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特開2024-83502同位体選択的MS/MSを用いたMRMピーク純度の査定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083502
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】同位体選択的MS/MSを用いたMRMピーク純度の査定
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20240614BHJP
   H01J 49/00 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
G01N27/62 D
H01J49/00 400
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024062123
(22)【出願日】2024-04-08
(62)【分割の表示】P 2020517087の分割
【原出願日】2018-09-25
(31)【優先権主張番号】62/565,140
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】イブ ル ブランク
(57)【要約】
【課題】同位体選択的MS/MSを用いたMRMピーク純度の査定の提供。
【解決手段】着目化合物に関する第1のMRM遷移測定値内の干渉が、第1のMRM遷移内に前駆イオンの同位体を含む、第2のMRM遷移を使用することによって判定される。両方の遷移は、同一のプロダクトイオンを含む。第1の強度が、第1のMRM遷移に関して測定され、第2の強度が、第2のMRM遷移に関して測定される。第1の強度と第2の強度の比率が、計算される。第1の前駆イオンと第2の前駆イオンの数の理論比が、それらの同位体関係に従って計算される。比率と理論比との間の差異が、計算され、閾値と比較される。差異が閾値未満である場合、第1のMRM遷移の第1の強度は、着目化合物のための干渉を含むものとして識別される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、その内容全体が、参照することによって本明細書に組み込まれる、2017年9月29日に出願された、米国特許出願第62/565,140号の利益を主張する。
【0002】
(導入)
本明細書における教示は、質量分析計によって行われる多重反応モニタリング(MRM)測定値が、干渉を含むかどうかを判定するためのシステムおよび方法に関する。より具体的には、本明細書における教示は、第1の前駆イオンの、第1のプロダクトイオンへの第1の遷移に関する、第1のMRM測定値を得るため、第1の前駆イオンの同位体である第2の前駆イオンの、同一の第1のプロダクトイオンへの第2の遷移に関する、第2のMRM測定値を得るため、および2つの測定値の比率を、第1の前駆イオンと第2の前駆イオンの理論同位体比と比較し、第1のMRM測定値が、干渉を含むかどうかを判定するための、システムならびに方法に関する。本明細書のシステムおよび方法は、図1のコンピュータシステム等の、プロセッサ、コントローラ、またはコンピュータシステムと併せて実施されることができる。
【背景技術】
【0003】
(背景)
多くの用途において、MRM比は、液体クロマトグラフィピーク、すなわち、LCピークの純度を査定するために使用される、重要なパラメータである。これは、典型的には、それぞれが、分析物毎に異なるプロダクトイオンを含む、2つ以上のMRM信号を監視し、MRM比を、標準または分析物に関して取得されるデータのライブラリと比較することによって実施される。本プロセスでは、同一の前駆イオンが、単位分解能(またはより低い分解能)においてMRM毎に選択され、複数の異なるプロダクトイオンが、異なるMRMのそれぞれにおいて使用される。本シナリオでは、複数のMRM測定値の相関が、分析物の信号が純粋であるかどうかを判定することにおいて重要である。本アプローチは、小分子に関して幅広く使用され、近年では、ペプチドに関しても使用されている。
【0004】
本シナリオの1つの欠点は、これが、標準のセットが分析物毎に取得されることも要求することである。標準はまた、衝突誘起解離(CID)の変動性を説明するために使用される、各質量分析システムにも固有である必要がある。言い換えると、本技法は、質量分析システム毎の、各分析物の標準サンプルに関する測定値のライブラリの収集に依存している。
【0005】
結果として、標準サンプルから構築されるライブラリとの比較に依存しない、MRM測定値内の干渉を判定するためのシステムおよび方法の必要性が、存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要約)
着目化合物に関するMRM遷移測定値が、干渉を含むかどうかを判定するためのシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品が、提供される。干渉は、着目化合物に関するMRM遷移の強度と、着目化合物に関する別のMRM遷移の強度の比率を計算することによって判定される。2つのMRM遷移は、異なる前駆イオンを含む。一方の前駆イオンは、他方の前駆イオンの同位体である。両方のMRM遷移は、同一のプロダクトイオンを含む。前駆イオンの数とその同位体の数の理論比が、それらの同位体関係に従って計算される。比率と理論比との間の差異が、計算される。本差異が、閾値と比較される。差異が閾値未満である場合、MRM遷移は、着目化合物のための干渉を含むものとして識別される。
【0007】
