(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083393
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】タイヤトレッド用ゴム組成物、タイヤトレッドおよび乗用車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20240614BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20240614BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240614BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240614BHJP
C08K 5/36 20060101ALI20240614BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240614BHJP
B60C 3/04 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L7/00
C08K3/04
C08K3/36
C08K5/36
B60C1/00 A
B60C3/04 B
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054539
(22)【出願日】2024-03-28
(62)【分割の表示】P 2020041240の分割
【原出願日】2020-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大下 雅樹
(57)【要約】
【課題】低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊特性および加工性をバランスよく総合的に向上できるタイヤトレッド用ゴム組成物、該ゴム組成物からなるタイヤトレッド、および該タイヤトレッドを備えた乗用車用タイヤを提供すること。
【解決手段】イソプレン系ゴムとスチレンブタジエンゴムとを含むゴム成分と、シリカ20質量%以上かつカーボンブラック20質量%以上を含む充填剤と、メルカプト系シランカップリング剤と、液状ゴムと、樹脂とを含む、タイヤトレッド用ゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴムとスチレンブタジエンゴムとを含むゴム成分と、
充填剤100質量%中、シリカ20質量%以上かつカーボンブラック20質量%以上を含む充填剤と、
メルカプト系シランカップリング剤と、
液状ゴムと、
樹脂と、
硫黄とを含む、タイヤトレッド用ゴム組成物であって、
前記スチレンブタジエンゴムはゴム成分中の含有量が最も多く、
前記樹脂は芳香族系樹脂を含み、
前記ゴム成分中の前記イソプレン系ゴムの含有量(質量%)と前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量(質量部)が下記式(A)を満たす、タイヤトレッド用ゴム組成物。
(イソプレン系ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≦2.0 (A)
【請求項2】
前記式(A)の右辺が1.5である、請求項1記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記液状ゴムが液状スチレンブタジエンゴムである、請求項1または2記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
前記芳香族系樹脂がC9系石油樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分100質量部に対する、前記液状ゴムの含有量(質量部)および前記シリカの含有量(質量部)が下記式(B)を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
(液状ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≧0.1 (B)
【請求項6】
前記ゴム成分中のイソプレン系ゴムの含有量(質量%)と前記ゴム成分100質量部に対する前記芳香族系樹脂の含有量(質量部)が下記式(C)を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
(イソプレン系ゴムの含有量)/(芳香族系樹脂の含有量)≦13.0 (C)
【請求項7】
前記ゴム成分100質量部に対する、前記液状ゴムの含有量(質量部)および前記芳香族系樹脂の含有量(質量部)が下記式(D)を満たす、請求項1~6のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
(液状ゴムの含有量)+(芳香族系樹脂の含有量)≧11 (D)
【請求項8】
前記イソプレン系ゴムの前記ゴム成分中の含有量が50質量%未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項9】
前記メルカプト系シランカップリング剤が下記式(S1)で表される化合物、下記式(1)で表される化合物、および、下記式(2)で示される結合単位Aと下記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~8のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【化1】
(式中、R
1001は-Cl、-Br、-OR
1006、-O(O=)CR
1006、-ON=CR
1006R
1007、-NR
1006R
1007および-(OSiR
1006R
1007)
h(OSiR
1006R
1007R
1008)から選択される1価の基(R
1006、R
1007およびR
1008は同一でも異なっていてもよく、各々水素原子または炭素数1~18の1価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R
1002はR
1001、水素原子または炭素数1~18の1価の炭化水素基、R
1003は-[O(R
1009O)
j]-基(R
1009は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R
1004は炭素数1~18の2価の炭化水素基、R
1005は炭素数1~18の1価の炭化水素基を示し、x、yおよびzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。)
【化2】
(式中、R
101~R
103は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~12のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~12のアルコキシ基、または-O-(R
111-O)
z-R
112(z個のR
111は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30の2価の炭化水素基を表す。z個のR
111は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R
112は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルケニル基、炭素数6~30のアリール基、または炭素数7~30のアラルキル基を表す。zは、1~30の整数を表す。)で表される基を表す。R
101~R
103はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R
104は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~6のアルキレン基を表す。)
【化3】
【化4】
(式中、xは0以上の整数、yは1以上の整数である。R
201は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルケニル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルキニル基、または該アルキル基の末端の水素原子が水酸基もしくはカルボキシル基で置換されたものを表す。R
202は、それぞれ、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキレン基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルケニレン基、または、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルキニレン基を表す。R
201とR
202とで環構造を形成してもよい。)
【請求項10】
前記充填剤の、前記ゴム成分100質量部に対する合計含有量が60質量部以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項11】
前記スチレンブタジエンゴムのスチレン含量が30.0質量%以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項12】
前記ゴム成分がブタジエンゴム5質量%以上を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物からなるタイヤトレッド。
【請求項14】
請求項13記載のタイヤトレッドを備えた乗用車用タイヤ。
【請求項15】
タイヤ外径Dt(mm)とタイヤ断面幅Wt(mm)との関係が下記式(α)を満たす、請求項14記載の乗用車用タイヤ。
1963.4≦(Dt^2×π/4)/Wt≦2827.4 (α)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物、該ゴム組成物からなるタイヤトレッド、および該タイヤトレッドを備えた乗用車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からタイヤには、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊特性等、種々の性能が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、低転がり抵抗、ウェットグリップ性能および耐摩耗性を向上するため、所定の乳化重合スチレンブタジエンゴム、末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴムおよび天然ゴムからなる3種のゴムを所定重量比で含むジエン系ゴム成分に、シリカを所定量含む充填剤を配合したタイヤトレッド用ゴム組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、スチレンブタジエンゴムにシリカを配合したゴム組成物は、スチレンブタジエンゴムとシリカとの化学結合による固着により、加工性が悪くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊特性および加工性をバランスよく総合的に向上できるタイヤトレッド用ゴム組成物、該ゴム組成物からなるタイヤトレッド、および該タイヤトレッドを備えた乗用車用タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、イソプレン系ゴムとスチレンブタジエンゴムとを含むゴム成分に、シリカおよびカーボンブラックをそれぞれ所定量含む充填剤と、メルカプト系シランカップリング剤と、液状ゴムと、樹脂とを配合してゴム組成物とすれば、上記課題を解決できることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1]イソプレン系ゴムとスチレンブタジエンゴムとを含むゴム成分と、
シリカ20質量%以上、好ましくは21質量%以上、より好ましくは23質量%以上、より好ましくは25質量%以上、または、好ましくは20~80質量%、より好ましくは21~80質量%、より好ましくは21~70質量%、より好ましくは23~70質量%、より好ましくは23~65質量%、より好ましくは25~65質量%、かつカーボンブラック20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、または、好ましくは20~80質量%、より好ましくは25~80質量%、より好ましくは25~77質量%、より好ましくは30~77質量%、より好ましくは30~75質量%、より好ましくは35~75質量%を含む充填剤と、
メルカプト系シランカップリング剤と、
液状ゴムと、
樹脂とを含む、タイヤトレッド用ゴム組成物、
[2]前記ゴム成分中の前記イソプレン系ゴムの含有量(質量%)と前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量(質量部)が下記式(A)を満たす、上記[1]記載のタイヤトレッド用ゴム組成物、
(イソプレン系ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≦2.0 (A)
