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特開2024-83318二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダー、その製造方法及びそれを含む二次電池分離膜
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  • 特開-二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダー、その製造方法及びそれを含む二次電池分離膜 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083318
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダー、その製造方法及びそれを含む二次電池分離膜
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/02 20060101AFI20240613BHJP
   C08F 6/04 20060101ALI20240613BHJP
   C08F 4/654 20060101ALI20240613BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20240613BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240613BHJP
【FI】
C08F10/02
C08F6/04
C08F4/654
H01M50/417
H01M50/443 C
H01M50/443 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208840
(22)【出願日】2023-12-11
(31)【優先権主張番号】10-2022-0171694
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522318173
【氏名又は名称】ハンファ トータルエナジーズ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANWHA TOTALENERGIES PETROCHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】103,Dokgot-2-ro, Daesan-eup, Seosan-si, Chungcheongnam-do 31900, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハン ジェ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】オー セ ホ
(72)【発明者】
【氏名】パク ウン ジン
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
5H021
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100CA01
4J100DA03
4J100DA16
4J100DA42
4J100EA09
4J100FA09
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA29
4J100GC00
4J100GC25
4J100JA43
4J128AA02
4J128AB02
4J128AC05
4J128BA01B
4J128BB01B
4J128BC15B
4J128CA16A
4J128CB05A
4J128CB23A
4J128CB44A
4J128DB02A
4J128EA01
4J128EB02
4J128EC01
4J128FA02
4J128FA09
4J128GA01
4J128GA04
4J128GA05
4J128GA09
4J128GA24
4J128GA26
4J128GB01
5H021BB13
5H021CC03
5H021EE04
5H021EE20
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH05
5H021HH07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】押出加工時に供給が円滑で押出加工性が向上し、未容融ゲルの形成が抑制される二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダー、その製造方法、及びそれを含む二次電池分離膜を提供する。
【解決手段】粒径500μm以上の巨大粒子1.0重量%以下及び粒径50μm以下の微粒子1.0重量%以下を含む二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダーとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径500μm以上の巨大粒子1.0重量%以下及び
粒径50μm以下の微粒子1.0重量%以下
を含む、二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダー。
【請求項2】
前記ポリエチレン樹脂パウダーの平均粒径は、100μm~200μmである、請求項1に記載の二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダー。
【請求項3】
前記ポリエチレン樹脂パウダーの粒径分布(SPAN)は、0.7~1.3である、請求項1に記載の二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダー。
【請求項4】
前記ポリエチレン樹脂パウダーの流動性は、12sec/100g~20sec/100gである、請求項1に記載の二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダー。
