IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディーエヌエフ カンパニー リミテッドの特許一覧

特開2024-83327アンチモニー含有薄膜蒸着用組成物およびそれを用いたアンチモニー含有薄膜の製造方法
<>
  • 特開-アンチモニー含有薄膜蒸着用組成物およびそれを用いたアンチモニー含有薄膜の製造方法 図1
  • 特開-アンチモニー含有薄膜蒸着用組成物およびそれを用いたアンチモニー含有薄膜の製造方法 図2
  • 特開-アンチモニー含有薄膜蒸着用組成物およびそれを用いたアンチモニー含有薄膜の製造方法 図3
  • 特開-アンチモニー含有薄膜蒸着用組成物およびそれを用いたアンチモニー含有薄膜の製造方法 図4
  • 特開-アンチモニー含有薄膜蒸着用組成物およびそれを用いたアンチモニー含有薄膜の製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083327
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】アンチモニー含有薄膜蒸着用組成物およびそれを用いたアンチモニー含有薄膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/40 20060101AFI20240613BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20240613BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240613BHJP
   C07F 9/90 20060101ALI20240613BHJP
   C23C 16/18 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C23C16/40
H01L21/312 A
H01L21/31 C
C07F9/90
C23C16/18
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024029121
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2022212475の分割
【原出願日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0189543
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0166443
(32)【優先日】2022-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514145604
【氏名又は名称】ディーエヌエフ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DNF Co. Ltd.
【住所又は居所原語表記】142 Daehwa-ro 132beon-gil, Daedeok-gu, Daejeon 306-802 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ヨン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】イム,ヨン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,サン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ビュン,テ ソク
(72)【発明者】
【氏名】リ,サン チャン
(72)【発明者】
【氏名】リ,サン イク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アンチモニー含有薄膜の前駆体として用いることができる新規なアンチモニー化合物を含むアンチモニー含有薄膜蒸着用組成物、およびそれを用いたアンチモニー含有薄膜の製造方法を提供する。
【解決手段】下記化学式1で表されるアンチモニー化合物を含む、薄膜蒸着用組成物とする。

(前記化学式1中、R~Rはそれぞれ独立して直鎖状または分岐状の(C1-C7)アルキルである。)
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるアンチモニー化合物を含む、アンチモニー含有薄膜蒸着用組成物。
【化1】
(前記化学式1中、
1~R5は、それぞれ独立して、直鎖状または分岐状の(C1-C7)アルキルである。)
【請求項2】
前記化学式1中、R1~R4は、それぞれ独立して、直鎖状の(C1-C7)アルキルであり、R5は分岐状の(C3-C7)アルキルである、請求項1に記載のアンチモニー含有薄膜蒸着用組成物。
【請求項3】
前記化学式1で表されるアンチモニー化合物は、下記化学式2で表されるものである、請求項1に記載のアンチモニー含有薄膜蒸着用組成物。
【化2】
(前記化学式2中、
11およびR12は、互いに独立して、直鎖状または分岐状の(C1-C7)アルキルであり;
5は、分岐状の(C3-C7)アルキルである。)
【請求項4】
5が分岐状の(C3-C5)アルキルである、請求項3に記載のアンチモニー含有薄膜蒸着用組成物。
【請求項5】
前記アンチモニー化合物が下記化合物から選択されるものである、請求項1に記載のアンチモニー含有薄膜蒸着用組成物。
【化3】
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載のアンチモニー含有薄膜蒸着用組成物を用いる、アンチモニー含有薄膜の製造方法。
【請求項7】
a)チャンバー内に取り付けられた基板の温度を30~500℃に維持するステップと、
b)基板に請求項1から5の何れか一項に記載のアンチモニー含有薄膜蒸着用組成物を接触させ、前記基板に吸着させるステップと、
