(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083496
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】電気外科用電極
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061968
(22)【出願日】2024-04-08
(62)【分割の表示】P 2022500309の分割
【原出願日】2021-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2020022896
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000229597
【氏名又は名称】日本パーカライジング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】萬 隆行
(72)【発明者】
【氏名】桂谷 涼子
(72)【発明者】
【氏名】梅原 徳次
(72)【発明者】
【氏名】野老山 貴行
(72)【発明者】
【氏名】村島 基之
(57)【要約】
【課題】動作部となり得る部分の温度の上がりすぎを抑制し得る電気外科用電極を提供することを課題とする。
【解決手段】生体組織の手術に使用される、高周波エネルギーを放出し得る主要体を備えた電気外科用電極であって、前記主要体の表面は、厚さ10μm以上の樹脂コーティングにより被覆されたコーティング部(A)と、厚さ1.0μm以下の酸化皮膜及び/若しくは樹脂コーティングにより被覆された又はコーティングされていない、領域(B)を有し、前記領域(B)は、前記主要体から生体組織へと高周波エネルギーを分散させ得る有効表面であり、 前記コーティング部(A)の面積(α1)に対する前記領域(B)の面積(β1)の比(β1/α1)が0.01以上0.5以下での範囲内である、電気外科用電極。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の手術に使用される、高周波エネルギーを放出し得る主要体を備えた電気外科用電極であって、
前記主要体の表面は、厚さ10μm以上の樹脂コーティングにより被覆されたコーティング部(A)と、厚さ1.0μm以下の酸化皮膜及び/若しくは樹脂コーティングにより被覆された又はコーティングされていない、領域(B)を有し、
前記領域(B)は、前記主要体から生体組織へと高周波エネルギーを分散させ得る有効表面であり、
前記コーティング部(A)の面積(α1)に対する前記領域(B)の面積(β1)の比(β1/α1)が0.01以上0.5以下での範囲内である、電気外科用電極。
【請求項2】
生体組織の手術に使用される、高周波エネルギーを放出し得る主要体を備えた電気外科用電極であって、
前記主要体の表面は、厚さ10μm以上の樹脂コーティングにより被覆されたコーティング部(A)と、厚さ1.0μm以下の酸化皮膜及び/若しくは樹脂コーティングにより被覆された又はコーティングされていない、領域(B)を有し、
前記領域(B)は、前記主要体において生体組織と最も近接して生体組織を切開及び/又は止血する動作領域を含み、
前記領域(B)は、前記動作領域の全部又は一部に接する面を含み、前記面は前記動作領域に接する線と、該線から該面に沿って垂直に少なくとも2.0mm平行移動させた線とで囲まれた領域を含む、電気外科用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器として使用され、生体組織の手術に使用される電気外科用器具の電気外科用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術では、本体から発生させた高周波電流を電気外科用電極から生体組織へと分散させることで、止血(凝固)したり、切開したりすることができる電気外科用器具(いわゆる電気メス)が必要不可欠になっている。電気メスの使用によって生じる問題としては、電気メスの先端に生体組織等の炭化物が付着する「焼痂」の問題が知られており、当該問題に対して、各電極が外科手術用の適当な電源に接続できる複数の電極を大量生産する方法であって、導電性のストック材料を用意する工程を含み、前記ストック材料は複数の電極ブランクを形成できる形状および寸法を有し、前記ストック材料の少なくとも一部に非付着性層をコーティングする工程と、コーティングされた複数の電極ブランクを形成する工程とを更に含むことを特徴とする方法、が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電気外科用電極は非付着性層を有することから、電気外科用電極表面から熱が放出されにくく、電気外科用電極の先端部分、すなわち生体組織と最も近接して生体組織を切開及び/又は止血する動作領域の温度が上がりすぎる場合があった。電気外科用電極の先端部分温度が上がりすぎると、動作領域から患部に必要以上の熱が伝わることから過剰な熱侵襲が生じ、健全な組織を損傷するという問題があった。
