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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083335
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】降車漏れ通報システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/00 20060101AFI20240614BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20240614BHJP
   G08B 21/22 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
G08B21/00 U
G08B21/02
G08B21/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197557
(22)【出願日】2022-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】517229006
【氏名又は名称】砂山 由之
(74)【代理人】
【識別番号】100181881
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 俊一
(72)【発明者】
【氏名】砂山 由之
【テーマコード(参考)】
5C086
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086BA22
5C086CA06
5C086DA08
5C086FA02
5C086FA11
(57)【要約】
【課題】 車両に設けられた既存の装置を活用して構築でき、被放置者自身が能動的に自己の降車漏れを報知することができる降車漏れ通報システムの提供。
【解決手段】 車両の進行と停止を検出し停車情報を出力する挙動センサと、前記停車情報を受けてから稼働猶予時間が経過したことを条件として車両の駐車とみなし被放置者による救援要請動作を検出する降車漏れセンサと、前記降車漏れセンサからの救援要請動作を受けて警音器の鳴動又は照明の点灯を含む通報を行わせる報知手段を備える降車漏れ通報システムであって、降車漏れセンサは、窓ガラス若しくは窓枠への打撃、車内の移動又は大声等、人が危機感を持った際や窓越しに救援を要請する際に衝動的に行う動作を所定の時間内で所定回数を検出したことをもって救援要請動作とみなす。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行と停止を検出する挙動センサと、前記挙動センサの検出情報から車両の駐車を検出したことを条件として当該駐車車両における降車漏れの監視を開始する降車漏れ監視手段を備え、
前記降車漏れ監視手段は、
前記挙動センサが車両の停止を検出してから進行を検出することなく稼働猶予時間が経過したことを条件として当該車両を駐車車両とみなし被放置者による救援要請動作を検出する降車漏れセンサと、
前記降車漏れセンサからの救援要請動作を受けて警音器の鳴動又は照明の点灯を含む通報を行わせる報知手段と、
を備えることを特徴とする降車漏れ通報システム。
【請求項2】
前記降車漏れセンサは、窓ガラス若しくは窓枠への打撃、車内の移動又は大声を検出したことをもって救援要請動作とみなすことを特徴とする請求項1に記載の降車漏れ通報システム。
【請求項3】
前記挙動センサが車両の停止を検出してから進行を検出することなく稼働猶予時間が経過したこと、又は降車漏れ監視手段が降車漏れの監視を開始して最初に救援要請動作を検出してから案内猶予時間を経過したことを条件として副救援要請動作を被放置者に教示する案内手段を備え、
前記降車漏れセンサは、前記案内手段により教示された副救援要請動作の検出をもって救援要請動作の検出とみなすことを特徴とする請求項1に記載の降車漏れ通報システム。
【請求項4】
前記副救援要請動作は、車両の降車スイッチ、シートの手すり又はリクライニングレバーの操作を含むことを特徴とする請求項3に記載の降車漏れ通報システム。
【請求項5】
前記車両の降車スイッチ、シートの手すり又はリクライニングレバーは、前記案内手段による教示の際に点灯する標示灯を備えることを特徴とする請求項4に記載の降車漏れ通報システム。
【請求項6】
降車漏れ監視手段が降車漏れの監視を開始して最初に救援要請動作を検出してから解放猶予時間を経過したことを条件として扉のロックを解除し、車内に扉のロックを解除した旨を案内する開放手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の降車漏れ通報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降車できず車内に放置された降車漏れ人の存在を通報するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、保育園や幼稚園等における送迎バスにおいて、降車漏れ人の放置事件が問題視されている。