(好ましくは(イソプレン系ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≦1.5、より好ましくは(イソプレン系ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≦1.0、より好ましくは(イソプレン系ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≦0.8、より好ましくは(イソプレン系ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≦0.6、または、好ましくは0.1≦(イソプレン系ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≦2.0、より好ましくは0.1≦(イソプレン系ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≦1.5、より好ましくは0.1≦(イソプレン系ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≦1.0、より好ましくは0.2≦(イソプレン系ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≦0.8、より好ましくは0.2≦(イソプレン系ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≦0.6)
[3]前記液状ゴムが液状スチレンブタジエンゴムである、上記[1]または[2]記載のタイヤトレッド用ゴム組成物、
[4]前記樹脂が芳香族系樹脂である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物、
[5]前記ゴム成分100質量部に対する、前記液状ゴムの含有量(質量部)および前記シリカの含有量(質量部)が下記式(B)を満たす、上記[1]~[4]のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物、
(液状ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≧0.1 (B)
(好ましくは(液状ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≧0.2、より好ましくは(液状ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≧0.3、または、好ましくは1.0≧(液状ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≧0.1、より好ましくは0.7≧(液状ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≧0.1、より好ましくは0.5≧(液状ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≧0.2、より好ましくは0.5≧(液状ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≧0.3)
[6]前記ゴム成分中のイソプレン系ゴムの含有量(質量%)と前記ゴム成分100質量部に対する前記樹脂の含有量(質量部)が下記式(C)を満たす、上記[1]~[5]のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物、
(イソプレン系ゴムの含有量)/(樹脂の含有量)≦13.0 (C)
(好ましくは(イソプレン系ゴムの含有量)/(樹脂の含有量)≦12.0、より好ましくは(イソプレン系ゴムの含有量)/(樹脂の含有量)≦10.0、より好ましくは(イソプレン系ゴムの含有量)/(樹脂の含有量)≦8.0、または、好ましくは0.3≦(イソプレン系ゴムの含有量)/(樹脂の含有量)≦13.0、より好ましくは0.7≦(イソプレン系ゴムの含有量)/(樹脂の含有量)≦12.0、より好ましくは1.0≦(イソプレン系ゴムの含有量)/(樹脂の含有量)≦10.0、より好ましくは1.3≦(イソプレン系ゴムの含有量)/(樹脂の含有量)≦10.0、より好ましくは1.3≦(イソプレン系ゴムの含有量)/(樹脂の含有量)≦8.0)
[7]前記ゴム成分100質量部に対する、前記液状ゴムの含有量(質量部)および前記樹脂の含有量(質量部)が下記式(D)を満たす、上記[1]~[6]のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物、
(液状ゴムの含有量)+(樹脂の含有量)≧11 (D)
(好ましくは(液状ゴムの含有量)+(樹脂の含有量)≧12、より好ましくは(液状ゴムの含有量)+(樹脂の含有量)≧13、より好ましくは(液状ゴムの含有量)+(樹脂の含有量)≧14、または、好ましくは35≧(液状ゴムの含有量)+(樹脂の含有量)≧11、より好ましくは30≧(液状ゴムの含有量)+(樹脂の含有量)≧12、より好ましくは25≧(液状ゴムの含有量)+(樹脂の含有量)≧13、より好ましくは25≧(液状ゴムの含有量)+(樹脂の含有量)≧14、より好ましくは22≧(液状ゴムの含有量)+(樹脂の含有量)≧14)
[8]前記イソプレン系ゴムの前記ゴム成分中の含有量が50質量%未満、好ましくは46質量%以下、より好ましくは43質量%以下、より好ましくは40質量%以下、または、より好ましくは5質量%以上50質量%未満、より好ましくは5~46質量%、より好ましくは5~43質量%、より好ましくは10~43質量%、より好ましくは10~40質量%、より好ましくは15~40質量%である、上記[1]~[7]のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物、
[9]前記メルカプト系シランカップリング剤が下記式(S1)で表される化合物、下記式(1)で表される化合物、および、下記式(2)で示される結合単位Aと下記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種、好ましくは下記式(S1)で表される化合物である、上記[1]~[8]のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物、
【化1】
(式中、R
1001は-Cl、-Br、-OR
1006、-O(O=)CR
1006、-ON=CR
1006R
1007、-ON=CR
1006R
1007、-NR
1006R
1007および-(OSiR
1006R
1007)
h(OSiR
1006R
1007R
1008)から選択される1価の基(R
1006、R
1007およびR
1008は同一でも異なっていてもよく、各々水素原子または炭素数1~18の1価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R
1002はR
1001、水素原子または炭素数1~18の1価の炭化水素基、R
1003は-[O(R
1009O)
j]-基(R
1009は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R
1004は炭素数1~18の2価の炭化水素基、R
1005は炭素数1~18の1価の炭化水素基を示し、x、yおよびzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。)
【化2】
(式中、R
101~R
103は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~12のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~12のアルコキシ基、または-O-(R
111-O)
z-R
112(z個のR
111は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30の2価の炭化水素基を表す。z個のR
111は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R
112は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルケニル基、炭素数6~30のアリール基、または炭素数7~30のアラルキル基を表す。zは、1~30の整数を表す。)で表される基を表す。R
101~R
103はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R
104は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~6のアルキレン基を表す。)
【化3】
【化4】
(式中、xは0以上の整数、yは1以上の整数である。R
201は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルケニル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルキニル基、または該アルキル基の末端の水素原子が水酸基もしくはカルボキシル基で置換されたものを表す。R
202は、それぞれ、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキレン基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルケニレン基、または、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルキニレン基を表す。R
201とR
202とで環構造を形成してもよい。)、
[10]上記[1]~[9]のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物からなるタイヤトレッド、
[11]上記[10]記載のタイヤトレッドを備えた乗用車用タイヤ、
[12]タイヤ外径Dt(mm)とタイヤ断面幅Wt(mm)との関係が下記式(α)を満たす、上記[11]記載の乗用車用タイヤ、
1963.4≦(Dt^2×π/4)/Wt≦2827.4 (α)
(好ましくは1970.0≦(Dt^2×π/4)/Wt≦2800.0、より好ましくは1980.0≦(Dt^2×π/4)/Wt≦2700.0、より好ましくは1990.0≦(Dt^2×π/4)/Wt≦2600.0)
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊特性および加工性をバランスよく総合的に向上できるタイヤトレッド用ゴム組成物、該ゴム組成物からなるタイヤトレッド、および該タイヤトレッドを備えた乗用車用タイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一の態様は、イソプレン系ゴムとスチレンブタジエンゴムとを含むゴム成分と、シリカ20質量%以上かつカーボンブラック20質量%以上を含む充填剤と、メルカプト系シランカップリング剤と、液状ゴムと、樹脂とを含む、タイヤトレッド用ゴム組成物である。
【0011】
理論に拘束されることは意図しないが、上記効果が発揮されるメカニズムとしては以下が考えられる。ゴム成分としてイソプレン系ゴム(IR系)とスチレンブタジエンゴム(SBR)とを含む場合、イソプレン系ゴムからなるIR系相とスチレンブタジエンゴムからなるSBR相とが海島構造、すなわち、IR系相からなる島相およびSBR相からなる海相を形成する。これらのゴム成分は、互いに極性が異なるため、充填剤としてシリカおよびカーボンブラックのいずれか一方のみを配合すると各相における充填剤の分配に偏りが生じる。つまり、シリカはSBR相に、カーボンブラックはIR系相に分配されがちとなる。そこで、充填剤としてシリカとカーボンブラックの双方を満遍なく配合して充填材の分散を均一化し破壊特性の向上を図るが、この場合、SBR相におけるウェットグリップ性能に寄与する高周波域でのエネルギーロスが低下しがちになるので、これに対し、シリカと相互作用を起こす樹脂を配合してSBR相のエネルギーロスを高めてウェットグリップ性能を向上させる。ただし、そのようにすると、今度は、シリカおよび樹脂がSBR相の流動性を悪化させ加工性を低下させる方向に働くので、これに対し、SBR相の流動性を向上させるべく、流動性向上に直接寄与する液状ゴムを配合し、加工性を改善する。また、シリカとの反応性の高いメルカプト系シランカップリング剤を配合することによりシリカの分散性を高めれば、低燃費性の向上や、ウェットグリップ性能の一層の向上にも寄与する。以上により、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊特性および加工性がバランスよく総合的に向上すると考えられる。
【0012】
前記ゴム成分中の前記イソプレン系ゴムの含有量(質量%)と前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量(質量部)は、下記式(A)を満たすことが好ましい。イソプレン系ゴムのシリカに対する質量比が2.0以下であると、IR系相およびSBR相への充填剤の分配に偏りが生じにくくなるとともに、シリカを分散させやすくなるため、低燃費性および破壊特性をさらにバランスよく向上できる傾向があるからである。(イソプレン系ゴムの含有量)/(シリカの含有量)の値は、1.5以下が好ましく、1.0以下がより好ましく、0.8以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましい。また、(イソプレン系ゴムの含有量)/(シリカの含有量)の値は、本開示の効果がより好適に得られるという理由から、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。
(イソプレン系ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≦2.0 (A)
【0013】
前記液状ゴムは、液状スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。液状スチレンブタジエンゴムがSBR相により選択的に入ることにより、SBR相の流動性を向上させて加工性の向上効果をより良好に発揮できる傾向があるからである。
【0014】
前記樹脂は、芳香族系樹脂であることが好ましい。芳香族系樹脂はSBRとの相溶性に優れるため、SBR相におけるシリカと相互作用を起こして、SBR相の高周波域でのエネルギーロスを高めることにより、ウェットグリップ性能の向上効果をより良好に発揮できる傾向があるからである。
【0015】
前記ゴム成分100質量部に対する、前記液状ゴムの含有量(質量部)および前記シリカの含有量(質量部)は、下記式(B)を満たすことが好ましい。液状ゴムのシリカに対する質量比が0.1以上であると、液状ゴムによりSBR相の流動性が向上して加工性が高まるとともに、シリカの分散性が図られやすく低燃費性の向上にも寄与するため、低燃費性および加工性をさらにバランスよく向上できる傾向があるからである。(液状ゴムの含有量)/(シリカの含有量)の値は、0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましい。また、(液状ゴムの含有量)/(シリカの含有量)の値は、本開示の効果がより好適に得られるという理由から、1.0以下が好ましく、0.7以下がより好ましく、0.5以下がさらに好ましい。
(液状ゴムの含有量)/(シリカの含有量)≧0.1 (B)
【0016】
前記ゴム成分中の前記イソプレン系ゴムの含有量(質量%)と前記ゴム成分100質量部に対する前記樹脂の含有量(質量部)は、下記式(C)を満たすことが好ましい。イソプレン系ゴムの樹脂に対する質量比が13.0以下であると、樹脂の配合効果を発揮させやすくなりSBR相における高周波域でのエネルギーロスを高めるとともに、イソプレン系ゴム自体の破壊特性向上の効果を得られやすくなるため、ウェットグリップ性能および破壊特性をさらにバランスよく向上できる傾向があるからである。(イソプレン系ゴムの含有量)/(樹脂の含有量)の値は、12.0以下が好ましく、10.0以下がより好ましく、8.0以下がさらに好ましい。また、(イソプレン系ゴムの含有量)/(樹脂の含有量)の値は、本開示の効果がより好適に得られるという理由から、0.3以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、1.0以上がより好ましく、1.3以上がさらに好ましい。
(イソプレン系ゴムの含有量)/(樹脂の含有量)≦13.0 (C)
【0017】
前記ゴム成分100質量部に対する、前記液状ゴムの含有量(質量部)および前記樹脂の含有量(質量部)は、下記式(D)を満たすことが好ましい。液状ゴムと樹脂の含有量の合計が11以上であると、樹脂および液状ゴムの両方の配合効果を発揮させやすくなり、SBR相における高周波域でのエネルギーロスを高めながら流動性を向上させるため、ウェットグリップ性能および加工性をさらにバランスよく向上できる傾向があるからである。(液状ゴムの含有量)+(樹脂の含有量)の値は、12以上が好ましく、13以上がより好ましく、14以上がさらに好ましい。また、(液状ゴムの含有量)+(樹脂の含有量)の値は、本開示の効果がより好適に得られるという理由から、35以下が好ましく、30以下がより好ましく、25以下がより好ましく、22以下がさらに好ましい。
(液状ゴムの含有量)+(樹脂の含有量)≧11 (D)
【0018】
前記イソプレン系ゴムの前記ゴム成分中の含有量は、50質量%未満であることが好ましい。50質量%未満であると、IR系相が島相として形成されやすいため、SBR相によるウェットグリップ性能の向上効果が発揮されやすい傾向があるからである。該含有量は、加工性の向上の観点から、46質量%以下が好ましく、43質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。また、該含有量は、破壊特性の向上の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。
【0019】
前記メルカプト系シランカップリング剤は、下記式(S1)で表される化合物、下記式(1)で表される化合物、および、下記式(2)で示される結合単位Aと下記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの化合物はシリカとの反応性が高いため、シリカ分散の向上効果が良好に発揮され、本開示の効果をより良好に発揮できるからである。
【化5】
(式中、R
1001は-Cl、-Br、-OR
1006、-O(O=)CR
1006、-ON=CR
1006R
1007、-ON=CR
1006R
1007、-NR
1006R
1007および-(OSiR
1006R
1007)
h(OSiR
1006R
1007R
1008)から選択される1価の基(R
1006、R
1007およびR
1008は同一でも異なっていてもよく、各々水素原子または炭素数1~18の1価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R
1002はR
1001、水素原子または炭素数1~18の1価の炭化水素基、R
1003は-[O(R
1009O)
j]-基(R
1009は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R
1004は炭素数1~18の2価の炭化水素基、R
1005は炭素数1~18の1価の炭化水素基を示し、x、yおよびzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。)
【化6】
(式中、R
101~R
103は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~12のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~12のアルコキシ基、または-O-(R
111-O)
z-R
112(z個のR
111は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30の2価の炭化水素基を表す。z個のR
111は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R
112は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルケニル基、炭素数6~30のアリール基、または炭素数7~30のアラルキル基を表す。zは、1~30の整数を表す。)で表される基を表す。R
101~R
103はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R
104は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~6のアルキレン基を表す。)
【化7】
【化8】
(式中、xは0以上の整数、yは1以上の整数である。R
201は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルケニル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルキニル基、または該アルキル基の末端の水素原子が水酸基もしくはカルボキシル基で置換されたものを表す。R
202は、それぞれ、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキレン基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルケニレン基、または、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルキニレン基を表す。R
201とR
202とで環構造を形成してもよい。)
【0020】
本開示の他の態様は、上記タイヤトレッド用ゴム組成物からなるタイヤトレッドである。
【0021】
本開示の他の態様は、上記タイヤトレッドを備えた乗用車用タイヤである。
【0022】
上記乗用車用タイヤは、タイヤ外径Dt(mm)とタイヤ断面幅Wt(mm)との関係が下記式(α)を満たす乗用車用タイヤに適用することが好ましい。
1963.4≦(Dt^2×π/4)/Wt≦2827.4 (α)
【0023】
なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、特に断りのない限り、その両端の数値を含むものとする。
【0024】
<ゴム成分>
本開示のゴム成分は、イソプレン系ゴムとスチレンブタジエンゴムとを含む。
【0025】
(イソプレン系ゴム)
イソプレン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、改質NR、変性NR、イソプレンゴム(IR)、変性IR等があげられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等があげられる。IRとしては、特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等があげられる。なかでも、破壊特性の向上の観点から、NR、改質NRおよび変性NRから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。このうちNRは伸長結晶化の特性を有しており引張強度に特に優れるため破壊特性を一層向上できるという理由から、イソプレン系ゴムとしてはNRを含むことがより好ましく、NRのみであってもよい。イソプレン系ゴムは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0026】
(スチレンブタジエンゴム)
スチレンブタジエンゴム(SBR)としては、特に限定されず、例えば未変性の乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)や溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)、これらを変性した変性乳化重合スチレンブタジエンゴム(変性E-SBR)や変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(変性S-SBR)などの変性SBRがあげられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性された変性SBR、スズ、ケイ素化合物などでカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するものなど)などがあげられる。またSBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、伸展油を加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。SBRは、例えば、JSR(株)、旭化成ケミカルズ(株)、日本ゼオン(株)、ZSエラストマー(株)等によって製造販売されるものなどを用いることができる。なかでも、低燃費性、ウェットグリップ性能および加工性をよりバランスよく向上できるという理由から、E-SBRおよびS-SBRの少なくとも一種を含むことが好ましく、E-SBRを含むことがより好ましく、E-SBRのみであることがさらに好ましい。SBRは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0027】
SBRのスチレン含量は、特に限定されないが、15.0質量%~40.0質量%であることが好ましい。該スチレン含量は、ゴム強度やグリップ性能の観点から、20.0質量%以上がより好ましい。また、該スチレン含量は、低燃費性および耐摩耗性の観点から、30.0質量%以下がより好ましい。なお、本明細書におけるスチレン含量は、1H-NMR測定により算出される値である。
【0028】
SBRのビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、特に限定されないが、10.0~80.0%であることが好ましい。該ビニル含量は、ゴム強度やグリップ性能の観点から、13.0%以上が好ましく、15.0%以上がより好ましい。また、該ビニル含量は、低燃費性の観点から、60.0%以下が好ましく、40.0%以下が好ましく、20.0%以下がより好ましい。なお、本明細書におけるビニル含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される値である。
【0029】
SBRのゴム成分中の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%超がより好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、95質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましい。SBRの含有量が上記範囲内であると、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊特性および加工性をよりバランスよく総合的に向上することができるという効果が得られる傾向がある。ここで、本開示の効果がより好適に得られるという理由からは、SBRがゴム成分中の主成分(すなわちゴム成分中最も多く含まれる成分)であることが好ましい。なお、SBRとして油展タイプのSBRを用いる場合は、当該油展タイプのSBR中に含まれる固形分としてのSBR自体の含有量をゴム成分中のSBRの含有量とする。
【0030】
(他のゴム成分)
ゴム成分は、上記イソプレン系ゴムおよびスチレンブタジエンゴム以外のゴム成分(他のゴム成分)を含んでいてもよい。このような他のゴム成分は特に限定されず、上記イソプレン系ゴムおよびスチレンブタジエンゴム以外のジエン系ゴムや、非ジエン系ゴムなど、従来、ゴム工業で用いられるものをいずれも好適に用いることができる。ジエン系ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などがあげられる。非ジエン系ゴムとしては、例えば、ブチルゴム(IIR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等があげられる。他のゴム成分は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。なかでも、本開示の効果をより良好に発揮できるという理由から、BRが好ましい。すなわちゴム成分としては、イソプレン系ゴム、SBRおよびBRを含むことがより好ましく、イソプレン系ゴム、SBRおよびBRのみであってもよい。