c)前記アンチモニー含有薄膜蒸着用組成物が吸着された基板に反応ガスを注入し、アンチモニー含有薄膜を形成させるステップと、を含む、請求項6に記載のアンチモニー含有薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記反応ガスは、酸素(O2)、オゾン(O3)、酸素プラズマ、水素(H2)、水素プラズマ、水(H2O)、過酸化水素(H22)、二酸化窒素(NO2)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(N2O)、アンモニア(NH3)、二酸化炭素(CO2)、ギ酸(HCOOH)、酢酸(CH3COOH)、無水酢酸((CH3CO)2O)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項7に記載のアンチモニー含有薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記反応ガスは、50~1,000Wのプラズマを発生させて活性化させてから供給する、請求項7に記載のアンチモニー含有薄膜の製造方法。
【請求項10】
下記化学式1で表される、アンチモニー化合物。
【化4】
(前記化学式1中、
1~R5は、それぞれ独立して、直鎖状または分岐状の(C1-C7)アルキルである。)
【請求項11】
下記化学式2で表されるものである、請求項10に記載のアンチモニー化合物。
【化5】
(前記化学式2中、
11およびR12は、互いに独立して、直鎖状または分岐状の(C1-C7)アルキルであり;
5は、分岐状の(C3-C7)アルキルである。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンチモニー含有薄膜の前駆体として新規なアンチモニー化合物を含むアンチモニー含有薄膜蒸着用組成物、およびそれを用いたアンチモニー含有薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンチモニー(Antimony、Sb)含有薄膜は、優れた薄膜特性を有するため、絶縁膜、拡散防止膜、ハードマスク、エッチング停止層、シード層、スペーサー、金属間誘電物質および保護膜層、反射防止層などに使用可能であり、その応用分野が益々多様化している。特に、アンチモニー含有薄膜は、エッチング耐性に優れるため、EUVフォトリソグラフィ工程におけるハードマスクの次世代材料として脚光を浴びている。
【0003】
一方、素子の高性能化により、半導体回路が年を重ねるにつれて微細化している。半導体回路の微細化、アスペクト比の増加、および素子材料の多様化により、低温でも均一且つ薄い厚さを有するとともに、電気的特性およびエッチング耐性に優れた超微細薄膜を形成することができる技術が求められている。
【0004】
しかし、従来のアンチモニー含有薄膜の前駆体は、高温工程が伴われるため、プラスチック基板に適用することが困難であり、工程温度を低めようとすると、薄膜蒸着率および薄膜の純度が低下する恐れがあり、ステップカバレッジ、エッチング耐性、物理的および電気的特性が十分ではないという限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許公開第10-2009-0091107号(2008.05.15.)公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、高品質のアンチモニー含有薄膜を提供することができる、アンチモニー含有薄膜形成用組成物を提供する。
【0007】
また、本発明の一態様は、穏やかな反応条件でも高い薄膜蒸着率で薄膜の蒸着が可能であり、高品質のアンチモニー含有薄膜を高純度で製造することができるアンチモニー含有薄膜の製造方法を提供する。
【0008】
さらに、本発明の一態様は、アンチモニー含有薄膜の前駆体として有用に使用可能な新規な構造のアンチモニー化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、高品質のアンチモニー含有薄膜を製造することができるアンチモニー含有薄膜形成用組成物を提供するものであって、本発明の一態様に係るアンチモニー含有薄膜蒸着用組成物は、下記化学式1で表されるアンチモニー化合物を含んでもよい。
【0010】
【化1】
(上記化学式1中、
1~R5は、それぞれ独立して、直鎖状または分岐状の(C1-C7)アルキルである。)
【0011】
より好ましくは、上記化学式1中、R1~R4は、それぞれ独立して、直鎖状の(C1-C7)アルキルであり、R5は分岐状の(C3-C7)アルキルであってもよい。
【0012】
より好ましくは、上記化学式1で表されるアンチモニー化合物は、下記化学式2で表されるものであってもよい。
【0013】
【化2】
(上記化学式2中、
11およびR12は、互いに独立して、直鎖状または分岐状の(C1-C7)アルキルであり;
5は、分岐状の(C3-C7)アルキルである。)
【0014】
より好ましくは、上記化学式2中、R5は分岐状の(C3-C5)アルキルであってもよい。
【0015】
一態様に係る上記アンチモニー化合物は、下記化合物から選択されるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0016】
【化3】
【0017】
また、本発明の一態様に係るアンチモニー含有薄膜の製造方法は、
a)チャンバー内に取り付けられた基板の温度を30~500℃に維持するステップと、
b)基板に請求項1から5の何れか一項に記載のアンチモニー含有薄膜蒸着用組成物を接触させ、前記基板に吸着させるステップと、
c)前記アンチモニー含有薄膜蒸着用組成物が吸着された基板に反応ガスを注入し、アンチモニー含有薄膜を形成させるステップと、を含んでもよい。
【0018】
前記反応ガスは、酸素(O2)、オゾン(O3)、酸素プラズマ、水素(H2)、水素プラズマ、水(H2O)、過酸化水素(H22)、二酸化窒素(NO2)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(N2O)、アンモニア(NH3)、二酸化炭素(CO2)、ギ酸(HCOOH)、酢酸(CH3COOH)、無水酢酸((CH3CO)2O)、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0019】
前記反応ガスは、50~1,000Wのプラズマを発生させて活性化させてから供給してもよい。
【0020】