本システムは、タンデム質量分析計と、プロセッサとを含む。タンデム質量分析計は、イオン源デバイスと、質量フィルタと、断片化デバイスと、質量分析器とを含む。タンデム質量分析計は、着目化合物をイオン化する、イオン源デバイスからイオンビームを受光する。質量フィルタは、イオンビームから前駆イオンの同位体を分解させることが可能である、質量選択ウィンドウを生産するように適合される。タンデム質量分析計は、質量フィルタを使用してMRM遷移の前駆イオンを選択し、断片化デバイスを使用して前駆イオンを断片化し、質量分析器を使用してMRM遷移のプロダクトイオンの強度を測定することによって、MRM遷移の強度を測定するように適合される。
【0008】
本出願人の教示のこれらおよび他の特徴が、本明細書に記載される。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
着目化合物に関する多重反応モニタリング(MRM)遷移測定値が干渉を含むかどうかを判定するためのシステムであって、
着目化合物をイオン化し、1つ以上の前駆イオンのイオンビームを生産する、イオン源デバイスと、
質量フィルタと、断片化デバイスと、質量分析器とを含み、かつ前記イオン源デバイスから前記イオンビームを受光する、タンデム質量分析計であって、前記質量フィルタは、前記イオンビームから前駆イオンの同位体を分解させることが可能である、質量選択ウィンドウを生産するように適合され、前記タンデム質量分析計は、前記質量フィルタを使用して前記MRM遷移の前駆イオンを選択し、前記断片化デバイスを使用して前記前駆イオンを断片化し、前記質量分析器を使用して前記MRM遷移のプロダクトイオンの強度を測定することによって、MRM遷移の強度を測定するように適合される、タンデム質量分析計と、
前記タンデム質量分析計と通信するプロセッサであって、前記プロセッサは、
前記タンデム質量分析計に、第1の前駆イオンと、第1のプロダクトイオンとを含む、第1のMRM遷移の第1の強度を測定するように命令することと、
前記タンデム質量分析計に、第2の前駆イオンと、同一の第1のプロダクトイオンとを含む、第2のMRM遷移の第2の強度を、前記第1のMRM遷移として測定するように命令することであって、前記第2の前駆イオンは、前記第1の前駆イオンの同位体である、ことと、
前記第1の強度と前記第2の強度の比率を計算することと、
第1の前駆イオンと前記第2の前駆イオンの数の理論比を、それらの同位体関係に従って計算することと、
前記比率と前記理論比との間の差異を計算することと、
前記差異を閾値と比較することと、
前記差異が前記閾値未満である場合、前記第1のMRM遷移の前記第1の強度を、前記着目化合物のための干渉を含むものとして識別することと
を行う、プロセッサと
を備える、システム。
(項目2)
前記質量フィルタは、0.2m/z未満の幅の質量選択ウィンドウを生産するように適合される、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記質量フィルタは、0.15m/z未満の幅の質量選択ウィンドウを生産するように適合される、項目1に記載のシステム。
(項目4)
前記質量フィルタは、四重極を備える、項目1に記載のシステム。
(項目5)
前記質量フィルタは、イオントラップを備える、項目1に記載のシステム。
(項目6)
前記質量フィルタは、ノッチフィルタを備える、項目1に記載のシステム。
(項目7)
前記質量フィルタは、ロッドの双曲線セットを備える、項目1に記載のシステム。
(項目8)
着目化合物に関する多重反応モニタリング(MRM)遷移測定値が干渉を含むかどうかを判定するための方法であって、
プロセッサを使用して、タンデム質量分析計に、イオンビームから、第1の前駆イオンと、第1のプロダクトイオンとを含む、着目化合物に関して、第1のMRM遷移の第1の強度を測定するように命令することであって、前記タンデム質量分析計は、質量フィルタと、断片化デバイスと、質量分析器とを含み、かつイオン源デバイスから前記イオンビームを受光し、前記質量フィルタは、前記イオンビームから前駆イオンの同位体を分解させることが可能である、質量選択ウィンドウを生産するように適合され、前記タンデム質量分析計は、前記質量フィルタを使用して前記MRM遷移の前駆イオンを選択し、前記断片化デバイスを使用して前記前駆イオンを断片化し、前記質量分析器を使用して前記MRM遷移のプロダクトイオンの強度を測定することによって、MRM遷移の強度を測定するように適合され、前記イオンビームは、前記着目化合物をイオン化する、イオン源デバイスによって生産される、ことと、
前記プロセッサを使用して、前記タンデム質量分析計に、前記イオンビームから、第2の前駆イオンと、同一の第1のプロダクトイオンとを含む、前記着目化合物に関して、第2のMRM遷移の第2の強度を、前記第1のMRM遷移として測定するように命令することであって、前記第2の前駆イオンは、前記第1の前駆イオンの同位体である、ことと、
前記プロセッサを使用して、前記第1の強度と前記第2の強度の比率を計算することと、
前記プロセッサを使用して、第1の前駆イオンと前記第2の前駆イオンの数の理論比を、それらの同位体関係に従って計算することと、
前記プロセッサを使用して、前記比率と前記理論比との間の差異を計算することと、
前記プロセッサを使用して、前記差異を閾値と比較することと、
前記差異が前記閾値未満である場合、前記プロセッサを使用して、前記第1のMRM遷移の前記第1の強度を、前記着目化合物のための干渉を含むものとして識別することと
を含む、方法。
(項目9)