力が弱く判断能力が低いために、警音器の操作や扉のハンドル操作が行えず自力で車外へ報知することや脱出することができない幼児、又は身体能力等が著しく退行した老人を車内に放置することは、殊に夏季や冬季においては、放置された者の命を危険にさらすことともなり得る。
そこで、従来、人感センサや携帯端末装置等を用いた人員管理システム等を用いて降車漏れに伴う事件の防止が図られていた。
【0003】
人員管理システムの例としては下記システムが挙げられる。
例えば、社会的弱者が携行する前記社会的弱者に関する弱者情報を記録した非接触IC媒体と、公共移動車両の乗降部あるいは/および待合領域に設置され、前記社会的弱者が送信操作することなく前記弱者情報を検知し、送信する情報読み取り部と、前記情報読み取り部から送信された前記弱者情報に基づいて前記弱者情報を前記公共移動車両の乗客あるいは/および運行管理者に報知する報知手段とを備えた社会的弱者存在報知システム(特許文献1参照)。
例えば、管理区域へ通じる場所に設置され、移動する複数の管理対象の各々において所定の箇所に設けられた識別画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段にて撮像された識別画像に基づいて、一の管理対象と、当該一の管理対象が前記管理区域へ入場したか前記管理区域から退場したかを判別する判別手段と、前記判別手段にて判別された入退場の状況を表示する表示手段とを有する入退場管理システム(特許文献2参照)。
【0004】
例えば、被送迎者が所持し、前記被送迎者のID情報が書き込まれたRFIDと、前記被送迎者を送迎する側に設けられた中央サーバと、前記被送迎者を送迎する車両に設けられ、前記RFIDの情報を少なくとも読み取るリーダライタと、前記車両に設けられ、前記リーダライタからのRFID情報を受信し、自車位置情報を取得するとともに、前記中央サーバと通信する車両端末と、前記被送迎者を出迎える保護者が所持し、ネットワークを介して前記中央サーバまたは車両端末と通信する保護者端末と、を備え、前記中央サーバは、前記車両端末から受信した前記被送迎者のID情報と前記車両位置情報に基づいて前記ID情報に対応する被送迎者の予測到着時刻情報を前記保護者端末に送出する被送迎者の送迎管理システム(特許文献3参照)。
【0005】
例えば、集合と解散のイベントを持つ母集団の構成要員に対して、少なくとも携帯電話機などのアクセス手段と前記構成員の本人確認データーを基本属性データーとして持つQRコード(登録商標)を生成し、このQRコード(登録商標)を可搬媒体にて表示可能とし、前記母集団のイベントの発生タイミングで、前記QRコード(登録商標)を読むようにしたカメラ付き携帯電話機とQRコード(登録商標)を使ったデーターベース管理方法(特許文献4参照)等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-99993号公報
【特許文献2】特開2016-167248号公報
【特許文献3】特開2008-204361号公報
【特許文献4】特開2006-344116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、車両への乗降者管理システムの導入には相当の費用がかかる他、そのシステムが複雑になるほどコスト高となり、運用上の問題も増加する
また、従来の乗降者管理システムは、専ら、当該システムを運用する管理者依存であって、被放置者が能動的に通報することに資する手段はほとんど設けられていない。
仮に、放置事件の防止を目的としてかかる従来のシステムの導入が公的に義務化されたとしても、そのシステムの導入が機能面や運用面で必然的に現状を上回る効果をもたらすものではなく、逆に、その様なシステムに頼り切ることにより、様々な措置の懈怠や怠慢に起因したヒューマンエラーを惹起する虞がある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、車両に設けられた既存の装置を活用して構築でき、被放置者自身が能動的に自己の降車漏れを報知することができる降車漏れ通報システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明による降車漏れ通報システムは、車両の進行と停止を検出する挙動センサと、前記挙動センサの検出情報から車両の駐車を検出したことを条件として当該駐車車両における降車漏れの監視を開始する降車漏れ監視手段を備え、前記降車漏れ監視手段は、前記挙動センサが車両の停止を検出してから進行を検出することなく稼働猶予時間が経過したことを条件として当該車両を駐車車両とみなし被放置者による救援要請動作を検出する降車漏れセンサと、前記降車漏れセンサからの救援要請動作を受けて警音器の鳴動又は照明の点灯を含む通報を行わせる報知手段と、を備えることを特徴とする。