【請求項5】
前記ポリエチレン樹脂パウダーの高負荷溶融流れ指数(190℃、21.6kg)は、0.1g/10分~5.0g/10分である、請求項1に記載の二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダー。
【請求項6】
前記ポリエチレン樹脂パウダーの粘度平均分子量は、200,000g/mol~2,500,000g/molである、請求項1に記載の二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダー。
【請求項7】
前記ポリエチレン樹脂パウダーのかさ密度(bulk density)は、0.40g/cc~0.50g/ccであることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダー。
【請求項8】
ポリエチレン重合用触媒の存在下で、2kgf/cm~5kgf/cmの圧力、70℃~80℃の温度、及び2時間~3時間の滞留時間の条件でエチレンを重合してポリエチレン樹脂パウダーを製造する段階、及び
ふるいを用いて前記ポリエチレン樹脂パウダーから粒径及び分布が調節されたポリエチレン樹脂パウダーを得る段階を含み、
前記ポリエチレン重合用触媒は、
マグネシウム含有化合物、アルコール及び炭化水素溶媒を混合してマグネシウム含有化合物溶液を製造する段階、
前記マグネシウム含有化合物溶液と塩化金属とを反応させて触媒前駆体を製造する段階、
前記触媒前駆体を塩化金属及びカルボニル化合物と反応させて触媒を製造する段階、及び
前記触媒を炭化水素溶媒で洗浄する段階を含んで得られ、
前記カルボニル化合物は、下記化1または下記化2で表されるものである、二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダーの製造方法。
[化1]
(CO)R
[化2]
(CO)OR
(前記化1及び2において、前記R~Rはそれぞれ独立して、C2~C10の線状アルキル基、C6~C14のシクロアルキル基またはC6~C14のアリール基である。)
【請求項9】
前記洗浄する段階は、5回~8回洗浄するものである、請求項8に記載の二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダーの製造方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダーを含む、二次電池分離膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダー、その製造方法及びそれを含む二次電池分離膜に関する。
【背景技術】
【0002】
超高分子量ポリエチレン(very high molecular weight polyethylene,VHMWPE)は、粘度平均分子量が20万g/mol~250万g/molのポリエチレンで、高分子量に起因する高い剛性、耐化学性、耐摩耗性などの特徴を有している。このうち、優れた耐化学性及び電池的物性により、超高分子量ポリエチレンは、各種の電池分離膜(battery separator)として広く利用されている。
【0003】
このような優れた特性を有する超高分子量ポリエチレンは、米国公開特許US4972035Aに記載されているように高分子量のために加工が難しく、汎用ポリエチレンのようにペレット化できず、重合工程後に生成されたパウダー状で生産販売される。このとき、パウダーの粒子特性は、非常に重要である。パウダーの粒子特性のうち、粒径、粒度分布、かさ密度(bulk density)、微細粉末の含量などは、超高分子量ポリエチレンを製造する工程だけでなく、押出加工過程においても分離膜製品の品質に影響を与える重要な要素である。これらの超高分子量ポリエチレンを加工して分離膜を製造するためには、オイルのように押出機に注入され、オイルと混合した状態で溶融加工される。しかし、高分子量のためにオイルのように混合溶融した状態でも流動性が低く、加工するのに様々な困難性がある。
【0004】
近年、二次電池の容量増大のための電池分離膜の薄膜化傾向により、薄膜化による分離膜の機械的強度を増加させることが必須的に求められている。一般的に機械的強度を増加させるためには、分子量がより高い原料を使用することになるが、相対的に高い超高分子量ポリエチレンを使用することにより押出機における均一な溶融状態を確保することがさらに難しくなり、未溶融状態のパウダー粒子が最終成形体である分離膜にそのまま残留して出る場合が発生することがあり、この場合、未溶融ゲル(gel)が残存して分離膜の外観欠陥として現れることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一具現例は、押出加工時に供給(feeding)が円滑で押出加工性が向上し、未容融ゲル(gel)の形成が抑制される二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダーを提供する。
【0006】
他の一具現例は、前記二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダーの製造方法を提供する。
【0007】
さらに他の一具現例は、前記二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダーを含むことにより、高い機械的強度を有しながら、外観欠陥を改善した二次電池分離膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一具現例は、粒径500μm以上の巨大粒子1.0重量%以下及び粒径50μm以下の微粒子1.0重量%以下を含む二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダーを提供する。
【0009】
前記ポリエチレン樹脂パウダーの平均粒径は、100μm~200μmであってもよい。
【0010】
前記ポリエチレン樹脂パウダーの粒径分布(SPAN)は、0.7~1.3であってもよい。
【0011】
