(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083465
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】通信方法、ユーザ装置、プログラム、及びプロセッサ
(51)【国際特許分類】
H04W 76/25 20180101AFI20240614BHJP
H04W 4/06 20090101ALI20240614BHJP
H04W 80/02 20090101ALI20240614BHJP
H04W 24/02 20090101ALI20240614BHJP
【FI】
H04W76/25
H04W4/06
H04W80/02
H04W24/02
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061033
(22)【出願日】2024-04-04
(62)【分割の表示】P 2023540377の分割
【原出願日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】63/229,155
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤代 真人
(57)【要約】
【課題】改善されたマルチキャストブロードキャストサービスを実現可能とする。
【解決手段】マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)をサポートする移動通信システムで用いる通信方法は、基地局からのMBSセッションの受信を開始したユーザ装置が、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤにおいて、前記MBSセッションにおけるPDCPパケットの受信に応じて更新される第1のPDCP変数を管理するステップと、前記ユーザ装置が、前記MBSセッションの受信が所定時間にわたって途絶したと判定したことに応じて、前記第1のPDCP変数を、前記基地局が管理している第2のPDCP変数と同期させるための制御を行うステップと、を有する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)をサポートする移動通信システムで用いる通信方法であって、
ネットワークノードからのMBSセッションの受信を開始したユーザ装置が、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤにおいて、前記MBSセッションにおけるPDCPパケットの受信に応じて更新される第1のPDCP変数を管理することと、
前記ユーザ装置が、前記MBSセッションの受信が所定時間にわたって途絶したと判定したことに応じて、前記第1のPDCP変数を、前記ネットワークノードが管理している第2のPDCP変数と同期させるための制御を行うことと、を有する
通信方法。
【請求項2】
前記制御を行うことは、
前記第2のPDCP変数を確認するための要求を前記ネットワークノードに送信することと、
前記要求に応じて前記ネットワークノードから送信される前記第2のPDCP変数を受信することと、を含む
請求項1に記載の通信方法。
【請求項3】
前記要求を送信することは、前記要求と、前記要求と対応付けられた識別子と、を含むRRCメッセージを前記ネットワークノードに送信することを含み、
前記識別子は、前記MBSセッションのMBSセッション識別子及び前記MBSセッションがマッピングされたマルチキャスト無線ベアラ(MRB)に関する識別子の少なくとも一方を含む
請求項2に記載の通信方法。
【請求項4】
前記要求を送信することは、前記要求を含むPDCP制御PDUを前記ネットワークノードに送信することを含む
請求項2に記載の通信方法。
【請求項5】
前記制御を行うことは、前記ネットワークノードから受信した前記第2のPDCP変数を前記第1のPDCP変数に適用することをさらに含む
請求項2に記載の通信方法。
【請求項6】
前記制御を行うことは、前記MBSセッションの受信のためのPDCPエンティティを再確立することを含む
請求項1に記載の通信方法。
【請求項7】
前記第1のPDCP変数及び前記第2のPDCP変数のそれぞれは、PDCPシーケンス番号が一周する度にカウントアップされるハイパーフレーム番号(HFN)と、前記PDCPシーケンス番号と、からなるカウント値である
請求項1に記載の通信方法。
【請求項8】
前記第1のPDCP変数及び前記第2のPDCP変数のそれぞれは、PDCPシーケンス番号が一周する度にカウントアップされるハイパーフレーム番号(HFN)である
請求項1に記載の通信方法。
【請求項9】
前記制御を行うことは、前記第1のPDCP変数に初期値をセットすることを含み、
前記初期値をセットすることは、前記ネットワークノードから前記MBSセッションを介して受信するPDCPパケットに含まれるPDCPシーケンス番号を前記初期値の少なくとも一部として用いることを含む
請求項1に記載の通信方法。
【請求項10】
前記ユーザ装置が、前記所定時間を計時するためのタイマの設定値を前記ネットワークノードから受信することをさらに有する
請求項1に記載の通信方法。
【請求項11】
マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)をサポートする移動通信システムで用いるユーザ装置であって、
ネットワークノードからのMBSセッションの受信を開始すると、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤにおいて、前記MBSセッションにおけるPDCPパケットの受信に応じて更新される第1のPDCP変数を管理する手段と、
前記MBSセッションの受信が所定時間にわたって途絶したと判定したことに応じて、前記第1のPDCP変数を、前記ネットワークノードが管理している第2のPDCP変数と同期させるための制御を行う手段と、を有する
ユーザ装置。
【請求項12】
マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)をサポートする移動通信システムで用いるユーザ装置に、
ネットワークノードからのMBSセッションの受信を開始すると、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤにおいて、前記MBSセッションにおけるPDCPパケットの受信に応じて更新される第1のPDCP変数を管理することと、
前記MBSセッションの受信が所定時間にわたって途絶したと判定したことに応じて、前記第1のPDCP変数を、前記ネットワークノードが管理している第2のPDCP変数と同期させるための制御を行うことと、を実行させる
プログラム。
【請求項13】
マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)をサポートする移動通信システムで用いるプロセッサであって、
ネットワークノードからのMBSセッションの受信を開始すると、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤにおいて、前記MBSセッションにおけるPDCPパケットの受信に応じて更新される第1のPDCP変数を管理することと、
前記MBSセッションの受信が所定時間にわたって途絶したと判定したことに応じて、前記第1のPDCP変数を、前記ネットワークノードが管理している第2のPDCP変数と同期させるための制御を行うことと、を実行する
プロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動通信システムで用いる通信方法、ユーザ装置、プログラム、及びプロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(3rd Generation Partnership Project)(登録商標。以下同じ)規格において、第5世代(5G)の無線アクセス技術であるNR(New Radio)の技術仕様が規定されている。NRは、第4世代(4G)の無線アクセス技術であるLTE(Long Term Evolution)に比べて、高速・大容量かつ高信頼・低遅延といった特徴を有する。3GPPにおいて、5G/NRのマルチキャストブロードキャストサービス(MBS)の技術仕様を策定する議論が行われている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP寄書:RP-201038、“WID revision: NR Multicast and Broadcast Services”
【発明の概要】
【0004】
5G/NRのマルチキャストブロードキャストサービスは、4G/LTEのマルチキャストブロードキャストサービスよりも改善されたサービスを提供することが望まれる。
【0005】
そこで、本開示は、改善されたマルチキャストブロードキャストサービスを実現可能とする通信方法、ユーザ装置、及び基地局を提供することを目的とする。
【0006】
第1の態様に係る通信方法は、マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)をサポートする移動通信システムで用いる方法である。前記通信方法は、ユーザ装置が、MBSセッションのMBSセッション識別子と、前記MBSセッションがマッピングされたMRBに関する識別子と、前記MBSセッションに対応するハイパーフレーム番号(HFN)と、を含む無線リソース制御(RRC)Reconfigurationメッセージを基地局から受信するステップを有する。
【0007】
第2の態様に係るユーザ装置は、マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)をサポートする移動通信システムで用いるユーザ装置である。前記ユーザ装置は、MBSセッションのMBSセッション識別子と、前記MBSセッションがマッピングされたMRBに関する識別子と、前記MBSセッションに対応するハイパーフレーム番号(HFN)と、を含む無線リソース制御(RRC)Reconfigurationメッセージを基地局から受信する受信部を備える。
【0008】
第3の態様に係る基地局は、マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)をサポートする移動通信システムで用いる基地局である。前記基地局は、MBSセッションのMBSセッション識別子と、前記MBSセッションがマッピングされたMRBに関する識別子と、前記MBSセッションに対応するハイパーフレーム番号(HFN)と、を含む無線リソース制御(RRC)Reconfigurationメッセージをユーザ装置に送信する送信部を備える。
【0009】