【0031】
BRとしては、特に限定されず、この分野で通常使用されるものをいずれも好適に用いることができる。例えば、ローシスポリブタジエンゴム(ローシスBR)、ハイシスポリブタジエンゴム(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム(SPB含有BR)、変性ブタジエンゴム(変性BR)などの各種BRを用いることができる。なかでも、ハイシスBRが好ましい。BRは、例えば、宇部興産(株)、日本ゼオン(株)、JSR(株)、ランクセス社等によって製造販売されるものなどを用いることができる。BRは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0032】
ハイシスBRとは、シス含量(シス-1,4結合含有率)が90%以上のブタジエンゴムである。なかでも、シス-1,4結合含有率が95%以上のものが好ましく、96%以上のものがより好ましく、97%以上のものがさらに好ましい。ハイシスBRを含有することで低発熱性、引張強さや破断時伸び、耐摩耗性を向上させることができる。なお、本明細書におけるシス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される値である。
【0033】
希土類系BRとしては、希土類元素系触媒を用いて合成され、ビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)が好ましくは1.8%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.8%以下であり、シス含量(シス-1,4結合含有率)が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上のものを好適に用いることができる。ビニル含量およびシス含量が上記範囲内であることにより、得られるゴム組成物の破断時伸びおよび耐摩耗性が優れるという効果が得られる。
【0034】
希土類系BRの合成に使用される希土類元素系触媒としては、公知のものを使用でき、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒があげられる。
【0035】
SPB含有BRは、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、BR中に単に分散しているものではなく、BRと化学結合したうえで分散しているものがあげられる。前記結晶がゴム成分と化学結合したうえで分散していることにより、複素弾性率が向上する傾向がある。
【0036】
変性BRとしては、末端および/または主鎖が変性された変性BR、スズ、ケイ素化合物などでカップリングされた変性BR(縮合物、分岐構造を有するものなど)、シリカと相互作用を持つ官能基により末端および/または主鎖が変性された変性BR、特に、シリル基、アミノ基、アミド基、水酸基、およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する変性BRなどがあげられる。変性BRを用いることで、充填剤との相互作用をより強固とし低燃費性に優れるという効果が得られる。
【0037】
BRを含有する場合のゴム成分中の含有量は、5質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。BRの含有量が上記範囲内であると、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊特性および加工性をよりバランスよく総合的に向上することができるという効果が得られる傾向がある。
【0038】
<充填剤>
本開示の充填剤は、シリカ20質量%以上かつカーボンブラック20質量%以上を含む。なかでも、本開示の効果をより良好に発揮できるという理由から、本開示の充填剤は、シリカとカーボンブラックとからなるものであることが好ましい。
【0039】
(シリカ)
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水ケイ酸)、湿式法により調製されたシリカ(含水ケイ酸)等があげられる。なかでも、表面のシラノール基が多く、シランカップリング剤との反応点が多いという理由から、湿式法により調製されたシリカが好ましい。シリカは、例えば、エボニックデグサ社、ソルベイ社、東ソー・シリカ(株)、(株)トクヤマ等によって製造販売されるものなどを用いることができる。シリカは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0040】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、特に限定されないが、低燃費性および十分な補強性を確保する観点から、80m2/g以上が好ましく、90m2/g以上がより好ましく、100m2/g以上がより好ましく、110m2/g以上がさらに好ましい。また、該N2SAは、シリカの分散性、加工性の観点から、500m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、170m2/g以下がより好ましく、150m2/g以下がさらに好ましい。シリカのN2SAが上記範囲内であると、本開示の効果をより良好に発揮できる傾向がある。なお、本明細書におけるシリカのN2SAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0041】
シリカのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)比表面積は、80m2/g以上が好ましく、90m2/g以上がより好ましく、100m2/g以上がさらに好ましい。また、該CTAB比表面積は、300m2/g以下がより好ましく、170m2/g以下がより好ましく、150m2/g以下がさらに好ましい。シリカのCTAB比表面積が上記範囲内であると、本開示の効果をより良好に発揮できる傾向がある。なお、本明細書におけるシリカのCTAB比表面積は、ASTM D3765-92に準拠して測定される値である。
【0042】
シリカのゴム成分100質量部に対する含有量は、低燃費性、ウェットグリップ性能および十分な補強性を確保する観点から、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、シリカの分散性、加工性、ウェットグリップ性能の観点から、150質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。
【0043】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなど、ゴム工業において一般的なものを使用できる。カーボンブラックは、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、日鉄カーボン(株)、コロンビアカーボン社等によって製造販売されるものなどを用いることができる。カーボンブラックは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0044】
カーボンブラックのN2SAは、特に限定されないが、十分な補強性が得られ、破壊特性をより向上できる観点から、50m2/g以上が好ましく、70m2/g以上がより好ましく、90m2/g以上がより好ましく、111m2/g以上がさらに好ましい。また、該N2SAは、分散性に優れ、発熱しにくいという観点から、500m2/g以下が好ましく、450m2/g以下がより好ましく、300m2/g以下がより好ましく、250m2/g以下がより好ましく、200m2/g以下がより好ましく、180m2/g以下がより好ましく、160m2/g以下がさらに好ましい。カーボンブラックのN2SAが上記範囲内であると、本開示の効果をより良好に発揮できる傾向がある。なお、本明細書におけるカーボンブラックのN2SAは、JIS K 6217-2:2001に準拠して測定される値である。
【0045】
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、特に限定されないが、十分な補強性が得られる観点、および良好な低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性が得られる観点から、50ml/100g以上が好ましく、70ml/100g以上がより好ましく、90ml/100g以上がより好ましく、115ml/100g以上がさらに好ましい。また、該DBP吸油量は、低燃費性の観点から、220ml/100g以下が好ましく、180ml/100g以下がより好ましく、130ml/100g以下がさらに好ましい。カーボンブラックのDBP吸油量が上記範囲内であると、本開示の効果をより良好に発揮できる傾向がある。なお、本明細書におけるカーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K 6217-4:2008に準じて測定される値である。
【0046】
カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量は、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、150質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。カーボンブラックの含有量が上記範囲内であると、十分な破壊特性、ゴムへの良好な分散、良好な加工性が得られる傾向があり、本開示の効果をより良好に発揮できる傾向がある。
【0047】
(他の充填剤)
充填剤としては、シリカおよびカーボンブラック以外に、さらにその他の充填剤を用いてもよく、用いなくてもよい。そのような充填剤としては、特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、タルク、クレーなどこの分野で一般的に使用される充填剤をいずれも用いることができる。他の充填剤は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0048】
(充填剤中のシリカとカーボンブラックの含有量)
充填剤中のシリカとカーボンブラックの含有量は、シリカ20質量%以上かつカーボンブラック20質量%以上である。充填剤中のシリカおよびカーボンブラックの含有量が上記範囲を外れる場合、IR系相およびSBR相への充填剤の分配に偏りが生じてしまい、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊特性および加工性がバランスよく総合的に向上しにくい傾向がある。充填剤中のシリカの含有量は、上記範囲内で適宜調節することができるが、21質量%以上が好ましく、23質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。また、充填剤中のシリカの含有量は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましい。充填剤中のカーボンブラックの含有量は、上記範囲内で適宜調節することができるが、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。また、充填剤中のカーボンブラックの含有量は、80質量%以下が好ましく、77質量%以下がより好ましく、75質量%以下がさらに好ましい。充填剤中のシリカとカーボンブラックの含有量が上記範囲内であると、IR系相へのカーボンブラックの分配およびSBR相へのシリカの分配の双方が効果的に行われやすいため、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊特性および加工性をよりバランスよく総合的に向上することができるという効果が得られる傾向がある。
【0049】
(充填剤の合計含有量)
充填剤の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、十分な補強性の観点から、30質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、80質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、250質量部以下が好ましく、180質量部以下がより好ましく、150質量部以下がより好ましく、120質量部以下がさらに好ましい。
【0050】
<シランカップリング剤>
本開示のゴム組成物は、メルカプト系シランカップリング剤を含む。
【0051】
(メルカプト系シランカップリング剤)
本開示において、「メルカプト系シランカップリング剤」とは、メルカプト基を有するシランカップリング剤および保護基によってメルカプト基が保護された構造のシランカップリング剤を意味する。メルカプト系シランカップリング剤は特に限定されず、例えば、下記式(S1)で表される化合物、下記式(1)で表される化合物、および、下記式(2)で示される結合単位Aと下記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。なかでも、本開示の効果をより良好に発揮できるという理由から、下記式(S1)で表される化合物、および、下記式(2)で示される結合単位Aと下記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物の少なくとも1種が好ましく、下記式(S1)で表される化合物がより好ましい。