前記ポリエチレン樹脂パウダーの流動性は、12sec/100g~20sec/100gであってもよい。
【0012】
前記ポリエチレン樹脂パウダーの高負荷溶融流れ指数(190℃、21.6kg)は、0.1g/10分~5.0g/10分であってもよい。
【0013】
前記ポリエチレン樹脂パウダーの粘度平均分子量は、200,000g/mol~2,500,000g/molであってもよい。
【0014】
前記ポリエチレン樹脂パウダーのかさ密度(bulk density)は、0.40g/cc~0.50g/ccであってもよい。
【0015】
他の一具現例は、ポリエチレン重合用触媒の存在下で、2kgf/cm~5kgf/cmの圧力、70℃~80℃の温度、及び2時間~3時間の滞留時間の条件でエチレンを重合してポリエチレン樹脂パウダーを製造する段階、及びふるいを用いて前記ポリエチレン樹脂パウダーから粒径及び分布が調節されたポリエチレン樹脂パウダーを得る段階を含み、前記ポリエチレン重合用触媒は、マグネシウム含有化合物、アルコール及び炭化水素溶媒を混合してマグネシウム含有化合物溶液を製造する段階、前記マグネシウム含有化合物溶液と塩化金属を反応させて触媒前駆体を製造する段階、前記触媒前駆体を塩化金属及びカルボニル化合物と反応させて触媒を製造する段階、及び前記触媒を炭化水素溶媒で洗浄する段階を含めて得られ、前記カルボニル化合物は、下記化1または下記化2で表されるものである二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダーの製造方法を提供する。
【0016】
[化1]
(CO)R
【0017】
[化2]
(CO)OR
【0018】
(前記化1及び2において、前記R~Rはそれぞれ独立して、C2~C10の線状アルキル基、C6~C14のシクロアルキル基またはC6~C14のアリール基である。)
【0019】
前記洗浄する段階は、5~8回洗浄してもよい。
【0020】
さらに他の一具現例は、前記二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダーを含む二次電池分離膜を提供する。
【発明の効果】
【0021】
一具現例による二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダーを使用する場合、粒子の流動性が向上し、押出加工時の供給(feeding)が円滑で押出加工性が向上し、未溶融ゲル(gel)の形成が抑制される。これにより、二次電池分離膜の形成時に高い機械的強度を確保しながら外観欠陥(defect)を改善するので、二次電池分離膜などに有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施例1による二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダーの走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、具現例について、技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、具現例は、様々な異なる形態で具現されてもよく、ここで説明する具現例に限定されない。
【0024】
一具現例による二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダーは、所定範囲の平均粒径を有し、このとき、粒径500μm以上の巨大粒子と粒径50μm以下の微粒子をそれぞれ1.0重量%以下で含む。言い換えれば、一具現例によるポリエチレン樹脂パウダーは、粒径500μm以上の巨大粒子と粒径50μm以下の微粒子の残留含量がないか、または最小量のみを有する。
【0025】
このように、粒径及び分布が制御されたポリエチレン樹脂パウダーを使用する場合、粒子の流動性が向上し、押出機ホッパー(hopper)から押出機への注入が安定的であるため、押出加工時の供給(feeding)が円滑で押出加工性が向上し、未溶融ゲル(gel)の形成が抑制される。これにより、二次電池分離膜の形成時に高い機械的強度を確保しながら、外観欠陥(defect)が改善された二次電池分離膜が得られる。
【0026】
具体的には、前記巨大粒子の粒径は500μm以上であり、例えば、500μm~2000μm、500μm~1800μmまたは500μm~1400μmであってもよいが、これらの例示範囲に限定されるものではない。また、前記微粒子の粒径は50μm以下であり、例えば、1μm~50μm、5μm~50μmまたは10μm~50μmであってもよいが、これらの例示範囲に限定されるものではない。ポリエチレン樹脂パウダーは、前記粒径範囲を有する巨大粒子を1.0重量%以下で含み、例えば、0重量%~1.0重量%、0.001重量%~1.0重量%、0.01重量%~1.0重量%または0.1重量%~1.0重量%であってもよいが、これらの例示範囲に限定されるものではない。また、ポリエチレン樹脂パウダーは、前記粒径範囲を有する微粒子を1.0重量%以下で含み、例えば、0重量%~1.0重量%、0.001重量%~1.0重量%、0.01重量%~1.0重量%または0.1重量%~1.0重量%であってもよいが、これらの例示範囲に限定されるものではない。前記含量は、ポリエチレン樹脂パウダーの総重量を基準としたものである。前記各範囲内の粒径及び分布が制御されたポリエチレン樹脂パウダーを使用する場合、押出加工時の供給が円滑で押出加工性が向上して未溶融ゲルの形成を抑制することができ、これにより高い機械的強度を持ちながら、外観欠陥が改善された二次電池分離膜が得られる。
【0027】
前記ポリエチレン樹脂パウダーの平均粒径は、100μm~200μmであってもよく、例えば、100μm~150μmまたは110μm~140μmであってもよい。ポリエチレン樹脂パウダーの平均粒径が前記範囲内である場合、押出機ホッパーでの流動性が向上し、かさ密度が増加して押出不良を防止し、優れた生産性を確保しうる。
【0028】
