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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008356
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】直動案内装置用の挿入冶具
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20240112BHJP
   F16C 33/76 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F16C29/06
F16C33/76 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110165
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】中野 健太
(72)【発明者】
【氏名】中川 匠
【テーマコード(参考)】
3J104
3J216
【Fターム(参考)】
3J104AA03
3J104AA64
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA76
3J104BA63
3J104BA80
3J104DA18
3J216AA16
3J216BA30
3J216CC01
3J216CC14
3J216CC33
3J216CC48
3J216FA09
3J216FA10
(57)【要約】
【課題】案内レールへのスライダの挿入がサイドシールのリップを損傷することなくスムーズかつ低コストで実現できる直動案内装置用の挿入冶具を提供する。
【解決手段】本発明は、案内レール13と、案内レール13に相対移動可能に跨設されるスライダ11と、スライダ11の長手方向の両端にあり案内レール13とスライダ11の隙間をシールするサイドシール12とを有する直動案内装置10に用いられ、案内レール13にスライダ11が挿入される際の挿入治具1であって、挿入治具1は、上面開放部2と、上面開放部2の両端の少なくとも一端に、傾斜面aが形成された補助プレート部3とを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールと、
前記案内レールに相対移動可能に跨設されるスライダと、
前記スライダの長手方向の両端にあり前記案内レールと前記スライダの隙間をシールするサイドシールと、を有する直動案内装置に用いられ、
前記案内レールに前記スライダが挿入される際の挿入治具であって、
前記挿入治具は、
上面開放部と、
前記上面開放部の両端の少なくとも一端に、傾斜面が形成された補助プレート部と、を備えていることを特徴とする直動案内装置用の挿入治具。
【請求項2】
前記補助プレート部の傾斜による高さ変化量は、前記スライダが前記挿入冶具への挿入時における前記サイドシールの上面リップの寸法変化量のしめしろ以上とすることを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置用の挿入治具。
【請求項3】
前記上面開放部と前記補助プレート部とが一体で射出成形されることを特徴とする請求項1または2に記載の直動案内装置用の挿入治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用機械等に用いられる直動案内装置用の挿入冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
案内レールへスライダを挿入する際に、挿入治具が用いられる一般的な直動案内装置は、図6に示すように、一方向に延びる案内レール13と、当該案内レール13に複数の転動体(図示せず)を介してスライド移動可能に跨設されるスライダ11がスライダ本体11a(11)とスライダ11の長手方向の両端に転動体の方向転換路を有するエンドキャップ11b(11)からなり、エンドキャップ11b(11)の当該長手方向の両端に固定され、スライダ11と案内レール13との間をリップ部12aにより密封するサイドシール12とを備えている。
