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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083460
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】AG10の製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/415 20060101AFI20240614BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61K31/415
A61P9/10
A61P9/00
A61P25/02
A61K47/38
A61K9/20
A61K47/04
A61K47/12
A61K9/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060790
(22)【出願日】2024-04-04
(62)【分割の表示】P 2021507989の分割
【原出願日】2019-08-16
(31)【優先権主張番号】62/765,154
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519297698
【氏名又は名称】エイドス セラピューティクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジェスパー ジャーネリウス
(72)【発明者】
【氏名】マーク マイケル メニング
(57)【要約】
【課題】本開示は、AG10またはその薬学的に許容される塩の高配合錠剤(high-load tablet)製剤を提供する。
【解決手段】一部の態様では、本明細書に提供されるのは、少なくとも40重量%以上のAG10および一つまたは複数の充填剤、一つまたは複数の結合剤、一つまたは複数の崩壊剤、および一つまたは複数の滑沢剤から選択される少なくとも一つの医薬賦形剤を含むAG10またはその薬学的に許容される塩の錠剤製剤(table formulation)である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AG10またはその薬学的に許容される塩、および一つまたは複数の充填剤を含む錠剤製剤であって、
(a)前記錠剤は少なくとも40重量%以上のAG10またはその薬学的に許容される塩を含み、かつ
(b)前記一つまたは複数の充填剤は、(i)球状形態および多孔質構造または(ii)針状の粒子形状を有するセルロースポリマーを特徴とする高グレードの微結晶性セルロースを含む、錠剤製剤。
【請求項2】
約40~85重量%のAG10またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1に記載の錠剤製剤。
【請求項3】
約50~75重量%のAG10またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1に記載の錠剤製剤。
【請求項4】
約50重量%のAG10またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1に記載の錠剤製剤。
【請求項5】
約66.7重量%のAG10またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1に記載の錠剤製剤。
【請求項6】
約75重量%のAG10またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1に記載の錠剤製剤。
【請求項7】
前記一つまたは複数の充填剤は前記錠剤製剤の約1~60重量%を構成する、請求項1~6のいずれか一項に記載の錠剤製剤。
【請求項8】
前記一つまたは複数の充填剤は前記錠剤製剤の約5~55重量%を構成する、請求項7に記載の錠剤製剤。
【請求項9】
前記一つまたは複数の充填剤は前記錠剤製剤の約10~50重量%を構成する、請求項7に記載の錠剤製剤。
【請求項10】
前記一つまたは複数の充填剤は前記錠剤製剤の約15~45重量%を構成する、請求項7に記載の錠剤製剤。
【請求項11】
前記一つまたは複数の充填剤は前記錠剤製剤の約25.8重量%を構成する、請求項7に記載の錠剤製剤。
【請求項12】
前記一つまたは複数の充填剤は前記錠剤製剤の約42.5重量%を構成する、請求項7に記載の錠剤製剤。
【請求項13】
前記一つまたは複数の充填剤は、無機塩をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の錠剤製剤。
【請求項14】
前記一つまたは複数の充填剤は、二酸化ケイ素をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の錠剤製剤。
【請求項15】
約1~15重量%の一つまたは複数の崩壊剤を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の錠剤製剤。
【請求項16】
前記一つまたは複数の崩壊剤は前記錠剤製剤の約3~8重量%を構成する、請求項15に記載の錠剤製剤。
【請求項17】
前記一つまたは複数の崩壊剤は前記錠剤製剤の約6重量%を構成する、請求項15に記載の錠剤製剤。
【請求項18】
前記一つまたは複数の崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムを含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の錠剤製剤。
【請求項19】
約0.1~8重量%の滑沢剤を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の錠剤製剤。
【請求項20】
前記一つまたは複数の滑沢剤は、前記錠剤製剤の約1.5重量%を構成する、請求項19に記載の錠剤製剤。
【請求項21】
前記一つまたは複数の滑沢剤はステアリン酸マグネシウムである、請求項19または20に記載の錠剤製剤。
【請求項22】
