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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083367
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】補助駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/10 20060101AFI20240614BHJP
   B60W 10/18 20120101ALI20240614BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
B60K17/10 F
B60W10/18
B60W10/04
B60W10/00 120
B60K17/10 D
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024046627
(22)【出願日】2024-03-22
(62)【分割の表示】P 2020103891の分割
【原出願日】2020-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000222978
【氏名又は名称】東洋農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】野村 誠
(72)【発明者】
【氏名】太田 耕二
(72)【発明者】
【氏名】船引 邦弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 和久
(72)【発明者】
【氏名】小森 真司
(72)【発明者】
【氏名】白川 英希
(72)【発明者】
【氏名】礒村 誠
(72)【発明者】
【氏名】河辺 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山木 智広
(57)【要約】
【課題】 補助駆動装置における補助駆動モータの使用限界とされる速度を超えて牽引車両により牽引されたとしても、油量不足によるブレーキ力の発生を抑制するとともに、モータの損傷を防止することのできる、補助駆動装置を提供する。
【解決手段】 油圧回路6は、油圧抜きポート43と作動油を貯留する貯留タンク69とを連通する油圧抜き路64と、ゲージポート44から受けた油圧力によって油圧抜き路64を遮断するとともに油圧力が無くなった場合に当該油圧力で付勢されていたバネ力によって油圧抜き路64を開放するパイロットバルブ67とを有する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行性能を有する牽引車両に牽引される被牽引車両の補助駆動装置であって、
前記牽引車両から得られる動力によって連続的に可変する油圧を発生させる可変型油圧ポンプと、
前記被牽引車両に伝達する前進駆動力、後進駆動力およびブレーキ力を前記可変型油圧ポンプによって切り替えられる補助駆動モータと、
前記可変型油圧ポンプと前記補助駆動モータとの間に作動油を流通させる油圧回路と、を有しており、
前記可変型油圧ポンプは、前記補助駆動モータに供給する前の作動油の油圧を抜くことができる油圧抜きポートと、発生させた油圧力を測定可能なゲージポートとを有しており、
前記油圧回路は、前記油圧抜きポートと前記作動油を貯留する貯留タンクとを連通する油圧抜き路と、前記ゲージポートから受けた油圧力によって前記油圧抜き路を遮断するとともに前記油圧力が無くなった場合に当該油圧力で付勢されていたバネ力によって前記油圧抜き路を開放するパイロットバルブとを有する、前記補助駆動装置。
【請求項2】
前記補助駆動モータが、ラジアルピストンモータによって構成されているとともに、前記油圧回路は、前記補助駆動モータの内部リークにより漏れ出る作動油を前記貯留タンクに回帰させる内部リーク油回帰路と、前記補助駆動モータの内部の作動油に加圧する加圧モータとを有しており、
前記パイロットバルブが前記ゲージポートから受けた油圧力によって前記油圧抜き路を遮断した際には前記内部リーク油回帰路を開放し、
