(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083544
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/16 20060101AFI20240614BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240614BHJP
B60N 2/06 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
B60N2/16
B60N2/90
B60N2/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063597
(22)【出願日】2024-04-10
(62)【分割の表示】P 2019102647の分割
【原出願日】2019-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 治希
(72)【発明者】
【氏名】三好 晃
(57)【要約】
【課題】 シートクッションを支持するシートクッションフレームが取付けられる回転部材ならびに当該回転部材を下方から回転可能に支持するベース部材を有する回転機構を備える車両用シート装置において、回転機構内への異物の侵入を抑制可能とする。
【解決手段】 回転部材30の上部外周の周方向に沿う少なくとも一部が、カバー65で外側方から覆われる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション(12,72)を支持するシートクッションフレーム(19)が取付けられる回転部材(30)ならびに当該回転部材(30)を下方から回転可能に支持するベース部材(29)を有する回転機構(17)を備える車両用シート装置において、前記回転部材(30)の上部外周の周方向に沿う少なくとも一部が、カバー(65,75,78)で外側方から囲われ、
前記シートクッション(12)に座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態で前記回転部材(30)の上端部後端縁に、前記シートクッション(12)の表皮(12a)が前記カバー(65,78)の外面に接触しつつ連結されることを特徴とする車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションを支持するシートクッションフレームが取付けられる回転部材ならびに当該回転部材を下方から回転可能に支持するベース部材を有する回転機構を備える車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フロアに対してシートを回転可能とするための回転機構を備える車両用シート装置が、特許文献1等で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでシートクッションの下方に配置される回転機構の作動を円滑化するために、回転機構内への異物の侵入は極力抑制されるべきであるが、上記特許文献1には、回転機構内への異物の侵入を抑制する構造は開示されていない。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、回転機構内への異物の侵入を抑制可能とした車両用シート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、シートクッションを支持するシートクッションフレームが取付けられる回転部材ならびに当該回転部材を下方から回転可能に支持するベース部材を有する回転機構を備える車両用シート装置において、前記回転部材の上部外周の周方向に沿う少なくとも一部が、カバーで外側方から覆われることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記カバーが、前記シートクッションに座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態では、前記回転部材の上部外周を後方から覆う位置に配置されることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第2の特徴の構成に加えて、前記シートクッションの表皮を延長して前記カバーが形成されることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記シートクッションに座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態で前記回転部材の上端部後端縁に、前記シートクッションの表皮が前記カバーの外面に接触しつつ連結されることを第4の特徴とする。
【0010】
