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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083513
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】収穫判断装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3563 20140101AFI20240614BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
G01N21/3563
A01G7/00 603
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062604
(22)【出願日】2024-04-09
(62)【分割の表示】P 2022139131の分割
【原出願日】2014-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】梁川 直治
(57)【要約】
【課題】植物の収穫対象物を収穫すべきタイミングを精度よく判断できるようにする。
【解決手段】収穫判断装置100は、検出部110、ノイズ除去信号取得部120、ノイズ除去部130、及び判断部140を備えている。検出部110は、収穫対象物Fを透過又は反射してきた光(以下、検出光と記載)を検出して検出信号を生成する。ノイズ除去信号取得部120は、検出信号に含まれるノイズを除去するための信号(以下、ノイズ除去信号と記載)を取得する。ノイズ除去部130は、検出信号及びノイズ除去信号を用いて、ノイズ除去後の検出信号(以下、判断用信号と記載)を生成する。判断部140は、判断用信号を用いて、収穫対象物の収穫タイミングを判断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫対象物を透過又は反射してきた検出光を検出し、検出信号を生成する検出部と、
前記検出信号に含まれるノイズ除去信号を取得するノイズ除去信号取得部と、
前記検出信号及び前記ノイズ除去信号を用いて、ノイズ除去後の検出信号である判断用信号を生成するノイズ除去部と、
前記判断用信号に基づき、前記収穫対象物の収穫タイミングを判断する判断部と、
を備える収穫判断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫判断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
果物などの植物の収穫対象物の経済的価値は、収穫対象物に含まれる特定の成分の含有量(例えば糖度)によって大きく左右される。一般的には、糖度が重要視される収穫対象物は、収穫された後、近赤外光照射と光センサによって糖度が測定される。
【0003】
例えば特許文献1には、収穫対象物に対して光源を相対的に回転させながら、その収穫対象物に対して光を照射し、その収穫対象物を透過した光を分光分析することにより、収穫対象物における糖度の分布を測定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-24651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、果物などの植物の収穫対象物の経済的価値は、収穫対象物に含まれる特定の成分の含有量によって大きく左右される。このため、収穫対象物の経済的価値は、その収穫対象物を収穫したタイミングで決定される。ここで、光学的手法を用いて収穫対象物に含まれる特定の成分の含有量を測定することにより、収穫タイミングを判断することが考えられる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、植物の収穫対象物を収穫すべきタイミングを精度よく判断できるようにすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、収穫対象物を透過又は反射してきた検出光を検出し、検出信号を生成する検出部と、
前記検出信号に含まれるノイズ除去信号を取得するノイズ除去信号取得部と、
前記検出信号及び前記ノイズ除去信号を用いて、ノイズ除去後の検出信号である判断用信号を生成するノイズ除去部と、
前記判断用信号に基づき、前記収穫対象物の収穫タイミングを判断する判断部と、
を備える収穫判断装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る収穫判断装置の構成を示す図である。
図2】実施例1に係る収穫判断装置の構成を示す図である。
図3】実施例2に係る収穫判断装置の構成を示す図である。
図4】実施例3に係る収穫判断装置の構成を示す図である。
