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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000834
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】成形装置の制御方法および成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20231226BHJP
   B29C 45/56 20060101ALI20231226BHJP
   B29C 45/64 20060101ALI20231226BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20231226BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20231226BHJP
   B29C 44/60 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/56
B29C45/64
B29C45/26
B29C44/00 D
B29C44/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099779
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 康弘
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
4F214
【Fターム(参考)】
4F202AB02
4F202AG20
4F202AR07
4F202AR08
4F202AR11
4F202CA11
4F202CA23
4F202CK19
4F202CK54
4F206AB02
4F206AG20
4F206AR07
4F206AR08
4F206AR11
4F206JA04
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM02
4F206JN31
4F206JQ62
4F206JQ83
4F206JT05
4F214AB02
4F214AG20
4F214AR07
4F214AR08
4F214AR11
4F214UA08
4F214UB01
4F214UL32
(57)【要約】
【課題】 固定金型と可動金型が嵌合または当接されキャビティが形成された状態でアクチュエータにより前記固定金型に対して可動金型を移動させる際に、制御性を確保しつつ安定的に可動金型を移動させることのできる成形装置の制御方法および成形装置を提供する。
【解決手段】 型締装置3を備えた成形装置1の制御方法において、前記固定金型311と前記可動金型313が嵌合または当接されキャビティCAが形成された状態でアクチュエータ346により前記固定金型311に対して可動金型313を移動させる際に、第1のフィードバック制御ループと該第1のフィードバック制御ループよりも検出間隔の長い第2のフィードバック制御ループとを組み合わせて前記アクチュエータ346を制御して可動金型313を移動させる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型が取り付けられる固定盤に対して可動金型が取り付けられる可動盤を型開閉方向に移動可能な型締装置を備えた成形装置の制御方法において、
前記固定金型と前記可動金型が嵌合または当接されキャビティが形成された状態でアクチュエータにより前記固定金型に対して可動金型を移動させる際に、
第1のフィードバック制御ループと該第1のフィードバック制御ループよりも検出間隔の長い第2のフィードバック制御ループとを組み合わせて前記アクチュエータを制御して可動金型を移動させる、成形装置の制御方法。
【請求項2】
前記第1のフィードバック制御ループと第2のフィードバック制御ループに更にフィードフォワード制御を組み合わせて前記アクチュエータを制御して可動金型を移動させる、請求項1に記載の成形装置の制御方法。
【請求項3】
固定金型が取り付けられる固定盤に対して可動金型が取り付けられる可動盤を型開閉方向に移動可能な型締装置を備えた成形装置の制御方法において、
少なくとも前記固定金型と前記可動金型が嵌合または当接されキャビティが形成された状態で前記固定金型に対して可動金型を移動させるアクチュエータと、
第1のフィードバック制御ループと該第1のフィードバック制御ループよりも検出間隔の長い第2のフィードバック制御ループとを組み合わせ前記アクチュエータによる可動金型の移動制御を行う制御装置と、が備えられた成形装置。
【請求項4】
前記可動金型の移動制御は、発泡成形におけるコアバック制御である、請求項3に記載の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定金型が取り付けられる固定盤に対して可動金型が取り付けられる可動盤を型開閉方向に移動可能な型締装置を備えた成形装置の制御方法および成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固定金型が取り付けられる固定盤に対して可動金型が取り付けられる可動盤を型開閉方向に移動可能な型締装置を備えた成形装置において、前記固定金型と前記可動金型が嵌合または当接されキャビティが形成された状態で前記固定金型に対して可動金型を移動させるものとしては特許文献1等に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1の[請求項1]にはハーフナット位置決め兼コアバック用サーボモータを駆動しておくりねじによって移動盤を介して移動金型をコアバックすることが記載されている。