(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083451
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】バッテリ温調方法及びバッテリ温調システム
(51)【国際特許分類】
B60L 58/24 20190101AFI20240614BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240614BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240614BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240614BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240614BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240614BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20240614BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240614BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240614BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240614BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20240614BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
B60L58/24
B60L50/60
B60L3/00 N
B60L3/00 S
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/633
H01M10/6556
H01M10/6568
H02J7/00 P
H02J7/04 L
H02J7/04 Q
H02J13/00 311A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060383
(22)【出願日】2024-04-03
(62)【分割の表示】P 2022177185の分割
【原出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】大垣 徹
(72)【発明者】
【氏名】高地 修平
(57)【要約】
【課題】バッテリ温調のための消費電力を小さくすることのできるバッテリ温調方法及びバッテリ温調システムを提供する。
【解決手段】バッテリ温調方法は、車両10の走行計画を取得するステップS12と、バッテリ13の要求入出力を取得するステップS14と、要求入出力を満たす第1バッテリ温度閾値T1,T2を取得するステップS16と、走行計画における第1時間で通常温調制御を実行すると仮定した場合のバッテリ13の予測温調熱量を取得するステップS18と、第1時間より後の第2時間での第1バッテリ温度閾値T1,T2及びバッテリ13の予測温度に基づいて過剰温調熱量を算出するステップS26と、第1時間における予測温調熱量から過剰温調熱量を差し引き、温調装置30の作動時間を短く設定するステップS28と、温調装置30を作動させてバッテリ13を温調するステップS40と、を備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリを温調装置により前記バッテリが所定の温度範囲に存在するように温調するバッテリ温調方法であって、
前記車両の走行計画を取得する走行計画取得ステップと、
前記走行計画に沿って前記車両が走行するときに予測される前記バッテリの要求入出力を取得するバッテリ入出力取得ステップと、
前記要求入出力を満たす前記バッテリの目標温度である第1バッテリ温度閾値を取得する目標温度取得ステップと、
前記第1バッテリ温度閾値に基づいて前記所定の温度範囲を補正する補正ステップと、を有し、
前記車両は、前記温調装置を制御する制御装置と、外部サーバと通信して該外部サーバの出力を前記制御装置に送信する通信装置と、を備え、
前記バッテリ温調方法が有するステップのうち少なくとも1つは、前記外部サーバにより実行され、
前記通信装置が前記外部サーバと通信できない場合、前記制御装置は前記バッテリが前記所定の温度範囲に存在するように前記バッテリを温調する通常温調制御を実行し、
前記通信装置が前記外部サーバと通信可能な場合、前記制御装置は前記補正ステップの結果に基づいて前記バッテリが補正された温度範囲に存在するように前記通常温調制御を修正する、
バッテリ温調方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリ温調方法であって、
前記補正ステップでは、
前記制御装置が前記通常温調制御を実行すると仮定した場合に、前記走行計画に沿って前記車両が走行するときの前記バッテリの温度推移を予測し、
所定の時間または位置において前記通常温調制御を実行すると仮定した際の前記バッテリの予測温度と前記第1バッテリ温度閾値との差分を算出し、前記差分に基づいて前記温調装置の作動時間を変更する、
バッテリ温調方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバッテリ温調方法であって、
前記バッテリには、前記バッテリの温度を取得するバッテリ温度センサが設けられており、
前記目標温度取得ステップでは、前記バッテリ温度センサの特性に基づいて、前記第1バッテリ温度閾値を修正して得られる第2バッテリ温度閾値を取得し、
前記補正ステップでは、前記第2バッテリ温度閾値に基づいて前記所定の温度範囲を補正する、
バッテリ温調方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のバッテリ温調方法であって、
前記バッテリ温調方法が有するステップのうち少なくとも前記補正ステップは、前記外部サーバにより実行される、
バッテリ温調方法。
【請求項5】
請求項2に記載のバッテリ温調方法であって、
前記第1バッテリ温度閾値は、高温側閾値と、該高温側閾値よりも低い温度である低温側閾値とを有する、
バッテリ温調方法。
【請求項6】
請求項5に記載のバッテリ温調方法であって、
前記バッテリは外部電源からの電力により充電可能であり、
前記走行計画が前記外部電源による前記バッテリの充電を含む場合、前記補正ステップにおいて、充電開始時の前記バッテリの温度が前記低温側閾値となるように前記バッテリの温度推移を予測する、
バッテリ温調方法。
【請求項7】
請求項2に記載のバッテリ温調方法であって、
前記第1バッテリ温度閾値は、前記通常温調制御による前記所定の温度領域よりも高く設定されており、
前記補正ステップでは、
前記走行計画における第1時間又は第1位置で前記通常温調制御を実行すると仮定した場合の前記バッテリの予測冷却量を予測し、
前記第1時間よりも後の第2時間又は前記第1位置よりも先の第2位置での前記第1バッテリ温度閾値及び前記バッテリの予測温度に基づいて、前記予測冷却量のうち過剰な冷却量である過剰冷却量を算出し、
前記第1時間又は前記第1位置における前記バッテリの前記予測冷却量から前記過剰冷却量を差し引き、前記温調装置の作動時間を短く設定する、
バッテリ温調方法。
【請求項8】
請求項2に記載のバッテリ温調方法であって、
前記第1バッテリ温度閾値は、前記通常温調制御による前記所定の温度領域よりも低く設定されており、
前記補正ステップでは、
前記走行計画における第1時間又は第1位置で前記通常温調制御を実行すると仮定した場合の前記バッテリの予測加温量を予測し、
前記第1時間よりも後の第2時間又は前記第1位置よりも先の第2位置での前記第1バッテリ温度閾値及び前記バッテリの予測温度に基づいて、前記予測加温量のうち過剰な加温量である過剰加温量を算出し、
前記第1時間又は前記第1位置における前記バッテリの前記予測加温量から前記過剰加温量を差し引き、前記温調装置の作動時間を短く設定する、
バッテリ温調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたバッテリを温調装置により温調するバッテリ温調方法及びバッテリ温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池(以下、バッテリとも称する)に関する研究開発が行われている。