また、本発明の一態様は、高品質のアンチモニー含有薄膜の前駆体として使用可能な新規化合物を提供するものであって、前記化合物は、下記化学式1で表されるアンチモニー化合物であってもよい。
【0021】
【化4】
(前記化学式1中、
1~R5はそれぞれ独立して、直鎖状または分岐状の(C1-C7)アルキルである。)
【0022】
より好ましく、一態様に係る前記アンチモニー化合物は、下記化学式2で表されるものであってもよい。
【0023】
【化5】
(前記化学式2中、
11およびR12は、互いに独立して、直鎖状または分岐状の(C1-C7)アルキルであり;
5は、分岐状の(C3-C7)アルキルである。)
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様に係るアンチモニー含有薄膜形成用組成物は、保管および取り扱いが容易であるとともに、低い温度条件でも高い薄膜蒸着率で薄膜の蒸着が可能であり、高品質のアンチモニー含有薄膜を高純度で製造することができる。
【0025】
また、本発明の一態様に係るアンチモニー含有薄膜形成用組成物は、高い収率で高品質の薄膜を製造することができ、多様な産業分野に有用に適用することができる。
【0026】
特に、本発明のアンチモニー化合物は、EUVに対する光吸収率および光放出効果に優れるため、EUVフォトリソグラフィ工程で用いられるハードマスクとして非常に有用に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】製造例1で製造されたt-ブチルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーのTGA分析結果である。
図2】製造例1で製造されたt-ブチルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーの蒸気圧測定結果である。
図3】製造例2で製造されたイソプロピルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーのTGA分析結果である。
図4】製造例2で製造されたイソプロピルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーの蒸気圧測定結果である。
図5】製造例1および2で製造されたアンチモニー化合物を用いてシリコン基板上に形成されたライン/スペースパターンの走査型電子顕微鏡の画像写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施することができるように、本発明について詳細に説明する。但し、本発明は様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実現例に限定されない。また、特許請求の範囲により限定される保護範囲を制限しようとするものでもない。
【0029】
また、本発明の説明で用いられる技術用語および科学用語において、別に定義しない限り、この発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明において、本発明の要旨を不明瞭にする可能性のある公知機能および構成についての説明は省略する。
【0030】
本明細書で用いられる数値範囲は、下限値および上限値と、その範囲内の全ての値、定義される範囲の形態と幅で論理的に誘導される増分、二重限定された全ての値、および互いに異なる形態で限定された数値範囲の上限および下限の可能な全ての組み合わせを含む。本発明の明細書において別に定義しない限り、実験誤差または値の四捨五入により発生する可能性のある数値範囲以外の値も、定義された数値範囲に含まれる。
【0031】
本発明において別に定義しない限り、ある部分がある構成要素を「含む」とする場合、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また、明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈で別に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
【0032】
本明細書の用語「アルキル」は、1つの水素の除去により脂肪族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、直鎖状または分岐状アルキルの両方を含み得る。前記アルキルは、1~7個、具体的に1~5個、具体的に1~4個の炭素原子を有することができる。前記直鎖状アルキルは、一例として、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチルを含み、前記分岐状アルキルは、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチルなどを含むが、これに限定されない。
【0033】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0034】
本発明の一態様に係るアンチモニー含有薄膜蒸着用組成物は、特定の構造の前駆体化合物を含み、高品質のアンチモニー含有薄膜を提供することができる。
【0035】
具体的に、一態様に係る前記前駆体化合物は、下記化学式1で表されるアンチモニー化合物であってもよい。
【0036】
【化6】
(前記化学式1中、
1~R5は、それぞれ独立して、直鎖状または分岐状の(C1-C7)アルキルである。)
【0037】
特定の理論に拘束されるものではないが、前記化学式1で表されるアンチモニー化合物は、上記のような構造的特徴、例えば、2つのアミン基と1つのアルキル基を置換基として有することで、常温で液体状態で存在し、優れた反応性と揮発性を有することができる。これにより、一態様に係るアンチモニー含有薄膜蒸着用組成物は、保管および取り扱いが容易であるとともに、低い温度条件でも高い薄膜蒸着率で薄膜の蒸着が可能であり、高い純度と優れた耐久性を有する高品質のアンチモニー含有薄膜を提供することができる。
【0038】