本発明は、第1、第2または第4の特徴の構成に加えて、前記シートクッションフレームが、直線状に延びるとともに前記回転部材に支持される一対のサイドフレームを有し、前記カバーがそれらのサイドフレームに取付けられることを第5の特徴とする。
【0011】
本発明は、第1、第2、第4または第5の特徴の構成に加えて、前記カバーの外側面が、前記回転部材の外側方に膨らんだ円弧状に形成されることを第6の特徴とする。
【0012】
本発明は、第1~第6の特徴の構成のいずれかに加えて、前記シートクッションに座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態で少なくとも前記ベース部材を後方から覆う固定カバー部材が、前記カバーの下方に固定配置されることを第7の特徴とする。
【0013】
本発明は、第7の特徴の構成に加えて、前記シートクッションに座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態で、前記固定カバー部材が、前記カバーの下部に相対摺動可能に接触するように形成されることを第8の特徴とする。
【0014】
本発明は、第7または第8の特徴の構成に加えて、前記サイドフレームを外側方から覆うサイドカバーの下端位置が、前記カバーの下端位置と同一に設定されることを第9の特徴とする。
【0015】
さらに本発明は、第9の特徴の構成に加えて、前記カバーが、一対の前記サイドカバーの少なくとも一方と一体に形成されることを第10の特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の特徴によれば、回転部材の上部外周の周方向に沿う少なくとも一部が外側方からカバーで覆われることにより、少なくともカバーで覆われている部位では異物が回転機構内に侵入することを抑制することができる。
【0017】
また本発明の第2の特徴によれば、シートクッションに座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態ではカバーが回転部材の上部外周を後方から覆うので、運転席や助手席が前向きとなる状態での後方の同乗者席側からの異物の回転機構への侵入を抑制することができる。
【0018】
本発明の第3の特徴によれば、シートクッションの表皮でカバーが形成されるので、異物が回転機構内に侵入することを抑制するにあたって部品点数が増大するのを回避することができる。
【0019】
本発明の第4の特徴によれば、シートクッションに座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態での回転部材の上端部後端縁にシートクッションの表皮が連結され、しかも表皮がカバーの外面に接触するので、カバーの上部をシートクッションの表皮に連接することができ、運転席や助手席が前向きとなる状態での後方の同乗者席側からの異物の回転機構への侵入をより効果的に抑制することができる。
【0020】
本発明の第5の特徴によれば、シートクッションフレームが有する一対のサイドフレームにカバーが取付けられるので、簡単な構造でカバーをシートとともに回転させるようにすることができる。
【0021】
本発明の第6の特徴によれば、カバーの外側面が回転部材の外側方に膨らんだ円弧状であるので、シートとともにカバーが回転する際に、車室内のフロア上にある荷物等とカバーが接触したとしてもカバーひいてはシートの円滑な回転を実現することができる。
【0022】
本発明の第7の特徴によれば、カバーの下方に、シートクッションに座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態で少なくともベース部材を後方から覆う固定カバー部材が固定配置されるので、運転席や助手席が前向きとなる状態での後方の同乗者席側からの異物の回転機構への侵入を抑制することができる。
【0023】
本発明の第8の特徴によれば、固定カバー部材がカバーの下部に相対摺動可能に接触するので、運転席や助手席が前向きとなる状態での後方の同乗者席側からの異物の回転機構への侵入をより効果的に抑制することができる。
【0024】
本発明の第9の特徴によれば、サイドカバーの下端位置がカバーの下端位置と同一であることによって、運転席や助手席が車幅方向に向いた状態での後方の同乗者席側からの異物の回転機構への侵入を抑制することができる。
【0025】
さらに本発明の第10の特徴によれば、カバーが、一対のサイドカバーの少なくとも一方と一体に形成されるので、カバーの配設による部品点数の増大を避けるととカバーの組付けを容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1の実施の形態の車両用シート装置の斜視図である。
【
図3】
図1からシートクッション、シートバックおよびサイドカバーを除いた状態での斜視図である。
【
図4】スライドレールおよび回転機構の一部を示す断面図であって