本発明は、このような問題を解決するものであり、動作領域の温度の上がりすぎを抑制し得る電気外科用電極を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討を重ね、生体組織の手術に使用される、高周波エネルギーを放出し得る主要体を備えた電気外科用電極であって、前記主要体の表面は、厚さ10μm以上の樹脂コーティングにより被覆されたコーティング部(A)と、厚さ1.0μm以下の酸化皮膜及び/若しくは樹脂コーティングにより被覆された又はコーティングされていない、領域(B)を有し、前記領域(B)は、前記主要体から生体組織へと高周波エネルギーを分散させ得る有効表面であり、前記コーティング部(A)の面積(α1)に対する前記領域(B)の面積(β1)の比(β1/α1)が0.01以上0.5以下での範囲内である、電気外科用電極により、課題を解決できることを見出した。
また、別の方法として、生体組織の手術に使用される、高周波エネルギーを放出し得る主要体を備えた電気外科用電極であって、前記主要体の表面は、厚さ10μm以上の樹脂コーティングにより被覆されたコーティング部(A)と、厚さ1.0μm以下の酸化皮膜及び/若しくは樹脂コーティングにより被覆された又はコーティングされていない、領域(B)を有し、前記領域(B)は、前記主要体において生体組織と最も近接して生体組織を切開及び/又は止血する動作領域を含み、前記領域(B)は、前記動作領域の全部又は一部に接する面を含み、前記面は前記動作領域に接する線と、該線から該面に沿って垂直に少なくとも2.0mm平行移動させた線とで囲まれた領域を含む、電気外科用電極によ
り、課題を解決できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下のものを含み得る。
(1)生体組織の手術に使用される、高周波エネルギーを放出し得る主要体を備えた電気外科用電極であって、
前記主要体の表面は、厚さ10μm以上の樹脂コーティングにより被覆されたコーティング部(A)と、厚さ1.0μm以下の酸化皮膜及び/若しくは樹脂コーティングにより被覆された又はコーティングされていない、領域(B)を有し、
前記領域(B)は、前記主要体から生体組織へと高周波エネルギーを分散させ得る有効表面であり、
前記コーティング部(A)の面積(α1)に対する前記領域(B)の面積(β1)の比(β1/α1)が0.01以上0.5以下での範囲内である、電気外科用電極。
(2)生体組織の手術に使用される、高周波エネルギーを放出し得る主要体を備えた電気外科用電極であって、
前記主要体の表面は、厚さ10μm以上の樹脂コーティングにより被覆されたコーティング部(A)と、厚さ1.0μm以下の酸化皮膜及び/若しくは樹脂コーティングにより被覆された又はコーティングされていない、領域(B)を有し、
前記領域(B)は、前記主要体において生体組織と最も近接して生体組織を切開及び/又は止血する動作領域を含み、
前記領域(B)は、前記動作領域の全部又は一部に接する面を含み、前記面は前記動作領域に接する線と、該線から該面に沿って垂直に少なくとも2.0mm平行移動させた線とで囲まれた領域を含む、電気外科用電極。
(3)前記領域(B)は、前記主要体において生体組織と最も近接して生体組織を切開及び/又は止血する動作領域を含み、
前記領域(B)は、前記動作領域の全部又は一部に接する面を含み、前記面は前記動作領域に接する線と、該線から該面に沿って垂直に少なくとも2.0mm平行移動させた線とで囲まれた領域を含む、上記(1)に記載の電気外科用電極。
(4)前記主要体は、主面であるおもて面と、該おもて面と対向する裏面と、該おもて面と該裏面とに挟持されて存在する側面と、を有し、該側面に前記領域(B)を含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載の電気外科用電極。
(5)前記主要体は環状構造を有する、上記(1)~(3)のいずれかに記載の電気外科用電極。