また、一態様に係るアンチモニー含有薄膜形成用組成物から製造されたアンチモニー含有薄膜は、現在用いられている化学増幅レジスト(CAR、Chemically amplified resist)よりも小さいフィーチャサイズのパターンを形成するのに非常に有利である。CAR(Chemically amplified resist)は高い敏感度(sensitivity)を有するが、これらの典型的な元素構成(elemental makeup)であるO、F、S、Cが特定の波長でフォトレジストを過度に透明にし、その結果、敏感度を減少させるという欠点がある。
【0039】
また、CAR(Chemically amplified resist)は、小さいフィーチャサイズにおける粗さ(roughness)のイッシューによってeパターンの形成が困難であることがあり、部分的に酸触媒工程の本質に起因して、光速度(photospeed)が減少するにつれてLER(Line edge roughness)が増加するという欠点を有する。これに対し、本発明の一実施形態に係るアンチモニー化合物は、EUVに対する光吸収率および光放出効果に優れ、EUVフォトリソグラフィ工程で用いられるハードマスクとして非常に有用に使用可能である。
【0040】
具体的に、本発明の一実施形態に係る化学式1中、R1~R4は、それぞれ独立して、直鎖状の(C1-C7)アルキル、または直鎖状の(C1-C5)アルキル、または直鎖状の(C1-C3)アルキルであってもよく、例えば、メチル、エチル、またはn-プロピルであってもよい。具体的に、前記R1とR3は互いに同一であってもよく、R2とR4は互いに同一であってもよく、より具体的に、前記R1~R4は互いに同一であってもよい。
【0041】
また、本発明の一実施形態に係る化学式1中、前記R5は、分岐状の(C3-C7)アルキルであってもよく、例えば、前記R5は、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、またはイソペンチルであってもよい。
【0042】
前記化学式1で表されるアンチモニー化合物は、例えば、下記化学式2で表されるものであってもよい。
【0043】
【化7】
(前記化学式2中、
11およびR12は、互いに独立して、直鎖状または分岐状の(C1-C7)アルキルであり;
5は、分岐状の(C3-C7)アルキルである。)
【0044】
具体的に、前記化学式2中、R11およびR12は、互いに独立して、直鎖状の(C1-C7)アルキル、具体的に、直鎖状の(C1-C5)アルキル、より具体的に、直鎖状の(C1-C3)アルキルであってもよく、例えば、メチル、エチル、またはn-プロピルであってもよい。
【0045】
また、前記化学式2中、R5は、好ましくは、分岐状の(C3-C5)アルキルであってもよく、例えば、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、またはイソペンチルであってもよい。
【0046】
一態様に係る前記化学式1で表されるアンチモニー化合物は、上記のようなR5の分岐状アルキル基が官能基として導入されることで、アンチモニー含有薄膜蒸着用前駆体としてさらに優れた反応性および熱的安定性を有し、より高品質の薄膜を製造することができる。
【0047】
前記化学式1で表されるアンチモニー化合物は、例えば、下記化合物から選択されるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0048】
【化8】
【0049】
一態様に係るアンチモニー含有薄膜蒸着用組成物は、前記化学式1で表されるアンチモニー化合物を薄膜蒸着用前駆体として必ず含み、組成物中の前記化学式1で表される化合物の含量は、薄膜の成膜条件または薄膜の厚さ、薄膜の特性、薄膜の用途などを考慮して、当業者が認識できる範囲内で含まれてよい。
【0050】
また、本発明の他の態様は、前記アンチモニー含有薄膜蒸着用組成物を用いた、アンチモニー含有薄膜の製造方法を提供する。
【0051】
一態様に係るアンチモニー含有薄膜の製造方法は、前記化学式1で表されるアンチモニー化合物を前駆体として含む組成物を用いることで、低い温度および低いパワーでも高い蒸着率で高品質のアンチモニー含有薄膜を製造することができる。前記アンチモニー含有薄膜は、多様な用途、例えば、電子素子の製作において、絶縁膜、拡散防止膜、ハードマスク、エッチング停止層、シード層、スペーサー、反射防止層、金属間誘電物質および保護膜層などに用いられることができ、好ましくは、EUVUフォトリソグラフィ工程で用いられるハードマスクとして用いられることができるが、これに限定されるものではない。
【0052】
一態様に係るアンチモニー含有薄膜の製造方法において、薄膜の蒸着方法としては、当該分野において通常用いる方法であれば特に限定されないが、例えば、原子層蒸着法(ALD、atomic layer deposition)、化学気相蒸着法(CVD、Chemical vapor deposition)、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD、metal organic Chemical vapor deposition)、低圧化学気相蒸着法(LPCVD、low pressure Chemical vapor deposition)、プラズマ強化化学気相蒸着法(PECVD、plasma enhanced Chemical vapor deposition)、またはプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD、plasma enhanced atomic layer deposition)を用いてもよく、具体的に、ALDまたはCVDを用いてもよいが、これに限定されるものではない。
【0053】
一態様に係るアンチモニー含有薄膜の製造方法は、
a)チャンバー内に取り付けられた基板の温度を30~500℃に維持するステップと、
b)基板に前記本発明の一態様に係るアンチモニー含有薄膜蒸着用組成物を接触させ、前記基板に吸着させるステップと、
c)前記アンチモニー含有薄膜蒸着用組成物が吸着された基板に反応ガスを注入し、アンチモニー含有薄膜を形成させるステップと、を含んでもよい。
【0054】
より具体的に、前記アンチモニー含有薄膜の製造方法は、
