(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083334
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】エネルギー回収方法及び装置
(51)【国際特許分類】
F01N 5/02 20060101AFI20240614BHJP
F01N 1/14 20060101ALI20240614BHJP
F03D 9/39 20160101ALI20240614BHJP
【FI】
F01N5/02 F
F01N1/14
F03D9/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197556
(22)【出願日】2022-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000199887
【氏名又は名称】川重冷熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107283
【弁理士】
【氏名又は名称】塩出 洋三
(72)【発明者】
【氏名】白尾 泰
(72)【発明者】
【氏名】尾野 篤志
(72)【発明者】
【氏名】久保 卓資
【テーマコード(参考)】
3G004
3H178
【Fターム(参考)】
3G004AA06
3G004DA01
3H178AA18
3H178AA36
3H178AA43
3H178BB31
3H178BB90
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】排ガスと空気をミキシングすることで廃熱を直接利用し熱回収の効率を向上させることができ、旋回流によってドレンはダクト壁面を伝って落ちるため装置を保護することができ、高温ドレンを滞留させて空気予熱に利用することができ、ダクト合流構造とすることで比較的容易に増設が可能となり、排ガス流路を広くとることができるため排気圧損を増加させずに設置することが可能となる方法及び装置を提供する。
【解決手段】下方から上方に上昇する空気流を動力源とする動力回収装置12を地上付近に設置し、この動力回収装置12の上部に空気流が上昇する筒状ダクト10を設け、筒状ダクト10の側面下方から空気より高温の排ガスをダクト内に導入して排ガスと空気とを混合し、排ガスと空気との温度差及び密度差により上昇気流を発生させ、この上昇気流の流動力と筒状ダクト10への排ガス導入による動圧を利用することで、前記動力回収装置12からエネルギーを回収する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方から上方に上昇する空気流を動力源とする動力回収装置を地上付近に設置し、この動力回収装置の上部に空気流が上昇する筒状ダクトを設け、筒状ダクトの側面下方から空気より高温の排ガスをダクト内に導入して排ガスと空気とを混合し、排ガスと空気との温度差及び密度差により上昇気流を発生させ、この上昇気流の流動力と筒状ダクトへの排ガス導入による動圧を利用することで、前記動力回収装置からエネルギーを回収することを特徴とするエネルギー回収方法。
【請求項2】
地上付近に設置された下方から上方に上昇する空気流を動力源とする動力回収装置と、動力回収装置の上部に設けられた空気流が上昇する筒状ダクトとを備え、この筒状ダクトの側面下方には廃熱源からの排ガスを導入する排ガス入口を有し、筒状ダクトの下部には排ガスから発生するドレンを回収する排ガスドレン抜きを有し、排ガス入口から空気より高温の排ガスをダクト内に導入して排ガスと空気とを混合し、排ガスと空気との温度差及び密度差により上昇気流を発生させ、この上昇気流の流動力と筒状ダクトへの排ガス導入による動圧とを利用することで、前記動力回収装置からエネルギーを回収するようにしたことを特徴とするエネルギー回収装置。
【請求項3】
下方から上方に上昇する空気流を動力源とし、動力回収装置を直接排ガスに触れないようにすることで、温度環境や腐食成分、ダストなどによる装置の損傷を防止する請求項2に記載のエネルギー回収装置。
【請求項4】
筒状ダクトの排ガス入口を旋回ばね構造とすることで、旋回流を伴った上昇流を発生させて排ガスと空気の攪拌を行う請求項2又は3に記載のエネルギー回収装置。
【請求項5】
筒状ダクトの排ガス入口に斜め上方向に向けた排ガス取込ノズルを設けることで、旋回流を伴った上昇流を発生させて排ガスと空気の攪拌を行う請求項2又は3に記載のエネルギー回収装置。
【請求項6】
廃熱源に接続された既設の煙突を分岐し、煙突の分岐部分と筒状ダクトの排ガス入口とを接続することで、既存設備に増設するようにした請求項2、3、4又は5に記載のエネルギー回収装置。