また特許文献1の明細書段落番号[0031]には発泡の進行に伴って第1のサーボモータが駆動し、ボールねじによってタイバーを前進(図中左方向)させ、移動盤を介して移動金型が固定金型に対してコアバック動作する。ことが記載されている。またサーボモータを駆動することはサーボモータに付設されたロータリエンコーダの位置を検出してフィードバック制御を行っているという点までは周知であると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-314492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1のコアバック動作(可動金型の移動制御)は、タイバを移動させるサーボモータについてロータリエンコーダ等により位置を検出して単にフィードバック制御させているのみであるので次のような問題があった。即ち可動金型に移動を応答性よく行うためにゲインを上げた場合、可動金型の位置が制御値により一層早く追従したとしても前記ゲインが高いために作動が安定せず発振したりするケースがあった。また固定金型と前記可動金型が嵌合または当接されキャビティが形成された状態での可動金型の移動に関しては、前記コアバック制御時以外にもバネ金型の金型開閉時や射出プレスや射出圧縮成形時などにも同様の問題がある。
【0006】
本発明は、前記の問題を解決して、前記固定金型と前記可動金型が嵌合または当接されキャビティが形成された状態でアクチュエータにより前記固定金型に対して可動金型を移動させる際に、安定的または所望の速度で可動金型を移動させることのできる成形装置の制御方法および成形装置を提供することを目的とする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態に係る成形装置の制御方法は、固定金型が取り付けられる固定盤に対して可動金型が取り付けられる可動盤を型開閉方向に移動可能な型締装置を備えた成形装置の制御方法において、前記固定金型と前記可動金型が嵌合または当接されキャビティが形成された状態でアクチュエータにより前記固定金型に対して可動金型を移動させる際に、第1のフィードバック制御ループと該第1のフィードバック制御ループよりも検出間隔の長い第2のフィードバック制御ループとを組み合わせて前記アクチュエータを制御して可動金型を移動させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の成形装置の制御方法によれば、固定金型が取り付けられる固定盤に対して可動金型が取り付けられる可動盤を型開閉方向に移動可能な型締装置を備えた成形装置の制御方法において、前記固定金型と前記可動金型が嵌合または当接されキャビティが形成された状態でアクチュエータにより前記固定金型に対して可動金型を移動させる際に、第1のフィードバック制御ループと該第1のフィードバック制御ループよりも検出間隔の長い第2のフィードバック制御ループとを組み合わせて前記アクチュエータを制御して可動金型を移動させるので、安定的または所望の速度で可動金型を移動させることができる。また本開示の成形装置も同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態の射出成形装置の側面図である。
図2】第1の実施形態のコアバック制御に関するブロック線図である。
図3】第1の実施形態のコアバック制御に関する時間ごとの制御値と実測値の偏差を示すタイミング図である。
図4】第1の実施形態のコアバック制御に関するフローチャート図である。
図5】第2の実施形態のコアバック制御に関するブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
<射出成形装置>
【0011】
本発明の1実施形態の射出成形装置1について図1を参照して説明する。図1は射出成形装置の側面図である。成形装置の一種である射出成形装置1は、基台2上に型締装置3と射出装置4を備えている。型締装置3は、固定金型311が取り付けられる固定盤312に対して可動金型313が取り付けられる可動盤314を移動させる2基の型開閉機構315と固定金型311と可動金型313の型締を行う4基の型締機構316の型締シリンダ317を備えたものである(ただし図1では手前側の型開閉機構315と型締機構316のみ記載)。また射出装置4は加熱シリンダ4a内部に図示しないスクリュ等を備え、発泡成形や射出プレス成形等の成形を可能とするものである。
【0012】
基台2上に固定される固定盤312の反金型取付面312a側の中央部には前記射出装置4のノズル4bを挿入するためのすり鉢部312bが設けられ、すり鉢部312bの中央には固定金型311に前記ノズル4bが接続される孔が設けられている。また固定盤312内部の四隅近傍には型締機構316の型締シリンダ317がそれぞれ設けられている。型締シリンダ317はピストン318の前進側のロッドが本発明の軸部材に相当するタイバ319を構成している。従って本発明では、固定盤312に軸部材のタイバ319が連接されている。なお第1の実施形態では型開側をタイバ319の前進側、型閉側をタイバ319の後退側と称する。型締シリンダ317は、ピストン318の前進側に型締側油室317aを備え、ピストン318の後退側に強力型開側油室317bを備えた復動シリンダである。また型締シリンダ317はバルブ、センサ、ポンプ、タンク等を備えた油圧装置320に接続されている。
【0013】