図5の4-4線に沿う断面図である。
【
図5】スライドレールおよび回転機構を
図4の5矢視方向から見た図である。
【
図8】車両用シート装置の一部を
図5の8-8線に沿って示す断面図である。
【
図9】第2の実施の形態の
図8に対応した断面図である。
【
図10】第3の実施の形態の
図2に対応した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら説明する。以下の説明で「前後」、「左右」および「上下」は、座った乗員が前向きとなる姿勢にシートがある状態で当該乗員から見た方向を言うものとする。
【0028】
本発明の第1の実施の形態について
図1~
図8を参照しながら説明すると、先ず
図1および
図2において、車両に搭載される車両用シート装置10のシート11は、乗員の座部を構成するシートクッション12と、そのシートクッション12の上方に配置されるシートバック13とを備え、前記シートクッション12の両側にはサイドカバー14がそれぞれ配設され、前記シートバック13の上部には乗員の頭部を受け止めるヘッドレスト15が配設される。
【0029】
図3を併せて参照して、車両用シート装置10は、前記シート11をスライド可能とするために左右方向に間隔をあけつつ相互に平行に並んで直線状に延びる一対のスライドレール16と、前記シート11を回転可能に支持しつつ前記スライドレール16に沿って移動可能な回転機構17とを備える。
【0030】
前記車両用シート装置10のシートフレーム18は、前記シートクッション12を支持するシートクッションフレーム19と、前記シートクッション12の上方に配置されるシートバック13を支持するようにして前記シートクッションフレーム19に連結されるシートバックフレーム20とを備える。
【0031】
シートクッションフレーム19は、相互に左右方向に離間した位置に並ぶようにして前後方向に直線状に延びるように配置される一対のサイドフレーム19aと、それらのサイドフレーム19aの前端部間を連結するパンフレーム19bと、一対の前記サイドフレーム19aの後端部間を連結するリヤパイプ19cとを有する。
【0032】
前記パンフレーム19bおよび前記リヤパイプ19c間には、クッション側受圧部材21が架け渡される。このクッション側受圧部材21は、金属線を左右に蛇行するようにジグザグに湾曲して成る複数(この実施の形態では4個)のシートスプリング22を有し、それらのシートスプリング22は、隣接するシートスプリング22同士が左右対称となるように配置され、インサート成形によってそれらのシートスプリング22と一体に成形される樹脂製の複数の中間部連結部材23で、隣接のシートスプリング22同士が連結される。
【0033】
複数の前記シートスプリング22の前端部は、前記シートフレーム18における前記パンフレーム19bに設けられる係止部24にそれぞれ係合される。また相互に隣接するシートスプリング22の後端部は、前記シートフレーム18の前記リヤパイプ19cに係合されるとともに、インサート成形によってシートスプリング22と一体に成形される樹脂製の後端部連結部材25で連結されており、前記後端部連結部材25が、前記リヤパイプ19cを覆うように形成される。
【0034】
前記シートバックフレーム20は、相互に左右方向に離間した位置に並ぶようにして上下方向に延びる一対のシートバックサイドフレーム20aと、それらのシートバックサイドフレーム20aの上端部間を連結するアッパフレーム20bと、一対の前記シートバックサイドフレーム20aの下端部間を連結するロアフレーム20cとを有する。
【0035】
一対の前記シートバックサイドフレーム20a間には、樹脂等によって弾性変形可能に形成されるバック側受圧部材26が配置されており、このバック側受圧部材26は、上部連結ワイヤ27および下部連結ワイヤ28を介して左右の前記シートバックサイドフレーム20a間に架け渡される。
【0036】
図4および
図5を併せて参照して、前記シートフレーム18は、前記回転機構17上に載置されており、この回転機構17は、前記スライドレール16に沿って移動可能なベース部材29と、前記シートフレーム18を支持して前記ベース部材29に回転可能に支持される環状の回転部材30と、当該回転部材30の一部を上方から覆って前記ベース部材29に固定されるカバー部材31とを備える。
【0037】
前記ベース部材29は、環状である第1底壁部29aと、第1底壁部29aの外周部から上方に立ち上がる円筒状の第1側壁部29bと、第1側壁部29bの上端部から外側方に張り出す第1鍔部29cとを有し、第1鍔部29cは矩形状に形成される。このベース部材29は、平面視で一対の前記スライドレール16の幅方向中央部よりも内側で前記クッション側受圧部材21よりも下方に配置される。
【0038】