前記降車漏れセンサは、例えば、窓ガラス若しくは窓枠への打撃、車内の移動又は大声を検出したことをもって救援要請動作とみなす構成を採ることができる。
【0010】
また、前記挙動センサが車両の停止を検出してから進行を検出することなく稼働猶予時間が経過したこと、又は降車漏れ監視手段が降車漏れの監視を開始して最初に救援要請動作を検出してから案内猶予時間を経過したことを条件として副救援要請動作を被放置者に教示する案内手段を備え、且つ前記降車漏れセンサは、前記案内手段により教示された副救援要請動作の検出をもって救援要請動作の検出とみなす構成を採ることができる。
前記副救援要請動作は、車両の降車スイッチ、シートの手すり又はリクライニングレバーの操作を含める構成を採ることができる。その際、前記車両の降車スイッチ、シートの手すり又はリクライニングレバーは、前記案内手段による教示の際に点灯する標示灯を備えることが望ましい。
【0011】
更に、降車漏れ監視手段が降車漏れの監視を開始して最初に救援要請動作を検出してから解放猶予時間を経過したことを条件として扉のロックを解除し、車内に扉のロックを解除した旨を案内する開放手段を備える構成を採ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による降車漏れ通報システムによれば、例えば、窓ガラスへの打撃等、車内に放置され恐怖を感じた際に一般的に生じる行動を救援要請動作として検出することで、被放置者の能動的な意思により、自然現象や偶発的な現象と区別して報知手段を稼働させることができる。
また、体調や四肢の都合、又は救援要請動作の連続に伴う疲労によって、一般的な救援要請動作を行い難い条件にあったとしても、それ以外の身体に優しく又は疲労の際に行うであろう備品の操作など、救援要請動作とみなされる副救援要請動作を易しく教示する案内手段を備えることによって、被放置者に平常心を促すと共に、救援要請に資する情報と安心感を与えることができる。
【0013】
更に、前記救援要請動作を受けて扉のロックを解除し、車内に扉のロックを解除した旨を案内する開放手段を備える構成を採れば、被放置者の救援要請動作に伴う報知手段の稼働に外部の者が何ら反応しなかったとしても、最悪の事態を避ける手段として、被放置者が自力で車外へ脱出することができる。
これらの構成をもって、車両に設けられた既存の装置を活用して構築でき、多様な被放置者自身が能動的に自己の降車漏れを通報することができる降車漏れ通報システムの提供という本願発明の目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による降車漏れ通報システムで行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図2】本発明による降車漏れ通報システムのハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明による降車漏れ通報システムで用いられる降車漏れセンサの配置の一例を示すフローチャートである。
図4】本発明による降車漏れ通報システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による降車漏れ通報システムの実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図1乃至図4は、本発明による降車漏れ通報システムの一例である。
この例は、車両の進行と停止を検出する挙動センサと、前記挙動センサの検出情報から車両の駐車を検出したことを条件として当該駐車車両における降車漏れの監視を開始する降車漏れ監視手段を備える。
【0016】
前記挙動センサは、六軸加速度センサ、又はGPS(Global Positioning System)である。
六軸加速度センサは、車両が上下及び前後左右へ移動する際に生じる加速度成分を各軸毎に捉えて出力するセンサである。
GPSは、衛星から送られてきた軌道データから正確な位置データ(車両の位置)を導き出力するシステムである。
【0017】
降車漏れ監視手段は、CPU、タイマ、ROM又はRAM等のメモリー、入力装置、センサ、出力装置及び記録媒体との間で有線又は無線による通信を行うインターフェースを備えるコンピュータシステムとして構成したものである(図2参照)。
尚、降車漏れ監視手段は、単数の制御手段で集中して行う構成と、複数の制御手段で分割して行う構成のいずれを採用しても良い。
【0018】