前記各タイバ319の外周の先端側近傍位置には、係合溝321が型開閉方向の所定の長さにわたって複数同じピッチの溝が形成されている。係合溝321は、タイバ319の軸方向Lに対して直角方向に設けられた型締側当接面とタイバ319の軸方向Lに対して傾斜方向に設けられた強力型開側当接面とその間の軸方向Lと平行な底面を有する。ただし係合溝321の強力型開側当接面は軸方向Lに対して直角方向の面であってもよい。また係合溝321は連続するねじ溝であってもよい。そして各タイバ319は、可動盤314の四隅近傍に設けられた挿通孔322にそれぞれ挿通されている。なお型締装置3は基台2上の可動盤314の反金型取付面314a側に、前記可動盤314とは一定間隔を隔てて各タイバ319を保持するためのタイバホルダを設けてもよい。
【0014】
可動盤314の各挿通孔322の近傍には、それぞれタイバ319と可動盤314を係合する係合機構323が設けられている。係合機構323はハーフナットとも呼ばれるものであり、一対の第1の係合部材324と一対の第2の係合部材325を備えている。そして第1の係合部材324と第2の係合部材325のタイバ319の係合溝321と対向する側には、係合歯がそれぞれ設けられている。また係合機構323には、第1の係合部材324の係合歯と第2の係合部材325の係合歯をそれぞれ前記タイバ319の係合溝321に対して進退移動させるアクチュエータである油圧シリンダ326を備えている。また第2の係合部材325を第1の係合部材324に対してタイバ319の軸方向Lに沿って移動させるためのアクチュエータである油圧シリンダ327を備えている。なお本発明において係合機構323は一般的な一対の係合部材のみが設けられたものでもよい。また係合機構323の各アクチュエータは電動モータを使用したものでもよく、複数の係合機構を一つのアクチュエータにより作動させるものでもよい。
【0015】
また基台2上には、固定金型311が取り付けられる固定盤312に対して可動金型313が取り付けられる可動盤314を近接・離間移動させる型開閉機構315が2基配設されている。型開閉機構315はサーボ機構を用いたものであり、第1の実施形態ではサーボモータ338とボールねじ機構339を用いられている。より具体的には基台2の上面のブラケットにサーボモータ338が固定され、サーボモータ338は位置検出機構であるロータリエンコーダ338aを備えている。またロータリエンコーダ338aを含むサーボモータ338はサーボアンプ342と後述する制御装置401に接続されている。
【0016】
ボールねじ機構339のボールねじ340は基台2上のブラケットにボールねじ340の軸方向が型開閉方向に一致するように一端の側と他端の側がそれぞれベアリングを介して回転自在に取り付けられている。そしてサーボモータ338の駆動軸が、前記ボールねじ340に直接接続されるか、またはベルトを介して接続されており、ボールねじ340はサーボモータ338の駆動により回転自在となっている。また可動盤314の側面下部または下面にはブラケットを介してボールねじナット341がそれぞれ固定されており、前記ボールねじ340は前記ボールねじナット341にそれぞれ挿通されている。これらの機構により2基の型開閉機構315のサーボモータ338の駆動により可動盤314が型開閉方向にそれぞれ移動可能となっている。また可動盤314の位置はロータリエンコーダ338aにより検出され、可動盤314はサーボアンプ342等によりクローズドループ制御による速度制御(位置制御を含む)が行われる。なお型開閉機構315は、油圧シリンダからなる機構等でもよい。
【0017】
また固定盤312に対する可動盤314の位置または固定金型311に対する可動金型313の位置は、前記ロータリエンコーダ338a以外のリニアスケールなどの位置センサにより測定されるものでもよい。なお第1の実施機構のように基台2上に2基の型開閉機構315を配設することは重量物であるサーボモータ338やボールねじ機構339の配置や配線の点、またはそれに伴うコストの点で一定の合理性がある。ただし型開閉機構315は2基に限定されず、1基や他の複数基でもよい。
<タイバと可動金型を移動させるアクチュエータ>
【0018】
型締装置3は、型締シリンダ317とは別にタイバ319を一定距離移動させるタイバ移動機構345が、タイバ319の本数に対応して4基備えられている(ただし図1では2基のタイバ移動機構345のみが記載されている)。各型締シリンダ317のピストン318の後退側にはロッド349が固定され、前記ロッド349の先端には直角方向に結合板347がジョイント等を介してかまたは直接取り付けされている。また固定盤312の反金型取付面312aには複数のガイド棒348が前記ロッド349と平行方向に取り付けられ、前記ガイド棒348は結合板347に設けられた挿通孔に挿通されている。更に前記反金型取付面312aの前記ロッド349の両側にはタイバ移動シリンダ346が前記ロッド349と平行にそれぞれ取り付けられている。そして前記タイバ移動シリンダ346の反金型取付面側のロッド346aはそれぞれ結合板347に取り付けられ、前記ロッド349とロッド346aは一体に連結されている。
【0019】
タイバ移動機構345のタイバ移動シリンダ346は、両ロッドタイプの油圧シリンダであり、金型取付面312c側にも図示しないロッドを備え、両方の油室の増圧面の面積は同じ面積となっている。前記タイバ移動シリンダ346は油圧装置320に接続され、フィードバック制御により流量制御可能な弁を介して作動油が供給され制御されるようになっている。流量制御可能な弁は、サーボ弁であってもよく、他の可変流量制御弁であってもよい。タイバ移動機構345は、これら機構を備え、タイバ移動シリンダ346の作動により結合板347がガイド棒348にガイドされて前進および後退方向に移動され、同時に結合板347に接続されるロッド349、ピストン318、タイバ319も前進および後退方向に移動される。また固定盤312と結合板347の間には、リニアスケール等の位置センサ350が取り付けられ、固定盤312に対するタイバ319の位置は位置センサ350により測定可能となっている。即ち位置センサ350によって固定盤312に取り付けらえた固定金型311と、タイバ319と可動盤314が係合機構323により一体化され可動盤314に取り付けられた可動金型313(これら一体化されたものを移動体と称する)との距離が測定可能となっている。