(6)前記主要体は棒状構造を有し、該棒状構造の延伸先端にニードル構造を含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載の電気外科用電極。
(7)前記主要体は球状構造を有する、上記(1)~(3)のいずれかに記載の電気外科用電極。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、動作領域となり得る部分の温度の上がりすぎを抑制し得る電気外科用電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】電気外科用電極(電気メス)の一例(ブレード電極)を示す模式図である。
【
図2】電気外科用電極のコーティング部(A)と領域(B)の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態は、生体組織の手術に使用される、高周波エネルギーを放出し得る主要体を備えた電気外科用電極である。そして、前記主要体の表面は、厚さ10μm以上の樹脂コーティングにより被覆されたコーティング部(A)と、厚さ1.0μm以下の酸化
皮膜及び/若しくは樹脂コーティングにより被覆された又はコーティングされていない、領域(B)を有し、前記領域(B)は、前記主要体から生体組織へと高周波エネルギーを分散させ得る有効表面である。
【0010】
<電気外科用電極>
電気外科用電極は、いわゆる電気メスなどの電気外科用器具の先端に着脱可能に装着される電極であり、電極の主要体から生体組織へと高周波を放出させることで、止血(凝固)したり、生体組織を切開したりすることができる。電気外科用電極は、導電性材料で構成される。より具体的には、鉄系金属材料、亜鉛めっき系金属材料、アルミニウム系金属材料、マグネシウム系金属材料、ニッケル系金属材料、チタン系金属材料、ジルコニウム系金属材料、銅系金属材料、錫系金属材料、タングステン系金属材料、クロム系金属材料、マンガン系金属材料、モリブデン系金属材料、コバルト系金属材料等を挙げることができるが、ステンレス鋼であることがより好ましい。電気外科用電極が装着される電気外科用器具は、典型的には、モノポーラメスやバイポーラメスなどの電気メス、腹腔鏡などがあげられる。モノポーラメスとしては、ブレード型、環状構造型、先端にニードル構造を有する棒状構造型、球状構造型等の形状を有するものがあげられる。電気外科用電極の一例の概略図を
図1に示す。
【0011】
図1は、先端部分が板状である、ブレード型の電気外科用電極の例を示す模式図である。
電気外科用電極10は、図示しない電気外科用器具本体と着脱可能な部材である。電気外科用電極10は、電気外科用器具本体と電気的に接続される電気的接続部13と、生体組織に近接させて高周波を放出する主要体11と、該電気的接続部13と主要体11とを繋ぐ中間部12と、から構成される。
【0012】
図2は、
図1の主要体11を拡大した拡大図である。本実施形態では主要体11の表面は、厚さ10μm以上の樹脂コーティングにより被覆されたコーティング部(A)111(図中ハッチング領域)と、厚さ1.0μm以下の酸化皮膜及び/若しくは樹脂コーティングにより被覆された又はコーティングされていない、領域(B)112(図中ドット領域)と、を含む。
【0013】
主要体11は、主面であるおもて面と、該おもて面と対向する裏面と、該おもて面と該裏面とに挟まれて存在する先端部(先端面)及び側面部(両側面)と、を有する略矩形形状である。そして、該先端部及び側面部の一部に厚さ1.0μm以下の酸化皮膜及び/若しくは樹脂コーティングにより被覆された又はコーティングされていない、領域(B)を含む。なお、領域(B)は先端部及び側面部に存在することが好ましいが、先端部及び側面部のみに限られず、おもて面及び/又は裏面の一部にあってもよい。具体的には、先端部112aと、側面部のうち該先端部と連続する領域112bとが、領域(B)となり得る。なお、本実施形態においては、領域112bは側面部の一部としているが、側面部の全部であってもよい。
また、先端部112aが、生体組織と最も近接し、生体組織を切開及び止血する動作領域となり得る。なお、
図2に示すブレード型の電気外科用電極では主要体は矩形であるが、これに限られず、おもて面と裏面と先端部と側面部とを有する形状であればよい。また、おもて面と裏面との大きさ(面積)は同じであってもよく、異なっていてもよい。本明細書において主面とは、最も面積が大きな平面をいう。
【0014】