降車漏れ監視手段は、前記ハードウエア資源に、降車漏れ機能を満足するための各種機能プログラムをインストールすることによって各種機能手段が構築され、前記タイマで計測された停車時間(車両が連続して停車している時間)が設定時間(稼働猶予時間)を超え、駐車車両とみなされたことをもって稼働する。
降車漏れ監視手段は、前記機能手段として、前記挙動センサが車両の停止を検出してから進行を検出することなく稼働猶予時間が経過したことを条件として被放置者による救援要請動作を検出する降車漏れセンサと、前記降車漏れセンサからの救援要請動作を受けて警音器の鳴動、照明の点灯及び車両管理者への情報提供からなる通報を行わせる報知手段と、前記挙動センサが車両の停止を検出してから進行を検出することなく稼働猶予時間が経過し、又は降車漏れ監視手段が降車漏れの監視を開始して最初に救援要請動作を検出してから案内猶予時間を経過したことを条件として副救援要請動作を被放置者に教示する案内手段と、降車漏れ監視手段が降車漏れの監視を開始して最初に救援要請動作(救援要請動作とみなされた副救援要請動作を含む)を検出してから解放猶予時間を経過したことを条件として扉のロックを解除し、車内に扉のロックを解除した旨を案内する開放手段を備える(図4参照)。
【0019】
稼働猶予時間は、車両が停止してから降車漏れ監視手段が稼働するまでの猶予時間として設定された時間であって、車両が目的地に到着し、且つ降車を完了するために十分な時間を見込んだ時間(車内が無人となるに足る時間)が設定される。
救援待機時間は、降車漏れ監視手段の稼働後、降車漏れセンサが救援要請動作(救援要請動作とみなされた副救援要請動作を含む)を検出してから生じたタイマに基づくカウント情報を時間に換算した経過時間であり、開放猶予時間は、救援待機時間の上限であって、車両に乗車する人の健康状態を考慮して、被放置者が自力で車外へ脱出することができるだけの体力を残し得る時間を設定する。
【0020】
前記降車漏れセンサは、前記挙動センサの出力から車両の停止を検出する停車判定手段と、当該停車判定手段が車両の停止を検出してから進行を検出することなく稼働猶予時間が経過したことを条件として当該車両を駐車車両とみなし駐車情報を出力する駐車判定手段と、当該駐車判定手段から駐車情報を受けて被放置者による救援要請動作の検出を開始する救援要請手段を備える。
【0021】
停車判定手段は、六軸加速度センサを採用する場合にあっては、例えば、当該六軸加速度センサが出力した各軸の加速度成分をベクトルデータ化し、各ベクトルのスカラ量の総和を求め、当該総和が所定値未満の場合を車両の停止と判定し停車情報を出力し、GPSを採用する場合にあっては、例えば、当該GPSが出力した位置データの変化が所定時間で所定の距離未満である場合を停車と判定し停車情報を出力する。
六軸加速度センサとGPSの両者を併用する場合には、トリガーとする処理の性質に応じて両挙動センサの出力のいずれか一方を優越させ、又は双方が停車と判定されたことを受けて停車と判定し停車情報を出力する。
【0022】
駐車判定手段は、前記停車情報を受けてタイマに基づくカウント情報の計測を開始し、前記挙動センサが車両が進行を検出する度にタイマに基づくカウント情報をクリアし、続く当該車両の停車情報を受けて再び停車時間を初期値から開始するカウント情報更新処理を行う。
駐車判定手段は、常時更新されたカウント情報が時間に換算された停車時間の導出及び更新を行うと共に、停車時間が稼働猶予時間に達したことを条件として当該車両を駐車車両(空車)とみなし駐車情報を出力する。
救援要請手段は、前記駐車判定手段からの駐車情報を受けて、救援要請動作及び副救援要請動作を検出を開始すると共に、降車漏れセンサが救援要請動作が行われたとみなしてから生じたカウント情報を時間に換算して得た救援待機時間を出力する。
【0023】
救援要請動作は、被放置者が危機感を持った際や、窓越しに救援を要請する際に衝動的に行う動作であって、乗降扉や座席横の窓ガラスへの打撃、車内の頻繁な移動又は「開けて。」や「助けて。」等の大声を発する等の動作等である。
副救援要請動作は、降車漏れ通報システムにおいて予め定められた動作であって、案内手段により被放置者に音声又は画像によって教示される動作である。
具体的には、車両の降車スイッチ1、シートの手すり(揺動可能なものに限る。)2又はリクライニングレバー等、全員降車後の車両において操作される筈の無い可動要素(以下、「可動要素」と総称する。)の操作等が副救援要請動作とされる。
これらは、概ね、疲労で横になる際に操作するものであり、被放置者が無意識に操作する可能性が高いものでもある。
【0024】
前記案内手段は、稼働猶予時間が経過したこと、又は救援待機時間が案内猶予時間を超えたことを条件として一定時間(案内継続時間)稼働し、体力が比較的多く消耗する救援要請動作が負担となる被放置者や、救援要請動作の継続に疲労した被放置者による救援要請の便宜のために、救援要請動作よりも軽易な副救援要請動作を教示する。