【0020】
タイバ移動シリンダ346は本発明の少なくとも固定金型311と可動金型313が嵌合または当接されキャビティCAが形成された状態で前記固定金型311に対して可動金型313を移動させるアクチュエータに相当する。また本発明においてアクチュエータを制御するとは、詳細には流量制御弁344やサーボバルブ等を制御することによりタイバ移動シリンダ346を制御することである。前記アクチュエータであるタイバ移動シリンダ346によりタイバ319が移動されると、後述する係合機構323によりタイバ319と一体化された可動盤314と可動金型313が同時に移動される。
【0021】
なおアクチュエータとして油圧のタイバ移動シリンダ346を採用する場合は、1本のタイバ319を移動させるタイバ移動シリンダ346の数は限定されず、固定盤312内に油圧シリンダを設けてもよい。また前記アクチュエータは電動機構を採用してもよい。その場合アクチュエータとしてのサーボモータ等の電動機と移動機構としてのボールねじ機構を組み合わせたものでもよく、更にはアクチュエータとしては油圧シリンダやサーボモータ等の電動器からなる駆動機構と、トグル機構やクサビ機構などの移動機構を併用したものでもよい。
【0022】
次に射出成形装置1の制御装置401について説明する。制御装置401は、ハード的には、図示しない演算装置、記憶装置、入出力部、タイマ403などを備えて、図示しない設定入力装置と接続されている。また制御装置401は、油圧装置320の流量制御可能な流量制御弁344等と接続されている。また制御装置401は、リニアスケール等の位置センサ350にも接続されており、前記位置センサ350の値を検出することによりタイバ319や係合機構323によりタイバ319と一体化される可動盤314および可動金型313の位置が検出可能となっている。更に制御装置401は、サーボモータ338のサーボアンプ342等とも接続されている。
【0023】
そして制御装置401は、機能的には射出成形装置1のシーケンス制御を司る部分であり、本発明との関係においては、図2に示されるようにアクチュエータであるタイバ移動シリンダ346を制御する流量制御弁344を制御するための指令信号生成部402を備えている。そして制御装置401は、本発明の第1のフィードバック制御ループF1と該第1のフィードバック制御ループF1よりも検出間隔の長い第2のフィードバック制御ループF2を組み合わせ前記アクチュエータによる可動金型313の移動制御を行う機能を備えている。なお図2のブロック線図の詳細は、後半の制御部分に中で説明する。
<成形装置の制御方法>
【0024】
次に第1の実施形態の型締装置3を備えた射出成形装置1の制御方法、とりわけ発泡成形におけるコアバック制御CBについて図2図3図4を参照して説明する。型締装置3の固定盤312と可動盤314にコアバック制御CBが可能なインロー金型などの成形金型351が取り付けられると、次に成形金型351の型厚が測定される。そして成形金型351の型厚を参酌して可動盤314を型閉した際の係合機構323の位置に対して、タイバ319の係合溝321の位置が係合可能な位置となるように、タイバ移動機構345を作動させて型締機構316の型締シリンダ317のピストン318とタイバ319の位置が移動調整される。
【0025】
また射出装置4においては供給された発泡成形用の樹脂材料が加熱シリンダ4a内で可塑化され、加熱シリンダ4aのスクリュの前方に貯留される。本発明における発泡成形は、発泡剤を添加する化学発泡成形であってもよく、ガスを注入する物理発泡成形であってもよい。なお物理発泡成形には超臨界発泡成形も含まれる。
【0026】
まず可動盤314が後退した型開き状態から型開閉機構315のサーボモータ338の作動によりボールねじ340が回転され、ボールねじ340に挿通されるボールねじナット341が型開閉方向に移動されることにより、型開位置に停止していた可動盤314および可動金型313は、固定盤312および固定金型311に向けて移動される。そして固定金型311に対して可動金型313が嵌合または型当接されると固定金型311と可動金型313の間には成形を行うための容積可変のキャビティCAが形成される(型閉工程)。図1に示されるインロー金型と呼ばれる成形金型351では固定金型311と可動金型313の嵌合によりキャビティCAが形成される。また図示しない別の平当金型と呼ばれる成形金型では、いずれか一方の金型の可動状態の外枠が他方の金型のパーティング面に当接して容積可変のキャビティCAが形成される。
【0027】
そして固定金型311と可動金型313が嵌合された後、更にパーティング面同士が型当接なされると型開閉機構315のサーボモータ338はサーボロックされて可動盤314は位置保持される。そして係合機構323の油圧シリンダ326の作動により第1の係合部材324の係合歯と第2の係合部材325の係合歯がタイバ319の係合溝321に向けて前進され、両者が係合された状態となる。
【0028】
次に型締機構316である型締シリンダ317の型締側油室317aに作動油が供給されてタイバ319が図1の右向に向けてけん引されて型締増圧され、固定金型311と可動金型313が型締される。所定の型締力となったことが確認されると次に射出装置4から発泡成形用の溶融樹脂がキャビティCA内に向けて射出される(型締工程および射出工程)。なお型締工程の際、型開閉機構315のサーボモータ338は無負荷な状態となっている。そして射出後(射出開始後でも保圧切換後でも保圧終了後でもよい)にタイマ403により所定時間が計時され、図2において時間T1に到達すると型締シリンダ317の型締側油室317aはドレンに接続され型締側油室317a内の作動油の圧力が0に落とされる(圧抜工程)。
