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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083428
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】防カビ消臭脱臭剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/02 20060101AFI20240614BHJP
   A01N 25/18 20060101ALI20240614BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240614BHJP
   A01N 27/00 20060101ALI20240614BHJP
   A01N 31/04 20060101ALI20240614BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20240614BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20240614BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20240614BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20240614BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20240614BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A01N37/02
A01N25/18 102B
A01P3/00
A01N27/00
A01N31/04
A61L9/01 B
A61L9/014
B01J20/02 A
B01J20/02 C
B01J20/10 D
B01J20/18 E
B01J20/20 B
B01J20/20 D
B01J20/18 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059684
(22)【出願日】2024-04-02
(62)【分割の表示】P 2020069000の分割
【原出願日】2020-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】三石 帆波
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 太洋
(72)【発明者】
【氏名】川尻 由美
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
(57)【要約】
【課題】優れた防カビ効果と優れた消臭脱臭効果を兼備し、さらに簡便に使用することができる防カビ消臭脱臭剤を提供すること。
【解決手段】常温揮散性防カビ成分を含有する第1のシート状基材と、消臭脱臭剤を含有する第2のシート状基材を有し、前記第2のシート状基材の密度が0.21mg/mm~0.50mg/mmであることを特徴とする防カビ消臭脱臭剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温揮散性防カビ成分を含有する第1のシート状基材と、
消臭脱臭剤を含有する第2のシート状基材とを有し、
前記第2のシート状基材は、天然セルロースパルプのみからなる繊維状物質から形成されたものであり、
前記第2のシート状基材の密度が0.301mg/mm~0.50mg/mmであることを特徴とする防カビ消臭脱臭剤。
【請求項2】
前記第2のシート状基材の密度が0.389mg/mm~0.402mg/mmであることを特徴とする請求項1に記載の防カビ消臭脱臭剤。
【請求項3】
前記消臭脱臭剤は、梅炭、セオライト、活性炭、銅イオン、及びシリカゲルからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防カビ消臭脱臭剤。
【請求項4】
前記繊維状物質は、繊維径が10μm~150μmであることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の防カビ消臭脱臭剤。
【請求項5】