前記錠剤は、約50 rpmのパドル速度を有する装置II(パドル)中、37±0.5℃で0.1 NのHCl溶液中で溶解試験を10分間実施した後に少なくとも75%溶解される、請求項1~21のいずれか一項に記載の錠剤製剤。
【請求項23】
前記錠剤は、約50 rpmのパドル速度を有する装置II(パドル)中、37±0.5℃で0.1 NのHCl溶液中で溶解試験を10分間実施した後に少なくとも85%溶解される、請求項1~21のいずれか一項に記載の錠剤製剤。
【請求項24】
前記錠剤は、約50 rpmのパドル速度を有する装置II(パドル)中、37±0.5℃で0.1 NのHCl溶液中で溶解試験を10分間実施した後に少なくとも95%溶解される、請求項1~21のいずれか一項に記載の錠剤製剤。
【請求項25】
前記溶解試験を前記錠剤製剤の調製の少なくとも3ヶ月後に実施する、請求項22~24のいずれか一項に記載の錠剤製剤。
【請求項26】
コーティング剤をさらに含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の錠剤製剤。
【請求項27】
少なくとも40重量%以上のAG10:
【化1】
またはその薬学的に許容される塩、微結晶性セルロース充填剤、無機塩充填剤、崩壊剤、および滑沢剤を含む錠剤製剤であって、ここで
前記微結晶性セルロースは、(i)球状形態および多孔質構造または(ii)針状の粒子形状を有するセルロースポリマーを特徴とする、錠剤製剤。
【請求項28】
AG10:
【化2】
またはその薬学的に許容される塩、ならびに一つまたは複数の充填剤、一つまたは複数の崩壊剤、および一つまたは複数の滑沢剤を含む錠剤製剤であって、ここで
前記錠剤製剤は、
40~85重量%のAG10またはその薬学的に許容される塩、
5~55重量%の前記一つまたは複数の充填剤
3~8重量%の前記一つまたは複数の崩壊剤、および
0.5~3重量%の前記一つまたは複数の滑沢剤を含み、かつ
前記一つまたは複数の充填剤は、(i)球状形態および多孔質構造または(ii)針状の粒子形状を有するセルロースポリマーを特徴とする、錠剤製剤。
【請求項29】
AG10:
【化3】
またはその薬学的に許容される塩、ならびに一つまたは複数の充填剤、一つまたは複数の崩壊剤、および一つまたは複数の滑沢剤を含む錠剤製剤であって、ここで
前記錠剤製剤は、
50~75重量%のAG10またはその薬学的に許容される塩、
15~45重量%の前記一つまたは複数の充填剤
3~8重量%の前記一つまたは複数の崩壊剤、および
0.5~3重量%の前記一つまたは複数の滑沢剤を含み、かつ
前記一つまたは複数の充填剤は、(i)球状形態および多孔質構造または(ii)針状の粒子形状を有するセルロースポリマーを特徴とする、錠剤製剤。
【請求項30】
前記一つまたは複数の充填剤は二酸化ケイ素をさらに含む、請求項28または29の錠剤製剤。
【請求項31】
前記一つまたは複数の崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムを含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の錠剤製剤。
【請求項32】
前記一つまたは複数の滑沢剤はステアリン酸マグネシウムである、請求項28~31のいずれか一項に記載の錠剤製剤。
【請求項33】
AG10は化学式Ia
【化4】
の薬学的に許容される塩形態である、請求項1~32のいずれか一項に記載の錠剤製剤。
【請求項34】
トランスサイレチンアミロイド(ATTR)心筋症を治療するための、請求項1~33のいずれか一項に記載の錠剤製剤。
【請求項35】
トランスサイレチンアミロイド(ATTR)多発ニューロパチーを治療するための、請求項1~33のいずれか一項に記載の錠剤製剤。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2018年8月17日に出願された米国仮出願第62/765,154号に対する35U.S.C§119(e)に基づく優先権の利益を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府が後援する研究開発の下で行われた発明に対する権利に関する記載
該当なし
【0003】
コンパクトディスクに提出された「配列表」、表、またはコンピュータプログラムリストの付録への参照
該当なし
【0004】
タンパク質のミスフォールディングまたはシグナル伝達経路の過剰な活性化のいずれかによる異常なタンパク質相互作用および凝集は、多数のヒト変性疾患の根本的な原因である。そのため、タンパク質間相互作用(PPI)をターゲットにすることは治療上重要である。
【0005】
現在までに承認されているPPIの阻害剤は、小分子阻害剤ではなくタンパク質である。たとえば、治療用モノクローナル抗体(mAb)は、がん、自己免疫疾患、感染症、および神経変性疾患の治療に使用される。治療用mAbは製造に費用がかかり、注射による投与が必要であり、患者の免疫反応を引き起こす(illicit)可能性がある。これらの理由から、PPIの小分子阻害剤の開発は依然として興味深い。
【0006】
異常なタンパク質凝集の一例は、可溶性タンパク質トランスサイレチン(TTRまたはプレアルブミン)である。野生型(WT)TTRは、血液および脳脊髄液に存在する55 kDaのホモ四量体タンパク質である。ホモ四量体型から解離すると、WT TTR二量体は、アミロイド形成性モノマーにミスフォールドされる可能性がある。アミロイド形成性モノマーの形成は、WT TTRおよび100を超える異なる変異バリアントで観察されている。研究によると、TTRの四量体型を安定化すると、アミロイド形成性モノマーのミスフォールディングおよびそれに続くTTRアミロイド形成が阻害されることが示されている。
【0007】
最近の研究により、3-(3-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)プロポキシ)-4-フルオロ安息香酸(AG10)が、TTRアミロイド関連疾患、たとえばTTRアミロイド心筋症およびATTR多発ニューロパチーを治療する有望な候補として同定された。この化合物は、国際公開第2014/100227号に開示されている。この化合物の開示にもかかわらず、安定性の向上および一貫した薬物動態データを提供する改良された医薬製剤は、理解しがたいままである。