第4の態様に係る通信方法は、マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)をサポートする移動通信システムで用いる通信方法であって、基地局からのMBSセッションの受信を開始したユーザ装置が、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤにおいて、前記MBSセッションにおけるPDCPパケットの受信に応じて更新される第1のPDCP変数を管理するステップと、前記ユーザ装置が、前記MBSセッションの受信が所定時間にわたって途絶したと判定したことに応じて、前記第1のPDCP変数を、前記基地局が管理している第2のPDCP変数と同期させるための制御を行うステップと、を有する。
【0010】
第5の態様に係るユーザ装置は、マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)をサポートする移動通信システムで用いるユーザ装置であって、基地局からのMBSセッションの受信を開始すると、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤにおいて、前記MBSセッションにおけるPDCPパケットの受信に応じて更新される第1のPDCP変数を管理する制御部を備える。前記制御部は、前記MBSセッションの受信が所定時間にわたって途絶したと判定したことに応じて、前記第1のPDCP変数を、前記基地局が管理している第2のPDCP変数と同期させるための制御を行う。
【0011】
第6の態様に係る基地局は、マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)をサポートする移動通信システムで用いる基地局であって、MBSセッションの送信を開始すると、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤにおいて、前記MBSセッションにおけるPDCPパケットの送信に応じて更新されるPDCP変数を管理する制御部と、前記PDCP変数を確認するための要求をユーザ装置から受信する受信部と、前記要求に応じて、前記PDCP変数を前記ユーザ装置に送信する送信部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る移動通信システムの構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係るUE(ユーザ装置)の構成を示す図である。
【
図3】実施形態に係るgNB(基地局)の構成を示す図である。
【
図4】データを取り扱うユーザプレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【
図5】シグナリング(制御信号)を取り扱う制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【
図6】実施形態に係るMBSトラフィック配信の概要を示す図である。
【
図8】実施形態に係るスプリット・マルチキャスト無線ベアラ(MRB)を示す図である。
【
図9】実施形態に係る移動通信システムの動作シナリオを示す図である。
【
図10】実施形態に係るPDCP変数の一例を示す図である。
【
図11】実施形態に係るPDCPデータPDUを示す図である。
【
図12】実施形態に係るUE(受信側PDCPエンティティ)において受信したPDCPデータPDUのCOUNT値であるRCVD_COUNTを特定する動作を示す図である。
【
図13】実施形態に係るUEの受信側PDCPエンティティの動作を示す図である。
【
図14】実施形態に係るUEの動作を示す図である。
【
図15】実施形態に係る移動通信システムの動作の一例を示す図である。
【
図16】実施形態に係る移動通信システムの動作の他の例を示す図である。
【
図17】現在の合意に基づくPDCP固定型PTM/PTPの切り替えを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照しながら、実施形態に係る移動通信システムについて説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0014】
(移動通信システムの構成)
図1は、本実施形態に係る移動通信システム1の構成を示す図である。移動通信システム1は、3GPP規格の第5世代システム(5GS:5th Generation System)に準拠する。以下において、5GSを例に挙げて説明するが、移動通信システムにはLTE(Long Term Evolution)システムが少なくとも部分的に適用されてもよい。また、移動通信システムには、第6世代(6G)システムが少なくとも部分的に適用されてもよい。
【0015】
移動通信システム1は、ユーザ装置(UE:User Equipment)100と、5Gの無線アクセスネットワーク(NG-RAN:Next Generation Radio Access Network)10と、5Gのコアネットワーク(5GC:5G Core Network)20とを有する。以下において、NG-RAN10を単にRAN10と呼ぶことがある。また、5GC20を単にコアネットワーク(CN)20と呼ぶことがある。
【0016】
UE100は、移動可能な無線通信装置である。UE100は、ユーザにより利用される装置であればどのような装置であっても構わない。例えば、UE100は、携帯電話端末(スマートフォンを含む)又はタブレット端末、ノートPC、通信モジュール(通信カード又はチップセットを含む)、センサ若しくはセンサに設けられる装置、車両若しくは車両に設けられる装置(Vehicle UE)、飛行体若しくは飛行体に設けられる装置(Aerial UE)である。
【0017】
NG-RAN10は、基地局(5Gシステムにおいて「gNB」と呼ばれる)200を含む。gNB200は、基地局間インターフェイスであるXnインターフェイスを介して相互に接続される。gNB200は、1又は複数のセルを管理する。gNB200は、自セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。gNB200は、無線リソース管理(RRM)機能、ユーザデータ(以下、単に「データ」という)のルーティング機能、モビリティ制御・スケジューリングのための測定制御機能等を有する。「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として用いられる。「セル」は、UE100との無線通信を行う機能又はリソースを示す用語としても用いられる。1つのセルは1つのキャリア周波数(以下、単に「周波数」と呼ぶ)に属する。
【0018】
なお、gNBがLTEのコアネットワークであるEPC(Evolved Packet Core)に接続することもできる。LTEの基地局が5GCに接続することもできる。LTEの基地局とgNBとが基地局間インターフェイスを介して接続されることもできる。
【0019】
5GC20は、AMF(Access and Mobility Management Function)及びUPF(User Plane Function)300を含む。AMFは、UE100に対する各種モビリティ制御等を行う。AMFは、NAS(Non-Access Stratum)シグナリングを用いてUE100と通信することにより、UE100のモビリティを管理する。UPFは、データの転送制御を行う。AMF及びUPFは、基地局-コアネットワーク間インターフェイスであるNGインターフェイスを介してgNB200と接続される。
【0020】
図2は、本実施形態に係るUE100(ユーザ装置)の構成を示す図である。UE100は、受信部110、送信部120、及び制御部130を備える。受信部110及び送信部120は、gNB200との無線通信を行う無線通信部を構成する。
【0021】
受信部110は、制御部130の制御下で各種の受信を行う。受信部110は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部130に出力する。
【0022】
送信部120は、制御部130の制御下で各種の送信を行う。送信部120は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部130が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0023】
制御部130は、UE100における各種の制御及び処理を行う。このような処理は、後述の各レイヤの処理を含む。制御部130は、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPU(Central Processing Unit)とを含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0024】
図3は、本実施形態に係るgNB200(基地局)の構成を示す図である。gNB200は、送信部210、受信部220、制御部230、及びバックホール通信部240を備える。送信部210及び受信部220は、UE100との無線通信を行う無線通信部を構成する。バックホール通信部240は、CN20との通信を行うネットワーク通信部を構成する。
【0025】
送信部210は、制御部230の制御下で各種の送信を行う。送信部210は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部230が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0026】
受信部220は、制御部230の制御下で各種の受信を行う。受信部220は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部230に出力する。
【0027】
制御部230は、gNB200における各種の制御及び処理を行う。このような処理は、後述の各レイヤの処理を含む。制御部230は、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPUとを含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0028】
バックホール通信部240は、基地局間インターフェイスであるXnインターフェイスを介して隣接基地局と接続される。バックホール通信部240は、基地局-コアネットワーク間インターフェイスであるNGインターフェイスを介してAMF/UPF300と接続される。なお、gNB200は、CU(Central Unit)とDU(Distributed Unit)とで構成され(すなわち、機能分割され)、両ユニット間がフロントホールインターフェイスであるF1インターフェイスで接続されてもよい。
【0029】
図4は、データを取り扱うユーザプレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【0030】