【0003】
バッテリは、例えば電気自動車やハイブリッド電気自動車といった電動車両に搭載され、車両の駆動源であるモータや車両に搭載される各種機器の電力源となる。バッテリは、車両周囲の環境下や車両の使用状態に応じて高温若しくは低温となる。バッテリが高温若しくは低温となるとバッテリの入出力が制限され得るので、バッテリを適切に温調(冷却又は加温)する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、使用予定の最大電力負荷に基づいてメインバッテリの温度上限を設定しており、走行中のバッテリ温度が当該温度上限を超えないように、走行開始時刻までに予めバッテリを冷却する先読み冷却を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、先読み冷却を実行することでバッテリの温調システムの作動時間が長くなり得る。よって、温調システムの作動時間が長くなるので、消費電力が大きくなり、電動車両の航続可能距離の低下につながる。
【0007】
本発明は、バッテリ温調のための消費電力を小さくすることのできるバッテリ温調方法及びバッテリ温調システムを提供する。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
車両に搭載されたバッテリを温調装置により温調するバッテリ温調方法であって、
前記車両の走行計画を取得する走行計画取得ステップと、
前記走行計画に沿って前記車両が走行するときに予測される前記バッテリの要求入出力を取得するバッテリ入出力取得ステップと、
前記要求入出力を満たす前記バッテリの目標温度である第1バッテリ温度閾値を取得する目標温度取得ステップと、
前記バッテリの温度が所定の温度領域に存在するように前記バッテリを温調する通常温調制御を実行すると仮定した場合に、前記走行計画に沿って前記車両が走行するときの前記バッテリの温度推移を予測するバッテリ温度推移予測ステップと、
前記走行計画における第1時間又は第1位置で前記通常温調制御を実行すると仮定した場合の前記バッテリの予測温調熱量を取得する温調熱量予測ステップと、
前記第1時間よりも後の第2時間又は前記第1位置よりも先の第2位置での前記第1バッテリ温度閾値及び前記バッテリの予測温度に基づいて、前記予測温調熱量のうち過剰な熱量である過剰温調熱量を算出する過剰温調熱量算出ステップと、
前記第1時間又は前記第1位置における前記予測温調熱量から前記過剰温調熱量を差し引き、前記温調装置の作動時間を短く設定する温調抑制ステップと、
前記温調装置を作動させて前記バッテリを温調する温調ステップと、を備える。
【0009】
本発明は、
車両に搭載されたバッテリの温度を調整する温調装置と、
前記温調装置を制御する情報処理装置と、を備えるバッテリ温調システムであって、
前記情報処理装置は、
前記車両の走行計画を取得する走行計画取得部と、
前記走行計画に沿って前記車両が走行するときに予測される前記バッテリの要求入出力を取得するバッテリ入出力取得部と、
前記要求入出力を満たす前記バッテリの温度である第1バッテリ温度閾値を取得する目標温度取得部と、
前記走行計画に沿って前記車両が走行するときの前記バッテリの温調計画を作成する温調計画部と、
前記温調装置を作動させて前記バッテリを温調する温調制御部と、を備え、
前記温調計画部は、
前記バッテリの温度が所定の温度領域に存在するように前記バッテリを温調する通常温調制御を実行すると仮定した場合に、前記走行計画に沿って前記車両が走行するときの前記バッテリの温度推移を予測し、
前記走行計画における第1時間又は第1位置で通常温調制御を実行すると仮定した場合の前記バッテリの予測温調熱量を取得し、
前記第1時間よりも後の第2時間又は前記第1位置よりも先の第2位置での前記第1バッテリ温度閾値及び前記バッテリの予測温度に基づいて、前記予測温調熱量のうち過剰な熱量である過剰温調熱量を算出し、
前記第1時間又は前記第1位置における前記予測温調熱量から前記過剰温調熱量を差し引き、前記温調装置の作動時間を短く設定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バッテリ温調のための消費電力を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】バッテリ13が搭載される車両10の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明のバッテリ温調システムの一実施形態であるバッテリ温調システム1の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】本発明のバッテリ温調方法のフローの一例を示す図である。
【
図5】車両10が現在地から目的地まで走行したときにおける、バッテリ13の要求入出力Pの一例を示す。
【
図6】バッテリ13の温度と要求入出力Pとの関係を示す図である。
【
図7】通常温調制御によってバッテリ13を冷却する場合におけるバッテリ13の温度推移(上側)及び温調計画(下側)を示すグラフである。
【
図9】1回目の冷却時における過剰冷却量Q1оの差し引きを考慮して、バッテリ13の温度推移及び温調計画を更新したグラフである。
【
図10】2回目の冷却時における過剰冷却量Q2о′の差し引きを考慮して、バッテリ13の温度推移及び温調計画を更新したグラフである。
【
図11】バッテリ13を冷却する場合における、通常温調制御に基づく温調計画と本発明のバッテリ温調方法に基づく温調計画とを比較したグラフを示す。
【
図12】通常温調制御によってバッテリ13を加温する場合におけるバッテリ13の温度推移(上側)及び温調計画(下側)を示すグラフである。
【
図14】1回目の加温時における過剰加温量Q1оの差し引きを考慮して、バッテリ13の温度推移及び温調計画を更新したグラフである。
【
図15】2回目の加温時における過剰加温量Q2о′の差し引きを考慮して、バッテリ13の温度推移及び温調計画を更新したグラフである。
【
図16】バッテリ13を加温する場合における、通常温調制御に基づく温調計画と本発明のバッテリ温調方法に基づく温調計画とを比較したグラフを示す。
【
図17】バッテリ温度とバッテリ温度センサ14の検出結果に含まれるばらつきとの関係を示したグラフである。
【
図18】走行計画中に充電を含む場合の、バッテリ13の温度推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のバッテリ温調方法及びバッテリ温調システムの一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。先ず、バッテリが搭載される車両について説明する。
【0013】
[車両]
車両10は、
図1に示すように、モータ11と、電力変換装置(Power Control Unit)12と、バッテリ13と、バッテリ温度センサ14と、充電口15と、充電器16と、通信装置17と、ナビゲーション装置18と、温調装置30と、制御装置40と、を備える。車両10は、例えば電気自動車やプラグイン・ハイブリッド自動車といった電動車両であり、後述するように、バッテリ13は、車両10の外部にある外部電源200、例えば急速充電器から供給される電力により蓄電可能に構成される。なお、
図1において、太い実線は機械連結を示し、二重点線は電気配線を示す。なお、
図1に示す構成は一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、他の構成が追加されてもよい。
【0014】
モータ11は、例えば、三相交流モータである。モータ11の出力は、駆動輪19に伝達されるとともに、車両10の減速時に車両の運動エネルギーを用いて発電する。
【0015】
電力変換装置12は、例えば、インバータ121と、DC-DCコンバータ122と、を備える。DC-DCコンバータ122は、バッテリ13から供給される電力を昇圧してインバータ121に出力するとともに、インバータ121から供給される電力を降圧してバッテリ13に出力する。インバータ121は、DC-DCコンバータ122から供給される直流を交流に変換してモータ11に出力するとともに、モータ11により発電された交流を直流に変換してDC-DCコンバータ122に出力する。
【0016】