前記質量フィルタは、0.2m/z未満の幅の質量選択ウィンドウを生産するように適合される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記質量フィルタは、0.15m/z未満の幅の質量選択ウィンドウを生産するように適合される、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記質量フィルタは、四重極を備える、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記質量フィルタは、イオントラップを備える、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記質量フィルタは、ノッチフィルタを備える、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記質量フィルタは、ロッドの双曲線セットを備える、項目1に記載の方法。
(項目15)
非一過性かつ有形のコンピュータ可読記憶媒体を備えるコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータ可読記憶媒体のコンテンツは、着目化合物に関する多重反応モニタリング(MRM)遷移測定値が干渉を含むかどうかを判定するための方法を実施するように、プロセッサ上で実行されている命令を伴うプログラムを含む、前記方法は、
システムを提供することであって、前記システムは、1つ以上の明確に異なるソフトウェアモジュールを備え、前記明確に異なるソフトウェアモジュールは、測定モジュールと、分析モジュールとを含む、ことと、
タンデム質量分析計に、前記測定モジュールを使用して、イオンビームから、第1の前駆イオンと、第1のプロダクトイオンとを含む、着目化合物に関して、第1のMRM遷移の第1の強度を測定するように命令することであって、前記タンデム質量分析計は、質量フィルタと、断片化デバイスと、質量分析器とを含み、かつイオン源デバイスから前記イオンビームを受光し、前記質量フィルタは、前記イオンビームから前駆イオンの同位体を分解させることが可能である、質量選択ウィンドウを生産するように適合され、前記タンデム質量分析計は、前記質量フィルタを使用して前記MRM遷移の前駆イオンを選択し、前記断片化デバイスを使用して前記前駆イオンを断片化し、前記質量分析器を使用して前記MRM遷移のプロダクトイオンの強度を測定することによって、MRM遷移の強度を測定するように適合され、前記イオンビームは、前記着目化合物をイオン化する、イオン源デバイスによって生産される、ことと、
前記タンデム質量分析計に、前記測定モジュールを使用して、前記イオンビームから、第2の前駆イオンと、同一の第1のプロダクトイオンとを含む、前記着目化合物に関して、第2のMRM遷移の第2の強度を、前記第1のMRM遷移として測定するように命令することであって、前記第2の前駆イオンは、前記第1の前駆イオンの同位体である、ことと、
前記分析モジュールを使用して、前記第1の強度と前記第2の強度の比率を計算することと、
前記分析モジュールを使用して、第1の前駆イオンと前記第2の前駆イオンの数の理論比を、それらの同位体関係に従って計算することと、
前記分析モジュールを使用して、前記比率と前記理論比との間の差異を計算することと、
前記分析モジュールを使用して、前記差異を閾値と比較することと、
前記差異が前記閾値未満である場合、前記分析モジュールを使用して、前記第1のMRM遷移の第1の強度を、前記着目化合物のための干渉を含むものとして識別することと
を含む、コンピュータプログラム製品。
【0009】
当業者は、下記に説明される図面が、例示目的のみのためであることを理解するであろう。図面は、本教示の範囲をいかようにも限定することを意図されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本教示の実施形態が実装され得る、コンピュータシステムを図示するブロック図である。
【0011】
図2図2は、従来の多重反応モニタリング(MRM)において使用され、前駆イオンを選択する、質量選択ウィンドウを示す、強度対質量電荷比(m/z)の例示的プロットである。
【0012】
図3図3は、従来のMRMにおいて使用され、選択された前駆イオンの特定のプロダクトイオンに関して監視する、質量ウィンドウを示す、強度対m/zの例示的プロットである。
【0013】
図4図4は、一連の保持時間にわたって得られた複数のMRM測定値から形成されるLCピークを示す、強度対時間の例示的プロットである。
【0014】
図5図5は、同一の選択された前駆イオンの2つの異なるプロダクトイオン、および2つの別個のMRMに関して測定された2つのMRMプロダクトイオン強度に関する質量ウィンドウを示す、強度対m/zの例示的プロットである。
【0015】
図6図6は、種々の実施形態による、2つの異なるMRM遷移において使用される同位体前駆イオンを選択するために使用される、2つの質量選択ウィンドウを示す、強度対m/zの例示的プロットである。
【0016】
図7図7は、種々の実施形態による、2つの別個のMRMにおいて選択される2つの異なる同位体前駆イオンから断片化される、同一のプロダクトイオンを測定するための質量ウィンドウを示す、強度対m/zの2つの整合されたプロットの図である。
【0017】
図8図8は、種々の実施形態による、着目化合物に関するMRM遷移測定値が干渉を含むかどうかを判定するための、システムの概略図である。
【0018】
図9図9は、種々の実施形態による、着目化合物に関するMRM遷移測定値が干渉を含むかどうかを判定するための方法を示すフローチャートである。
【0019】
図10図10は、種々の実施形態による、着目化合物に関するMRM遷移測定値が干渉を含むかどうかを判定するための方法を実施する、1つ以上の明確に異なるソフトウェアモジュールを含む、システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本教示の1つ以上の実施形態が詳細に説明される前に、当業者は、本教示が、それらの用途において、以下の発明を実施するための形態に記載される、または図面に図示される、構成の詳細、構成要素の配列、およびステップの配列に限定されないことを理解するであろう。また、本明細書に使用される語法および専門用語は、説明の目的のためのものであり、限定するものとして見なされるべきではないことも理解されたい。