ユーザプレーンの無線インターフェイスプロトコルは、物理(PHY)レイヤと、MAC(Medium Access Control)レイヤと、RLC(Radio Link Control)レイヤと、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤと、SDAP(Service Data Adaptation Protocol)レイヤとを有する。
【0031】
PHYレイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。UE100のPHYレイヤとgNB200のPHYレイヤとの間では、物理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。なお、UE100のPHYレイヤは、gNB200から物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)上で送信される下りリンク制御情報(DCI)を受信する。具体的には、UE100は、無線ネットワーク一時識別子(RNTI)を用いてPDCCHのブラインド復号を行い、復号に成功したDCIを自UE宛てのDCIとして取得する。gNB200から送信されるDCIには、RNTIによってスクランブルされたCRCパリティビットが付加されている。
【0032】
MACレイヤは、データの優先制御、ハイブリッドARQ(HARQ:Hybrid Automatic Repeat reQuest)による再送処理、及びランダムアクセスプロシージャ等を行う。UE100のMACレイヤとgNB200のMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。gNB200のMACレイヤはスケジューラを含む。スケジューラは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS:Modulation and Coding Scheme))及びUE100への割当リソースブロックを決定する。
【0033】
RLCレイヤは、MACレイヤ及びPHYレイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。UE100のRLCレイヤとgNB200のRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0034】
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化等を行う。
【0035】
SDAPレイヤは、コアネットワークがQoS(Quality of Service)制御を行う単位であるIPフローとAS(Access Stratum)がQoS制御を行う単位である無線ベアラとのマッピングを行う。なお、RANがEPCに接続される場合は、SDAPが無くてもよい。
【0036】
図5は、シグナリング(制御信号)を取り扱う制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【0037】
制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックは、
図4に示したSDAPレイヤに代えて、RRC(Radio Resource Control)レイヤ及びNAS(Non-Access Stratum)レイヤを有する。
【0038】
UE100のRRCレイヤとgNB200のRRCレイヤとの間では、各種設定のためのRRCシグナリングが伝送される。RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE100はRRCコネクティッド状態にある。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がない場合、UE100はRRCアイドル状態にある。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間の接続がサスペンドされている場合、UE100はRRCインアクティブ状態にある。
【0039】
RRCレイヤの上位に位置するNASレイヤは、セッション管理及びモビリティ管理等を行う。UE100のNASレイヤとAMF300AのNASレイヤとの間では、NASシグナリングが伝送される。なお、UE100は、無線インターフェイスのプロトコル以外にアプリケーションレイヤ等を有する。また、NASレイヤよりも下位のレイヤをASレイヤと呼ぶ。
【0040】
(MBSの概要)
本実施形態に係るMBSの概要について説明する。MBSは、NG-RAN10からUE100に対してブロードキャスト又はマルチキャスト、すなわち、1対多(PTM:Point To Multipoint)でのデータ送信を可能とするサービスである。MBSのユースケース(サービス種別)としては、公安通信、ミッションクリティカル通信、V2X(Vehicle to Everything)通信、IPv4又はIPv6マルチキャスト配信、IPTV(Internet protocol television)、グループ通信、及びソフトウェア配信等が想定される。
【0041】
ブロードキャストサービスは、高信頼性のQoSを必要としないアプリケーションのために、特定のサービスエリア内のすべてのUE100に対してサービスを提供する。ブロードキャストサービスに用いるMBSセッションをブロードキャストセッションと呼ぶ。
【0042】
マルチキャストサービスは、すべてのUE100に対してではなく、マルチキャストサービス(マルチキャストセッション)に参加しているUE100のグループに対してサービスを提供する。マルチキャストサービスに用いるMBSセッションをマルチキャストセッションと呼ぶ。マルチキャストサービスによれば、ブロードキャストサービスに比べて、無線効率の高い方法でUE100のグループに対して同じコンテンツを提供できる。
【0043】
図6は、本実施形態に係るMBSトラフィック配信の概要を示す図である。
【0044】
MBSトラフィック(MBSデータ)は、単一のデータソース(アプリケーションサービスプロバイダ)から複数のUEに配信される。5Gコアネットワークである5G CN(5GC)20は、アプリケーションサービスプロバイダからMBSデータを受信し、MBSデータのコピーの作成(Replication)を行って配信する。
【0045】
5GC20の観点からは、5GC共有MBSトラフィック配信(5GC Shared MBS Traffic delivery)及び5GC個別MBSトラフィック配信(5GC Individual MBS Traffic delivery)の2つのマルチキャスト配信方法が可能である。
【0046】
5GC個別MBSトラフィック配信方法では、5GC20は、MBSデータパケットの単一コピーを受信し、UE100ごとのPDUセッションを介してそれらのMBSデータパケットの個別のコピーを個別のUE100に配信する。したがって、UE100ごとに1つのPDUセッションをマルチキャストセッションと関連付ける必要がある。
【0047】
5GC共有MBSトラフィック配信方法では、5GC20は、MBSデータパケットの単一コピーを受信し、それらのMBSパケットの単一コピーをRANノード(すなわち、gNB200)に配信する。gNB200は、MBSトンネル接続を介してMBSデータパケットを受信し、それらを1つ又は複数のUE100に配信する。
【0048】
RAN(5G RAN)10の観点からは、5GC共有MBSトラフィック配信方法における無線を介したMBSデータの送信には、PTP(Point-to-Point)及びPTM(Point-to-Multipoint)の2つの配信方法が可能である。PTPはユニキャストを意味し、PTMはマルチキャスト及びブロードキャストを意味する。
【0049】
PTP配信方法では、gNB200は、MBSデータパケットの個別のコピーを無線で個々のUE100に配信する。他方、PTM配信方法では、gNB200は、MBSデータパケットの単一コピーを無線でUE100のグループに配信する。gNB200は、1つのUE100に対するMBSデータの配信方法としてPTM及びPTPのどちらを用いるかを動的に決定できる。
【0050】
PTP配信方法及びPTM配信方法は主としてユーザプレーンに関するものである。MBSデータ配信の制御モードとしては、第1配信モード及び第2配信モードの2つの配信モードがある。
【0051】
図7は、本実施形態に係る配信モードを示す図である。
【0052】
第1配信モード(Delivery mode 1:DM1)は、RRCコネクティッド状態のUE100が利用できる配信モードであって、高QoS要件のための配信モードである。第1配信モードは、MBSセッションのうちマルチキャストセッションに用いられる。但し、第1配信モードがブロードキャストセッションに用いられてもよい。第1配信モードは、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態のUE100も利用可能であってもよい。
【0053】
第1配信モードにおけるMBS受信の設定は、UE固有(UE-dedicated)シグナリングにより行われる。例えば、第1配信モードにおけるMBS受信の設定は、gNB200からUE100にユニキャストで送信されるRRCメッセージであるRRC Reconfigurationメッセージ(又はRRC Releaseメッセージ)により行われる。
【0054】
MBS受信の設定は、MBSデータを運ぶMBSトラフィックチャネルの設定に関するMBSトラフィックチャネル設定情報(以下、「MTCH設定情報」と呼ぶ)を含む。MTCH設定情報は、MBSセッションに関するMBSセッション情報と、このMBSセッションに対応するMBSトラフィックチャネルのスケジューリング情報とを含む。MBSトラフィックチャネルのスケジューリング情報は、MBSトラフィックチャネルの間欠受信(DRX)設定を含んでもよい。間欠受信設定は、オン期間(On Duration:受信期間)を定義するタイマ値(On Duration Timer)、オン期間を延長するタイマ値(Inactivity Timer)、スケジューリング間隔もしくはDRXサイクル(Scheduling Period、DRX Cycle)、スケジューリングもしくはDRXサイクルの開始サブフレームのオフセット値(Start Offset、DRX Cycle Offset)、オン期間タイマの開始遅延スロット値(Slot Offset)、再送時までの最大時間を定義するタイマ値(Retransmission Timer)、HARQ再送のDL割り当てまでの最小間隔を定義するタイマ値(HARQ RTT Timer)のいずれか一つ以上のパラメータを含んでもよい。
【0055】
なお、MBSトラフィックチャネルは論理チャネルの一種であって、MTCHと呼ばれることがある。MBSトラフィックチャネルは、トランスポートチャネルの一種である下りリンク共有チャネル(DL-SCH)にマッピングされる。