【請求項7】
廃熱源に接続された既設の煙突の一部と筒状ダクトを置き換えることで、既存設備に増設するようにした請求項2、3、4又は5に記載のエネルギー回収装置。
【請求項8】
廃熱源に接続された既設の煙突を分岐したバイパス管の一部と筒状ダクトを置き換えることで、既存設備に増設するようにした請求項2、3、4又は5に記載のエネルギー回収装置。
【請求項9】
動力回収装置として風力発電装置を用いる請求項2~8のいずれかに記載のエネルギー回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気の流れを動力として回収することができるエネルギー回収方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業分野では各種廃熱が多く存在しているが、廃熱量が最も多いのは100~200℃程度と比較的低い温度域であると言われている。この温度域の廃熱を熱交換器などを用いて熱回収する場合には、熱源温度が低いことで伝熱面積が大きくなり大型の熱交換器が必要となる。また、廃熱回収は蒸気や温水、熱媒油などの熱媒体により行われることが主流であるが、熱媒体での廃熱回収利用では、熱媒体で回収した熱量は熱媒体自身に蓄えられるため、廃熱回収により温度や圧力などのエネルギーレベルの上がった熱媒体を熱利用プロセスまで輸送する必要があり、熱媒体輸送のための配管敷設工事などが必要となる。そのため、100~200℃程度と比較的低い温度域からの廃熱回収では、廃熱回収熱交換器及び配管敷設などの廃熱回収システムが大掛かりな追加設備となることで、廃熱回収システムの導入を妨げる要因となっている。
【0003】
一方、100~200℃と比較的低い温度域の熱源からの廃熱回収の場合、廃熱回収したとしても、エネルギーレベルの低い低圧蒸気や低温温水/熱媒油となり、産業プロセスでの使用用途が限られるため、回収熱を有効活用することが難しいという課題もある。
【0004】
一方、高温の排ガスであっても排ガス中に含まれるダストや腐食性ガスが熱回収するうえで問題となり、熱回収されずに捨てられているという課題もある。
【0005】
また、下記の特許文献1には、上昇気流を利用して風力発電を行うことができる風力発電機を備えた煙突が開示されている。
さらに、下記の特許文献2には、排ガスエネルギーを十分に回収可能で、耐電性の向上したかつ取付工事や保守時の作業性の向上した風力発電機を備えた排ガス利用発電設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-115809号公報
【特許文献2】特開2018-184914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、旋回流によるミキシングやドレンによる空気予熱を利用するものではなく、効率的な直接加熱で空気温度を素早く上昇させることができず、強い上昇力をもった空気流を発生させることができない。
また、特許文献2は、排ガスの動圧のエネルギーを直接回収するものであり、熱エネルギー回収によって発生する温度差・密度差による上昇気流の流動力を利用するものではなく、排ガスに直接触れる温度環境や、排ガス中の腐食成分、ダスト、排ガスから発生するドレン等によって装置が損傷するおそれがある。
【0008】
上述したように、従来技術は、排ガスの熱エネルギーを主に利用するものであり、比較的低い温度域からの廃熱回収では効率が悪い。また、温度環境や腐食成分、ダスト、排ガスから発生するドレン等によって動力回収装置が損傷する懸念がある。そして、発生したドレンが持つ熱は回収されずロスになってしまう。また、複雑な構造とすると既設ダクトに設備を付加するのが難しくなる。さらに、排ガスの動圧のエネルギーを直接回収する熱回収装置の設置により排気圧損が高まる懸念がある。
【0009】
本発明は、排ガスと空気をミキシングすることで廃熱を直接利用し熱回収の効率を向上させることができ、排ガスではなく常温の空気を動力回収装置に通過させることで温度環境や腐食成分、ダスト等から装置を保護することができ、旋回流によってドレンはダクト壁面を伝って落ちるため装置を保護することができ、高温ドレンを滞留させて空気予熱に利用することができ、ダクト合流構造とすることで比較的容易に増設が可能となり、排ガス流路を広くとることができるため排気圧損を増加させずに設置することが可能となるエネルギー回収方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のエネルギー回収方法は、下方から上方に上昇する空気流を動力源とする動力回収装置を地上付近に設置し、この動力回収装置の上部に空気流が上昇する筒状ダクトを設け、筒状ダクトの側面下方から空気より高温の排ガスをダクト内に導入して排ガスと空気とを混合し、排ガスと空気との温度差及び密度差により上昇気流を発生させ、この上昇気流の流動力と筒状ダクトへの排ガス導入による動圧を利用することで、前記動力回収装置からエネルギーを回収することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のエネルギー回収装置は、地上付近に設置された下方から上方に上昇する空気流を動力源とする動力回収装置と、動力回収装置の上部に設けられた空気流が上昇する筒状ダクトとを備え、この筒状ダクトの側面下方には廃熱源からの排ガスを導入する排ガス入口を有し、筒状ダクトの下部には排ガスから発生するドレンを回収する排ガスドレン抜きを有し、排ガス入口から空気より高温の排ガスをダクト内に導入して排ガスと空気とを混合し、排ガスと空気との温度差及び密度差により上昇気流を発生させ、この上昇気流の流動力と筒状ダクトへの排ガス導入による動圧を利用することで、前記動力回収装置からエネルギーを回収するようにしたことを特徴とする。
【0012】
上記の装置において、下方から上方に上昇する空気流を動力源とし、動力回収装置を直接排ガスに触れないようにすることで、温度環境や腐食成分、ダストなどによる装置の損傷を防止することができる。
上記の装置において、筒状ダクトの排ガス入口を旋回ばね構造とすることで、旋回流を伴った上昇流を発生させて排ガスと空気の攪拌を行うことができる。
また、上記の装置において、筒状ダクトの排ガス入口に斜め上方向に向けた排ガス取込ノズルを設けることで、旋回流を伴った上昇流を発生させて排ガスと空気の攪拌を行うことができる。
【0013】
そして、これらの装置は、廃熱源に接続された既設の煙突を分岐し、煙突の分岐部分と筒状ダクトの排ガス入口とを接続することで、既存設備に増設することができる。
また、これらの装置は、廃熱源に接続された既設の煙突の一部と筒状ダクトを置き換えることで、既存設備に増設することができる。
さらに、これらの装置は、廃熱源に接続された既設の煙突を分岐したバイパス管の一部と筒状ダクトを置き換えることで、既存設備に増設することができる。
【0014】
これらの装置において、動力回収装置としては、例えば、風力発電装置を用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエネルギー回収方法及び装置は、排ガスと空気をミキシングすることで廃熱を直接利用し熱回収の効率を向上させることができる。また、動力回収装置を直接排ガスに触れないようにすることで、温度環境や腐食成分、ダストなどによる装置の損傷を防止することができる。また、排ガスではなく常温の空気を動力回収に利用し、旋回流によってドレンはダクト壁面を伝って落ちるため温度環境や腐食成分、ダスト、ドレン等から装置を保護することができる。そして、高温ドレンを滞留させて空気予熱に利用することができる。また、ダクト合流構造とすることで比較的容易に増設が可能となる。さらに、排ガス流路を広くとることができるため、排気圧損を増加させずに設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は本発明のエネルギー回収装置の概略構成の一例を示す説明図である。
【
図2】
図2は本発明のエネルギー回収装置の概略構成の他の例を示す説明図である。
【
図3】
図3は本発明のエネルギー回収装置の概略構成のさらに他の例を示す説明図である。
【
図4】
図4は本発明のエネルギー回収装置の要部の一例を示す縦断面説明図である。
【
図6】
図6は本発明のエネルギー回収装置の要部の他の例を示す縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施できるものである。
図1は、本発明のエネルギー回収装置の概略構成の一例を示している。また、
図4は、本発明のエネルギー回収装置の要部(風力発電ユニット等のエネルギー回収ユニット)の一例を示している。
【0018】
図1、
図4に示すように、鉛直の筒状ダクト(空気ダクト)10と風力発電等の動力回収装置12とを備えたエネルギー回収ユニット14は、廃熱源16に接続された既設の煙突18を分岐して、煙突18の分岐部分と筒状ダクト10の排ガス入口20とを接続することで、既存設備に増設される。22はダンパである。
エネルギー回収ユニット14(及び14a)の詳細は、
図4~
図7に示すとおりである。詳細については後述する。
【0019】