【0021】
(様々な実施形態の説明)
(コンピュータ実装システム)
図1は、本教示の実施形態が実装され得る、コンピュータシステム100を図示するブロック図である。コンピュータシステム100は、情報を通信するための、バス102または他の通信機構と、情報を処理するための、バス102と結合される、プロセッサ104とを含む。コンピュータシステム100はまた、プロセッサ104によって実行されるべき命令を記憶するための、バス102に結合される、ランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶デバイスであり得る、メモリ106を含む。メモリ106はまた、プロセッサ104によって実行されるべき命令の実行の間、一時変数または他の中間の情報を記憶するために使用されてもよい。コンピュータシステム100はさらに、プロセッサ104のための静的情報および命令を記憶するための、バス102に結合される、読取専用メモリ(ROM)108または他の静的記憶デバイスを含む。磁気ディスクまたは光ディスク等の記憶デバイス110が、情報および命令を記憶するために提供され、バス102に結合される。
【0022】
コンピュータシステム100は、コンピュータユーザに情報を表示するために、バス102を介して、陰極線管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)等のディスプレイ112に結合されてもよい。英数字および他のキーを含む入力デバイス114が、プロセッサ104に情報ならびにコマンド選択を通信するために、バス102に結合される。別のタイプのユーザ入力デバイスは、プロセッサ104に方向情報およびコマンド選択を通信するため、ならびにディスプレイ112上でカーソル移動を制御するための、マウス、トラックボール、またはカーソル方向キー等のカーソル制御部116である。本入力デバイスは、典型的には、デバイスが平面内の位置を指定することを可能にする、2つの軸、すなわち、第1の軸(すなわち、x)および第2の軸(すなわち、y)における、2自由度を有する。
【0023】
コンピュータシステム100は、本教示を実施することができる。本教示のある実装と一貫して、結果が、メモリ106内に含有される1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行するプロセッサ104に応答して、コンピュータシステム100によって提供される。そのような命令は、記憶デバイス110等の別のコンピュータ可読媒体からメモリ106の中に読み取られてもよい。メモリ106内に含有される命令のシーケンスの実行は、プロセッサ104に、本明細書に説明されるプロセスを実施させる。代替として、ソフトウェア命令の代わりに、またはそれとの組み合わせにおいて、有線回路が、使用され、本教示を実装してもよい。したがって、本教示の実装は、ハードウェア回路およびソフトウェアのいかなる具体的な組み合わせにも限定されない。
【0024】
種々の実施形態では、コンピュータシステム100は、ネットワークを横断して、コンピュータシステム100のような1つ以上の他のコンピュータシステムに接続され、ネットワーク化されたシステムを形成することができる。ネットワークは、プライベートネットワーク、またはインターネット等のパブリックネットワークを含むことができる。ネットワーク化されたシステムでは、1つ以上のコンピュータシステムが、データを記憶し、他のコンピュータシステムに提供することができる。データを記憶および提供する1つ以上のコンピュータシステムは、クラウドコンピューティングシナリオでは、サーバまたはクラウドと称され得る。1つ以上のコンピュータシステムは、例えば、1つ以上のウェブサーバを含むことができる。サーバまたはクラウドにデータを送信し、そこからデータを受信する他のコンピュータシステムは、例えば、クライアントまたはクラウドデバイスと称され得る。
【0025】
本明細書において使用されるような用語「コンピュータ可読媒体」は、プロセッサ104に実行のための命令を提供することに関与する、任意の媒体を指す。そのような媒体は、限定ではないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含む、多くの形態をとり得る。不揮発性媒体は、例えば、記憶デバイス110等の光学または磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メモリ106等の動的メモリを含む。伝送媒体は、バス102を備えるワイヤを含む、同軸ケーブル、銅ワイヤ、および光ファイバを含む。
【0026】
コンピュータ可読媒体またはコンピュータプログラム製品の一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、もしくは任意の他の磁気媒体、CD-ROM、デジタルビデオディスク(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク、任意の他の光学媒体、サムドライブ、メモリカード、RAM、PROM、およびEPROM、FLASH-EPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、もしくはコンピュータが読み取り得る任意の他の有形媒体を含む。
【0027】