【0056】
第2配信モード(Delivery mode 2:DM2)は、RRCコネクティッド状態のUE100だけではなく、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態のUE100が利用できる配信モードであって、低QoS要件のための配信モードである。第2配信モードは、MBSセッションのうちブロードキャストセッションに用いられる。但し、第2配信モードは、マルチキャストセッションにも適用可能であってもよい。
【0057】
第2配信モードにおけるMBS受信の設定は、ブロードキャストシグナリングにより行われる。例えば、第2配信モードにおけるMBS受信の設定は、gNB200からUE100にブロードキャストで送信される論理チャネル、例えば、ブロードキャスト制御チャネル(BCCH)及び/又はマルチキャスト制御チャネル(MCCH)により行われる。UE100は、例えば、技術仕様で予め規定された専用のRNTIを用いてBCCH及びMCCHを受信できる。BCCH受信用のRNTIがSI-RNTIであって、MCCH受信用のRNTIがMCCH-RNTIであってもよい。
【0058】
第2配信モードにおいて、UE100は、次の3つの手順でMBSデータを受信してもよい。第1に、UE100は、gNB200からBCCH上で伝送されるSIB(MBS-SIB)によりMCCH設定情報を受信する。第2に、UE100は、MCCH設定情報に基づいてgNB200からMCCHを受信する。MCCHは、MTCH設定情報を伝送する。第3に、UE100は、MTCH設定情報に基づいて、MTCH(MBSデータ)を受信する。以下において、MTCH設定情報及び/又はMCCH設定情報をMBS受信設定と呼ぶことがある。
【0059】
第1配信モード及び第2配信モードにおいて、UE100は、gNB200から割り当てられるグループRNTI(G-RNTI)を用いてMTCHを受信してもよい。G-RNTIは、MTCH受信用RNTIに相当する。G-RNTIは、MBS受信設定(MTCH設定情報)に含まれていてもよい。
【0060】
なお、ネットワークは、MBSセッションごとに異なるMBSサービスを提供できる。MBSセッションは、TMGI(Temporary Mobile Group Identity)、ソーススペシフィックIPマルチキャストアドレス(アプリケーション機能やアプリケーションサーバ等のソースユニキャストIPアドレスと、宛先アドレスを示すIPマルチキャストアドレスとから成る)、セッション識別子、及びG-RNTIのうち少なくとも1つにより識別される。TMGI、G-RNTI、ソーススペシフィックIPマルチキャストアドレス、及びセッション識別子の少なくとも1つをMBSセッション識別子と呼ぶ。TMGI、ソーススペシフィックIPマルチキャストアドレス、セッション識別子、及びG-RNTIを総括してMBSセッション情報と呼ぶ。
【0061】
図8は、本実施形態に係るスプリット・マルチキャスト無線ベアラ(MRB)を示す図である。MRBは、データ無線ベアラ(DRB)の一種であってもよい。スプリットMRBは、上述の第1配信モードで用いられてもよい。
【0062】
gNB200は、PTP通信パス及びPTM通信パスに分離されたMRBをUE100に設定し得る。これにより、gNB200は、UE100に対するMBSデータの送信をPTP(PTP通信パス)とPTM(PTM通信パス)との間で動的に切り替えることができる。或いは、gNB200は、PTP(PTP通信パス)及びPTM(PTM通信パス)を併用して同一のMBSデータを二重送信することにより信頼性を高めることができる。以下において、PTP通信パスをPTPレグと呼び、PTM通信パスをPTMレグと呼ぶ。また、各レイヤに相当する機能部をエンティティと呼ぶ。
【0063】
スプリットを終端する所定レイヤは、MACレイヤ(HARQ)、RLCレイヤ、PDCPレイヤ、又はSDAPレイヤである。以下において、スプリットを終端する所定レイヤがPDCPレイヤである一例について主として説明するが、所定レイヤは、MACレイヤ(HARQ)、RLCレイヤ、又はSDAPレイヤであってもよい。
【0064】
gNB200のPDCPエンティティ及びUE100のPDCPエンティティのそれぞれは、MBSに用いるベアラ(データ無線ベアラ)であるMRBをPTPレグ及びPTMレグに分離する。なお、PDCPエンティティはベアラごとに設けられる。
【0065】
gNB200及びUE100のそれぞれは、レグごとに設けられる2つのRLCエンティティと、1つのMACエンティティと、1つのPHYエンティティとを有する。PHYエンティティは、レグごとに設けられてもよい。なお、UE100が2つのgNB200との通信を行う二重接続(Dual Connectivity)の場合、UE100が2つのMACエンティティを有していてもよい。
【0066】
PHYエンティティは、UE100と1対1で割り当てられるセルRNTI(C-RNTI:Cell Radio Network Temporary Identifier)を用いて、PTPレグのデータを送受信する。PHYエンティティは、MBSセッションと1対1で割り当てられるG-RNTIを用いて、PTMレグのデータを送受信する。C-RNTIはUE100ごとに異なるが、G-RNTIは1つのMBSセッションを受信する複数のUE100で共通のRNTIである。
【0067】
gNB200からUE100に対してPTMレグを用いてMBSデータのPTM送信(マルチキャスト又はブロードキャスト)を行うためには、gNB200からUE100にスプリットMRBが設定されており、且つ、PTMレグがアクティブ化(activation)されている必要がある。言い換えると、gNB200は、UE100にスプリットMRBが設定されていても、PTMレグが非アクティブ(deactivation)状態にある場合は、このPTMレグを用いてMBSデータのPTM送信を行うことができない。
【0068】
また、gNB200及びUE100がPTPレグを用いてMBSデータのPTP送信(ユニキャスト)を行うためには、gNB200からUE100にスプリットMRBが設定されており、且つ、PTPレグがアクティブ化されている必要がある。言い換えると、gNB200は、UE100にスプリットMRBが設定されていても、PTPレグが非アクティブ状態にある場合は、このPTPレグを用いてMBSデータのPTP送信を行うことができない。
【0069】
UE100は、PTMレグがアクティブ化された状態において、MBSセッションと対応付けられたG-RNTIが適用されたPDCCHをモニタする(すなわち、G-RNTIを用いてPDCCHのブラインドデコーディングを行う)。UE100は、当該MBSセッションのスケジューリング機会にのみ当該PDCCHをモニタしてもよい。
【0070】
UE100は、PTMレグが非アクティブ化された状態において、MBSセッションと対応付けられたG-RNTIが適用されたPDCCHをモニタしない(すなわち、G-RNTIを用いたPDCCHのブラインドデコーディングを行わない)。
【0071】
UE100は、PTPレグがアクティブ化された状態において、C-RNTIが適用されたPDCCHをモニタする。UE100は、PTPレグにおける間欠受信(DRX:Discontinuous Reception)が設定されている場合、設定されたオン有効期間(OnDuration)においてPDCCHをモニタする。UE100は、MBSセッションと紐づいたセル(周波数)が指定されている場合、当該セルが非アクティブ化されていても、当該セルのPDCCHをモニタしてもよい。
【0072】
UE100は、PTPレグが非アクティブ化された状態において、MBSデータ以外の通常のユニキャスト下りリンク送信に備えて、C-RNTIが適用されたPDCCHをモニタしてもよい。但し、UE100は、MBSセッションと紐づいたセル(周波数)が指定されている場合、当該MBSセッションについて当該PDCCHをモニタしなくてもよい。
【0073】
なお、gNB200のRRCエンティティがUE100のRRCエンティティに対して送信するRRCメッセージ(例えば、RRC Reconfigurationメッセージ)により、上述のようなスプリットMRBが設定されるものとする。
【0074】
(移動通信システムの動作)
図9は、本実施形態に係る移動通信システム1の動作シナリオを示す図である。
【0075】
gNB200は、あるMBSセッションのMBSデータをPTM(マルチキャスト又はブロードキャスト)で複数のUE100(
図9の例では、UE100a乃至UE100c)に送信する。各UE100のRRC状態はどのような状態(RRCコネクティッド状態、RRCアイドル状態、RRCインアクティブ状態)であってもよい。MBS配信のモードは、第1配信モード又は第2配信モードであってもよい。第1配信モードでのMBS配信は、PTMレグを用いたものであってもよい。
【0076】
gNB200は、PDCPレイヤにおいて、当該MBSセッションと対応付けられたPDCPエンティティ201(具体的には、当該MBSセッションに属するマルチキャスト無線ベアラ(MRB)と対応付けられた送信側PDCPエンティティ)を有する。PDCPエンティティ201は、MBSセッションの送信を開始すると、当該MBSセッションにおけるPDCPパケットの送信に応じて更新されるPDCP変数を管理する。
【0077】
各UE100は、PDCPレイヤにおいて、当該MBSセッションと対応付けられたPDCPエンティティ101(具体的には、当該MBSセッションに属するMRBと対応付けられた受信側PDCPエンティティ)を有する。各PDCPエンティティ101(
図10の例では、PDCPエンティティ101a乃至PDCPエンティティ101b)は、MBSセッションの送信を開始すると、当該MBSセッションにおけるPDCPパケットの受信に応じて更新されるPDCP変数を管理する。
【0078】
図10に示すように、PDCP変数は、PDCPシーケンス番号が一周する度にカウントアップされるハイパーフレーム番号(HFN)と、PDCPシーケンス番号(PDCP SN)と、からなるカウント値(COUNT値)であってもよい。例えば、COUNT値は32ビットのビット長を有し、PDCP SNは12ビット又は18ビットのビット長(SN_length)を有し、HFNはCOUNT値のビット長からPDCP SNのビット長を減じたビット長を有する。PDCP SNのビット長は、RRCシグナリングにより設定されてもよい。なお、用語「PDCP変数」は、COUNT値を指す場合に限らず、PDCPレイヤで扱う各種の変数(HFN又はPDCP SN等)を指す用語としても用いられる。
【0079】
図11は、MBSデータを構成するPDCPパケット、具体的には、PDCPデータPDU(Protocol Data Unit)を示す図である。