前記常温揮散性防カビ成分は、沸点290℃以下の常温揮散性防カビ化合物を含有することを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の防カビ消臭脱臭剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防カビ消臭脱臭剤に関する。より具体的には、優れた防カビ効果と優れた消臭脱臭効果を兼備し、さらに簡便に使用することができる防カビ消臭脱臭剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴミ箱・オムツ処理ポット等の廃棄物収容空間における臭いは問題になっており、解決に向けた様々な検討がされている。例えば、引用文献1にはゴミ箱等の廃棄物収容空間の消臭を目的とした(a)ヨウ素及び(b)植物精油を含有する消臭組成物を多孔性の球状再生セルロース粒子に含侵させた消臭剤が記載されている。また、引用文献2には、生ゴミに対する脱臭もしくは消臭機構を備えたゴミ箱が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-65965号公報
【特許文献2】特開2014-201396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記引用文献1に記載された消臭剤は、ヨウ素を必須成分としており、ゴミ箱の材質によっては着色する虞があり、ゴミ箱等の廃棄物収容空間の消臭脱臭に適したものとは必ずしも言えなかった。
【0005】
また、引用文献2に記載のゴミ箱は生ゴミに対する消臭・脱臭効果を有する優れたものであるが、複雑な機構を備えたものであり、簡便に利用することは困難であった。
【0006】
そのため、ゴミ箱等の廃棄物収容空間において優れた消臭脱臭効果を有し、ゴミ箱等での使用に適し、さらに簡便に使用することができる消臭脱臭剤の開発は求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはかかる課題を解決するため、種々検討を行った結果、ゴミ箱の消臭脱臭に関しては悪臭自体を消臭脱臭することに加えて、カビの発生を抑制することにより、消臭脱臭効果をさらに高めることができることを見出した。
【0008】
しかし、カビの発生を抑制する成分は一般に揮散性が高いため、消臭脱臭剤に吸着されることで、カビの発生の抑制効果が低下するばかりか、消臭脱臭剤自体が悪臭を吸着する性能も低下してしまうという問題点があった。本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、常温揮散性防カビ成分を含有する第1のシート状基材と、消臭脱臭剤を含有する第2のシート基材を有する防カビ脱臭消臭剤において、第2のシート基材の密度をある範囲に特定することで、前記問題点を解決でき、優れた防カビ効果と優れた消臭脱臭効果を兼備し、さらに簡便に使用することができることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]常温揮散性防カビ成分を含有する第1のシート状基材と、消臭脱臭剤を含有する第2のシート状基材を有し、前記第2のシート状基材の密度が0.21mg/mm~0.50mg/mmであることを特徴とする防カビ消臭脱臭剤。
[2]前記第2シート状基材は、繊維状物質から形成されたものであることを特徴とする[1]に記載の防カビ消臭脱臭剤。
[3]前記繊維状物質は、天然セルロース,再生セルロース、バクテリアセルロース、化学修飾セルロース、絹、羊毛、ポリアクリルアミド、麻、コラーゲン及び木毛からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする[2]に記載の防カビ消臭脱臭剤。
[4]前記繊維状物質は、繊維径が10~150μmであることを特徴とする[2]又は[3]に記載の防カビ消臭脱臭剤。
[5]前記常温揮散性防カビ成分は、沸点290℃以下の常温揮散性防カビ化合物を含有することを特徴とする[1]~[4]のいずれか1項に記載の防カビ消臭脱臭剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた防カビ効果と優れた消臭脱臭効果を兼備し、さらに簡便に使用することができる防カビ消臭脱臭剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかる防カビ消臭脱臭剤を実施するための形態を、詳細に説明するが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
【0012】
本発明の防カビ消臭剤は、常温揮散性防カビ成分を含有する第1のシート状基材と、消臭脱臭剤を含有する第2のシート状基材から構成されるものである。
【0013】
本発明において、前記第1のシート基材に使用される基材としては、例えば、紙、織布、不織布、樹脂フィルム、及びこれらを積層したもの等が挙げられる。
【0014】
前記常温揮散性防カビ成分としては、生ゴミ等に対する常温揮散性防カビ効果のある香料等が挙げられ、ゴミ箱等の廃棄物収容空間で効果的に拡散するという観点から、沸点が290℃以下の常温揮散性防カビ化合物を含有することが好ましい。これら常温揮散性防カビ化合物としては、例えば、エステル系防カビ化合物、アルコール系防カビ化合物やメンタン系防カビ化合物等が挙げられる。これらの防カビ化合物は単独で用いても、複数の防カビ化合物を混合して用いても良い。
