで他の糸と合着する熱合着性弾性糸を芯糸にして、ナイロン糸を被覆した複合糸である。また、鎖編糸10は、接触温感、接触冷感又は抗菌防臭等の機能性繊維を含む糸でもよい。温感機能性繊維糸として例えばアクリル繊維糸や、冷感機能性繊維糸として例えばキュプラ繊維糸、その他抗菌や防臭など、追加する目的や効果に応じた素材の選択や、複合素材の組み合わせも適宜選択できる。また、複合糸の複合方法は、例えばカバーリング加工、エア交絡加工、又は合撚加工の他、既知の複合加工法を適宜選択できる。なお、本例の鎖編糸10は、ナイロンで形成したマルチフィラメント糸である。
【0022】
基本組織12は、鎖編糸10により形成され、複数の鎖編み目が連続した編み組織であり、地組織2を形成する基礎となる編み組織である。基本組織12は、複数の鎖編み目が連続する方向(以下コース方向)と直交する方向(以下ウェール方向)において、並列して複数配置される。ウェール方向に並列して複数配置された基本組織12には、
図2に例示した基本組織12A~12Dが含まれ、基本組織12A~12Dは、実質的に同様の構成である。基本組織12は、隣り合う2つの基本組織12において、それぞれの鎖編み目が隣り合う位置に配置される。
【0023】
第1挿入糸20は、伸縮性を有し、コース方向において、基本組織12の複数の編み目に挿入した挿入糸であり、第2挿入糸22が挿入された基本組織12に挿入される。また、第2挿入糸22は、伸縮性を有し、コース方向において、基本組織12の複数の編み目に挿入した挿入糸であり、第1挿入糸20が挿入された基本組織12に挿入される。すなわち、1つの基本組織12に対して第1挿入糸20及び第2挿入糸22が挿入される。そして第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、ウェール方向に複数配置された全ての基本組織12に挿入される。よって第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、
図2-1に例示したように、基本組織12A~12Dにも同様にそれぞれ挿入される。基本組織12に挿入した第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、互いに同じ編み目を通り、かつ、ウェール方向において、基本組織12の複数の編み目に通した糸の経路(挿入経路)が対称性のある経路となっている。すなわち、第1挿入糸20の挿入経路は、第2挿入糸22の挿入経路と線対称となる経路となっている。第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、基本組織12に対する挿入経路がウェール方向に対称な挿入経路であれば、規則的な位置の編み目に挿入してもよい。例えば、第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、基本組織12における全ての編み目に挿入してもよいし、又は、基本組織12における規則的な間隔を開けた位置にある編み目に挿入してもよい。規則的な間隔とは、例えば、1目置きの間隔、2目置き以上の間隔、又は、これらの組合せた間隔である。なお、本例の第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、
図2-1に例示したように、基本組織12における全ての編み目に挿入される。なお、これに限定するものではなく、
図2-2に例示するように、第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、コース方向において互いに同じ編み目に挿入し、かつ、ウェール方向において基本組織12に挿入した経路が線対称となる経路(挿入経路A)と、基本組織12に挿入した経路が線対称とならない非対称性となる挿入経路(挿入経路B)との組合せであってもよい。挿入経路Bとは、例えば第1挿入糸20及び第2挿入糸22が互いに同じ又は異なる鎖編目を通り、かつ、第1挿入糸20及び第2挿入糸22が並走するように基本組織12に挿入した経路である。また、第1挿入糸20及び第2挿入糸22の一方を挿入し、他方を一目飛ばしというような互いに異なる挿入経路となってもよい。挿入経路A及び挿入経路Bの組み合わせにより、異なるネット目形状の表現が可能となる。但し、ウェール方向で挿入方法が切り替わる為、挿入経路Bは、柄モチーフに影響の出ない範囲で採用可能である。
