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特開2024-83557コンピュータ支援医療システム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083557
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】コンピュータ支援医療システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20240614BHJP
   A61B 34/10 20160101ALI20240614BHJP
【FI】
A61B34/35
A61B34/10
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024064033
(22)【出願日】2024-04-11
(62)【分割の表示】P 2022016904の分割
【原出願日】2017-06-29
(31)【優先権主張番号】62/357,678
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ディマイオ,サイモン ピーター
(72)【発明者】
【氏名】バイリー,デービッド ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース,セオドア ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ロバートソン,アレク ポール
(57)【要約】
【課題】従来技術の問題点を解決する。
【解決手段】コンピュータ支援された器具運動のためのシステム及び方法が記載されている。例えば、本開示は、コンピュータ支援マニピュレータアセンブリで器具を保持する機構及び技法、並びに器具のコンピュータ支援運動を作動させる方法を提供する。
【選択図】図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のジョイントによって連結される複数のリンクを含むマニピュレータアームと、
前記マニピュレータアームの前記複数のリンクの最遠位リンクで前記複数のジョイントによって前記マニピュレータアームに物理的に連結される器具保持手段と、
前記器具保持手段から延びる調節可能なアセンブリと、
前記調節可能なアセンブリの自由端に物理的に連結されるカニューレクランプ手段と、を含み、
前記調節可能なアセンブリの物理的調節が、前記カニューレクランプ手段を前記マニピュレータアームの前記最遠位リンクで前記ジョイントに対して移動させ、前記カニューレクランプ手段は、器具を受け入れるように構成されるカニューレに解放可能に連結するように構成される、
コンピュータ支援医療システム。
【請求項2】
前記器具保持手段は、前記ジョイントに枢動可能に連結されることによって前記マニピュレータアームに物理的に連結される、請求項1に記載のコンピュータ支援医療システム。
【請求項3】
前記調節可能なアセンブリは、伸縮アセンブリを含む、請求項1又は2に記載のコンピュータ支援医療システム。
【請求項4】
前記調節可能なアセンブリは、線形に調節可能なアセンブリを含み、前記物理的調節は、前記線形に調節可能なアセンブリの伸長及び収縮を含む、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載のコンピュータ支援医療システム。
【請求項5】
前記調節可能なアセンブリは、前記器具が前記器具保持手段に連結されるときに前記器具のシャフトを受けるように構成される中間コンポーネントを更に含む、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載のコンピュータ支援医療システム。
【請求項6】
前記調節可能なアセンブリは、下方調節可能なアセンブリを含み、前記器具保持手段は、前記器具に連結するように構成される剛性上方部分を更に含む、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載のコンピュータ支援医療システム。
【請求項7】
前記調節可能なアセンブリは、
前記カニューレクランプ手段に連結される第1の調節可能な部分と、
前記器具に物理的に連結するように構成される第2の調節可能な部分と、を含み、
前記第2の調節可能な部分の調節は、前記器具が前記第2の調節可能な部分に連結されるときに、前記器具を前記マニピュレータアームに対して移動させる、
請求項1~4のうちのいずれか1項に記載のコンピュータ支援医療システム。
【請求項8】
前記第1の調節可能な部分は、線形に調節可能な下方線形部分を含み、
前記第2の調節可能な部分は、線形に調節可能な上方線形部分を含み、
前記器具保持手段は、前記第1及び第2の調節可能な部分に物理的に連結される中央部分を更に含み、前記中央部分は、前記マニピュレータアームに枢動可能に連結される、
請求項7に記載のコンピュータ支援医療システム。
【請求項9】
複数のジョイントによって連結される複数のリンクを含むマニピュレータアームと、
器具保持手段であって、、
前記マニピュレータアームの前記複数のリンクの最遠位リンクで前記複数のジョイントのジョイントによって前記マニピュレータアームに物理的に連結される中央部分と、
前記中央部分に対して伸長及び収縮可能な上方部分と、
前記中央部分に対して伸長及び収縮可能な下方部分と、
前記上方部分に連結され、器具に解放可能に連結するように構成される、器具ホルダキャリッジと、を含む、
器具保持手段と、
前記下方部分の自由端に連結され、カニューレに解放可能に連結するように構成される、カニューレクランプ手段と、を含み、前記カニューレは、前記器具を受け入れるように構成される、
コンピュータ支援医療システム。
【請求項10】
前記上方部分は、第1の伸縮アセンブリであり、前記下方部分は、第2の伸縮アセンブリである、請求項9に記載のコンピュータ支援医療システム。
【請求項11】
前記下方部分は、電力作動され、
当該コンピュータ支援医療システムは、前記カニューレが静止位置に維持されるように、前記下方部分を電力作動させて、前記マニピュレータアームが移動するにつれて補償運動を行うように構成される、
請求項9又は10に記載のコンピュータ支援医療システム。
【請求項12】
前記器具保持手段は、器具ホルダフレームを更に含み、前記器具ホルダキャリッジは、前記器具ホルダフレームに連結され、前記器具ホルダキャリッジは、前記器具を前記器具ホルダフレームに対して移動させるように、前記器具ホルダフレームに沿って並進可能である、請求項9~11のうちのいずれか1項に記載のコンピュータ支援医療システム。
【請求項13】
前記器具ホルダフレームに対する前記器具ホルダキャリッジの全走行の半分が挿入において利用可能であり、前記器具ホルダフレームに対する前記器具ホルダキャリッジの前記全走行の半分が後退において利用可能であるように、前記器具ホルダキャリッジを前記器具ホルダフレームに対して周期的に移動させるように構成される、プロセッサを更に含む、請求項12に記載のコンピュータ支援医療システム。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記器具ホルダキャリッジが前記器具ホルダフレームに対して周期的に移動される間に、前記器具のエンドエフェクタの位置を実質的に静止的に保持するように更に構成される、請求項13に記載のコンピュータ支援医療システム。
【請求項15】
複数のジョイントによって連結される複数のリンクを含むマニピュレータアームと、
器具保持手段であって、
前記マニピュレータアームの前記複数のリンクの最遠位リンクで前記複数のジョイントのジョイントによって前記マニピュレータアームに連結される器具ホルダフレームと、
前記器具ホルダフレームに並進可能に連結され、器具に解放可能に連結するように構成される、器具ホルダキャリッジと、を含む、
器具保持手段と、
前記器具保持手段から延びる調節可能なアセンブリと、
前記調節可能なアセンブリの自由端に物理的に連結されるカニューレクランプ手段と、
前記器具ホルダフレームに対する前記器具ホルダキャリッジの全走行の半分が挿入において利用可能であり、前記器具ホルダフレームに対する前記器具ホルダキャリッジの前記全走行の半分が後退において利用可能であるように、前記器具ホルダキャリッジを前記器具ホルダフレームに対して周期的に移動させるように構成される、プロセッサと、を含む、
コンピュータ支援医療システム。
【請求項16】
前記プロセッサは、
前記器具ホルダキャリッジを前記器具の長手軸に沿う第2の移動成分に従って移動させることと、
前記マニピュレータアームを前記器具の前記長手軸に沿う第1の移動成分に従って移動させることと、によって、
前記器具ホルダキャリッジを前記器具ホルダフレームに対して周期的に移動させるように構成される、
請求項15に記載のコンピュータ支援医療システム。
【請求項17】
記器具ホルダキャリッジが前記器具ホルダフレームに対して周期的に移動されるときに、前記器具のエンドエフェクタの位置が静止的に保持される、請求項15又は16に記載のコンピュータ支援医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、2016年7月1日に出願された米国仮出願第62/357,678号の利益を主張する。先行出願の開示は、この出願の開示の一部とみなされ、この出願に参照として援用される。
【0002】
この開示は、最小侵襲手術、遠隔操作手術、及び最小侵襲コンピュータ支援遠隔操作手術のような、コンピュータ支援手術のためのシステム及び方法に関する。例えば、本開示は、ロボットマニピュレータの端で手術器具を保持する機構、及び手術器具のコンピュータ支援挿入動作を作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ロボットシステム及びコンピュータ支援デバイスは、しばしば、作業部位でタスクを行うための器具を操作するロボット又は可動アームと、作業部位の画像を取り込む画像取込みデバイスを支持する少なくとも1つのロボット又は可動アームとを含む。ロボットアームは、1以上(1つ又はそれよりも多く)の能動的に制御されるジョイント(関節)によって互いに連結される複数のリンクを含む。多くの実施形態では、複数の能動的に制御されるジョイントが設けられることがある。ロボットアームは、能動的に制御されないが、能動的に制御される、ジョイントの動きに従う、1以上の受動ジョイントを含むこともある。そのような能動及び受動ジョイントは、回転ジョイント又はプリズムジョイントであることがある。その場合、ロボットアームの構成は、ジョイントの位置及びリンクの構造及び連結の知識によって決定されることがある。
【0004】
外科医の器用さを増大させるために、並びに外科医が遠隔の場所から患者を手術することを可能にするために、手術における使用のための最小侵襲遠隔手術システムが開発されている。遠隔手術は、外科医が手で器具を直接的に保持して動かすというよりもむしろ、外科医が手術器具の動きを操作する何らかの形態の遠隔制御装置、例えば、サーボ機構又は類似物を使用する、手術システムについての、一般用語である。そのような遠隔手術システムにおいて、外科医は、遠隔場所で手術部位の画像を提供される。外科医は、典型的には、適切なビューア又はディスプレイ上で手術部位の3次元画像を見ながら、マスタ制御入力デバイスを操作することによって患者に対して外科処置を行い、次いで、マスタ制御入力デバイスは、ロボット器具の動きを制御する。小さな最小侵襲手術孔を通じてロボット手術器具を挿入して、患者の手術部位にある組織を治療して、しばしば、観血技法によって手術作業部位にアクセスすることに概して関連する外傷を回避する。これらのロボットシステムは、しばしば、最小侵襲孔で器具のシャフトを枢動させること、最小侵襲孔を通じてシャフトを軸方向に摺動させること、最小侵襲孔内でシャフトを回転させること、及び/又は同様のことによって、手術器具の作業端を十分な器用さで動かして、非常に入り組んだ手術タスクを行うことができる。
【発明の概要】
【0005】
この開示は、コンピュータ支援医療処置のためのシステム及び方法を提供する。例示的な処置は、最小侵襲手術、遠隔操作手術、及びコンピュータ支援遠隔操作医療デバイスを使用する最小侵襲コンピュータ支援遠隔操作手術のような、手術を含む。他の例示的な処置は、様々な医療処置および診断処置を含む。例えば、本開示は、ロボットマニピュレータアセンブリの端で医療器具を保持する機構及び器具の軸方向の並進運動又は挿入運動を作動させる方法を提供する。
【0006】
最小侵襲コンピュータ支援医療処置の文脈において、ロボットマニピュレータアセンブリの移動は、手術器具のシャフト又は中間部分が、最小侵襲手術アクセス部位、口腔開口部及び肛門開口部を含む自然開口部、又は他の孔を通じた、安全な動きに制約されるよう、システムのプロセッサによって制御される。そのような動きは、例えば、孔部位を通じるシャフトの軸方向の挿入、シャフトの軸についてのシャフトの回転、及びアクセス部位に隣接するピボット点についてのシャフトのピボット運動を含むことがあるが、さもなければ孔に隣接する組織を引き裂くか或いはアクセス部位を意図せずに拡大することがあるシャフトの過剰な横方向の動きをしばしば排除する。アクセス部位でのロボットマニピュレータアセンブリ運動に対するそのような制約の一部又は全部は、ロボットデータ処理及び制御技法の一部又は全部を使用して課されることがある。本明細書では、ロボットマニピュレータアセンブリ運動を制約することについてそのような着想をソフトウェア制約された遠隔運動中心(software-constrained remote center of motion)と呼ぶことがある。
【0007】