このような直動案内装置において、挿入冶具は、案内レール13へスライダ11を挿入する際にスライダ11ならびに案内レール13をキズつけることのないように設計される必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、ボール転動面が形成され案内レール両側面を精度良く成形するため、挿入冶具上下面を開放し、断面方向に補強リブを配置している。これは、上下面いずれか一方を面として成形した場合、その引け目によって形状精度が低下するためである。
【0004】
しかしながら、この特許文献1では、冶具上面部が開放されているためサイドシール上面リップに適正なしめしろを付与することができない。そのため、スライダ本体を挿入冶具にて案内レールへ挿入する際その接続面で、サイドシール上面リップが、案内レール端面に引っかかってしまう場合がある。その結果としてリップを損傷させてしまい、そのシール性が低下する問題がある。
【0005】
このような問題を解決するためには、挿入冶具により案内レールへ移る前にサイドシール上面リップへ適正なしめしろを与える必要がある。ここで、適正なしめしろとは、案内レールに移動した際に付与さ案内レールしめしろ以上のしめしろである。
【0006】
このため特許文献2では、挿入冶具端部をラッパ形状とし、サイドシール上面リップへ適正なしめしろを与えられる構造とした発明が開示されている。また、特許文献3では、挿入冶具の上面にプレート上の補助部品を付けることでサイドシールの上面リップに適正なしめしろを付与している発明が開示されている。さらに、特許文献4では、挿入冶具の上面にプレート上の補助部品を付けることで、サイドシールの上面リップに適正なしめしろを付与している発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-62959号公報
【特許文献2】特開2008―82504号公報
【特許文献3】特開2011-067838号公報
【特許文献4】特開2011―106643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2および特許文献3の発明では、少なくとも挿入冶具の端部は、均一な面形状としなければ、シールリップに均一なしめしろを付与することができない。これに対し、挿入冶具を一体品とした射出成形では、金型構造が複雑になる上、面部に引け目が生じてしまい、形状精度が低下する問題がある。
一方、ブロー成形で製作した場合には、両側面の転動体転動溝形状を含めて精度よく成形することは困難であり、切削加工ではコストが過大となる。また、端部ラッパ部のみ別の小部品とした場合は、射出成形でもある程度、形状精度を維持できるが、挿入冶具自体が2部品構成となり、管理費が増加する上、その取り扱いが複雑となる。
また、特許文献4の発明のように、挿入冶具の上面にプレート上の補助部品を付けることで、サイドシールの上面リップに適正なしめしろを付与した場合でも、やはり挿入冶具自体が2部品構成となり、管理費が増加する上、その取り扱いが複雑になる課題がある。
【0009】
そこで、本発明はこのような課題を解決するためになされてものであり、案内レールへのスライダの挿入がサイドシールの上面リップを損傷することなく、スムーズかつ低コストで実現できる直動案内装置用の挿入冶具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、案内レールと、
前記案内レールに相対移動可能に跨設されるスライダと、
前記スライダの長手方向の両端にあり前記案内レールと前記スライダの隙間をシールするサイドシールと、を有する直動案内装置に用いられ、
前記案内レールに前記スライダが挿入される際の挿入治具であって、
前記挿入治具は、
上面開放部と、
前記上面開放部の両端の少なくとも一端に、傾斜面が形成された補助プレート部と、を備えていることを特徴とする直動案内装置用の挿入治具。
第2の発明は、第1の発明において、前記補助プレート部の傾斜による高さ変化量は、前記スライダが前記挿入冶具への挿入時における前記サイドシールの上面リップの寸法変化量のしめしろ以上とすることを特徴とする。
第3の発明は、第1の発明または第2の発明において、前記上面開放部と前記補助プレート部とが一体で射出成形されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、案内レールへのスライダの挿入がサイドシールのリップを損傷することなく、スムーズかつ低コストで実現できる直動案内装置用の挿入冶具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は、本発明の一実施形態である直動案内装置用の挿入治具の正面図で、(b)はその直動案内装置用の挿入治具の部分平面図で、(c)は、その直動案内装置用挿入治具の部分側面図である。