バッテリ13は、例えば、リチウムイオン電池などの二次電池である。バッテリ13は、車両10の外部にある外部電源200、例えば高速道路のパーキングエリア等に設けられた急速充電器から導入される電力により充電される。バッテリ13は、主としてモータ11に電力を供給する。バッテリ温度センサ14は、例えば、電圧センサ、電流センサ、温度センサなどを含む。電圧センサ、電流センサ、温度センサは、それぞれバッテリ13の電流値、電圧値、温度を検出する。バッテリ温度センサ14は、検出した電流値、電圧値、温度等を制御装置40に出力する。
【0017】
充電口15は、充電ケーブルを介して外部電源200に接続(プラグイン)される。なお、車両10と外部電源200との接続はこれに限られない。例えば、外部電源200から送電される電力を非接触で受電可能な受電コイル等を車両10に設ける構成であってもよい。
【0018】
充電器16は、バッテリ13と充電口15の間に設けられる。充電器16は、充電口15を介して外部電源200から導入される電流、例えば普通充電時に交流電流を直流電流に変換する。充電器16は、変換した直流電流をバッテリ13に対して出力する。
【0019】
通信装置17は、セルラー網やWi-Fi網を接続するための無線モジュールを含む。通信装置17は、例えば、インターネットやEthernetなどのネットワークを介して車両10の外部に設けられた外部サーバ100(詳細は後述する)と通信する通信インターフェースである。通信装置17は、外部サーバ100と通信して外部サーバ100から伝送された出力を制御装置40に送信する。
【0020】
ナビゲーション装置18は、GPS(Global Positioning System)ユニットや、プロセッサ、地図データ等を記憶したメモリ、ディスプレイ、操作部(タッチパネル等)などを備える。ナビゲーション装置18は、GPS信号を受信した車両10の位置情報を取得する。
【0021】
ナビゲーション装置18は、例えば、車両10の現在地である自車位置から、車両10のユーザにより設定された目的地までの経路を、地図データ等を参照して決定する。また、ナビゲーション装置18は、制御装置40からバッテリ13のSOC(State Of Charge;充電率)情報を取得し、充電が必要な場合には充電ステーションでの充電を誘導経路に組み込んだ走行計画を作成する。そして、ナビゲーション装置18は、走行計画をディスプレイに表示することによってユーザに案内する。なお、ナビゲーション装置18は、一部又は全部の機能が、例えば、車両10のユーザの保有するスマートフォンやタブレット端末等のユーザ端末の機能によって実現されてもよい。
【0022】
温調装置30は、空調装置31とバッテリ温調回路32とを備える。
図2に示すように、空調装置31は、冷凍サイクル310を備え、車室内の空気の状態を調整することにより車室内の環境を調整するエアーコンディショナーである。バッテリ温調回路32は、冷媒流路に冷媒を流すことで、バッテリ13などを冷却又は加温する。バッテリ温調回路32の動作は、制御装置40によって、バッテリ温調回路32の温調能力に基づきバッテリ13の温度が所定の温度領域に存在するよう制御される。
【0023】
図2に示すように、温調装置30では、空調装置31の冷凍サイクル310と、バッテリ温調回路32とが、チラー33を介して互いの冷媒同士が熱交換可能に構成される。
【0024】
より具体的に説明すると、空調装置31の冷凍サイクル310は、圧縮機311、凝縮器312、膨張弁313、及び蒸発器314を直列に備える。さらに、冷凍サイクル310には、膨張弁313及び蒸発器314が配置される第1流路315aに対し、他の膨張弁316及びチラー33が配置される第2流路315bが並列に設けられる。また、第1流路315aと第2流路315bの分岐部315cと膨張弁313との間には遮断弁317が設けられている。遮断弁317をON状態とすることで、冷媒は第1流路315a及び第2流路315bの両方に流れ、遮断弁317をOFF状態とすることで、冷媒は第2流路315bにのみ流れる。
【0025】
バッテリ温調回路32は、冷媒を供給する電動ウォーターポンプ321、チラー33、バッテリ13、及びヒーター322が直列に接続されている。
【0026】
チラー33では、冷凍サイクル310の冷媒とバッテリ温調回路32の冷媒との間で熱交換が行われる。チラー33での熱交換によって、冷凍サイクル310の冷却能力は、エアコン用とバッテリ冷却用とに配分される。ここで、冷凍サイクル310の冷却能力とは、チラー33がバッテリ温調回路32の冷媒の熱を吸熱することができる熱量である。空調装置31を利用しない場合、遮断弁317がOFF状態となり、冷凍サイクル310の冷却能力を全てバッテリ冷却用に用いることができる。空調装置31を利用している場合、遮断弁317がON状態となり、冷凍サイクル310の冷却能力のうちバッテリ冷却用に用いることができる冷却能力は、エアコン用に分配される分だけ少なくなる。
【0027】
一方、バッテリ温調回路32は、バッテリ13を加温する際には、ヒーター322をONにして、バッテリ温調回路32内を流れる冷媒を加温する。そして、ヒーター322により加温された冷媒がバッテリ13を加温する。
【0028】
図1に戻り、制御装置40は、プロセッサ、メモリ、インターフェース等を備えるECU(Electronic Control Unit)によって実現される。制御装置40は、車両10に搭載された各種機器、例えば、モータ11や、電力変換装置12、バッテリ13、充電器16、ナビゲーション装置18、温調装置30を制御する。また、制御装置40は、通信装置17を介して、外部サーバ100から送信された情報を取得可能に構成される。なお、制御装置40の各機能は、1つの制御装置で構成されている必要はなく、それぞれ別体の制御装置で構成されていてもよい。
【0029】
[バッテリ温調システム]
バッテリ温調システム1は、
図3に示すように、前述した車両10が備える制御装置40、温調装置30、及び通信装置17、並びに、外部サーバ100により構成される。本発明のバッテリ温調方法は、バッテリ温調システム1により実行される。そして、制御装置40及び外部サーバ100は、バッテリ温調方法における演算処理を行う情報処理装置2を構成する。
【0030】
外部サーバ100は、走行計画取得部110と、バッテリ入出力取得部120と、目標温度取得部130と、温調計画部140と、を備え、本発明のバッテリ温調方法の少なくとも1つのステップを実行する。制御装置40は、温調制御部410を備え、温調制御部410は、温調計画部140から取得したバッテリ13の温調計画に基づき、温調装置30を作動させてバッテリ13を温調する。
【0031】
[バッテリ温調方法]
続いて、バッテリ温調システム1により実行される本発明のバッテリ温調方法について説明する。以下の説明では、先ずバッテリ13の冷却について説明し、次にバッテリ13の加温について説明する。
【0032】
(バッテリ冷却)
本発明のバッテリ温調方法の説明に先立ち、先ず、制御装置40により実行される通常温調制御について説明する。通常温調制御とは、制御装置40によって、バッテリ温調回路32の温調能力に基づき、バッテリ13の温度が所定の温度領域に存在するよう制御する制御である。通常温調制御における所定の温度領域は、下限値T0_lowと上限値T0_highとの間の温度領域であり、下限値T0_low及び上限値T0_highは、制御装置40の製造時に予め設定された値である。
【0033】
図7は、通常温調制御によってバッテリ13を冷却する場合におけるバッテリ13の温度推移(上側グラフ)及び温調計画(下側グラフ)を示すグラフである。例えば車両10の走行中にバッテリ13が発熱してバッテリ温度が上昇しているとき、バッテリ温度が上限値T0_highに達すると、制御装置40は、バッテリ温度が上限値T0_highを超えないように温調装置30を作動させてバッテリ13を冷却する。より具体的には、制御装置40は、バッテリ温度が下限値T0_lowとなるまで温調装置30を作動させてバッテリ13を冷却する。また、温調計画におけるバッテリ冷却量は、チラー33がバッテリ温調回路32の冷媒の熱を吸熱することができる熱量である。
図7の下側グラフでは、縦軸は単位時間当たりのバッテリ冷却量を表し、単位時間当たりのバッテリ冷却量に冷却時間(温調装置30の作動時間)を乗算したもの(すなわち、図中の斜線部分面積Q1,Q2)が、冷却時にチラー33がバッテリ温調回路32の冷媒から吸熱した熱量に相当する。
【0034】
ところで、バッテリは、温度によって入出力できる許容値が変化する。