【0024】
また、第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、少なくとも伸縮性を有する糸である。第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、伸縮性を有する単独素材糸、又は、伸縮性を有する糸を含む複合糸である。例えば、第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、単独素材糸である場合、ポリウレタン弾性糸(いわゆるスパンデックス)である(なお、ポリウレタン弾性糸において、熱融着性を有さないポリウレタン弾性糸は、ポリウレタン伸縮糸と称呼する場合もある)。また、第1挿入糸20は、複合糸である場合、例えばポリウレタン伸縮糸を芯糸に被覆糸を被覆した複合糸である。
また、第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、伸縮性及び接着性を有する単独素材糸、又は、伸縮性と、接着性又は合着性とを有する糸を含む複合糸であってもよい。例えば、第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、単独素材糸である場合、熱融着性ポリウレタン弾性糸、又は、熱合着性ポリウレタン弾性糸である(なお、本例において、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸は、ポリウレタン融着糸と称呼し、熱合着性を有するポリウレタン弾性糸は、ポリウレタン合着糸と称呼する場合もある)。また、第1挿入糸20は、複合糸である場合、例えばポリウレタン融着糸を芯糸に被覆糸を被覆した複合糸である。
なお、第1挿入糸20及び第2挿入糸22の組合せとして、第1挿入糸20及び第2挿入糸22が実質的に同様の糸であってもよいし、第1挿入糸20及び第2挿入糸22のうち一方が伸縮性を有する糸であり、他方が伸縮性と、接着性又は合着性とを有する糸であってもよい。また、第1挿入糸20及び第2挿入糸22のうち一方が単独素材糸であり、他方が複合糸であってもよい。なお、基本組織12の編み目の形状をより安定させる観点から、第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、それぞれ同じ糸、具体的には同じ性質(伸縮性、接着性若しくは合着性、又はその両方)、同じ素材、かつ、同じ構成(単糸又は複合糸)の糸を選択することが好ましい。本例の第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、同じ糸でありポリウレタン伸縮糸である。第1挿入糸20は、本発明に係る第1の挿入糸の一例であり、第2挿入糸22は、本発明に係る第2の挿入糸の一例である。
【0025】
第3挿入糸30は、ウェール方向において、複数ある基本組織12のうち、隣り合う2つの基本組織12を連結する挿入糸である。第3挿入糸30は、隣り合う2つの基本組織12の編み目に交互に挿入され、挿入された2つの基本組織12を連結する。第3挿入糸30は、第4挿入糸32により連結された2つの基本組織12のうち、どちらか一方の基本組織12と、この一方の基本組織12と隣り合う位置にある基本組織12とを連結する。
図2-3に例示したように、第3挿入糸30は、基本組織12Bと隣り合う位置にある基本組織12Aを連結する。また第3挿入糸30は、基本組織12Cと隣り合う位置にある基本組織12Dを連結する。第3挿入糸30は、複数の基本組織12のうち、基本組織12A及び12Bぞれぞれの鎖編み目に対して交互に挿入され、挿入された2つの基本組織12A及び12Bを連結し、レース模様のある地組織2を形成する。また同様に、第3挿入糸30は、基本組織12C及び12Dぞれぞれの鎖編み目に対して交互に挿入され、挿入された2つの基本組織12C及び12Dを連結し、レース模様のある地組織2を形成する。
第3挿入糸30は、隣り合う2つの基本組織12の編み目のうち、規則的な位置の編み目に挿入してもよい。例えば、第3挿入糸30は、各編み目全てに対して交互に挿入してもよいし、隣り合う2つの基本組織12の編み目のうち、規則的な間隔を開けた位置にある鎖編み目に対して交互に挿入してもよい。