図2図1のA-A端面図と当該端面図の要部を拡大して示す要部拡大図、図1のB-B端面図と当該端面図の要部を拡大して示す要部拡大図、図1のC-C端面図、図1のD-D端面図、図1のE-E端面図である。
図3】(a)は、本発明の他の実施形態である直動案内装置用の挿入治具の正面図で、(b)はその挿入治具の部分平面図で、(c)は、その挿入治具の部分側面図である。
図4図3のA-A端面図、図3のB-B端面図、図3のC-C端面図、図3のD-D端面図、図3のE-E端面図、図3のG-G端面図、である。
図5】(a)は、本発明の他の実施形態である直動案内装置用の挿入治具の部分平面図で、(b)は図5(a)のA-A端面図、(c)はその挿入治具の部分側面図、(d)は図5(a)のB-B端面図である。
図6】従来技術の直動案内装置である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、本発明の実施形態1の直動案内装置用の挿入治具1(以下、説明上、単に挿入治具という。)は、図1、2に示すように、直動案内装置の案内レール(例えば図6に示す案内レール13。)と一部が実質同一形状の外形を有し、上面開放部2と、上面開放部2の両端の少なくとも一端に、傾斜面aが形成された補助プレート部3と、を備えている。
【0014】
直動案内装置は、図6に示されるのと同様に、一方向に延びる案内レール13と、当該案内レール13に複数の転動体(図示せず)を介してスライド移動可能に跨設されるスライダ11がスライダ本体11a(11)とスライダ11の長手方向の両端に転動体の方向転換路を有するエンドキャップ11b(11)からなり、エンドキャップ11b(11)の当該長手方向の両端に固定され、スライダ11と案内レール13との間をリップ部12aにより密封するサイドシール12とを備えており、本発明は、そのような直動案内装置の案内レールにスライダが挿入される際の挿入治具1として用いられる。以下、実施形態において図6の符号と共通する符号はそのまま用いつつ詳細に説明する。
【0015】
挿入治具1は、直動案内装置の案内レール13と一部が実質同一形状の外形を有する必要があり、その全体的形状から説明する。
先ず、案内レール13上に跨架される直動案内装置のスライダ11は、案内レール13の長手方向に沿って、案内レール13の移動方向の両端の開口部が略コ字状に形成され、そのスライダ11には長手方向に沿った左右両側に袖部(両側面)を有し、その内側面には、スライダ11側転動体転動溝が案内レール13の転動体転動溝に相対向して長手方向に沿って形成されている。
つまり、図6の直動案内装置10に示す案内レール13の挿入治具1とした場合、図1(a)に示すように、案内レール13の正面形状と挿入治具1の正面形状とは実質同一形状である必要で、かつ、図1(c)に示すように、案内レール13の側面の転動体溝13a、13aの形状に相当する挿入治具1の側面の仮の転動体溝1b、1bの形状とは実質同一であることが必要とされる。
【0016】
ただ、このようなスライダ11に対する案内レール13と長さ、幅、転動溝等が実質同一形状の外形を有した挿入治具1が製作されても、スライダ11を挿入冶具にて案内レール13へ挿入する際、その接続面でサイドシール12の上面リップ(図6の12a参照。)が、案内レール13端面に引っかかってしまうと当該リップを損傷させてしまい、そのシール性が低下する。本発明は、この上面リップに損傷が生じることを防止するために補助プレート部3を設けることに特徴がある。
【0017】
補助プレート部3は、挿入冶具1の平面図である図1(b)に示すように、挿入冶具1の上面開放部2の両端の少なくとも一つの端部に長手方向に並行して複数設けられ補強リブを備え、リブとしての機能も有している。本実施形態では、補助プレート部3は、7個設けられているが、これに限定されることなく、リブとして機能する形状の大小大きさに応じて数本であっても構わない。
【0018】
補助プレート部3の長手方向長さL1は、図1(b)に示すように、長さL2の約1/2の長さに形成されている。また、挿入冶具1の端部から長手方向で上面開放部2に向かって、長さL2の約1/2の長さ部分から傾斜面aを有している。これにより、サイドシール12の上面リップは、スライダ11の移動にともなって、少しずつしめしろを付与され、端部ではレール挿入時におけるしめしろ量、もしくはそれ以上のしめしろ量が付与される。また、この長さL2は、サイドシール12の厚さ以上であることが望ましい。