図6は、バッテリ温度と入出力との関係の一例を示しており、ある温度領域(例えば20℃~30℃の領域)において入出力の許容値が最大となり、この温度領域よりも高温側及び低温側に向かうに従って許容値が低下する。バッテリの入出力がP1[W]であるとき、バッテリ温度は、要求入出力P1以上の入出力を許容できる温度領域(ここでは低温側閾値T2~高温側閾値T1の間)に存在する必要がある。
【0035】
図7に示すように、通常温調制御における下限値T0_low及び上限値T0_highは、バッテリ温度が要求入出力P1以上の入出力を許容できる高温側閾値T1より低く設定されており、容易にバッテリ温度が高温側閾値T1を超えないようにマージン(すなわち高温側閾値T1と上限値T0_highとの差)が設けられている。一方で、通常温調制御では、バッテリ温度が上限値T0_highに達したときにバッテリ13の冷却を行うので、バッテリ温度が高温側閾値T1に達したときにバッテリ13の冷却を行う場合と比較して、温調装置30を作動させる作動頻度が多くなったり、作動時間が長くなったりする。換言すると、通常温調制御では、バッテリ13の過剰な冷却に繋がる虞があり、温調装置30の消費電力が増大し、車両10の航続可能距離の低下に繋がり得る。
【0036】
本発明のバッテリ温調方法は、前述した過剰な温調(冷却/加温)を抑制するようなバッテリ13の温調計画を、車両10の走行計画に基づいてシミュレーションする。そして、シミュレーション結果に基づいて温調装置30を作動させる。以下では、
図4に示すフローに沿ってバッテリ温調方法の一実施形態を説明する。
【0037】
先ず、制御装置40は、車両10がネットワークに接続可能か否か、即ち制御装置40が外部サーバ100と通信可能か否かを判定する(ステップS10)。本実施形態では、外部サーバ100がバッテリ温調方法の一部のステップを実施する構成となっているので、先ず制御装置40と外部サーバ100との通信可能か否かを判定する。制御装置40がネットワークに接続可能であるとき(ステップS10:YES)、制御装置40は、外部サーバ100と通信し、ステップS12へ進む。
【0038】
一方、制御装置40がネットワークに接続できないとき(ステップS10:NO)、すなわち、通信装置17が外部サーバ100と通信できない場合、制御装置40(温調制御部410)は、温調計画のシミュレーションを行うことなく、前述した通常温調制御により温調装置30を制御してバッテリ13を温調する(ステップS11)。このように、制御装置40が外部サーバ100との通信ができない場合でも、通常温調制御によりバッテリ13の温調を行うことができるので、バッテリ13の温調不能に伴うバッテリ容量の悪化を抑制することができる。
【0039】
ステップS12では、走行計画取得部110は、ナビゲーション装置18やユーザ端末から取得した車両10の現在地と、ナビゲーション装置18やユーザ端末から入力された目的地とに基づき作成された、現在地から目的地までの走行計画を取得する。走行計画は、例えば、現在地から目的地までの経路情報や、交通情報(例えば渋滞情報)、途中充電ステーションで充電する場合には充電計画情報等を含む。走行計画取得部110は、ナビゲーション装置18やユーザ端末により作成された走行計画を受信して取得する構成であってもよいし、ナビゲーション装置18やユーザ端末から得られた現在地及び目的地に関する情報、及び外部サーバ100が記憶する地図データ等に基づき、走行計画を作成して取得してもよい。
【0040】
次に、バッテリ入出力取得部120は、走行計画に沿って車両10が走行するときに予測されるバッテリ13の要求入出力P[W]を取得する(ステップS14)。バッテリ13の要求入出力Pは、例えば、モータ11の駆動に要求されるバッテリ13の出力や、空調装置31やバッテリ温調回路32の作動に要求されるバッテリ13の出力、バッテリ13の充電を行う際のバッテリ13への入力を含む。バッテリ入出力取得部120は、走行計画に基づいて、バッテリ13が未来に要求される入出力を算出する。
図5は、車両10が現在地から目的地まで走行したときにおける、バッテリ13の要求入出力P(要求出力)の一例を示す。
【0041】
次に、目標温度取得部130は、バッテリ13の要求入出力Pを満たすバッテリ13の目標温度である第1バッテリ温度閾値を取得する(ステップS16)。バッテリ13を冷却する場合は、第1バッテリ温度閾値は前述した高温側閾値T1となる。すなわち、目標温度取得部130は、予め用意されたバッテリ温度と入出力との関係(
図6参照)とステップS14で取得したバッテリ13の要求入出力Pとに基づき、高温側閾値T1を取得し、高温側閾値T1を第1バッテリ温度閾値として設定する。
【0042】
次に、温調計画部140は、通常温調制御を実行してバッテリ13を温調すると仮定した場合に、走行計画に沿って車両10が走行するときのバッテリ13の温度推移を予測する(ステップS18)。具体的には、温調計画部140は、
図7に示すような通常温調制御に基づくバッテリ13の温度推移を予測する。
【0043】
さらに、ステップS18では、温調計画部140は、通常温調制御を実行してバッテリ13を温調すると仮定した場合のバッテリ13の予測温調熱量(ここでは予測冷却量)を取得する。予測冷却量は、
図7の下側グラフに示すように、冷却時におけるバッテリ冷却量の予測値であり、単位時間当たりのバッテリ冷却量に温調装置30の作動時間を乗じて算出される。温調計画部140は、バッテリ13の冷却を複数回行うときには、各冷却時における予測冷却量を取得する。
図7の一例では、車両10が現在地から目的地まで走行する間に、バッテリ13の冷却を2回行う予定であり、1回目の冷却時及び2回目の冷却時における予測冷却量をそれぞれQ1,Q2とする。
【0044】
次に、温調計画部140は、2回目以降のバッテリ13の冷却開始時間及び車両10の走行終了時間における、バッテリ13の予測温度と第1バッテリ温度閾値T1との差分を算出する(ステップS20)。
図7の一例では、2回目の冷却開始時間t2におけるバッテリ13の予測温度T0_highと第1バッテリ温度閾値T1との差分T1-T0_highが算出される。また、車両10の走行終了時間t3におけるバッテリ13の予測温度T_goalと第1バッテリ温度閾値T1との差分T1-T_goalが算出される。
【0045】
続いて、温調計画部140は、ステップS20で算出した差分がゼロ(複数時間で差分を算出した場合はその合計値)となるように繰り返し演算を行い、バッテリの温度推移及び温調計画を随時更新する(ステップS22~S34)。
【0046】
先ず1回目(ステップS22:n=1)の演算について説明する。温調計画部140は、ステップS20で算出した差分がゼロより大きいか否かを判断する(ステップS24)。差分がゼロであるときは(ステップS24:NO)、ステップS36に進む。一方、差分がゼロより大きいときは(ステップS24:YES)、ステップS26に進む。
図7に示す一例では、2回目の冷却開始時間t2での差分及び走行終了時間t3での差分がゼロより大きいので、ステップS26に進む。
【0047】
ステップS26では、温調計画部140は、1回目の冷却における予測冷却量Q1のうち過剰な熱量である過剰冷却量Q1оを算出する。過剰冷却量は、次の冷却(すなわち2回目の冷却)の開始時間での第1バッテリ温度閾値T1及びバッテリ13の予測温度に基づいて算出される。より具体的には、過剰冷却量は、次の冷却の開始時間での第1バッテリ温度閾値T1とバッテリ13の予測温度との差分に基づいて算出される。自然数nを用いて一般化すると、n回目の冷却における過剰冷却量は、n+1回目の冷却の開始時間での第1バッテリ温度閾値T1とバッテリ13の予測温度との差分に基づいて算出される。さらに、n回目の冷却における過剰冷却量は、次の冷却が無いとき、走行終了時間における第1バッテリ温度閾値T1とバッテリ13の予測温度との差分に基づいて算出される。
【0048】
過剰冷却量について、
図8を参照して詳しく説明する。
図8は、1回目の冷却後、バッテリ温度が上限値T0_highに達しても2回目の冷却を行わず、バッテリ温度を第1バッテリ温度閾値T1まで到達させるときのバッテリ温度予測のグラフを示す。過剰冷却量Q1оは、
図8に示すように、バッテリ温度予測が上限値T0_highを超えた時点からバッテリ温度の変曲点までにおける、バッテリ温度予測と上限値T0_highとの間の面積に相当する。
【0049】