【0015】
本発明の常温揮散性防カビ成分に含まれるエステル系防カビ化合物は、アリルヘキサノエート、アリルヘプタノエート、アリルオクタノエート等のアリルエステル系防カビ化合物、酢酸ベンジル、ベンジルプロピオネート、ベンジルブタノエート、4-メチルベンジルアセテート、4-メトキシベンジルプロピオネート等のベンジルエステル系防カビ化合物、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ノニルアセテート、イソチオシアン酸アリルエステル等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、アリルヘキサノエート、アリルヘプタノエート、アリルオクタノエート等のアリルエステル系防カビ化合物、酢酸ベンジル、ベンジルプロピオネート、ベンジルブタノエート、4-メチルベンジルアセテート、4-メトキシベンジルプロピオネート等のベンジルエステル系防カビ化合物からなる群より選択される1種以上を含有することが好ましく、アリルヘキサノエート、アリルヘプタノエート、アリルオクタノエートもしくは酢酸ベンジルからなる群より選択される1種以上を含有することがより好ましい。なお、本発明におけるエステル系防カビ化合物に、不斉炭素に基づく光学異性体や二重結合に基づく幾何異性体が存在する場合、それらの各々や任意の混合物であっても良い。
【0016】
本発明の常温揮散性防カビ成分に含まれるアルコール系防カビ化合物は、ジヒドロミルセノール、リナロール、エチルリナロール、ジヒドロリナロール、ネロール、ゲラニオール、シトロネロール、ミルセノール、ラバンジュロール、オクタ-1-エン-3-オール、1-デカノール、ノニルアルコール、1-ノナノール、2-ノナノール、1-オクタノール、2-オクタノール、1-ヘプタノール、フェネチルアルコール、フェノール、サリチルアルコール等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、ジヒドロミルセノール、リナロール、エチルリナロール、ジヒドロリナロール、ミルセノール等の不飽和脂肪族第3級アルコール系防カビ化合物からなる群より選択される1種以上を含有することが好ましく、ジヒドロミルセノール、リナロールからなる群より選択される1種以上を含有することがより好ましい。なお、本発明におけるアルコール系防カビ化合物に、不斉炭素に基づく光学異性体や二重結合に基づく幾何異性体が存在する場合、それらの各々や任意の混合物であっても良い。
【0017】
本発明の常温揮散性防カビ成分に含まれるメンタン系防カビ化合物は、例えば、下記化学式(I)で示されるp-メンタンの炭素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が置換基で置換された化合物や、p-メンタンの単結合の少なくとも1つが二重結合に置き換えられた化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。置換基としては、例えば、水酸基、エーテル性酸素原子(-O-)、アミノ基、アルキル基、カルボキシル基、アシル基、エステル基、アミド基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
【化1】
【0019】
このようなメンタン系防カビ化合物として、より具体的には、チモール、カルバクロール等の芳香族メンタン系防カビ化合物、d-リモネン等のリモネン、α-テルピネオール等のテルピネオール、カルベオール、ペリルアルデヒド、メントン、d-カルボン、l-カルボン等のカルボン、ピノカルボン、ピノカルベオール、ピペリトン、ピペリテノン、プレゴン、ジヒドロカルボン等の不飽和脂肪族メンタン系防カビ化合物、p-メンタン-3,8-ジオール、メントール、酢酸メンチル、p-メンタン等の飽和脂肪族メンタン系防カビ化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
これらメンタン系防カビ化合物のうち、d-リモネン等のリモネン、α-テルピネオール等のテルピネオール、p-メンタン-3,8-ジオール、メントール、酢酸メンチル、メントン、チモール、d-カルボン、l-カルボン等のカルボン、ピノカルボン、ピノカルベオール、ピペリトン、ピペリテノン、プレゴン及びジヒドロカルボンからなる群より選択される1種以上を含有することが好ましい。なお、本発明におけるメンタン系防カビ化合物に、不斉炭素に基づく光学異性体や二重結合に基づく幾何異性体が存在する場合、それらの各々や任意の混合物であっても良い。また、本発明においては、水酸基を有するメンタン系防カビ化合物は、アルコール系防カビ化合物ではなくメンタン系防カビ化合物として扱う。
【0020】