1つの態様において、本開示は、コンピュータ支援手術マニピュレータアームを移動させて、コンピュータ支援手術マニピュレータアームに連結される細長い手術器具を、手術器具の長手軸によって定められる空間内の固定的な線に沿って移動させること、及びコンピュータ支援手術マニピュレータアームの移動と無関係に空間内の固定的な線に沿って手術器具を移動させることを含む、最小侵襲コンピュータ支援手術方法に向けられている。コンピュータ支援手術マニピュレータアームは、遠隔操作されてよい。
【0008】
そのような最小侵襲コンピュータ支援手術方法は、以下の構成のうちの1以上を任意的に含んでよい。手術器具の少なくとも遠位端部分は、移動させる操作の各々の間に患者の体内に配置されてよい。移動させる操作は、少なくとも幾分同時に起こってよい。移動さえる操作は、非同時的に起こってよい。手術器具の移動は、コンピュータ支援手術マニピュレータアームの移動とは無関係に、手術器具が解放可能に連結される器具ホルダキャリッジを移動させることを含んでよい。コンピュータ支援手術マニピュレータアームを移動させることは、長くゆっくりとした動きのために使用され、外科器具を動かすことは、より短くより速い動きのために使用され得る。長い遅い移動のために使用されてよく、手術器具を移動させることは、より短い迅速な移動のために使用されてよい。長い遅い移動は、周波数カットオフフィルタリング操作(frequency cut-off filtering operation)によって、より短いより迅速な移動と区別されてよい。手術器具を移動させることとの組み合わせにおいてコンピュータ支援手術マニピュレータアームを移動させることは、手術器具に命令された動作入力を受信することに応答して実行されてよい。コンピュータ支援手術マニピュレータアームを移動させることは、コンピュータ支援手術マニピュレータアームに対して手術器具ホルダを枢動させることを更に含んでよい。
【0009】
他の態様において、本開示は、(a)コンピュータ支援手術マニピュレータアームへの枢動可能な取付けのために構成される器具ホルダ、(b)器具ホルダに移動可能に連結される器具ホルダキャリッジ、(c)器具ホルダキャリッジに連結可能な手術器具であって、細長いシャフト、細長いシャフトの端に配置されるエンドエフェクタとを含む、手術器具、及び(d)細長いシャフトを摺動可能に受け入れる第1の管腔を定める管状カニューレであって、器具ホルダから取り外される使用のために構成される、管状カニューレを含む、コンピュータ支援手術システムに向けられている。
【0010】
そのようなコンピュータ支援手術システムは、以下の構成のうちの1以上を任意的に含んでよい。器具ホルダは、細長いシャフトとの摺動可能な係合のための第2の管腔を定めてよい。器具ホルダキャリッジは、器具ホルダに沿って線形に並進可能であってよい。システムは、ベースに連結されるコンピュータ支援手術マニピュレータアームも含んでよい。
【0011】
他の態様において、コンピュータ支援手術システムは、コンピュータ支援手術マニピュレータアームに連結可能な器具ホルダと、器具ホルダに移動可能に連結される器具ホルダキャリッジと、器具ホルダに連結されるカニューレホルダとを含む。器具ホルダがコンピュータ支援手術マニピュレータアームに連結されている間に、器具ホルダキャリッジは、コンピュータ支援手術マニピュレータアームとは無関係に移動可能であり、カニューレホルダは、器具ホルダキャリッジとは無関係に移動可能である。
【0012】
そのようなコンピュータ支援手術システムは、以下の構成のうちの1以上を任意的に含んでよい。システムは、カニューレホルダに解放可能に連結可能なカニューレを含んでよく、カニューレは、管腔を定める。システムは、器具ホルダキャリッジに解放可能に連結可能な手術器具も含んでよく、(手術器具は、カニューレの管腔内で摺動可能に連結可能である)。器具ホルダキャリッジは、器具ホルダに沿って線形に並進可能であってよい。システムは、ベースに連結されるコンピュータ支援手術マニピュレータアームも含んでよい。
【0013】
他の態様において、本開示は、(a)コンピュータ支援手術マニピュレータアームへの枢動可能な取付けのために構成される器具ホルダ、(b)器具ホルダに移動可能に連結される器具ホルダキャリッジ、(c)器具ホルダキャリッジに連結可能な手術器具(手術器具は、細長いシャフトと、細長いシャフトの端に配置されるエンドエフェクタとを含む)、(d)器具ホルダに移動可能に連結されるカニューレホルダ、及び(e)カニューレホルダに連結可能な管状カニューレ(管状カニューレは、細長いシャフトを摺動可能に受け入れる管腔を定める)を含む、コンピュータ支援手術システムに向けられている。
【0014】
そのようなコンピュータ支援手術システムは、以下の構成のうちの1以上を任意的に含んでよい。器具ホルダキャリッジは、器具ホルダに沿って線形に並進可能であってよい。システムは、ベースに連結されるコンピュータ支援手術マニピュレータアームも含んでよい。カニューレホルダは、器具ホルダに対して線形に並進可能であってよい。
【0015】
他の態様において、本開示は、(a)枢動可能なジョイントでのコンピュータ支援手術マニピュレータアームへの取付けのために構成される器具ホルダ(枢動可能なジョイントは、器具ホルダに沿って並進可能である)、(b)器具ホルダに移動可能に連結される器具ホルダキャリッジ、(c)器具ホルダに連結可能な管状カニューレ(管状カニューレは、管腔を定める)、及び(d)器具ホルダキャリッジに連結可能な手術器具を含む、コンピュータ支援手術システムに向けられている。手術器具は、細長いシャフトと、細長いシャフトの端に配置されるエンドエフェクタとを含む。細長いシャフトは、管腔内で摺動可能に連結可能である。
【0016】
そのようなコンピュータ支援手術システムは、以下の構成のうちの1以上を任意的に含んでよい。器具ホルダキャリッジは、器具ホルダに沿って線形に並進可能であってよい。システムは、ベースに連結されるコンピュータ支援手術マニピュレータアームも含んでよい。
【0017】
本明細書に記載する実施形態の一部又は全部は、以下の利点のうちの1以上を提供することがある。例えば、本明細書に記載する幾つかのロボットマニピュレータアセンブリの実施形態は、従来的なロボットマニピュレータアセンブリと比較して、よりコンパクトに構成される。そのようなコンパクトな設計は、ロボット手術システムのロボットマニピュレータアセンブリ間の物理的干渉の可能性を減少させることができる。加えて、そのようなコンパクトな設計は、ロボットマニピュレータアセンブリの重量及び慣性を減少させることができる。結果的に、ロボット手術システムのアクチュエータの大きさ及び電力を減少させることができる。
機械的リンケージの構造的な大きさ及び重量は、本明細書に記載するロボットマニピュレータアセンブリの実施形態を使用して減少させられることもある。そのようなより軽い機械的リンケージは、ユーザ入力に対してより応答性の高いロボット手術システムを容易にすることができる。加えて、本明細書で提供する幾つかの方法も、より小さくより応答性の高いロボットマニピュレータアセンブリを容易化する。
【0018】
1以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の記述に示されている。他の構成、目的、及び利点は、本記述及び図面から並びに請求項から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ロボット手術システムの例示的な患者側カートの斜視図である。
【0020】
図2】ロボット手術システムの例示的な外科医コンソールの正面図である。
【0021】
図3】ロボットシステムの例示的なロボットマニピュレータアームアセンブリの側面図である。
【0022】
図4】第1の構成における例示的な手術器具の遠位端部分の斜視図である。
【0023】
図5】第2の構成における図4の手術器具の遠位端部分の斜視図である。
【0024】
図6】第3の構成における図4の手術器具の遠位端部分の斜視図である。
【0025】
図7】所与のエンドエフェクタ位置についてある範囲のジョイント状態を有する例示的なロボットマニピュレータアセンブリの底面図である。
図8】所与のエンドエフェクタ位置についてある範囲のジョイント状態を有する例示的なロボットマニピュレータアセンブリの側面図である。
図9】所与のエンドエフェクタ位置についてある範囲のジョイント状態を有する例示的なロボットマニピュレータアセンブリの背面図である。
【0026】
図10図7図9のロボットマニピュレータアセンブリによって提供される自由度を例示する概略図である。
【0027】
図11】手術孔を通じて挿入されたロボットマニピュレータアセンブリを例示する概略図である。
【0028】
図12図11の高度に構成可能なマニピュレータアセンブリを新しい孔位置に手作業で再位置決めする際の挑戦の一部を概略的に例示している。
【0029】
図13】新しい孔位置へのマニピュレータの手動の再位置決めの間に動きの範囲又は同等のことを高めるような図11のアームの再構成を概略的に例示している。
【0030】
図14】アームの手動の動作中にある範囲の代替的なジョイント構成内のマニピュレータアセンブリのジョイントをロボット式に再構成することを概略的に例示している。
図15】アームの手動の動作中にある範囲の代替的なジョイント構成内のマニピュレータアセンブリのジョイントをロボット式に再構成することを概略的に例示している。
【0031】
図16】完全に制約された逆ヤコビマスタ/スレーブ速度コントローラを概略的に例示する簡略化されたブロック図である。
【0032】
図17】逆ヤコビコントローラモジュールが、マニピュレータアセンブリに対する制御を可能にするために、構成依存部分空間フィルタを有する第2のモジュールと組み合わせられた、修正されたマスタ/スレーブコントローラの簡略化された図である。
【0033】
図18図17に例示する簡略化されたマスタ-スレーブ制御装置の精緻化を例示している。
【0034】
図19】完全に制約されたマスタ/スレーブロボット手術システムのための例示的な逆ヤコビコントローラを概略的に例示している。
【0035】
図20】コントローラがシステム制約及び/又は目標の異なるレベルの優先度を尊重するよう、逆ヤコビコントローラが構成依存フィルタで修正された、図11のコントローラの修正された部分を概略的に例示している。
【0036】
図21】幾つかの実施形態に従った例示的な患者側ロボットマニピュレータアセンブリの遠位部分の側面図であり、ロボットマニピュレータアセンブリは手術部位に対して第1の構成にある。
【0037】
図22図21の例示的な患者側ロボットマニピュレータアセンブリの他の側面図であり、ロボットマニピュレータアセンブリは手術部位に対して第2の構成にある。
【0038】
図23】幾つかの実施形態に従った手術器具の挿入を制御する2段階方法のフローチャートである。
【0039】
図24】幾つかの実施形態に従った他の例示的な患者側ロボットマニピュレータアセンブリの遠位部分の側面図である。
【0040】
図25】幾つかの実施形態に従った他の例示的な患者側ロボットマニピュレータアセンブリの遠位部分の側面図である。
【0041】
図26】幾つかの実施形態に従った他の例示的な患者側ロボットマニピュレータアセンブリの遠位部分の側面図である。
【0042】
図27】幾つかの実施形態に従った他の例示的な患者側ロボットマニピュレータアセンブリの遠位部分の側面図である。
【0043】
図28】幾つかの実施形態に従った他の例示的な患者側ロボットマニピュレータアセンブリの遠位部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
様々な図面中の同等の参照記号は、同等の要素を示している。
【0045】
本発明の態様、実施形態、実施又は適用を例示するこの記述及び添付の図面は、限定として理解されるべきでない-請求項が保護される発明を定める。この記述及び請求項の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な機械的、組成的、構造的、電気的、及び動作的な変更が行われることがある。幾つかの例では、本発明を不明瞭にしないために、よく知られている回路、構造、また技法は、詳細に示されないか或いは詳細に記載されない。2以上(2つ又はそれよりも多くの)図における同等の数字は、同じ又は類似の要素を表している。
【0046】
更に、1以上(1つ又はそれよりも多く)の実施形態及び任意的な要素又は構成を記載するために選択される特定の用語は、本発明を限定することを意図しない。例えば、「下」、「より下」、「下方」、「より上」、「上方」、「近位」、「遠位」、及び同等の表現のような、空間的に相対的な用語は、図1例示されるような他の要素又は構成に対する1つの要素又は構成の関係を記載するために使用されることがある。これらの空間的に相対的な用語は、図に示される位置及び向きに加えて、使用中又は動作中のデバイスの異なる位置(即ち、並進配置)及び向き(即ち、回転配置)を包含することを意図する。例えば、図中のデバイスがひっくり返されるならば、他の要素又は機能の「下」又は「より下」として記載された要素は、他の要素又は構成の「上」又は「より上」にある。よって、例示的な用語「下」は、上及び下の両方の位置及び向きを含むことができる。デバイスは、他の方法において(例えば、90度回転させられて或いは他の向きで)方向付けられてよく、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子は相応して解釈される。同様に、様々な軸に沿った動き(並進)及び様々な軸の周りの動き(回転)の記述は、様々な特別なデバイスの位置及び向きを含む。身体の位置及び向きの組み合わせは、身体の姿勢を定める。
【0047】
同様に、「平行」、「垂直」、「丸い」、又は「正方形」のような、幾何学的用語は、文脈が他のことを示さない限り、絶対的な数学的精度を要求することを意図しない。代わりに、そのような幾何学的用語は、製造又は均等な機能に起因する変動を許容する。例えば、ある要素が「丸い」又は「概ね丸い」ものと記載されるならば、精密に円形でないコンポーネント(例えば、僅かに長円形である或いは多面付き多角形であるコンポーネント)は、依然としてこの記述によって包含される。「含む」又は「有する」という用語は、含むことを意味するが、それに限定されない。