ステップS26の後、温調計画部140は、1回目の冷却における予測冷却量Q1から過剰冷却量Q1оを差し引き、温調装置30の作動時間を短く設定する(ステップS28)。換言すると、1回目のバッテリ冷却時、バッテリ温度が通常温調制御における下限値T0_lowに達する前に冷却を終了する。よって、温調装置30による1回目のバッテリ冷却に伴う消費電力を抑制できる。
【0050】
次に、温調計画部140は、過剰冷却量Q1оの差し引きを考慮して、バッテリ13の温度推移及び温調計画を更新する(ステップS30)。
図9の上側グラフの実線は、ステップS28でバッテリ13の1回目の冷却時間を短くしたことを考慮したバッテリ13の温度推移である。温調計画部140は、1回目の冷却後にバッテリ温度が通常温調制御における上限値T0_highを超えることを許容しており、バッテリ温度は、2回目の冷却開始時には第1バッテリ温度閾値T1まで達する。なお、過剰冷却量Q1оの差し引きを考慮してバッテリ13の温度推移及び温調計画を更新したことにより、2回目の冷却時における予測冷却量Q2は、Q2′に更新される。
【0051】
以上により、1回目のバッテリ冷却に対する過剰冷却の抑制が完了する。続いて実行され得る繰り返し演算のために、ステップS34に進む前に、演算の実行回数nに1を加算しておく(ステップS32)。
【0052】
続いて、温調計画部140は、更新後のバッテリ13の温度推移及び温調計画に基づいて、2回目以降のバッテリ13の冷却開始時間及び車両10の走行終了時間における、バッテリ13の予測温度と第1バッテリ温度閾値T1との差分を算出する(ステップS34)。その後、温調計画部140は、当該差分がゼロより大きいか否かを判断するステップS24に戻る。
【0053】
温調計画部140は、ステップS34で算出した差分がゼロより大きいか否かを判断する(ステップS24)。
図9に示す一例では、2回目の冷却開始時間t2での差分はゼロであるが、走行終了時間t3での差分がゼロより大きいので、ステップS26に進む(ステップS24:YES)。
【0054】
ステップS26では、温調計画部140は、2回目の冷却における予測冷却量Q2′のうち過剰な熱量である過剰冷却量Q2о′を算出する。
図9の一例では、3回目以降の冷却が無いので、過剰冷却量は、走行終了時間t3での第1バッテリ温度閾値T1及びバッテリ13の予測温度に基づいて算出される。より具体的には、過剰冷却量は、走行終了時間t3での第1バッテリ温度閾値T1とバッテリ13の予測温度との差分に基づいて算出される。ここで、過剰冷却量Q2о′は、過剰冷却量Q1оと同様に、
図8を参照して前述した方法で算出される。
【0055】
ステップS26の後、温調計画部140は、2回目の冷却における予測冷却量Q2′から過剰冷却量Q2о′を差し引き、温調装置30の作動時間を短く設定する(ステップS28)。換言すると、2回目のバッテリ冷却時、バッテリ温度が通常温調制御における下限値T0_lowに達する前に冷却を終了する。よって、温調装置30による2回目の冷却に伴う消費電力を抑制できる。
【0056】
次に、温調計画部140は、過剰冷却量Q2о′の差し引きを考慮して、バッテリ13の温度推移及び温調計画を更新する(ステップS30)。
図10の上側グラフの実線は、ステップS28で2回目の冷却時間を短くしたときのバッテリ13の温度推移である。温調計画部140は、2回目の冷却後にバッテリ温度が通常温調制御における上限値T0_highを超えることを許容している。
【0057】
以上により、2回目のバッテリ冷却に対する過剰冷却の抑制が完了する。続いて実行され得る繰り返し演算のために、ステップS34に進む前に、演算の実行回数nに1を加算しておく(ステップS32)。
【0058】
続いて、温調計画部140は、更新後のバッテリ13の温度推移及び温調計画に基づいて、車両10の走行終了時間におけるバッテリ13の予測温度と第1バッテリ温度閾値T1との差分を算出する(ステップS34)。なお、3回目以降のバッテリ13の冷却があれば、3回目以降の冷却開始時間におけるバッテリ13の予測温度と第1バッテリ温度閾値T1との差分を算出する。その後、温調計画部140は、当該差分がゼロより大きいか否かを判断するステップS24に戻る。
【0059】
温調計画部140は、ステップS34で算出した差分がゼロより大きいか否かを判断する(ステップS24)。
図10に示す一例では、走行終了時間t3での差分(及び2回目の冷却開始時間t2での差分)がゼロであるので(ステップS24:NO)、温調計画部140は、温調計画の作成を終了する(ステップS36)。なお、3回目以降のバッテリ13の冷却があれば、3回目以降の冷却開始時間におけるバッテリ13の予測温度と第1バッテリ温度閾値T1との差分、及び、走行終了時間におけるバッテリ13の予測温度と第1バッテリ温度閾値T1との差分がゼロとなるまで、温調計画部140はステップS24~S34を繰り返し実行する。
【0060】
図11は、通常温調制御に基づく温調計画と本発明のバッテリ温調方法に基づく温調計画とを比較したグラフを示す。
図11に示すように、本発明のバッテリ温調方法に基づく予測冷却量は、通常温調制御に基づく予測冷却量よりも小さい。より具体的には、バッテリ13の冷却時間は、通常温調制御よりも本発明のバッテリ温調方法が短い。したがって、温調装置30の作動に伴うバッテリ13の消費電力を抑制することができる。これにより、車両10の航続可能距離を長くすることができる。
【0061】
外部サーバ100は、車両10へ温調計画を送信し(ステップS38)、制御装置40(温調制御部410)は、温調計画に沿ってバッテリ13を冷却する(ステップS40)。
【0062】
(バッテリ加温)
続いて、バッテリ13を加温する場合について説明する。
バッテリ13を加温する場合において、通常温調制御の実行を仮定した場合のバッテリ温度推移及びバッテリ加温量を、
図12に示す。例えば外気温度が低い寒冷地(例えば、外気温度が後述する下限値T3_lowや低温側閾値T2よりも低い地域)において、車両10の走行中であってもバッテリ温度が低下することがある。通常温調制御では、バッテリ温度が下限値T3_lowに達すると、制御装置40は、バッテリ温度が下限値T3_lowを下回らないように温調装置30を作動させてバッテリ13を加温する。より具体的には、制御装置40は、バッテリ温度が上限値T3_highとなるまで温調装置30のヒーター322を作動させてバッテリ13を加温する。また、バッテリ加温量は、ヒーター322がバッテリ温調回路32の冷媒に熱を与えることのできる熱量である。
図12の下側グラフでは、縦軸は単位時間当たりのバッテリ加温量を表し、単位時間当たりのバッテリ加温量に加温時間(温調装置30の作動時間)を乗算したもの(すなわち、図中のQ1,Q2)が、ヒーター322がバッテリ温調回路32の冷媒に熱を与えることのできる熱量に相当する。
【0063】
バッテリ13を加温する場合についても前述したバッテリ13の冷却と同様に、本発明のバッテリ温調方法は、
図4のフローに沿って実行される。ステップS10,S11,S12,S14はバッテリ13の冷却と同様であるので、説明は適宜省略する。
【0064】
ステップS14の後、目標温度取得部130は、バッテリ13の要求入出力P[W]を満たすバッテリ13の目標温度である第1バッテリ温度閾値を取得する(ステップS16)。バッテリ13を加温する場合は、第1バッテリ温度閾値は前述した低温側閾値T2となる。すなわち、目標温度取得部130は、予め用意されたバッテリ温度と入出力との関係(
図6参照)とステップS14で取得したバッテリ13の要求入出力とに基づき、低温側閾値T2を取得し、低温側閾値T2を第1バッテリ温度閾値として設定する。
【0065】
次に、温調計画部140は、通常温調制御を実行してバッテリ13を温調すると仮定した場合に、走行計画に沿って車両10が走行するときのバッテリ13の温度推移を予測する(ステップS18)。温調計画部140は、
図12に示すような通常温調制御に基づくバッテリ13の温度推移を予測する。
【0066】
さらに、ステップS18では、温調計画部140は、通常温調制御を実行してバッテリ13を温調すると仮定した場合のバッテリ13の予測温調熱量(ここでは予測加温量)を取得する。予測加温量は、
図12の下側グラフに示すように、加温時におけるバッテリ加温量の予測値であり、単位時間当たりのバッテリ加温量に温調装置30の作動時間を乗じて算出される。温調計画部140は、バッテリ13の加温を複数回行うときには、各加温時における予測加温量を取得する。