前記パイロットバルブがバネ力によって前記油圧抜き路を開放した際には前記内部リーク油回帰路を遮断するとともに、前記加圧モータが前記補助駆動モータの内圧を高めてラジアル方向に配置された複数のピストンを押し縮める、請求項1に記載の補助駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行性能を有する牽引車両に牽引される被牽引車両の補助駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクターは、主に農作業に用いられる車両であって、ブームスプレーヤ、ポテトハーベスター等の作業機を牽引する牽引車両として用いられる。前記トラクターのオペレータは、ハンドルによる方向転換やアクセル、ブレーキ等による速度調整を行う。また、前記オペレータは、作業機の操作も同時に行う。例えば被牽引車両がブームスプレーヤの場合では、散布液が農作物に均等に散布されるように、ブームの高さや傾き、散布量や散布範囲を調整する。
【0003】
ところで、近年の作業機の大型化や走行速度の高速化から、トラクターなどの牽引車両による駆動力を補うため、作業機側に駆動力を発生する補助駆動装置を設置する発明が提案されている。例えば、特表2018-524237号公報では、電気式または油圧式の駆動可能な第二の車軸を備えた、トラクターなどに連結可能な連結車両に関する発明が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2018-524237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、被牽引車両が補助駆動装置における補助駆動モータの使用限界とされる速度以上で牽引車両により牽引されると、補助駆動モータに供給される作動油の油量が不足し、ブレーキが掛かった状態になる。また、この状態を続けたり、更に速度があがるとモータ内部のピストンがカムプロファイルに干渉し、モータが損傷するという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のようなニーズに対応するためになされたものであって、補助駆動装置における補助駆動モータの使用限界とされる速度を超えて牽引車両により牽引されたとしても、油量不足によるブレーキ力の発生を抑制するとともに、モータの損傷を防止することのできる、補助駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る補助駆動装置は、補助駆動モータの使用限界とされる速度を超えて牽引車両により牽引されたとしても、油量不足によるブレーキ力の発生を抑制するという課題を解決するために、走行性能を有する牽引車両に牽引される被牽引車両の補助駆動装置であって、前記牽引車両から得られる動力によって連続的に可変する油圧を発生させる可変型油圧ポンプと、前記被牽引車両に伝達する前進駆動力、後進駆動力およびブレーキ力を前記可変型油圧ポンプによって切り替えられる補助駆動モータと、前記可変型油圧ポンプと前記補助駆動モータとの間に作動油を流通させる油圧回路と、を有しており、前記可変型油圧ポンプは、前記補助駆動モータを前進駆動させる際には作動油を送出し、後進駆動させる際には前記補助駆動モータを経由して戻る作動油を回帰させる前進ポートと、前記補助駆動モータを後進駆動させる際には作動油を送出し、前進駆動させる際には前記補助駆動モータを経由して戻る作動油を回帰させる後進ポートと、を有しており、前記油圧回路は、前記前進ポートと前記補助駆動モータとを連通する前進路と、前記後進ポートと前記補助駆動モータとを連通する後進路と、前記前進路と前記後進路とを連通するバイパス路とにより閉回路として構成されているとともに、前記バイパス路には前進駆動時、後進駆動時およびブレーキ時に作動油の流れを遮断し、ニュートラル時に作動油の流れを開放するバイパスバルブを備える。
【0008】