【0029】
そして次に係合機構323の油圧シリンダ327を作動させて、第2の係合部材325を第1の係合部材324に向けて移動させる。このことによりタイバ319の係合溝321と係合溝321の間に形成される凸部は、第1の係合部材324の歯と第2の係合部材325の歯の間に挟まれて、係合機構323によってタイバ319と可動盤314および可動金型313が一体化された移動体となる。なお係合機構323の係合部材が開閉する1対の係合部材しかない場合でも本発明は可能である。その場合は後述するタイバ319の移動により、タイバ319の係合溝321と溝の間の凸部が係合部材の歯と歯の間の凹部の中を空走して、前記歯が型締時に当接していた溝の側面とは反対側の係合溝321の側面に当接した状態から本発明の制御が行われる。
<コアバック制御>
【0030】
次に図3に示される区間行われるコアバック制御CBについて説明する。コアバック制御CBは、本発明の固定金型311と前記可動金型313が嵌合または当接されキャビティCAが形成された状態でアクチュエータにより前記固定金型311に対して可動金型313を移動させる制御に該当する。図3において圧抜開始の時間T1から更にタイマにより所定時間t1が計時されて時間T2に到達するとコアバック制御CBが開始される。コアバック制御CBとは、キャビティCA内の発泡樹脂の発泡の促進に応じて可動金型313を後退させる制御であるが、可動金型313を早く後退させすぎると成形品の表面が綺麗に仕上がらず、可動金型313を遅く後退させすぎると発泡不足の成形品となってしまう。コアバック制御CBの詳細に関しては、図2のブロック線図と、図3のタイミング図と、図4のブロック線図を用いて説明する。
【0031】
図2のブロック線図は、1本のタイバ319(可動金型313のタイバ319に対応する隅部側)を移動させるアクチュエータであるタイバ移動シリンダ346の制御ブロック404を説明するものである。従って制御装置401には、タイバ319の数に応じて制御ブロック404が存在している。そして上記のようにタイバ319と可動盤314と可動金型313は係合機構323により一体の移動体の状態となっているので、タイバ319の移動量を制御することは可動金型313の移動量を制御することと同義である。なお本実施形態では各タイバ319の制御ブロック404はそれぞれ独立して制御されるが、種々の方法により各タイバ319間で制御の連動を図るようにしてもよい。即ちマスタとするタイバ319の進行位置に対してスレイブとするタイバ319が同期するように制御信号を生成および送信してタイバ319の連動移動制御を行ったり、各タイバの位置の平均値を用いて制御信号を生成および送信してタイバ319の連動移動制御を行うようにしてもよい。前記により固定金型311に対する可動金型313の平行度を向上させて移動可能となる場合がある。
【0032】
本実施形態の制御ブロック404は、図2のブロック線図に示されるように、第1のフィードバック制御ループF1(メジャーループ制御)と該第2のフィードバック制御ループF2(マイナーループ制御)の2重の制御ループを組み合わせとなっている。このような制御は、カスケード制御とも呼ばれるものである。より具体的には制御装置401には指令信号を生成する指令信号生成部402が設けられている。本実施形態では指令信号生成部402から送信される指令信号にはフィードバック系の指令信号Sとフィードフォワード系の指令信号であるフィードフォワード値FFがある。フィードフォワード系の指令信号は可動金型313の前進促進を目的としたものであるが、本発明においてはフィードバック系のみから制御ブロックを構成することも可能であり、必須のものではない。
【0033】
コアバック制御CBの最初の段階は、偏差が出ていないので第2のフィードバック制御ループF2による第2のフィードバック制御は実施されておらず、フィードバック制御ループとしては、第1のフィードバック制御ループF1による第1のフィードバック制御のみが行われる。即ち指令信号生成部402から送られる指令信号Sに対して位置センサ350により読み込まれた位置検出信号M1が加算器405において加算され偏差量D1が演算される。この際に第1のフィードバック制御ループF1では、指令信号生成部402から出力された指令信号Sに対して、位置センサ350から信号送信間隔(スキャンサイクル)ごとに送信される検出値が加算器405で加算され、前記信号送信間隔ごとに指令信号Sとの偏差量D1が演算される。そして前記偏差量D1に対して第1の制御信号生成部409(フィードバック偏差信号生成部)でゲインG1を乗算して第1の制御信号GS1(偏差信号)を得る。
【0034】
また指令信号生成部402からはフィードフォワードの指令信号であるフィードフォワード値FFが送られる。具体的にはフィードフォワード値FFについては指令信号生成部402から時間に対応した制御量の指令値が出力される。そしてフィードフォワード値FFに対して第1の制御信号GS1が加算器410で加算され、第2の制御信号GS2が生成される。第2の制御信号GS2は第2の制御信号生成部411に送られてゲインG2が乗算されて、第3の制御信号GS3が生成され、第3の制御信号GS3によってアクチュエータであるタイバ移動シリンダ346の制御が行われる。より具体的には流量制御弁344を制御してタイバ移動シリンダ346の制御が行われる。
【0035】