【0019】
補助プレート部3の複数の内1つの図1(b)の要部の端面(挿入治具1の断面の外形形状)を示す図2の端面図を用いて説明する。図2のC-C端面図に示すように、長さL1の部分では傾斜面aが形成されておらず、挿入冶具1の上面1aと開放部の外枠2cと同じ位置の高さである(いわゆる段差がない、つら合わせしている。)。
次に、図2のA-A端面図およびその図の要部拡大端面図(円内で示す。)に示すように、長さL1から上面開放部2の長手方向長L2の約半分に渡って高さdだけ低い傾斜面aが形成されている。つまり、この傾斜面aは、補助プレート部3の部分に傾斜θを設け、その傾斜θによって高さdを与えている。このことは、図2のB-B端面図の要部拡大端面図(円内で示す。)に示すように、補助プレート部3だけ高さdだけ低い(図面では短い上下段差がある)。
なお、本実施形態では、傾斜θの角度を約10度と緩やかにしているが、この角度に限定されない。
【0020】
また、転動溝1b、1bの近傍に4つの補助プレート部3が形成され、その間の挿入冶具1の一方の転動溝1bから他方の転動溝1bに渡った箇所に3つの補助プレート部3が形成されている。その3つの補助プレート部3の内、外側の2つの補助プレート部3の断面下方向の長さL7、L8は、転動溝1bの傾斜面が終わる近傍位置までの長さで形成されていて、挿入冶具1の底面1cまでは延長していない。すなわち、補助プレート部3は、挿入冶具1の端面と補強リブ2aとの間を、所定の厚みを持って縦長に形成されブリッジ(橋渡し)されている。
なお、3つの補助プレート部3の断面下方向の長さL7、L8がブリッジではなく、挿入冶具1の底面1cまで延長されるように形成されてもよい。この場合、リブとしてはさらに補強される。
【0021】
なお、高さdは、補助プレート部3の傾斜による高さ変化量は、挿入冶具1の挿入時におけるサイドシール12の上面リップの寸法変化量のしめしろ以上とされている。これにより、補助プレート部3側を案内レール13端面に接触させスライダ11を挿入することで、サイドシール12の上面リップが適切なしめしろと維持した状態でスムーズに挿入される。
なお、補助プレート部3を長手方向の片側のみに設けている場合には、もう一方より、スライダ11を挿入冶具3へ容易に挿入することができ、スライダ11の移動と共に、適切なしめしろがサイドシール12の上面リップ12aに付与される。
【0022】
このように、スライダ11挿入時のサイドシール12の上面リップ12aは、補助プレート部3によって適正なしめしろを付与され、当該リップを損傷することなく、案内レール13へのスムーズな挿入を低コストで実現できる。このような本発明の挿入治具1を使用すれば、スライダ11を挿入治具から案内レール13に移動させる際に、サイドシール12の損傷を抑制することができる。また、挿入治具1の損傷も生じにくい。
【0023】
また、補助プレート部3は、挿入治具1の両端の片側のみ設けても良いし、両端に設けても良い。両端に設けた場合、スライダ11からの抜け落ちを防止するためのストッパーとしての機能を挿入治具1に持たせて、スライダ11納品時の運搬性を高めることができる。すなわち、両端側に補助プレート部を設けた場合、サイドシール12の上面リップ12aの適度な押圧力のしめしろによって、両端で摩擦力が作用し、スライダ11抜け防止としても作用される。
【0024】
また、補助プレート部3は内方或いは下方に向かって弾性変形可能となっているので、サイドシール12の上面リップ12aからの応力を許容することもできる。すなわち、サイドシール12から挿入治具1の補助プレート部3に圧力が負荷されたとしても、補助プレート部3の弾性変形により緩衝されるため、スライダ11が補助プレート部上を通過する際にサイドシール12のリップ部が損傷されることが避けられる。そのため、挿入治具1の材質として鋼材を使用する必要はなく、樹脂材を使用することが可能である。よって、挿入治具1を簡易かつ低コストで製造することができる。
【0025】