a)チャンバー内に取り付けられた基板の温度を30~500℃に維持するステップと、
b)基板に前記本発明の一態様に係るアンチモニー含有薄膜蒸着用組成物を接触させ、前記基板に吸着させるステップと、
c)残留蒸着用組成物および副産物をパージするステップと、
d)前記アンチモニー含有薄膜蒸着用組成物が吸着された基板に反応ガスを注入し、アンチモニー含有薄膜を形成させるステップと、
e)残留反応ガスおよび副産物をパージするステップと、を含んでもよい。
【0055】
前記基板は、当該分野において通常用いるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、Si、Ge、SiGe、GaP、GaAs、SiC、SiGeC、InAs、およびInPのうち1つ以上の半導体材料を含む基板;SOI(Silicon On Insulator)基板;石英基板;またはディスプレイ用ガラス基板;ポリイミド(PI、polyimide)、ポリエチレンテレフタレート(PET、PolyEthylene Terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN、PolyEthylene Naphthalate)、ポリメチルメタクリレート(PMMA、Poly Methyl MethAcrylate)、ポリカーボネート(PC、PolyCarbonate)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエステル(Polyester)などの可撓性プラスチック基板;であってもよい。
【0056】
また、前記アンチモニー含有薄膜は、前記基板に直ちに薄膜を形成することの他に、前記基板と前記アンチモニー含有薄膜との間に、多数の導電層、誘電層、または絶縁層などがさらに形成されてもよい。
【0057】
一例として、前記基板の温度は、30~500℃、または30~300℃、または50~200℃に調節されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0058】
一例として、前記反応ガスは、50~1,000W、または100~800W、または400~600Wのプラズマを発生させて活性化させてから供給されてもよい。
【0059】
すなわち、一態様に係るアンチモニー含有薄膜の製造方法は、前記化学式1の化合物を前駆体として用いることで、低い温度と低いプラズマの発生でも薄膜を効果的に製造することができる。
【0060】
前記反応ガスは、前記アンチモニー含有薄膜蒸着用組成物に含まれているアンチモニー化合物のリガンドを除去し、(Sb-O)原子層を形成させることができる。
【0061】
前記反応ガスの種類は、該当分野で通常用いるものであれば特に限定されるものではないが、一例として、酸素(O2)、オゾン(O3)、酸素プラズマ、水素(H2)、水素プラズマ、水(H2O)、過酸化水素(H22)、二酸化窒素(NO2)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(N2O)、アンモニア(NH3)、二酸化炭素(CO2)、ギ酸(HCOOH)、酢酸(CH3COOH)、無水酢酸((CH3CO)2O)、またはこれらの組み合わせであってもよい。パージ用ガスは、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、およびヘリウム(He)、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0062】
一態様に係るアンチモニー含有薄膜の製造方法において、目的とする薄膜の構造または熱的特性によって蒸着条件が調節されることができ、一態様に係る蒸着条件としては、前記化学式1の化合物を含むアンチモニー含有薄膜蒸着用組成物の投入流量、反応ガス、キャリヤガスの投入流量、圧力、RFパワー、基板温度などが挙げられる。非限定的な例として、アンチモニー含有薄膜蒸着用組成物の投入流量は10~1000cc/min、キャリヤガスは10~1000cc/min、反応ガスの流量は1~1500cc/min、圧力は0.5~10torr、RFパワーと基板温度は上述のとおりである。
【0063】
また、本発明のさらに他の態様は、アンチモニー含有薄膜の前駆体として使用可能な新規化合物を提供する。具体的に、前記新規化合物は、下記化学式1で表されるアンチモニー化合物であってもよい。
【0064】
【化9】
(前記化学式1中、
1~R5は、それぞれ独立して、直鎖状または分岐状の(C1-C7)アルキルである。)
【0065】
特定の理論に拘束されるものではないが、前記化学式1で表されるアンチモニー化合物は、上記のような構造的特徴、例えば、2つのアミン基と1つのアルキル基を置換基として有することで、常温で液体状態で存在し、優れた反応性と揮発性、そして優れた熱安定性を有することができる。これにより、前記化学式1で表されるアンチモニー化合物は、保管および取り扱いが容易であるとともに、アンチモニー含有薄膜蒸着用組成物に適用した場合に、優れた薄膜蒸着速度で高純度の薄膜を製造することができる。
【0066】
具体的に、前記R1~R4は、それぞれ独立して、直鎖状の(C1-C7)アルキル、好ましく直鎖状の(C1-C5)アルキルであってもよく、より具体的に、直鎖状の(C1-C3)アルキルであってもよく、例えば、メチルまたはエチルであってもよい。具体的に、前記R1とR3は互いに同一であってもよく、R2とR4は互いに同一であってもよく、より具体的に、前記R1~R4は互いに同一であってもよい。
【0067】
また、本発明の一実施形態に係る化学式1中、前記R5は分岐状の(C3-C5)アルキルであってもよく、例えば、前記R5は、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、またはイソペンチルであってもよい。
【0068】
前記化学式1で表されるアンチモニー化合物は、例えば、下記化学式2で表されるものであってもよい。
【0069】
【化10】
(前記化学式2中、
11およびR12は、互いに独立して、直鎖状または分岐状の(C1-C7)アルキルであり;
5は、分岐状の(C3-C7)アルキルである。)
【0070】