また前記カバー部材31は、前記ベース部材29の第1底壁部29aに上方から当接される環状の第2底壁部31aと、その第2底壁部31aの外周からわずかに上方に立ち上がる円筒状の第2側壁部31bと、上方に向かうにつれて大径となるように形成されて第2側壁部31bの上端部に連設される第1テーパ部31cと、第1テーパ部31cの上端部に連なる環状の第1平坦壁部31dと、第1平坦壁部31dの外周から上方に立ち上がる円筒状の第3側壁部31eとを有し、前記第2底壁部31aは前記ベース部材29の前記第1底壁部29aに複数のリベット32で結合される。
【0039】
前記回転部材30は、前記カバー部材31の前記第1テーパ部31cに外側方から対向する位置に配置されて上方に向かうにつれて大径となるように形成される第2テーパ部30aと、前記カバー部材31の前記第2側壁部31bに外側方から対向するようにして前記第2テーパ部30aの上端部から上方に立ち上がる円筒状の第3側壁部30bと、第3側壁部30bから外側方に張り出す第2鍔部30cとを有し、第2鍔部30cは矩形状に形成される。また第2鍔部30cに、前記シートフレーム18におけるシートクッションフレーム19の前記サイドフレーム19aが複数ずつの第1のボルト34および第2のナット35で締結される。
【0040】
前記回転部材30は、前記ベース部材29が有する環状の回転支持部36に軸受37を介して回転可能に支持されており、前記回転支持部36は、前記ベース部材29における第1底壁部29aと、前記第1側壁部29bとで横断面形状が略L字状となるように形成
される。
【0041】
前記軸受37は、環状のリテーナ38の周方向複数箇所にボール39が保持されて成り、前記回転部材30における前記第1テーパ部31cには、前記ボール39を転動させるための環状凹部40が形成される。
【0042】
前記スライドレール16は、車両の床面33に固定される固定レール41と、その固定レール41に摺動可能に嵌合される可動レール42とから成る。前記床面33には、車両の前後方向に延びつつ上方に突出する突状部33aが形成されており、この突状部33a上に前記固定レール41が固定されることで、前記回転機構17の下部を上下方向で前記スライドレール16の下端よりも下方に配置することが可能となる。
【0043】
前記可動レール42には、一対の前記スライドレール16の内側に延びて当該可動レール42と一体もしくは別体(この実施の形態では別体)に形成される支持ブラケット43が連設され、前記ベース部材29は、第2のボルト45と、その第2のボルト45に螺合される第2のナット46とで前記支持ブラケット43に締結される。すなわち前記ベース部材29は、前記支持ブラケット43を介して前記可動レール42に固定的に連結される。
【0044】
前記支持ブラケット43は、前記可動レール42に下面が溶接等で固着されるようにして当該可動レール42上に配置される平板状の取付け板部43aと、前記スライドレール16の内側に隣接した位置で上下方向に延びて前記取付け板部43aに直角に連なる側板部43bと、その側板部43bの下端から前記スライドレール16と反対側に延びて前記ベース部材29における第1鍔部29cに下方から当接する平板状の連結板部43cとを一体に有するように形成されており、前記連結板部43cが前記ベース部材29の前記第1鍔部29cに締結される。
【0045】
前記支持ブラケット43の前記側板部43bには第1フック部材47が溶接等で固定され、前記可動レール42に対する前記回転部材30の上方への浮き上がりを抑制する変形抑制機構49を前記第1フック部材47と協働して構成する第2フック部材48が、前記回転部材30における前記第3側板部30bに溶接等で固定されるとともに当該回転部材30の回転を許容して前記第1フック部材47に係合される。
【0046】
前記第1フック部材47は、左右一対の前記可動レール42の前端部および後端部にそれぞれ対応する部位の合計4箇所で前記支持ブラケット43に固定され、第2フック部材48は、前記回転部材30における前記第3側板部30bの前記第1フック部材47に対応する4箇所に固定される。
【0047】
図6および
図7を併せて参照して、前記回転部材30の前記ベース部材29および前記カバー部材31に対するロック状態ならびにロック状態解除は、前記回転部材30に支持されるロック部材52の操作で切替えられるものであり、このロック部材52の作動に連動するがたつき抑制部材53が前記カバー部材31および前記回転部材30間に配置される。
【0048】
前記カバー部材31が有する第1テーパ部31cと、前記回転部材30が有する第2テーパ部30aとの間には、上方に向かうにつれて大径となるテーパ状の押し出し部材54が配置される。この押し出し部材54の周方向に間隔をあけた複数箇所には、当該押し出し部材54の周方向に長く延びる収容孔55が設けられており、前記カバー部材31の前記第1テーパ部31cおよび前記回転部材30の第2テーパ部30a間に介在するがたつき抑制部材53が前記収容孔55に収容される。