第3挿入糸30は、後述する第4挿入糸32と互いに同じ基本組織12の同じ編み目を通り、かつ、ウェール方向において、基本組織12の複数の編み目に通した糸の経路(挿入経路)が第4挿入糸32の挿入経路と対称性のある経路となっている。本例の第3挿入糸30は、隣り合う位置にある第4挿入糸32と、互いに同じ編み目を通り、かつ、線対称となる挿入経路となるよう配置しているが、これに限定するものではなく、第4挿入糸32と異なる編み目を通り、かつ、第4挿入糸32と対称性のある挿入経路となるよう配置してもよい。つまり、第3挿入糸30と第4挿入糸32とが交差しないように、第3挿入糸30及び第4挿入糸32の一方をコース方向に位置をずらした状態で基本組織12に配置してもよい。また、第3挿入糸30は、例えば、ジャカード糸又は柄糸であり、本例ではジャカード糸である。
【0026】
第4挿入糸32は、ウェール方向において、複数ある基本組織12のうち、隣り合う2つの基本組織12を連結する挿入糸である。第4挿入糸32は、第3挿入糸30と互いに同じ基本組織12の同じ編み目を通り、かつ、ウェール方向において、基本組織12の複数の編み目に通した糸の経路(挿入経路)が第3挿入糸30の挿入経路と対称性のある経路となっている。第4挿入糸32は、第3挿入糸30により連結された2つの基本組織12のうち、どちらか一方の基本組織12と、この一方の基本組織12と隣り合う位置にある基本組織12とを連結する。
図2-3に例示したように、第4挿入糸32は、第3挿入糸30により連結された基本組織12A及び12Bのうち、基本組織12Bと、基本組織12Bと隣り合う位置にある基本組織12Cとを連結し、また、第3挿入糸30により連結された基本組織12C及び12Dのうち、基本組織12Cと隣り合う位置にある基本組織12Bとを連結し、レース模様のある地組織2を形成する。第4挿入糸32は、隣り合う2つの基本組織12の編み目のうち、各編み目全てに対して交互に挿入してもよいし、隣り合う2つの基本組織12の編み目のうち、規則的な間隔を開けた位置にある鎖編み目に対して交互に挿入してもよい。
第4挿入糸32は、第3挿入糸30と互いに同じ基本組織12の同じ編み目を通り、かつ、ウェール方向において、基本組織12の複数の編み目に通した糸の経路(挿入経路)が第3挿入糸30の挿入経路と対称性のある経路となっている。本例の第4挿入糸32は、隣り合う位置にある第3挿入糸30と、互いに同じ編み目を通り、かつ、線対称となる挿入経路となるよう配置しているが、これに限定するものではなく、第3挿入糸30と異なる編み目を通り、かつ、第3挿入糸30と対称性のある挿入経路となるよう配置してもよい。つまり、第3挿入糸30と第4挿入糸32とが交差しないように、第3挿入糸30及び第4挿入糸32の一方をコース方向に位置をずらした状態で基本組織12に配置してもよい。また、
図2-4に例示するように、第3挿入糸30及び第4挿入糸32は、コース方向において互いに同じ編み目に挿入し、かつ、ウェール方向において基本組織12に挿入した経路が線対称となる経路(挿入経路Z)と、基本組織12に挿入した経路が線対称とならない非対称性となる挿入経路(挿入経路X)との組合せであってもよい。挿入経路Xとは、例えば第3挿入糸30及び第4挿入糸32の一方をコース方向に周期(挿入する編み目の位置)をずらした挿入経路でもよいし、第3挿入糸30及び第4挿入糸32の一方を挿入し、他方を一目飛ばしというような互いに異なる挿入経路となってもよい。挿入経路X及び挿入経路Zの組み合わせにより、異なるネット目形状の表現が可能となる。但し、ウェール方向で挿入方法が切り替わる為、挿入経路Xは、柄モチーフに影響の出ない範囲で採用可能である。
また、第4挿入糸32は、例えば、ジャカード糸又は柄糸であり、本例ではジャカード糸である。
第3挿入糸30及び第4挿入糸32は、
図2-3に例示した組織より、さらに選択したジャカードガイドを変位させることで、穴目などの様々な複数のネット目である透孔が配置される。
【0027】