次に図3に示されるようにコアバック制御CBを開始して所定時間t2(実際はごく僅かな時間)が経過してタイマ403が時間T3を計時するか、または偏差量D1が所定以上となると、第1のフィードバック制御ループF1の偏差量D1に、第2のフィードバック制御ループF2(マイナーループ制御)の偏差量D2に追加するように制御を切り替える。図4のコアバック制御CBに関するフローチャート図は、本発明の特徴部分である第2のフィードバック制御ループF2(マイナーループ制御)を加えた制御部分を示すものである。まず第2のフィードバック制御ループF2(マイナーループ制御)が開始されると、位置センサ350からはタイバ319の現在位置(タイバ319と一体の移動体である可動金型313の位置)の位置検出信号M1が引き続き、信号送信間隔ごとに読み込まれる(s1)。
【0036】
そして前記位置センサ350から送信される位置検出信号M1は、マイナーループ制御部406へも送られる。マイナーループ制御部406にはタイマ403が設けられている。そしてタイマ403によりマイナーループ制御部406に送られた位置検出信号M1が演算タイミングかどうかが判断される(s2)。この際位置センサ350から送られる位置検出信号M1の信号送信間隔に対して、タイマ403により計時されるマイナーループ制御部406の受信間隔のほうの時間的な間隔が大きくなっている。換言すれば、位置センサ350から送られる位置検出信号M1に対して、複数回に1回、間欠的に得らえる位置検出信号M2がマイナーループ制御部406における制御に活用される。そしてマイナーループ制御部406が演算タイミングとなった場合(s2=Y)は、位置検出信号M2が読み込まれ、更新される(s3)。そして新たに読み込まれた位置検出信号M2が加算器407に送られる。
【0037】
一方、指令信号生成部402からは第1のフィードバック制御ループF1と同じ指令信号Sがマイナーループ制御部406の加算器407に送られ、加算器407において前記指令信号Sと前記位置検出信号M2の偏差量D2が演算される(s4)。そして前記第1のフィードバック制御ループF1の偏差量D1と第2のフィードバック制御ループF2の偏差量D2は、次に加算器408で加算され、偏差量D3が得られる(s5)。そして更に第1の制御信号生成部409の部分で、偏差量D3にゲインG1を乗算して第1の制御信号GS1を生成または更新する(s6)。
【0038】
一方マイナーループ制御部406が演算タイミングとなっていない場合(s2=N)は、前回に加算器407に送信された位置検出信号M2は値が更新されずに、第2のフィードバック制御ループF2用の偏差量を演算する値として用いられる。ただしタイマ403により初回の位置検出信号M2が加算器407に送られていない段階ではフローチャート図の「現在位置を読み込み(s1)」に戻る。)そして前記第1のフィードバック制御ループF1と第2のフィードバック制御ループF2を組み合わせて偏差量D3を得る(s5)。そして前記偏差量D3を用いてタイバ移動シリンダ346に送油する流量制御弁344の制御を行う。
【0039】
なお本実施形態では第2のフィードバック制御ループF2(マイナーループ)の位置検出信号M2の検出間隔は、タイマ403により測定される時間を用いているが、位置センサ350により検出される位置間隔を用いてもよい。位置間隔を第2のフィードバック制御ループF2に用いる場合も第1のフィードバック制御ループF1の位置の検出間隔(スキャンサイクルごとの移動距離)よりも、第2のフィードバック制御ループF2における位置の検出間隔(スキャンサイクルごとの移動距離)のほうが大きくなっている。そして前記偏差量D3は次に第1の制御信号生成部409に送られて偏差量D3にゲインG1を乗算して第1の制御信号GS1を得る。なお本実施形態では第2のフィードバック制御ループF2の偏差量D2は指令信号Sとの間で演算されて偏差量D1に加算されている。しかし前記偏差量D1に対して第2のフィードバック制御ループF2の位置検出信号M2を加算および減算して第2のフィードバック制御ループF2を含めた偏差量を演算するようにしてもよい。
【0040】
一方上記したように予め定めた時間の経過または位置の進行に応じて、指令信号生成部402においてはフィードフォワード値FFが演算されて送信される(s7)。そして前記フィードフォワード値FFと前記第1の制御信号GS1が加算器410で加算され、第2の制御信号GS2が生成される(s8)。即ち第1のフィードバック制御ループF1と第2のフィードバック制御ループF2に更にフィードフォワード制御のフィードフォワード値FFを組み合わせる。この際に第1の制御信号GS1は上記したようにゲイン調整がなされているからフィードフォワード値FFに対する割合を調整することができる。そして更に第2の制御信号GS2は第2の制御信号生成部411に送られて、第2の制御信号生成部411でゲインG2が乗算され、第3の制御信号GS3が生成される(s9)。そして第3の制御信号GS3は流量制御弁344に送られ、流量制御弁344により油圧装置320の図示しないポンプから送られる送油量がコントロールされ、アクチュエータであるタイバ移動シリンダ346の制御が行われる(s10)。その結果、タイバ319、可動盤314、可動金型313からなる移動体の移動制御が行われる。
【0041】
前記第2のフィードバック制御ループF2は、図3に示されるコアバック制御CBの途中の時間T4か、またはコアバック制御CBの完了時間T5まで行われる(s11)。または可動金型313等の移動体が所定の位置に到達するまで行われる。そしてコアバック制御CBの完了の時間T4等または可動金型313等の移動体の位置がコアバック制御CBの完了位置に到達すると(s11=Y)と、マイナーループ制御(第2のフィードバック制御ループF2)は終了する。その後の制御については図3のフローチャート図には記載されていないが図4のタイミング図に記載されるように、フィードフォワード制御のフィードフォワード値FFに対してメジャーループ制御(第1のフィードバック制御ループF1)の偏差量D1のみを加算する制御のみが行われる。この際のフィードフォワード制御のフィードフォワード値FFは、可動金型313の移動とともに徐々に可動金型313の移動速度が減速されるように値が小さく切り換えられる。そしてコアバック制御CBの完了時間となるか可動金型313等が完了位置に到達するとコアバック制御CBは終了される。