尚、救援待機動作が検出されることなく稼働した案内手段は、予め設定された案内継続時間内に降車漏れセンサが救援要請動作(救援要請動作とみなされた副救援要請動作を含む)を検出しなかったことを条件として稼働を停止する。
【0025】
案内継続時間は、副救援要請動作を記憶し実践できる様になるだけに必要十分な時間とし、その間、実施及び理解に十分な間欠時間をおいて短時間の簡潔なアナウンスを繰り返すことが望ましい。副救援要請動作に関連する機器や部位にLED等の標示灯を装着しておけば、案内手段によりアナウンスが行われている間に点灯することによって、操作すべきものを明確に標示することができる。
案内継続時間は、一回限りの設定、間欠的に一定周期で繰り返される設定、又は降車漏れセンサが救援要請動作(救援要請動作とみなされた副救援要請動作を含む)を検出したことをきっかけとして案内継続時間を初期値に更新し案内手段を稼働させる設定のいずれを採ってもよい。
また、案内継続時間中のアナウンスは、一定周期で繰り返されることを基本とするが、降車漏れセンサが救援要請動作(救援要請動作とみなされた副救援要請動作を含む)を検出したことをきっかけとしてアナウンスを出力する設定としてもよい。
【0026】
救援要請動作又は副救援要請動作を検出する手段として採用し得る手法は、以下のとお りである(図3参照)。
【0027】
窓ガラス又は窓枠への打撃の検出は、窓ガラスの変位、速度又は加速度を計測することにより行われ、歪ゲージを窓ガラスに貼付して窓ガラスに生じた歪を検出する手法や、振動センサ3を窓枠に装着し窓枠に生じた振動を検出する手法等が挙げられる。
この際、降車漏れセンサは、窓ガラスへの打撃(歪又は振動)を所定の時間内で所定回数検出したことをもって救援要請動作とみなし、救援信号を出力する。検出する歪や振動は、強度、間隔(周期)及び1単位の連続回数等の面で人為的に与えられるであろう各数値と照合し、他の外力によるノイズを除去する処理を加えることが望ましい。
【0028】
車内における頻繁な移動の検出は、車両に固定された六軸加速度センサにより、被放置者の移動で生じる車両の揺動で生じる加速度を検出する手法が挙げられる。
この際、降車漏れセンサは、車両の揺動で生じる加速度出力を所定の時間内で所定回数検出したことを救援要請動作とみなし、救援信号を出力する。検出する加速度は、大きさ、間隔(周期)及び1単位の連続回数等の面で人為的に与えられるであろう各数値と照合し、他の外力によるノイズを除去する処理を加えることが望ましい。
【0029】
車内において発せられた大声の検出は、車両の内部又は車両の内外に適宜マイクロホン4を設置し被放置者の発声を検出する手法が挙げられる。
この際、降車漏れセンサは、マイクロホン4で検出した音声情報から車両の内部で生じた人声成分を検出し、所定のレベルを超える人声成分を所定の時間内で所定回数検出したことを救援要請動作とみなし、救援信号を出力する。検出する人声成分は、大きさ、長さ、周波数、間隔(周期)及び1単位の連続回数等の面で人為的に与えられるであろう各数値と照合し、他の音声成分によるノイズを除去する処理を加えることが望ましい。
【0030】
車両の降車スイッチ1の操作の検出は、案内手段の稼働をもって降車スイッチ1を受け付け可能とし、降車漏れセンサにより当該降車スイッチ1の操作を副救援要請動作として検出する回路又は処理を設ける手法が挙げられる。
この際、前記降車漏れセンサは、稼働猶予時間が経過し、且つ案内手段が稼働している案内継続時間内に、降車スイッチ1の操作(副救援要請動作)を検出したことをもって救援要請動作とみなし、救援信号を出力する。
車両のシートの手すり2又はリクライニングレバーの操作の検出は、案内手段の稼働をもってリクライニングレバーの操作を副救援要請動作として検出する手法が挙げられる。
この際、降車漏れセンサは、稼働猶予時間が経過し、且つ案内手段が稼働している案内継続時間の手すり2又はリクライニングレバーの操作をもって救援要請動作とみなし、救援信号を出力する。
上記手法の他、前記降車漏れセンサは、稼働猶予時間が経過した後であれば、案内手段が稼働する前であっても副救援要請動作を検出する設定とすることもできる。
【0031】
尚、救援要請動作及び副救援要請動作を行えない乳児、老人又は病人を乗せる車両にあっては、超音波ドップラーセンサ5等の人感センサを設置し、降車漏れ監視手段の稼働の下で被放置者の心拍を検出し、救援信号を出力する手法を併用することができる。
人感センサによる心拍の検出は、単独で救援信号とみなしてもよいが、人感センサによる心拍の検出と救援要請動作(救援要請動作とみなされた副救援要請動作を含む)の検出とが重複したことを条件として救援信号を出力する構成を採ることができる。
【0032】