また、第3挿入糸30及び第4挿入糸32は、単独素材糸である場合、例えば、アクリル、ポリエステル、ナイロン、若しくはポリウレタン等の合成繊維からなる糸、又は、レーヨン、キュプラ、若しくはポリノジック等の再生繊維からなる糸である。また、第3挿入糸30及び第4挿入糸32は、複合糸である場合、例えば、綿、麻、シルク、又はウール等の天然繊維と合成繊維との複合糸、再生繊維と合成繊維との複合糸、又は、合成繊維同士の複合糸である。例えば、第3挿入糸30及び第4挿入糸32は、合成繊維同士の複合糸として、ポリウレタン接着糸、又は、ポリウレタン伸縮糸を芯糸にして、ナイロン糸を被覆した複合糸であってもよい。また、第3挿入糸30及び第4挿入糸32は、接触温感、接触冷感又は抗菌防臭等の機能性繊維をからなる糸であってもよく、温感機能性繊維糸として例えばアクリル繊維糸、冷感機能性繊維糸として例えばキュプラ繊維糸、又は、その他抗菌や防臭など、追加する目的や効果に応じた素材を適宜組み合わせた複合糸であってもよい。複合糸の複合方法は、例えばカバーリング加工、エア交絡加工、又は合撚加工等の既知の複合方法で製造される。なお、第3挿入糸30は、本発明に係る第3の挿入糸の一例であり、第4挿入糸32は、本発明に係る第4の挿入糸の一例である。
【0028】
図3は、柄模様入り編レース1の編成組織の詳細を説明する平面図である。
図4は、柄模様入り編レース1の編成組織の詳細を説明する側面図である。
図5は、柄模様入り編レース1の組織図を例示する図である。
図3及び
図4に例示するように、基本組織12には、第1挿入糸20、第2挿入糸22、第3挿入糸30、及び、第4挿入糸32が挿通している。基本組織12に挿入された状態の第1挿入糸20、第2挿入糸22、第3挿入糸30、及び、第4挿入糸32は、ニードルループ10Aと、シンカーループ10Bとの間に位置する。第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、シンカーループ10Bを挟んで、対向する位置に配置される。
詳細には、
図5に例示するように、鎖編糸10は、「1-0/0-1//」の組織とする基本組織12に形成される。形成された基本組織12対して、第1挿入糸20の組織は、「0-0/1-1//」で挿入され、第2挿入糸22の組織は、「1-1/0-0//」で挿入される。いわゆる、第1挿入糸20は、基本組織12に対して正掛け、第2挿入糸22は、基本組織12に対し逆掛けとなる。すなわち、第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、基本組織12の編み目に挿入した経路が対称性のある経路であり、かつ、基本組織12に挿入する編み目が互いに同じ編み目となる挿入経路、換言すると互い違いとなる経路となるように挿入される。そのため、第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、基本組織12の編み目を、ウエール方向において互いに反対方向(
図2を参照すると
図2の正位置の状態で左右方向)に均等に引っ張る状態となり、鎖編み目の歪みを軽減できる。その結果、基本組織12のコース方向に対して鎖編み目が直線的に並んだ状態に視認できる。ここで、編み目の歪みとは、編み目に対して右から左に挿入糸を挿入することで編み目が左側に偏る変形、又は、編み目に対して左から右に挿入糸を挿入することで編み目が右側に偏る変形である。
また形成された基本組織12対して、第3挿入糸30の組織は、「0-0/2-2//」で挿入され、第4挿入糸32の組織は、「2-2/0-0//」で挿入される。いわゆる、第3挿入糸30は、基本組織12に対して正掛け、第4挿入糸32は、基本組織12に対して逆掛けとなる。すなわち、第3挿入糸30及び第4挿入糸32は、基本組織12の編み目に挿入した経路が対称性のある経路であり、かつ、基本組織12に挿入する編み目が互いに同じ編み目となる挿入経路、換言すると互い違いとなる挿入経路となるように挿入される。
【0029】
このように、第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、基本組織12に対して、互い違いの挿入経路となるようを挿入することにより、ウェール方向における鎖編みの編み目形状の歪みを抑制し視認性の差が軽減される。その結果、基本組織12の鎖編め目全体として歪みのない編み目がコース方向に直線的に形成されるこれにより、ストレッチ生地の場合でも編み目形状が対称性のあるように維持される。さらに、第3挿入糸30は、基本組織12に対して正掛け、第4挿入糸32は、基本組織12に対して逆掛けとすることで鎖編み目の対称性がより保持される。よって、編レース生地全体として透け感が向上する。