図5】実施例4に係る収穫判断装置の構成を示す図である。
図6】実施例5に係る植物育成装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
なお、以下に示す説明において、収穫判断装置100の各構成要素は、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。収穫判断装置100の各構成要素は、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされたプログラム、そのプログラムを格納するハードディスクなどの記憶メディア、ネットワーク接続用インタフェースを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置には様々な変形例がある。
【0011】
図1は、実施形態に係る収穫判断装置100の構成を示す図である。本実施形態に係る収穫判断装置100は、検出部110、ノイズ除去信号取得部120、ノイズ除去部130、及び判断部140を備えている。検出部110は、収穫対象物Fを透過又は反射してきた光(以下、検出光と記載)を検出して検出信号を生成する。ノイズ除去信号取得部120は、検出信号に含まれるノイズを除去するための信号(以下、ノイズ除去信号と記載)を取得する。ノイズ除去部130は、検出信号及びノイズ除去信号を用いて、ノイズ除去後の検出信号(以下、判断用信号と記載)を生成する。判断部140は、判断用信号を用いて、収穫対象物の収穫タイミングを判断する。収穫対象物Fは、例えばメロン、スイカ、桃、りんご、マンゴーなどの果実であるが、これらに限定されない。収穫判断装置100は、例えば植物工場で使用されるが、これに限定されない。以下、詳細に説明する。
【0012】
収穫判断装置100は、収穫対象物Fに含まれる特定の成分(以下、特定成分と記載)の濃度に基づいて、収穫タイミングを判断する。このため、検出部110が検出する光の波長は、特定成分の種類に従って定められる。例えば特定成分が糖分の場合、検出部110が検出する光は近赤外光になる。
【0013】
検出部110は、収穫対象物Fを透過又は反射してきた光を光電変換することにより、検出信号を生成する。検出部110は、検出信号を増幅する増幅回路を有していても良い。検出部110が検出する光の光源は、例えばLEDや有機EL素子などの発光素子を有しており、収穫対象物Fの近くに配置されている。
【0014】
検出部110が生成した検出信号には、様々なノイズが含まれる。これらのノイズは、例えば、検出部110が検出すべき波長以外の光(例えば近赤外光以外の波長域の光)に由来するノイズや、検出部110が有する素子(例えば光電変換素子や増幅回路)に由来するノイズなどがある。ノイズ除去信号取得部120は、ノイズ除去信号として、これらのノイズを含む信号を取得する。ノイズ除去信号の具体例は、実施例を用いて後述する。
【0015】
ノイズ除去部130は、検出信号からノイズ除去信号を減算することにより、検出信号からノイズを除去する。これにより、判断用信号が生成される。ここで、減算処理の直前における検出信号及びノイズ除去信号の増幅率の相対比は、判断用信号に含まれるノイズが小さくなるように(好ましくは最小となるように)設定される。
【0016】
判断部140は、判断用信号の強度に基づいて、収穫対象物Fを収穫すべきか否かを判断する。例えば判断部140は、判断用信号の強度が基準値以下の場合(又は基準値以上の場合)に、収穫対象物Fを収穫すべきと判断する。判断結果は、例えば画像信号や音声信号として外部に出力される。ここで判断部140は、判断用信号から、収穫対象物Fに含まれる特定成分(例えば糖度)の濃度又はその分布を算出し、その算出結果を基準値や基準の分布と比較することにより、収穫対象物Fを収穫すべきか否かを判断しても良い。
【0017】
以上、本実施形態によれば、ノイズ除去部130は、検出部110が検出した検出信号から、ノイズ除去信号を減算することにより、検出信号からノイズを除去する。そして判断部140は、ノイズ除去部130が生成したノイズ除去後の信号(判断用信号)を用いて、収穫対象物Fを収穫すべきか否かを判断する。従って、植物の収穫対象物を収穫すべきタイミングを精度よく判断できる。
【実施例0018】
(実施例1)
図2は、実施例1に係る収穫判断装置100の構成を示す図である。本実施例に係る収穫判断装置100は、以下の点を除いて、実施形態に係る収穫判断装置100と同様の構成である。
【0019】
まず、検出部110及びノイズ除去信号取得部120のいずれにも、収穫対象物Fからの光が、例えば同時に入射する。
【0020】