前記ポリエチレン樹脂パウダーの粒径分布(SPAN)は、0.7~1.3であってもよく、例えば、0.7~1.1であってもよい。ポリエチレン樹脂パウダーの粒径分布(SPAN)が前記範囲内である場合、押出機内で均一な溶融特性を有することにより、未溶融ゲルの形成を防止し、ホッパーでの流動性も向上させることができる。
【0029】
前記粒径分布(SPAN)は、下記数1で定義でき、SPAN値の数が小さいほど分布が狭いことを意味する。
【0030】
[数1]
SPAN=(D(v,0.9)-D(v,0.1))/D(v,0.5)
【0031】
(前記数1において、D(v,0.5)は、粒径の下位50%のサンプルが示す平均粒径であり、D(v,0.9)とD(v,0.1)は、それぞれ粒径の下位90%と粒径の下位10%のサンプルが示す平均粒径である。)
【0032】
前記ポリエチレン樹脂パウダーの粒子の流動性は、12sec/100g~20sec/100gであってもよく、例えば、15sec/100g~18sec/100gであってもよい。ポリエチレン樹脂パウダーの粒子の流動性が前記範囲内である場合、押出加工時の供給が円滑で押出加工性が向上し、未溶融ゲルの形成を防止しうる。
【0033】
前記ポリエチレン樹脂パウダーの高負荷溶融流れ指数(190℃、21.6kg)は、0.1g/10分~5.0g/10分であってよく、例えば、0.2g/10分~3.0g/10分であってもよい。ポリエチレン樹脂パウダーの高負荷溶融流れ指数が前記範囲内である場合、押出加工時の供給が円滑で押出加工性が向上し、未溶融ゲルの形成を防止しうる。
【0034】
示差走査熱量計(DSC)法により測定される前記ポリエチレン樹脂パウダーの溶融温度は、130℃~140℃であってよく、例えば、130℃~135℃または132℃~135℃であってもよい。ポリエチレン樹脂パウダーの溶融温度が前記範囲内である場合、最終成形された多孔性フィルム、すなわち、分離膜の機械的強度に優れているとともに、押出加工性が向上する。
【0035】
前記ポリエチレン樹脂パウダーの粘度平均分子量は、200,000g/mol~2,500,000g/molであってもよく、例えば、200,000g/mol~2,000,000g/molまたは200,000g/mol~1,500,000g/molであってもよい。ポリエチレン樹脂パウダーの粘度平均分子量が前記範囲内である場合、最終成形された多孔性フィルム、すなわち、分離膜の機械的強度に優れているとともに、押出加工性が向上し、未溶融ゲルの形成を防止しうる。
【0036】
前記ポリエチレン樹脂パウダーのかさ密度(bulk density)は、0.40g/cc~0.50g/ccであってもよく、例えば、0.42g/cc~0.48g/ccであってもよい。ポリエチレン樹脂パウダーのかさ密度が前記範囲内である場合、最終成形された多孔性フィルム、すなわち、分離膜の機械的強度に優れているとともに、押出加工性が向上し、未溶融ゲルの形成を防止しうる。
【0037】
以下、他の一具現例によって前記二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダーの製造方法について説明する。
【0038】
一具現例による二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダーは、ポリエチレン重合用触媒を用いてポリエチレン樹脂を重合してパウダー状で得た後、粒径制御工程を経て得ることができる。
【0039】
ポリエチレン重合用触媒の製造方法
ポリエチレン重合用触媒は、以下の段階で製造されてもよい。
【0040】
第1の段階において、マグネシウム含有化合物、アルコール及び炭化水素溶媒を混合してマグネシウム含有化合物溶液を製造する。次に、第2の段階において、前記マグネシウム含有化合物溶液及び塩化金属を反応させて触媒前駆体を製造する。次に、第3の段階において、前記触媒前駆体を塩化金属及びカルボニル化合物と反応させて触媒を製造する。次に、第4の段階において、製造された触媒を炭化水素溶媒で洗浄する。
【0041】
前記第1の段階において、前記マグネシウム含有化合物は、マグネシウムハライド化合物、アルコキシマグネシウム化合物またはそれらの組み合わせを含んでもよい。前記マグネシウムハライド化合物としては、例えば、二塩化マグネシウム(MgCl)などの塩化マグネシウムが挙げられ、前記アルコキシマグネシウム化合物は、例えば、ジエトキシマグネシウムなどが挙げられる。
【0042】
前記アルコールは、その種類が特に限定されないが、例えば、C1~C20のアルコール、例えば、C4~C20のアルコール、例えば、ノマルブタノールであってもよい。
【0043】
前記炭化水素溶媒は、C1~C20の脂肪族炭化水素、C3~C20の脂環族炭化水素、C6~C30の芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素などであってもよい。前記脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ケロシンなどが挙げられる。前記脂環族炭化水素としては、例えば、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどが挙げられる。前記芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、シメンなどが挙げられる。前記ハロゲン化炭化水素としては、ジクロロプロパン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、四塩化炭素、クロロベンゼンなどが挙げられる。前記炭化水素溶媒としては、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素であってもよい。
【0044】
前記アルコールは、前記マグネシウム含有化合物1重量部に対して3重量部~7重量部で混合されてもよく、例えば、前記マグネシウム含有化合物1重量部に対して3重量部~5重量部で混合されてもよい。前記炭化水素溶媒は、前記マグネシウム含有化合物1重量部に対して9重量部~16重量部で混合されてもよく、例えば、前記マグネシウム含有化合物1重量部に対して10重量部~15重量部で混合されてもよい。