【0008】
したがって、ヒトまたは他の動物への投与に好適な医薬製剤を製造するニーズが存在する。本開示は、これらのニーズに対処し、関連する利点も提供する。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、AG10またはその薬学的に許容される塩、ならびに一つまたは複数の充填剤、一つまたは複数の結合剤、一つまたは複数の崩壊剤、および一つまたは複数の滑沢剤から選択される、少なくとも一つの医薬賦形剤の高配合錠剤製剤を提供する。一部の実施形態では、錠剤製剤は、コーティング剤で被覆されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例2に記載のAG10製剤を調製するためのプロセスフロー図を示す。
図2図2は、実施例2で調製されたAG10 HClコーティング錠剤の画像を示す。
図3図3は、実施例2に記載のAG10固体錠剤製剤の溶解プロファイルを示す。
図4図4は、実施例3に記載のAG10製剤を調製するためのプロセスフロー図を示す。
図5図5は、水性コーティング懸濁液の調製または実施例3に記載のAG10製剤の調製のプロセスフローを示す。
図6図6は、L018A(高硬度、左)およびL018B(中硬度、右)(AG10 33.0%で)の摩損度試験後の錠剤の縁の侵食がないことを図示する「画像を示す。
図7図7は、L016(左)およびL017(右)の摩損度試験後の大きな錠剤の縁の侵食の画像を示す(どちらの配合も40%のAG10配合および最大硬度を備えている)。
図8図8は、実施例4に記載の33% AG10 HCl錠剤のプロセスフロー図を示す。
図9図9は、実施例4に記載の66.7% AG10 HCl錠剤のプロセスフロー図を示す。
図10図10は、40℃/75%RH条件下で保存した後の33.3% AG10 HCl錠剤の溶解プロファイルを示す。T=0(白抜きの三角形); T=1ヶ月(白抜きのひし形) T=3ヶ月(黒丸); T=6ヶ月(黒の四角)。
図11図11は、40℃/75%RH条件下で保存した後の66.7% AG10 HCl錠剤の溶解プロファイルを示す。T=0(白抜きの三角形); T=3ヶ月(黒丸); T=6ヶ月(黒の四角)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
I. 概要
本開示は、部分的に、40%以上のAG10を含む製剤が、錠剤として首尾よく調製できるという発見に基づく。これらの錠剤は、これらの量が経口製剤に必要な安定性および薬物動態学的要件を満たすため、ヒト、動物対象を問わず、投与に特によく適している。カプセル等の他の製剤は、これらのニーズを満たすことができない。
【0012】
高配合の即時放出AG10錠剤は、高グレードの微結晶性セルロースを使用して首尾よく達成された。対照的に、標準グレードの微結晶性セルロースを使用した33.3% AG10を超える錠剤製剤は、摩損度試験後に錠剤の侵食の兆候を示し、長期保存後に溶解速度が低下した。
【0013】
II. 定義
特に明記しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、さらに、本明細書に記載の方法または材料と類似または同等の任意の方法または材料を、本発明の実施において使用することができる。本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の目的のために、以下の用語が定義される。
【0014】
本明細書で使用する用語「a」、「an」、または「the」は、1つのメンバーを有する態様を含むだけでなく、複数のメンバーを含む態様も含む。たとえば、単数形の「a」、「an」、または「the」は、文脈上、明らかにそうでない場合を除き、複数の指示対象を含む。したがって、たとえば、「細胞(単数[a cell])」への言及は、複数のそのような細胞を含み、「薬剤(単数[a agent])」への言及は、当業者等に知られている一つまたは複数の薬剤への言及を含む。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「約」は、特定の値を含む値の範囲を意味し、当業者は、特定の値に合理的に類似していると見なすであろう。一部の実施形態では、用語「約」は、当技術分野で一般的に許容される測定値を使用する標準偏差内を意味する。一部の実施形態では、約は、特定の値の+/- 10%に及ぶ範囲を意味する。一部の実施形態では、約は特定の値を意味する。
【0016】
用語「錠剤」は、コーティングを有する、および有さない、固形医薬製剤を指す。用語「錠剤」はまた、一つ、二つ、三つ、またはそれ以上の層を有する錠剤を指し、前述のタイプの錠剤のそれぞれは、一つ以上のコーティングを有し、または有さなくてよい。一部の実施形態では、本開示の錠剤は、ローラー圧縮、または当技術分野で知られている他の好適な手段によって調製することができる。用語「錠剤」はまた、ミニ錠(mini tablet)、溶解錠(melt tablet)、チュアブル錠、発泡錠、および口腔内崩壊錠を含む。錠剤は、AG10、および一つまたは複数の充填剤、一つまたは複数の結合剤、一つまたは複数の崩壊剤、および一つまたは複数の潤滑剤から選択される少なくとも一つの医薬賦形剤を含む。任意に、コーティング剤も含まれる錠剤製剤の重量パーセントを計算するために、コーティング剤の量は計算に含まない。すなわち、本明細書で報告されている重量パーセントは、コーティングされていない錠剤のものである。
【0017】
用語「塩」は、本開示の化合物の酸性塩または塩基性塩を指す。薬学的に許容される塩の例示的な例は、鉱酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸等)塩、有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸等)塩、四級アンモニウム(ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等)塩である。薬学的に許容される塩は無毒であることが理解される。好適な薬学的に許容される塩に関する追加情報は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