そして、検出部110は、第1フィルタ部112、第1光電変換部114、及び増幅部116を有している。第1フィルタ部112は、検出部110に入射した光(検出光)のうち分析対象となっている波長域の光(以下、第1の波長域の光と記載)を透過させ、他の波長域の光をカットする。第1光電変換部114は、第1フィルタ部112を透過してきた光を光電変換して検出信号を生成する。増幅部116は、第1光電変換部114によって生成された検出信号を増幅し、ノイズ除去部130に出力する。
【0021】
また、ノイズ除去信号取得部120は、第2フィルタ部122、第2光電変換部124、及び増幅部126を有している。第2フィルタ部122は、第1の波長域の光をカットする。第2光電変換部124は、第2フィルタ部122を透過してきた光を光電変換してノイズ除去信号を生成する。増幅部126は、第2光電変換部124によって生成されたノイズ除去信号を増幅し、ノイズ除去部130に出力する。
【0022】
また、収穫判断装置100は光源160を有している。光源160は収穫対象物Fに向けて光を照射する。検出部110及びノイズ除去信号取得部120は、光源160から出射して収穫対象物Fを透過又は反射した光を検出する。そして検出部110及びノイズ除去信号取得部120は、互いに近接して配置されているのが好ましい。
【0023】
また、ノイズ除去部130は、係数記憶部132を有している。係数記憶部132は、検出信号からノイズ除去信号を減じて判断用信号を生成するときの、ノイズ除去信号及び検出信号の増幅率の相対比(係数)を記憶している。ここで、この相対比は、例えば収穫判断装置100を工場から出荷するときに、収穫判断装置100を校正することにより、生成される。この校正は、例えば光源160を動作させながら収穫判断装置100で標準試料を分析することにより、行われる。
【0024】
より具体的には、特定成分(例えば糖分)によって吸収される波長及びその近傍の光のみを照射する光源、例えばレーザ光源等を用意し、この光源からの光を検出部110及びノイズ除去信号取得部120に入射する。そして、ノイズ除去部130が出力するノイズ除去後信号が最大となるように、ノイズ除去信号及び検出信号の増幅率の相対比(係数)を最適化する。別の校正方法として、特定成分(例えば糖分)によって吸収される波長以外にスペクトルを持った光源、例えばレーザ光源等を用意し、この光源からの光を検出部110及びノイズ除去信号取得部120に入射する。そして、ノイズ除去部130が出力するノイズ除去後信号が最小となるように、ノイズ除去信号及び検出信号の増幅率の相対比(係数)を最適化する。
【0025】
本実施例において、第1フィルタ部112を透過した光には、第1の波長域以外の光もわずかに含まれる。このため、第1フィルタ部112によって生成される信号には、第1の波長域以外の光に起因した成分も含まれる。これに対して本実施例においてノイズ除去信号取得部120で生成されたノイズ除去信号は、第1の波長域以外の光に起因した成分がほとんどである。このため、ノイズ除去信号取得部120を用いると、検出信号からノイズ成分を除去することができる。
【0026】
なお本実施例において、検出部110は第1フィルタ部112を有していなくても良い。
【0027】
(実施例2)
図3は、実施例2に係る収穫判断装置100の構成を示す図である。本実施例に係る収穫判断装置100は、増幅部116,126の代わりに増幅部150を有している点を除いて、実施例1に係る収穫判断装置100と同様の構成である。増幅部150は、検出部110及びノイズ除去信号取得部120の間に設けられている。
【0028】
そして、検出部110が増幅部150に検出信号を出力している間、この検出信号とノイズ除去信号が重ならないようにするために、ノイズ除去信号取得部120はノイズ除去部130にノイズ除去信号を出力しない。また、ノイズ除去信号取得部120が増幅部150にノイズ除去信号を出力している間、このノイズ除去信号に検出信号が重ならないようにするために、検出部110はノイズ除去部130に検出信号を出力しない。
【0029】
なお、本実施例において、ノイズ除去部130が増幅部150を兼ねていても良い。この場合、ノイズ除去部130は、検出信号及びノイズ除去信号を記憶する機能を有している。そしてノイズ除去部130は、「検出信号-ノイズ除去信号×係数」という演算を行うことにより、検出信号からノイズを除去する。この際、ノイズ除去部130は、ノイズ除去処理をするたびに、ノイズとなる波長領域の信号が最小となるように、係数を定める。
【0030】
本実施例によっても、実施例1と同様の効果が得られる。また、検出部110とノイズ除去信号取得部120とが増幅部150を共有しているため、増幅部150が原因で発生したノイズは、検出信号及びノイズ除去信号の双方に含まれている。このため、ノイズ除去部130は、検出信号からノイズ除去信号を減算処理することにより、検出信号から増幅処理に起因したノイズも除去することができる。