【0045】
前記マグネシウム含有化合物と前記アルコールの混合比率、及び前記マグネシウム含有化合物及び前記炭化水素溶媒の混合比率は、全マグネシウム含有化合物溶液の粘度を決定し、このような粘度は、触媒粒子の形成において粒子形態、サイズ、触媒内の気孔の特性を決定する役割を果たすことができる。
【0046】
前記第1の段階での反応は、前記マグネシウム含有化合物、炭化水素溶媒及びアルコールを混合して攪拌した後、30分~90分間60℃~70℃に昇温した後、1時間30分~2時間30分間維持するものであってもよい。
【0047】
前記第2の段階において前記塩化金属は、四塩化チタン、塩化ジルコニウム、塩化ハフニウムまたはそれらの組み合わせを含んでもよく、例えば、四塩化チタンを使用してもよい。
【0048】
前記第2の段階において前記塩化金属は、マグネシウム含有化合物溶液1重量部に対して3重量部~10重量部で使用されてもよく、例えば、前記マグネシウム含有化合物溶液1重量部に対して5重量部~10重量部で使用されてもよい。
【0049】
前記第2の段階での反応は、前記マグネシウム含有化合物溶液の温度を30℃~50℃に冷却した後、前記塩化金属を注入して攪拌した後、30分~90分間50℃~70℃に昇温し、30分~90分間熟成させるものであってもよい。
【0050】
このとき、前記マグネシウム含有化合物溶液と前記塩化金属の反応は、300rpm~400rpmの攪拌速度で行われてもよく、例えば、330rpm~370rpmの攪拌速度で行われてもよい。前記攪拌は、触媒粒子の形成において粒子形態、サイズ、触媒内の気孔の特性を決定する役割を果たすことができる。すなわち、前記範囲内の攪拌速度で行う場合、ポリエチレン重合用触媒の粒子形成において優れた粒子特性を有することができる。
【0051】
その後、遠心分離して上澄み液を除去すると、固体成分の触媒前駆体が得られる。
【0052】
前記第3の段階での反応は、前記触媒前駆体を塩化金属及びカルボニル化合物と反応させてポリエチレン重合用触媒を製造するもので、このとき、炭化水素溶媒をさらに含んで反応させることができる。
【0053】
前記塩化金属は、前記触媒前駆体1重量部に対して3重量部~10重量部で使用されてもよく、例えば、5重量部~10重量部で使用されてもよい。
【0054】
前記カルボニル化合物は、下記化1または下記化2で表される。
【0055】
[化1]
(CO)R
【0056】
[化2]
(CO)OR
【0057】
(前記化1及び2において、
前記R~Rは、それぞれ独立してC2~C10の線状アルキル基、C6~C14のシクロアルキル基、C6~C14のアリール基である。)
【0058】
前記カルボニル化合物は、例えば、前記化2で表されるものであってもよく、エチルベンゾエートであってもよい。
【0059】
前記カルボニル化合物は、前記触媒前駆体1重量部に対して0.1重量部~0.5重量部で使用されてもよい。
【0060】
前記第3の段階で使用される前記炭化水素溶媒は、その種類に制限はないが、例えば、ヘキサンなどのようなC1~C10の線状炭化水素溶媒であってもよく、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。
【0061】
前記第3の段階での反応は、前記触媒前駆体、前記炭化水素溶媒、前記塩化金属及び前記カルボニル化合物を混合した後、攪拌しながら30分~90分間60℃~80℃に昇温した後、1時間~3時間熟成させるものであってもよい。その後、遠心分離して上澄み液を除去すると、触媒が得られる。前記触媒は、マグネシウム担持チタン触媒であってもよい。
【0062】
次に、第4の段階において製造された触媒を炭化水素溶媒で洗浄してポリエチレン重合用触媒が得られる。
【0063】
このとき、製造された触媒を炭化水素溶媒で5回~8回、例えば、6回~7回の回数で洗浄してもよい。前記範囲内の回数で洗浄する場合、粒径及び分布が所定範囲内に調節されたポリエチレン樹脂パウダーを得るための工程において有用に使用されてもよい。
【0064】
前記触媒洗浄過程は、未反応物及び副反応物質を除去するだけでなく、触媒粒子を正しく形成しなかった微粉状の触媒粒子を除去することにより、重合過程で生じた微粒子を予め除去する過程である。ただし、この過程で固体触媒成分を沈めた後、上澄み液を除去するので、所望のサイズ以上に形成され、重合時にフレーク(flake)を形成する巨大触媒粒子は、除去しにくい場合がある。
【0065】
ポリエチレン樹脂パウダーの製造
前記ポリエチレン重合用触媒と共触媒である有機金属化合物を使用して重合反応を行うことにより、ポリエチレン樹脂パウダーが製造されてもよい。
【0066】
前記有機金属化合物は、MRnの一般式で表されるものであってもよい。前記Mは、周期律表第II族または第III族の金属、例えば、マグネシウム、カルシウム、ジンク、ボロン、アルミニウム、ガリウムなどが挙げられる。前記Rは、C1~C20のアルキル基、例えば、メチル、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシルなどが挙げられる。前記nは、金属成分の原子価を表す。
【0067】
具体的には、前記有機金属化合物は、C1~C6のアルキル基を少なくとも1つ有する有機金属化合物であってもよく、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムであってもよく、これらは単独または混合物として使用されてもよい。
【0068】
また、前記有機金属化合物は、C1~C6のアルキル基を少なくとも1つ有し、少なくとも1つのハロゲンまたはハイドライド置換基をさらに含む有機アルミニウム化合物であってもよく、例えば、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドまたはそれらの混合物を使用してもよい。
【0069】
これらのうち、前記有機金属化合物としては、例えば、トリエチルアルミニウムを使用してもよい。
【0070】