III. 本開示の実施形態
本開示は、とりわけ、AG10またはその薬学的に許容される塩の錠剤製剤を提供する。AG10は、化学式:
【0019】
【化1】
【0020】
を有する化合物である。
【0021】
一部の実施形態では、AG10の薬学的に許容される塩は、化学式I
【0022】
【化2】
【0023】
に該当し、ここでXはプロトン酸の薬学的に許容されるアニオンである。
【0024】
様々なプロトン酸が、化学式Iの薬学的に許容される塩を作るのに好適である。プロトン酸の薬学的に許容されるアニオンは、使用されるプロトン酸に依存することが理解できる。たとえば、本開示において有用なプロトン酸は、塩酸、臭化水素酸、スルホン酸、トシル酸[tosylic acid](p-トルエンスルホン酸)、メタンスルホン酸、硝酸、または酢酸を含む。したがって、プロトン酸の薬学的に許容されるアニオンは、塩化物アニオン(Cl-)、臭化物アニオン(Br-)、スルホン酸アニオン(HS(O)2O-)、トシル酸アニオン(TsO-)、メシル酸アニオン(MsO-)、硝酸アニオン(NO3-)、および酢酸アニオン(CH3C(O)O-)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0025】
一部の実施形態では、プロトン酸の薬学的に許容されるアニオンは、メシル酸アニオンである。
【0026】
一部の実施形態では、プロトン酸の薬学的に許容されるアニオンは、トシル酸アニオンである。
【0027】
一部の実施形態では、プロトン酸の薬学的に許容されるアニオンは、塩化物イオンであり、化学式Iの薬学的に許容される塩は、化学式(Ia)
【0028】
【化3】
【0029】
で表される。
【0030】
化学式Iの薬学的に許容される塩は、当技術分野における多くの従来の手段を使用して製造することができる。たとえば、化学式Iの化合物の遊離酸形態を、化学量論量の水中の適切な酸、有機溶媒、または2つの混合物と接触させてもよい。一部の実施形態では、化学式Iの薬学的に許容される塩は、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリル等の非水性媒体中で作製される。一部の実施形態では、化学式Iの薬学的に許容される塩は、化学式IXの化合物を水に溶解し、適当量のHXを添加して混合物を形成し、上記の非水性媒体等の非水性溶媒を添加して塩を結晶化させることによって作製される。一部の実施形態では、適当量のHXは化学量論量である。 HXは水素を含み、Xは上記で定義されたプロトン酸の薬学的に許容されるアニオンであることが理解される。
【0031】
本開示の錠剤製剤は、たとえば、約40~85重量%、または約50~75重量%のAG10またはその薬学的に許容される塩を含んでもよい。一部の実施形態では、錠剤製剤は、約50~70重量%のAG10またはその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、錠剤製剤は、約50重量%のAG10またはその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、錠剤製剤は、約66.7重量%のAG10またはその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、錠剤製剤は、約75重量%のAG10またはその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、錠剤製剤は、約80重量%のAG10またはその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、錠剤製剤は、約85重量%のAG10またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0032】
錠剤製剤中のAG10またはその薬学的に許容される塩の量は、約0.1~約500mg、約0.1~約250mg、または約0.1~約100mgであってもよい。一部の実施形態では、錠剤製剤中に存在するAG10の量は、約10、25、50、100、200、300、400、または500mgである。一部の実施形態では、錠剤製剤中に存在するAG10の量は、約50、100、200、または400mgである。一部の実施形態では、錠剤製剤の総重量(たとえば、有効成分と賦形剤-コーティングを含まない)は、約50~約1500mgである。たとえば、固形剤形の総重量は、約100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、または1500mgである。
【0033】
本開示の錠剤製剤は、一つまたは複数の充填剤、一つまたは複数の結合剤、一つまたは複数の崩壊剤、および一つまたは複数の滑沢剤、または他の成分から選択される、少なくとも一つの成分を含んでもよい。一部の実施形態では、錠剤製剤は、高グレードの微結晶性セルロース充填剤、無機塩充填剤、および滑沢剤から選択される一つまたは複数の賦形剤を含む。
【0034】
一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、一つまたは複数の充填剤を含む。好適な充填剤は下記のとおりである。一部の実施形態では、一つまたは複数の充填剤は、約1~60、5~55、10~50、または15~45重量%の量で存在する。一部の実施形態では、一つまたは複数の充填剤は約42.5重量%で存在する。一部の実施形態では、一つまたは複数の充填剤は約25.8重量%で存在する。一部の実施形態では、一つまたは複数の充填剤は約17.5重量%で存在する。
【0035】
一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、一つから三つの充填剤を含む。一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、一つから二つの充填剤を含む。一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、二つの充填剤を含む。