【化9】
(式中、R
1001は-Cl、-Br、-OR
1006、-O(O=)CR
1006、-ON=CR
1006R
1007、-ON=CR
1006R
1007、-NR
1006R
1007および-(OSiR
1006R
1007)
h(OSiR
1006R
1007R
1008)から選択される1価の基(R
1006、R
1007およびR
1008は同一でも異なっていてもよく、各々水素原子または炭素数1~18の1価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R
1002はR
1001、水素原子または炭素数1~18の1価の炭化水素基、R
1003は-[O(R
1009O)
j]-基(R
1009は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R
1004は炭素数1~18の2価の炭化水素基、R
1005は炭素数1~18の1価の炭化水素基を示し、x、yおよびzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。)
【化10】
(式中、R
101~R
103は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~12のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~12のアルコキシ基、または-O-(R
111-O)
z-R
112(z個のR
111は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30の2価の炭化水素基を表す。z個のR
111は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R
112は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルケニル基、炭素数6~30のアリール基、または炭素数7~30のアラルキル基を表す。zは、1~30の整数を表す。)で表される基を表す。R
101~R
103はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R
104は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~6のアルキレン基を表す。)
【化11】
【化12】
(式中、xは0以上の整数、yは1以上の整数である。R
201は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルケニル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルキニル基、または該アルキル基の末端の水素原子が水酸基もしくはカルボキシル基で置換されたものを表す。R
202は、それぞれ、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキレン基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルケニレン基、または、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルキニレン基を表す。R
201とR
202とで環構造を形成してもよい。)
【0052】
メルカプト系シランカップリング剤は、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社、エボニックデグサ社等によって製造販売されるものなどを用いることができる。メルカプト系シランカップリング剤は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0053】
以下、上記式(S1)で表される化合物について説明する。
【0054】
式(S1)において、R1005、R1006、R1007およびR1008はそれぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基およびアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。また、R1002が炭素数1~18の1価の炭化水素基である場合は、直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基およびアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。R1009は直鎖状、環状または分枝状のアルキレン基であることが好ましく、特に直鎖状のものが好ましい。R1004は例えば炭素数1~18のアルキレン基、炭素数2~18のアルケニレン基、炭素数5~18のシクロアルキレン基、炭素数6~18のシクロアルキルアルキレン基、炭素数6~18のアリーレン基、炭素数7~18のアラルキレン基をあげることができる。アルキレン基およびアルケニレン基は、直鎖状および分枝状のいずれであってもよく、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレン基およびアラルキレン基は、環上に低級アルキル基等の官能基を有していてもよい。このR1004としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、特に直鎖状アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。
【0055】
式(S1)におけるR1002、R1005、R1006、R1007およびR1008の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロぺニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等があげられる。
【0056】
式(S1)におけるR1009の例として、直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、ヘキシレン基等があげられ、分枝状アルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロピレン基等があげられる。
【0057】
式(S1)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等があげられる。なかでも、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0058】
式(S1)で表されるシランカップリング剤は、分子内にチオエステル構造(すなわち保護されたメルカプト基)を有しており、高温までゴム成分との反応性が少なく、混練中のゴム成分とシランカップリング剤とシリカとの強固な結合を抑制することができ、シリカを適度に分散させることができるので、本開示の効果をより良好に発揮できる傾向がある。
【0059】
次に、上記式(1)で表される化合物について説明する。
【0060】
R101~R103は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~12のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~12のアルコキシ基、または-O-(R111-O)z-R112で表される基を表す。本開示の効果が良好に得られるという点から、R101~R103は、少なくとも1つが-O-(R111-O)z-R112で表される基であることが好ましく、2つが-O-(R111-O)z-R112で表される基であり、かつ、1つが直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~12のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0061】
R101~R103の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~12(好ましくは炭素数1~5)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基などがあげられる。
【0062】
R101~R103の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~12(好ましくは炭素数1~5)のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基などがあげられる。
【0063】
R101~R103の-O-(R111-O)z-R112において、R111は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30(好ましくは炭素数1~15、より好ましくは炭素数1~3)の2価の炭化水素基を表す。該炭化水素基としては、例えば、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキレン基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルケニレン基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルキニレン基、炭素数6~30のアリーレン基などがあげられる。なかでも直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキレン基が好ましい。
【0064】
R111の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30(好ましくは炭素数1~15、より好ましくは炭素数1~3)のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などがあげられる。
【0065】
R111の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30(好ましくは炭素数2~15、より好ましくは炭素数2または3)のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1-プロペニレン基、2-プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、1-ペンテニレン基、2-ペンテニレン基、1-ヘキセニレン基、2-ヘキセニレン基、1-オクテニレン基などがあげられる。
【0066】
R111の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30(好ましくは炭素数2~15、より好ましくは炭素数2または3)のアルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などがあげられる。
【0067】
R111の炭素数6~30(好ましくは炭素数6~15)のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基などがあげられる。
【0068】
zは、1~30の整数であり、2~20が好ましく、3~7がより好ましく、5または6がさらに好ましい。
【0069】
R112は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルケニル基、炭素数6~30のアリール基または炭素数7~30のアラルキル基を表す。なかでも直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキル基が好ましい。
【0070】
R112の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30(好ましくは炭素数3~25、より好ましくは炭素数10~15)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基などがあげられる。
【0071】
R112の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30(好ましくは炭素数3~25、より好ましくは炭素数10~15)のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、1-オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、オクタデセニル基などがあげられる。
【0072】
R112の炭素数6~30(好ましくは炭素数10~20)のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基などがあげられる。
【0073】
R112の炭素数7~30(好ましくは炭素数10~20)のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などがあげられる。
【0074】
-O-(R111-O)z-R112で表される基の具体例としては、例えば、-O-(C2H4-O)5-C11H23、-O-(C2H4-O)5-C12H25、-O-(C2H4-O)5-C13H27、-O-(C2H4-O)5-C14H29、-O-(C2H4-O)5-C15H31、-O-(C2H4-O)3-C13H27、-O-(C2H4-O)4-C13H27、-O-(C2H4-O)6-C13H27、-O-(C2H4-O)7-C13H27、などがあげられる。なかでも-O-(C2H4-O)5-C11H23、-O-(C2H4-O)5-C13H27、-O-(C2H4-O)5-C15H31、-O-(C2H4-O)6-C13H27が好ましい。