前記重合反応は、有機溶媒の不在下で気相またはバルク重合、または有機溶媒の存在下で液状スラリー重合の方法により可能である。これらの重合方法は、酸素、水、及び触媒毒として作用できるその他の化合物の不在下で行われる。
【0071】
前記有機溶媒は、C1~C20の脂肪族炭化水素、C3~C20の脂環族炭化水素、C6~C30の芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、またはそれらの混合物を使用してもよい。前記脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、n-オクタン、イソオクタンなどが挙げられる。前記脂環族炭化水素としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどが挙げられる。前記芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、エチルトルエン、n-プロピルベンゼン、ジエチルベンゼンなどが挙げられる。前記ハロゲン化炭化水素としては、クロロベンゼン、クロロナフタレン、о-ジクロロベンゼンなどが挙げられる。前記有機溶媒は、例えば、ヘキサンなどのC4~C10の脂肪族炭化水素であってもよい。
【0072】
前記重合反応は、内部温度調節装置、圧力調整装置及び攪拌機を備えた反応器で行われてもよい。具体的には、前記反応器内でポリエチレン重合用触媒、前記有機金属化合物である共触媒、前記有機溶媒、すなわち、不活性炭化水素溶媒、及びエチレンを反応させてポリエチレン樹脂を製造しうる。
【0073】
前記重合反応は、2kgf/cm~5kgf/cmの圧力、例えば、3kgf/cm~4kgf/cmの圧力、70℃~80℃の温度、例えば、76℃~78℃の温度、及び2時間~3時間の滞留時間の条件で行われてもよい。前記圧力、温度及び滞留時間の各範囲内の条件で重合反応が行われる場合、活性が増大してポリエチレン樹脂の所望の粒径が得られ、局部的な過重合発熱現象が防止され、パウダー粒子が均一になってかさ密度が増加し、生産性が向上する。すなわち、前記条件下で重合反応が行われる場合、一具現例による所定の範囲内で粒径及び分布が調節されたポリエチレン樹脂パウダーが得られ、これにより、押出加工時に供給が円滑で押出加工性が向上して未容融ゲルの形成が抑制され、高い機械的強度を持ちながら、外観欠陥が改善された二次電池分離膜が得られる。
【0074】
前記重合反応は、ポリエチレン樹脂の分子量分布を調節するために水素及びエチレンの濃度が異なるように調節された複数の直列連結された反応器で行われてもよい。
【0075】
これにより、重合された超高分子量ポリエチレン樹脂と前記不活性炭化水素溶媒と混合したスラリーを形成し、形成されたスラリーは、移送配管を介して脱ガス工程に移送される。その後、分離工程において前記不活性炭化水素溶媒と超高分子量ポリエチレンに分離され、最終的に乾燥工程を経て超高分子量ポリエチレン樹脂がパウダー状で製造される。
【0076】
製造されたポリエチレン樹脂パウダーは、粒子選別機を通過し、例えば、ふるいを使用して粒径が500μm以上の巨大粒子と粒径が50μm以下の微粒子のほとんどが除去されてもよい。すなわち、前記過程を通じて粒径及び分布が調節されたポリエチレン樹脂パウダーが得られる。前記巨大粒子と微粒子がほとんど除去された場合、ポリエチレン樹脂パウダーの流動性が向上し、押出加工時に未溶融ゲルの形成が抑制され、外観欠陥のない最終の二次電池分離膜が得られる。
【0077】
さらに他の一具現例によれば、前述したポリエチレン樹脂を含む二次電池分離膜を提供する。
【0078】
前記二次電池分離膜は、多孔性フィルム状であってもよく、当該技術分野において公知の方法によって製造してもよい。
【0079】
例えば、前記ポリエチレン樹脂パウダー、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤及び中和剤を均一に混合した後、二軸押出機を使用して加工してもよい。前記ポリエチレン樹脂パウダーは、ホッパーから定量供給機(feeder)を通じて一定量が投入され、投入量に比例してオイル(oil)が注入されてもよい。前記オイルは押出機の前端にオイルとパウダーの比率が5.5:4.5~7:3になるように注入されてもよい。
【0080】
前記押出機内の押出速度などを調節して延伸することにより、一定の厚さを有するシート状の多孔性フィルムを製造してもよい。この過程でオイルとポリエチレン樹脂は、相分離を起こしてフィルムに気孔を形成する。製造されたフィルムのオイルは、一例としてメチルクロライド(methylene chloride、MC)が入っている水槽を通過し、乾燥(drying)工程を経て最終の多孔性フィルムの分離膜を製造してもよい。
【0081】
さらに他の一具現例によれば、前記二次電池分離膜を含む二次電池を提供する。
【0082】
前記二次電池は、正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に位置し、前述したポリエチレン樹脂を用いて形成された分離膜を含む。
【0083】
前記二次電池の構造、材料及び製造方法はこの分野で広く知られているので、その説明は省略する。
【0084】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記の実施例は、本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これにより、本発明が制限されるものではない。また、ここに記載されていない内容は、この技術分野で熟練した者であれば十分に技術的に推論できるものであるため、その説明を省略する。
【0085】
実施例1
(ポリエチレン重合用触媒の製造)
第1の段階:機械式攪拌機を備えた1L反応器を窒素雰囲気に置換した後、二塩化マグネシウム(MgCl)25g、トルエン300ml、ノマルブタノール100mlを投入して攪拌しながら、温度を1時間65℃に昇温した後、2時間保持して均一なマグネシウムハライド化合物溶液を得た。
【0086】