【0030】
次に、
図6を参照し、編レース1の製造方法を説明する。
図6は、柄模様入り編レース1の製造方法(S10)を説明するフローチャートである。
本実施形態の編レース1は、例えばバックジャカードラッセル編機(以下、バックジャカード機)により編成される。以下、本例の製造方法では、上記バックジャカード機を使用してレース地の編成し、編成したレース地を染色し、染色したレース地を熱処理することで、編レース1を得る。なお、本例では、バックジャカード機で編成するが、これに限定するものではなく、フロントジャカードラッセル機等でも実現可能である。
【0031】
図6に例示するように、ステップ100(S100)において、作業者は、バックジャカード機に、複数の編み目が連続する基本組織12を形成させる。作業者は、地筬によって鎖編糸10を編針に導き経編用の鎖編み目を形成し、形成した鎖編み目をコース方向に複数連続させて基本組織12を形成する。形成される基本組織12は、ウェール方向に等間隔で複数並列し、同じタイミングで編成される。基本組織12は、「1-0/0-1//」の組織で形成される。
【0032】
ステップ101(S101)において、作業者は、バックジャカード機に、コース方向において、鎖編糸10で形成した基本組織12の編み目に、第1挿入糸20を挿入させる。作業者は、基本組織12対して第1挿入糸20の組織が「0-0/1-1//」で形成されるよう、第1挿入糸20を挿入する地筬に挿入させる。
【0033】
ステップ102(S102)において、作業者は、バックジャカード機に、コース方向において、鎖編糸10で形成した基本組織12の編み目に、第2挿入糸22を挿入させる。作業者は、基本組織12対して第2挿入糸22の組織が「1-1/0-0//」で形成されるよう、第2挿入糸22を挿入する地筬に挿入させる。作業者は、第1挿入糸20を挿入する地筬と、第2挿入糸22を挿入する地筬とを、互い違いに動作させることで、第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、互いに同じ編み目に挿入し、かつ、基本組織12の編み目に挿入した経路が対称性のある互い違いの経路となるよう挿入される。
【0034】
ステップ103(S103)において、作業者は、バックジャカード機に、基本組織12の編み目に、第3挿入糸30を挿入させる。作業者は、基本組織12対して第3挿入糸30の組織が「0-0/2-2//」で形成されるよう、第3挿入糸30を挿入するジャカード筬に挿入させる。
【0035】
ステップ104(S104)において、作業者は、バックジャカード機に、基本組織12の編み目に、第4挿入糸32を挿入させる。作業者は、基本組織12対して第4挿入糸32の組織が「2-2/0-0//」で形成されるよう、第4挿入糸32を挿入するジャカード筬に挿入させる。作業者は、第3挿入糸30を挿入するジャカード筬と、第4挿入糸32を挿入するジャカード筬とを、互い違いに動作させることで、第3挿入糸30及び第4挿入糸32は、互いに同じ編み目に挿入し、かつ、基本組織12の編み目に挿入した経路が対称性のある互い違いの経路となるよう挿入される。第3挿入糸30及び第4挿入糸32は、さらに選択したジャカードガイドを変位させることで、少なくとも一部が互いに重なる又は交差するように挿入してもよい。これにより、作業者は、
図1に例示した透かし部4、地模様5、柄部6を形成させる。
このように上記ステップS100~S104では、バックジャカード編機の編成動作にて同一コース上で編込み等が行われ、染色加工前のレース地が製造される。
【0036】
ステップ106(S106)において、作業者は、編成後のレース地を染色する。なお、本例では、後染めの場合を説明するが、これに限定するものではなく、先染めあってもよいし、原着糸であれば本工程を省くことができる。
【0037】
ステップ108(S108)において、作業者は、染色されたレース地を加熱する熱処理を行う(熱セット工程)。レース地に含まれる各挿入糸のうち、熱融着性のある挿入糸が含まれる場合に、糸が融解する温度で加熱する熱処理を行う。また、熱融着性のある挿入糸が含まれない場合にも、各糸(ナイロン糸やポリウレタン弾性伸縮糸等)を馴染ませ落ち着かせる観点から熱処理を行う。