本発明に係る補助駆動装置は、補助駆動装置における補助駆動モータの使用限界とされる速度を超えて牽引車両により牽引されたとしても、モータの損傷を防止するという課題を解決するために、走行性能を有する牽引車両に牽引される被牽引車両の補助駆動装置であって、前記牽引車両から得られる動力によって連続的に可変する油圧を発生させる可変型油圧ポンプと、前記被牽引車両に伝達する前進駆動力、後進駆動力およびブレーキ力を前記可変型油圧ポンプによって切り替えられる補助駆動モータと、前記可変型油圧ポンプと前記補助駆動モータとの間に作動油を流通させる油圧回路と、を有しており、前記可変型油圧ポンプは、前記補助駆動モータに供給する前の作動油の油圧を抜くことができる油圧抜きポートと、発生させた油圧力を測定可能なゲージポートとを有しており、前記油圧回路は、前記油圧抜きポートと前記作動油を貯留する貯留タンクとを連通する油圧抜き路と、前記ゲージポートから受けた油圧力によって前記油圧抜き路を遮断するとともに前記油圧力が無くなった場合に当該油圧力で付勢されていたバネ力によって前記油圧抜き路を開放するパイロットバルブとを有する。
【0009】
また、本発明の一態様として、モータの損傷を防止する際に発生する内部リークにより漏れ出る作動油を貯留タンクに回帰させるという課題を解決するために、前記補助駆動モータが、ラジアルピストンモータによって構成されているとともに、前記油圧回路は、前記補助駆動モータの内部リークにより漏れ出る作動油を前記貯留タンクに回帰させる内部リーク油回帰路と、前記補助駆動モータの内部の作動油に加圧する加圧モータとを有しており、前記パイロットバルブが前記ゲージポートから受けた油圧力によって前記油圧抜き路を遮断した際には前記内部リーク油回帰路を開放し、前記パイロットバルブがバネ力によって前記油圧抜き路を開放した際には前記内部リーク油回帰路を遮断するとともに、前記加圧モータが前記補助駆動モータの内圧を高めてラジアル方向に配置された複数のピストンを押し縮めるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、補助駆動装置における補助駆動モータの使用限界とされる速度を超えて牽引車両により牽引されたとしても、油量不足によるブレーキ力の発生を抑制するとともに、モータの損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る補助駆動装置の一実施形態を示す使用状態図である。
図2】本実施形態の補助駆動装置を示す構成図である。
図3】本実施形態の補助駆動装置を示す油圧回路図である。
図4】本実施形態における補助駆動モータの内部構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る補助駆動装置の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0013】
補助駆動装置1は、図1に示すように、走行性能を有する牽引車両2に牽引される被牽引車両3に設けられており、被牽引車両3に駆動性能を持たせることで走行の補助を行うものである。本実施形態の補助駆動装置1は、図2に示すように、可変型油圧ポンプ4と、被牽引車両3の補助駆動力を発揮する補助駆動モータ5と、前記可変型油圧ポンプ4と前記補助駆動モータ5との間に作動油を流通させる油圧回路6とを有している。以下、各構成について詳細に説明する。
【0014】
可変型油圧ポンプ4は、牽引車両2から得られる動力によって連続的に可変する油圧を発生させることのできるポンプである。この可変型油圧ポンプ4は、牽引車両2のエンジン動力をパワーテイクオフ(PTO)によって取り出し、この取り出した動力によって作動油に油圧を発生させるように構成されている。可変型油圧ポンプ4の種類は特に限定されるものではないが、本実施形態では、ピストンポンプが用いられている。
【0015】
また、本実施形態における可変型油圧ポンプ4は、図2および図3に示すように、補助駆動モータ5を前進駆動させる際に作動油を送出する前進ポート41と、補助駆動モータ5を後進駆動させる際に作動油を送出する後進ポート42と、補助駆動モータ5に供給する前の作動油の油圧を抜く油圧抜きポート43と、発生させた油圧力の測定が可能なゲージポート44とを有する。
【0016】
前進ポート41は、油圧回路6を介して補助駆動モータ5に作動油を送出および回帰させるための出入り口であり、前記補助駆動モータ5を前進駆動させる際には作動油を送出し、後進駆動させる際には補助駆動モータ5を経由して戻る作動油を回帰させる際の出入り口として構成されている。
【0017】