種々の形態のコンピュータ可読媒体が、プロセッサ104に実行のための1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを搬送することに関与し得る。例えば、命令は、最初に、遠隔コンピュータの磁気ディスク上に搬送されてもよい。遠隔コンピュータは、その動的メモリの中に命令をロードし、モデムを使用して電話回線を経由して命令を送信することができる。コンピュータシステム100にローカルなモデムが、電話回線上でデータを受信し、赤外線伝送機を使用し、データを赤外線信号に変換することができる。バス102に結合される赤外線検出器が、赤外線信号で搬送されるデータを受信し、バス102上にデータを置くことができる。バス102は、メモリ106にデータを搬送し、そこから、プロセッサ104が、命令を読み出し、実行する。メモリ106によって受信される命令は、随意に、プロセッサ104による実行の前または後のいずれかに、記憶デバイス110上に記憶されてもよい。
【0028】
種々の実施形態によると、プロセッサによって実行され、方法を実施するように構成される命令が、コンピュータ可読媒体上に記憶される。コンピュータ可読媒体は、デジタル情報を記憶するデバイスであり得る。例えば、コンピュータ可読媒体は、ソフトウェアを記憶するために当分野において公知であるような、コンパクトディスク読取専用メモリ(CD-ROM)を含む。コンピュータ可読媒体は、実行されるように構成される命令を実行するために好適なプロセッサによってアクセスされる。
【0029】
本教示の種々の実装の以下の説明は、例証および説明の目的のために提示されている。これは、包括的ではなく、本教示を開示される精密な形態に限定するものではない。修正および変形例が、上記の本教示に照らして可能性として考えられる、または本教示の実践から得られ得る。加えて、説明される実装は、ソフトウェアを含むが、本教示は、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせとして、またはハードウェアのみで実装され得る。本教示は、オブジェクト指向および非オブジェクト指向のプログラミングシステムの両方を用いて実装され得る。
【0030】
(同位体MRM遷移)
上記に説明されるように、多くの用途において、多重反応モニタリング(MRM)比は、液体クロマトグラフィ(LC)ピークの純度を査定するために使用される、重要なパラメータである。これは、典型的には、それぞれが、分析物毎に異なるプロダクトイオンを含む、2つ以上のMRM信号を監視し、信号のMRM比を標準または分析物に関して取得される、データのライブラリと比較することによって実施される。
【0031】
一般的に、タンデム質量分析法、すなわち、質量分析/質量分析法(MS/MS)は、化合物を分析するための周知の技法である。タンデム質量分析法は、サンプルからの1つ以上の化合物のイオン化と、1つ以上の化合物の1つ以上の前駆イオンの選択と、1つ以上の前駆イオンの断片またはプロダクトイオンへの断片化と、プロダクトイオンの質量分析とを伴う。
【0032】
タンデム質量分析法は、定性的および定量的情報の両方を提供することができる。プロダクトイオンスペクトル内のプロダクトイオンが、着目分子を同定するために使用されることができる。1つ以上のプロダクトイオンの強度が、サンプル内に存在する化合物の量を定量化するために使用されることができる。
【0033】
多数の異なるタイプの実験方法またはワークフローが、タンデム質量分析計を使用して実施されることができる。ワークフローの1つのタイプは、ターゲット取得と呼ばれる。
【0034】
ターゲット取得法では、前駆イオンのプロダクトイオンへの1つ以上の遷移が、着目化合物に関して事前定義される。サンプルが、タンデム質量分析計の中に導入されるにつれて、1つ以上の遷移が、複数の時間周期もしくはサイクルの各時間周期またはサイクルの間、照会される。言い換えると、質量分析計は、各遷移の前駆イオンを選択および断片化し、遷移のプロダクトイオンに関するターゲット質量分析を実施する。結果として、強度(プロダクトイオン強度)が、遷移毎に生産される。ターゲット取得法は、限定ではないが、多重反応モニタリング(MRM)および選択的反応モニタリング(SRM)を含む。
【0035】
図2は、従来のMRMにおいて使用され、前駆イオンを選択する、質量選択ウィンドウを示す、強度対質量電荷比(m/z)の例示的プロット200である。図2では、質量選択ウィンドウ210が、前駆イオン220を選択するために使用される。質量選択ウィンドウ210は、典型的には、単位分解能または約1m/zにおいて前駆イオン220を選択する。言い換えると、質量選択ウィンドウ210の幅は、1m/zである。
【0036】
プロット200は、前駆イオンの質量スペクトルを描写する。しかしながら、MRMにおいて前駆イオン質量スペクトルを測定することは、必要ではない。MRMでは、前駆体イオンが、単に、選択され、断片化される。また、MRMにおいてプロダクトイオン質量スペクトルを測定することも、必要ではない。代わりに、別の質量ウィンドウまたは分解能ウィンドウが、単に、予期されるプロダクトイオンに関して監視される。
【0037】
図3は、従来のMRMにおいて使用され、選択された前駆イオンの特定のプロダクトイオンに関して監視する、質量ウィンドウを示す、強度対m/zの例示的プロット300である。図3では、質量ウィンドウ310が、プロダクトイオン320に関して監視するために使用される。プロダクトイオン320は、例えば、図2の前駆イオン220のプロダクトイオンである。図3の質量ウィンドウ310の幅は、典型的には、前駆体イオン質量選択ウィンドウより幅広く、約3m/zである。
【0038】
プロダクトイオン320の強度は、図2の前駆イオン220から図3のプロダクトイオン320へのMRM遷移に関して得られる測定値である。MRMはまた、LC等の分離技法と併せて実施されることができる。この場合、特定のMRM遷移が、例えば、溶出時間または保持時間として公知である分離の間に、数回測定され得る。これらの複数のMRM測定値から、LCピークが、判定されることができる。
【0039】