次に、補助プレート部3以外の挿入治具1の全体形状について説明する。図2のD-D端面図で示されている補強リブ2aを、挿入治具1の軸方向に直交する平面で切断した場合の断面形状の上面は、外枠2cよりも高さdだけ低い位置にあり補助プレート部3の傾斜面aと連続している。これにより、補助プレート部3が挿入治具1から外れ難くなっている。また、補助プレート部3の傾斜面aと連続していない補強リブ2aの上面も、外枠2cよりも高さdだけ低い位置にあることから上面リップ12aとの強い接触がないので運搬時での摩耗を避けることができる。また、案内レール13とは異なり、挿入治具1は、いわゆる仮軸としてスライダ11を仮に組み付けておくためのものであるから、挿入治具1の軸方向の全体長さはスライダ11の軸方向の長さよりL2以上長いことが好ましく、L2の2倍以上長いことがより好ましい。
【0026】
また、図2のE-E端面図で示されている補強リブ2bは、図2のB-B端面図で示されている補強リブ2bと同じで、外枠2cよりも高さdだけ低い位置にあり補助プレート部3の傾斜面aと連続している。これにより、挿入治具1から案内レール13に乗り換える際のスライダ11の移動がスムーズにできる。また、補強リブ2bが高さdだけ低いことから上面リップ12aとの強い接触がないので運搬時での摩耗を避けることができる。
【0027】
さらに、挿入治具1はスライダ11を仮に保持するとともに、案内レール13にスライダ11を円滑に挿入されることが目的であるから、挿入治具1の全内部が機能上肉厚である必要がなく、図1(b)に示すように、補助プレート部3、補強リブ2a、補強リブ2b以外の領域の上下面が空間(開放)とされている、いわゆる肉盗み(にくぬすみ)が設けられている。このような肉盗みが設けられることにより、挿入治具1の軽量化およびコスト減を図ることができる。
【0028】
このような肉盗みの領域において、長手方向と直交方向の補強リブ2aが等間隔に(図1(b)では、4つ以上)、また長手方向の補強リブ2bが中央部分に1つ形成され、図2のD-D端面図に示すように、挿入治具1を補強するために一枚版の補強板として設けられている。これらの補強リブ2aおよび補強リブ2bの数は、これに限定されることはなく、挿入治具1の規模や肉盗みに応じて決められる。また、補強リブ2aと補強リブ2bとの交点は結合して一体化されていることからリブの強度が補強される。
【0029】
また、補助プレート部3/補強リブ2a、2b部分/肉盗みを設けられている部分である上面開放部2と補助プレート部3とを含め、樹脂製の一体成形品として精度よく、かつ簡易な金型構造で実現できる。つまり、補助プレート部3を含めた挿入治具1の断面形状や端面形状等を案内レール13の断面形状や端面形状等の形状に合わせて、射出成形法により形成可能である。
【0030】
[実施形態2]
本実施形態2の挿入冶具1は、実施形態1では無かったストッパー挿入部4を挿入冶具1の端部側に設けている。当該ストッパー挿入部4のまわりの傾斜位置が相違する部分以外は、実施形態1と同じ形態で、その効果も同じである。
【0031】
ストッパー挿入部4は、図3(c)に示すように、挿入冶具1の端部側に段差を持った貫通孔として形成されている。この貫通孔には、案内レール13からスライド抜け防止用のピン或いはネジが挿入される。ピン或いはネジの先端側が挿入される段差の下方は半径L6の円筒形状に形成され、頭部側の段差の上方は半径L3の円筒形状に形成され双方が連通されている。
【0032】
また、図3(b)に示すように、ストッパー挿入部4である貫通孔の中心は挿入冶具1の上面開放部2の長手方向の直交方向の補強リブ2aおよび補助リブ2bの交点に位置し、貫通孔によって半径L3の長さだけ補助リブ2aおよび補助プレート部3が短くなっている。
【0033】
次に、本実施形態2のストッパー挿入部4が補助プレート部3および上面開放部2との形状について、図4に示す各端面図により説明する。
図4のA-A端面図は、貫通孔が及ばないことから実施形態1のA-A端面図と同じであるので、ここでの説明は重複するため省略する。
【0034】
図4のB-B端面図は、挿入冶具1の端部から長手方向で補助プレート部3から上面開放部2との要部拡大端面図である。補助プレート部3側の長さL1はが無く、ストッパー挿入部4の貫通孔の反対の補助リブ2a側からA-A端面図と同じ補助プレート部3の形状が形成されている。すなわち、挿入冶具1の端部から長手方向で上面開放部2に向かって、長さL4から長さL5変わる部分を起点として高さdの傾斜θを有する傾斜面aから、サイドシール12の上面リップ12aは、さらにスライダ11の移動にともなって、少しずつしめしろを付与され、端部ではレール挿入時におけるしめしろ量、もしくはそれ以上のしめしろ量が付与される。