常温揮散性防カビ成分として、エステル系防カビ化合物から選択される1種以上、アルコール系防カビ化合物から選択される1種以上、及びメンタン系防カビ化合物から選択される1種以上を混合して用いると、防カビ効果をより発揮することができるので好ましい。この場合において各成分の配合比率は、(エステル系防カビ化合物の配合重量):(アルコール系防カビ化合物の配合重量)は、1:12~14:1が好ましく、1:7~8:1がより好ましく、1:4~5:1がさらに好ましい。(アルコール系防カビ化合物の配合重量):(メンタン系防カビ化合物の配合重量)は、1:8~12:1が好ましく、1:5~7:1がより好ましく、1:3~4:1がさらに好ましい。(メンタン系防カビ化合物の配合重量):(エステル系防カビ化合物の配合重量)は、1:14~8:1が好ましく、1:8~5:1がより好ましく、1:5~3:1がさらに好ましい。
【0021】
前記、第1のシート状基材に前記常温揮散性防カビ成分を含有させる方法については、前記常温揮散性防カビ成分の揮散性が損なわれない限り、特に制限はない。例えば、前記常温揮散性防カビ成分を、そのまま又は各種樹脂、バインダー、溶剤等と任意に組み合わせ、各種版を使用した印刷、含侵、浸漬、スプレー塗布、滴下、基材への練り込み等の既知の方法により、基材に含有させることができる。
【0022】
なお、防カビ効果と消臭脱臭効果を兼備するという本発明の目的及び効果を逸脱しない範囲において、前記第1のシート状基材には、さらに各種添加剤を任意に添加することができる。このような添加剤としては、例えば、揮散調整剤、安定化剤、酸化防止剤、変色防止剤、紫外線防止剤、ハーモナイズド香料等の芳香剤等を挙げることができる。
【0023】
前記第2のシート状基材は、消臭脱臭剤を含有するものであり、好ましくは消臭脱臭剤を含有する繊維状物質から形成されたものであり、前記第2のシート状基材の密度は、0.21mg/mm~0.50mg/mmであり、0.28mg/mm~0.45mg/mmであることが好ましい。
【0024】
前記消臭脱臭剤は活性炭、梅炭、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト、セラミックからなる群より選択される1種以上を含有するものであるので、使用時にゴミ箱の着色や変色等の悪影響もなく、消臭脱臭効果にも優れる。これらの中でも、活性炭、梅炭、シリカゲル、ゼオライトからなる群より選択される1種以上を含有するものが好ましい。
【0025】
前記消臭脱臭剤には、例えば、銅イオン、銀イオン、カルシウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン等の金属イオンを含有するものであっても良く、消臭脱臭効果に優れるという観点から銅イオンや銀イオンを含有することが好ましい。
【0026】
本発明において、前記第2のシート基材に使用される基材としては、例えば、紙、織布、不織布、樹脂フィルム、及びこれらを積層したもの等が挙げられる。これらのうち、繊維状物質により形成されたものが好ましい。
【0027】
本発明において、前記第2のシート基材に消臭脱臭剤を含有させる方法は、例えば、前記消臭脱臭剤を、そのまま又は各種樹脂、バインダー、溶剤等と任意に組み合わせて、各種版を使った印刷、含侵、浸漬、スプレー塗布、滴下、基材への練り込み等の既知の方法によって基材に保持させることができる。なお、前記消臭脱臭剤を含有する原料を用いて、周知の抄紙方法やスパンレース、ニードルパンチ、エアレイド等の既知の製法によって紙、不織布等のシート形成する方法を採用できる。
【0028】
本発明において、前記第2のシート状基材としては、前記脱臭消臭剤を含有する繊維状物質から形成されていることが好ましい。
【0029】
本発明において前記繊維状物質としては、例えば、天然セルロース(パルプ、ケナフ、木綿、麻)、再生セルロース(セロハン、セルロースビーズ、レーヨン、セルローススポンジなど)、木綿、バクテリアセルロースおよびセルロースを化学修飾したエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、更には絹、羊毛、麻、ポリビニルアルコール、架橋型ポリビニルアルコール、キチン、キトサン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルホルマールなどの天然、もしくは人工の親水性高分子、ポリアクリルアミド等の高吸水性高分子ゲル、コラーゲン、木毛等が挙げられ、繊維径が10~150μmであることが好ましく、繊維径が30~100μmであることがより好ましく、40~90μmであることがさらに好ましい。
【0030】
本発明において、前記繊維状物質に消臭脱臭剤を含有させる方法は、各種溶剤や、バインダー、接着剤、展着剤を使用しないか、又はその使用量を最小限に抑えるものであれば、特に限定されない。例えば、前記繊維状物質にゼオライト粒子等を含侵、浸漬、練り込み等により分散させる方法等を採用できる。