図4は、一連の保持時間にわたって得られた複数のMRM測定値から形成されるLCピークを示す、強度対時間の例示的プロット400である。図4では、LCピーク410が、点420においてMRM測定値から形成される。点420におけるMRM測定値の各々は、異なる溶出時間において得られる。LCピーク420等のLCピークの形状が、分析物または着目化合物を同定もしくは定量化するために使用されることができる。しかしながら、MRM測定値内のいかなる干渉も、LCピークの形状を変化または歪曲させ、同定もしくは定量化を混乱させ得る。
【0040】
結果として、随意に、他のMRM遷移に関する1つ以上の他のMRM測定値が、同一の保持時間において得られる。他のMRM遷移は、同一の前駆イオンを含むが、異なるプロダクトイオンを含む。相互に異なる遷移からのこれらのMRM測定値の比率が、次いで、同一の質量分析システムによって着目化合物の標準サンプルから得られる測定値のライブラリ内で収集される、標準比率と比較される。
【0041】
図5は、同一の選択された前駆イオンの2つの異なるプロダクトイオン、および2つの別個のMRMに関して測定された2つのMRMプロダクトイオン強度に関する質量ウィンドウを示す、強度対m/zの例示的プロット500である。図5では、質量ウィンドウ310が、第1のMRMのプロダクトイオン320の強度を監視するために使用され、質量ウィンドウ510が、第2のMRMのプロダクトイオン520の強度を監視するために使用される。挿入部530は、第1のMRM遷移および第2のMRM遷移が両方とも、前駆イオン220を含むことを示す。
【0042】
第1のMRMが干渉を含むかどうかを判定するために、プロダクトイオン320の強度とプロダクトイオン520の強度の比率が、同一の質量分析システムによって着目化合物の標準サンプルから得られた測定値のライブラリから得られる、標準比率と比較される。挿入部540は、プロダクトイオン320および520の強度の比率を示す。比率と標準比率との間の差異が、閾値を下回る場合、第1のMRM測定値は干渉を含まないことが、判定される。同様に、差異が、閾値を上回るまたはそれに等しい場合、第1のMRM測定値は干渉を含むことが、判定される。
【0043】
本方法の1つの欠点は、これが、特定の質量分析計に関しても標準サンプルから得られる測定値のライブラリを要求することである。結果として、標準サンプルから構築されるライブラリとの比較に依存しない、MRM測定値内の干渉を判定するためのシステムおよび方法の必要性が、存在する。
【0044】
種々の実施形態では、干渉を判定するために複数の異なるプロダクトイオンに依拠する代わりに、異なる同位体前駆イオンが、使用される。これは、より高分解能前駆イオン質量選択ウィンドウ(0.2m/z未満(<)の四重極1(Ql)分離)を使用することによって可能にされる。2つ以上のMRM遷移が、使用されることができる。各MRMでは、同一のプロダクトイオンが、約3m/zの分解能ウィンドウを使用して監視される。この様式で取得される少なくとも2つのMRM測定値の比率を比較することによって、比率は、前駆イオンの理論同位体比と整合することが予期され、したがって、MRM比または標準のライブラリを取得する必要性を排除する。理論比からのいかなる逸脱も、MRM信号と関連付けられる汚染または不確実性を示す。
【0045】
本方法は、任意のタイプの化合物に適用されることができる。しかしながら、特に、ペプチドのプロダクトイオンは、典型的には、断片化の再配列に起因して、いかなる干渉もない。ペプチドに関して、「再配列がない」プロダクトイオンの選択が、典型的には、前駆イオンm/zを上回るプロダクトイオンに依拠することによって単純化され、実験の処理および準備を単純化する。
【0046】
図6は、種々の実施形態による、2つの異なるMRM遷移において使用される同位体前駆イオンを選択するために使用される、2つの質量選択ウィンドウを示す、強度対m/zの例示的プロット600である。図6では、第1のMRM遷移に関して、質量選択ウィンドウ610が、第1の前駆イオン620を選択するために使用される。第2のMRM遷移に関して、質量選択ウィンドウ630が、前駆イオン620の同位体である、第2の前駆イオン640を選択するために使用される。質量選択ウィンドウ610および630は、同位体前駆イオンを区別するために、従来のMRMにおいて使用されるウィンドウよりはるかに狭いまたは高い分解能を有する。質量選択ウィンドウ610および630はそれぞれ、例えば、0.2m/z未満の幅を有する。
【0047】
質量選択ウィンドウ610は、第1のMRMの一部として、前駆イオン620を選択するために使用される。前駆イオン620が、次いで、断片化され、プロダクトイオンの強度が、第1のMRMに関して測定される。同様に、質量選択ウィンドウ630が、第2のMRMの一部として、前駆イオン640を選択するために使用される。前駆イオン640が、次いで、断片化され、第1のMRM遷移において使用された、同一のプロダクトイオンの強度が、第2のMRMに関して測定される。
【0048】
図7は、種々の実施形態による、2つの別個のMRMにおいて選択された2つの異なる同位体前駆イオンから断片化された、同一のプロダクトイオンを測定するための質量ウィンドウを示す、強度対m/zの2つの整合されたプロットの図700である。図7では、質量ウィンドウ710が、第1のMRMのプロダクトイオン720の第1の強度を監視するために使用され、質量ウィンドウ730が、第2のMRMの同一のプロダクトイオン720の第2の強度を監視するために使用される。挿入部730は、第1のMRM遷移が、前駆イオン620を含み、第2のMRM遷移が、前駆イオン620の同位体前駆イオンである、前駆イオン640を含むことを示す。
【0049】