図12の一例では、車両10が現在地から目的地まで走行する間に、バッテリ13の加温を2回行う予定であり、1回目の加温時及び2回目の加温時における予測加温量をそれぞれQ1,Q2とする。
【0067】
次に、温調計画部140は、2回目以降のバッテリ13の加温開始時間及び車両10の走行終了時間における、バッテリ13の予測温度と第1バッテリ温度閾値T2との差分を算出する(ステップS20)。
図12の一例では、2回目の加温開始時間t2におけるバッテリ13の予測温度T3_lowと第1バッテリ温度閾値T2との差分T3_low-T2が算出される。また、車両10の走行終了時間t3におけるバッテリ13の予測温度T_goalと第1バッテリ温度閾値T2との差分T_goal-T2が算出される。
【0068】
続いて、温調計画部140は、ステップS20で算出した差分がゼロ(複数時間で差分を算出した場合はその合計値)となるように繰り返し演算を行い、バッテリの温度推移及び温調計画を随時更新する(ステップS22~S34)。
【0069】
先ず1回目(ステップS22:n=1)の演算について説明する。温調計画部140は、ステップS20で算出した差分がゼロより大きいか否かを判断する(ステップS24)。差分がゼロであるときは(ステップS24:NO)、ステップS36に進む。一方、差分がゼロより大きいときは(ステップS24:YES)、ステップS26に進む。
図12に示す一例では、2回目の加温開始時間t2での差分及び走行終了時間t3での差分がゼロより大きいので、ステップS26に進む。
【0070】
ステップS26では、温調計画部140は、1回目の加温における予測加温量Q1のうち過剰な熱量である過剰加温量Q1оを算出する。過剰加温量は、次の加温(すなわち2回目の加温)の開始時間での第1バッテリ温度閾値T2及びバッテリ13の予測温度に基づいて算出される。より具体的には、過剰加温量は、次の加温の開始時間での第1バッテリ温度閾値T2とバッテリ13の予測温度との差分に基づいて算出される。自然数nを用いて一般化すると、n回目の加温における過剰加温量は、n+1回目の加温の開始時間での第1バッテリ温度閾値T2とバッテリ13の予測温度との差分に基づいて算出される。さらに、n回目の加温時の過剰加温量は、次の加温が無いとき、走行終了時間における第1バッテリ温度閾値T2及びバッテリ13の予測温度に基づいて算出される。
【0071】
過剰加温量について、
図13を参照して詳しく説明する。
図13は、1回目の加温後、バッテリ温度が下限値T3_lowを下回っても2回目の加温を行わず、バッテリ温度を第1バッテリ温度閾値T2まで到達させるときのバッテリ温度予測のグラフを示す。過剰加温量Q1оは、
図13に示すように、バッテリ温度予測が下限値T3_lowを下回った時点からバッテリ温度の変曲点までにおける、バッテリ温度予測と下限値T3_lowとの間の面積に相当する。
【0072】
ステップS26の後、温調計画部140は、1回目の加温における予測加温量Q1から過剰加温量Q1оを差し引き、温調装置30の作動時間を短く設定する(ステップS28)。換言すると、1回目のバッテリ加温時、バッテリ温度が通常温調制御における上限値T3_highに達する前に加温を終了する。よって、温調装置30による1回目のバッテリ加温に伴う消費電力を抑制できる。
【0073】
次に、温調計画部140は、過剰加温量Q1оの差し引きを考慮して、バッテリ13の温度推移及び温調計画を更新する(ステップS30)。
図14の上側グラフの実線は、ステップS28でバッテリ13の1回目の加温時間を短くしたことを考慮したバッテリ13の温度推移である。温調計画部140は、1回目の加温後にバッテリ温度が通常温調制御における下限値T3_lowを下回ることを許容しており、バッテリ温度は、2回目の加温開始時には第1バッテリ温度閾値T2まで達する。なお、過剰加温量Q1оの差し引きを考慮してバッテリ13の温度推移及び温調計画を更新したことにより、2回目の加温時における予測加温量Q2は、Q2′に更新される。
【0074】
以上により、1回目のバッテリ加温に対する過剰加温の抑制が完了する。続いて実行され得る繰り返し演算のために、ステップS34に進む前に、演算の実行回数nに1を加算しておく(ステップS32)。
【0075】
続いて、温調計画部140は、更新後のバッテリ13の温度推移及び温調計画に基づいて、2回目以降のバッテリ13の加温開始時間及び車両10の走行終了時間における、バッテリ13の予測温度と第1バッテリ温度閾値T2との差分を算出する(ステップS34)。その後、温調計画部140は、当該差分がゼロより大きいか否かを判断するステップS24に戻る。
【0076】
温調計画部140は、ステップS34で算出した差分がゼロより大きいか否かを判断する(ステップS24)。
図14に示す一例では、2回目の加温開始時間t2での差分はゼロであるが、走行終了時間t3での差分がゼロより大きいので、ステップS26に進む(ステップS24:YES)。
【0077】
ステップS26では、温調計画部140は、2回目の加温における予測加温量Q2′のうち過剰な熱量である過剰加温量Q2о′を算出する。
図14の一例では、3回目以降の加温が無いので、過剰加温量は、走行終了時間t3での第1バッテリ温度閾値T2及びバッテリ13の予測温度に基づいて算出される。より具体的には、過剰加温量は、走行終了時間t3での第1バッテリ温度閾値T2とバッテリ13の予測温度との差分に基づいて算出される。過剰加温量Q2о′は、過剰加温量Q1оと同様に、
図13を参照して前述した方法で算出される。
【0078】
ステップS26の後、温調計画部140は、2回目の加温における予測加温量Q2′から過剰加温量Q2о′を差し引き、温調装置30の作動時間を短く設定する(ステップS28)。換言すると、2回目のバッテリ加温時、バッテリ温度が通常温調制御における上限値T3_highに達する前に加温を終了する。よって、温調装置30による2回目の加温に伴う消費電力を抑制できる。
【0079】
次に、温調計画部140は、過剰加温量Q2о′の差し引きを考慮して、バッテリ13の温度推移及び温調計画を更新する(ステップS30)。
図15の上側グラフの実線は、ステップS28で2回目の加温時間を短くしたときのバッテリ13の温度推移である。温調計画部140は、2回目の加温後にバッテリ温度が通常温調制御における下限値T3_lowを下回ることを許容している。
【0080】
以上により、2回目のバッテリ加温に対する過剰加温の抑制が完了する。続いて実行され得る繰り返し演算のために、ステップS34に進む前に、演算の実行回数nに1を加算しておく(ステップS32)。
【0081】
続いて、温調計画部140は、更新後のバッテリ13の温度推移及び温調計画に基づいて、車両10の走行終了時間におけるバッテリ13の予測温度と第1バッテリ温度閾値T2との差分を算出する(ステップS34)。なお、3回目以降のバッテリ13の加温があれば、3回目以降の加温開始時間におけるバッテリ13の予測温度と第1バッテリ温度閾値T2との差分を算出する。その後、温調計画部140は、当該差分がゼロより大きいか否かを判断するステップS24に戻る。
【0082】
温調計画部140は、ステップS34で算出した差分がゼロより大きいか否かを判断する(ステップS24)。
図15に示す一例では、走行終了時間t3での差分(及び2回目の加温開始時間t2での差分)がゼロであるので(ステップS24:NO)、温調計画部140は、温調計画の作成を終了する(ステップS36)。なお、3回目以降のバッテリ13の加温があれば、3回目以降の加温開始時間におけるバッテリ13の予測温度と第1バッテリ温度閾値T1との差分、及び、走行終了時間におけるバッテリ13の予測温度と第1バッテリ温度閾値T2との差分がゼロとなるまで、温調計画部140はステップS24~S34を繰り返し実行する。
【0083】
図16は、通常温調制御に基づく温調計画と本発明のバッテリ温調方法に基づく温調計画とを比較したグラフを示す。
図16に示すように、本発明のバッテリ温調方法に基づく予測加温量は、通常温調制御に基づく予測加温量よりも小さい。より具体的には、バッテリ13の加温時間は、通常温調制御よりも本発明のバッテリ温調方法が短い。したがって、温調装置30の作動に伴うバッテリ13の消費電力を抑制することができる。これにより、車両10の航続可能距離を長くすることができる。
【0084】
外部サーバ100は、車両10に温調計画を送信し(ステップS38)、制御装置40(温調制御部410)は、温調計画に沿ってバッテリ13を加温する(ステップS40)。
【0085】
《変形例1》