本実施形態では、前記コーティング部(A)111の面積(α1)に対する前記領域(B)112の面積(β1)の比(β1/α1)が0.01以上0.5以下の範囲内である。
主要体11の表面において、(β1/α1)の値を上記範囲とすることで、動作領域と
なり得る部分の温度の上がりすぎを抑制し得る電気外科用電極となる。(β1/α1)の範囲は、好ましくは0.027以上であり、また好ましくは0.476以下である。
【0015】
前記コーティング部(A)111は、厚さ10μm以上の樹脂コーティングにより被覆されてもよい。樹脂コーティングとしては、テフロン(登録商標)、PTFEなどのフッ素含有樹脂やシリコーン樹脂などがあげられ、付着防止機能(防汚機能)を有することが好ましい。樹脂コーティングは、単層であっても複数の層の積層であってもよく、複数の層の積層である場合には複数の層は同じ樹脂であっても、異なっていてもよい。また、樹脂コーティングと主要体との間に、酸化皮膜を有してもよい。
樹脂コーティングは、フッ素含有樹脂やシリコーン樹脂を含有する樹脂組成物と、主要体11とを接触させることで形成できる。樹脂組成物は、充填剤、可塑剤、離型剤、架橋剤などの添加剤を含んでもよい。樹脂コーティングの厚さは、20μm以上であってよく、30μm以上であってよい。なお上限は特に限定されないが、1mm以下であってよい。
【0016】
前記領域(B)は、厚さ1.0μm以下の酸化皮膜及び/若しくは樹脂コーティングにより被覆された又はコーティングされていない領域であり、領域(B)は前記主要体から生体組織へと高周波エネルギーを分散させ得る有効表面である。そのため、電気外科用電極を装着した電気外科用器具の使用時において、生体組織と最も近接し、生体組織を切開及び/又は止血する動作領域を含む。
領域(B)が有し得る酸化皮膜及び/又は樹脂コーティングは、樹脂コーティング(A)と比較して極めて薄く、その厚さは1.0μm以下であるが、0.9μm以下であってよく、0.8μm以下であってよく、0.7μm以下であってよく、0.6μm以下であってよく、0.5μm以下であってよく、0.4μm以下であってよく、0.3μm以下であってよく、0.2μm以下であってよく、0.1μm以下であってよく、0.05μm以下であってよい。
【0017】
別の実施形態では、前記領域(B)は、前記主要体において生体組織と最も近接して生体組織を切開及び/又は止血する動作領域の全部又は一部に接する面を含み、前記面は前記動作領域に接する線と、該線から該面に沿って垂直に少なくとも2.0mm平行移動させた線とで囲まれた領域を含み得る。このような範囲に領域(B)が存在することで、生体組織を切開及び/又は止血する動作領域周辺に熱がこもることで動作領域の温度が過剰に上昇することを防ぐことができる。好ましくは、領域(B)は、該線から該面に沿って垂直に少なくとも3.0mm平行移動させた線とで囲まれた領域を含み得る。
先に説明したように、前記領域(B)は先端部112aを含んでもよく、側面部の一部112bを含んでもよく、おもて面及び/又は裏面の一部を含んでもよいが、前記領域(B)は先端部112aを含むことが好ましく、更に側面部の一部112bを含むことが好ましく、更におもて面及び/又は裏面の一部を含むことが好ましい。すなわち、前記領域(B)となりえる部分の優先順位は、先端部112a、側面部の一部112b、おもて面と裏面、の順である。また、側面部、おもて面及び裏面においては、先端部側から領域(B)の一部が存在することが好ましい。
また、動作領域に接する線と、該線から動作領域を含む面に沿って垂直に少なくとも2.0mm平行移動させた線とで囲まれた領域は、厚さ1.0μm以下の酸化皮膜及び/若しくは樹脂コーティングにより被覆されてもよく、被覆されていなくてもよい。
【0018】
本発明の実施形態に係る電気外科用電極の主要体は、例えば次の方法により製造することができる。一例では、主要体に対し、脱脂処理、下地処理等を必要に応じて行った後、樹脂コーティング組成物中に主要体を浸漬して、主要体全面に樹脂コーティングを行う。その後、主要体のうち先端部及び側面部、必要に応じておもて面と裏面の所望の箇所を削ることで、製造することができる。脱脂処理、下地処理等は、酸化皮膜及び/又は樹脂コ
ーティングを形成できるものであれば特段限定されず、公知の方法を用いることができる。また、樹脂コーティング組成物は、フッ素系樹脂又はシリコーン系樹脂を含む樹脂組成物であれば特段限定されない。
【0019】
<主要体の形状>
主要体11の形状は特段限定されず、