具体的に、前記化学式2中、R11およびR12は、互いに独立して、直鎖状の(C1-C7)アルキル、または直鎖状の(C1-C5)アルキル、または直鎖状の(C1-C3)アルキルであってもよく、例えば、メチルまたはエチルであってもよい。また、前記化学式2中、R5は、例えば、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、またはイソペンチルであってもよい。
【0071】
前記化学式1で表されるアンチモニー化合物は、例えば、下記化合物から選択されるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0072】
【化11】
【0073】
以下、一態様に係る前記化学式1で表されるアンチモニー化合物の製造方法について具体的に説明するが、通常の当業者が認識できる以外の方法でも合成可能であることはいうまでもない。また、ここで用いられる有機溶媒は制限されず、反応時間と温度も、発明の核心から外れない範囲内で変更可能であることはいうまでもない。
【0074】
一態様に係る前記アンチモニー化合物の製造方法は、(A)下記化学式11で表される化合物を、下記化学式12および化学式13で表される化合物と反応させてトリスジアルキルアミノアンチモニー化合物を製造するステップと、(B)前記トリスジアルキルアミノアンチモニー化合物を、下記化学式14または化学式15で表される化合物と反応させて前記化学式1のアンチモニー化合物を製造するステップと、を含んでもよい。
【0075】
【化12】
【0076】
【化13】
【0077】
【化14】
【0078】
【化15】
【0079】
【化16】
(前記化学式11~15中、
1~R5の定義は上述のとおりであり;
1およびX2は、それぞれ独立して、ハロゲンであり;
1は、アルカリ金属であり;
M2は、アルカリ土金属である。)
【0080】
一態様に係る製造方法で用いられる溶媒は通常の有機溶媒であり、1,4-ジオキサン(1,4-dioxane)、ジクロロメタン(DCM)、ジクロロエタン(DCE)、トルエン(Toluene)、アセトニトリル(MeCN)、ニトロメタン(nitromethane)、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、エーテル(Ether)、n-ヘキサン(Hexane)、およびクロロベンゼン(CB)から選択される1つまたは2つ以上であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0081】
一態様に係る前記ステップ(A)は、-20~0℃で1時間~10時間、具体的に、-10~0℃で1~5時間行われることができるが、これに制限されず、反応物質、溶媒の種類および使用量によって変更され得る。また、一例として、前記化学式13および14中、M1はLiであってもよい。
【0082】
一態様に係る前記ステップ(B)は、-30~0℃で1時間~10時間、具体的に、-20~-10℃で1~5時間行われることができるが、これに制限されず、反応物質、溶媒の種類および使用量によって変更され得る。また、一例として、前記化学式15中、M2はMgであってもよい。
【0083】
以下、実施例により上述の実現例をさらに詳細に説明する。但し、下記の実施例は説明の目的のためのものにすぎず、権利範囲を制限するものではない。
【0084】
以下、実施例の物性は次のように測定した。
【0085】
1)厚さ
エリプソメータ(Ellipsometer、OPTI-PROBE 2600、THERMA-WAVE)を用いてアンチモニー含有薄膜の厚さを測定した。
【0086】
2)熱分解温度(Td
熱重量分析(thermogravimetric analysis、TGA)法を用いた。前記TGA法は、分析対象試料を10℃/分の速度で500℃まで加温させながら、1.5bar/分の圧力で窒素気体の注入下で測定した。
【0087】
[製造例1]t-ブチルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーの製造
【0088】
【化17】
【0089】
500mLのフラスコにn-ブチルリチウム(n-Butyllithium、2.3M solution in n-Hexane)169ml(0.41mol)を投入し、次いで、n-ヘキサン(n-Hexane)を300ml投入して撹拌した。前記混合物の内温を-10℃に維持し、ジメチルアミン(Dimethylamine)19g(0.41mol)を徐々に投入した後、常温(25℃)で2時間撹拌してリチウム(ジメチルアミン)(Li(Dimethylamine))を合成した。
【0090】
1Lのフラスコにアンチモニートリクロリド(SbCl3)30g(0.13mol)を投入し、次いで、エーテル(Ether)を300ml投入した後、内温を-10℃に維持して撹拌した。前記フラスコに、準備されたリチウム(ジメチルアミン)21gを徐々に投入し、常温で4時間撹拌してトリスジメチルアミノアンチモニーを合成した。合成後にフィルタによりリチウムクロリド(LiCl)を除去し、真空で溶媒を除去した後、ヘキサン300mLを投入し、内温を-20℃に維持して撹拌した。
【0091】
前記フラスコにt-ブチルマグネシウムクロリド(t-butylmagnesiumchloride、2.0M solution in Ether)65ml(0.13mol)を内温を-20℃に維持して徐々に投入し、常温で4時間撹拌した。反応を完了させた後、減圧下で溶媒および副産物を除去した。その後、30℃の温度および0.4Torrの圧力下で精製することで、t-ブチルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーを15g合成した。
1H-NMR(C6D6): δ 2.78(s, 12H), δ 1.19(s, 9H)
【0092】
[製造例2]イソプロピルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーの製造
【0093】
【化18】
【0094】