本発明では、熱媒体を利用した廃熱回収ではなく、円筒や角形などの一定の高さのある筒状ダクト(空気ダクト)10内部に排ガスを取込み、内部空気との直接接触により熱回収させ、筒状ダクト(空気ダクト)10内部の空気を加熱する、簡易な構造の新しい廃熱回収システムを提案する。熱回収による筒状ダクト(空気ダクト)10内の温度差・密度差により発生する上昇気流の流動力と筒状ダクト(空気ダクト)10への排ガス流入による動圧を利用することで、低温で使用可能な動力回収装置12を地上付近に設置することを可能とするエネルギー回収ユニット14である。以下、動力回収装置12の一例として風力発電装置を用いることとし、エネルギー回収ユニット14は風力発電ユニットとして説明する。
【0020】
本発明を採用することにより、これまでの熱媒体による廃熱回収とは異なり、熱エネルギーでの廃熱回収ではなく、直接電力や動力で排熱エネルギーを回収することで、熱媒体を利用した場合の大がかりな排熱回収システムが不要となる。また、熱媒体を用いた排熱回収の場合、産業プロセスでは低温の熱エネルギーの活用先が限られていたが、排熱エネルギーを電気や動力の形で直接利用することで、利用しやすいエネルギー形態となり、活用先を拡大できる。
【0021】
本発明は、空気ダクトの内部空気を排ガスで加熱することで発生する上昇流(風力)を電力などに変換する装置(ここでいう動力回収装置12)を、鉛直に設置した筒状ダクト(空気ダクト)10の入口下部(地上付近)に備える廃熱エネルギー回収式の風力発電ユニットである。
【0022】
筒状ダクト(空気ダクト)10内部での空気の加熱方法については、
図4、
図6に示すように、空気と排ガスの合流ダクト構造を採用する。旋回ばね24(
図4参照)もしくは斜め上方向に向けた排ガス取込ノズル26(
図6参照)を筒状ダクト(空気ダクト)10下方に設けて排気口28までの距離を長くとり、旋回流を伴った上昇流を発生させて排ガスと空気の攪拌を行う。このように効率的な直接加熱でダクト内空気温度を素早く上昇させることで、強い上昇力をもった空気流を発生させ、発電装置等の動力回収装置12に排ガスを接触させずに、廃熱回収することが可能となる。排ガスから発生するドレンは、旋回流によってダクト壁面にたたきつけられ、壁面をつたって落ちる。ドレンは下部に溜め、空気予熱に利用する。この方式により、排ガス中のダストや腐食成分、排ガスドレンから発電装置等の動力回収装置12を保護することができる。30は排ガスドレン抜き、32は空気入口である。
【0023】
図4、
図5は、筒状ダクト(空気ダクト)10の排ガス入口20に旋回ばね24を有する構造としたエネルギー回収ユニット14である。
図6、
図7は、本発明のエネルギー回収装置の要部(風力発電ユニット等のエネルギー回収ユニット)の他の例であり、筒状ダクト(空気ダクト)10の排ガス入口20に斜め上方向に向けた排ガス取込ノズル26を設けたエネルギー回収ユニット14aである。
【0024】
風力発電ユニット等のエネルギー回収ユニット14は、ダクトと一体構造であり、排ガスを放出している既設の排ガスダクト(煙突18)を分岐するなどし、ダクト一体型風力発電ユニットに接続し、排ガスを導入するだけで使用可能となる。風力発電ユニットのダクト内で熱回収による上昇流に加え、排ガスの動圧を利用した上昇旋回流が発生することにより、風力発電装置の通過風量を増加させ、大きな回転力を発生させる。また、ダクトの排ガス通路面積を大きくすることで、排気圧損を増加させずに設置することが可能となる。
【0025】
なお、筒状ダクト10内部の空気流動のエネルギー回収方法としては、例えば風力発電装置などの旋回翼を有した動力回収システムが考えられるが、空気の流れを動力として回収できれば、どのような構造でもよい。
【0026】
また、
図2に示すように、風力発電ユニット等のエネルギー回収ユニット14は、廃熱源16に接続された既設の煙突18の一部と筒状ダクト10を置き換えることで、既存設備に増設することができる。エネルギー回収ユニット14については、
図1の場合と同様に、前述の
図4~
図7に示すような構成を採用することができる。
【0027】
さらに、
図3に示すように、風力発電ユニット等のエネルギー回収ユニット14は、廃熱源に接続された既設の煙突18を分岐したバイパス管34の一部と筒状ダクト10を置き換えることで、既存設備に増設することができる。エネルギー回収ユニット14については、
図1の場合と同様に、前述の
図4~
図7に示すような構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 筒状ダクト(空気ダクト)
12 動力回収装置
14、14a エネルギー回収ユニット
16 廃熱源
18 既存の煙突
20 排ガス入口
22 ダンパ
24 旋回ばね
26 排ガス取込ノズル
28 排気口
30 排ガスドレン抜き
32 空気入口
34 バイパス管