【0031】
(実施例3)
図4は、実施例3に係る収穫判断装置100の構成を示す図である。本実施例に係る収穫判断装置100は、以下の点を除いて実施形態に係る収穫判断装置100と同様の構成である。
【0032】
まず、収穫判断装置100は光源160を有している。光源160の構成は、実施例1と同様である。また収穫判断装置100は履歴記憶部134を備えている。履歴記憶部134は、過去の検出部110の検出信号を記憶している。そしてノイズ除去信号取得部120は、履歴記憶部134から、書込の検出信号をノイズ除去信号として読み出す。
【0033】
本実施例によっても、実施例2と同様に、検出信号から、第1の波長域以外の光に起因したノイズ、及び増幅処理に起因したノイズの双方を除去することができる。また、ノイズ除去部130が出力する判断用信号は、収穫対象物Fにおける特定成分の変動量(例えば糖分の増加量)を示している。従って、判断部140は、判断用信号の強度が基準値以下になったとき、収穫対象物Fにおける特定成分の変動量が少ないためその収穫対象物Fを収穫すべき、と判断することができる。
【0034】
(実施例4)
図5は、実施例4に係る収穫判断装置100の構成を示す図である。本実施例に係る収穫判断装置100は、以下の点を除いて実施形態に係る収穫判断装置100と同様の構成である。
【0035】
まず、収穫判断装置100は光源160を有している。光源160の構成は、実施例1と同様である。また、ノイズ除去信号取得部120は、収穫対象物Fを含まない領域からの光を検出することにより、ノイズ除去信号を生成している。ここで、ノイズ除去信号取得部120の検出対象となっている領域は、収穫対象物Fに近いほど好ましい。収穫対象物Fから離れると、検出部110が検出した信号に含まれていないノイズ成分が大きくなる可能性が高まるためである。なお、ノイズ除去信号取得部120は、実施例1に示した第2フィルタ部122を有しているのが好ましい。
【0036】
本実施例によれば、ノイズ除去信号は、収穫対象物Fを透過していない光に起因した信号となっている。言い換えると、ノイズ除去信号には、第1の波長域の光に起因した成分及び第1の波長域以外の光に起因した成分の双方が含まれている。ただし、ノイズ除去信号における第1の波長域の光に起因した成分の割合は、検出信号における第1の波長域の光に起因した成分の割合よりも大きい。このため、本実施例によっても、ノイズ除去部130は、ノイズを検出信号から除去することができる。
【0037】
(実施例5)
図6は、実施例5に係る植物育成装置10の構成を示す図である。植物育成装置10は、例えば植物工場で使用され、収穫判断装置100、照射部200、及び分類装置300を有している。
【0038】
植物育成装置10において、複数の植物Pが環状のベルトコンベアの上を循環している。そして、複数の植物Pの上方には照射部200が設けられている。照射部200は、植物Pの生育に適した波長の光を植物Pに照射する。ここで、照射部200は、植物Pの生育段階にあわせて光の波長を変更しても良い。
【0039】
複数の植物Pには、互いを識別する識別情報が付与されている。この識別情報は、例えば植物Pの生育容器に取り付けられたICチップに記憶されている。そして、収穫判断装置100は、植物Pが有する収穫対象物Fの収穫タイミングを判断する。このとき、収穫判断装置100は、検査対象となっている収穫対象物Fを有する植物Pの識別情報を、上記したICチップから読み取る。そして収穫判断装置100は、収穫すべきと判断された収穫対象物Fに対応する識別情報を、分類装置300に出力する。なお、収穫判断装置100は、実施形態、又は実施例1~4のいずれかと同様の構成を有している。
【0040】
分類装置300は、ベルトコンベアの一部に設けられており、分類装置300を通る植物Pの識別情報を、上記したICチップから読み取る。そして、分類装置300は、読み取った識別情報が、収穫判断装置100から受信した識別情報に一致したとき、その植物Pを、収穫対象物Fを収穫するために、環状のベルトコンベアとは別のルートに移動させる。
【0041】
本実施例によっても、精度よく収穫対象物Fの収穫タイミングを判断することができる。
【0042】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0043】
10 植物育成装置
100 収穫判断装置
110 検出部
112 第1フィルタ部
114 第1光電変換部
120 ノイズ除去信号取得部
122 第2フィルタ部
124 第2光電変換部
130 ノイズ除去部
132 係数記憶部
134 履歴記憶部
140 判断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6