後進ポート42は、前進ポート41と同様に、油圧回路6を介して補助駆動モータ5に作動油を送出および回帰させるための出入り口であり、前記補助駆動モータ5を後進駆動させる際には作動油を送出し、前進駆動させる際には前記補助駆動モータ5を経由して戻る作動油を回帰させる際の出入り口として構成されている。
【0018】
油圧抜きポート43は、可変型油圧ポンプ4内で発生させた油圧を外部に放出するための出口であり、補助駆動モータ5に供給する前の作動油の油圧を抜くのに用いられる。
【0019】
ゲージポート44は、発生させた油圧力の測定が可能な作動油の出口である。本実施形態におけるゲージポート44は、パイロットバルブ67を操作するための油圧を供給する作動油の出口として構成されている。
【0020】
補助駆動モータ5は、油圧回路6を介して可変型油圧ポンプ4から送出された作動油により補助駆動力を発揮するモータである。本実施形態における補助駆動モータ5は、図4に示すように、ラジアルピストンモータであり、ラジアル方向に配置された複数のピストン51によって星型の内周形状を有するカムプロファイル52を順次に押すことでタイヤ軸に連結されたシリンダーブロック514を回転させることができるように構成されている。本実施形態におけるピストン51は、作動油が流入するシリンダー511と、シリンダー511内を摺動するピストンヘッド512と、このピストンヘッド512の先端に設けられるローラ513とを有する。また、補助駆動モータ5は、図2および図3に示すように、シリンダー511とピストンヘッド512との隙間から内部に漏れ出る内部リークを排出するリーク排出ポート53を有している。
【0021】
また、補助駆動モータ5は、作動油の流入および流出方向を切り替えることで、前進方向の駆動力から後進方向への駆動力、また後進方向の駆動力から前進方向の駆動力へ切り替えることができるとともに、逆回転や作動油の流入および流出を停止させることでブレーキ力を発揮させることができる構成になっている。本実施形態の補助駆動装置1は、図3に示すように、2台の補助駆動モータ5,5を備えている。
【0022】
油圧回路6は、可変型油圧ポンプ4と補助駆動モータ5との間に作動油を流通させるための通路や当該通路を開閉するバルブ等からなる回路であって、本実施形態では、閉じた油圧回路(閉回路)として構成されている。
【0023】
本実施形態における油圧回路6は、図2および図3に示すように、前進ポート41と補助駆動モータ5とを連通する前進路61と、後進ポート42と補助駆動モータ5とを連通する後進路62と、前進路61と後進路62とを連通するバイパス路63と、油圧抜きポート43と作動油を貯留する貯留タンク69とを連通する油圧抜き路64と、補助駆動モータ5の内部リークにより漏れ出る作動油を貯留タンク69に回帰させる内部リーク油回帰路65と、前記バイパス路63を開閉するバイパスバルブ66と、前記油圧抜き路64を開閉するパイロットバルブ67と、補助駆動モータ5の内圧を高める加圧モータ68とを有する。
【0024】
図3に示すように、前進路61は、可変型油圧ポンプ4の前進ポート41と補助駆動モータ5とを連通する作動油の通路であり、前進駆動の際には作動油が可変型油圧ポンプ4から補助駆動モータ5へと流れるようになっており、後進駆動の際には補助駆動モータ5から可変型油圧ポンプ4へと流れるようになっている。
【0025】
また、後進路62は、可変型油圧ポンプ4の後進ポート42と補助駆動モータ5とを連通する作動油の通路である。後進駆動の際には作動油が可変型油圧ポンプ4から補助駆動モータ5へと流れるようになっており、前進駆動の際には補助駆動モータ5から可変型油圧ポンプ4へと流れるようになっている。
【0026】
バイパス路63は、前進路61と後進路62とを連通する作動油の通路であって、その途中には当該通路を開閉可能なバイパスバルブ66が設けられている。
【0027】
油圧抜き路64は、油圧抜きポート43と作動油を貯留する貯留タンク69とを連通する作動油の通路であって、その途中には当該通路を開閉することのできるパイロットバルブ67が設けられている。
【0028】