図11に示すように、PDCPデータPDUは、PDCP SNと、データと、MAC-Iとを有する。PDCP SNは、PDCPデータPDUに順次付与されるシーケンス番号である。データは、PDCP SDU(Service Data Unit)に相当する。MAC-Iは、メッセージ認証コードに相当する。PDCPデータPDUは、MAC-Iを有していない場合がある。このように、PDCPデータPDUは、PDCP SNを有するものの、HFNを有していない。そのため、gNB200及びUE100のそれぞれは、PDCPデータPDUの送受信に応じてHFNを更新、具体的には、PDCPシーケンス番号が一周する度にカウントアップする必要がある。
【0080】
図12は、UE100(受信側PDCPエンティティ101)において受信したPDCPデータPDUのCOUNT値であるRCVD_COUNTを特定する動作を示す図である。ここで、受信したPDCPデータPDUに含まれるPDCP SNをRCVD_SNと呼ぶ。
【0081】
第1に、
RCVD_SN<SN(RX_DELIV)-Window_Size
である場合、
RCVD_HFN=HFN(RX_DELIV)+1
である。ここで、RX_DELIVは、受信待ちであって、未だ上位レイヤに提供していないPDCP SDUのうち最も古いものを表す変数である。RX_DELIVの初期値はゼロである。Window_Sizeは、リオーダリングウィンドウのサイズを示す定数である。
【0082】
第2に、
RCVD_SN≧SN(RX_DELIV)+Window_Size
である場合、
RCVD_HFN=HFN(RX_DELIV)-1
である。
【0083】
第3に、上記のいずれの条件も満たされない場合、
RCVD_HFN=HFN(RX_DELIV)
である。
【0084】
そして、
RCVD_COUNT=[RCVD_HFN,RCVD_SN]
にセットされる。
【0085】
図13は、UE100の受信側PDCPエンティティ101の動作を示す図である。
【0086】
まず、受信側PDCPエンティティ101は、PDCP PDUを受信すると、当該PDCP PDUに対して、カウント値(RCVD_COUNT)を用いたセキュリティ処理(具体的には、deciphering/integrity verification)を行い(ステップS12)、integrity verificationに失敗した場合(ステップS12:Yes)、上位レイヤにintegrity verification失敗を通知するとともに当該PDCP PDUを破棄する(ステップS13)。
【0087】
受信側PDCPエンティティ101は、integrity verificationに成功した場合(ステップS12:No)、カウント値(RCVD_COUNT)がRX_DELIVよりも小さい場合(ステップS14:Yes)、又は、RCVD_COUNTが受信済みである場合(ステップS16:Yes)、当該PDCP PDUを破棄する(ステップS15)。
【0088】
次に、受信側PDCPエンティティ101は、破棄しなかったPDCP PDUを受信バッファに格納し(ステップS17)、「RCVD_COUNT≧RX_NEXT」である場合(ステップS18:Yes)、RX_NEXT=RCVD_COUNT+1に更新する(ステップS19)。ここで、RX_NEXTは、次に受信することが期待されるPDCP SDUのカウント値(RCVD_COUNT)を示す変数である。RX_NEXTの初期値はゼロである。Out-of-order deliveryが設定(Configured)されている場合(ステップS20:Yes)、受信側PDCPエンティティ101は、当該PDCP PDUをヘッダ逆圧縮後、上位レイヤに渡す(ステップS21)。具体的には、受信側PDCPエンティティ101は、RRCで“outOfOrderDelivery”が設定されている場合に、S21の動作を行う。Out of order deliveryは、順序制御を行わずに上位レイヤにパケットを渡す動作である。よって、ステップS21のように、パケットを受信してバッファに格納したら直ぐに上位レイヤに当該パケットを渡す。なお、ステップS20が”No”の場合、順序制御を行うことになる。
【0089】
受信側PDCPエンティティ101は、「RCVD_COUNT=RX_DELIV」である場合(ステップS22:Yes)、COUNT=RX_DELIVから始まる連続するCOUNTの全てのPDCP SDUをヘッダ逆圧縮後、上位レイヤに渡し(ステップS23)、RX_DELIVを、上位レイヤに渡していない最初の(最も若い)COUNT値に更新する(ステップS24)。
【0090】
受信側PDCPエンティティ101は、T-Reorderingが動作中であって、「RX_DELIV≧RX_REORD」である場合(ステップS25:Yes)、T-Reorderingをstop及びresetする(ステップS26)。ここで、T-Reorderingは、PDCPデータPDUの欠損を検出するために用いるタイマである。RX_REORDは、T-ReorderingをトリガしたPDCPデータPDUに関連付けられたCOUNT値に続くCOUNT値を示す変数である。
【0091】
受信側PDCPエンティティ101は、T-Reorderingが停止中であって、「RX_DELIV<RX_REORD」である場合(ステップS27:Yes)、RX_REORD=RX_NEXTに更新するとともにT-Reorderingを始動(start)する。
【0092】
上述のように、UE100の受信側PDCPエンティティ101は、gNB200からのPDCPパケット(PDCPデータPDU)の受信に応じてPDCP変数を更新する。具体的には、UE100の受信側PDCPエンティティ101は、PDCP変数の初期値をゼロに設定し、gNB200からのパケット受信に応じてPDCP変数を更新(インクリメント、カウントアップ)していく。
【0093】
また、UE100の受信側PDCPエンティティ101は、PDCPパケット(PDCPデータPDU)について、Integrity verificationが失敗した場合、又はRCVD_COUNT<RX_DELIVの場合(既に受信済みであった場合等)、又はRCVD_COUNTが既に受信済みであった場合等において、当該PDCPパケットを破棄する。
【0094】
例えば、UE100の受信側PDCPエンティティ101は、無線状況が悪い等の理由で一定期間以上パケットを受信できず、その後パケットを受信し始めた時に、正常受信できなくなることがある。具体的には、RCVD_SN>>SN(RX_DELIV)となった場合、過去パケットと見なされる虞がある。
【0095】
このような問題は、主として、gNB200及びUE100でHFNが同期外れになることに起因する。UE100がMBS受信(PTM受信)をある一定期間受信できなかった場合、このような同期外れが発生し得る。とりわけ、PTMは、複数UEが受信すること及びレイヤ2フィードバックが無いことから、このような状況が発生し易い傾向にある。その結果、UE100は、PDCPレイヤにおける受信ウィンドウ制御及びパケット並び替え(Reordering)等を適切に行うことができず、MBS受信を適切に継続することができなくなる懸念がある。本実施形態は、このような問題を解決しようとする実施形態である。
【0096】
図14は、本実施形態に係るUE100の動作を示す図である。UE100は、
図9に示すUE100a乃至UE100cのいずれかであるものとする。
【0097】
ステップS1において、UE100は、gNB200からのMBSセッションの受信(PTM受信)を開始する。MBSセッションは、マルチキャストセッション又はブロードキャストセッションであってもよい。
【0098】
ステップS2において、UE100の受信側PDCPエンティティ101は、MBSセッションにおけるPDCPパケットの受信に応じて更新されるPDCP変数(以下、「第1のPDCP変数」と呼ぶ)を管理する。
【0099】
ステップS3において、UE100は、MBSセッションの受信が所定時間にわたって途絶したか否かを判定する。MBSセッションの受信が所定時間にわたって途絶していない場合(ステップS3:No)、ステップS2に処理が戻る。
【0100】
MBSセッションの受信が所定時間にわたって途絶したと判定された場合(ステップS3:Yes)、ステップS4において、UE100は、第1のPDCP変数を、gNB200が管理しているPDCP変数(以下、「第2のPDCP変数」と呼ぶ)と同期させるための制御を行う。
【0101】
このように、gNB200及びUE100でHFNが同期外れになったとみなすことができる状況下において、UE100は、自身が管理する第1のPDCP変数を、gNB200が管理している第2のPDCP変数と同期させるための制御を行うことにより、MBS受信を適切に継続することが可能である。
【0102】
ステップS4は、第2のPDCP変数を確認するための要求をgNB200に送信するステップと、当該要求に応じてgNB200から送信される第2のPDCP変数を受信するステップと、を含んでもよい。UE100は、gNB200から受信した第2のPDCP変数を第1のPDCP変数に適用してもよい。これにより、UE100は、自身が管理する第1のPDCP変数を、gNB200が管理している第2のPDCP変数と同期させることが可能になる。
【0103】
ここで、UE100は、第2のPDCP変数を確認するための要求と、当該要求と対応付けられた識別子と、を含むRRCメッセージをgNB200に送信してもよい。当該識別子は、MBSセッションのMBSセッション識別子及びMBSセッションがマッピングされたMRBに関する識別子(例えば、MRB識別子、MTCH識別子、又はQoSフロー識別子等)の少なくとも一方を含んでもよい。当該RRCメッセージは、例えば、MBS Interest Indicationメッセージ又はUE Assistance Informationメッセージであってもよい。
【0104】
UE100は、第2のPDCP変数と、当該第2のPDCP変数と対応付けられた識別子と、を含むメッセージをgNB200から受信してもよい。当該識別子は、上述のRRCメッセージに含まれる識別子と同様な識別子である。但し、当該メッセージは、当該第2のPDCP変数と対応付けられた識別子を含まなくてもよい。当該メッセージは、UE専用シグナリング(例えば、RRC Reconfigurationメッセージ又はMAC制御エレメント(MAC CE))であってもよい。また、当該メッセージは、ブロードキャストシグナリング(例えば、MBS-SIB又はMCCH)であってもよい。
【0105】
或いは、UE100の受信側PDCPエンティティ101は、第2のPDCP変数を確認するための要求を含むPDCP制御PDUをgNB200に送信してもよい。gNB200の送信側PDCPエンティティ201は、当該PDCP制御PDUの受信に応じて、第2のPDCP変数を含むPDCP制御PDUをUE100の受信側PDCPエンティティ101に送信してもよい。
【0106】