【0036】
好適な充填剤は、たとえば、オリゴ糖(たとえば、ラクトース)、糖類、デンプン、加工デンプン、糖アルコール(たとえば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール)、無機塩、セルロース誘導体(たとえば、微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロース、セルロース、ヒプロメロース)、硫酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、およびケイ酸マグネシウムの複合体、および酸化物等を含む。無機塩充填剤の例は、二塩基性リン酸カルシウム二水和物(dibasic calcium phosphate dehydrate)等のリン酸塩、硫酸塩、および二酸化ケイ素を含む。一部の実施形態では、一つまたは複数の充填剤は、セルロース誘導体または塩化物、リン酸塩、硫酸塩等のアルカリ土類金属塩を含む。一部の実施形態では、一つまたは複数の充填剤は、セルロース誘導体および無機塩を含む。一部の実施形態では、一つまたは複数の充填剤は、微結晶性セルロースおよび二酸化ケイ素である。一部の実施形態では、一つまたは複数の充填剤は微結晶性セルロースである。一部の実施形態では、微結晶性セルロースは、高グレードの微結晶性セルロースである。
【0037】
高グレードの微結晶性セルロースは、微結晶性セルロースのより標準的な調製物の主要な特徴ではない特異的な特性を有するセルロース由来の製品である。たとえば、一部の実施形態では、高グレードの微結晶性セルロースは、球状の形態および多孔質構造を有するセルロースポリマーによって特徴づけられる。これらの特性は、CEOLUS(商標)のUFグレードの微結晶性セルロース(たとえば、UF-702およびUF-711)および同様の入手可能な製品に見られる。一部の実施形態では、高グレードの微結晶性セルロースは、針状の粒子形状を有するセルロースポリマーによって特徴づけられる。これらの特性は、CEOLUS(商標)のKGグレードの微結晶性セルロース(たとえば、KG-802やKG-1000など)に見られる。
【0038】
高グレードのセルロース充填剤は、約1~60重量%の量で存在してもよい。一部の実施形態では、高グレードの微結晶性セルロースは、約5~55重量%の量で存在する。一部の実施形態では、高グレードの微結晶性セルロースは、約10~50重量%の量で存在する。一部の実施形態では、高グレードの微結晶性セルロースは、約15~45重量%の量で存在する。一部の実施形態では、高グレードの微結晶性セルロースは、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、または45重量%の量で存在する。一部の実施形態では、高グレードの微結晶性セルロースは、約17%の量で存在する。一部の実施形態では、高グレードの微結晶性セルロースは、約26%の量で存在する。一部の実施形態では、高グレードの微結晶性セルロースは、約42%の量で存在する。
【0039】
一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、一つまたは複数の結合剤を含む。好適な結合剤は下記のとおりである。一部の実施形態では、一つまたは複数の結合剤は、約0.5~15、約0.5~10、または約1~10重量%の量で存在する。一部の実施形態では、一つまたは複数の結合剤は、約3~8重量%の量で存在する。一部の実施形態では、一つまたは複数の結合剤は、約5重量%の量で存在する。
【0040】
一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、一つから三つの結合剤を含む。一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、一つの結合剤を含む。
【0041】
好適な結合剤は、たとえば、ポビドン、ラクトース、デンプン、加工デンプン、糖類、アラビアゴム、トラガカントゴム、グアーガム、ペクチン、ワックスバインダー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コポリビドン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム等を含む。非セルロース結合剤は、セルロース骨格を欠くポリマーおよび他の結合剤を含む。非セルロース結合剤の例は、ポビドン、ラクトース、デンプン、加工デンプン、ガム、グアーガム、ペクチン、ワックス、ゼラチン、アルギン酸塩等を含む。一部の実施形態では、製剤は、ポビドンまたはコポビドン等の非セルロース結合剤を含む。一部の実施形態では、非セルロース結合剤はコポビドンである。
【0042】
一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、一つまたは複数の崩壊剤を含む。好適な崩壊剤は、下記のとおりである。一部の実施形態では、一つまたは複数の崩壊剤は、約1~15、約1~約12、または約1~約10重量%の量で存在する。一部の実施形態では、一つまたは複数の崩壊剤は、約3~8重量%で存在する。一部の実施形態では、製剤は、約3、4、5、6、7、または8重量%の崩壊剤を含む。一部の実施形態では、製剤は、約6重量%の崩壊剤を含む。
【0043】
一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、一つから三つの崩壊剤を含む。一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、一つの崩壊剤を含む。
【0044】
好適な崩壊剤は、たとえば、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ぴりビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、コーンスターチを含む。一部の実施形態では、製剤は、崩壊剤、たとえばデンプングリコール酸ナトリウム、またはクロスポビドンを含む。一部の実施形態では、崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウムである。