【0049】
一方、前記回転部材30には、前記ロック部材52が鉛直な軸線を有する軸51を介して回動可能に支持されており、このロック部材52は、
図6(a)で示すように前記カバー部材31の前記第1テーパ部31cに係合して前記回転部材30の回転を阻止するロック位置と、
図6(b)で示すように前記第1テーパ部31cとの係合を解除して前記回転部材30の回転を許容するロック解除位置との間での回動が可能であり、ばね56によって前記ロック位置側に回動付勢される。
【0050】
前記ロック部材52が有する連結腕部52aは、前記回転部材30の前記第2テーパ部30aに形成された挿通孔57に挿通され、前記連結腕部52aの先端部は、前記押し出し部材54に形成される連結孔58に挿通可能であり、前記連結腕部52aの先端部を前記連結孔58に挿通させることで前記押し出し部材54に前記ロック部材52が連結される。この連結腕部52aは、
図6(b)で示すように、前記ロック部材52がロック解除位置となったときに前記連結孔58に連結され、前記押し出し部材54にその回動方向への押圧力が前記連結腕部52aから作用することになる。
【0051】
また前記ロック部材52が有する係合腕部52bは、
図6(a)で示す前記ロック位置では、前記回転部材30における前記第2テーパ部30aに形成された第1の貫通孔59と、前記カバー部材31の第1テーパ部31cに形成された第2の貫通孔60に係合するものの、
図6(b)で示すロック解除位置では前記第2の貫通孔60から離脱して前記カバー部材31との係合を解除するものであり、前記ロック位置および前記ロック解除位置間で前記係合腕部52bは前記押し出し部材54を跨ぐように作動する。
【0052】
前記回転部材30における前記第2テーパ部30aには、前記がたつき抑制部材53の一部を収容する凹部61が前記がたつき抑制部材53を緊密に嵌合させることを可能として形成される。
【0053】
前記がたつき抑制部材53は、前記ロック部材52の前記ロック解除位置から前記ロック位置側への作動に応じた前記押し出し部材54の移動方向62に進むにつれて高さが次第に低くなる斜面53aを有するようにして楔形に形成され、前記がたつき抑制部材53を緊密に嵌合させることを可能とした前記凹部61は、前記斜面53aに対向する凹部側斜面61aを有しつつ当該がたつき抑制部材53の一部を収容するようにして三角形状に形成される。
【0054】
また前記押し出し部材54に形成された前記収容孔55の長手方向両端部のうち前記移動方向62に沿う前端部と、前記がたつき抑制部材53との間には、コイルばね63が縮設されており、このコイルばね63が発揮するばね力で前記がたつき抑制部材53は前記移動方向62とは逆方向に付勢される。
【0055】
而して前記ロック部材52が前記ロック位置にあるときには、
図6(a)で示すように、前記がたつき抑制部材53の前記斜面53aが、前記凹部61の前記凹部側斜面61aに緊密に当接することで前記がたつき抑制部材52が前記回転部材30および前記カバー部材31に緊密に接触することになり、それにより回転部材30のがたつきが阻止される。
【0056】
また前記ロック部材52が前記ロック解除位置となったときには、
図6(b)で示すように、前記収容孔55の長手方向両端部のうち前記移動方向62に沿う後端部が前記がたつき抑制部材53に当接し、前記コイルばね63の勢力に抗して前記がたつき抑制部材53は前記移動方向62に押されることになり、前記がたつき抑制部材53の前記斜面53aが前記凹部側斜面61aから離反する側に前記がたつき抑制部材53が移動し、がたつき防止状態が解除されることになる。
【0057】
図8を併せて参照して、前記回転機構17における前記回転部材30の上部外周の周方向に沿う少なくとも一部は、カバー65で外側方から覆われており、この実施の形態では、前記シートクッション12に座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態では、前記回転部材30における前記第3側壁部30bの上部および第2鍔部30cを後方から覆う位置に前記カバー65が配置される。
【0058】
しかも前記シートクッション12に座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態で前記回転部材30の上端部後端縁すなわち第2鍔部30cの後端縁には、前記シートクッション12の表皮12aが連結されており、その表皮12aの前記第2鍔部30cへの連結部に前記カバー65の上部が連接される。
【0059】
また前記カバー65は、前記シートクッションフレーム19の一部を構成する一対のサイドフレーム19aに取付け腕66(
図5参照)を介して取付けられる。
【0060】