【0035】
また、C-C端面図は、貫通孔の中心で補強リブ2aおよび補助リブ2bの交点の位置の断面である。このC-C端面図に示すように、中央は貫通孔によって空白となり、空白の両側面の上面には、補助プレート部3側の傾斜面aにより高さdだけ低い凹部が形成されている。凹部の高い両端は、補助リブ2aおよび上面開放部2の上面1a(外枠2cでもある。)である。
【0036】
また、D-D端面図は、C-C端面図での断面よりも補助プレート部3側寄りの断面を表している。したがって、傾斜面aにより高さdだけ低い補助プレート部3とストッパー挿入部4の貫通孔の枠が示されている。E-E端面図は、補助プレート部3側の傾斜面aが形成される手前の断面で、図2のC-C端面図と同じ内容である。
【0037】
また、F-F端面図は、図2のE-E端面図と同じ内容で、補強リブ2bが上面開放部2の上面1a(外枠2cでもある。)よりも高さdだけ低いことが示されている。G-G端面図は、図2のD-D端面図と同じ内容で、上面開放部2の補強リブ2aが示されている。
【0038】
このように本実施形態2においては、複数の補助プレート部3の形状が同一である必要はない。
以上の説明のとおり、ストッパー挿入部4の貫通孔に合ったピン或いはネジを上面から挿入し、ピン或いはネジの頭部がスライダ11端面に接触されることによりストッパーとしての機能を挿入治具1に持たせることができ、スライダ11の運搬性、安全性を高めることができる。
【0039】
[実施形態3]
実施形態3の挿入治具1は、図5(a)に示すように、挿入治具1の端部において長手方向に補助プレート部5が二股(略Y字状)に分岐する構造としている。このため、挿入冶具3の当該端部では、より均一なしめしろを付与することができる。
【0040】
実施形態3の挿入治具1は、補助プレート部5の平面視では二股(略Y字状)に分岐されている形状で、実施形態2および実施形態3の挿入治具1の補助プレート部5とは相違するものの、図5A-A端面図が実施形態1の図2A-A端面図、実施形態2の図4のA-A端面図とほぼ同じである。また、図5B-B端面図は、実施形態1の図2C-C端面図、実施形態2の図4E-E端面図とは、補助プレート部5の数が異なっている。すなわち、図5(a)の補助プレート部5が7本で、さらに二股(略Y字状)に分岐されている部分があることから約2倍の13個になっている。
このように、実施形態3の挿入治具1における長手方向の補助プレート部5は、案内レール13の長手方向に全て平行である必要はなく、斜めに配置されても良いし、途中で分岐する構造となっても良い。
【0041】
以上の説明のとおり、挿入治具1上のスライダ11を案内レール13に向けて長手方向に移動させ、スライダ11が案内レール13に挿入される際に高さdだけ低い位置にある補助プレート部5の傾斜面a上を移動し、サイドシール12の上面リップは、さらに傾斜面aからスライダ11の移動にともなって、少しずつしめしろを付与され、端部ではレール挿入時におけるしめしろ量、もしくはそれ以上のしめしろ量が付与される。なお、補助プレート部5の傾斜面aによる高さ変化量は、挿入冶具1の挿入時におけるサイドシール12の上面リップの寸法変化量のしめしろ以上とされている。これにより、サイドシール12の上面リップが適切なしめしろと維持した状態でスムーズに挿入され、サイドシール12に損傷が生じることが防止される。
【0042】
また、補助プレート部5は、挿入治具1の両端の片側のみ設けても良いし、両端に設けても良い。両端に設けた場合、スライダ11からの抜け落ちを防止するためのストッパーとしての機能を挿入治具1に持たせて、スライダ11納品時の運搬性を高めることができる。すなわち、両端側に補助プレート部を設けた場合、サイドシール12の上面リップの適度な押圧力のしめしろによって、両端で摩擦力が作用し、スライダ11抜け防止としても作用される。
【符号の説明】
【0043】
1 挿入冶具
1a 上面1a(挿入冶具)
1b 転動体転動溝(挿入冶具)
2 上面開放部(挿入冶具)
2a 補強リブ
2b 補強リブ
2c 外枠
3 補助プレート部
5 補助プレート部
10 直動案内装置
11 スライダ
12 サイドシール
12a 上面リップ
13 案内レール
13a 転動体転動溝(案内レール)
a 傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6