内部リーク油回帰路65は、補助駆動モータ5と貯留タンク69とを連通する作動油の通路であって、補助駆動モータ5のピストン51におけるシリンダー511とピストンヘッド512との隙間からピストン51とカムプロファイル52との間に内部リークとして漏れ出る作動油を貯留タンク69に回帰させるために用いられる通路である。本実施形態における内部リーク油回帰路65は、補助駆動モータ5のリーク排出ポート53と貯留タンク69とを連結する通路として構成されており、その途中には当該通路を開閉することのできるパイロットバルブ67が設けられている。
【0029】
バイパスバルブ66は、バイパス路63の開閉操作をするためのバルブである。本実施形態におけるバイパスバルブ66は、前進駆動時、後進駆動時およびブレーキ時にバイパス路63の作動油の流れを遮断し、ニュートラル時に作動油の流れを開放するようになっている。
【0030】
パイロットバルブ67は、油圧抜き路64および内部リーク油回帰路65をPTOに応じて自動的に開閉操作するバルブである。本実施形態におけるパイロットバルブ67は、油圧力とバネ力によって通路を切り替えることができる構成になっており、可変型油圧ポンプ4のゲージポート44の油圧力を受けるように接続されている。この構成により、パイロットバルブ67は、ゲージポート44から油圧力を受けた状態のときにはバネ力に反して油圧抜き路64を遮断するとともに内部リーク油回帰路65を開放するようにバルブを稼働し、ゲージポート44の油圧力から開放されると、付勢されていたバネ力によって油圧抜き路64を開放するとともに内部リーク油回帰路65を遮断するようにバルブが稼働するようになっている。
【0031】
加圧モータ68は、補助駆動モータ5のピストン51を押し縮めるために当該補助駆動モータ5の内圧を高めるためのモータである。本実施形態における加圧モータ68は、直流モータにより構成されており、補助駆動モータ5とパイロットバルブ67との間の内部リーク油回帰路65に接続されている。
【0032】
次に、本実施形態の補助駆動装置1における各構成の作用について説明する。
【0033】
可変型油圧ポンプ4は、前進駆動力、後進駆動力およびブレーキ力を発揮する場合は、PTOを介して牽引車両2の動力を受けて油圧を発生させる。
【0034】
加圧された作動油は、可変型油圧ポンプ4によって前進路61または後進路62を介して補助駆動モータ5に送出される。補助駆動装置1が前進駆動力を発揮するときには、作動油は前進路61を介して補助駆動モータ5に送られる。補助駆動モータ5では、送り込まれた作動油の油圧によって前進駆動力を発揮する。具体的には、星形に配置された複数のピストン51が油圧によって適宜伸縮して、先端のローラ513がカムプロファイル52を押すことでタイヤ軸に連結されたシリンダーブロック514が回転して駆動力を発揮する。このときバイパスバルブ66は、バイパス路63を遮断しているため、前進路62にかけた油圧が後進路63側に逃げることがなく、前記ローラ513はカムプロファイル52から浮き上がることなく押すことができる。これにより補助駆動モータ5は、性能上の最大速度で走行することが可能になる。補助駆動モータ5において前進駆動力を発揮するために使用された作動油は、後進路62を介して後進ポート42から可変型油圧ポンプ内に回帰される。
【0035】
補助駆動装置1において後進駆動力を発揮させる場合は、前進駆動力の場合と逆方向に油圧がかけられる。具体的には、作動油が可変型油圧ポンプ4から後進路62を介して補助駆動モータ5に送られ、送り込まれた作動油の油圧によって後進駆動力を発揮し、前進路61を介して可変型油圧ポンプ4に回帰される。
【0036】
また、補助駆動装置1は、補助駆動モータ5に対し進行方向と逆方向の駆動力を発揮させるなどすることでブレーキ力を発揮する。
【0037】
補助駆動モータ5により前進駆動力、後進駆動力およびブレーキ力を発揮させている状態において、パイロットバルブ67は、ゲージポート44から油圧力を受ける。この油圧力を受けたパイロットバルブ67は、バネ力に反して稼働することで油圧抜き路64を遮断するとともに、内部リーク油回帰路65を開放する。油圧抜き路64が遮断されることで、可変型油圧ポンプ4で発生させた油圧が補助駆動モータ5に伝わる。また、内部リーク油回帰路65が開放されているため、漏れ出た作動油は貯留タンク69に戻され、装置全体の作動油の油量が減るようなことがない。
【0038】