このように、作業者は、
図1に例示した編レース1を得ることができる。
【0038】
以上説明したように、従来であれば、第1挿入糸20及び第2挿入糸22のどちら一方を鎖編組織12に挿入していたため、挿入された挿入糸が直線的になり、この挿入糸に追従して鎖編組織12の編み目が歪み、鎖編組織12が全体として歪んだ状態となったが、本実施形態の編レース1によれば、鎖編組織12に対する挿入経路が互い違いとなるように、2本の挿入糸(第1挿入糸20及び第2挿入糸22)を鎖編組織12に挿入することで、各鎖編組織12の編み目の歪みを抑制することができる。その結果、編レース全体としての鎖編組織12の編み目の形状が均一に揃うため、透かし感を向上させる。
また、編レース1によれば鎖編組織12に対して2本のポリウレタンの挿入糸を互いに直交して挿入しているため、防滑性及び伸縮性を兼備し、かつ、互いに糸の抜け防止となる。
【0039】
また、編レース1によれば、さらに、鎖編組織12に対する挿入経路が互い違いとなるとなるように、2本のジャカード糸(第3挿入糸30及び第4挿入糸32)を鎖編組織12に挿入することで、ネット目の安定がより図れる。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、追加等が可能である。
【0040】
次に、上記実施例における変形例を説明する。
なお、変形例では、上記実施例と実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[変形例1]
上記実施例では、基本組織12は、鎖編組織である場合を説明したが、これに限定するものではなく、例えばラン止め組織、チュール組織、パワーネット組織、又は、アトラス組織であってもよい。具体的には、基本組織12は、隣り合う2つの基本組織12を連結する連結部を有する。連結部は、基本組織12を形成する鎖編糸10により、隣り合う2つの基本組織12のうち、一方の基本組織12の鎖編み目から他方の基本組織12の鎖編み目に横渡りし、隣り合う2つの基本組織12を連結する。連結部は、規則的に配置される。連結部を規則的に配置する周期は、基本組織12のコース方向において、例えば3コース以上の周期であり、好ましくは3コース以上20コース以下の周期であり、より好ましくは3コース以上9コース以下の周期であり、さらに好ましくは3コース以上7コース以下の周期である。
【0041】
[変形例2]
図7は、実施形態の柄模様入り編レース1における変形例2の編成組織の詳細を説明する平面図である。
図8は、実施形態の柄模様入り編レース1における変形例2の編成組織の詳細を説明する側面図である。
図9は、実施形態の柄模様入り編レース1における変形例2の組織図を例示する図である。
上記実施例では、第3挿入糸30と第4挿入糸32との挿入経路が対称性のある経路であり、かつ、基本組織12に挿入する編み目が互いに同じ編み目となる挿入経路となるよう形成したが、これに限定するものではなく、
図7~
図9に例示するように、第3挿入糸30と第4挿入糸32との挿入経路が対称性のある経路であり、かつ、基本組織12に挿入する編み目を互いに異なる編み目となる挿入経路、換言すると挿入経路がコース方向に位置をずらした関係となるよう形成してもよい。
図7及び
図8に例示するように、基本組織12には、第1挿入糸20、第2挿入糸22、第3挿入糸30、及び、第4挿入糸32が挿通している。詳細には、
図9に例示するように、鎖編糸10は、「1-0/0-1//」の組織とする基本組織12に形成される。形成された基本組織12対して、第1挿入糸20の組織は、「0-0/1-1//」で挿入され、第2挿入糸22の組織は、「1-1/0-0//」で挿入される。いわゆる、第1挿入糸20は、基本組織12に対して正掛け、第2挿入糸22は、基本組織12に対し逆掛けとなる。また、形成された基本組織12対して、第3挿入糸30の組織は、「0-0/2-2//」で挿入され、第4挿入糸32の組織は、「0-0/2-2//」で挿入される。いわゆる、第3挿入糸30及び第4挿入糸32は、基本組織12に対して正掛けとなる。