ステップS4は、MBSセッションの受信のためのPDCPエンティティ(受信側PDCPエンティティ101)を再確立するステップを含んでもよい。これにより、gNB200及びUE100でHFNが同期外れになったとみなすことができる状況下において、UE100が管理している第1のPDCP変数を初期化(リセット)することができる。
【0107】
ステップS4は、第1のPDCP変数に初期値をセットするステップを含んでもよい。初期値をセットするステップは、gNB200からMBSセッションを介して受信するPDCPパケット(PDCPデータPDU)に含まれるPDCP SNを当該初期値の少なくとも一部として用いるステップを含んでもよい。これにより、最新のPDCP SNを第1のPDCP変数の少なくとも一部として適用できる。
【0108】
図15は、本実施形態に係る移動通信システム1の動作の一例を示す図である。
【0109】
ステップS101において、gNB200は、所定時間を計時するためのタイマの設定値をUE100に送信してもよい。UE100は、タイマ設定値を受信する。タイマ設定値は、UE専用シグナリング(例えば、RRC Reconfigurationメッセージ)でUE100に通知されてもよい。また、当該タイマ設定値は、ブロードキャストシグナリング(例えば、MBS-SIB又はMCCH)でUE100に通知されてもよい。但し、タイマ設定値は、UE100の実装依存で決定してもよい。タイマ設定値は、MBSセッション毎、QoSフロー毎、又はG-RNTI毎に設定できてもよい。
【0110】
ステップS102において、gNB200は、あるMBSセッションのMBSデータをPTM(マルチキャスト又はブロードキャスト)で複数のUE100(
図9の例では、UE100a乃至UE100c)に送信することを開始する。UE100は、MBSデータの受信を開始し、自身のPDCP変数(第1のPDCP変数)を更新していく。
【0111】
ステップS103において、UE100は、MBS受信(PTM受信)に失敗したか否かを判定する。例えば、UE100は、下位レイヤでMBSデータの復号に失敗した場合、MBS受信に失敗したと判定する。MBS受信に失敗したと判定した場合(ステップS103:Yes)、ステップS104において、UE100は、上述のタイマ設定値がセットされたタイマを始動する。
【0112】
ステップS105において、UE100は、MBS受信(PTM受信)に成功したか否かを判定する。例えば、UE100は、下位レイヤでMBSデータの復号に成功した場合、MBS受信に成功したと判定する。MBS受信に成功したと判定した場合(ステップS105:Yes)、ステップS106において、UE100は、タイマを停止する。MBS受信に成功しない場合(ステップS105:No)、UE100は、タイマを停止しない。
【0113】
ステップS107において、UE100は、タイマが満了したか否かを判定する。すなわち、UE100は、MBS受信が所定時間(タイマ設定値で設定された時間)にわたって途絶したか否かを判定する。タイマが満了していない場合(ステップS107:No)、UE100は、処理をステップS105に戻す。一方、タイマが満了した場合(ステップS107:Yes)、UE100は、ステップS108乃至S112のうち少なくとも1つの処理を行う。
【0114】
ステップS108において、UE100は、MBS受信のためのPDCPエンティティ(受信側PDCPエンティティ101)を再確立してもよい。UE100は、このようなPDCP再確立により、自動的に第1のPDCP変数(例えば、RX_DELIV)に初期値が代入されるものとする。ここで、UE100において、RRCレイヤがPDCPレイヤ(受信側PDCPエンティティ101)にPDCP再確立の指示を行ってもよい。また、PDCPレイヤ(受信側PDCPエンティティ101)が自動的にPDCP再確立を行ってもよい。PDCPレイヤ(受信側PDCPエンティティ101)は、自動的にPDCP再確立を行った場合、その旨をRRCレイヤに通知してもよい。
【0115】
ステップS109において、UE100は、gNB200に対して、gNB200が管理している現在のCOUNT値(第2のPDCP変数)の確認要求(問い合わせ)を行う。gNB200は、当該確認要求(問い合わせ)を受信する。
【0116】
ステップS110において、gNB200は、UE100からの確認要求(問い合わせ)の受信に応じて、gNB200が管理しているCOUNT値(第2のPDCP変数)をUE100に送信する。UE100は、gNB200が管理しているCOUNT値(第2のPDCP変数)を受信する。
【0117】
ステップS111において、UE100は、gNB200から受信したCOUNT値(第2のPDCP変数)を、UE100が管理するCOUNT値として適用する。例えば、UE100は、gNB200から受信したCOUNT値(第2のPDCP変数)を、MBS受信のためのPDCPエンティティ(受信側PDCPエンティティ101)の第1のPDCP変数(例えば、RX_DELIV)にセットする。
【0118】
ステップS112において、UE100は、ステップS111でセットした第1のPDCP変数を用いて、当該MBSセッションの受信を試みる。
【0119】
上述のタイマの変更例として、次のようなタイマ動作としてもよい。具体的には、UE100は、ステップS104においてタイマを始動していたが、当該タイマはS102において、MBSデータを正常受信した時に、始動(又はリセット及び再始動)してもよい。UE100は、当該タイマが満了した場合、S107と同様に、MBS受信が所定時間にわたって途絶したことを検知できる。すなわち、UE100は、MBSデータを正常受信する度にタイマを始動(又はリセット及び再始動)し、当該タイマが満了した場合にMBS受信が所定時間にわたって途絶したと判定してもよい。
【0120】
図16は、本実施形態に係る移動通信システム1の動作の他の例を示す図である。ここでは、
図15に示す動作例との相違点について説明する。
【0121】
ステップS201乃至S208の動作は、
図15のステップS101乃至S108の動作と同様である。
【0122】
ステップS209において、UE100は、gNB200に対して、gNB200が管理している現在のHFN(第2のPDCP変数)の確認要求(問い合わせ)を行ってもよい。gNB200は、当該確認要求(問い合わせ)を受信する。
【0123】
ステップS210において、gNB200は、UE100からの確認要求(問い合わせ)の受信に応じて、gNB200が管理しているHFN(第2のPDCP変数)をUE100に送信してもよい。UE100は、gNB200が管理しているHFN(第2のPDCP変数)を受信する。
【0124】
或いは、UE100は、gNB200が管理しているHFN(第2のPDCP変数)を類推してもよい。例えば、UE100は、HFN候補を生成し、各HFN候補を用いてintegrity verificationを試み、integrity verificationに成功したHFN候補を、gNB200が管理しているHFN(第2のPDCP変数)として決定してもよい。
【0125】
ステップS211において、UE100は、自身が管理しているCOUNT値(第1のPDCP変数)のHFN部、例えば、RX_DELIVのHFN部に、ステップS210で受信したHFN(第2のPDCP変数)又は自身で決定したHFN(第2のPDCP変数)をセットする。UE100は、RRC再確立(ステップS208)の後、自身が管理しているCOUNT値(第1のPDCP変数)のHFN部の初期値として、ステップS210で受信したHFN(第2のPDCP変数)又は自身で決定したHFN(第2のPDCP変数)をセットしてもよい。
【0126】
ステップS212において、UE100は、gNB200からのMBSセッション(データ)を受信する。
【0127】
ステップS213において、UE100は、ステップS212でgNB200から最初に受信したPDCPパケット(PDCPデータPDU)のPDCP SNを取得する。そして、UE100は、自身が管理しているCOUNT値(第1のPDCP変数)のPDCP SN部、例えば、RX_DELIVのPDCP SN部に、最初に受信したPDCPパケットから取得したPDCP SNをセットする。UE100は、RRC再確立(ステップS208)の後、自身が管理しているCOUNT値(第1のPDCP変数)のPDCP SN部の初期値として、最初に受信したPDCPパケットから取得したPDCP SNをセットしてもよい。
【0128】
(その他の実施形態)
上述の実施形態において、無線状態の悪化によりUE100がPTMを一定期間受信できなかったシナリオを主として想定していた。しかしながら、gNB200は、意図的に(送信するデータが無いなどの理由で)送信を一定期間止める場合も想定される。そのため、上述の実施形態のように、タイマを用いてMBS受信が所定時間に渡って途絶したことを検知する例において、gNB200が意図的に(送信すべきデータが無い等の理由により)MBS送信を所定時間に渡って中断した場合にも、UE100はMBS受信が途絶したと判定してしまうため、本来不要な処理を実行してしまう虞がある。そこで、gNB200は意図的にMBS送信を停止する場合、UE100に当該タイマの停止指示を送信してもよい。UE100は、当該停止指示を受信した場合、当該タイマを停止する。gNB200はMBS送信を再開する時に、UE100に当該タイマの再開指示を送信してもよい。UE100は当該再開指示を受信した場合、当該タイマを再開する。再開時、当該タイマはリセットしてもよいし(つまり0にセットする)、リセットしなくてもよい(つまり停止時の値から再開してもよい)。もしくは、gNB200は、MBS送信を再開する時に、前記再開指示を送信せずに、MBSデータの送信を再開してもよい。UE100はMBSデータを受信した場合、gNB200がMBS送信を再開したと見なし、当該タイマを再開する。
【0129】
上述の各動作フローは、別個独立に実施する場合に限らず、2以上の動作フローを組み合わせて実施可能である。例えば、1つの動作フローの一部のステップを他の動作フローに追加してもよい。また、1つの動作フローの一部のステップを他の動作フローの一部のステップと置換してもよい。
【0130】
上述の実施形態及び実施例において、基地局がNR基地局(gNB)である一例について説明したが基地局がLTE基地局(eNB)又は6G基地局であってもよい。また、基地局は、IAB(Integrated Access and Backhaul)ノード等の中継ノードであってもよい。基地局は、IABノードのDUであってもよい。また、ユーザ装置は、IABノードのMT(Mobile Termination)であってもよい。
【0131】
UE100又はgNB200が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。また、UE100又はgNB200が行う各処理を実行する回路を集積化し、UE100又はgNB200の少なくとも一部を半導体集積回路(チップセット、SoC:System on a chip)として構成してもよい。