【0031】
このような方法によれば、各種溶剤やバインダー、接着剤、展着剤を使用しないか、又はその使用量を最小限に抑えて消臭脱臭剤を保持したシート状基材が得られるため、シート状基材において、消臭脱臭剤の細孔が各種溶剤や、バインダー、接着剤、展着剤によって塞がれることによって消臭脱臭剤が阻害されるという問題がない。
【0032】
前記繊維状物質をシート状に形成して第2のシート状基材を得る方法は、特に限定されないが、例えば、前記繊維物質を用いて、周知の抄紙方法やスパンレース、ニードルパンチ、エアレイド等の既知の製法によって紙、不織布等のシート形成する方法を採用できる。
【0033】
前記消臭脱臭剤を含有する繊維状物質から形成された第2のシート状基材3としては市販品を用いることもできる。このような市販品として、セルガイア(登録商標)(レンゴー社製)、梅炭クレープ紙(製品名Sumidecо Paper、山陽製紙社製)、活性炭シート(王子キノクロス社製)、ゼオライトシート(王子キノクロス社製)、シリカゲルシート(王子キノクロス社製)、FS-ZEO(登録商標)(凸版印刷社製)、および機能性粉体担持不織布(日本バイリーン社製)等が挙げられる。
【0034】
本発明において、防カビ消臭脱臭剤の製造にあたっては、前記第1のシート基材と第2のシート基材を積層しても良い。同一容器の同一収納部に収納しても良く、同一容器の異なる収納部にそれぞれ収納しても良い。通気性の観点から、前記第1のシート状基材と第2のシート基材を、同一容器の異なる収容部にそれぞれ収容することが好ましい。前記容器としては、プラスチック成型容器、紙容器、袋状物等が挙げられる。
【0035】
本発明の防カビ消臭脱臭剤は、ゴミ箱、オムツ処理ポット等の廃棄物収容空間で使用することに適している。具体的な使用方法としては、ゴミ箱、オムツ処理ポット等の廃棄物収容空間の内壁に貼り付けて使用することやゴミ箱、オムツ処理ポット等の廃棄物収容空間内に置いて使用すること等ができる。使用の際の取り扱いの簡便性から、ゴミ箱、オムツ処理ポット等の廃棄物収容空間の内壁に貼り付けて使用することが好ましい。
【実施例0036】
以下、具体的な実施例及び試験例によって、本発明の防カビ消臭脱臭剤をより詳細に説明する。なお、本発明は、実施例及び試験例によって何ら限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
防カビ成分として、アリルヘプタノエート(100mg)、酢酸ベンジル(25mg)、ジヒドロミルセノール(100mg)、リナロール(40mg)、d-リモネン(100mg)、及びテルピネオール(100mg)の混合物を含む薬剤を調製し、この薬剤を天然セルロースパルプ性不織布製の担体に含侵させて防カビ性の第1のシート状基材(縦2.5cm×横5cm 面積12.5cm)を作製した。天然セルロースパルプとゼオライトを含む消臭性の第2のシート状基材(縦6cm×横6cm 面積36cm、密度0.213mg/mm)を作製した。作製した第1のシート状基材、及び第2のシート状基材は、夫々本体の担持体保持部に設置した。その後、悪臭成分吸着部となる20cmの開口と、防カビ成分放出部となる3cmの開口とが形成されたカバー部を、本体に装着して防カビ消臭脱臭剤を作製し、これを実施例1とした。
【0038】
[実施例2~5、比較例1~2]
実施例1において、第2のシート状基材を表1に記載の各構成成分、密度となるよう作製された第2のシート基材に変えて、他は実施例1と同様にして、実施例2~5、及び比較例1~2の防カビ消臭脱臭剤をそれぞれ作製した。
【0039】
【表1】
【0040】
〔試験例1〕アンモニアの消臭脱臭効果
防カビ消臭脱臭剤による消臭脱臭効果を確認するために、下記の消臭脱臭試験1を実施した。プラスチック製円筒(内径20cm、高さ20cm)を7個用意して、夫々に50μLのアンモニア水を添加し、上部に実施例1~5、及び比較例1~2の防カビ消臭脱臭剤を夫々貼り付けたガラス板をのせて蓋をした。50μLのアンモニア水を添加した後、ガラス板をのせて蓋をしたままのものを、無処理対照区とした。これらのプラスチック製円筒を室温(25℃)で2時間静置後、気体検知管(株式会社ガステック製)にて円筒内のアンモニアの臭気を測定した。また無処理区として、薬剤含浸体を吊り下げないこと以外は上記処理区と同じ条件で、2時間静置後のカップ内のアンモニアの臭気濃度も気体検知管で測定した。
測定結果を以下の式(I)に基づき消臭率(%)を算出し、A;80%以上100%未満、B;60%以上80%未満、C;40%以上60%未満、D;40%未満の4段階で評価した。試験結果は表2に記載する。
【0041】
(数1)
消臭率(%)=[1-処理区臭気濃度/無処理区臭気濃度]×100 (I)
【0042】