第2の段階:前記製造されたマグネシウムハライド化合物溶液の温度を40℃に冷却した後、TiCl70mlを1時間ゆっくりと注入した。注入が完了すると、350rpmで撹拌し、反応器の温度を1時間60℃に昇温し、さらに1時間熟成した。すべての過程が完了すると、反応器を停止させて固体成分を完全に沈めて上澄み液を除去した後、反応器内の固体成分、すなわち、触媒前駆体を200mlのヘキサンを使用して洗浄した。
【0087】
第3の段階:前記製造された触媒前駆体にヘキサン200ml、TiCl60ml及びエチルベンゾエート8mlを注入した後、350rpmで撹拌しながら反応器の温度を1時間かけて70℃に昇温した後、2時間熟成させた。すべての過程が完了すると、反応器を停止させて固体成分を完全に沈めた後、上澄み液を除去した。
【0088】
第4の段階:前記製造された固体成分、すなわち、ポリエチレン重合用触媒をヘキサン200mlで6回洗浄した。
【0089】
(ポリエチレン樹脂パウダーの製造)
内部温度調節装置、圧力調整装置及び撹拌機を備えた150リットルのCSTR反応器を1つ使用した。エチレン3kg/hr、ヘキサン22.5kg/hr、及び前記製造されたポリエチレン重合用触媒を0.1kg/hr~0.2kg/hrの範囲内で活性によって連続的に注入し、220rpmで攪拌した。分子量調節のための水素は、高負荷溶融流れ指数(high load melt index,HLMI)を測定して注入量を調節して注入した。また、共触媒として11重量%のヘキサンに溶解したトリエチルアルミニウム(triethylaluminum)を使用した。反応器内の反応物は、70リットルになるように排出量及び液位を制御した。連続して排出されるヘキサンスラリーは、脱ガス化工程と分離工程を経てウェットケーキ(wet cake)状の超高分子量のポリエチレン樹脂を生産した。その後、連続式乾燥工程を経て粒子状を有する超高分子量のポリエチレン樹脂パウダーを生産した。
【0090】
このとき、重合反応は温度80℃、圧力3kgf/cm、及び滞留時間2.5時間で一定に維持して行われ、前記触媒と前記共触媒を注入してから2時間後にエチレンを注入した。重合活性度は、20kg/g(20kg-ポリエチレン/g-触媒)であった。前記重合活性度は、使用した触媒量当たりの生成されたポリエチレンの重量比で計算された。
【0091】
前記得られたポリエチレン樹脂パウダーは、500μmサイズのふるい目(35 MESH)を有するふるいを使用して粒径が500μm以上のパウダー粒子を除去した。その後、最終的に得られたポリエチレン樹脂パウダーの粒径が500μm以上のフレーク粒子、すなわち、巨大粒子の残留含量及び粒径が50μm以下の微粒子の残留含量を測定した。
【0092】
最終ポリエチレン樹脂パウダーの粒径分布度は、レーザ粒子分析器(Mastersizer X,Malvern Instruments)を用いて測定した。前記ポリエチレン樹脂パウダーの流動性は試料100gをホッパーに流し込んで、総量が流れ出るまでにかかる時間を測定して評価した。前記ポリエチレン樹脂パウダーの固有粘度は、ISO1628 Part3に従ってデカヒドロナフタレン(decahydronaphthalene)溶媒を使用して重合体を溶かして相対粘度を測定した後、この相対粘度値を濃度が0の場合の値で外挿して算出する。
【0093】
(二次電池用多孔性フィルムの成形)
前記製造された超高分子量ポリエチレン樹脂パウダーに一次酸化防止剤であるIganox1010 500ppm、二次酸化防止剤であるIganox1680 500ppm、及び中和剤であるCa-ステアレート2000ppmを入れてヘンシェルミキサー(Henschel mixer)を使用して均一に混合した後、二軸圧出機を使用して加工した。パウダーはホッパーから定量供給機(feeder)を通じて一定量が投入され、投入量に比例してオイル(oil)は押出機の前端にオイル及びパウダーの重量比が7:3になるように注入された。押出機は、L/D(length/diameter)が56であり、ダイの幅は400mmである。加工温度は、210℃で加工した。押出速度は0.65m/minであり、ダイ後端キャスティングロール(casting roll)を経てシート(sheet)の厚さを一定に調節することになり、その後、MDO(machine direction orientation)ユニットを経てロール速度を調節して6倍に延伸することになる。その後、TDO(transverse direction orientation)ユニットを経て横方向に4倍延伸することになる。最終延伸されたフィルムの厚さは、12μmであった。この過程でオイルと樹脂は相分離を起こし、フィルムに気孔を形成することになる。製造されたフィルムのオイルは、メチレンクロライド(methylene chloride,MC)が入っている水槽を通過する過程で除去され、フィルムは、乾燥(drying)工程を経て最終多孔性分離膜フィルムを完成した。
【0094】
フィルムは外観分析機器(カメラ)を用いて面積当たりの欠陥(defect)数を測定して数値化した。欠陥(defect)部分は位置を確認し、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)を用いて周辺の正常な気孔形成部と異なることを確認した。
【0095】
図1は、実施例1による二次電池分離膜用ポリエチレン樹脂パウダーの走査電子顕微鏡(SEM)写真である。図1を参考すると、実施例1によって製造されたポリエチレン樹脂パウダーの欠陥部分を示すが、これは後述する表1のように他の実施例及び比較例に対して欠陥部分が最も少ないことが分かる。
【0096】
実施例2
実施例1とポリエチレン重合用触媒の製造過程は同じである。実施例1で重合反応の圧力を3kgf/cmから4kgf/cmに変更して重合し、得られたポリエチレン樹脂パウダーを600μmサイズのふるい目(30 MESH)を有するふるいを使用して粒径が600μm以上のフレーク粒子を除去したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリエチレン樹脂パウダーを製造した。
【0097】
実施例3