【0045】
一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、一つまたは複数の滑沢剤を含む。好適な滑沢剤は下記のとおりである。一部の実施形態では、一つまたは複数の滑沢剤は、約0.1~8、0.5~5、0.5~3重量%の量で存在する。一部の実施形態では、一つまたは複数の滑沢剤は、約0.5、0.75、1、1.5、2、3、4、または5重量%の量で存在する。一部の実施形態では、一つまたは複数の滑沢剤は、約2重量%の量で存在する。一部の実施形態では、一つまたは複数の滑沢剤は、約1.5重量%の量で存在する。
【0046】
一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、一つから三つの滑沢剤を含む。一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、一つの滑沢剤を含む。
【0047】
好適な滑沢剤は、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸カルシウム、タルク、カルナウバロウ、水素添加植物油、鉱物油、ポリエチレングリコール、およびフマル酸ステアリルナトリウムを含む。一部の実施形態では、一つまたは複数の滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムおよび/またはフマル酸ステアリルナトリウムである。一部の実施形態では、一つまたは複数の滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0048】
使用することができる他の好適な充填剤、崩壊剤、滑沢剤、および他の賦形剤は、Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd Edition, American Lachman, Leon, 1976; Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets Volume 1, 2nd Edition, Lieberman, Herbert A., et al, 1989; Modern Pharmaceutics, Banker, Gilbert and Rhodes, Christopher T, 1979;およびRemington’s Pharmaceutical Sciences, 15th Edition, 1975に記載されており、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0049】
一部の実施形態では、錠剤は、コーティング剤で被覆されている。好適なコーティング剤は、エチルセルロース、ポリメタクリレート、ならびにOPADRY(商標)が販売するコーティング製品を含む。一部の実施形態では、コーティング剤は、オパドライクリア、オパドライブルー 13B50579、オパドライホワイト 33628707、オパドライQX 321A180025、またはオパドライII(33G28707)である。一部の実施形態では、コーティング剤はオパドライホワイト 33628707である。一部の実施形態では、コーティング剤はオパドライQX 321A180025である。一部の実施形態では、コーティング剤はオパドライII(33G28707)である。錠剤製剤の重量パーセントを計算するために、コーティング剤の量は計算に含まない。すなわち、本明細書で報告されている重量パーセントは、コーティングされていない錠剤のものである。
【0050】
一部の実施形態では、錠剤製剤は、約40~85重量%のAG10またはその医薬的に許容される塩;約5~55重量%の一つまたは複数の充填剤;約0~15重量%の一つまたは複数の結合剤;約1~15重量%の一つまたは複数の崩壊剤;および約0.1~8重量%の一つまたは複数の滑沢剤を含む。一部の実施形態では、記載された製剤は、コーティング剤を含む。
【0051】
一部の実施形態では、錠剤製剤は、約50重量%のAG10またはその医薬的に許容される塩;約42.5重量%の一つまたは複数の充填剤;約6重量%の崩壊剤;および約1.5重量%の滑沢剤を含む。一部の実施形態では、記載された製剤は、コーティング剤を含む。
【0052】
一部の実施形態では、錠剤製剤は、約66.7重量%のAG10またはその医薬的に許容される塩;約25.8重量%の一つまたは複数の充填剤;約6重量%の崩壊剤;および約1.5重量%の滑沢剤を含む。一部の実施形態では、記載された製剤は、コーティング剤を含む。
【0053】
一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、約50 rpmのパドルスピードで、装置II(パドル)において37±0.5℃で0.1 NのHCl溶液に、10分後に少なくとも75%溶解される。一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、約50 rpmのパドルスピードで、装置II(パドル)において37±0.5℃で0.1 NのHCl溶液に、10分後に少なくとも85%溶解される。一部の実施形態では、本開示の錠剤製剤は、約50 rpmのパドルスピードで、装置II(パドル)において37±0.5℃で0.1 NのHCl溶液に、10分後に少なくとも95%溶解される。一部の実施形態では、試験される錠剤は、溶解試験の1週間以内に調製された。一部の実施形態では、試験される錠剤は、溶解試験を実施する少なくとも1ヶ月前に調製された。一部の実施形態では、試験される錠剤は、溶解試験を実施する少なくとも3ヶ月前に調製された。一部の実施形態では、試験される錠剤は、溶解試験を実施する少なくとも6ヶ月前に調製された。一部の実施形態では、錠剤を、溶解試験を実施する前に、60%の相対湿度(RH)で25℃で1ヶ月間インキュベートした。一部の実施形態では、錠剤を、溶解試験を実施する前に、60%の相対湿度(RH)で25℃で2ヶ月間インキュベートした。一部の実施形態では、錠剤を、溶解試験を実施する前に、60%の相対湿度(RH)で25℃で3ヶ月間インキュベートした。一部の実施形態では、錠剤を、溶解試験を実施する前に、75%の相対湿度(RH)で40℃で1ヶ月間インキュベートした。一部の実施形態では、錠剤を、溶解試験を実施する前に、75%の相対湿度(RH)で40℃で3ヶ月間インキュベートした。一部の実施形態では、錠剤を、溶解試験を実施する前に、75%の相対湿度(RH)で40℃で6ヶ月間インキュベートした。