前述した実施形態では、温調計画部140は、過剰温調熱量(過剰冷却量及び過剰加温量)を第1バッテリ温度閾値T1,T2及びバッテリ13の予測温度に基づいて算出したが、これに限られない。温調計画部140は、バッテリ温度センサ14の特性に基づいて第1バッテリ温度閾値T1,T2をそれぞれ修正して得られた第2バッテリ温度閾値T1A,T2Aを取得し、過剰温調熱量を第2バッテリ温度閾値T1A,T2A及びバッテリ13の予測温度に基づいて算出してもよい。具体的には、過剰温調熱量を第2バッテリ温度閾値T1A,T2Aとバッテリ13の予測温度との差分に基づいて算出してもよい。
【0086】
第2バッテリ温度閾値T1A,T2Aについてより詳しく説明すると、第2バッテリ温度閾値T1A,T2Aはそれぞれ、バッテリ温度センサ14の検出結果に含まれるばらつきα(即ちバッテリ温度センサ14の検出誤差)を考慮して第1バッテリ温度閾値T1,T2を修正した値である。第2バッテリ温度閾値T1A,T2Aは、第1バッテリ温度閾値T1,T2に対してばらつきαを減算又は加算することで得られ、具体的には、高温側はT1A=T1-α、低温側はT2A=T2+αと表される。また、第2バッテリ温度閾値T1Aは通常温調制御における所定の温度領域よりも高く、第2バッテリ温度閾値T2Aは通常温調制御における所定の温度領域よりも低い。
【0087】
第2バッテリ温度閾値T1A,T2Aはバッテリ温度センサ14の特性に基づいているので、温調計画部140はより正確に過剰温調熱量を算出することができる。また、バッテリ13の要求入出力Pはより確実に満たされ、且つ、通常温調制御でバッテリ13を温調するときよりも、温調装置30の作動に伴うバッテリ13の消費電力は抑制される。
【0088】
ここで、上述したばらつきαの詳細について説明する。
図17は、バッテリ温度[℃]とバッテリ温度センサ14の検出結果に含まれるばらつきα[℃]との関係を示したグラフである。以下の説明では、バッテリ温度センサ14により検出されたバッテリ温度を検出温度とも称する。
【0089】
図17において、プラス側ばらつきα1は、実際のバッテリ温度が検出温度よりもどの程度高くなり得るかを示し、マイナス側ばらつきα2は、実際のバッテリ温度が検出温度よりもどの程度低くなり得るかを示す。ばらつきαは、プラス側ばらつきα1とマイナス側ばらつきα2との差(α=α1-α2)で表される。例えば、検出温度が35℃(第1バッテリ温度閾値T1の一例の温度)であり、35℃におけるプラス側ばらつきα1が+1℃であり、35℃におけるマイナス側ばらつきα2が-1℃であるとき、実際のバッテリ温度は34℃~36℃の範囲にあると推定され、このときのばらつきαは2℃と算出される。
【0090】
図17に示すように、プラス側ばらつきα1及びマイナス側ばらつきα2は、バッテリ温度に応じて値が変化し、即ち、ばらつきαは、バッテリ温度に応じて値が変化する。具体的には、ばらつきαは、あるバッテリ温度領域において最小値をとり、この温度領域よりも高温側及び低温側に向かうに従って値が大きくなる。したがって、バッテリ13の要求入出力P[W]を満たす第1バッテリ温度閾値T1(
図6参照)を設定するとき、第1バッテリ温度閾値T1を大きな値に設定するほど、ばらつきαは大きくなり得る。同様に、バッテリ13の要求入出力P[W]を満たす第1バッテリ温度閾値T2(
図6参照)を設定するとき、第1バッテリ温度閾値T2を小さな値に設定するほど、ばらつきαは大きくなり得る。
【0091】
前述のとおり、本変形例では、温調計画部140は、第1バッテリ温度閾値T1,T2を修正した第2バッテリ温度閾値T1A,T2Aに基づいて過剰温調熱量を算出する。これにより、バッテリ温度センサ14のばらつきαが大きい温度領域であっても、バッテリ13の要求入出力Pはより確実に満たされる。そして、通常温調制御でバッテリ13を温調するときよりも、温調装置30の作動に伴うバッテリ13の消費電力は抑制される。また、バッテリ温度センサ14のばらつきαが小さい温度領域では、ばらつきαが大きい温度領域と比較して、第2バッテリ温度閾値T1Aを高く設定でき、第2バッテリ温度閾値T2Aを低く設定できる。よって、ばらつきαが大きい温度領域と比較して、温調装置30の作動に伴うバッテリ13の消費電力はより抑制される。
【0092】
上記の実施形態で説明したバッテリ温調方法は、例えば、予め用意されたプログラムをコンピュータ(プロセッサ)で実行することにより実現できる。本プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶され、記憶媒体から読み出されることによって実行される。また、本プログラムは、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体に記憶された形で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介して提供されてもよい。
【0093】
以上、本発明を実施するための形態について一実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0094】
前述した実施形態では、バッテリ温調方法における演算処理を行う情報処理装置2は、制御装置40及び外部サーバ100により構成されたが、これに限られない。情報処理装置2は、制御装置40のみで構成されていてもよい。この場合、
図4のステップS10は省略される。また、ステップS12での走行計画の取得は、例えばナビゲーション装置18やユーザ端末等により実行され、制御装置40へ送信される。
【0095】
前述した実施形態では、外部サーバ100は、走行計画取得部110と、バッテリ入出力取得部120と、目標温度取得部130と、温調計画部140と、を備えたが、これに限られない。制御装置40が、これらの構成要素の一部を備えてもよい。
【0096】
前述した実施形態では、温調開始時間(冷却開始時間/加温開始時間)及び走行終了時間におけるバッテリ13の予測温度と第1バッテリ温度閾値T1,T2を取得し、これらの差分を算出したが、これに限られない。例えば、温調開始及び走行終了を時間ではなく走行経路上の位置で特定するとき、走行経路上で予測された温調開始位置及び走行終了位置でのバッテリ13の予測温度と第1バッテリ温度閾値T1,T2を取得し(ステップS16)、これらの差分を算出してもよい(ステップS20、S34)。
【0097】
前述した実施形態において、走行計画が外部電源200によるバッテリ13の充電を含む場合、温調計画部140は、
図18に示すように、充電開始時のバッテリ13の温度が低温側閾値T2となるように、バッテリ13の温度推移を予測してもよい。すなわち、温調計画部140は、充電開始時のバッテリ13の温度が低温側閾値T2となる温調計画を作成してもよい。これにより、充電によるバッテリ13の温度上昇を考慮した温調計画を作成できる。
【0098】
また、本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0099】
(1) 車両(車両10)に搭載されたバッテリ(バッテリ13)を温調装置(温調装置30)により温調するバッテリ温調方法であって、
前記車両の走行計画を取得する走行計画取得ステップ(ステップS12)と、
前記走行計画に沿って前記車両が走行するときに予測される前記バッテリの要求入出力 を取得するバッテリ入出力取得ステップ(ステップS14)と、
前記要求入出力を満たす前記バッテリの目標温度である第1バッテリ温度閾値(第1バッテリ温度閾値T1,T2)を取得する目標温度取得ステップ(ステップS16)と、
前記バッテリの温度が所定の温度領域に存在するように前記バッテリを温調する通常温調制御を実行すると仮定した場合に、前記走行計画に沿って前記車両が走行するときの前記バッテリの温度推移を予測するバッテリ温度推移予測ステップ(ステップS18)と、
前記走行計画における第1時間又は第1位置で前記通常温調制御を実行すると仮定した場合の前記バッテリの予測温調熱量を取得する温調熱量予測ステップ(ステップS18)と、
前記第1時間よりも後の第2時間又は前記第1位置よりも先の第2位置での前記第1バッテリ温度閾値及び前記バッテリの予測温度に基づいて、前記予測温調熱量のうち過剰な熱量である過剰温調熱量を算出する過剰温調熱量算出ステップ(ステップS26)と、
前記第1時間又は前記第1位置における前記予測温調熱量から前記過剰温調熱量を差し引き、前記温調装置の作動時間を短く設定する温調抑制ステップ(ステップS28)と、