〔試験例2〕トリメチルアミンの消臭脱臭効果
防カビ消臭脱臭剤による消臭脱臭効果を確認するために、下記の消臭脱臭試験2を実施した。プラスチック製円筒(内径20cm、高さ20cm)を7個用意して、夫々に50μLのトリメチルアミンを添加し、上部に実施例1~5、及び比較例1~2の防カビ消臭脱臭剤を夫々貼り付けたガラス板をのせて蓋をした。50μLのトリメチルアミンを添加した後、ガラス板をのせて蓋をしたままのものを、無処理対照区とした。これらのプラスチック製円筒を室温(25℃)で2時間静置後、気体検知管(株式会社ガステック製)にて円筒内のトリメチルアミンの臭気を測定した。また無処理区として、薬剤含浸体を吊り下げないこと以外は上記処理区と同じ条件で、2時間静置後のカップ内のトリメチルアミンの臭気濃度も気体検知管で測定した。
測定結果を上記した式(I)に基づき消臭率(%)を算出し、A;80%以上100%未満、B;60%以上80%未満、C;40%以上60%未満、D;40%未満の4段階で評価した。試験結果は表2に記載する。
【0043】
〔試験例3〕メチルメルカプタンの消臭脱臭効果
防カビ消臭脱臭剤による消臭脱臭効果を確認するために、下記の消臭脱臭試験3を実施した。プラスチック製円筒(内径20cm、高さ20cm)を7個用意して、夫々に200μLのメチルメルカプタンを添加し、上部に実施例1~5、及び比較例1~2の防カビ消臭脱臭剤を夫々貼り付けたガラス板をのせて蓋をした。200μLのメチルメルカプタンを添加した後、ガラス板をのせて蓋をしたままのものを、無処理対照区とした。これらのプラスチック製円筒を室温(25℃)で2時間静置後、気体検知管(株式会社ガステック製)にて円筒内のメチルメルカプタンの臭気を測定した。また無処理区として、薬剤含浸体を吊り下げないこと以外は上記処理区と同じ条件で、2時間静置後のカップ内のメチルメルカプタンの臭気濃度も気体検知管で測定した。
測定結果を上記した式(I)に基づき消臭率(%)を算出し、A;80%以上100%未満、B;60%以上80%未満、C;40%以上60%未満、D;40%未満の4段階で評価した。試験結果は表2に記載する。
【0044】
【表2】
【0045】
試験例1~3の結果、第2のシート状基材の密度が0.21mg/mm~0.50mg/mmである実施例1~5の防カビ消臭脱臭剤はアンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタンに対する優れた消臭脱臭効果を示した。中でも、第2のシート状基材の密度が0.28mg/mm~0.45mg/mmである実施例3~5の防カビ消臭脱臭剤はアンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタンに対するとりわけ優れた消臭脱臭効果を示した。
【0046】
一方、第2のシート状基材の密度が0.21mg/mm未満となる比較例1や第2のシート状基材の密度が0.50mg/mmを上回る比較例2においてはアンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタンに対する消臭脱臭効果において不十分であるという結果になった。
【0047】
[試験例4]食品由来生ゴミの腐敗臭発生抑制試験1
蓋つきのゴミ箱(奥行45cm、幅34cm、高さ58cm)の中に各細切した食品(ホタルイカ12g、大根35g、チーズ40g、豚35g)と水10gを入れておいた。本発明の実施例4の防カビ消臭脱臭剤を蓋の裏に貼り付けた後、蓋を閉めた。室温(25℃)で7日間保管後、気体検知管(株式会社ガステック製)にてフラスコ内のアンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタンのそれぞれの臭気濃度を測定した。
また無処理区として、防カビ消臭製品を蓋の裏に貼り付けないこと以外は上記の処理区と同じ条件で、室温(25℃)で7日間保管後のフラスコ内のアンモニア、メチルメルカプタン、トリメチルアミンのそれぞれの臭気濃度も気体検知管(株式会社ガステック製)で測定した。
測定結果を上記した式(I)に基づき、腐敗臭発生抑制率(%)を算出した。(試験結果は表3に記載。)
【0048】
【表3】
【0049】
試験の結果、本発明の防カビ消臭脱臭剤は腐敗臭発生抑制効果を示すことを確認した。さらに各食品の外観から、いずれの食品においても、7日間保管後の無処理区と処理区の食品を比較したところ、無処理区の食品にはカビが発生していたのに対し、本発明の防カビ消臭脱臭剤を用いた食品(処理区の食品)にはカビが発生しておらず、本発明の防カビ消臭脱臭剤が防カビ効果にも優れることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明により得られる防カビ消臭脱臭剤は、優れた防カビ効果と優れた消臭脱臭効果を兼備し、さらに簡便に使用することができるため、極めて有用性の高いものである。