【実施例0054】
IV. 実施例
以下の実施例は、請求項に係る発明を説明するために提供されているが、これに限定されない。
【0055】
実施例1: カプセルおよび錠剤の評価、カプセルは一貫性のない経口薬物動態データを提供する
AG10の薬物動態は、20、60、および200 mg/kgで3日間、強制経口投与によりイヌに1日1回投与した場合に測定した(研究No.1)。各群は、2匹の動物/性別/群で構成されていた。血液サンプルは、投与前の1日目、投与後0.25、0.5、1、2、4、8、12、および24時間、投与前の3日目、投与後0.25、0.5、1、2、4、8、12、24、48および72時間に各動物から採取された。血漿サンプルを、LC-MS/MSによってAG10について分析した。全般に、AG10の平均CmaxおよびAUC0-24値に性差は観察されなかった。したがって、20 mg/kg投与群の結果を、以下の表1に性別の合計値として示す。
【0056】
AG10の薬物動態はまた、ナイーブでない(non-naive)オスおよびメスのビーグル犬に経口投与した後にも測定した(研究No.2)。研究デザインは、3つの治療群(n=2/性別/群)を含んでいた。群1および2は、それぞれ0.5%メチルセルロース(MC)製剤で5 mg/kgおよび20 mg/kgのAG10を投与された。群3の動物は、ゼラチンカプセルの形で20 mg/kgのAG10を投与された。血液サンプルは、投与前、および投与後約2、4、6、8、12、および24時間に採取された。血漿サンプルを、LC-MS/MSによってAG10について分析した。0.5%メチルセルロース中の懸濁液として20 mg/kgのAG10を投与したイヌにおけるAG10の血漿曝露(AUC0-24)は、研究No.1で得られたものと同様であった(表1)。AG10の血漿曝露は、0.5%メチルセルロース中の懸濁液または賦形剤を含まないゼラチンカプセルのいずれかとして同じ用量を投与されたイヌでも同様であった。
【0057】
AG10は、50 mg錠、200 mg錠、および200 mgカプセルとして4匹のオスのビーグル犬に経口投与された(No.3)。血液サンプルは、投与前、および投与後約0.25、0.5、1、2、4、8、24、48、72、96時間に採取された。血漿サンプルを、LC-MS/MSによってAG10について分析した。200 mgの錠剤ならびに200 mgのカプセルを投与されたイヌのCmaxおよびAUC0-infの値は、対応のないt検定によって決定されたように有意差はなかった(P<0.05)(それぞれCmaxおよびAUC0-infのP値は0.0788および0.0995)。
【0058】
【表1】
【0059】
AG10のメチルセルロース製剤を比較したイヌの研究では、最大濃度(Tmax)までの時間は、研究No.1で0.44±0.38時間、研究No.2で2.5±1時間であった。研究No.2のカプセルは賦形剤なしで製剤化され、メチルセルロース対照薬よりもばらつきが低い(Tmax=2±0時間)。研究No.3では、AG10錠剤の最大曝露量はカプセルの最大曝露量に匹敵したが、AG10の吸収における動物間のばらつきは、賦形剤を含むカプセルを経口投与した4匹の動物で大きかった。50 mg錠の場合、最大濃度(Tmax)までの時間は0.500±0時間であり、200 mg錠の場合、Tmaxは1.00±0時間であった。賦形剤を含む200 mgカプセルの場合、Tmaxは、1.38±0.750時間でより変動しやすかった。したがって、直接の比較では、錠剤はAG10のより一貫した経口吸収をもたらした。
【0060】
実施例2: 高配合の即時放出AG10錠剤製剤
以下の実施例は、AG10高含有の錠剤製剤の良好な製剤(successful preparation)を説明する。
【0061】
異なる量のAG10を含有する錠剤製剤を調製した。表2は、各製剤において使用した成分の相対量に関する情報を提供する。
【0062】
【表2】
【0063】
圧縮後、錠剤をオパドライQXホワイトで錠剤を被覆した。
【0064】
錠剤は、図1で提供される一般的な図を使用して調製された。以下の表3は、66.7%のAG10 HCl(バッチ2)を含む錠剤製剤の製剤化において使用される例示的な量を提供し、表4および表5は、使用される装置の一覧表、および当該錠剤製剤を調製するために実行される工程の概要を提供する。表2で参照されているバッチ1およびバッジ3を調製する際に、同様のプロセスが実行された。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
【表5-1】
【表5-2】
【0068】
50%(w/w)および66.7(w/w)のAG10 HClコーティング錠の写真を図2に示す。50%の錠剤を8×17.5 mmのカプセル形状の工具で圧縮し、66.7%の錠剤を7.5×15 mmのカプセル形状の工具で圧縮した。表示された二つの錠剤の物理的特性を表6にまとめている。
【0069】
【表6】
【0070】
摩損度の測定:
表6に報告されているように、錠剤の摩損度は、米国薬局方の方法<1216>に従って、25 rpmで100ラウンド、摩損度試験機(モデルEF-2、Electrolab)で崩壊させた錠剤のNLT 6.5 gの重量減少率から評価された。錠剤を除塵し、破砕または摩耗によって引き起こされた重量の減少を、重量減少率として記録した。1%未満の摩損度は許容できると見なす。
【0071】
次に、50%(w/w)および66.7(w/w)のAG10 HClコーティング錠の溶解プロファイルを決定した。溶解実験は、表7に記載されている0.1 NのHCl溶液に錠剤製剤を入れることによって行った。