図2に示す主要体11のブレード形状の他、環状型(ループ型)形状であってよく、ボール型形状であってよく、ニードル型形状であってよい。これらは電気メスのメス先電極として使用される電気外科用電極である。これ以外に、ワイヤL字フック型、ストレートスパチュラ型、ワイヤJ字フック型、シリンジ型、など、腹腔鏡に装着される電気外科用電極であってよい。ここまで例示した主要体はモノポーラ型電気外科用電極であるが、バイポーラ型電気外科用電極であってよい。
【0020】
<電気的接続部>
電気的接続部13は、電気外科用電極10において、電気外科用器具本体と電気的に接続される部位である。電気的接続部13は電気外科用器具本体に着脱可能であり、通常、電気的接続部13と電気外科用器具本体とが嵌め合い構造などにより嵌合できるよう構成される。なお、電気的接続部もまた導電性材料で構成され、構成材料は主要体11と同じであっても、異なってもよい。
【0021】
<中間部>
中間部12は、主要体11と電気的接続部13とを接続する部材である。主要体11へ通電するために導電性材料で構成される必要があるが、その形状、長さ等は特段限定されない。
中間部12は、被覆物14を有してもよい。被覆物14は、絶縁性を有する樹脂を含む組成物の硬化物である。また、中間部12と被覆物14が接していれば、被覆物14の大きさ、厚さ、形状なども特段限定されない。
【実施例0022】
以下、実施例によって本発明の作用効果を具体的に示す。但し、下記実施例に関する記載は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0023】
<主要体の製造>
図1に示す、主要体11が板状であるブレード型の電気外科用電極を準備した。準備した電気外科用電極の材料及びブレード部分のサイズは以下のとおりとした。
外科用電極の材料:ステンレス鋼 SUS304
ブレード部分のサイズ:板厚0.3mm 長さ17.0mm 幅2.5mm 面積0.00009595m
2
電気外科用電極のブレード部分を、エタノール(純正化学(株)製一級)に浸漬させ、超音波を10分かけることで表面上の油分や汚れを取り除いた。その後、ブレード部分を100℃で10分乾燥させて付着したエタノールを除去した。
【0024】
油分や汚れを取り除いたブレード部分に、以下のディスペンサーを用いて、シリコーン組成物(信越化学工業社製、製品名ES-1002T)を塗布し、その後、乾燥温度150℃で30分乾燥させ、膜厚70μmのシリコーンコーティングを有する電気外科用電極を得た。
ディスペンサー(卓上型ロボット):武蔵エンジニアリング社製、製品名;ML-808GX、SM4000MEGAX-3A-SS
【0025】
<評価試験>
主要体11を被覆したシリコーンコーティングのうち、先端部(
図2でいうところの1
12a)のコーティングを、カッターナイフを用いて削ぎ落とした。この状態の主要体11を比較例1とした。次に側面部の一部(
図2でいうところの112b)のコーティングについて、先端部112aからの距離を表1に示す距離となるようにカッターナイフを用いてそぎ落とし、実施例1~6とした。なお、側面部のコーティングのそぎ落としは、対向する両面で行った。
次に実施例6で作成した主要体11のおもて面及び裏面のコーティングについて、先端部からの距離を表1に示す距離となるようにカッターナイフを用いてそぎ落とし、実施例7~10及び比較例2~3とした。更に、主要体11のコーティングを全くそぎ落としていない電気外科用電極を比較例4とした。
【0026】
実施例1~10及び比較例1~4の外科用電極について、最大温度及び温度上昇を測定した。具体的には、豚血液が入った容器に、主要体11(先端部から17mm)を挿入し、電源出力75Wにて5秒間放電した時の主要体の先端部の温度を赤外線カメラにて計測した。主要体の最大温度は、主要体11を5秒間計測した間の最大温度とした。また、1秒あたりの温度上昇は、計測した温度変化から単位時間あたりの昇温速度を算出した。
評価基準は以下のとおりとした。結果を表1に示す。
<5秒間放電時の主要体の最大温度>
◎:270℃以下
〇:270℃超320℃以下
△:320℃超350℃以下
×:350℃超
<1秒あたりの温度上昇>
◎:90℃/s以下
〇:90℃/s超100℃/s以下
△:100℃/s超120℃/s以下
×:120℃/s超
【0027】
【0028】
なお、本発明については、具体的な実施例を参照して詳細に説明されるが、本発明の趣旨及び範囲から離れることなく、種々の変更、改変を施すことができることは当業者には明らかである。