前記報知手段は、車両の警音器を鳴動させる警報手段と、車両の照明を点灯(点滅を含む)させる照明手段と、異常事態の発生を警察等の行政機関等へ通報する通信手段と、前記救援信号を受けて、前記警報手段の鳴動、照明手段の点灯及び通信手段の通報を管理する報知制御手段を備える。
前記警報手段の鳴動及び照明手段の点灯を含む通報は、例えば、各々が断続的に行われるなど、少なくとも12時間以上の報知が可能となるように制御される。
【0033】
前記開放手段は、長時間にわたって救援要請動作及び副救援要請動作を強いられることに伴う被放置者の体力の消耗によって、自力での脱出が出来なくなる程の衰弱が生じることを回避すべく、車両の防犯措置を放棄して、車両の開放を優先するための動作を行うものである。
開放手段は、前記降車漏れセンサが降車漏れの監視を開始して最初に救援要請動作(救援要請動作とみなされた副救援要請動作を含む)を検出してから開放猶予時間を経過したことを条件として稼働し、扉のロックを解除し、車内に扉のロックを解除した旨を案内する。
開放手段は、所定時間に亘って救援要請動作が断続的に複数回検出されたことを条件として、開放猶予時間を待つことなく稼働させる構成を採ってもよい。
【0034】
以下、上記降車漏れ通報システムが設置された車両が停車し、降車漏れ人の確認の不備等により、降車し損なった者(被放置者)を車内に残したまま車両に施錠が行われた場合における降車漏れ通報システムの動作の一例を説明する(図1参照)。
【0035】
降車漏れ通報システムは、車両の始動スイッチ(イグニッションスイッチ)がOFFになったこと、又は駐車判定手段が停車時間の計測を開始し且つ当該停車時間が稼働猶予時間の経過により駐車情報を出力したことを条件として稼働する。
稼働猶予時間は、車両の用途に応じて適正な時間(例えば5分以上30分以内)を設定し、幼児、老人又は病人が利用する車両である場合には、体調維持に留意した適正な時間(例えば5分以上20分以内)を設定し、仮眠時間を取る観光バスの様に長時間の停車があり得る場合には、観光スケジュールに留意した時間を設定する。
【0036】
降車漏れ通報システムの降車漏れ監視手段が稼働した後、窓ガラス又は窓枠への打撃、車内における頻繁な移動、又は車内において発せられた大声若しくは泣き声のいずれかが検出された時は、降車漏れセンサがそれを救援要請動作とみなし救援信号を出力することとなる。
降車漏れ監視手段は、稼働猶予時間の経過、又は最初の救援要請動作の検出から案内猶予時間経過したことを条件として案内手段を稼働し、副救援要請動作の具体を分かりやすくアナウンスする。
前記案内猶予時間は、継続する救援要請動作によって過度な疲労が蓄積しない程度の時間であって、仮に、被放置者が救援要請動作を行わなかった場合であっても健康面等で大きな支障とならない時間で案内手段を稼働させる時間を設定する。例えば、稼働猶予時間の経過から15分以内、又は救援要請動作の検出から10分以内に設定することが望ましい。
【0037】
救援要請動作は、車内に放置された被報知者がパニックに陥った場合であっても衝動的に行う動作であり、且つ報知手段を機能させる本能的トリガーとなるものである事に対して、副救援要請動作は、被放置者が冷静さを取り戻した際に、体力を浪費することなく報知手段を機能させるために定められた理性的トリガーとなるものである。
而して、副救援要請動作を教示する音声の前には、「このシステムは、貴方がこの車両に乗っていることを通報いたします。」等、このシステムが間もなく外部に対して救援要請を行う旨のアナウンスと、「落ち着いて、これからお示しする操作を行って下さい。操作は、何度行われても構いません。シートの手すりを上げ下げして下さい。」等の教示が続けて繰り返し行われる。
【0038】
更に、開放手段は、降車漏れ監視手段が降車漏れの監視を開始して最初に救援要請動作を検出してから開放猶予時間が経過したことを条件として、扉のロックを解除し、車内に扉のロックを解除した旨及び扉の開き方を分かりやすく繰り返しアナウンスする。
報知手段による警音器の鳴動、照明の点灯は、当該車両の内部に設置されたリセットスイッチを操作することにより、降車漏れ監視手段と共に停止され、すべての動作がリセットされる。
リセットスイッチは、少なくとも一回の車内確認が余儀なくされる様に、車両の最も奥に配置することが望ましい。
【0039】
尚、本発明による降車漏れ通報システムは、上記構成に限定されるものではなく、車両に設けられた既存の装置を活用して構築でき、被放置者自身が能動的に自己の降車漏れを報知することができる便宜が図られる構成が採られる限り適宜設計変更を行うことができる。
例えば、救援要請動作や副救援支援動作の趣旨に副ってどのよう動きを検出し、そのためにどのようなセンサを用いるかなどを変更することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 降車スイッチ,2 手すり,3 振動センサ,4 マイクロホン,
5 超音波ドップラーセンサ,
図1
図2
図3
図4