しかも前記カバー65は、平板状である上板65aと、その上板65aに下方から対向する下板65bと、前記上板65aおよび前記下板65bの前記回転部材30とは反対側の端部間を連結する連結板65cと、前記上板65a、前記下板65bおよび前記連結板65cの幅方向両端を連結する端壁65dとを一体に有しており、このカバー65の外側面すなわち前記連結板65cの外側面は、前記回転部材30の外側方に膨らんだ円弧状に形成される。
【0061】
また前記シートクッション12に座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態で少なくとも前記ベース部材29を後方から覆う固定カバー部材67が、前記カバー65の下方に固定配置されており、この固定カバー部材67は、たとえば前記スライドレール16における固定レール41の車両前後方向後端部に取付けられる。
【0062】
前記固定カバー部材67は、上記カバー65と同様に、平板状である上板67aと、その上板67aに下方から対向する下板67bと、前記上板67aおよび前記下板67bの前記回転部材30とは反対側の端部間を連結する連結板67cと、前記上板67a、前記下板67bおよび前記連結板67cの幅方向両端を連結する端壁67dとを一体に有しており、前記連結板67cの外側面は、前記回転部材30の外側方に膨らんだ円弧状に形成される。
【0063】
しかも前記固定カバー部材67は、前記カバー65の下部に相対摺動可能に接触するものであり、前記固定カバー部材67の上端部の上板部67aが前記カバー65における前記下板65bの下面に相対摺動可能に接触する。
【0064】
ところで前記サイドフレーム19aは、サイドカバー14で外側方から覆われるのであるが、このサイドカバー14の下端位置は、
図4で示すように、前記支持ブラケット43における前記取付け板部43aの上面よりも上下方向でわずかに上方にあるように設定され、
図2で示すように、上下方向での位置が前記カバー65の下端位置と同一である。
【0065】
次にこの第1の実施の形態の作用について説明すると、車両用シート装置10が備える回転機構17の一部を構成する回転部材30の上部外周の周方向に沿う少なくとも一部が、カバー65で外側方から覆われるので、少なくとも前記カバー65で覆われている部位では異物が回転機構17内に侵入することを抑制することができる。
【0066】
また前記カバー65が、前記シートクッション12に座った乗員が車両前後方向前向き
となる状態では前記回転部材30の上部外周を後方から覆う位置に配置されるので、運転席や助手席が前向きとなる状態での後方の同乗者席側からの異物の回転機構17への侵入を抑制することができる。
【0067】
またシートクッション12に座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態で前記回転部材30の上端部後端縁に、前記シートクッション12の表皮12aが前記カバー65の外面に接触しつつ連結されるので、前記カバー65の上部を前記シートクッション12の表皮12aに連接することができ、運転席や助手席が前向きとなる状態での後方の同乗者席側からの異物の回転機構17への侵入をより効果的に抑制することができる。
【0068】
また前記シートクッションフレーム19が、直線状に延びるとともに前記回転部材30に支持される一対のサイドフレーム14を有しており、前記カバー65がそれらのサイドフレーム14に取付けられるので、簡単な構造で前記カバー65をシート11とともに回転させるようにすることができる。
【0069】
また前記カバー65の外側面が、前記回転部材30の外側方に膨らんだ円弧状に形成されるので、シート11とともに前記カバー65が回転する際に、車室内のフロア上にある荷物等と前記カバー65が接触したとしても前記カバー65ひいてはシート11の円滑な回転を実現することができる。
【0070】
また前記シートクッション12に座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態で少なくとも前記ベース部材29を後方から覆う固定カバー部材67が前記カバー65の下方に固定配置されるので、運転席や助手席が前向きとなる状態での後方の同乗者席側からの異物の回転機構17への侵入を抑制することができる。
【0071】
しかも前記固定カバー部材67が前記カバー65の下部に相対摺動可能に接触するので、運転席や助手席が前向きとなる状態での後方の同乗者席側からの異物の回転機構17への侵入をより効果的に抑制することができる。また前記固定カバー部材67の外側面が、その上方の前記カバー65と同様に前記回転部材30の外側方に膨らんだ円弧状に形成されるので、前記シート11の回転途中で、前記カバー65を含む前記シート11と、前記固定カバー部材67との間に隙間が生じることを極力抑制し、異物の回転機構17への侵入を効果的に抑制することができる。
【0072】