次に、ニュートラル時について説明する。バイパスバルブ66は、バイパス路63を開放し、作動油が前進路61と後進路62との間で流れ得る状態にする。これにより補助駆動モータ5内において前進路61側または後進路62側の油量が少なくなることが生じても、油量不足により生じる油圧の差によってバイパス路63を介して作動油が補給されるため、補助駆動モータ5内の油量が不足することがない。よって、牽引車両2により牽引され、補助駆動装置1が補助駆動モータ5の使用限界とされる速度を超えても、補助駆動モータ5内の油量が不足せず油量不足によるブレーキ力が発生することがない。
【0039】
また、牽引車両2の操縦者による誤操作または操縦者の意図しない故障など何らかの要因により可変型油圧ポンプ4がPTOからの駆動力が得られない場合について説明する。可変型油圧ポンプ4のゲージポート44の油圧はゼロとなる。これに伴いパイロットバルブ67は、バネ力によって稼働し、油圧抜き路64を開放するとともに、内部リーク油回帰路65を遮断する。また、加圧モータ68が補助駆動モータ5の内圧を上げるために駆動を開始する。
【0040】
補助駆動モータ5は、油圧抜き路64の開放により油圧から解放されニュートラル状態になる。よって、牽引車両2によって被牽引車両3が牽引されている状態でPTOからの駆動力が得られなくなった場合であっても、自動的に補助駆動モータ5がニュートラル状態になるため補助駆動モータ5の損傷を防止することができる。
【0041】
また、補助駆動モータ5内は、加圧モータ68により加圧され内圧が上昇する。このときパイロットバルブ67により内部リーク油回帰路65の流通が遮断されているため、加圧モータ68により加えられる圧力が内部リーク油回帰路65を介して貯留タンク69へと漏れ出ることがない。そして補助駆動モータ5内では、ラジアル方向に配置された複数のピストン5が加圧されることにより押し縮められる。これにより、カムプロファイル52は、ピストン61から浮いた状態になり、カム打ちによる補助駆動モータ5の損傷を防止することができる。
【0042】
以上のような本実施形態の補助駆動装置1によれば、以下の効果を奏することができる。
1.ニュートラル状態のときにバイパスバルブ66によって前進路61と後進路62と間で油圧差により自動的に作動油が流通するため、補助駆動モータ5に供給される作動油の油量が不足することがなくなり、補助駆動モータ5の使用限界とされる速度を超えて牽引車両2により牽引されてもブレーキが掛かった状態になるのを防止することができる。
2.牽引車両2の操縦者による誤操作または操縦者の意図しない故障など何らかの要因により可変型油圧ポンプ4がPTOからの駆動力が得られなくなったとしても、パイロットバルブ67が自動的に油圧抜き路64を開放し、補助駆動モータ5がニュートラル状態に切り替わることで、前記補助駆動モータ5の損傷を防止することができる。
3.牽引車両2の操縦者による誤操作または操縦者の意図しない故障など何らかの要因により可変型油圧ポンプ4がPTOからの駆動力が得られなくなったときには、内部リーク油回帰路65を遮断するとともに加圧モータ68により補助駆動モータ5の内圧を高められるため、ラジアル方向に配置された複数のピストン51を押し縮めてカムプロファイル52を浮かし、カム打ちなどによる損傷を防止することができる。
【0043】
なお、本発明に係る補助駆動装置は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、加圧モータ68は、センサ等によりPTOの駆働を検出し、その検出信号に基づき始動させてもよく、パイロットバルブ67と同様にゲージポート44の出力と連動させてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 補助駆動装置
2 牽引車両
3 被牽引車両
4 可変型油圧ポンプ
5 補助駆動モータ
6 油圧回路
41 前進ポート
42 後進ポート
43 油圧抜きポート
44 ゲージポート
51 ピストン
52 カムプロファイル
53 リーク排出ポート
61 前進路
62 後進路
63 バイパス路
64 油圧抜き路
65 内部リーク油回帰路
66 バイパスバルブ
67 パイロットバルブ
68 加圧モータ
69 貯留タンク
511 シリンダー
512 ピストンヘッド
513 ローラ
514 シリンダーブロック
図1
図2
図3
図4