このように、編レース1によれば、第1挿入糸20及び第2挿入糸22により、基本組織12の編み目の歪みを解消した状態であるため、2本のジャカード糸(第3挿入糸30及び第4挿入糸32)をコース方向に位置ずれした関係となるように基本組織12に挿入しても、ネット目の安定と透かし感を実現することが出来る。
【0042】
[変形例3]
図10は、実施形態の柄模様入り編レース1における変形例3を例示する図である。
図10(A)は、変形例3における柄模様入り編レース1を例示する断面模式図であり、
図10(B)は、変形例3の柄模様入り編レース1におけるA部近傍を例示する編成組織図である。
図10(A)に例示するように、本例の編レース1は、地組織2に柄部6を形成してなり、コース方向に、複数の柄模様(柄部6)が互いに離間して設けられた、所謂シャーリングレースである。柄部6は、基本組織12の編み目に挿通された柄模様を形成する糸(柄糸60)により形成される。隣り合う2つの柄部6は、コース方向に複数設けられ、互いに離間し独立している。詳細には、柄部6は、地組織2に形成される場合において、隣り合う2つの柄部6の間に位置する柄糸60を基本組織12の編み目に挿通させずに浮離部分(遊離部60b)とし、遊離部60bを切除することで、柄糸60の切断端部60aが柄部6に残存する。すなわち、柄部6を形成した柄糸60の切断端部60aは、柄部60から突出した状態で残存する。切断端部60aは、柄部60から例えば2~3mm程度突出している。なお、切断端部60aは、本発明に係る糸端の一例である。
このように、隣り合う2つの柄部6は、柄糸60を介して連結しておらず、互いに離間し独立している。なお、複数並ぶ柄部6を互いに独立させる目的で遊離部分60bを切除する場合に限定するものではなく、単に柄部6を形成するために必要としない部分の柄糸60を、遊離部分60bとして切除する場合も含まれる。
また、例えば、鎖編糸10が隣り合う2つの基本組織12の間で横移動(横渡り)を繰り返し、2つの基本組織12を連結する連結部を複数含むラン止め組織における遊離部分60bの形成において、鎖編糸10を1ウェール横渡りさせた場合に、柄糸60を鎖編糸10に合わせて同方向へ1ウェール横渡りさせることにより、横渡りした鎖編糸10の遊離部分60bが、横渡りした鎖編糸10(連結部)に係止されるのを防止できる。また、柄糸60を横渡りさせることにより、遊離部分60bの距離を長くすることで、遊離部分60bを切除しやすくする事も可能である。
また、本例の編レース1は、生地の裏側から表側の方向において、第1挿入糸20及び第2挿入糸22、次にジャカード糸である第3挿入糸30及び第4挿入糸32(不図示)、次に柄糸60の順に位置している。
図10(B)に例示するように、第1挿入糸20、第2挿入糸22、及び第3の挿入糸30、第4の挿入糸32のいずれか1つは、基本組織12の鎖編目に挿入された柄部6を形成した柄糸60と接触している。柄糸60は、基本組織12に挿入した経路が対称性のある経路となる第1挿入糸20及び第2挿入糸22より、地組織2のレース表面に位置するため、柄糸60が立体的に挿通することになる。よって、柄部6は、地組織2のレース表面に立ち上がるように形成される。そのため、一定の送り量で給糸される鎖編糸10により、柄部6に残存する切断端部60aでは、地組織2の透かし部4及び地模様5部分より、鎖編糸10による柄糸60の締め付けが強くなり、シャーリング工程での糸抜け、着用時及び洗濯時での糸抜け、又は、切断端部60aからの柄糸60の飛び出しが軽減される。
さらに、本例の編レース1では、基本組織12の編み目に挿入された第3挿入糸30及び第4挿入糸32も相まって、地組織2の表面上をより立体的に挿通する事になるため、その結果として、柄部6の立体感がより増大されると共に、ネット目の透かし感と相まって更にレース全体の透け感が増大される。
【0043】
[変形例4]
上記実施形態の編レース1における第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、ポリウレタン伸縮糸である場合を説明したが、これに限定するものではなく、熱融着性又は熱合着性のある弾性糸であってもよい。