また前記シートクッション12を外側方から覆うサイドカバー14の下端位置が、前記カバー65の下端位置と同一に設定されるので、運転席や助手席が車幅方向に向いた状態での後方の同乗者席側からの異物の回転機構17への侵入を抑制することができる。
【0073】
図9は本発明の第2の実施の形態を示すものであり、上記第1の実施の形態に対応する部分には、同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0074】
シートバック13とともにシート71を構成するシートクッション72の下方には回転機構17が配置されており、この回転機構17の一部を構成する回転部材30が有する第2テーパ部30aには、前記シートクッション72に座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態で車両前後方向後方に突出するカバー取付け板74が固着される。
【0075】
一方、前記シートクッション72の表皮72aの一部は、前記シートクッション72に座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態では、前記回転部材30の上部外周を後方から覆うカバー75を形成するようにして下方に延長されており、このカバー75の下端縁部が前記カバー取付け板74に固定的に連結されるものであり、この実施の形態では縫着によって前記カバー75の下端縁部に固着されたフック76が、前記カバー取付け板74
の端縁部に係合される。これにより前記カバー75は、前記シートクッション72に座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態では、前記回転部材30の上部外周を後方から覆いつつ前記カバー取付け板74に固定的に連結されることになるが、前記カバー75の下端縁が前記カバー取付け板74に接着等で直接固着されるようにしてもよい。
【0076】
また前記カバー75の下方には、前記シートクッション72に座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態で少なくとも前記ベース部材29を後方から覆う固定カバー部材77が固定配置される。
【0077】
この固定カバー部材77は、たとえば前記スライドレール16における固定レール41の車両前後方向後端部に取付けられるものであり、前記スライドレール16の長手方向と直交する平面に沿って上下に延びる平板状の縦壁部77aと、この縦壁部77aの上端から車両前後方向後方に張り出す平板状の張り出し板部77bとを一体に有するように形成される。
【0078】
前記張り出し板部77bの車両前後方向に沿う後端縁は、前記フック76に接触し、回転部材30とともに回転する前記フック76の回転を円滑化するために前記回転部材30の回転軸線を中心とする円弧状に形成される。
【0079】
この第2の実施の形態によれば、シートクッション72の表皮72aでカバー75が形成されるので、異物が回転機構17内に侵入することを抑制するにあたって部品点数が増大するのを回避することができる。
【0080】
図10は本発明の第3の実施の形態を示すものであり、上記第1および第2の実施の形態に対応する部分には、同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0081】
回転機構17における回転部材30(第1および第2の実施の形態参照)の上部外周の周方向に沿う少なくとも一部は、カバー78で外側方から覆われており、この実施の形態ではシートクッション12に座った乗員が車両前後方向前向きとなる状態では後方からカバー78で覆われる。
【0082】
このカバー78は、基本的には上述の第1の実施の形態のカバー65と同様に構成されるのであるが、前記シートクッションフレーム12の一部を構成する一対のサイドフレーム14(第1の実施の形態参照)を外側方から覆う一対のサイドカバー14の少なくとも一方と一体に形成される。しかも前記サイドカバー14の下端位置と、前記カバー77の下端位置と同一に設定され、前記カバー78の下方には固定カバー部材67が固定配置される。
【0083】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0084】
たとえば上述の実施の形態では、カバー65,78がシート11,71とともに回転するように構成されていたが、カバー65,78が固定位置に在るようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0085】
10・・・車両用シート装置
12・・・シートクッション
12a・・・表皮
14・・・サイドカバー
17・・・回転機構
19・・・シートクッションフレーム
19a・・・サイドフレーム
29・・・ベース部材
30・・・回転部材
65,75,78・・・カバー
67,77・・・固定カバー部材