【0048】
この記述は十分に明瞭であり、簡潔であり、正確であるように行われているが、綿密で網羅的な言語精度は常に可能でなく或いは望ましくないことが理解されるべきである。何故ならば、記述は合理的な長さに保たれるべきであり、熟練した読者は背景及び関連する技術を理解するからである。例えば、ビデオ信号を考えると、熟練した読者は、信号を表示するものとして記載されたオシロスコープが、信号自体を表示しないが、信号の表現を表示すること、並びに、信号を表示するものとして記載されたビデオモニタが、信号自体を表示しないが、信号が運ぶビデオ情報を表示することを理解するであろう。
【0049】
加えて、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が他のことを示さない限り、複数形も含むことを意図する。また、「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」という用語、及び同等の用語は、述べられた構成、ステップ、動作、要素、及び/又はコンポーネントの存在を特定するが、1以上の他の構成、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又は群の存在又は追加を妨げない。そして、1以上の個々の列挙される品目又は1以上の個々の列挙される品目の各々は、特に断りのない限り任意であると考えられるべきであり、よって、品目の様々な組み合わせは、各々の可能な組み合わせの網羅的なリストなしに記載される。同様に、補助動詞は、構成、ステップ、動作、要素、又はコンポーネントが任意的であることを意味することがある。
【0050】
1つの実施形態、実施、又は適用を参照して詳細に記載される要素は実用的であるときにはいつでも、他の実施形態、実施、又はそれらが具体的に示され或いは記載される適用に含まれてよい。例えば、ある要素が1つの実施形態を参照して詳細に記載されており、第2の実施形態を参照して記載されていないならば、その要素は、それにも拘わらず、第2の実施形態に含まれているものとして請求される。よって、以下の記述における不必要な繰返しを避けるために、1つの実施形態、実施、又は適用との関連において示され且つ記載される1以上の要素は、他のことが記載されていない限り、1以上の要素が実施形態又は実施を機能しないものにしない限り、或いは、それらの要素の2以上が干渉する機能を提供しない限り、他の実施形態、
実施、又は適用に組み込まれてよい。
【0051】
連結されているものとして記載される要素は、電気的又は機械的に直接的に連結されてよく、或いはそれらは1以上の中間コンポーネントを介して間接的に連結されてよい。
【0052】
機械的構造、コンポーネント、又はコンポーネントアセンブリのような部品との関連における、「フレキシブル(可撓)(flexible)」という用語は、広く解釈されるべきである。本質的に、その用語は、部品を傷付けることなく、部品を繰り返し屈曲させて、元の形状に復元できることを意味する。多くの「剛性(rigid)」物体は、材料特性の故に僅かに固有の弾力性のある「曲がり」を有するが、その用語が本明細書で使用されるとき、そのような物体は「フレキシブル」と考えられない。フレキシブルな部分は、無限の自由度(DOF)を有することがある。そのような部品の例は、多くの場合に有意な断面変形を伴わずに、様々な単純な又は複合的な曲線に曲げることができる、(例えば、ニチノール、ポリマ、軟質ゴム、及び同等物から作られた)閉鎖した曲げ可能なチューブ、らせんコイルバネなどを含む。他のフレキシブルな部品は、連続した「椎骨」の蛇のような配置に類似する一連の密接に離間したコンポーネントを使用することによって、そのような無限の自由度部分に近似してよい。そのような椎骨構成において、各コンポーネントは、運動連鎖における短いリンクであり、各リンク間の移動可能な機械的制約(例えば、ピンヒンジ、カップ及びボール、ライブヒンジ、及び同等物)は、リンク間の相対的な動きの1つのDOF(例えば、ピッチ)又は2つのDOF(例えば、ピッチ及びヨー)を可能にすることがある。短いフレキシブルな部品は、フレキシブルな部品自体が幾つかの連結されたリンクからなる運動連鎖であるとしても、運動連鎖内の2つのリンク間に1以上のDOFを提供する、単一の機械的制約(ジョイント)として機能することがあり、且つそのような単一の機械的制約(ジョイント)としてモデル化されることがある。知識のある人は、部品のフレキシビリティ(可撓性)がその剛性に関して表わされることを理解するであろう。
【0053】
この記述中で述べられない限り、機械的構造、コンポーネント、又はコンポーネントアセンブリのような、フレキシブルな部品は、能動的に又は受動的にフレキシブルであってよい。能動的にフレキシブルな部品は、部品自体と本質的に関連付けられる力を使用することによって曲げられることがある。例えば、1以上の腱(テンドン)は、部品に沿って長手方向に経路指定されることがあり、部品の長手軸からオフセットされることがあるので、1以上の腱に対する張力は、部品又は部品の一部分を曲がるようにさせる。能動的にフレキシブルな部品を能動的に屈曲させる他の方法は、空圧力又は液圧力、歯車、電気活性ポリマ(より一般的には「人工筋肉」)、及び同等物の使用を含むが、これらに限定されない。受動的にフレキシブルな部品は、部品に対して外部の力(例えば、加えられた機械的な又は電磁気的な力)を使用することによって曲げられる。受動的にフレキシブルの部品は、再び曲げられるまで、その曲げられた形状のままであってよく、或いはそれは部品を元の形状に戻す傾向を有する固有の特性を有してよい。固有の剛性を備える受動的にフレキシブルな部品の例は、プラスチックロッド又は弾力性ゴムチューブである。その固有に関連付けられる力によって作動させられないとき、能動的にフレキシブルな部品は、受動的にフレキシブルであることがある。単一の部品は、直列の1以上の能動的かつ受動的なフレキシブルな部品から作られてよい。
【0054】
本発明の態様は、Sunnyvale, CaliforniaのIntuitive Surgical, Inc.によって商品化されているda Vinci(登録商標)Surgical Systemを使用する実施に関して主に記載されている。そのような手術システムの例は、da Vinci(登録商標)Xi(TM)Surgical System(モデルIS4000)及びda Vinci(登録商標)Si(TM)HD(TM)Surgical System(モデルIS3000)である。しかしながら、知識のある人は、本明細書に開示する発明的な態様が、手動及びコンピュータ支援の実施形態と実施のコンピュータ支援、非コンピュータ支援、及び混成の組み合わせを含む、様々な方法で具現され且つ実施されてよいことを理解するであろう。da Vinci(登録商標)Surgical System(例えば、モデルIS4000、モデルIS3000、モデルIS2000、モデルIS1200)の実施は、単なる例示であり、本明細書に開示する発明的な態様の範囲を限定するものと考えられてならない。適用可能であるならば、発明的な態様は、比較的より小さな手持ち式の手操作デバイスにおいて、追加的な機械的支持体を有する比較的より大きなシステムにおいて、並びに、診断、非外科処置、最小侵襲外科処置、及び非最小侵襲外科処置のための処置のような、全ての種類の医療処置において使用される、非遠隔操作及び遠隔操作医療デバイスを含む、コンピュータ支援デバイスの他の実施形態において、具現又は実施されてよい。適用可能であるとき、発明的な態様は、産業ロボット及び他のロボットシステムのような、非医療システムにおいて具現及び実施されてよい。
【0055】
開示の構造及び機構の小さなスケールは、より大きなスケールで構築された類似の構造及び機構において見出される構造及び機構とは異なる特異な機械的条件並びにこれらの構造及び機構の構築の困難を創り出すことが理解されるべきである。何故ならば、材料の力及び強度は、機構の大きさと同じ比率で増減しないからである。例えば、機械特性、材料特性、及び製造上の考慮事項の故に、8mmのシャフト直径を有する手術器具を、5mmのシャフト直径に単純に縮小させることができない。同様に、5mmのシャフト直径のデバイスを、3mmのシャフト直径のデバイスに単純に縮小させることはできない。物理的寸法が減少すると、有意な機械的懸念が存在する。
【0056】
コンピュータは、プログラムされた命令に従って入力された情報に対して数学的又は論理的な機能を実行して処理された出力情報を生成する機械である。コンピュータは、数学的又は論理的機能を実行する論理ユニットと、プログラムされた命令、入力情報及び出力情報を格納するメモリとを含む。「コンピュータ」という用語及び「プロセッサ」又は「コントローラ」のような類似の用語は、単一の場所及び分散された実装の両方を含む。
【0057】
この開示は、改良された医療及びロボットデバイス、システム、並びに方法を提供する。発明的な着想は、医療処置中に複数の手術ツール又は器具が関連する複数のロボットマニピュレータに取り付けられ且つそれらによって動かされる医療ロボットシステムのような、コンピュータ支援医療システムと共に使用されることができる。ロボットシステムは、しばしば、マスタスレーブコントローラとして構成されるプロセッサを含む、最小侵襲システム、非遠隔操作システム、遠隔操作システム、遠隔手術システム、及び/又はテレプレゼンスシステムを含む。比較的多数の自由度を有する関節作動リンケージを備えるマニピュレータアセンブリを動かすように適切に構成されたプロセッサを利用するロボットシステムを提供することによって、リンケージの動きを、最小侵襲自然開口部又は他のアクセス部位を通じた作業に合わせることができる。多数の自由度は、プロセッサがこれらの可動構造及び同等物の間の干渉又は衝突を抑制するようにマニピュレータを位置決めすることも可能にすることがある。
【0058】
本明細書に記載するロボットマニピュレータアセンブリは、しばしば、ロボットマニピュレータと、その上に取り付けられるツール(外科バージョンの手術器具をしばしば含むツール)を含むが、「ロボットアセンブリ」という用語は、その上にツールが取り付けられていないマニピュレータも包含する。「ツール」という用語は、一般ロボットツール又は産業ロボットツール及び特殊なロボット手術器具の両方を包含し、これらの後者の構造は、しばしば、組織の操作、組織の治療、組織の撮像、又は同等の行為に適したエンドエフェクタを含む。ツール/マニピュレータインタフェースは、しばしば、迅速切断ツールホルダ又はカップリングであり、ツールの迅速な取外し及び代替的なツールとの迅速な交換を可能にする。マニピュレータアセンブリは、しばしば、ロボット処置の少なくとも一部の間に空間内で固定されるベースを有し、マニピュレータアセンブリは、ツールのエンドエフェクタとベースとの間に多数の自由度を含むことがある。エンドエフェクタの(把持デバイスのジョーの開閉、電気外科パドルの通電、又は同等のこと)のような作動は、しばしば、これらのマニピュレータアセンブリの自由度とは別個であり、且つこれらのマニピュレータアセンブリの自由度に追加的である。
【0059】
エンドエフェクタは、典型的には、2~6の間の自由度で作業空間内を動く。本明細書において使用するとき、「位置(position)」という用語は、位置及び向きの両方を包含する。故に、(例えば)エンドエフェクタの位置の変更は、第1の場所から第2の場所へのエンドエフェクタの移動、第1の方向から第2の方向へのエンドエフェクタの回転、又は両方の組み合わせを包含することがある。
【0060】
最小侵襲ロボット手術又は他の医療処置のために使用されるとき、マニピュレータアセンブリの動きは、システムのプロセッサによって制御されることがあるので、ツール又は器具のシャフト又は中間部分は、最小侵襲手術アクセス部位又は他の孔を通じる安全な卯木器に制約される。そのような動きは、例えば、孔部位を通じるシャフトの軸方向の挿入、その軸についてのシャフトの回転、及びアクセス部位に隣接するピボット点についてのシャフトのピボット運動を含むが、しばしば、さもなければ孔に隣接する組織を引き裂くか或いはアクセス部位を意図せずに拡大することがある、シャフトの過剰な横方向の動きを排除する。アクセス部位でのマニピュレータの動きに関するそのような制約の一部又は全部は、不適切な動きを禁止する機械的マニピュレータジョイントリンクを使用して課されてよく、或いはロボットデータ処理及び制御技法を使用して部分的に又は完全に課されてよい。故に、マニピュレータアセンブリのそのような最小侵襲孔で制約された運動は、マニピュレータアセンブリの0~3の間の自由度を採用することがある。
【0061】
本明細書に記載する例示的なマニピュレータアセンブリの多くは、手術部位内でエンドエフェクタを位置決めし移動させるのに必要とされるよりも多くの自由度を有する。例えば、最小侵襲孔を通じて内部手術部位に6つの自由度で位置付けることができる外科エンドエフェクタは、幾つかの実施形態において、9つの自由度(6つのエンドエフェクタ自由度-位置について3つの自由度及び向きについて3つの自由度に加えて、アクセス部位制約に従う3つの自由度)を有することがあるが、しばしば10よりも多くの自由度を有する。所与のエンドエフェクタ位置について必要とされる自由度よりも高い自由度を有する高度に構成可能な(highly configurable)マニピュレータアセンブリを、作業空間内のエンドエフェクタ位置についてある範囲のジョイント状態を可能にするのに十分な自由度を有するか或いは提供するものとして記載することができる。例えば、所与のエンドエフェクタ位置について、マニピュレータアセンブリは、ある範囲の代替的なマニピュレータリンク位置のうちのいずれかを占めてよく(或いはその間で駆動させられてよい)。同様に、所与のエンドエフェクタ速度ベクトルについて、マニピュレータアセンブリは、マニピュレータアセンブリの様々なジョイントのためにある範囲の異なるジョイント移動速度を有してよい。