本例の編レース1における第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、編レース1のネット目の形状を略同一に揃える観点から、同一の繊維素材である、例えば熱融着性のある糸であり、具体的には、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸(ポリウレタン融着糸)、又は、ポリウレタン融着糸を芯糸とする複合糸である。また、第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、ポリウレタン融着糸の融点が同じ糸であってもよし、融点が異なる糸であってもよく、本例では互いに融点が異なるポリウレタン融着糸である。
第1挿入糸20は、第2挿入糸22より融点が低い糸であり、例えば、融点が135℃以上145℃以下、本例では融点が140℃であるポリウレタン融着糸である。
第2挿入糸22は、第1挿入糸20より融点が高い糸であり、例えば、融点が155℃以上165℃以下、本例では融点が160℃であるポリウレタン融着糸である。
【0044】
編レース1における第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、一方が熱溶融して破断した状態であり、他方が熱溶融しても連続した状態となるような温度で熱セットされた状態であり、例えば160℃以上190℃以下、具体的には170℃以上180℃以下、本例では175℃の温度で熱セットされた状態である。ここで、熱溶融して破断した状態とは、挿入した糸の経路が不連続の状態であり、例えば、熱溶融して糸全体として完全に破断した状態、及び、熱溶融して糸の一部が連続しているが全体として概ね破断した状態を含む概念である。また、熱溶融して連続した状態とは、挿入した糸の経路が連続の状態であり、例えば、熱溶融して糸全体として完全に破断せず連続した状態、及び、熱溶融して糸の一部が破断した状態を含む概念である。なお、本例の第1挿入糸20は、熱溶融して破断した状態であり、第2挿入糸22は、熱溶融しても連続した状態である。
このように、第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、第1挿入糸20が熱破断した状態であっても、第2挿入糸22が完全に熱破断することなく連続した状態であるため、編レース1の伸縮性を保持すると共に、糸抜けを防止することができる。よって、第1挿入糸20及び第2挿入糸22は、互いに融点が異なるポリウレタン融着糸の組み合せがよい。但し、第1挿入糸20と第2挿入糸22とは、どちらとも熱破断している状態、熱破断していない状態が混在していても良い。
【0045】
また、基本組織12は、開き目である鎖編み目と、閉じ目である鎖編み目とを含み、コース方向において規則的な位置の編み目が閉じ目となっている。基本組織12は、例えば、3コース以上21コース以下置き、具体的には3コース以上15コース以下置き、本例では9コース置きの位置の鎖編み目が閉じ目となっている。これは編レースの裁ち端からの糸のほつれ不良が長くなることを防ぎ、良製品を担保するためである。基本組織12は、任意の間隔の位置の鎖編み目を閉じ目とすることにより、基本組織12の閉じ目となる鎖編み目に挿入された挿入糸を拘束できるため、その結果として挿入糸の糸抜けを防止することができる。なお、3コース未満の周期で閉じ目を設ける場合に、鎖編組織全体が略閉じ目となるため糸抜け防止としては一定の効果があるが、硬く細い見た目になり、その結果風合いが変わってしまう虞がある。また21コース超える周期で閉じ目を設ける場合に、見た目や風合いは維持されるが、閉じ目の数が少ないため糸抜けを防止としての十分な効果が発揮されにくい虞がある。よって、基本組織12は、例えば、3コース以上21コース以下置きの鎖編み目が閉じ目となっている。
このように、編レース1は、隣り合う2つの鎖編組織12を横渡りして連結する構成とした、ラン止め(ほつれ防止機能)のある地組織2を採用せずとも、各挿入糸の糸抜けを防止することができる。よって、編レース1は、ラン止めのない地組織2を採用することにより、編レース1全体の透け感が増大される。
【符号の説明】
【0046】
1 柄模様入り編レース
2 地組織
4 透かし部
5 地模様
6 柄部
10 鎖編糸
12 基本組織
20 第1挿入糸
22 第2挿入糸
30 第3挿入糸
32 第4挿入糸