【0042】
なお可動金型313を型開方向に移動させるコアバック制御CBの期間のうち少なくとも一部の期間に第2のフィードバック制御を取り入れればよい。すなわち第2のフィードバック制御ループF2は、可動金型313等の移動を安定的または所望の速度で行うためのものである。従って第1のフィードバック制御ループF1だけでは応答性が過敏になる場合に第2のフィードバック制御ループF2を取り入れればよく、図3のコアバック制御CBの開始時から途中までの間、コアバック制御CBの開始時から終了時までの間、コアバック制御CBの開始後から終了前までの途中(中間)の区間のみ、コアバック制御CBの開始後の途中から終了時までのいずれの期間でもよい。本実施形態ではコアバック制御CBの途中の区間のみ第2のフィードバック制御ループF2が取り入れられており、フィードフォワードのフィードフォワード値FFが徐々に減少する減速区間となる前に第2のフィードバック制御ループF2による第2のフィードバック制御を停止している。
【0043】
また上記の実施形態では、タイバ319の移動を行うアクチュエータであるタイバ移動シリンダ346のみによりコアバック制御CBを行う例について記載したが、型締機構316の型締シリンダ317や型開閉機構のサーボモータ338の少なくとも一方もコアバック制御CBに活用してもよい。その場合一般的にはタイバ移動シリンダ346と同じ方向に前記型締シリンダ317やサーボモータ338を同期または同期に近い速度で駆動させるが、キャビティ面の面圧を一定以上とするために、タイバ移動機構を含めたいずれかの駆動機構は可動金型313を閉める方向に力を発生させるものでもよい。
<冷却工程>
【0044】
コアバック制御CBが終了すると可動金型313はその位置で停止され冷却工程が行われる。通常の場合、冷却工程ではキャビティCA内の溶融樹脂の冷却収縮が発生するので、タイバ移動シリンダ346や型締シリンダ317により可動金型313に型閉方向の力を付与し、可動金型313は型閉方向に移動される。しかし可動金型313が現在の位置を保持するものやコアバック制御CBが冷却工程を含んでいてコアバック制御CBの終了時にそのまま型開されるものでもよい。
<強力型開工程および型開工程>
【0045】
次に型締シリンダ317の強力型開側油室317bに作動油を供給して強力型開を行って可動金型313を型開き方向に移動させ、固定金型311から可動金型313に保持された成形品を離型する。そして型開閉機構315のサーボモータ338を作動させて可動盤314を型開き作動させる。その後には図示しないエジェクタ機構により可動金型313に保持されている成形品を突き出して図示しない取出装置により成形品を保持して射出成形装置の側方などに搬出する。
【0046】
なお本発明の成形装置が射出成形装置1の型締装置3である場合の成形方法の応用例については、発泡成形を含むコアバック制御CBのみならず、固定金型311と可動金型313が嵌合または当接されキャビティCAが形成された状態でアクチュエータにより前記固定金型311に対して可動金型313を移動させる成形方法全般に適用可能である。具体的には射出圧縮成形、射出プレス成形、ガス抜き成形、中空成形品用金型、バネ金型、など型締時の型締力と比較して比較的低型締力でキャビティ形成後の可動盤を所定距離移動させる成形方法全般に適用できる。
【0047】
また特には固定金型311と可動金型313が嵌合または当接され最終成形品の体積よりも容積が大きいキャビティCAが形成された状態で射出装置4から溶融樹脂を射出し、その後に可動金型313を移動させて型閉を行う射出プレス成形を行うものであってもよい。射出プレス成形の場合、キャビティ形成および射出後の可動金型313の型閉移動速度が重要となり本発明を用いることが考えられる。
【0048】
また本発明の成形装置が射出成形装置1の型締装置3である場合、型締装置3は図1のものに限定されず次のようなものでもよい。一例としては可動盤の背面にトグル機構を備えたトグル型締装置であってもよい。トグル型締装置がサーボモータで型締制御される場合、第1のフィードバック制御ループF1と、該第1のフィードバック制御ループF1よりも検出間隔の長い第2のフィードバック制御ループF2を組み合わせにより前記サーボモータを制御して可動金型を移動させるものであればよい。その場合、第1のフィードバック制御ループF1と第2のフィードバック制御ループF2は、位置制御または速度制御により行われる。また型締装置は、可動盤の背面に一つまたは複数のラムを備えた油圧型締装置であってもよい。
【0049】
また本発明の成形装置が射出成形装置1の型締装置3である場合、前記固定金型311と前記可動金型313が嵌合または当接されキャビティCAが形成された状態で前記固定金型311に対して可動金型313を移動させるアクチュエータは、固定盤312と可動盤314の間に設けられたものでもよい。即ち型締機構316や型開閉機構315とは別に固定盤312と可動盤314の間に2基ないし4基のコアバック制御用等の反抗機構のアクチュエータを設ける。アクチュエータはボールねじ機構を備えたサーボモータ等の電動モータであってもよいし油圧シリンダであってもよい。このタイプの型締装置3の場合の制御については、型閉されて固定盤312と可動盤314の間が一定距離以内となった場合に、一方の盤(例えば固定盤312)に設けられている反抗機構のアクチュエータが他方の盤(例えば可動盤314)に当接または連結されて制御可能となる。そしてコアバック制御CBの際には上記したような本発明の制御方式がそれぞれ適用され、可動盤314と可動金型313からなる移動体が移動制御される(通常は押し移動)。