前記製造例1において、t-ブチルマグネシウムクロリドに代えてイソプロピルリチウム(Isopropyllithium、0.7M solution in Pentane)186ml(0.13mol)を使用したことを除き、同様に行ってイソプロピルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーを14g得た。
1H NMR (C6D6): δ 2.85(s, 12H), δ 1.80(st, 1H)δ 1.18(d,6H)
【0095】
図1は製造例1で製造されたt-ブチルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーのTGA分析結果を示したものである。図1を参照すると、製造例1のアンチモニー化合物は、約120℃で単一蒸発段階を有することが分かり、500℃での残渣質量(residue mass)が0.9%と確認されたことから、速い気化特徴を示し、熱分解なしに99%以上気化されることが分かる。かかる結果から、製造例1のアンチモニー化合物が非常に優れた熱的安定性を有することが分かる。
【0096】
図2は、製造例1で製造されたt-ブチルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーの蒸気圧特性を確認するために、蒸気圧を測定した結果である。
【0097】
図3は、製造例2で製造されたイソプロピルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーのTGA分析結果を示したものである。図3を参照すると、製造例2のアンチモニー化合物は、約95℃で単一蒸発段階を有することが分かり、500℃での残渣質量(residue mass)が0.2%と確認されたことから、速い気化特徴を示し、熱分解なしに99%以上気化されることが分かる。かかる結果から、製造例2のアンチモニー化合物が非常に優れた熱的安定性を有することが分かる。
【0098】
図4は、製造例2で製造されたイソプロピルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーの蒸気圧特性を確認するために、蒸気圧を測定した結果である。
【0099】
[実施例1]
プラズマ強化原子層蒸着法(Plasma Enhanced Atomic Layer Deposition)により酸化アンチモニー薄膜を製造した。前駆体としては、製造例1で製造されたt-ブチルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーと製造例2で製造されたイソプロピルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーをそれぞれ使用し、反応ガスとしては酸素ガスを使用した。
【0100】
酸化アンチモニー薄膜が形成されるべき基板としてシリコン基板を使用し、シリコン基板は蒸着チャンバー内に移送し、下記表1に記載の温度で一定に維持した。
【0101】
前駆体が充填されたステンレス鋼製のバブラータイプのキャニスタは、表1に記載の一定の前駆体の蒸気圧となるように温度を維持した。蒸気化された前駆体はアルゴンガスを移送気体としてチャンバー内に移送され、シリコン基板に吸着された。その後、アルゴンガスを用いてパージ工程を実施した。反応ガスである酸素ガスを用いて、下記表1に記載の一定のプラズマパワーにて反応工程を実施した。また、反応副産物を除去するために、アルゴンガスを用いてパージ工程を実施した。上記のような原子層蒸着工程を1サイクルとし、一定のサイクルを繰り返して酸化アンチモニー薄膜を形成した。詳細な評価条件および結果は表1のとおりである。
【0102】
また、酸化アンチモニー薄膜の組成はX線光電子分光法により分析したが、炭素と窒素が検出されず、純粋な酸化アンチモニー薄膜が得られることを確認した。
【0103】
【表1】
【0104】
[実施例2]
原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition)により酸化アンチモニー薄膜を製造した。前駆体としては、製造例1で製造されたt-ブチルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーと製造例2で製造されたイソプロピルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーをそれぞれ使用し、反応ガスとしてはオゾンガスを使用した。
【0105】
酸化アンチモニー薄膜が形成されるべき基板としてシリコン基板を使用し、シリコン基板は蒸着チャンバー内に移送し、下記表2に記載の一定の温度に維持した。
【0106】
前駆体が充填されたステンレス鋼製のバブラータイプのキャニスタは、下記表2に記載の一定の前駆体の蒸気圧となるように温度を維持した。蒸気化された前駆体はアルゴンガスを移送気体としてチャンバー内に移送され、シリコン基板に吸着された。その後、アルゴンガスを用いてパージ工程を実施し、反応ガスであるオゾンガスを用いて反応工程を実施した。また、反応副産物を除去するために、アルゴンガスを用いてパージ工程を実施した。上記のような原子層蒸着工程を1サイクルとし、一定のサイクルを繰り返して酸化アンチモニー薄膜を形成した。詳細な評価条件および結果は表2のとおりである。
【0107】
また、酸化アンチモニー薄膜の組成はX線光電子分光法により分析したが、炭素と窒素が検出されず、純粋な酸化アンチモニー薄膜が得られることを確認した。
【0108】
【表2】
【0109】
[実施例3]
プラズマ強化原子層蒸着法(Plasma Enhanced Atomic Layer Deposition)によりアンチモニー含有薄膜を製造した。前駆体としては、製造例1で製造されたt-ブチルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーと製造例2で製造されたイソプロピルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーをそれぞれ使用し、反応ガスとしては二酸化炭素ガスを使用した。
【0110】
アンチモニー含有薄膜が形成されるべき基板としてシリコン基板を使用し、シリコン基板は蒸着チャンバー内に移送し、下記表3に記載の一定の温度に維持した。