前記温調装置を作動させて前記バッテリを温調する温調ステップ(ステップS40)と、を備える、
バッテリ温調方法。
【0100】
(1)によれば、車両の走行中に通常温調制御を実行すると仮定した場合におけるバッテリの予測温調熱量から過剰温調熱量を差し引きして温調装置の作動時間を短くするので、温調装置の作動に伴うバッテリの消費電力を抑制することができる。これにより、車両の航続可能距離を長くすることができる。
【0101】
(2) (1)に記載のバッテリ温調方法であって、
前記過剰温調熱量は、前記第2時間又は前記第2位置での前記第1バッテリ温度閾値と前記バッテリの予測温度との差分に基づいて算出される熱量である、
バッテリ温調方法。
【0102】
(2)によれば、第1時間又は第1位置での過剰温調熱量を、第2時間又は第2位置での第1バッテリ温度閾値とバッテリの予測温度との差分に基づいて予測することができる。
【0103】
(3) (1)又は(2)に記載のバッテリ温調方法であって、
前記バッテリには、前記バッテリの温度を取得するバッテリ温度センサ(バッテリ温度センサ14)が設けられており、
前記目標温度取得ステップにおいて、前記バッテリ温度センサの特性に基づいて、前記第1バッテリ温度閾値を修正して得られる第2バッテリ温度閾値(第2バッテリ温度閾値T1A,T2A)を取得し、
前記過剰温調熱量算出ステップにおいて、前記過剰温調熱量を、前記第2時間又は前記第2位置での前記第2バッテリ温度閾値及び前記バッテリの予測温度に基づいて算出する、
バッテリ温調方法。
【0104】
(3)によれば、バッテリ温度センサの特性を考慮した第2バッテリ温度閾値を用いるので、より正確に過剰温調熱量を算出することができる。
【0105】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載のバッテリ温調方法であって、
前記車両は、前記温調装置を制御する制御装置(制御装置40)と、外部サーバ(外部サーバ100)と通信して該外部サーバの出力を前記制御装置に送信する通信装置(通信装置17)と、を備え、
前記バッテリ温調方法が備えるステップのうち少なくとも1つは、前記外部サーバにより実行される、
バッテリ温調方法。
【0106】
(4)によれば、外部サーバによりバッテリ温調方法を実行することができる。
【0107】
(5) (4)に記載のバッテリ温調方法であって、
前記通信装置が前記外部サーバと通信できない場合、前記制御装置は前記通常温調制御により前記温調装置を制御して前記バッテリを温調する、
バッテリ温調方法。
【0108】
(5)によれば、外部サーバとの通信ができない場合でも、通常温調制御によりバッテリの温調を行うことができるので、バッテリの温調不能に伴うバッテリ容量の悪化を抑制することができる。
【0109】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載のバッテリ温調方法であって、
前記第1バッテリ温度閾値は、高温側閾値(高温側閾値T1)と、該高温側閾値よりも低い温度である低温側閾値(低温側閾値T2)とを有する、
バッテリ温調方法。
【0110】
(6)によれば、高温側と低温側の両方において、予測温調熱量から過剰温調熱量を差し引き、温調装置の作動時間を短くすることができる。
【0111】
(7) (6)に記載のバッテリ温調方法であって、
前記バッテリは外部電源(外部電源200)からの電力により充電可能であり、
前記走行計画が前記外部電源による前記バッテリの充電を含む場合、前記バッテリ温度推移予測ステップにおいて、充電開始時の前記バッテリの温度が前記低温側閾値となるように前記バッテリの温度推移を予測する、
バッテリ温調方法。
【0112】
(7)によれば、外部電源による充電によってバッテリの温度が上昇することを考慮した温調計画を作成できる。
【0113】
(8) (1)から(7)のいずれかに記載のバッテリ温調方法であって、
前記第1バッテリ温度閾値は、前記通常温調制御による前記所定の温度領域よりも高く設定されており、
前記温調熱量予測ステップにおいて、前記走行計画における前記第1時間又は前記第1位置で前記通常温調制御を実行すると仮定した場合の前記バッテリの予測冷却量を予測し、
前記過剰温調熱量算出ステップにおいて、前記第2時間又は前記第2位置での前記第1バッテリ温度閾値及び前記バッテリの予測温度に基づいて、前記予測冷却量のうち過剰な冷却量である過剰冷却量を算出し、
前記温調抑制ステップにおいて、前記第1時間又は前記第1位置における前記バッテリの前記予測冷却量から前記過剰冷却量を差し引き、前記温調装置の作動時間を短く設定する、
バッテリ温調方法。
【0114】
(8)によれば、車両の走行中に通常温調制御を実行すると仮定した場合におけるバッテリの予測冷却量から過剰冷却量を差し引きして温調装置の作動時間を短くするので、温調装置の作動に伴うバッテリの消費電力を抑制することができる。これにより、車両の航続可能距離を長くすることができる。
【0115】
(9) (1)から(8)のいずれかに記載のバッテリ温調方法であって、
前記第1バッテリ温度閾値は、前記通常温調制御による前記所定の温度領域よりも低く設定されており、
前記温調熱量予測ステップにおいて、前記走行計画における前記第1時間又は前記第1位置で前記通常温調制御を実行すると仮定した場合の前記バッテリの予測加温量を予測し、
前記過剰温調熱量算出ステップにおいて、前記第2時間又は前記第2位置での前記第1バッテリ温度閾値及び前記バッテリの予測温度に基づいて、前記予測加温量のうち過剰な加温量である過剰加温量を算出し、
前記温調抑制ステップにおいて、前記第1時間又は前記第1位置における前記バッテリの前記予測加温量から前記過剰加温量を差し引き、前記温調装置の作動時間を短く設定する、
バッテリ温調方法。
【0116】
(9)によれば、例えば寒冷地において車両の走行中に通常温調制御を実行すると仮定した場合におけるバッテリの予測加温量から過剰加温量を差し引きして温調装置の作動時間を短くするので温調装置の作動に伴うバッテリの消費電力を抑制することができる。これにより、車両の航続可能距離を長くすることができる。
【0117】
(10) 車両(車両10)に搭載されたバッテリ(バッテリ13)の温度を調整する温調装置(温調装置30)と、
前記温調装置を制御する情報処理装置(情報処理装置2)と、を備えるバッテリ温調システム(バッテリ温調システム1)であって、
前記情報処理装置は、
前記車両の走行計画を取得する走行計画取得部(走行計画取得部110)と、
前記走行計画に沿って前記車両が走行するときに予測される前記バッテリの要求入出力を取得するバッテリ入出力取得部(バッテリ入出力取得部120)と、
前記予測入出力を満たす前記バッテリの温度である第1バッテリ温度閾値を取得する目標温度取得部(目標温度取得部130)と、
前記走行計画に沿って前記車両が走行するときの前記バッテリの温調計画を作成する温調計画部(温調計画部140)と、
前記温調装置を作動させて前記バッテリを温調する温調制御部(温調制御部410)と、を備え
前記温調計画部は、
前記バッテリの温度が所定の温度領域に存在するように前記バッテリを温調する通常温調制御を実行すると仮定した場合に、前記走行計画に沿って前記車両が走行するときの前記バッテリの温度推移を予測し、
前記走行計画における第1時間又は第1位置で通常温調制御を実行すると仮定した場合の前記バッテリの予測温調熱量を取得し、
前記第1時間よりも後の第2時間又は前記第1位置よりも先の第2位置での前記第1バッテリ温度閾値及び前記バッテリの予測温度に基づいて、前記予測温調熱量のうち過剰な熱量である過剰温調熱量を算出し、
前記第1時間又は前記第1位置における前記予測温調熱量から前記過剰温調熱量を差し引き、前記温調装置の作動時間を短く設定する、
バッテリ温調システム。
【0118】
(10)によれば、車両の走行中に通常温調制御を実行すると仮定した場合におけるバッテリの予測温調熱量から過剰温調熱量を差し引きして温調装置の作動時間を短くするので、温調装置の作動に伴うバッテリの消費電力を抑制することができる。これにより、車両の航続可能距離を長くすることができる。
【符号の説明】
【0119】
1 バッテリ温調システム
2 情報処理装置
10 車両
13 バッテリ
14 バッテリ温度センサ
17 通信装置
30 温調装置
40 制御装置
410 温調制御部
100 外部サーバ
110 走行計画取得部
120 バッテリ入出力取得部
130 目標温度取得部
140 温調計画部
200 外部電源