【0062】
図1及び図2を参照すると、最小侵襲遠隔手術用のシステムが、患者側カート100と、外科医コンソール40とを含むことができる。外科手術は、外科医が、手で器具を直接的に保持して動かすというよりもむしろ、何らかの形態の遠隔制御、例えば、サーボ機構又は同等物を使用して、手術器具の動きを操作する、外科システムの一般用語である。例えば、外科医コンソール40を用いて患者側カート100を制御することは、遠隔手術の一種である。対照的に、マニピュレータ又は器具を手動で所望の構成に押す或いは引っ張ることによって患者側カートを直接的に制御することは、遠隔操作されない制御を含む。ロボット操作可能な手術器具は、観血手術のためにアクセスすることに伴う外傷を回避して、患者内の手術部位の組織を治療するために、小さな最小侵襲外科孔を通じて挿入されることができる。これらのロボットシステムは、しばしば、最小侵襲孔で器具のシャフトを枢動させること、孔を通じてシャフトを軸方向に摺動させること、孔内でシャフトを回転させること、及び/又は同等のことによって、極めて複雑な手術タスクを行う十分な器用さを伴って手術器具の作業端を動かすことができる。
【0063】
描写する実施形態において、患者側カート100は、ベース110と、第1のロボットマニピュレータアームアセンブリ120と、第2のロボットマニピュレータアームアセンブリ130と、第3のロボットマニピュレータアームアセンブリ140と、第4のロボットマニピュレータアームアセンブリ150とを含む。各ロボットマニピュレータアームアセンブリ120,130,140,150は、ベース110に枢動可能に連結されている。幾つかの実施形態では、4つよりも少ない又は4つより多いロボットマニピュレータアームアセンブリが患者側カート100の一部として含まれてよい。描写の実施形態において、ベース110は、移動の容易さを可能にするキャスタを含むが、幾つかの実施形態において、患者側カート100は、床、天井、手術台、構造フレームワーク、又は同等物に固定的に取り付けられる。
【0064】
典型的な用途では、ロボットマニピュレータアームアセンブリ120,130,140,150のうちの2つが手術器具を保持し、第3の手術器具が立体内視鏡を保持する。残余のロボットマニピュレータアームアセンブリは、別の器具が作業部位で導入されることがあるよう、利用可能である。代替的に、残余のロボットマニピュレータアームアセンブリは、第2の内視鏡又は超音波変換器のような別の画像取込みデバイスを作業部位に導入するために使用されてよい。
【0065】
ロボットマニピュレータアームアセンブリ120,130,140,150の各々は、従来的には、互いに連結されて作動可能なジョイントを通じて操作されるリンクで形成される。ロボットマニピュレータアームアセンブリ120,130,140,150の各々は、セットアップアームと、デバイスマニピュレータとを含む。セットアップアームは、ピボット点が患者内へのその入口孔で生じるよう、その保持されるデバイスを位置付ける。次に、デバイスマニピュレータは、その保持されるデバイスがピボット点について枢動させられ、入口孔に挿入され、入口孔から引き抜かれ、そのシャフト軸について回転するよう、その保持されるデバイスを操作する。
【0066】
描写する実施形態において、外科医コンソール40は、ユーザが患者側カート100の立体視カメラによって取り込まれる画像から立体視野(stereo vision)で手術部位を見ることがあるよう、立体視野ディスプレイ45を含む。左右の接眼レンズ46,47は、ユーザがユーザの左眼及び右眼でディスプレイ45の内側の左ディスプレイスクリーン及び右ディスプレイスクリーンをそれぞれ見ることがあるよう、立体視野ディスプレイ45内に設けられている。典型的には、適切なビューア又はディスプレイ上の手術部位の画像を見ながら、外科医は、マスタ制御入力デバイスを操作することによって患者に対して外科手術を行い、次いで、マスタ制御入力デバイスは、ロボット器具の動きを制御する。
【0067】
外科医コンソール40は、好ましくは、6つの自由度(DOF)において患者側カート100のロボットマニピュレータアームアセンブリ120,130,140,150によって保持されているデバイス(例えば、手術器具)を操作するために、ユーザが自分の左右の手でそれぞれ把持してよい左右の入力デバイス41,42も含む。褄先及び踵制御装置を備えるフットペダル44が外科医コンソールに設けられているので、ユーザはフットペダルと関連付けられるデバイスの動き及び/又は作動を制御することがある。
【0068】
プロセッサ43は、制御及び他の目的のために外科医コンソール40に設けられる。プロセッサ43は、医療ロボットシステムにおいて様々な機能を実行する。プロセッサ43によって実行される1つの機能は、入力デバイス41,42の機械的な動きを変換して伝達して、外科医が手術器具のようなデバイスを効果的に操作することができるようそれらの関連するロボットマニピュレータアームアセンブリ120,130,140,150内のそれらのそれぞれのジョイントを作動させることである。プロセッサ43の別の機能は、本明細書に記載する方法、クロスカップリング制御ロジック、及びコントローラを実施することである。
【0069】
プロセッサとして記載されるが、プロセッサ43は、ハードウェア、ソフトウェア、及びファームウェアの任意の組み合わせによって実装されてよいことが理解されるべきである。また、本明細書に記載するようなその機能は、1つのユニットによって実行されてよく、或いは多数のサブユニットの間で分割されてよく、サブユニットの各々は、ハードウェア、ソフトウェア及びファームウェアの任意の組み合わせによって順に実装されてよい。更に、外科医コンソール40の一部として示され或いは外科医コンソール40に物理的に隣接して示されているが、プロセッサ43は、遠隔手術システムを通じてサブユニットとして分散されてもよい。
【0070】
図3も参照すると、ロボットマニピュレータアームアセンブリ120,130,140,150は、最小侵襲手術を実行するために手術器具のようなデバイスを操作することができる。例えば、描写の構成において、ロボットマニピュレータアームアセンブリ120は、器具ホルダ122に枢動可能に連結されている。次に、カニューレ180及び手術器具200が、器具ホルダ122に解放可能に連結されている。カニューレ180は、手術中に患者インタフェース部位に配置される管状部材である。カニューレ180は、手術器具200の細長いシャフト220が摺動可能に配置される管腔を定める。
【0071】
器具ホルダ122は、ロボットマニピュレータアームアセンブリ120の遠位端に枢動可能に連結されている。幾つかの実施形態において、器具ホルダ122とロボットマニピュレータアームアセンブリ120の遠位端との間の枢動可能な連結は、外科医コンソール40及びプロセッサ43によって作動可能な電動ジョイントである。
【0072】
器具ホルダ122は、器具ホルダフレーム124と、カニューレクランプ126と、器具ホルダキャリッジ128とを含む。描写の実施形態において、カニューレクランプ126は、器具ホルダフレーム124の遠位端に固定されている。カニューレクランプ126を作動させて、カニューレ180と連結させることができ或いはカニューレ180から外すことができる。器具ホルダキャリッジ128は、器具ホルダフレーム124に移動可能に連結されている。より具体的には、器具ホルダキャリッジ128は、器具ホルダフレーム124に沿って線形に並進可能である。幾つかの実施形態において、器具ホルダフレーム124に沿う器具ホルダキャリッジ128の動きは、プロセッサ43によって作動可能/制御可能な電動の並進運動である。
【0073】
手術器具200は、伝動装置アセンブリ210(transmission assembly)と、細長いシャフト220と、エンドエフェクタ230とを含む。伝動装置アセンブリ210は、器具ホルダキャリッジ128と解放可能に連結可能である。シャフト220は、伝動装置アセンブリ210から遠位に延びている。エンドエフェクタ230は、シャフト220の遠位端に配置されている。
【0074】
シャフト220は、カニューレ180の長手軸と一致する長手軸222を定める。器具ホルダキャリッジ128が器具ホルダフレーム124に沿って並進すると、手術器具200の細長いシャフト220は、長手軸222に沿って移動させられる。そのようにして、エンドエフェクタ230を患者の体内の外科作業空間に挿入することができ且つ/或いはそこから後退させることができる。
【0075】
また、 図4図6を参照すると、異なる種類の様々な代替的なロボット手術器具及び異なるエンドエフェクタ230が使用されてよく、マニピュレータのうちの少なくとも幾つかのマニピュレータの器具は、外科処置中に取り除かれて、交換される。例えば、ドベーキー鉗子56i(DeBakey Forceps)、マイクロ鉗子56ii(microforceps)、及びポット鋏56iii(Potts scissors)を含む、これらのエンドエフェクタのうちの幾つかは、一対のエンドエフェクタジョーを定めるよう互いに対して枢動する第1及び第2のエンドエフェクタ要素56a,56bを含む。メス及び電気焼灼プローブを含む他のエンドエフェクタは、単一のエンドエフェクタ要素を有する。エンドエフェクタジョーを有する器具について、ジョーは、しばしば、入力デバイス41,42のグリップ部材を握ることによって作動させられる。
【0076】
細長いシャフト220は、エンドエフェクタ230及びシャフト220の遠位端が、しばしば腹壁又は同等物を通じて(カニューレ180を介して)最小侵襲孔を通じて手術部位に遠位に挿入されることを可能にする。外科作業部位は通気されてよく、患者内のエンドエフェクタ230の動きは、しばしば、少なくとも部分的に、シャフト220が最小侵襲孔を通過する場所についての器具200の枢動(pivoting)によってもたらされる。換言すると、ロボットマニピュレータアームアセンブリ120,130,140,150は、エンドエフェクタ50の所望の動きを提供するのを助けるために、シャフト220が最小侵襲孔の場所を通じて延びるよう、伝動装置アセンブリ210を患者の外側に移動させる。故に、ロボットマニピュレータアームアセンブリ120,130,140,150は、しばしば、外科処置中に患者の外側で有意な動きを受ける。
【0077】
図7図10を参照すると、例示的なロボットマニピュレータアームアセンブリ304を手術器具306と連結して、ベース302に対する手術器具306の動きに影響を及ぼすことができる。異なるエンドエフェクタを有する多数の異なる手術器具が(典型的には外科助手の助けを借りて)外科処置中に各ロボットマニピュレータアームアセンブリ304に順次取り付けられることがあるので、器具ホルダ320は、取り付けられる手術器具306の迅速な取外し及び交換を可能にすることが好ましい。例示的なロボットマニピュレータアームアセンブリ304は、この開示の範囲内で想定される様々な種類のロボットマニピュレータアームアセンブリの1つの非限定的な例であるに過ぎない。
【0078】
例示的なロボットマニピュレータアームアセンブリ304は、ロボットマニピュレータアームアセンブリ304の残部が第1のジョイント軸J1について回転するのを可能にするよう、枢動的な取付けジョイント322によってベース302に取り付けられ、第1のジョイント322は、例示的な実施形態において垂直軸についての回転をもたらす。ベース302及び第1のジョイント322は、一般的に、ロボットマニピュレータアームアセンブリ304の近位部分を含み、マニピュレータが、ベースから器具ホルダ320及びエンドエフェクタ50に向かって遠位に延びる。
【0079】
図10に例示されるようなリンクを接続するジョイントの回転の軸と共に、図7図9に例示されるようなロボットマニピュレータアームアセンブリ304の個々のリンクを記載すると、第1のリンク324がベース302から遠位に延び、ジョイント322で第1の枢動ジョイント軸J1について回転する。ジョイントの残余の多くを、図10中のそれらの関連する回転軸によって特定することができる。例えば、第1のリンク324の遠位端が、水平枢動軸J2を提供するジョイントで第2のリンク326の近位端に連結される。第3のリンク328の近位端が、ロールジョイントで第2のリンク326の遠位端に連結されるので、第3のリンクは、概して、第2及び第3のリンクの軸に沿って(並びに理想的には第2及び第3のリンクと整列して)延びる軸についてジョイントJ3で回転又は転動する。遠位に進むと、別の枢動ジョイントJ4の後で、第4のリンク330の遠位端は、器具ホルダリスト332を一緒に定める一対の枢動ジョイントJ5,J6によって、器具ホルダ320に連結される。ロボットマニピュレータアームアセンブリ304の並進又はプリズムジョイントJ7は、最小侵襲孔を通じる手術器具306の軸方向移動を容易にし、手術器具306が摺動可能に挿入されるカニューレへの器具ホルダ320の取付けも容易にする。
【0080】
器具ホルダ320の遠位に、手術器具306は、追加的な自由度を含んでよい。手術器具306の自由度の作動は、しばしば、ロボットマニピュレータアームアセンブリ304のモータによって駆動される。代替的な実施形態は、ここでは手術器具306上にあるものとして示されている1以上のジョイントが代わりにインタフェース上にあるか或いはその逆であるよう、迅速に取外し可能な器具ホルダ/器具インタフェースで手術器具306を支持マニピュレータアーム構造から分離してよい。換言すれば、手術器具306とロボットマニピュレータアームアセンブリ304との間のインタフェースは、(手術器具306及びマニピュレータアームアセンブリ304の両方を含むことがある)マニピュレータアームアセンブリ304の運動連鎖に沿ってより近位に又はより遠位に配置されてよい。例示的な実施形態において、手術器具306は、最小侵襲孔の部位に概ね配置されるピボット点PPの近位に、回転ジョイントJ8を含む。手術器具306の遠位リストは、器具リストジョイント軸J9,J10についてのエンドエフェクタ50のピボット運動を可能にする。エンドエフェクタジョー要素間の角度αは、エンドエフェクタ50の場所及び向きと無関係に制御されることがある。