実施例1のポリエチレン重合用触媒製造過程においてポリエチレン重合用触媒をヘキサン200mlで5回洗浄し、実施例1で重合反応の圧力を3kgf/cmから4kgf/cに変更し、温度を80℃から75℃に変更して重合し、得られたポリエチレン樹脂パウダーを600μmサイズのふるい目(30 MESH)を有するふるいを使用して粒径が600μm以上のフレーク粒子を除去したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリエチレン樹脂パウダーを製造した。
【0098】
比較例1
実施例1で得られたポリエチレン樹脂パウダーを1000μmサイズのふるい目(18 MESH)を有するふるいを使用して粒径が1000μm以上のフレーク粒子を除去したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリエチレン樹脂パウダーを製造した。
【0099】
比較例2
実施例1のポリエチレン重合用触媒製造過程でポリエチレン重合用触媒をヘキサン200mlで4回洗浄し、実施例1で得られたポリエチレン樹脂パウダーを1000μmサイズのふるい目(18 MESH)を有するふるいを使用して粒径が1000μm以上のフレーク粒子を除去したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリエチレン樹脂パウダーを製造した。
【0100】
比較例3
実施例1のポリエチレン重合用触媒製造過程でポリエチレン重合用触媒をヘキサン200mlで4回洗浄し、実施例1で得られたポリエチレン樹脂パウダーを1400μmサイズのふるい目(14 MESH)を有するふるいを使用して粒径が1400μm以上のフレーク粒子を除去したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリエチレン樹脂パウダーを製造した。
【0101】
評価:ポリエチレン樹脂パウダーの物性測定
前記実施例1~3及び比較例1~3で製造されたポリエチレン樹脂パウダーについて下記物性を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0102】
高負荷溶融流れ指数(HLMI)
ASTM D1238に従って190℃で21.6kg荷重で測定した。
【0103】
粘度平均分子量(Mv)
粘度平均分子量(Mv)をASTM D4020に従って固有粘性度[η]から計算した。高分子の場合、希薄濃度の溶液上で粘度が有用な情報を提供することができ、高分子の粘度を溶液の粘度と濃度で割った値を比粘度(specific viscosity)といい、高分子の濃度が0になるとき、比粘度の外挿値を固有粘度(intrinsic viscosity,IV)と定義する。直鎖状の高分子は、固有粘度値が高分子のサイズに主に影響を受けるため、分子量と高い相関性を有し、超高分子量ポリエチレンの場合には、下記マーゴリス方程式(margolies-equation)が幅広く使用されている。
【0104】
Mv=5.37x10x[η]1.49
【0105】
前記Mvは、粘度平均分子量であり(単位g/mol)、前記[η]は、固有粘度である(単位dL/g)。
【0106】
固有粘度(intrinsic viscosity,IV)
135℃のデカリン溶液で70分間溶解させた後、ISO1628-1に従って測定した。
【0107】
平均粒径及び粒径分布(SPAN)
ポリエチレン樹脂パウダーの平均粒径は、高分子粒子分析器(MALVERN MASTER SIZE X PARTICLE ANALYSER)を使用してISO13320-2に従って測定した。平均粒径はD(v,0.5)で、粒径分布(SPAN)は(D(v,0.9)-D(v,0.1))/D(v,0.5)で表した。ここで、D(v,0.5)は、粒径下位50%のサンプルが示す平均粒径であり、D(v,0.9)とD(v,0.1)は、それぞれ粒径下位90%と粒径下位10%のサンプルが示す平均粒径を意味する。粒径分布(SPAN)の数が小さいほど、分布が狭いことを意味する。
【0108】
かさ密度(bulkDensity,BD)
ASTM D1895-96に従って測定した。
【0109】
パウダー流動性
ISO 6186:1998に準じて試料の一定量をホッパーに流し込んだとき、総量が流れ出るまでにかかる時間を測定した後、測定された試料の重量で割って100g当たり時間(s)で表示した。
【0110】
未溶融ゲル(gel)
製造された多孔性分離膜をOCS社のfilm surface analyzer FSA-100を用いて測定した。ゲル(gel)欠陥(defect)は50μm以上のゲル(gel)から個数を数えて測定全体面積の平均値を算出した。
【0111】
【表1】
【0112】
前記表1を参考すると、一具現例による実施例1~3のポリエチレン樹脂パウダーは、比較例1~3の場合と異なり、粒径500μm以上の巨大粒子と粒径50μm以下の微粒子をすべて1.0重量%以下で含み、このような実施例1~3の場合、比較例1~3に対して成形フィルム内の欠陥(defect)数が大きく少ないことが分かる。
【0113】
具体的には、粒径500μm以上のフレーク粒子を除去した実施例1の場合、粒径600μm以上のフレーク粒子を除去した実施例2及び3よりも欠陥(defect)数が少ない、すなわち、非常に低い数値を示している。
【0114】
また、比較例1~3の場合、フレーク粒子を除去するメッシュのサイズを増加させることにより、粒径500μm以上のフレーク粒子の含量が大きく増加し、これにより成形された分離膜フィルムにおいて欠陥(defect)数が大きく増加することを示す。また、触媒製造過程において洗浄回数をさらに下げることにより、粒径50μm以下の微粒子の含量が増加し、パウダー流動性も悪くなることを示す。
【0115】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明及び添付図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、本発明の範囲に属することは当然である。
図1