【0111】
前駆体が充填されたステンレス鋼製のバブラータイプのキャニスタは、下記表3に記載の一定の前駆体の蒸気圧となるように温度を維持した。蒸気化された前駆体はアルゴンガスを移送気体としてチャンバー内に移送され、シリコン基板に吸着された。その後、アルゴンガスを用いてパージ工程を実施した。反応ガスである二酸化炭素ガスを用いて、下記表3に記載の一定のプラズマパワーにて反応工程を実施した。また、反応副産物を除去するために、アルゴンガスを用いてパージ工程を実施した。上記のような原子層蒸着工程を1サイクルとし、一定のサイクルを繰り返してアンチモニー含有薄膜を形成した。詳細な評価条件および結果は表3のとおりである。
【0112】
また、アンチモニー含有薄膜の組成はX線光電子分光法により分析したが、炭素が10%以上含有された薄膜であることが確認された。
【0113】
【表3】
[実施例4]
化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition)によりアンチモニー含有薄膜を製造した。前駆体としては、製造例1で製造されたt-ブチルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーと製造例2で製造されたイソプロピルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーをそれぞれ使用し、反応ガスとしては水蒸気を使用した。
【0114】
アンチモニー含有薄膜が形成されるべき基板としてシリコン基板を使用し、シリコン基板は蒸着チャンバー内に移送し、下記表4に記載の一定の温度に維持した。
【0115】
前駆体が充填されたステンレス鋼製のバブラータイプのキャニスタは、下記表4に記載の一定の前駆体の蒸気圧となるように温度を維持した。蒸気化された前駆体はアルゴンガスを移送気体としてチャンバー内に移送された。また、反応ガスである水蒸気は、水が充填されたステンレス鋼製のバブラータイプのキャニスタを下記表4に記載の一定の蒸気圧となるように温度を維持し、アルゴンガスを移送気体としてチャンバー内に移送した。また、工程圧力は、スロットル弁を用いて、チャンバーの圧力が一定に維持されるように調節した。このように、前記前駆体と水蒸気を用いて化学気相蒸着方法を行い、アンチモニー含有薄膜を形成した。詳細な評価条件および結果は表4のとおりである。
【0116】
また、アンチモニー含有薄膜の組成はX線光電子分光法により分析したが、炭素が10%以上含有された薄膜であることが確認された。
【0117】
【表4】
【0118】
<アンチモニー含有薄膜のパターニング>
[実施例5]
実施例3で製造したアンチモニー含有薄膜を用いてアンチモニー含有薄膜のパターニングを実施した。
【0119】
24nmのピッチで1:1ライン-スペースフィーチャを形成するために、極紫外線(EUV、extreme ultraviolet)リソグラフィ装置にて約76mJ/cm2の露出で、EUVを用いてパターニングした。次に、3分間約150度で焼成し、2-ヘプタノンで約15秒間現像後、同一の溶媒で水洗した。
【0120】
図5は、24nmのピッチでシリコン基板上に形成されたライン/スペースパターンの走査型電子顕微鏡の画像である。図5の(a)は、製造例1のt-ブチルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーを使用したパターンの画像であり、(b)は、製造例2のイソプロピルビス(ジメチルアミノ)アンチモニーを使用したパターンの画像である。
【0121】
パターンの画像から見られるように、24nmの狭いピッチでも1:1のライン/スペースパターンが均一に形成されていることが確認できる。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-02-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、アンチモニー化合物。
【化1】
(前記化学式1中、
~Rは、それぞれ独立して、直鎖状または分岐状の(C1-C7)アルキルである。)
【請求項2】
前記化学式1中、R~Rは、それぞれ独立して、直鎖状の(C1-C7)アルキルであり、Rは分岐状の(C3-C7)アルキルである、請求項1に記載のアンチモニー化合物
【請求項3】
記化学式2で表されるものである、請求項に記載のアンチモニー化合物
【化2】
(前記化学式2中、
11およびR12は、互いに独立して、直鎖状または分岐状の(C1-C7)アルキルであり、Rは、分岐状の(C3-C7)アルキルである。)
【請求項4】
が分岐状の(C3-C5)アルキルである、請求項3に記載のアンチモニー化合物
【請求項5】
記化合物から選択されるものである、請求項1に記載のアンチモニー化合物
【化3】
【請求項6】
(A)下記化学式11で表される化合物を、下記化学式12および化学式13で表される化合物と反応させてトリスジアルキルアミノアンチモニー化合物を製造するステップと、(B)前記トリスジアルキルアミノアンチモニー化合物を、下記化学式14または化学式15で表される化合物と反応させて下記化学式1のアンチモニー化合物を製造するステップと、を含む、アンチモニー化合物の製造方法。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
(前記化学式11~15中、
~R は請求項1での定義のとおりであり、X およびX は、それぞれ独立して、ハロゲンであり、
は、アルカリ金属であり、
は、アルカリ土金属である。)
【請求項7】
前記化学式1中、R ~R は、それぞれ独立して、直鎖状の(C1-C7)アルキルであり、R は分岐状の(C3-C7)アルキルである、請求項6に記載のアンチモニー化合物の製造方法。
【請求項8】
前記R とR は互いに同一であり、R とR は互いに同一である、請求項6に記載のアンチモニー化合物の製造方法。
【請求項9】
前記R ~R は互いに同一である、請求項6に記載のアンチモニー化合物の製造方法。
【請求項10】
前記アンチモニー化合物が下記化合物から選択されるものである、請求項6に記載のアンチモニー化合物の製造方法。
【化10】