【0081】
ここで図11図13を参照すると、例示的なロボットマニピュレータアームアセンブリ502は、マニピュレータアームアセンブリ504と、エンドエフェクタ508を有する手術器具506とを含む。本明細書で使用するとき、マニピュレータアセンブリという用語は、幾つかの場合には、その上に取り付けられる手術器具のないマニピュレータアームも包含する。例示のロボットマニピュレータアームアセンブリ502は、概して、近位ベース510からエンドエフェクタ508に対して遠位に延び、エンドエフェクタ508及び手術器具506の遠位部分は、最小侵襲手術アクセス514を介して内部手術部位512への挿入のために構成される。ロボットマニピュレータアームアセンブリ502のジョイント構造は、図10に関して上述したものと類似し、手術器具506が最小侵襲孔514を通過するよう拘束されるときでさえも、マニピュレータアセンブリが所与のエンドエフェクタ位置のために異なるジョイント状態の範囲内のどこかにあることを可能にするのに十分な自由度を含む。
【0082】
最小侵襲外科処置へのアクセス部位が第1の孔場所514aから第2の孔場所514bに変更されるべきときには、ロボットマニピュレータアームアセンブリ502のリンクの一部又は全部を手動で再位置決めする(reposition)ことがしばしば望ましい。同様に、手術のためにロボットマニピュレータアセンブリ502を最初に設定するとき、マニピュレータアセンブリ502は、関連する手術器具506が手術部位512にアクセスできる孔場所と整列させられた所望の位置に手動で移動させられてよい。しかしながら、(例えば)ベース510と器具/マニピュレータインタフェース(図10を参照)との間に比較的多数のジョイントを有する高度に構成可能なマニピュレータアーム構造に鑑みると、リンクのそのような手動位置決めは挑戦的であり得る。ロボットマニピュレータアセンブリ502構造が重力の効果を回避するように均衡させられるときでさえも、ジョイントの各々を適切な配置において整列させることを試みることは、一人の人にとっては困難である可能性があり、時間がかかる可能性があり、有意な訓練及び/又は技能を伴うことがある。ロボットマニピュレータアセンブリ502のリンクがジョイントについて均衡させられないとき、挑戦はより一層大きい可能性がある。何故ならば、手術を開始する適切な構成においてそのような高度に構成可能な構造を位置決めすることは、マニピュレータのアームの長さ及びその受動的で柔軟な(limp)設計の故に、苦闘であり得る。
【0083】
外科処置のためのロボットマニピュレータアセンブリ502を設定するのを容易にするために(或いは患者の異なる組織にアクセスするためにマニピュレータアセンブリ502を再構成するのを容易にするために)、外科医コンソール40(図2を参照)のプロセッサ43は、502中にマニピュレータアセンブリのジョイントを能動的に駆動させてよい。幾つかの場合、そのような駆動は、マニピュレータアセンブリ502の少なくとも1つのジョイントの手動の動きに応答してよい。図13では、システム操作者(任意的に、外科医、助手、技術者、又は同等の人)の手Hが、ロボットマニピュレータアームアセンブリ502又は手術器具506のリンクを手動で動かして、所望の最小侵襲孔514bと整列させる。この移動の間に、プロセッサは、手/マニピュレータ係合の近位のジョイントを駆動させる。ロボットマニピュレータアームアセンブリ502は、しばしば、代替的な構成の範囲内にあるよう十分な自由度を有するので、近位ジョイントは、ロボットマニピュレータアームアセンブリ502の遠位部分の手動の位置決めを妨げずに、所望のマニピュレータ状態に駆動させられることがある。任意的に、ジョイントは、運動量効果(momentum effects)を抑制して、構成可能なリンケージアセンブリを所望の姿勢に維持するために或いは同様の目的のために、そのジョイントでマニピュレータ構造を塑性変形させる印象を手に与えるよう手動運動に対する所望の(しばしば容易に克服される)抵抗を提供するよう、重力を補償するように駆動させられてよい。この動きは、ロボットマニピュレータアームアセンブリ504に取り付けられた手術器具506で行われるものとして図3に示されているが、マニピュレータアセンブリは、しばしば、ロボットマニピュレータアームアセンブリ504への手術器具506の取付けに先立ち、手動で位置決めされる。
【0084】
図14及び15を参照すると、ロボットマニピュレータアセンブリ502は、様々な異なる理由のうちのいずれかの故に、プロセッサ43(図2)によって再構成されてよい。例えば、関節526は、呼吸している患者などのような患者の生理学的な動きに応答して、手術台の向きの変更によるような患者の位置変更に応答して、並びに同等のことに応答して、エンドエフェクタ508の動作範囲を広げるよう、隣接するアーム、機器、又は人員との衝突を妨げるために、下向きに向けられた頂点構成から上向きに向けられた頂点構成に駆動されてよい。ロボットマニピュレータアセンブリ502の構成におけるこれらの変化の全部ではないが、それらの一部は、マニピュレータアセンブリ502に加えられる外力に応答してよく、プロセッサ43は、しばしば、外力によって作用されるジョイント以外のマニピュレータアセンブリ502の異なるジョイントを駆動する。他の場合、プロセッサ43は、プロセッサ43によって行なわれる計算に応答して、ロボットマニピュレータアセンブリ502を再構成する。いずれの場合においても、プロセッサ43は、好ましいマニピュレータアセンブリ502構成を提供する信号に応答して、単純なマスタ-スレーブコントローラからロボットマニピュレータアセンブリ502に変わってよい。ロボットマニピュレータアセンブリ502のそのような構成は、マスタ-スレーブエンドエフェクタの動作中に、マニピュレータアセンブリ502の手動の又は他の再構成中に、及び/又は少なくとも部分的にクラッチ入力の解放後のような異なる時間に起こることがある。
【0085】
ここで図16を参照すると、簡略化されたコントローラ概略図530は、マスタ入力デバイス534をスレーブマニピュレータ536に連結するマスタ/スレーブコントローラ532を示している。この例において、コントローラ入力、出力、及び計算は、ベクトル数学的表記(mathematical notation)を使用して記載され、その場合、ベクトルxは、デカルト座標内の位置ベクトルを頻繁に参照し、ベクトルqは、ジョイント空間内のリンケージ位置と呼ぶことがある、関連するリンケージ(最も頻繁にはマニピュレータスレーブリンケージ)のジョイント関節作動構成ベクトル(joint articulation configuration vector)を参照する。それにも拘わらず曖昧さが存在するときには、これらのベクトルに下付き文字(subscripts)を付けて特定の構造を識別することができるので、(例えば)xは、関連するマスタ作業空間又は座標系内のマスタ入力デバイスの位置であるのに対し、xは、作業空間内のスレーブの位置である。位置ベクトルと関連付けられる速度ベクトルは、マスタ速度ベクトルについてのxdot又は
(外1)
のように、ベクトル上の点又はベクトルと下付き文字との間の単語「ドット」で示され、速度ベクトルは、時間の変化に伴う位置ベクトルの変化として数学的に定められる(マスタ速度ベクトルの例についてはdx/dt)。
【0086】
例示的なコントローラ532は、逆ヤコビ速度コントローラを含む。xがマスタ入力デバイスの位置であり、
(外2)
がマスタ入力デバイスの速度である場合、コントローラ532は、マニピュレータ536への伝送(transmission)のためのモータコマンドを計算して、マスタ速度から入力デバイスに対応するスレーブエンドエフェクタ動作をもたらす。同様に、コントローラ532は、スレーブ位置x及び/又はスレーブ速度
(外3)
からマスタ入力デバイスに適用されるべき(並びにそこから操作者の手に適用されるべき)力反射信号(force reflection signals)を計算することができる。図19に例示される精緻化及びその完全な開示を参照として本明細書に援用する米国特許第6,424,885号(「第885号特許」)に記載されている精緻化を含む、この単純なマスタ/スレーブ逆ヤコビコントローラの概略に対する数多くの精緻化が望ましい。
【0087】
ここで図17を参照すると、(「コントローラ542」とも呼ぶ)プロセッサ542が、第1のコントローラモジュール544と第2のコントローラモジュール546とを含むものとして特徴付けられることがある。第1のコントローラモジュール544は、逆ヤコビマスタ-スレーブコントローラのような、一次ジョイントコントローラである。第1のコントローラモジュール544の一次ジョイントコントローラは、マスタ入力デバイス534からの入力に応答して所望のマニピュレータアセンブリの動きを生成するように構成されてよい。しかしながら、上述のように、本明細書に記載するマニピュレータリンケージの多くは、空間内の所与のエンドエフェクタについてのある範囲の代替的な構成を有する。結果として、エンドエフェクタが所与の位置を取るというコマンドが、多種多様な異なるジョイント動作及び構成がもたらし、それらのうちの幾つかは、他のものよりもはるかに望ましいことがある。故に、第2のコントローラモジュール546は、マニピュレータアセンブリを所望の構成に駆動するのを助けるように構成されてよく、幾つかの実施形態では、マスタ-スレーブ動作中にマニピュレータを好ましい構成に向けて駆動する。多くの実施形態において、第2のコントローラモジュール546は、構成依存フィルタ(configuration dependent filter)を含む。
【0088】
広い数学的用語では、第1のモジュール544の一次ジョイントコントローラ及び第2のモジュール546の構成依存フィルタの両方が、ジョイントの線形の結合(linear combinations)についての制御権限(control authority)を1以上の外科目標又はタスクへの貢献(service)に経路指定する(route)ためにプロセッサ542によって使用されるフィルタを含んでよい。Xがジョイント運動の空間であると仮定すると、F(X)は、i)所望のエンドエフェクタ動作を提供し且つii)孔部位で器具シャフトのピボット運動を提供するよう、ジョイントに対する制御をもたらす、フィルタであってよい。故に、第1のモジュール544の一次ジョイントコントローラは、フィルタF(X)を含んでよい。概念的には、(1-F-1F)(X)は、一次ジョイントコントローラの目標(この例では、エフェクタ動作及び枢動器具シャフト運動)に貢献すること(serving)に対して直交するジョイント速度の線形結合に対して制御作動権限を与える構成依存部分空間フィルタを記述することができる。故に、この構成依存フィルタは、マニピュレータアセンブリの所望の姿勢を維持すること、衝突を抑制すること、又は同等のことのような、第2の目標に貢献するよう、コントローラ542の第2のモジュール546によって使用されることができる。両方のフィルタは、より特定のタスクに貢献することに対応するより多くのフィルタに更に細分されてよい。例えば、フィルタF(X)は、エンドエフェクタの制御及び枢動シャフト運動の制御のために、F(X)及びF(X)にそれぞれ分離されることができ、それらのうちのいずれかがプロセッサの一次タスク又は最優先タスクとして選択されてよい。
【0089】
モジュールによって実行される数学的計算は(少なくとも部分的に)類似することがあるが、本明細書に記載するロボットプロセッサ及び制御技法は、(一次コントローラタスクと呼ぶことがある)第1のコントローラタスクのために構成される一次ジョイントコントローラと、(二次タスクと呼ぶことがある)第2のタスクのために一次ジョイントコントローラによって生成される不十分な制約のある解(under-constrained solution)を活用する構成依存フィルタとを活用する。以下の記述の大部分では、第1のモジュールを参照して一次ジョイントコントローラを記載し、第2のモジュールを参照して構成依存フィルタを記載する。(追加的な部分空間フィルタのような)追加的な機能及び/又は様々な優先順位の追加的なモジュールが含まれてもよい。
【0090】
本明細書の他の場所に記したように、そのような第1及び第2のモジュールを参照して記載した機能を実行するためのハードウェア及び/又はプログラミングコードは、完全に統合されてよく、部分的に統合されてよく、或いは完全に分離されてよい。コントローラ542は、2つのモジュールの機能を同時に使用してよく、且つ/或いは一方又は両方のモジュールが別個に又は異なる方法において使用される複数の異なるモードを有してよい。例えば、幾つかの実施形態において、第1のモジュール544は、マスタ-スレーブ操作中の第2のモジュール546及びマニピュレータアセンブリのポートクラッチ操作(port clutching)又は他の手動の関節作動の間のようなエンドエフェクタがロボット式に駆動されていないときのシステムの構成中により大きな役割を有する第2のモジュール546から殆ど又は全く影響がない状態で使用されてよい。それにも拘わらず、多くの実施形態において、両方のモジュールは、ロボット運動が有効にされる殆どのとき又は全部のときに能動的であってよい。例えば、xをxs,actualに設定することにより第1のモジュールの利得をゼロに設定することによって、及び/又は逆ヤコビコントローラが構成依存フィルタを余り制御せず、構成依存フィルタにより多くの制御権限を有させるよう、逆ヤコビコントローラ内の行列のランクを減少させることによって、プロセッサ542のモードを組織マニピュレータモードからクラッチモードに変更するために、マニピュレータアセンブリの状態に対する第1のモジュールの影響を減少させ或いは排除することができる。