【0132】
本開示で使用されている「に基づいて(based on)」、「に応じて(depending on)」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」、「のみに応じて」を意味しない。「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」及び「に少なくとも部分的に基づいて」の両方を意味する。同様に、「に応じて」という記載は、「のみに応じて」及び「に少なくとも部分的に応じて」の両方を意味する。また、「取得する(obtain/acquire)」は、記憶されている情報の中から情報を取得することを意味してもよく、他のノードから受信した情報の中から情報を取得することを意味してもよく、又は、情報を生成することにより当該情報を取得することを意味してもよい。「含む(include)」、「備える(comprise)」、及びそれらの変形の用語は、列挙する項目のみを含むことを意味せず、列挙する項目のみを含んでもよいし、列挙する項目に加えてさらなる項目を含んでもよいことを意味する。また、本開示において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。さらに、本開示で使用されている「第1」、「第2」などの呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量又は順序を全般的に限定するものではない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本明細書で使用され得る。したがって、第1及び第2の要素への参照は、2つの要素のみがそこで採用され得ること、又は何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。本開示において、例えば、英語でのa,an,及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、これらの冠詞は、文脈から明らかにそうではないことが示されていなければ、複数のものを含むものとする。
【0133】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0134】
本願は、米国仮出願第63/229155号(2021年8月4日出願)の優先権を主張し、その内容の全てが本願明細書に組み込まれている。
【0135】
(付記)
1.導入
NRマルチキャスト及びブロードキャストサービス(MBS)に関する改訂されたワークアイテムは、RAN#88で承認された。これには、動的なPTM/PTPの切り替えとサービス継続性を備えたモビリティを次のように規定する目的が含まれている。
RRCコネクティッド状態のUEのブロードキャスト/マルチキャストのRAN基本機能を規定する。
特定のUEのサービス継続性を備えたマルチキャスト(PTM)とユニキャスト(PTP)と間のブロードキャスト/マルチキャストサービス配信の動的変更のサポートを規定する。
サービス継続性を備えた基本的なモビリティのサポートを規定する。
【0136】
動的なPTM/PTP切り替えに関しては、RAN2はすでにこのトピックに関連するいくつかの合意に達している。RAN2#111-eには以下の合意があった。
UEの場合、gNBは、マルチキャストデータをPTM又はPTP(共有配信)のどちらで配信するかを動的に決定する。
レイヤが信頼性(一般的に)、順序どおりの配信/重複処理を処理することについては更なる検討が必要であり、PTMとPTPとの切り替えでどのように機能するかは更なる検討が必要である。
【0137】
RAN2#113-eでは、動的なPTM/PTPの切り替えのアーキテクチャが、L2の信頼性に関する議論に関連して次のように合意された。
PTMとPTPとの両方がRLC UMの場合、L2 ARQがなく、PDCPが固定されたPTMとPTPとの切り替えを使用した設定がサポートされる(たとえば、ユニキャスト用にRLC UMで通常設定されるサービスの場合)。
【0138】
RAN2#113bis-eでは、アーキテクチャとシグナリングについて次のようにさらに合意が達せられた。
合意
以下の合意は、これまでのところアーキテクチャの決定にのみ基づいていることに注意する。信頼性の議論はまだ終わっていない。つまり、RLC UM+RLC UM以外の場合である。このような他の場合のPTMとPTPとの切り替えについては、更なる検討が必要である。
動的なPTM/PTPの切り替えは、共通の(単一の)PDCPエンティティを有するスプリットMRBベアラ(タイプ)でサポートされる。
基本として、gNBスイッチの決定をサポートするための新しいUEベースのシグナリングは導入されていない(たとえば、高信頼性のためのPDCP SRは未定である)。
PTMレグとPTPレグで設定されたスプリットMRB(オンラインセッション中に合意された)を想定すると、必要なスプリットMRB設定の後で、PTPレグの使用を非アクティブ化することはできない(つまり、UEは常にC-RNTIを監視する必要がある)。
PTMレグとPTPレグとで設定されたスプリットMRB(オンラインセッション中に合意された)を想定すると、スプリットMRBのPTMレグの使用がアクティブ化又は非アクティブ化の対象となるかどうか、及びその詳細については更なる検討が必要である。
【0139】
モビリティの側面に関しては、RAN2は以下にリストされている基本原則のみに合意した。
R2は、これを必要とするサービスのMBS-MBSモビリティのロスレスなハンドオーバーをサポートすることを目的としている(シナリオの詳細は未定である。少なくともPTP-PTP)。
5G MBSサービスのロスレスなハンドオーバーをサポートするには、少なくともDL PDCP SNの同期と、ソースセルとターゲットセル間の継続性とがネットワーク側で保証されている必要がある。これを実現するための特定のアプローチの設計は、WG RAN3に関係する可能性がある。
ネットワーク側から、ソースgNBはデータをターゲットgNBに転送する場合があり、ターゲットgNBは転送データを配信する。一方、SN STATUS TRANSFERは、MBSデータのPDCPSNをカバーするように拡張する必要がある。次に、UEは、ターゲット設定に従って、ターゲットセルによってターゲットセル内のMBSを受信する。
UE側からは、PDCP状態報告もサポートされる場合がある。
【0140】
この付記では、合意されたアーキテクチャに基づく、つまりPDCPに固定されたスプリットMRBを使用した、サービス継続性を備えた動的なPTM/PTPの切り替えとモビリティの残りの問題について説明する。
【0141】
2.議論
3.スプリットMRB設定
PDCPに固定されたPTM/PTPの切り替えのアーキテクチャ、つまりスプリットMRBは、現在の合意に基づいて、
図17に示すように解釈できる。
【0142】
一般に、RRC再設定は、マルチキャストセッションを受信するための情報とともに、2つの論理チャネル(PTMレグ及びPTPレグ)を含むベアラ設定を提供するために使用されるとみなすことができる。RAN2は、「PTMレグとPTPレグとで設定されたスプリットMRB(オンラインセッションで合意されたもの)を想定する」と述べているが、1つのマルチキャスト無線ベアラに2つの論理チャネルを関連付ける設定は、動的なPTM/PTPの切り替えの準備としてRRC再設定で提供されることがすでに共通の理解になっていると思われる。
【0143】
所見1:1つのMRBに2つの論理チャネルを関連付ける設定は、動的なPTM/PTP切り替え動作に先立ち、RRC再設定によって提供されるというのが共通の理解であると思われる。
【0144】
4.動的なPTM/PTPの切り替え動作
5.シグナリング
スプリットMRBのPTMレグの使用は、アクティブ化又は非アクティブ化の対象となり得るかどうか、及びその詳細については、更なる検討が必要である。
【0145】
PTMレグ/PTPレグを有するスプリットMRBが設定されると、UEはPTMレグのG-RNTIとPTPレグのC-RNTIとの両方をモニタする必要がある。LTE SC-PTMでは、「SC-PTMの受信機会はユニキャストDRX方式から独立している」、つまり、DRXが別々になっている。G-RNTIは複数のUEで受信されるのに対し、C-RNTIはUE固有であり、2つのDRXの位置合わせは非常に難しいため、このコンセプトがNR MBSの基本となる可能性がある。これは、UEが常にG-RNTIを監視しなければならない場合、頻繁にウェイクアップする必要があることを意味し、さらなる電力消費の原因となる。一方、接続中のUEは、ユニキャスト受信のためにC-RNTI、すなわちC-DRXを監視する必要があるが、これはUEにとって追加の負担ではない。
【0146】
所見2:UEは、C-DRXと同じPTPレグの送信機会(すなわちC-RNTI)に加えて、LTE SC-PTMのSC-MTCH機会のようにPTMレグの送信機会(すなわちG-RNTI)でウェイクアップする必要がある。
【0147】
PTM/PTMを伴うMRB受信時、つまり切り替え動作時の選択肢は以下の4つである。
【0148】
選択肢1:アクティブ化/非アクティブ化ベースの切り替え
gNBは、DCI、MAC CE、又はRRC信号などによって、PTMレグの有効化/無効化をUEに指示する。この選択肢は、PTM又はPTPのいずれかを介したMBSデータ受信に加え、スプリットベアラ又はPDCPパケット重複のように、MBSデータを2つのレグを介して受信する場合、より柔軟に対応することができる。UEは、非アクティブ化されたPTMレグからの消費電力を低減することができる。NWの実装では、常に2つのレグをアクティブにしておくことを決定する可能性があり、以下の選択肢4の意図をカバーすることができることに留意する。
【0149】
選択肢2:切り替えオーダー/コマンドベース切り替え
gNBは、DCI、MAC CE、又はRRCシグナリングなどによって、UEにPTMレグとPTPレグの間の切り替えを指示する。この選択肢は、PTMレグの非アクティブ化による省電力化という点では、上記の選択肢1と同様であり、シンプルである。しかし、PDCPパケットの重複を含むスプリットベアラ的な動作には柔軟性に欠ける。この選択肢は、PTMレグとPTPレグ間の切り替えのみで、両方をアクティブ化することはできないと思われる。
【0150】
選択肢3:RRC再設定ベースの切り替え
gNBは、RRC再設定により、UEをPTM又はPTPのいずれかをMRBとして再設定する。つまり、PTMレグとPTPレグとを1つのMRBに関連付けない。つまり「ベアラタイプの変更」のようなもので、スプリットMRBアーキテクチャとは整合性がとれていない。また、この選択肢は、L3が関与するため、PTMとPTPとの切り替えをどれだけ「動的」に行えるかは疑問が残る。
【0151】