第1のMRMが干渉を含むかどうかを判定するために、プロダクトイオン720の第1の強度とプロダクトイオン720の第2の強度の比率が、前駆イオン620および640の数の理論比と比較される。挿入部740は、プロダクトイオン720の第1の強度と第2の強度の比率を示す。比率と理論比との間の差異が、閾値を下回る場合、第1のMRM測定値は干渉を含まないことが、判定される。同様に、差異が、閾値を上回るまたはそれに等しい場合、第1のMRM測定値は干渉を含むことが、判定される。
【0050】
図5および7の比較は、異なるプロダクトイオンを伴うMRM遷移を使用する、従来の方法と、異なる同位体前駆イオンを伴うMRM遷移を採用する、本方法との間の差異を示す。異なるプロダクトイオンを伴うMRM遷移を使用する、従来の方法では、各遷移は、同一の前駆イオンおよび異なるプロダクトイオンを使用する。異なる同位体前駆イオンを伴うMRM遷移を採用する、本方法では、各遷移は、異なる同位体前駆体イオンを使用するが、同一のプロダクトイオンを使用する。
【0051】
加えて、従来の方法では、2つの異なるプロダクトイオンの強度の比率が、標準ライブラリから見出される比率と比較される。対照的に、同位体MRM遷移法では、2つの異なる遷移からの同一のプロダクトイオンの強度の比率が、同位体前駆イオンの数の理論比と比較される。
【0052】
(MRM干渉を判定するためのシステム)
図8は、種々の実施形態による、着目化合物に関するMRM遷移測定値が干渉を含むかどうかを判定するためのシステム800の概略図である。システム800は、タンデム質量分析計801と、プロセッサ850とを含む。タンデム質量分析計801は、イオン源デバイス810と、質量フィルタ820と、断片化デバイス830と、質量分析器840とを含む。
【0053】
種々の実施形態では、タンデム質量分析計801はさらに、サンプル導入デバイス860を含むことができる。サンプル導入デバイス860は、例えば、経時的に、サンプルからイオン源デバイス810に1つ以上の着目化合物を導入する。サンプル導入デバイス860は、限定ではないが、注入、液体クロマトグラフィ、ガスクロマトグラフィ、キャピラリ電気泳動、またはイオン移動度を含む技法を実施することができる。
【0054】
システム800では、質量フィルタ820、断片化デバイス830、および質量分析器が、別個の段階として示される。種々の実施形態では、これらの段階のいずれかまたは全てが、1つもしくは2つの段階に組み合わせられることができる。
【0055】
イオン源デバイス810は、着目化合物を変換またはイオン化し、1つ以上の前駆イオンのイオンビームを生産する。イオン源デバイス810は、限定ではないが、マトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)またはエレクトロスプレーイオン化(ESI)を含む、イオン化技法を実施することができる。
【0056】
タンデム質量分析計801は、イオン源デバイスからイオンビームを受光する。タンデム質量分析計801の質量フィルタ820が、イオンビームから前駆イオンの同位体を分解することが可能である、質量選択ウィンドウを生産するように適合される。種々の実施形態では、質量フィルタ820は、0.2m/z未満またはさらに0.15m/z未満の幅の質量選択ウィンドウを生産するように適合される。種々の実施形態では、質量フィルタ820は、限定ではないが、四重極、イオントラップ、ノッチフィルタ、またはロッドの双曲線セットを含むことができる。
【0057】
タンデム質量分析計801は、質量フィルタ820を使用してMRM遷移の前駆イオンを選択し、断片化デバイス830を使用して前駆イオンを断片化し、質量分析器840を使用してMRM遷移のプロダクトイオンの強度を測定することによって、MRM遷移の強度を測定するように適合される。図8では、断片化デバイス830が、四重極として示され、質量分析器840が、飛行時間(TOF)デバイスとして示される。当業者は、これらの段階のうちのいずれかが、限定ではないが、四重極、イオントラップ、オービトラップ、またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT-ICR)デバイスを含む、他のタイプの質量分析デバイスを含み得ることを理解し得る。
【0058】
プロセッサ850は、限定ではないが、コンピュータ、マイクロプロセッサ、図1のコンピュータシステム、またはタンデム質量分析計に制御信号およびデータを送信し、かつそこから制御信号およびデータを受信し、データを処理することが可能である、任意のデバイスであることができる。プロセッサ850は、タンデム質量分析計801と通信する。
【0059】
プロセッサ850は、タンデム質量分析計801に、第1の前駆イオンと、第1のプロダクトイオンとを含む、第1のMRM遷移の第1の強度を測定するように命令する。これは、タンデム質量分析計801に、第2の前駆イオンと、同一の第1のプロダクトイオンとを含む、第2のMRM遷移の第2の強度を、第1のMRM遷移として測定するように命令する。第2の前駆イオンは、第1の前駆イオンの同位体である。
【0060】
プロセッサ850は、次いで、いくつかの計算を実施する。これは、第1の強度と第2の強度の比率を計算する。これは、第1の前駆イオンと第2の前駆イオンの数の理論比を、それらの同位体関係に従って計算する。これは、比率と理論比との間の差異を計算する。最後に、これは、差異を閾値と比較する。差異が、閾値未満である場合、これは、第1のMRM遷移の第1の強度を、着目化合物のための干渉を含むものとして識別する。
【0061】
種々の実施形態では、差異は、品質測定基準として使用されることができる。本品質測定基準は、次いで、例えば、強度値を評価するために使用されることができる。
【0062】
(MRM干渉を判定するための方法)
図9は、種々の実施形態による、着目化合物に関するMRM遷移測定値が干渉を含むかどうかを判定するための方法900を示すフローチャートである。
【0063】