【0075】
R104の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~6(好ましくは炭素数1~5)のアルキレン基としては、例えば、R111の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキレン基と同様の基をあげることができる。
【0076】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランや、下記式で表される化合物などがあげられ、下記式で表される化合物を好適に用いることができる。
【化13】
【0077】
次に、上記式(2)で示される結合単位Aと上記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物について説明する。
【0078】
上記式(2)で示される結合単位Aと上記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物は、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシランに比べ、加工中の粘度上昇が抑制される。これは結合単位Aのスルフィド部分がC-S-C結合であるため、テトラスルフィドやジスルフィドに比べ熱的に安定であることから、ムーニー粘度の上昇が少ないためと考えられる。
【0079】
また、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシランに比べ、スコーチ時間の短縮が抑制される。これは、結合単位Bはメルカプトシランの構造を持っているが、結合単位Aの-C7H15部分が結合単位Bの-SH基を覆うため、ポリマーと反応しにくく、スコーチが発生しにくいためと考えられる。
【0080】
上述した加工中の粘度上昇を抑制する効果や、スコーチ時間の短縮を抑制する効果を高めることができるという点から、上記構造のシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、99モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましい。また、結合単位Bの含有量は、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましく、70モル%以下が好ましく、65モル%以下がより好ましく、55モル%以下がさらに好ましい。また、結合単位AおよびBの合計含有量は、95モル%以上が好ましく、98モル%以上がより好ましく、100モル%が特に好ましい。なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(2)、(3)と対応するユニットを形成していればよい。
【0081】
R201のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子などがあげられる。
【0082】
R201の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などがあげられる。該アルキル基の炭素数は1~12が好ましい。
【0083】
R201の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、1-オクテニル基などがあげられる。該アルケニル基の炭素数は2~12が好ましい。
【0084】
R201の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基などがあげられる。該アルキニル基の炭素数は2~12が好ましい。
【0085】
R202の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などがあげられる。該アルキレン基の炭素数は1~12が好ましい。
【0086】
R202の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1-プロペニレン基、2-プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、1-ペンテニレン基、2-ペンテニレン基、1-ヘキセニレン基、2-ヘキセニレン基、1-オクテニレン基などがあげられる。該アルケニレン基の炭素数は2~12が好ましい。
【0087】
R202の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数2~30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などがあげられる。該アルキニレン基の炭素数は2~12が好ましい。
【0088】
上記式(2)で示される結合単位Aと上記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3~300の範囲が好ましい。この範囲内であると、結合単位Bのメルカプトシランを、結合単位Aの-C7H15が覆うため、スコーチ時間が短くなることを抑制できるとともに、シリカやゴム成分との良好な反応性を確保することができる。
【0089】
メルカプト系シランカップリング剤の含有量は、低燃費性などの効果を十分に確保する観点から、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。また、該含有量は、コストの増加に見合ったメルカプト系シランカップリング剤の配合効果が得られる観点、ゴム強度、耐摩耗性の観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは18質量部以下、より好ましくは17質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは12質量部以下である。
【0090】
(他のシランカップリング剤)
本開示においては、ゴム組成物は、上記メルカプト系シランカップリング剤に加えてさらにその他のシランカップリング剤を含有してもよく、含有しなくてもよい。その他のシランカップリング剤としては、例えば、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどがあげられる。その他のシランカップリング剤は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0091】
<液状ゴム>
本開示において、「液状ゴム」とは、常温(25℃)で液体状態のゴムを意味する。また、「液状ポリマー」や「液状ジエン系重合体」等とも呼ばれている。液状ゴムは、水素添加されていてもよく、水素添加されていなくてもよいし、カルボキシ基等の官能基によって変性されていてもよく、変性されていなくてもよい。また、液状ゴムが共重合体である場合、各モノマーのランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。なお、本開示の液状ゴムは、上記ゴム成分には含まれない。
【0092】
液状ゴムとしては特に限定されず、例えば、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)、液状ブタジエンゴム(液状BR)、液状イソプレンゴム(液状IR)、液状スチレンイソプレンゴム(液状SIR)等があげられる。液状ゴムは、例えば、(株)クラレ、日本曹達(株)、Cray valley社、Noveon社等によって製造販売されるものなどを用いることができる。なかでも、液状SBRおよび液状BRの少なくとも一種を含むことが好ましく、液状SBRを含むことがより好ましく、液状SBRのみであることも好ましい。液状ゴムは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0093】
(液状SBR)
液状SBRのスチレン含量は、特に限定されないが、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。また、該スチレン含量は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、27質量%以下がより好ましい。液状SBRのスチレン含量が上記範囲内であると、本開示の効果をより良好に発揮できる傾向がある。
【0094】
液状SBRのビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、特に限定されないが、10.0~80.0%であることが好ましい。該ビニル含量は、25%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。また、該ビニル含量は、75%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。液状SBRのビニル含量が上記範囲内であると、本開示の効果をより良好に発揮できる傾向がある。
【0095】
(液状BR)
液状BRとしては、例えばビニル含量が5~55%の低ビニル含量のものや、ビニル含量が70~90%の高ビニル含量のものを用いることができる。
【0096】
(液状ゴムの数平均分子量(Mn))
液状ゴムの数平均分子量(Mn)は、50000未満が好ましく、25000以下がより好ましく、10000以下がより好ましく、7000以下がさらに好ましい。また、該Mnの下限は特に限定されないが、1000以上が好ましく、2500以上がより好ましく、3500以上がさらに好ましい。液状ゴムのMnが上記範囲内であると、液状ゴムがSBR相におけるスチレンブタジエンゴムの分子間に入りやすくなり、加工性向上の効果がより良好に得られる傾向がある。なお、本明細書における液状ゴムのMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定され、標準ポリスチレンより換算される値である。
【0097】
(液状ゴムの含有量)
液状ゴムのゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、50質量部以下がより好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。液状ゴムの含有量が上記範囲内であると、加工性の向上効果をより良好に発揮しながら、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊特性および加工性をバランスよく総合的に向上することができるという効果がより良好に得られる傾向がある。
【0098】
<樹脂>
樹脂としては、特に限定されず、従来タイヤ用ゴム組成物で慣用される樹脂を用いることができる。例えば、芳香族系樹脂、脂肪族系石油樹脂(例えば、C5系石油樹脂)、テルペン樹脂、ロジン系樹脂等があげられる。なかでも、芳香族系樹脂が好ましい。樹脂は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0099】
(芳香族系樹脂)
本開示において、「芳香族系樹脂」とは、その構造に芳香環を含有する樹脂を意味する。芳香族系樹脂としては、この分野で使用される樹脂であって、芳香環を含有する樹脂であれば特に限定されない。そのような樹脂としては、例えば、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、フェノール系樹脂、クマロン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等があげられる。なかでも、C9系石油樹脂は、SBRとの相溶性に特に優れるため、好適に用いることができる。
【0100】
≪C9系石油樹脂≫
C9系石油樹脂としては、炭素数8~10個相当の石油留分(C9留分)であるビニルトルエン、アルキルスチレン、インデンなどのモノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂があげられる。C9系石油樹脂の具体例としては、スチレン系樹脂があげられる。スチレン系樹脂としては特に限定されないが、α-メチルスチレン系樹脂(AMS)が好適に用いられる。α-メチルスチレン系樹脂としては、α-メチルスチレンのホモポリマー(ポリ-α-メチルスチレン)、α-メチルスチレンと芳香族化合物やフェノール系化合物を含む他の化合物とのコポリマーがあげられる。このコポリマーを構成し得る他の化合物としては、スチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどがあげられる。α-メチルスチレン系樹脂としては、アリゾナケミカル社製のものなどが好適に用いられる。
【0101】
≪C5C9系石油樹脂≫
C5C9系石油樹脂とは、C5留分とC9留分を共重合することにより得られる樹脂であり、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂ともいう。また、上記の石油樹脂を水素添加したものを使用してもよい。C5C9系石油樹脂は、例えば、LUHUA社、Qilong社、東ソー(株)等によって製造販売されるものなどを用いることができる。
【0102】
≪フェノール系樹脂≫
フェノール系樹脂は、その構造にフェノール骨格を含む樹脂であり、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、オイル変性フェノールホルムアルデヒド樹脂等があげられる。
【0103】
≪クマロン系樹脂≫
クマロン系樹脂は、クマロンを主成分する樹脂であり、例えば、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、クマロンとインデンとスチレンを主成分とする共重合樹脂等があげられる。クマロン系樹脂は、例えば、日塗化学(株)等によって製造販売されるものなどを用いることができる。