【0072】
【表7】
【0073】
図3は、50%(w/w)および66.7(w/w)のAG10 HClコーティング錠の溶解プロファイルを示す。溶解実験は、錠剤が製剤された後、有意なインキュベーション時間なしで行われた。図3に見られるように、溶解は、両方の錠剤で10分以内に100%放出された。
【0074】
実施例3: AG10 33.3%を超える錠剤製剤は、摩損度試験中に錠剤の侵食を示した
次の実施例は、摩損度試験中に錠剤の侵食を経ずに33.3%の薬剤充填率を超えることができなかったAG10の錠剤製剤について説明している。
【0075】
AG10の製剤は、図4、および図5に一般的に概説されるように調製された。AG10およびその他の成分の量は、表8に記載されている領域(area)である。
【0076】
【表8】
【0077】
上記の各製剤は200 mgの錠剤として調製され、実施例2に記載されているように摩損度試験を受けた。33.0%の薬剤充填率で調製された(およびそれぞれ高および中硬度kP値で圧縮された)L018AおよびL018Bの錠剤は、崩壊に対して耐性があり、摩損度試験後、錠剤の端が(たとえあったとしても)わずかに侵食されただけであった。図6を参照されたい。比較すると、40%の薬剤充填率で調製され、到達可能な最大硬度で圧縮されたL016およびL017は、摩損度試験後に大きな錠剤の縁の侵食を示した。図7を参照されたい。
【0078】
上記の製剤は、標準グレードの微結晶性セルロースを使用し、33.0%を超えるAG10を含む得られた錠剤は、臨床使用を損なう摩損度の問題を有していた。比較すると、実施例2の製剤は、高グレードの微結晶性セルロースを使用し、好ましい物理的特性を有し、崩壊しにくい錠剤を確実に提供した。
【0079】
実施例4: 「加速安定性条件」溶解試験は高配合AG10錠剤製剤の安定性を実証する
次の実施例は、標準的な微結晶性セルロースを含む33%のAG10 HCl(200 mg)を含む即時放出錠剤製剤、および高グレードの微結晶性セルロースを含む66.7%のAG10 HCl(400 mg)を含む錠剤製剤の調製、ならびにその後の溶解試験を説明する。
【0080】
各錠剤の製剤を、表9および表10に示す。
【0081】
【表9】
a. AG10塩酸塩の実際の量は、原薬の力価に基づいて調整され、177.82 mgのAG10遊離塩基に相当する。ケイ化微結晶性セルロースの実際の量は、対象のコア重量が606 mgのままになるような付随する減少(concomitant reduction)に基づいている。
b. Prosolv HD 90
d. Solutab type A
e. Plasdone S-630
f. Ligamed MF-2-V
g. 精製水はフィルムコーティングプロセスで使用され、プロセス中に除去される
h. 錠剤コア(tablet core)重量の3%の重量増加を表す。Opadry White, Colorcon 33G28707は、ヒプロメロース(欧州薬局方)、二酸化チタン(欧州薬局方)、およびトリアセチン(欧州薬局方)を含む。
【0082】
【表10】
a. AG10塩酸塩の実際の量は、原薬の力価に基づいて調整され、355.64 mgのAG10遊離塩基に相当する。微結晶性セルロースの実際の量は、対象のコア重量が600 mgのままになるような付随する減少(concomitant reduction)に基づいている。
b. Ceolus UF-711またはそれに相当するもの
c. Ac-Di-Sol SD711またはそれに相当するもの
d. Syloid 244 FPまたはそれに相当するもの
e. Hyqual 5712、 Ligamed MF-2-K、またはそれに相当するもの
f. 精製水はフィルムコーティングプロセスで使用され、プロセス中に除去される
g. 錠剤コア(tablet core)重量の4%の重量増加を表す。Opadry QX White, Colorcon 321A180025は、GMCCタイプ1/モノグリセリドおよびジグリセリド、ポリエチレングリコールポリビニルアルコールグラフト共重合体、ポリビニルアルコール(部分的に加水分解されている)、タルク、および二酸化チタンを含む。
【0083】
二つの錠剤製剤の製造プロセスを図8および図9に示す。
【0084】
33% AG10 HCl錠剤を瓶詰めし、加速的な保存(40℃/75%相対湿度(RH))条件(accelerated storage conditions)下に置いた。図10は、加速的な保存条件下での貯蔵が、33% AG10 HCl錠剤の溶解速度を著しく低下させたことを示している。
【0085】
66.7% AG10 HCl錠剤を瓶詰めし、加速的な保存条件下に置いた。図11は、400 mgのAG10 HCl錠剤は6ヶ月の保存後に溶解速度の低下を示さなかったことを示している。
【0086】
AG10 HCl錠剤の両方の製剤について、放出および安定性の研究のために、同じ溶解法(USP 2 装置(パドル)、900 mL 0.1 N HCl、75 RPM、37℃)を使用して、評価した。66.7% AG10 HCl錠剤製剤は、貯蔵後の溶解速度の点で33% AG10 HCl錠剤製剤よりも優れており、66.7% AG10 HCl錠剤が貯蔵能力を改善したことを示している。
【0087】
前述の発明を、理解を明確にするために、例示および例としてある程度詳細に説明してきたが、当業者は、特定の変更および改変が添付の特許請求の範囲内で実施されうることを理解するであろう。さらに、本明細書で提供される各参照は、各参照が参照により個別に組み込まれた場合と同じ程度に、その全体が参照により組み込まれる。本出願と本明細書で提供される参照との間に矛盾が存在する場合、本出願が優勢であるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AG10またはその薬学的に許容される塩、および一つまたは複数の充填剤、一つまたは複数の結合剤、一つまたは複数の崩壊剤、および一つまたは複数の滑沢剤から選択される少なくとも一つの医薬賦形剤を含む錠剤製剤であって、前記錠剤は少なくとも40重量%以上のAG10またはその薬学的に許容される塩を含む、錠剤製剤。