選択肢4:切り替えに基づくシグナリングなし
UEは、スプリットMRBに2つのレグが設定されている場合は常に、PTMレグとPTPレグとの両方からの受信を試行する必要がある。この選択肢は、gNBの観点から最大限のスケジューリングの柔軟性を確保するが、UEにとっては節電の機会がない。
【0152】
以上のことから、選択肢1は、スケジューリングの柔軟性、UEの消費電力、及びスプリットMRBアーキテクチャとの整合性の点で最も適した選択肢であると言える。選択肢4は、PTMレグが常にアクティブである場合、選択肢1のサブセットと見なすことができる。シグナリングレイヤについては、アクティブ化/非アクティブ化はほとんどDRXの動作に関連しているため、MAC CEは容易である可能性がある。したがって、RAN2は、PTMレグがMAC CEを介してアクティブ化/非アクティブ化できることに合意すべきである。
【0153】
提案1:動的なPTM/PTP切り替えのために、RAN2は、スプリットMRBのPTMレグをアクティブ/非アクティブにするMAC CEを導入することに合意すべきである。
【0154】
動的な切り替えとは異なる「ベアラタイプ変更」について、ベアラタイプ変更には以下のようなケースがあると考えられる。
ケース1:PTMのみMRB←→PTPのみMRB
ケース2:スプリットMRB←→PTMのみMRB
ケース3:スプリットMRB←→PTPのみMRB
【0155】
このようなベアラタイプ変更の場合、RRC再設定、つまり選択肢3を使用するのが容易である。
【0156】
提案2:PTMのみMRB、PTPのみMRB、及びスプリットMRB間のベアラタイプ変更については、RAN2はRRC再設定を使用することに合意すべきである。
【0157】
6.PDCPの行動
7.状態変数の初期値
RAN2は、RLC UMモードに加え、スプリットMRBのPTPレグのRLC AMモードをサポートすることに合意した。また、「RLC-AMはPTMに対応していない(MBS R17 WI用)」ため、L2信頼性は動的なPTM/PTP切り替えにのみ依存するというのが共通認識となっている。そのため、MBSデータ受信開始時や動的なPTM/PTP切り替え時のパケットロスをいかに少なくするかは、サービス継続のために検討する価値がある。
【0158】
図17に示すように、既存のPDCP機能ビューを再利用すれば、PDCP SNは、PTMレグとPTPレグとで共通である。PTMレグは複数のUEで使用されるため、PDCP SNはUE固有でない可能性があり、PTMレグとPTPレグとの両方に影響する。これは、UEがマルチキャストセッションに遅れて参加する場合、最初に受信したMBSデータがPTMレグとPTPレグとのどちらから来るかに関係なく、各状態変数の初期値を常に「0」にすることはできないことを意味している。つまり、UEが最初に受信するPDCP SNは、今回のユニキャスト送信で想定していない任意の値であってもよい。また、状態変数が初期値に設定されるため、あるUEのPDCP再確立が他のすべてのUEに影響を与える可能性がある。受信ウィンドウで予期せぬ動作、つまりウィンドウ外のPDCP PDUを破棄することになる。ハンドオーバーのシナリオでも同じ問題が存在する可能性があることが指摘されている。
【0159】
所見3:マルチキャストセッションに後発で参加し、スプリットMRBが設定されているUEの場合、最初に受信したPDCP PDUのSNは、PTMレグ又はPTPレグに関わらず初期値(すなわち「0」)ではないことが確認されている。
【0160】
この問題を解決するために、以下の選択肢が提案されている。
【0161】
選択肢A:gNBは、COUNTの初期値、又はRX_NEXT及びRX_DELIVをUEに通知する。
この選択肢は、UEが既存のメカニズムでMBSデータの最初の送信を受信できるように、gNBからの情報に基づいて受信ウィンドウに関する初期値を単に変更するものである。しかし、PDCPレイヤの観点からは、切り替えの遅延、無線状態の悪化、RLC再構築ウィンドウの範囲外など、gNBが意図した最初の送信をUEが常に正常に受信できるかは疑問がある。この場合、この選択肢がどのように機能するかは不明確である。
【0162】
選択肢B:gNBはUEに初期HFNを通知し、UEは最初に受信したPDCP PDUから初期HFNとSNを推測する。
SN部については、Rel-16のV2Xメカニズムと同様の選択肢、すなわち、以下の通りである。「RX_NEXTのSN部の初期値は、(x+1)modulo(2[sl-PDCP-SN-Size])であり、xは最初に受信したPDCPデータPDUのSNである」、「NR sidelink communication for broadcast and groupcastでは、RX_DELIVのSN部の初期値は(x-0.5×2[sl-PDCP-SN-Size-1])modulo(2[sl-PDCP-SN-Size]),ただしxは最初に受信したPDCP Data PDUのSNである」。
【0163】
HFN部分については、Rel-16 V2Xメカニズムでは、セキュリティのためにHFNを使用しないため、送信機と受信機の同期を必要としない。すなわち、「注:RX_DELIVの初期値を正の値にするように、RX_NEXTのHFNを選択するのはUE実装次第」とされている。NR MBSについては、「RAN2は、RAN2でセキュリティの側面を議論する前に、SA3がMBSのセキュリティに関する研究を完了させるのを待つと回答する」。したがって、RAN2は、SA3がセキュリティに関する研究を完了するまで、HFN部分の議論を延期すべきである。
【0164】
以上のことから、選択肢Bを基本として、さらに議論を深めていくべきである。ブロードキャスト及びグループキャストのRel-16サイドリンク通信によると、NR MBSのセキュリティに関するSA3の進展を考慮すると、RAN2は少なくとも、UEがMBSデータの最初の受信PDCP PDUから状態変数の初期値を設定することに合意すべきである。
【0165】
提案3:RAN2は、PTMレグ又はPTPレグに関係なく、UEが最初に受信したMBSデータからRX_NEXT及びRX_DELIVのSN部分の初期値を設定することに合意すべきである。HFNの部分がgNBから通知されるかどうかは、SA3の進捗次第あり、更なる検討が必要である。
【0166】
8.同時受信とUE支援情報
特に、PTP(レグ)は信頼性が要求されるサービスではRLC AMで設定され、ロスレスなモビリティと同様にサービス継続のためにロスレスな切り替えは重要である。提案1に合意する場合、UEはPTMレグとPTPレグとの両方からの同時受信をサポートする必要がある。つまり、既存のPDCPパケット重複と同様に、2つのレグを同時にアクティブ化できる。これは、PTMレグが複数のUEによって受信されるため、特定のUEにとって最適なMCSではないことが容易に起こり得るためである。そのため、RAN2は動的なPTM/PTP切り替え時に、少なくとも一定期間同時受信の使用を採用することに合意すべきである。
【0167】
提案4:RAN2は、動的なPTM/PTP切り替え後の一定期間、UEがPTMレグ及びPTPレグの両方からの同時受信をサポートすることに合意すべきである。
【0168】
提案3と提案4が合意された場合、UEがPTMレグを介してどのPDCP SNを正常に受信し始めたかどうかをgNBが実際に知らない可能性がある。PTPからPTMへの切り替える場合、gNBは、どのPDCP PDUをPTPレグで送信すべきか、また、いつPTPレグの送信を停止できるかがわからない場合がある。この問題を解決するために、UEがPTM受信に成功したことをgNBに通知し、PTPレグを通じて送信することが提案されている。ただし、UEがPDCP SN情報も同じメッセージに含めるべきかどうかは不明確である。
【0169】
所見4:PTPからPTMへ切り替える場合、gNBは、どのPDCP PDUからPTPレグの送信を維持する必要があるか、又はUEがどのPDCP PDUからPTMレグによる受信を正常に開始するかを知らない場合がある。
【0170】
同様に、PTMからPTPへ切り替える場合、UEがPTMレグを介してどのPDCP SNを正常に受信したかをgNBが知らない可能性がある(特に、UEの無線状態が悪い場合)。これは、PTPレグの開始時にどのPDCP PDUを使用すべきかをgNBが知らない可能性があることを意味する。
【0171】
所見5:PTMからPTPへ切り替える場合、gNBは、PTPレグがどのPDCP PDUから送信を開始する必要があるか、又はUEがPTMレグを介してどのPDCP PDUを正常に受信したかを知らない場合がある。
【0172】
そのため、UEは動的なPTM/PTP切り替え時に、PTPレグを介してSN情報をgNBに通知することが検討される。PTMとPTPとの間の動的な切り替え時にUEがSN情報を報告する場合、PDCP制御PDU、つまり、FMC(最初のPDCP SDUが見つからない)及び選択肢としてビットマップ(後続のPDCP SDUが見つからないか正しく受信されているかを示す)を含むPDCP状態報告を再利用することは容易である。一方、UEがPTMレグを介して最初/最後のPDCP PDU受信に成功したSNを報告することも選択肢の1つである。したがって、PTMとPTPとの動的な切り替え時にUEが報告する内容については、さらなる議論が必要である。
【0173】
上記のいずれの場合(すなわち、PTPからPTMへ切り替える場合及びPTMからPTPへ切り替える場合)でも、動的な切り替え(例えば、MAC CEのアクティブ化/非アクティブ化)時に、サービス継続のためのPDCP SN情報を含むPDCP制御PDUをトリガする必要がある。
【0174】
提案5:RAN2は、サービス継続のために、UEが動的な切り替え時にPDCP SN情報を含むPDCP 制御PDUを送信するかどうかを検討すべきである。PDCP情報報告が再利用可能かどうかについては、更なる検討が必要である。
【0175】
もう一つは、提案5のようなロスレスな動的切り替えと同様のロスレスなベアラタイプの変更が必要かという点である。RLC AMを伴うPTP(レグ)を含むベアラタイプの変更は、サービス継続性、ロスレスなモビリティの観点から、動的な切り替えと同様の信頼性が必要であると考えられる。そのため、RAN2は、ロスレスなベアラタイプの変更をサポートするかどうかを検討すべきである。サポートする場合は、提案5と同様にUE支援情報としてPDCP制御PDUを再利用すべきである。
【0176】
提案6:RAN2は、RRC再設定を伴うロスレスなベアラタイプの変更、すなわち提案5のようなPDCP制御PDUによるロスレスな動的切り替えと同じ解決策が適用可能かどうかを議論すべきである。
【符号の説明】
【0177】
1 :移動通信システム
10 :RAN
20 :CN
100 :UE
110 :受信部
120 :送信部
130 :制御部
200 :gNB
210 :送信部
220 :受信部
230 :制御部
240 :バックホール通信部