【0104】
≪芳香族変性テルペン樹脂≫
芳香族変性テルペン樹脂は、テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする樹脂である。芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエンなどがあげられる。芳香族変性テルペン樹脂は、例えば、ヤスハラケミカル(株)等によって製造販売されるものなどを用いることができる。
【0105】
(樹脂のMw)
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、揮発しにくく、グリップ性能が良好である点から、300以上が好ましく、400以上がより好ましく、500以上がさらに好ましい。また、該Mwは、15000以下が好ましく、10000以下がより好ましく、8000以下がさらに好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0106】
(樹脂の軟化点)
樹脂の軟化点は、グリップ性能の観点から、160℃以下が好ましく、145℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。また、該軟化点は、グリップ性能の観点から、20℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。なお、本明細書における軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0107】
(樹脂のSP値)
樹脂のSP値は、8.0以上が好ましく、8.5以上がより好ましく、9.0以上がさらに好ましい。また、該SP値は、11.0以下が好ましく、10.0以下がより好ましく、9.5以下がさらに好ましい。樹脂のSP値が上記範囲内であると、SBRとの相溶性が向上し、本開示の効果をより良好に発揮できる傾向がある。なお、本明細書における樹脂のSP値は、化合物の構造に基づいてHoy法によって算出された溶解度パラメーター(Solubility Parameter)を意味し、2つの成分のSP値の差が小さいほど相溶性が良好となる。Hoy法とは、例えば、K.L.Hoy “Table of Solubility Parameters”, Solvent and Coatings Materials Research and Development Department, Union Carbites Corp.(1985)に記載された計算方法である。
【0108】
(樹脂の含有量)
樹脂のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がより好ましく、4質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。樹脂の含有量が上記範囲内であると、ウェットグリップ性能の向上効果をより良好に発揮しながら、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊特性および加工性をバランスよく総合的に向上することができるという効果がより良好に得られる傾向がある。
【0109】
<その他の成分>
本開示のゴム組成物は、上記した成分に加え、ゴム組成物の製造に一般に使用される他の成分、例えば、オイル、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、加工助剤、加硫剤、加硫促進剤等を適宜含有することができる。
【0110】
(オイル)
オイルとしては、特に限定されず、ゴム工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、パラフィン系、芳香族系、ナフテン系プロセスオイル等のプロセスオイルがあげられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルがあげられる。低PCA含量プロセスオイルとしては、芳香族系プロセスオイルを再抽出したTreated Distillate Aromatic Extract(TDAE)、アスファルトとナフテン油の混合油であるアロマ代替オイル、軽度抽出溶媒和物(mild extraction solvates)(MES)、および重ナフテン系オイル等があげられる。なかでも、芳香族系プロセスオイルが好ましく、TDAEオイルがより好ましい。オイルは、例えば、H&R社、JXTGエネルギー(株)、出光興産(株)、三共油化工業(株)等によって製造販売されるものなどを用いることができる。オイルは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0111】
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、特に限定されないが、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、25質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、7質量部以下がさらに好ましい。オイルの含有量が上記範囲内であると、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊特性および加工性のバランスに優れ、本開示の効果がより良好に得られる傾向がある。なお、オイルの含有量は油展やオイル処理で使用されたオイルの量も含むものである。
【0112】
(ステアリン酸)
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、該含有量は、加硫速度の観点から、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0113】
(酸化亜鉛)
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、該含有量は、耐摩耗性の観点から、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0114】
(老化防止剤)
老化防止剤としては、特に限定されず、ゴム工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、キノリン系老化防止剤、キノン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤や、カルバミン酸金属塩等があげられる。なかでも、キノリン系老化防止剤およびフェニレンジアミン系老化防止剤の少なくとも1種を用いることが好ましく、これらを組み合わせて用いることがより好ましい。キノリン系老化防止剤としては、例えば、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(TMDQ)等があげられる。フェニレンジアミン系老化防止剤としては、例えば、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N-4-メチル-2-ペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジアリール-p-フェニレンジアミン、ヒンダードジアリール-p-フェニレンジアミン、フェニルヘキシル-p-フェニレンジアミン、フェニルオクチル-p-フェニレンジアミン等があげられる。なかでも、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)が好ましい。老化防止剤として、キノリン系老化防止剤およびフェニレンジアミン系老化防止剤を組み合わせて用いる場合の好ましい具体的組み合わせとしては、TMDQと6PPDの組合せがあげられる。老化防止剤は、例えば、大内新興化学工業(株)、川口化学工業(株)、住友化学(株)等によって製造販売されるものなどを用いることができる。老化防止剤は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0115】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、7.0質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましい。老化防止剤の含有量が上記範囲内であると、老化防止効果を十分に得るとともに、老化防止剤がタイヤ表面に析出することによる変色を抑制することができる傾向がある。
【0116】
(ワックス)
ワックスとしては、特に限定されず、ゴム工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、石油系ワックス、鉱物系ワックス、合成ワックスなどがあげられる。なかでも、石油系ワックスが好ましい。石油系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、これらの精選特殊ワックス等があげられる。ワックスは、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、パラメルト社等によって製造販売されるものなどを用いることができる。ワックスは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0117】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.3質量部以上が好ましく、0.7質量部以上がより好ましく、0.8質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、ブルームによるタイヤの白色化を防ぐ観点からは、3.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下がさらに好ましい。
【0118】
(加工助剤)
加工助剤としては、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物等があげられる。なかでも、脂肪酸金属塩が好ましい。加工助剤は、例えば、ストラクトール社製のものなどを用いることができる。加工助剤は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0119】
加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。また、加工助剤の含有量は、10.0質量部以下が好ましく、8.0質量部以下がより好ましく、6.0質量部以下がさらに好ましい。加工助剤の含有量が上記範囲内であると、本開示の効果をより良好に発揮できる傾向がある。
【0120】
(加硫剤)
加硫剤としては、特に限定されず、公知の加硫剤を用いることができ、例えば、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物、硫黄系加硫剤、樹脂加硫剤、酸化マグネシウム等の金属酸化物などがあげられる。なかでも、硫黄系加硫剤が好ましい。硫黄系加硫剤としては、例えば、硫黄、モルホリンジスルフィド等の硫黄供与体等を用いることができる。これらのなかでも、硫黄を用いることが好ましい。加硫剤は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0121】
硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄(オイル処理硫黄、分散剤で処理された特殊硫黄、マスターバッチタイプの硫黄など)、不溶性硫黄(オイル処理不溶性硫黄など)などがあげられ、いずれも好適に用いられる。硫黄は、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等によって製造販売されるものなどを用いることができる。
【0122】
加硫剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がより好ましい。また、該含有量は、6.0質量以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましく、4.0質量部以下がさらに好ましい。加硫剤の含有量が上記範囲内であると、適切な補強効果が得られる傾向があり、本開示の効果をより良好に発揮できる傾向がある。なお、加硫剤として硫黄を用いる場合の硫黄の含有量は、オイル処理硫黄などの硫黄以外の成分が含まれるものを用いる場合、オイル処理硫黄などに含まれる硫黄成分自体の含有量を意味する。
【0123】
(加硫促進剤)
加硫促進剤としては、特に限定されず、公知の加硫促進剤を用いることができ、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系もしくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤などがあげられる。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、およびチウラム系が好ましく、スルフェンアミド系、グアニジン系を併用することがより好ましい。加硫促進剤は、例えば、大内新興化学工業(株)、三新化学工業(株)等によって製造販売されるものなどを用いることができる。加硫促進剤は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0124】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)などがあげられる。なかでも、本開示の効果をより良好に発揮できるという理由から、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)が好ましい。
【0125】
チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等があげられる。
【0126】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどがあげられる。なかでも、本開示の効果をより良好に発揮できるという理由から、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)が好ましい。
【0127】
加硫促進剤として、スルフェンアミド系とグアニジン系を併用する場合の好ましい具体的組み合わせとしては、TBBSとDPGの組合せがあげられる。
【0128】
加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、8.0質量部以下が好ましく、7.0質量部以下がより好ましく、6.0質量部以下がさらに好ましい。加硫促進剤の含有量が上記範囲内であると、破壊強度および伸びが確保できる傾向があり、本開示の効果をより良好に発揮できる傾向がある。
【0129】
<タイヤトレッド用ゴム組成物、タイヤトレッドおよびタイヤ>
本開示のタイヤトレッド用ゴム組成物は、低燃費性、ウェットグリップ性能および破壊特性に優れることから、タイヤのトレッドに使用される。トレッドとは路面に接する部分であり、2つ以上の異なるゴム組成物でトレッドが構成されている場合、そのうちの少なくとも1つのゴム組成物に本開示のゴム組成物を使用することができる。また、トレッドがベーストレッドとキャップトレッドを含む2層以上から構成される場合には、本開示のゴム組成物は少なくともキャップトレッドに使用することができる。
【0130】
タイヤトレッド用ゴム組成物は、一般的な方法で製造できる。例えば、バンバリーミキサーやニーダー等の密閉式混練機、オープンロール等の一般的なゴム工業で使用される公知の混練機で、上記各成分のうち、加硫剤および加硫促進剤以外の成分を混練りし(ベース練り工程)、その後、加硫剤および加硫促進剤を加えてさらに混練りし(仕上げ練り工程)、加硫する方法等により製造できる。なお、各工程の間にリミル(再練り工程)を行ってもよい。
【0131】
タイヤトレッドおよびタイヤは、上述のタイヤトレッド用ゴム組成物を用いて、通常の方法により製造できる。すなわち、上記成分を配合したゴム組成物を未加硫の段階でタイヤトレッドの形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加圧加硫することにより、タイヤトレッドを備えたタイヤを製造することができる。
【0132】
混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度120~170℃で1~15分間混練りし、再練り工程では、排出温度120~170℃で1~15分間混練りし、仕上げ練り工程では、70~110℃で1~10分間混練りする方法があげられる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法があげられる。
【0133】
本開示のタイヤは、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤを問わないが、空気入りタイヤであることが好ましい。また、本開示のタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤなどの高性能タイヤ、冬用タイヤ、ランフラットタイヤなど各種タイヤに用いることができ、特に、乗用車用タイヤとして好適に用いることができる。
【0134】
本開示の乗用車用タイヤは、タイヤ外径Dt(mm)とタイヤ断面幅Wt(mm)との関係が下記式(α)を満たす乗用車用タイヤに適用することが好ましい。下記式(α)を満たす乗用車用タイヤは、低燃費性が課題となる傾向がある。そのため、本開示の乗用車用タイヤを適用することで、低燃費性向上の効果を好適に発揮しやすくなると考える。(Dt^2×π/4)/Wtの値は、1970.0以上がより好ましく、1980.0以上がより好ましく、1990.0以上がさらに好ましい。また、(Dt^2×π/4)/Wtの値は、2800.0以下がより好ましく、2700.0以下がより好ましく、2600.0以下がさらに好ましい。なお、下記式(α)におけるタイヤ外径Dtおよびタイヤ断面幅Wtは、タイヤが所定のリム(正規リム)に組み込まれ、所定の内圧(正規内圧。例えば250kPa以上)となるようにタイヤに空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤには荷重がかけられない。
1963.4≦(Dt^2×π/4)/Wt≦2827.4 (α)
【0135】
本明細書において正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、およびETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、およびETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0136】
上記式(α)を満たす乗用車用タイヤのタイヤサイズとしては、具体的には、135/45R21、145/45R21、155/45R21、165/45R22、175/45R23、185/45R22、115/50R17、185/50R20、215/50R21、125/55R20、135/55R20、145/55R20、155/55R19、155/55R21、175/55R19、165/55R19、165/55R20、165/55R21、175/55R22、195/55R20、205/55R20、135/60R17、165/60R12、175/60R18、185/60R20、195/60R19、205/60R18、125/65R19、135/65R19、145/65R19、155/65R18、165/65R19、155/70R17、165/70R18、175/80R16等を例示することができる。
【実施例0137】
実施例に基づいて本開示を具体的に説明する。本開示は、これら実施例に限定されない。
【0138】
<実施例および比較例で使用した各種薬品>
NR:TSR20(イソプレン系ゴム)
SBR:JSR1502(E-SBR、スチレン含量:23.5質量%、JSR(株)から入手可能)
BR:ウベポールBR150B(ハイシスBR、シス含量:97%、トランス含量:2%、ビニル含量:1%、宇部興産(株)から入手可能)
カーボンブラック:N220(ISAF、N2SA:111m2/g、DBP吸油量:115ml/100g、キャボットジャパン(株)から入手可能)
シリカ:ゼオシール1115MP(N2SA:115m2/g、CTAB:110m2/g、ソルベイ社から入手可能)
シランカップリング剤1:Si266(スルフィド系、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、エボニックデグサ社から入手可能)
シランカップリング剤2:NXT(メルカプト系、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能)
シランカップリング剤3:NXT-Z45(メルカプト系、結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能)
樹脂:SYLVATRAXX4401(α-メチルスチレン系樹脂、軟化点:85℃、SP値:9.1、アリゾナケミカル社から入手可能)
オイル:Vivatec500(TDAEオイル、H&R社から入手可能)
液状ゴム1:RICON100(液状SBR、ランダム共重合体、スチレン含量:25質量%、ビニル含量:70%、Mn:4500、Cray valley社から入手可能)
液状ゴム2:クラプレンLBR-302(液状BR、Mn:5500、(株)クラレから入手可能)
ワックス:オゾエース0355(パラフィン系、日本精蝋(株)から入手可能)
老化防止剤1:アンチゲン6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、住友化学(株)から入手可能)
老化防止剤2:アンテージRD(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(TMDQ)、川口化学工業(株)から入手可能)
ステアリン酸:ステアリン酸「つばき」(日油(株)から入手可能)
酸化亜鉛:酸化亜鉛2種(三井金属鉱業(株)から入手可能)
硫黄:HK200-5(5%オイル含有粉末硫黄、細井化学工業(株)から入手可能)
加硫促進剤1:サンセラーNS-G(N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、三新化学工業(株)から入手可能)
加硫促進剤2:ノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、大内新興化学工業(株)から入手可能)
【0139】
実施例および比較例
<ゴム組成物、タイヤの製造>
表1および2に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度170℃になるまで5分間混練りし、混練物を得た。さらに、得られた混練物を前記バンバリーミキサーにより、排出温度150℃で4分間、再度混練りした(リミル)。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
【0140】
上記で得た未加硫ゴム組成物を、170℃の条件下で12分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を製造した。
【0141】
上記で得た未加硫ゴム組成物を、所定の形状の口金を備えた押し出し機でタイヤトレッドの形状に押し出し成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で15分間プレス加硫することにより、試験用タイヤ(サイズ:175/60R18)を製造した。
【0142】
<評価>
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物および試験用タイヤについて、以下の評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0143】
(加工性)
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS K 6300-1の「未加硫ゴム-物理特性-第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に準じたムーニー粘度の測定方法に従い、130℃の温度条件にて、ムーニー粘度(ML1+4)を測定した。比較例1のML1+4を100とし、以下の計算式により、各配合のML1+4を加工性指数として示した。加工性指数が大きいほど、ムーニー粘度が低く、加工性に優れることを示す。
(加工性指数)=(比較例1のML1+4)/(各配合のML1+4)×100
【0144】
(低燃費性)
試験用タイヤについて、最大負荷能力を615kgとし、その他の条件はJIS D 4234:2009に準拠して転がり抵抗係数を測定した。比較例1の転がり抵抗係数を100とし、下記計算式により、各配合の転がり抵抗係数を低燃費性指数として示した。低燃費性指数が大きいほど、転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示す。
(低燃費性指数)=(比較例1の転がり抵抗係数)/(各配合の転がり抵抗係数)×100
【0145】
(ウェットグリップ性能)
アンチロックブレーキシステム(ABS)評価試験により得られた制動性能をもとにして、ウェットグリップ性能を評価した。すなわち、1800cc級のABSが装備された乗用車に、前記試験用タイヤを装着して、アスファルト路面(ウェット路面状態、スキッドナンバー約50)を実車走行させ、時速100km/hの時点でブレーキをかけ、乗用車が停止するまでの減速度を算出した。ここで、減速度とは、乗用車が停止するまでの距離である。そして、比較例1の減速度を100とし、以下の計算式により、各配合の減速度をウェットグリップ性能指数として示した。ウェットグリップ性能指数が大きいほど、制動性能が良好であり、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
(ウェットグリップ性能指数)=(比較例1の減速度)/(各配合の減速度)×100
【0146】
(破壊特性)
加硫ゴム組成物からなる6号ダンベル型試験片を用いて、JIS K 6251:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準じて、25℃雰囲気下にて引張試験を実施し、破断強度TB(MPa)、破断時伸びEB(%)を測定した。そして、TB×EB÷2(MPa%)の値を算出した。比較例1のTB×EB÷2(MPa%)の値を100とし、以下の計算式により、各配合のTB×EB÷2(MPa%)の値を破壊特性指数として示した。破壊特性指数が大きい程、破壊特性に優れることを示す。
(破壊特性指数)=(各配合の値)/(比較例1の値)×100
【0147】
(総合性能)
低燃費性指数、ウェットグリップ性能指数、破壊特性指数および加工性指数の数値の総和を、「総合性能」として示した。総合性能の数値が大きい程、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊特性および加工性の総合性能に優れることを示す。
【0148】
【0149】
【0150】
表1および2の結果より、実施例のゴム組成物およびタイヤは比較例のものと比べて低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊特性および加工性をバランスよく総合的に向上できることがわかる。