【0091】
図18は、図17からの単純化されたマスタ-スレーブ制御の概略540の精緻化を例示しており、異なるプロセッサモードのためにどのように異なるモジュールが使用されることがあるかを示している。図18に例示するように、第1のモジュール544は、例えば、ヤコビ関連行列を有する何らかの形態のヤコビコントローラを含んでよい。第2のモジュール546は、ポートクラッチモードにおいて、スレーブマニピュレータリンケージの手動の関節作動によって少なくとも部分的に生成されるスレーブの位置又は速度を示す、スレーブマニピュレータ536から信号を受信することがある。この入力に応答して、第2のモジュール546は、スレーブを所望のジョイント構成に構成しながら、スレーブリンケージの手動の関節作動を可能にするよう、スレーブのジョイントを駆動するのに適したモータコマンドを生成することができる。マスタ-スレーブエンドエフェクタ操作の間、コントローラは、第2のモジュール546を使用して、異なる信号bqdotに基づいてモータコマンドを導出するのを助けてよい。コントローラ542の第2のモジュール546へのこの代替的な入力信号は、マニピュレータ構造に沿う最小侵襲孔ピボット場所を維持し或いは移動させるように、複数のマニピュレータ間の衝突を回避するように、マニピュレータ構造の動作範囲を拡張し且つ/或いは特異点(singularities)を回避するように、マニピュレータの所望の姿勢医をもたらすように、或いは同等のことをするように、マニピュレータリンケージを駆動させるために使用されてよい。故に、bqdotは、一般的に、(例えば)ジョイント速度の所望のセットを含み且つ/或いは示すことができ、より一般的には、典型的にはジョイント空間内の二次的な制御目標を表すことができる。他の実施形態において、プロセッサは、クラッチ操作、二次コントローラタスク、及び同等のことのために、別個のモジュール及び/又は依存構成フィルタを含んでよい。
【0092】
ここで図20を参照すると、部分制御概略図550が、図19に例示するコントローラの変形を例示している。制御概略図550は、図11のコントローラの部分551の修正を極めて大まかに表している。マニピュレータアセンブリに対する制御を容易にするために、多数の自由度を有する。図20に例示する実施形態において、第1のモジュール544は逆ヤコビ速度コントローラを含み、仮想スレーブ経路552に従って修正された逆ヤコビ行列を使用して行われる計算からの出力を備える。先ず、仮想スレーブ経路を記述すると、仮想スレーブと関連付けられるベクトルは、概ね下付き文字によって示されるので、ジョイント空間内の仮想スレーブ速度qdotは、qをもたらすよう積分され、それは逆運動学モジュール554を使用して処理されて、仮想スレーブジョイント位置信号xvが生成される。仮想スレーブ位置及びマスタ入力コマンドxは、順運動学556を使用して結合され且つ処理される。明細書に援用した第885号特許を参照してより完全に理解され得るように、(しばしば単純化された動力学を有する)仮想スレーブの使用は、システムのハード限界に近づくときに、システムのソフト限界を超えるときに、及び同等のときに、よりスムーズな制御及び力反射を促進する。同様に、適切なジョイントコントローラ、入力及び出力処理、並びに同等物を介して(第2のモジュール546によって修正又は増強されるような)逆ヤコビ行列からの出力に応答するジョイントコントローラからのジョイントトルク信号又は同等物のようなモータコマンドの計算は、第885号特許により完全に記載されている。
【0093】
第1及び第2の制御モジュール544,546によって概ね示される構造並びに本明細書に記載する制御概略図550の他のコンポーネント及び他のコントローラの構造に取り組むと、これらの構造は、しばしば、データ処理ハードウェア、ソフトウェア、及び/又はファームウェアを含む。そのような構造は、しばしば、機械可読コードで具現され且つ外科医コンソール40のプロセッサ43(図2を参照)による使用のために有形媒体に格納されることがある、再プログラム可能なソフトウェア、データ及び同等物を含む。機械可読コードは、ランダムアクセスメモリ、不揮発性、ライトワンスメモリ、磁気記録媒体、光記録媒体、及び同等物を含む、多種多様な異なる構成で格納されてよい。コード及び/又はそれと関連付けられるデータを具現する信号は、インターネット、イントラネット、イーサネット(登録商標)、無線通信ネットワーク及びリンク、電気信号及び導体、光ファイバ及びネットワーク、並びに同等物を含む、多種多様な通信リンクによって伝送されてよい。プロセッサ43は、図2に例示するように、外科医コンソール40の1以上のデータプロセッサを含み、且つ/或いは、マニピュレータ、器具、別個の及び/又は遠隔の処理構造又は場所、並びに同等物のうちの1以上のもののローカライズされたデータ処理回路を含んでよく、本明細書に記載するモジュールは、(例えば)単一の共通のプロセッサボード、複数の別個のボードを含んでよく、或いは、モジュールのうちの1以上は、複数のボード上に分離されてよく、それらの一部は、他のモジュールの計算の一部又は全部も実行する。同様に、モジュールのソフトウェアコードは、単一の統合されたソフトウェアコードとして書かれてよく、モジュールは、それぞれ、個々のサブルーチンに分離されてよく、或いは、1つのモジュールのコードの部分が、別のモジュールのコードの一部又は全部と結合されてよい。故に、データ及び処理構造は、多種多様な集中型又は分散型のデータ処理及び/又はプログラミングアーキテクチャのいずれかを含んでよい。
【0094】
図20のコントローラの出力により詳細に取り組むと、コントローラは、しばしば、これらの高度に構成可能なスレーブマニピュレータ機構のためのコマンドを生成する際の使用のために、1つの特定のマニピュレータジョイント構成ベクトルqについて解くことを試みる。上述のように、マニピュレータリンケージは、しばしば、所与のエンドエフェクタ状態についてある範囲のジョイント状態を占めるのに十分な自由度を有する。そのような構造は、真の冗長自由度、即ち、1つのジョイントの作動が運動連鎖に沿う異なるジョイントの類似の作動によって直接的に置換されることがある構造を有する、リンケージを含むことがある(しかしながら、しばしば、含まない)。それにも拘わらず、これらの構造は、過剰な、余分な、又は冗長な自由度を有するものとして参照されることがあり、(広義の)これらの用語は、(例えば)中間リンクがエンドエフェクタの(場所及び向きの両方を含む)位置を変えずに動くことができる、運動連鎖を概ね包含する。
【0095】
図20の速度コントローラを使用して高度に構成可能なマニピュレータの移動を指示するとき、第1のモジュールの一次ジョイントコントローラは、しばしば、エンドエフェクタがマスタコマンドxに正確に従うようにスレーブマニピュレータ536のジョイントを駆動させるために使用することができる仮想ジョイント速度ベクトルqdotを決定又は解決しようとする。しかしながら、冗長自由度を備えるスレーブ機構について、逆ヤコビ行列は、一般的に、ジョイントベクトル解を完全に定義しない。例えば、所与のエンドエフェクタ状態についてある範囲のジョイント状態を占めることができるシステムにおけるデカルトコマンドxdotからジョイント運動qdotへのマッピングは、1対複数のマッピングである。換言すれば、この機構は冗長であるので、逆が生きる部分空間によって表される数学的に無限の解がある。コントローラは、行よりも多くの列を有するヤコビ行列を使用してこの関係を具現して、複数のジョイント速度を比較的より少ないデカルト速度にマッピングする。我々の回解
(外4)
は、しばしば、デカルト作業空間へのスレーブ機構の自由度のこの崩壊を元に戻そうとする。
【0096】
ロボットマニピュレータアームアセンブリのソフトウェア制約された遠隔運動中心を計算するためにソフトウェア命令によって構成されたプロセッサを使用することに関連する追加的な記述を米国特許第8,004,229号に見出すことができ、その全文を参照として本明細書に援用する。
【0097】
手短に言えば、上記記述(及び米国特許第8,004,229号中の記述)は、ピボット点(遠隔運動中心)、故に、ソフトウェア制約される遠隔運動中心の概念(notion)が、ソフトウェアを通じて決定/推定されることを可能にする。ソフトウェアピボット点を計算する能力を有することによって、システムのコンプライアンス又は剛性によって特徴付けられる異なるモードを選択的に実施することができる。より具体的には、推定ピボット点が計算された後に、ある範囲のピボット点/中心に亘る(即ち、受動ピボット点を有するものから固定的/剛的なピボット点を有するものに及ぶ)異なるシステムモードを実施することができる。例えば、固定的なピボットの実施では、推定されるピボット点を所望のピボット点と比較して、機器のピボットを所望の場所に駆動するために使用することができるエラー出力を生成することができる。逆に、受動的なピボットの実施では、所望のピボット場所は優先する目的ではないことがあるが、エラー検出のために、結果的に、安全性のために、推定されるピボット点を使用することができる。何故ならば、推定されるピボット点場所の変化は、患者が動かされたか或いはセンサが誤動作していることを示すことにより、システムに補正行為を取る機会が与えることがあるからである。
【0098】
移動する器具と最小侵襲孔の組織との間の相互作用は、プロセッサによって少なくとも部分的に決定されてよく、プロセッサは、任意的に、システムのコンプライアンス又は剛性が、受動的なピボット点から固定的なピボット点まで延びる範囲を通じて変更させられることを可能にする。受動的/剛的な範囲の受動端で、器具の近位端は空間内で移動させられてよいのに対し、器具ホルダのリストジョイントのモータはトルクを殆ど又は全く加えないので、器具は、器具が一対の受動ジョイントによってマニピュレータ又はロボットアームに連結されるように効果的に作用する。このモードにおいて、器具シャフトと最小侵襲孔に沿う組織との間の相互作用は、ピボット点についての器具のピボット運動を引き起こす。手術器具が最小侵襲孔に挿入されないか或いは他の方法において拘束されないならば、手術器具は、重力の影響下で下方を指し、マニピュレータアームの動きは、器具シャフトに沿う部位についてのピボット運動を伴わずに、吊り下がる器具を並進させる。受動的/剛的な範囲の剛性端部に向かって、最小侵襲孔の場所は、空間内の固定点として入力され或いは計算されることがある。次に、ピボット点の近位に配置される運動連鎖の各ジョイントと関連付けられるモータは、マニピュレータを駆動させるので、計算ピボット点でのシャフトに対して横方向のあらゆる横方向の力は、反応力をもたらして、ピボット点を通じてシャフトを保持する。そのようなシステムは、幾つかの点において、機械的に制約された遠隔中心リンケージと同様に挙動することがある。多くの実施形態は、これらの2つの極端の間に入り、アクセス部位で概ね枢動する計算された運動を提供し、それは、組織に対して過度の横方向の力を課すことなく、最小侵襲アクセス部位に沿う組織が移動するときにピボット運動中心を許容範囲内に適合させ或いは移動させる。
【0099】
図21及び図22を参照すると、例示的な器具ホルダ620が、本明細書に記載する遠隔手術システム及び概念に従って遠隔手術を行うために使用することができる構成においてロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク600に、ジョイント610で、枢動可能に連結されている。手術器具640が、器具ホルダ620に解放可能に連結されている。カニューレ660が、最小侵襲手術インタフェース部位10に配置されている。描写の実施形態において、カニューレ660は、器具ホルダ620から取り外されている。描写の実施形態において、器具ホルダ620は、ロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク600に枢動可能に連結されているが、幾つかの実施形態では、器具ホルダ620を最遠位リンク600に連結するために、並進連結又はプリズムジョイント連結が使用される。そのような枢動、並進、及び/又はプリズムジョイントを本明細書に記載する実施形態のうちのいずれかに組み込むことができる。
【0100】
器具ホルダ620は、器具ホルダフレーム622と、器具ホルダキャリッジ624と、任意的な器具シャフトガイド626とを含む。器具ホルダキャリッジ624は、器具ホルダフレーム622に移動可能に連結される。より具体的には、器具ホルダキャリッジ624は、器具ホルダフレーム622に沿って線形に並進可能である。幾つかの実施形態において、器具ホルダフレーム622に沿う器具ホルダキャリッジ624の移動は、遠隔手術システムのプロセッサによって作動可能/制御可能な電動並進移動である。任意的な器具シャフトガイド626を器具ホルダフレーム622に固定することができ或いは解放可能に連結することができる。
【0101】
手術器具640は、伝動装置アセンブリ642と、細長いシャフト644と、エンドエフェクタ646とを含む。伝動装置アセンブリ642は、器具ホルダキャリッジ624と解放可能に連結可能である。シャフト644は、伝動装置アセンブリ642から遠位に延びる。シャフト644は、
カニューレ660によって定められる管腔及び任意的な器具シャフトガイド626によって定められる管腔と摺動可能に連結される。エンドエフェクタ646は、シャフト644の遠位端に配置され、遠隔外科処置中に患者の体内の手術作業空間内に配置される。
【0102】