【0050】
また本発明のコアバック制御CBにおいては、固定金型311に対して可動金型313が移動させられるが、移動される可動金型313は、可動金型313のうちの一部のみであってもよい。即ち可動金型313は固定金型311と当接する固定部とキャビティ面を形成するコア部とからなり、コア部のみが金型内部または可動盤314に設けられたアクチュエータにより固定金型311および可動金型313の固定部に対して相対的に移動可能でキャビティCAの容積が可変となっているものである。上記においても本発明のアクチュエータの制御を行うことは有効である。
【0051】
また本発明の各実施形態において、フィードフォワード値FFは必須のものではないので、フィードバック系のループのみで制御を行うケースについて説明する。即ち射出プレス成形の制御例について、図5のブロック線図を参照しつつ図2のブロック線図との相違点を中心に制御ブロック504の説明をする。最初に固定金型311と前記可動金型313が嵌合または当接され最終成形品よりも容積の大きいキャビティCAが形成された状態で可動金型313は停止される。そして次に射出装置4からキャビティCAに射出が行われると同時かそれと僅かに前後して、アクチュエータにより前記固定金型311に対して可動金型313を型閉方向に移動させる。アクチュエータの種類としてはタイバ移動機構であってもよいし、型締機構であってもよいし、型開閉機構であってもよい。
【0052】
射出プレス制御開始時におけるアクチュエータへの指令信号Sは、制御装置501の指令信号生成部502から送信される。一方可動金型313(または可動金型313と一体の移動体)の位置は位置センサ350により検出され、第1のフィードバック制御ループF1の位置検出信号M1として制御装置501の加算器505に送られ、指令信号Sに加算され、第1の指令信号S1となる。なお第1の指令信号S1にもゲインを乗算してもよい。そして更に第1の指令信号S1に対して、該第1のフィードバック制御ループF1よりも位置検出信号M2の検出間隔の長い第2のフィードバック制御ループF2を追加する。具体的には第2のフィードバック制御ループF2の位置検出信号M2は、所定間隔ごとにタイマ503により計時された際のみマイナーループ部506の加算器507に送られ、第1の指令信号S1に加算または減算される。そして次に制御信号生成部508でゲインG1を乗算してアクチュエータを制御するための制御信号GS1が生成される。そして制御信号GS1によりアクチュエータを制御して可動金型313を型閉方向に移動させキャビティCA内の溶融樹脂を圧縮していく。この際に第2のフィードバック制御ループF2を用いたカスケード制御を行うことにより、可動金型313の移動による圧縮制御が過敏な制御になりすぎずに行える。なお射出プレスや射出圧縮成形についても制御開始時から制御終了時まで第2のフィードバック制御ループF2を追加する必要はなく、最初から、または途中からの必要な区間または時間だけ第2のフィードバック制御ループF2を追加すればよい。
【0053】
なお本実施形態のコアバック制御CBや射出プレス制御等は、PI制御により行われ、マイナーループ制御の部分はI制御により行っているが、PID制御により行われるものでもよい。また本実施形態のコアバック制御CBや射出プレス制御等は、位置制御により行われるが、その一部または全部が速度制御により行われるものを含む。上記の制御を行うことにより、射出プレスの制御を安定的に行うことができる。本発明は射出プレス成形や射出圧縮成形であっても射出速度が比較的遅い(例えば200mm/sec以下)のレンズ等の成形品の成形に好適である。また無論、図5のブロック線図のようなフィードバック系のループのみでコアバック制御を行うことも可能である。
【0054】
また本発明に用いられる成形装置例については、プレス成形装置、発泡成形装置、中空成形装置、真空成形装置、金型間で可動金型を移動制御しながら成形品が成形されるもの全般に適用できる。また特に発泡成形装置については、射出装置からキャビティに材料を射出するもの以外に、型開状態のキャビティに発泡材料を供給し、型閉後に可動金型を移動させて発泡成形品を成形するものであってもよい。また前記のバリエーションとして型開状態のキャビティに材料のみを供給し、型閉後にキャビティにガスを注入して可動金型を移動させて発泡成形品を成形するものであってもよい。また前記において単独の型開閉機構のアクチュエータにより本発明の制御を実施するものであってもよい。またいずれに成形装置であっても可動金型の型開閉方向は限定されず、水平方向または垂直方向、或いは他の方向に型開閉されるものであってもよい。
【0055】
なお本発明については、一々列挙はしないが、上記したものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 射出成形装置
3 型締装置
4 射出装置
311 固定金型
312 固定盤
313 可動金型
314 可動盤
315 型開閉機構
319 タイバ
323 係合機構
346 タイバ移動シリンダ(アクチュエータ)
350 位置センサ
401,501 制御装置
402,502 指令信号生成部
404 制御ブロック
406 マイナーループ制御部
CA キャビティ
CB コアバック制御
FF フィードフォワード値
F1 第1のフィードバック制御ループ
F2 第2のフィードバック制御ループ
M1,M2 位置検出信号
図1
図2
図3
図4
図5