方法900のステップ910では、タンデム質量分析計が、プロセッサを使用して、イオンビームから、第1の前駆イオンと、第1のプロダクトイオンとを含む、着目化合物に関して、第1のMRM遷移の第1の強度を測定するように命令される。タンデム質量分析計は、質量フィルタと、断片化デバイスと、質量分析器とを含む。タンデム質量分析計は、イオン源デバイスからイオンビームを受光する。質量フィルタが、イオンビームから前駆イオンの同位体を分解することが可能である、質量選択ウィンドウを生産するように適合される。タンデム質量分析器が、質量フィルタを使用してMRM遷移の前駆イオンを選択し、断片化デバイスを使用して前駆イオンを断片化し、質量分析器を使用してMRM遷移のプロダクトイオンの強度を測定することによって、MRM遷移の強度を測定するように適合される。イオンビームが、着目化合物をイオン化する、イオン源デバイスによって生産される。
【0064】
ステップ920では、タンデム質量分析計が、プロセッサを使用して、イオンビームから、第2の前駆イオンと、同一の第1のプロダクトイオンとを含む、着目化合物に関する第2のMRM遷移の第2の強度を、第1のMRM遷移として測定するように命令される。第2の前駆イオンは、第1の前駆イオンの同位体である。
【0065】
ステップ930では、第1の強度と第2の強度の比率が、プロセッサを使用して計算される。
【0066】
ステップ940では、第1の前駆イオンと第2の前駆イオンの数の理論比が、プロセッサを使用して、それらの同位体関係に従って計算される。
【0067】
ステップ950では、比率と理論比との間の差異が、プロセッサを使用して計算される。
【0068】
ステップ960では、差異が、プロセッサを使用して閾値と比較される。
【0069】
ステップ970では、差異が、閾値未満である場合、第1のMRM遷移の第1の強度が、プロセッサを使用して、着目化合物のための干渉を含むものとして識別される。
【0070】
(MRM干渉を判定するためのコンピュータプログラム製品)
種々の実施形態では、コンピュータプログラム製品は、そのコンテンツが、着目化合物に関するMRM遷移測定値が、干渉を含むかどうかを判定するための方法を実施するように、プロセッサ上で実行されている命令を伴うプログラムを含む、有形のコンピュータ可読記憶媒体を含む。本方法は、1つ以上の明確に異なるソフトウェアモジュールを含む、システムによって実施される。
【0071】
図10は、種々の実施形態による、着目化合物に関するMRM遷移測定値が干渉を含むかどうかを判定するための方法を実施する、1つ以上の明確に異なるソフトウェアモジュールを含む、システム1000の概略図である。システム1000は、測定モジュール1010と、分析モジュール1020とを含む。
【0072】
測定モジュール1010は、タンデム質量分析計に、イオンビームから、第1の前駆イオンと、第1のプロダクトイオンとを含む、着目化合物に関して、第1のMRM遷移の第1の強度を測定するように命令する。タンデム質量分析計は、質量フィルタと、断片化デバイスと、質量分析器とを含む。タンデム質量分析計は、イオン源デバイスからイオンビームを受光する。質量フィルタは、イオンビームから前駆イオンの同位体を分解することが可能である、質量選択ウィンドウを生産するように適合される。タンデム質量分析計は、質量フィルタを使用して、MRM遷移の前駆イオンを選択し、断片化デバイスを使用して前駆イオンを断片化し、質量分析器を使用して、MRM遷移のプロダクトイオンの強度を測定することによって、MRM遷移の強度を測定するように適合される。イオンビームは、着目化合物をイオン化する、イオン源デバイスによって生産される。
【0073】
測定モジュール1010はまた、タンデム質量分析計に、イオンビームから、第2の前駆イオンと、同一の第1のプロダクトイオンとを含む、着目化合物に関して、第2のMRM遷移の第2の強度を、第1のMRM遷移として測定するように命令する。第2の前駆イオンは、第1の前駆イオンの同位体である。
【0074】
分析モジュール1020は、いくつかの計算を実施する。これは、第1の強度と第2の強度の比率を計算する。これは、第1の前駆イオンと第2の前駆イオンの数の理論比を、それらの同位体関係に従って計算する。これは、比率と理論比との間の差異を計算する。これは、差異を閾値と比較する。最後に、差異が、閾値未満である場合、これは、第1のMRM遷移の第1の強度を、着目化合物のための干渉を含むものとして識別する。
【0075】
本教示は、種々の実施形態と併せて説明されているが、本教示は、そのような実施形態に限定されることが意図されるものではない。むしろ、本教示は、当業者によって理解されるであろうように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。
【0076】
さらに、種々の実施形態を説明することにおいて、本明細書は、方法および/またはプロセスを、特定のシーケンスのステップとして提示している場合がある。しかしながら、本方法またはプロセスが、本明細書に記載されるステップの特定の順序に依拠しない限り、本方法またはプロセスは、説明される特定のシーケンスのステップに限定されるべきではない。当業者が理解するであろうように、他のシーケンスのステップもまた、可能性として考えられ得る。したがって、本明細書に記載されるステップの特定の順序は、請求項に関する限定として解釈されるべきではない。加えて、本方法および/またはプロセスを対象とする請求項は、記載される順序におけるそれらのステップの性能に限定されるべきではなく、当業者は、シーケンスが、変更され、依然として、種々の実施形態の精神ならびに範囲内にあるままであり得ることを容易に理解することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図9
【補正方法】変更
【補正の内容】
図9
【外国語明細書】