細長いシャフト644は、器具軸を定め、この特定の器具軸は、長手軸641である。シャフト644とカニューレ660との間の物理的係合の故に、長手軸641は、カニューレ660の長手軸と一致する。器具ホルダキャリッジ624が器具ホルダフレーム622に沿って並進すると、手術器具640の細長いシャフト644は長手軸641に沿って移動する。器具ホルダキャリッジ624が器具ホルダフレーム622に沿って並進するとき、長手軸641は空間内で固定されたままである。そのようにして(器具ホルダキャリッジ624を器具ホルダフレーム622に沿って並進させることによって)、エンドエフェクタ646を、空間内に固定される(長手軸641によって定められる)線に沿って患者の体内の手術作業空間内に挿入することができ、且つ/或いはそこから引っ込めることができる。
【0103】
加えて、描写の実施形態では、エンドエフェクタ646を、第2の方法において(長手軸641によって定められる)空間内に固定される線に沿って手術作業空間内に挿入することができ、且つ/或いはそこから引っ込めることができる。即ち、本明細書に記載するソフトウェア制約された遠隔動作中心技法を使用するならば、枢動可能なジョイント610の移動と組み合わせられたロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク600の移動は、長手軸641に沿う手術器具の移動をもたらすことができる一方で、長手軸641は空間内で固定されたままである。
【0104】
幾つかの実施形態において、カニューレ660は、(線形カニューレ660とは対照的に)湾曲しており、手術器具640の細長いシャフト644は、細長いシャフト644がカニューレ660の湾曲に適合することができるようにフレキシブル(可撓)である。そのような場合、湾曲カニューレ660に対して近位に伝動装置アセンブリ642から線形に延びる細長いシャフト644の端部分、長手軸641を定める。本明細書に記載する実施形態のいずれも湾曲カニューレを代替的に含むことができることが理解されるべきである。
【0105】
幾つかの実施形態において、手術器具640の細長いシャフト644は、(図示する線形の細長いシャフト644とは対照的に)湾曲している。そのような場合、長手軸641は、湾曲した細長いシャフト644と一致する曲線である。本明細書に記載する実施形態のいずれかも代替的に湾曲した細長いシャフトを備える手術器具を含むことができることが理解されるべきである。
【0106】
図21は、第1の深さDで挿入されたエンドエフェクタ646を示している。図22は、第2の深さDで挿入されたエンドエフェクタ646を示している。第2の深さDは、第1の深さDよりも大きい。両方の構成において、長手軸641は、空間内の同じ線に沿って配置される。
【0107】
図21の構成から図22の構成に変えることは、2つの種類の動きを含むことができる。第1に、器具ホルダキャリッジ646は、器具ホルダフレーム622に沿って並進させられ、患者内へのより深い手術器具640の第1の移動をもたらす。第2に、枢動可能なジョイント610の移動と組み合わせにおけるロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク600の移動は、患者内へのより一層深い手術器具640の第2の移動をもたらす。第2の深さD2と第1の深さD1との間の差は、第1の移動及び第2の移動の和で構成される。長手軸641を空間内の線に沿って固定された状態(一貫して一致した状態)に維持しながら、両方の種類の移動を行うことができる。
【0108】
直前の記述は、両方とも患者内へのより深い手術器具640の移動をもたらす、2つの動きを含むが、同じ原理が手術器具640を患者から引っ込めるために適用可能であることが理解されるべきである。その上、前述の第1及び第2の移動の任意の組み合わせを行うことができる。例えば、手術器具640を患者から引っ込めるために、器具ホルダフレーム622に沿う器具ホルダキャリッジ624の第1の移動を行うことができ、手術器具640を患者内に挿入するために、ロボットマニピュレータアームの最遠位リンク600及び枢動可能なジョイント610の第2の移動を行うことができる。そのような移動を同時(同時発生的)に又は順次(非同時発生的)に行うことができる。
【0109】
図23も参照すると、空間内で固定された線に沿って手術器具を動かすための2段階方法700のフローチャートが提示されている。方法700は、図21及び図22を参照して上述した着想を使用する。
【0110】
操作710において、ロボットマニピュレータアームを移動して、ロボットマニピュレータアームに連結された細長い手術器具を、手術器具の長手軸によって定められる空間内で固定された線に沿って移動させる。そのような移動は、例えば、図21及び図22の比較によって例示されることができる。図22において、ロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク600は、図21におけるよりも患者により近い。上述のように、最遠位リンク600が患者により近く移動させられると、手術器具640は、空間内で固定された線に沿って一貫して維持される長手軸641に沿って相応して移動させられる。別の言い方をすれば、本明細書に記載するソフトウェア制約された遠隔運動中心技法を使用するならば、ロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク600の移動は、長手軸641に沿う手術器具640の移動をもたらす一方で、長手軸641は固定されたままである。最遠位リンク600の移動は、枢動可能なジョイント610の移動と協調して行われることがある。代替的に、幾つかの場合には、ロボットマニピュレータアームを移動させて、細長い手術器具を手術空間内により深く延ばすと、器具は遠隔中心についてピッチ及びヨー運動を受けることがある一方で、器具の深さも制御される。三次元エンドエフェクタ軌跡は、器具のピッチ、ヨー、及び挿入における幾らかの変化で構成されることがある。そのような場合、手術器具の長手軸は、必ずしも空間内で固定されない。
【0111】
操作720において、ロボットマニピュレータアームの移動とは無関係に、(操作710毎に長手軸641によって定められるような)空間内で固定される線に沿って手術器具を移動させる。例えば、図21及び図22の間の比較を再び参照すると、器具ホルダキャリッジ624を器具ホルダフレーム622に沿って並進させて、長手軸641に沿う手術器具640の移動をもたらす一方で、長手軸641は空間内に固定されたままである。ロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク600の移動とは無関係に、そのような移動を行うことができる。
【0112】
幾つか場合、操作720は、器具ホルダキャリッジ624を器具ホルダフレーム622上で定期的に再中心化(再芯出し)することを含んでよい。器具ホルダキャリッジ624を器具ホルダフレーム622上で再中心化することによって、器具ホルダフレーム622に対する器具ホルダキャリッジ624の全走行の略半分は、いずれかの方向(挿入及び後退)における移動のために利用可能にされる。(複数の)再中心化運動が起こると、幾つかの場合には、エンドエフェクタ646の位置を実質的に静止的に保持することができる。
【0113】
幾つか場合、(操作710及び操作720に関する)ロボットマニピュレータアーム及び/又は器具ホルダキャリッジの移動に関して制限を設けることができる。1つのそのような例において、図21及び図22の実施形態を参照すると、幾つかの場合には、器具ホルダフレーム622の挿入は、器具ホルダフレーム622がカニューレ660と衝突しないように制限される。他の例では、幾つかの場合において、器具ホルダキャリッジ624及び器具ホルダフレーム622の組み合わせられた後退は、器具エンドエフェクタ646がカニューレ660から引き出されないように制限される。他の例では、幾つかの場合において、器具ホルダフレーム622がカニューレ660から引っ込められることが可能にされる距離が制限され、長手軸641に沿うあらゆる更なる後退は器具ホルダキャリッジ624の移動によって行われる。
【0114】
方法700の範囲から逸脱することなく、操作710及び操作720をいずれかの順序で行うことができることが理解されるべきである。その上、方法700の範囲から逸脱することなく、操作710及び操作720を同時(同時発生的)に又は順次(非同時発生的)に行うことができる。
【0115】
方法700の使用は、遠隔手術システムの設計及び動作に関する利点を提供することができる。例えば、器具ホルダフレーム622に沿う器具ホルダキャリッジ624の移動は比較的低い慣性を伴うので、操作720は、手術器具640の短い迅速な移動を作動させるのに特に適するのに対し、操作710におけるようにロボットマニピュレータアームを移動することによって、より長いより緩やかな移動を行うことができる。方法700に従って利用可能な移動のそのような組み合わせを有することによって、ロボットマニピュレータアーム及び/又は器具ホルダ620をより小さく且つより軽くすることができる。従って、システムのロボットマニピュレータアームアセンブリの間の干渉の可能性は少なくされる。加えて、システムのロボットマニピュレータアームアセンブリの作動のためのより少ない強さのモータ及びより軽量のリンクの使用は、方法700の使用によって実現可能にされることがある。
【0116】
幾つかの実施形態では、周波数カットオフ(frequency cut off)を定義することによって、低速移動(即ち、ロボットマニピュレータアームによる実行のために設計された移動)を、迅速な移動(即ち、器具ホルダキャリッジによる実行のために設計される移動)から区別することができる。例えば、幾つかの実施形態において、コントローラは、器具の所望の動きに対して低域フィルタリング操作を使用し、このフィルタの出力を使用して、ロボットマニピュレータアームの動きを駆動する。残余の高周波運動成分は、器具ホルダキャリッジの動きを駆動するために、コントローラによって使用される。逆に、幾つかの実施形態において、制御システムは、高域スフィルタを使用して器具の所望の動きをフィルタリングし、このフィルタの出力を使用して、器具ホルダキャリッジの動きを駆動する一方で、信号の残余の部分を使用して、ロボットマニピュレータアームの動きを駆動する。図24を参照すると、例示的な器具ホルダ820が、本明細書に記載する遠隔手術システム及び着想に従った遠隔手術を行うために使用することができる構成におけるロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク800に、ジョイント810で枢動可能に連結されている。手術器具840は、器具ホルダ820に解放可能に連結されている。カニューレ860が、最小侵襲手術インタフェース部位10に配置されている。
【0117】
図21及び図22では、カニューレ660が器具ホルダ620から取り外されているのに対し)、描写の構成では、カニューレ860が線形に調節可能なアセンブリ826を介して器具ホルダ820に結合されている点を除いて、描写の構成は、図21及び図22の構成に概ね類似している。線形に調節可能なアセンブリ826は、器具ホルダ820から延びる。カニューレクランプ827を線形に調節可能なアセンブリ826の自由端に配置することができる。カニューレクランプ827を使用して、カニューレ860を、線形に調節可能なアセンブリ826を介して、器具ホルダ820に解放可能に連結することができる。そのような構成は、器具シャフト844に加えられる横方向の荷重を支持することができ、カニューレ860が手術インタフェース部位10に対して移動するのを防止するのに役立つことがある。
【0118】
幾つかの実施形態において、線形に調整可能なアセンブリ826は能動的である。即ち、幾つかの実施形態において、線形に調節可能なアセンブリ826は、線形に調節可能なアセンブリ826が動力作動(powered actuation)によって伸長及び収縮するよう、アクチュエータ(例えば、モータ)によって駆動される。例えば、(図2のように)外科医コンソールのプロセッサによって、そのような動力作動を作動/制御することができる。幾つかの実施形態において、線形に調整可能なアセンブリ826は受動的である。即ち、幾つかの実施形態において、線形に調整可能なアセンブリ826は、アクチュエータによって駆動されない。代わりに、線形に調整可能なアセンブリ826は、隣接する物体との接触からの外力、重力、及び同等物によって作用されることに応答して、伸長及び収縮してよい。幾つかの受動的及び/又は能動的な実施形態において、線形に調整可能なアセンブリ826は、必要とされるときにその位置を保持することができるよう制動される。
【0119】
図24に描写する構成を図23の方法700に従って作動させ得ることが認識されるべきである。即ち、本明細書に記載するソフトウェア制約された遠隔運動中心技法を使用するならば、ロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク800を移動させて、長手軸841に沿う手術器具840の移動をもたらすことができる一方で、長手軸841は空間内で固定されたままである。加えて、器具ホルダキャリッジ824を器具ホルダフレーム822に沿って並進させて、長手軸841に沿う手術器具840の移動をもたらすことができる一方で、長手軸841は空間内で固定されたままである。ロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク800の移動とのは無関係にそのような移動を行うことができる。
【0120】
図25を参照すると、例示的な器具ホルダ920が、本明細書に記載する遠隔手術システム及び着想に従って遠隔手術を行うために使用することができる構成におけるロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク900に、ジョイント910で枢動可能に連結されている。手術器具940は、器具ホルダ920に解放可能に連結されている。カニューレ960は、最小侵襲手術インタフェース部位10に配置されている。
【0121】
描写の構成は、器具ホルダフレーム922に沿うジョイント910の並進を容易にする線形アクチュエータ機構926を含む。従って、器具ホルダ920は、最遠位リンク900に対して枢動することができ且つ並進することができる。幾つかの実施形態では、線形アクチュエータ機構926は、親ネジアセンブリ、ラックピニオンギア構成、伸縮アセンブリ、及び同等物のような機構であることができるが、これらに限定されない。
【0122】
図25に描写する構成を図23の方法700に従って作動させ得ることが認識されるべきである。即ち、本明細書に記載するソフトウェア制約された遠隔運動中心技法を使用するならば、ロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク900を移動させて、長手軸941に沿う手術器具940の移動をもたらすことができる一方で、長手軸941は空間内に固定されたままである。加えて、器具ホルダキャリッジ924を器具ホルダフレーム922に沿って並進させて、長手軸941に沿う手術器具940の移動をもたらすことができる一方で、長手軸941は空間内に固定されたままである。ロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク900の移動とは無関係にそのような移動を行うことができる。
【0123】
図26を参照すると、例示的な器具ホルダ1020が、本明細書に記載する遠隔手術システム及び着想に従って遠隔手術を行うために使用することができる構成におけるロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク100に、ジョイント101で枢動可能に連結されている。手術器具1040が、器具ホルダ1020に解放可能に連結されている。カニューレ1060が最小侵襲手術インタフェース部位10に配置されている。
【0124】
器具ホルダ1010は、線形に調節可能な上方部分1022と、線形に調節可能な下方部分1026とを含む。線形に調節可能な上方部分1022及び線形に調節可能な下方部分1026は、ジョイント1010で最遠位リンク1000と枢動可能に連結される中間部分1021に連結されている。線形に調節可能な部分1022及び1026を中間部分1021に対して伸長及び/又は収縮させることができる。幾つかの実施形態において、線形に調節可能な部分1022及び1026は、伸縮アセンブリである。幾つかの実施形態では、線形に調整可能な部分1022及び1026の一方又は両方が能動的である(動力作動される)。幾つかの実施形態では、線形に調整可能な部分1022及び1026の一方又は両方が受動的である(電力作動されない)。
【0125】
器具ホルダキャリッジ1024は、線形に調節可能な上方部分1022と連結される。故に、最遠位リンク1000とは無関係に、器具ホルダキャリッジ1024を(軸1041と平行に)並進させることができる。カニューレ1060は、線形に調節可能な上方部分1022に解放可能に連結可能である。故に、最遠位リンク1000が移動するときに、(線形に調節可能な下方部分1026の補償運動によって)カニューレ1060を最小侵襲手術インタフェース部位10に対して概ね静止的な位置に維持することができる。
【0126】
図26に描写する構成を図23の方法700に従って作動させることができる。即ち、本明細書に記載するソフトウェア制約された遠隔運動中心技法を使用するならば、ロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク1000を移動させて、長手軸1041に沿う手術器具1040の移動をもたらすことができる一方で、長手軸1041は空間内に固定されたままである。加えて、器具ホルダキャリッジ1024を器具ホルダ1020に沿って(中間部分1021に対して)並進させて、長手軸1041に沿う手術器具1040の移動をもたらすことができる一方で、長手軸1041は空間内に固定されたままである。ロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク1000の移動とは無関係に、そのような移動を行うことができる。
【0127】
図27を参照すると、例示的な器具ホルダ1102が、本明細書に記載する遠隔手術システム及び着想に従って遠隔手術を行うために使用することができる構成においてロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク1100に、ジョイント110で枢動可能に連結されている。手術器具1140が器具ホルダ1120に解放可能に連結されている。カニューレ1160が最小侵襲手術インタフェース部位10に配置されている。
【0128】
描写の構成では、内側カニューレ1162が器具ホルダ1120に連結され、内側カニューレ1162が最小侵襲手術インタフェース部位10に配置されるカニューレ1160を通じて延びる点を除いて、描写の構成は、図21及び図22の構成に概ね類似している。内側カニューレ1162は、カニューレ1160によって定められる管腔内に摺動可能に連結されている。手術器具1140の細長い器具シャフト1144は、内側カニューレ1162によって定められる管腔と摺動可能に連結されている。そのような構成は、器具シャフト1144に加えられる横方向の荷重を支持することができ、カニューレ1160が手術インタフェース部位10に対して移動するのを防止するのに役立つことがある。内側カニューレ1162は、カニューレ1160よりも長い。
【0129】
図27に描写する構成は、図23の方法700に従って動作させることができる。即ち、本明細書に記載するソフトウェア制約された遠隔運動中心技法を使用するならば、ロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク1100を移動させて、長手軸1141に沿う手術器具1140の移動をもたらす一方で、長手軸1141は空間内に固定されたままである。加えて、器具ホルダキャリッジ1124を器具ホルダフレーム1122に沿って並進させて、長手軸1141に沿う手術器具1140の移動をもたらすことができる一方で、長手軸1141は空間内に固定されたままである。ロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク1100の移動とは無関係に、そのような移動を行うことができる。
【0130】
図28を参照すると、例示的な器具ホルダ1220が、本明細書に記載する遠隔手術システム及び着想に従って遠隔手術を行うために使用することができる構成においてロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク1200に連結されている。手術器具1240が器具ホルダ1220に解放可能に連結されている。カニューレ1260が最小侵襲手術インタフェース部位10に配置されている。
【0131】
器具ホルダ1220は、器具ホルダフレーム1222と、器具ホルダキャリッジ1224と、カニューレクランプ1227とを含む。器具ホルダキャリッジ1224は、器具ホルダフレーム1222に移動可能に連結される。より具体的には、器具ホルダキャリッジ1224は、器具ホルダフレーム1222に沿って線形に並進可能である。幾つかの実施形態において、器具ホルダフレーム1222に沿う器具ホルダキャリッジ1224の移動は、遠隔手術システムのプロセッサによって作動可能/制御可能な電動並進運動である。カニューレクランプ1227を器具ホルダフレーム1222に固定することができる。カニューレクランプ1227は、カニューレ1260と解放可能に連結するよう器具ホルダフレーム1222を適合させることができる。
【0132】
器具ホルダ1220の近位端部分が最遠位リンク1220に連結されている。器具ホルダ1220は、器具ホルダフレーム1223の関節作動可能な部分を含む。器具ホルダフレーム1223の関節作動可能な部分を最遠位リンク1200に対して操作することができる。幾つかの実施形態において、器具ホルダフレーム1223の関節作動可能な部分を遠隔手術システムのプロセッサによって作動可能/制御可能な電動運動によって操作することができる。最遠位リンク1200に対して器具ホルダフレーム1223を操作することによって、カニューレ1260の向きを調節することができる。カニューレ1260の向きを調節することによって、手術器具1240の遠位部分を物理的に制御することができる。
【0133】
手術器具1240は、伝動装置アセンブリ1242と、フレキシブルな細長いシャフト1244と、エンドエフェクタ1246とを含む。伝動装置アセンブリ1242は、器具ホルダキャリッジ1224と解放可能に連結可能である。フレキシブルな細長いシャフト1244は、伝動装置アセンブリ1242から遠位に延びる。フレキシブルな細長いシャフト1244は、カニューレ1260によって定められる管腔と摺動可能に連結される。幾つかの実施形態では、伝動装置アセンブリ1242とカニューレ1260との間でフレキシブルな細長いシャフト1244の横方向の撓みを容易にするために、ガイド部材1248が含められる。エンドエフェクタ1246は、フレキシブルな細長いシャフト1244の遠位端に配置され、遠隔外科処置中に患者の体内の手術作業空間内に配置される。
【0134】
カニューレ1260及びカニューレ1260の遠位に延びるフレキシブルな細長いシャフト1244の部分は、長手軸1241を定める。器具ホルダキャリッジ1224が器具ホルダフレーム1222に沿って並進すると、カニューレ1260の遠位に延びるフレキシブルな細長いシャフト1244の部分は、長手軸1241に沿って移動する。長手軸1241は、器具ホルダキャリッジ1224が器具ホルダフレーム1222に沿って並進するとき、空間内に固定されたままである。そのようにして(器具ホルダキャリッジ1224を器具ホルダフレーム1222に沿って並進させることによって)、エンドエフェクタ1246を、空間内に固定される(長手軸1241によって定められる)線に沿って患者の体内の手術作業空間内に挿入することができ且つ/或いはそのような手術作業空間内から後退させることができる。
【0135】
加えて、描写の実施形態では、エンドエフェクタ1246を、第2の方法において(長手軸1241によって定められる)空間内に固定される線に沿って手術作業空間内に挿入することができ、且つ/或いはそのような手術作業空間から後退させることができる。即ち、本明細書に記載するソフトウェア制約された遠隔運動中心技法を使用するならば、器具ホルダフレーム1223の関節作動可能な部分の移動との組み合わせにおけるロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク1200の移動は、長手軸1241に沿う手術器具1240の移動をもたらすことができる一方で、長手軸1241は空間内に固定されたままである。
【0136】
図28に描写する構成を図23の方法700に従って作動させることができる。即ち、本明細書に記載するソフトウェア制約された遠隔運動中心技法を使用するならば、ロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク1200を移動させて、長手軸1241に沿う手術器具1240の移動をもたらすことができる一方で、長手軸1241は空間内に固定されたままである。加えて、器具ホルダキャリッジ1224を器具ホルダフレーム1222に沿って並進させて、長手軸1241に沿う手術器具1240の移動をもたらすことができる一方で、長手軸1241は空間内に固定されたままである。ロボットマニピュレータアームアセンブリの最遠位リンク1200の移動とは無関係に、そのような移動を行うことができる。
【0137】
この明細書は多くの具体的な実施の詳細を含むが、これらはいずれかの発明の範囲に対する限定又は特許請求することがあるものに対する限定として解釈されてならず、むしろ特定の発明の特定の実施形態に特有であることがある構成の記述として解釈されるべきである。別個の実施形態の文脈において本明細書に記載する特定の構成を、単一の実施形態において組み合わせにおいて実施することもできる。逆に、単一の実施形態の文脈において記載する様々な構成を、複数の実施形態において別個に又は任意の適切なサブコンビネーションにおいて実施することもできる。その上、それらの構成は、特定の組み合わせにおいて作用するものとして記載されることがあり、最初はそのように特許請求されることさえあるが、幾つかの場合には、特許請求される組み合わせからの1以上の構成をその組み合わせから削除することができ、特許請求される組み合わせは、サブコンビネーション又は様々なサブコンビネーションに向けられてよい。
【0138】
同様に、操作は特定の順序で図面に描写されているが、これはそのような操作が図示される特定の順序又は順次的な順序で実行されるべきこと又は所望の結果を達成するために全ての操作が実行されるべきことが必要とされるものとして理解されるべきでない。特定の状況では、マルチタスク処理及び並列処理が有利なことがある。その上、本明細書に記載する実施形態における様々なシステムモジュール及びコンポーネント(構成要素)の分離は、全ての実施形態においてそのような分離を必要とするものと理解されるべきでなく、一般的には、記載するプログラムコンポーネント及びシステムを単一の製品に一緒に統合することができるか或いは複数の製品にパッケージ化することができることが理解されるべきである。
【0139】
主題の特定の実施形態を記載した。他の実施形態は、後続の請求項の範囲内にある。例えば、請求項において列挙する行為を異なる順序で実行することができ、望ましい結果を依然として達成することができる。一例として、添付の図面に描写するプロセスは、所望の結果を達成するために、図示する特定の順序又は順次式の順序を必ずしも必要としない。特定の実施では、マルチタスク処理及び並列処理が有利なことがある。
図1
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【外国語明細書】